JP4667131B2 - 自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置 - Google Patents

自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置に関する。
一般に、自動2輪車は、前輪に制動力を付与するためのブレーキレバーと後輪に制動力を付与するためのブレーキペダルの2つのブレーキ操作部材を備えている。自動2輪車では、それぞれのブレーキ操作部材の操作により、対応する車輪に液圧に基づく制動力がそれぞれ付与されるようになっていた。以下、本明細書では、このように、対応しないブレーキ操作部材の操作と独立して、対応するブレーキ操作部材の操作に応じて作動するブレーキを「独立ブレーキ」と総称する。
ところが、近年、前後輪の制動力配分を調整して制動中の自動2輪車の姿勢の安定化を図る等のため、ブレーキレバーの操作により前輪に加えて後輪にも液圧に基づく制動力を付与し得る、及び/又は、ブレーキペダルの操作により後輪に加えて前輪にも液圧に基づく制動力を付与し得るブレーキ装置が提案されてきている(例えば、下記特許文献1を参照)。以下、本明細書では、このように、対応しないブレーキ操作部材の操作に連動して作動するブレーキを「連動ブレーキ」と総称する。
特開2003−19952号公報
図13は、係る連動ブレーキを備えた自動2輪車用の連動ブレーキ装置のうち、本発明者が提案しているものの概略構成図である。図13に示すように、この連動ブレーキ装置は、ブレーキレバーBLと前輪側独立ブレーキBfiとを接続する前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfと、ブレーキペダルBPと後輪側独立ブレーキBriとを接続する後輪側独立ブレーキ液圧回路Crと、ブレーキペダルBPと前輪側連動ブレーキBfcとを接続する前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccとを備えている。
前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfの途中、及び前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccの途中にはそれぞれ、前輪側のアンチスキッド制御(以下、「ABS制御」と総称する。)を実行するための電磁弁Vf、及び電磁弁Vcがそれぞれ介装されていて、後輪側独立ブレーキ液圧回路Crの途中には後輪側のABS制御を実行するための電磁弁Vrが介装されている。
一対の液圧ポンプP,Pは、前輪側ABS制御及び後輪側ABS制御の何れかが開始されるとそれぞれ同時に駆動開始されるようになっている。これにより、前輪側ABS制御の減圧制御により前輪側リザーバRfに還流されてきたブレーキ液が電磁弁Vfの上流側に吐出され、後輪側ABS制御の減圧制御により後輪側リザーバRrに還流されてきたブレーキ液が電磁弁Vr,Vcの上流側に吐出されるようになっている。
以上の構成を有する上記「提案された連動ブレーキ装置」では、以下に述べる問題が発生することが判明した。いま、運転者がブレーキレバーBLとブレーキペダルBPとを共に操作していて、この結果、後輪側ABS制御のみが開始されたものとする。
この場合、後輪側ABS制御の開始(具体的には、電磁弁Vrの作動による減圧制御の開始)により液圧ポンプP,Pが作動開始する。これにより、上記減圧制御により後輪側リザーバRrに還流されてきたブレーキ液が電磁弁Vc(及び、電磁弁Vr)の上流側に吐出される。この結果、液圧ポンプP,Pの作動開始の直後において電磁弁Vcの上流側の液圧が一時的に増大する現象が発生する。
一方、この段階では、前輪側ABS制御は実行されていないから、電磁弁Vc(及び、電磁弁Vf)は非作動のままである。即ち、上記一時的に増大した電磁弁Vcの上流側の液圧はそのまま前輪側連動ブレーキBfcに作用し得る。この結果、運転者の意思に反して前輪側に不要なスキッドが発生する場合があるという問題が発生する。
本発明は上記問題に対処するためになされたものであって、その目的は、自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置において、一方の車輪側のABS制御の開始による液圧ポンプの作動開始に起因して他方の車輪側に不要なスキッドが発生することを抑制し得るものを提供することにある。
本発明に係る連動ブレーキ制御装置は、上述した「提案された連動ブレーキ装置」と同様の構成を有する連動ブレーキ装置に適用される。即ち、本発明に係る連動ブレーキ制御装置は、第1の車輪(例えば、前輪)に制動力を付与するために運転者により操作される第1ブレーキ操作部材(例えば、ブレーキレバー)と、第1車輪側独立ブレーキ液圧回路を介して前記第1ブレーキ操作部材と接続された、同第1車輪側独立ブレーキ液圧回路から供給される液圧である第1車輪側独立ブレーキ液圧に応じた制動力を前記第1の車輪に発生させる第1車輪側独立ブレーキと、第2の車輪に制動力を付与するために前記運転者により操作される第2ブレーキ操作部材(例えば、ブレーキペダル)と、第2車輪側独立ブレーキ液圧回路を介して前記第2ブレーキ操作部材と接続された、同第2車輪側独立ブレーキ液圧回路から供給される液圧である第2車輪側独立ブレーキ液圧に応じた制動力を前記第2の車輪に発生させる第2車輪側独立ブレーキと、前記第2車輪側独立ブレーキ液圧回路に介装され、前記第2ブレーキ操作部材の操作に応じて発生する液圧を利用して前記第2車輪側独立ブレーキ液圧を調整するための第2車輪側独立ブレーキ液圧調整手段と、第1車輪側連動ブレーキ液圧回路を介して前記第2ブレーキ操作部材と接続された、同第1車輪側連動ブレーキ液圧回路から供給される液圧である第1車輪側連動ブレーキ液圧に応じた制動力を前記第1の車輪に発生させる第1車輪側連動ブレーキと、前記第1車輪側連動ブレーキ液圧回路に介装され、前記第2ブレーキ操作部材の操作に応じて発生する液圧を利用して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧を調整するための第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段と、少なくとも前記第2ブレーキ操作部材と前記第2車輪側独立ブレーキ液圧調整手段との間の前記第2車輪側独立ブレーキ液圧回路、及び前記第2ブレーキ操作部材と前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段との間の前記第1車輪側連動ブレーキ液圧回路にブレーキ液を吐出する液圧ポンプとを備えた自動2輪車用の連動ブレーキ装置に適用される。
ここにおいて、前記液圧ポンプ(第2車輪側液圧ポンプ)は、第2車輪側ABS制御(の減圧制御)により還流されてくるブレーキ液を貯留するリザーバ(第2車輪側リザーバ)から同ブレーキ液を吸い込むように構成されている。また、前記第1の車輪は前輪であり、前記第2の車輪は後輪であることが好ましい。
また、本発明に係る連動ブレーキ制御装置は、前記第2車輪側独立ブレーキ液圧調整手段を制御して前記第2車輪側独立ブレーキ液圧を調整することで前記第2の車輪におけるロックの発生を抑制する第2車輪側ABS制御を行う第2車輪側ABS制御手段と、少なくとも前記第2車輪側ABS制御が開始されたとき、前記液圧ポンプを駆動するための指示を行う液圧ポンプ駆動手段とを備えている。
そして、本発明に係る連動ブレーキ制御装置の特徴は、前記第2車輪側ABS制御が開始されたとき(即ち、初回の減圧制御が開始されたとき)、前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段を制御して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧の増大を抑制する連動ブレーキ液圧増大抑制制御を行う連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段を更に備えたことにある。
これによれば、第2車輪側ABS制御が開始されると、上記液圧ポンプが駆動開始されるとともに、第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段が制御されることで第1車輪側連動ブレーキ液圧の増大を抑制する連動ブレーキ液圧増大抑制制御が実行される。
従って、上述したような、「液圧ポンプの作動開始の直後において第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段(上述した電磁弁Vcに対応する。)の上流側の液圧が一時的に増大する現象」が発生しても、第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段の下流側の液圧(即ち、第1車輪側連動ブレーキ液圧)の増大が抑制され得る。
これにより、第1車輪側連動ブレーキに上記「一時的に増大した液圧」が作用し得なくなり、この結果、上述した「一方の車輪(第2の車輪)側のABS制御の開始による液圧ポンプの作動開始に起因して他方の車輪(第1の車輪)側に不要なスキッドが発生する現象」の発生を抑制することができる。
上記本発明に係る連動ブレーキ制御装置においては、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御として、減圧制御、保持制御、緩増圧制御の何れかを行うように構成されることが好適である。ここで、減圧制御とは、前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段を制御して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧を減少させる制御である。保持制御とは、前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段を制御して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧を保持する制御である。緩増圧制御とは、前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段を制御して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧を同液圧を保持する期間を設けながら緩やかに増大させる制御である。
これによれば、液圧ポンプの作動開始後において第1車輪側連動ブレーキ液圧に対して上記減圧制御、保持制御、緩増圧制御の何れかが実行されることで、同第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段の下流側の液圧(即ち、第1車輪側連動ブレーキ液圧)における上記一時的な増大の発生が確実に抑制され得る。この結果、第1の車輪側における不要なスキッドの発生を確実に抑制することができる。
前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御として前記緩増圧制御を行うように構成されている場合、前記自動2輪車の減速度に基づいて前記緩増圧制御における前記第1車輪側連動ブレーキ液圧の増加勾配を決定するように構成されることが好適である。
一般に、上記緩増圧制御における上記第1車輪側連動ブレーキ液圧の増加勾配が大きいほど(ABS制御が実行されていない)第1の車輪にスキッドが発生し易くなる。また、自動2輪車が走行している路面の路面摩擦係数が小さいほど第1の車輪にスキッドが発生し易くなる。従って、路面摩擦係数が小さいほど上記緩増圧制御における上記増加勾配を小さくすることが好ましいと考えられる。
加えて、ABS制御実行中(具体的には、第2車輪側ABS制御実行中)における自動2輪車の減速度は、路面摩擦係数が小さいほど小さくなる。以上のことから、第2車輪側ABS制御実行中における自動2輪車の減速度が小さいほど、上記緩増圧制御における上記増加勾配をより小さい値に設定することが好ましいと考えられる。上記構成は、係る知見に基づくものである。
上記本発明に係る連動ブレーキ装置においては、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、前記第2車輪側ABS制御が開始された後、直ちに、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御を開始するように構成されることが好適である。
上述したように、「第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段の上流側の液圧が一時的に増大する現象」は、上記液圧ポンプの作動開始の直後において発生する。従って、上記構成によれば、液圧ポンプの作動開始の直後から連動ブレーキ液圧増大抑制制御が開始されることで、第1車輪側連動ブレーキ液圧における上記一時的な増大の発生がより確実に抑制され得る。この結果、第1の車輪側における不要なスキッドの発生をより確実に抑制することができる。
また、上記本発明に係る連動ブレーキ装置においては、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、前記第2車輪側ABS制御が開始された後であって、前記第1の車輪のスリップの程度が所定の程度を超えたとき、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御を開始するように構成されてもよい。
上述した「第1車輪側連動ブレーキ液圧における一時的な増大」が発生しても、第1の車輪に上記不要なスキッドが発生しない場合もある。この場合、上記連動ブレーキ液圧増大抑制制御を行う必要がない。上記構成によれば、第1の車輪のスリップの程度が所定の程度を超えない場合(例えば、第1の車輪のスリップ量が所定値を超えない場合)、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御が開始されない。従って、連動ブレーキ液圧増大抑制制御が不必要に開始・実行される事態の発生を抑制することができる。
また、上記本発明に係る連動ブレーキ装置においては、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御の開始後、所定の時間が経過した時点で同連動ブレーキ液圧増大抑制制御を終了するように構成されることが好適である。
上述した「第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段の上流側の液圧が一時的に増大する現象」は、一般に、上記液圧ポンプの作動開始の直後から短期間内においてのみ発生する。換言すれば、上記液圧ポンプの作動開始以降、長期間に亘って上記連動ブレーキ液圧増大抑制制御を継続する必要はない。
上記構成は係る知見に基づくものである。即ち、上記構成によれば、連動ブレーキ液圧増大抑制制御の開始後、所定の時間(例えば、或る一定の短時間)が経過した時点で同連動ブレーキ液圧増大抑制制御が終了するから、連動ブレーキ液圧増大抑制制御が不必要に長時間に亘って継続される事態の発生を抑制することができる。
この場合、前記所定の時間は、前記第1の車輪のスリップの程度に応じて変更されることが好ましい。上記連動ブレーキ液圧増大抑制制御における第1車輪側連動ブレーキ液圧の増大抑制の程度が小さい場合、第1の車輪に不要なスキッドが発生する場合も考えられる。この場合、連動ブレーキ液圧増大抑制制御の開始後、上記或る一定の短時間が経過した時点において上記不要なスキッドが残存している場合も想定され得る。このような場合、連動ブレーキ液圧増大抑制制御を更に継続することが好ましいと考えられる。
上記構成は係る知見に基づくものである。即ち、上記構成によれば、例えば、第1の車輪のスリップの程度が所定の程度以下になるまで連動ブレーキ液圧増大抑制制御が継続され得る。従って、第1の車輪に上記不要なスキッドが発生してしまった場合であっても、同スキッドをより確実に消滅させることができる。
また、上記本発明に係る連動ブレーキ制御装置が適用される上記連動ブレーキ装置が、前記第1車輪側独立ブレーキ液圧回路に介装され、前記第1ブレーキ操作部材の操作に応じて発生する液圧を利用して前記第1車輪側独立ブレーキ液圧を調整するための第1車輪側独立ブレーキ液圧調整手段を備えている場合、上記本発明に係る連動ブレーキ制御装置は、前記第1車輪側独立ブレーキ液圧調整手段及び前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段を制御して前記第1車輪側独立ブレーキ液圧及び前記第1車輪側連動ブレーキ液圧を調整することで前記第1の車輪におけるロックの発生を抑制する第1車輪側ABS制御を行う第1車輪側ABS制御手段と、前記第1車輪側ABS制御手段による前記第1車輪側ABS制御の実行中(特に、減圧制御の実行中)は、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段による前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御の実行を禁止する禁止手段とを更に備えることが好適である。
この場合、上記連動ブレーキ装置には、前記第1ブレーキ操作部材と前記第1車輪側独立ブレーキ液圧調整手段との間の前記第1車輪側独立ブレーキ液圧回路にブレーキ液を吐出する液圧ポンプ(第1車輪側液圧ポンプ)が備えられる。ここにおいて、係る第1車輪側液圧ポンプは、第1車輪側ABS制御(の減圧制御)により還流されてくるブレーキ液を貯留するリザーバ(第1車輪側リザーバ)から同ブレーキ液を吸い込むように構成される。
第1車輪側ABS制御の実行中は、第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段は、第1車輪側ABS制御に基づく駆動指示に従って作動している。この状態で、連動ブレーキ液圧増大抑制制御が開始されると、第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段に対して、第1車輪側ABS制御に基づく駆動指示に加えて連動ブレーキ液圧増大抑制制御に基づく駆動指示がなされることになり、この結果、制御の干渉が発生する。係る制御の干渉の発生は好ましくない。
一方、第1車輪側ABS制御の実行中(特に、減圧制御の実行中)は、制動中の自動2輪車の姿勢の安定性維持等の観点から、連動ブレーキ液圧増大抑制制御よりも第1車輪側ABS制御を優先すべきである。上記構成は係る知見に基づくものである。即ち、上記構成によれば、第1車輪側ABS制御の実行中(特に、減圧制御の実行中)は、連動ブレーキ液圧増大抑制制御の実行が禁止されて第1車輪側ABS制御がそのまま継続され得る。これにより、制動中の自動2輪車の姿勢の安定性が維持され得る。
以下、本発明による自動2輪車の連動ブレーキ制御装置の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置10を搭載した自動2輪車の概略構成を示している。図2は、この連動ブレーキ装置10の概略構成を示している。
連動ブレーキ装置10は、自動2輪車の右ハンドルに配設されたブレーキレバーBLと、ブレーキレバーBLに連結されて運転者によるブレーキレバーBLの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するレバーマスタシリンダLMCと、自動2輪車の右ペダルに配設されたブレーキペダルBPと、ブレーキペダルBPに連結されて運転者によるブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するペダルマスタシリンダPMCとを備えている。
連動ブレーキ装置10は、前輪FWに制動力を発生させる前輪側ブレーキと、後輪RWに制動力を発生させる後輪側ブレーキとを備えている。前輪側ブレーキは、ブレーキディスクDfとブレーキキャリパCPfから構成されたディスクブレーキである。図2に示すように、右側キャリパCPfrと左側キャリパCPflからなるブレーキキャリパCPfは、2対の対向ピストン式キャリパであって、3つの前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3と、1つの前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcとを備えている。前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3とブレーキディスクDfとは前輪側独立ブレーキを構成している。前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcとブレーキディスクDfとは前輪側連動ブレーキを構成している。
後輪側ブレーキは、ブレーキディスクDrとブレーキキャリパCPrから構成されたディスクブレーキである。図2に示すように、ブレーキキャリパCPrは、1つの後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrを備えている。後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrとブレーキディスクDrとは後輪側独立ブレーキを構成している。
連動ブレーキ装置10は、ブレーキレバーBL(レバーマスタシリンダLMC)と前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3(前輪側独立ブレーキ)とを接続する前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfと、ブレーキペダルBP(ペダルマスタシリンダPMC)と後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWr(後輪側独立ブレーキ)とを接続する後輪側独立ブレーキ液圧回路Crと、ブレーキペダルBP(ペダルマスタシリンダPMC)と前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWc(前輪側連動ブレーキ)とを接続する前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccとを備えている。
以下、前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfから前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3に供給されるブレーキ液圧を「Fch圧」と称呼し、後輪側独立ブレーキ液圧回路Crから後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrに供給されるブレーキ液圧を「Rch圧」と称呼し、前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccから前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcに供給されるブレーキ液圧を「Cch圧」と称呼する。
この連動ブレーキ装置10は、前輪FW、及び後輪RWに付与されるブレーキ液圧による制動力を制御するためのブレーキ液圧制御装置20を備えている。ブレーキ液圧制御装置20は、図2に示すように、ハイドロリックユニットHUと、反力低減弁RDVと、プロポーショニング弁PVと、メータリング弁MTVとを含んで構成されている。
ハイドロリックユニットHUは、前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVfと、後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVrと、前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcと、モータMと、モータMにより同時に駆動される液圧ポンプHPf,HPrと、リザーバBCf,BCrとを含んでいる。
前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVfは、ハイドロリックユニットHU内の前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfの途中に介装された3ポート2位置型電磁弁である。前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVfは、非励磁状態(図2に示す状態)でレバーマスタシリンダLMCと前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3とを連通し、励磁状態でリザーバBCfと前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3とを連通するようになっている。即ち、励磁状態でFch圧が減圧制御されるようになっている。
後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVrは、ハイドロリックユニットHU内の後輪側独立ブレーキ液圧回路Crの途中に介装された3ポート2位置型電磁弁である。後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVrは、非励磁状態(図2に示す状態)でペダルマスタシリンダPMCと後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrとを連通し、励磁状態でリザーバBCrと後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrとを連通するようになっている。即ち、励磁状態でRch圧が減圧制御されるようになっている。
前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcは、ハイドロリックユニットHU内の前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccの途中に介装された3ポート2位置型電磁弁である。前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcは、非励磁状態(図2に示す状態)でペダルマスタシリンダPMCと前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcとを連通し、励磁状態でリザーバBCrと前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcとを連通するようになっている。即ち、励磁状態でCch圧が減圧制御されるようになっている。
液圧ポンプHPfは、前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVfから還流されてきたリザーバBCf内のブレーキ液を汲み上げ、同汲み上げたブレーキ液を前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVfの上流側(レバーマスタシリンダLMCと前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVfの間の前輪側独立ブレーキ液圧回路Cf)に供給するようになっている。
液圧ポンプHPrは、後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVr、或いは前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcから還流されてきたリザーバBCr内のブレーキ液を汲み上げ、同汲み上げたブレーキ液を後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVr、及び前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcの上流側(ペダルマスタシリンダPMCと後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVrの間の後輪側独立ブレーキ液圧回路Cr、及びペダルマスタシリンダPMCと前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcの間の前輪側連動ブレーキ液圧回路Cc)に供給するようになっている。
モータM(従って、液圧ポンプHPf,HPr)は、後述するABS制御(前輪側ABS制御及び後輪側ABS制御の何れか)が開始されるのと同時に駆動開始されるようになっている。
反力低減弁RDVは、ハイドロリックユニットHUとレバーマスタシリンダLMCとの間の前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfに介装されている。反力低減弁RDVは、液圧ポンプHPfの駆動開始等に伴って発生するハイドロリックユニットHU側の前輪側独立ブレーキ液圧回路Cf内のブレーキ液圧の急激な増大によりブレーキレバーBLを操作している運転者が感じる反力を低減するための周知の反力低減弁であり、この構成の詳細についての説明は省略する。
プロポーショニング弁PVは、ハイドロリックユニットHUと後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrとの間の後輪側独立ブレーキ液圧回路Crに介装されている。プロポーショニング弁PVは、ハイドロリックユニット側の後輪側独立ブレーキ液圧回路Cr内のブレーキ液圧が所定値以上になった場合にRch圧の増大を抑制するための周知のプロポーショニング弁であり、この構成の詳細についての説明は省略する。
メータリング弁MTVは、ハイドロリックユニットHUと前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcとの間の前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccに介装されている。メータリング弁MTVは、ハイドロリックユニット側の前輪側連動ブレーキ液圧回路Cc内のブレーキ液圧が所定値以上になるまでCch圧の増大を抑制するための周知のメータリング弁であり、この構成の詳細についての説明は省略する。
以上、説明した構成により、ブレーキ液圧制御装置20は、前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVf及び前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcが非励磁状態にあるとき、ブレーキレバーBLの操作力に応じたFch圧を前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3に供給でき、ブレーキペダルBPの操作力に応じたCch圧を前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcに供給できるようになっている。
同様に、ブレーキ液圧制御装置20は、後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVrが非励磁状態にあるとき、ブレーキペダルBPの操作力に応じたRch圧を後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWrに供給できるようになっている。
一方、ブレーキ液圧制御装置20は、前輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVf及び前輪側連動ブレーキ液圧調整弁FCVcを制御することで、ブレーキレバーBL、及びブレーキペダルBPの操作にかかわらず上述した減圧制御によりFch圧及びCch圧を適宜減圧できるようになっている。これにより、周知の前輪側ABS制御が達成できるようになっている。
同様に、ブレーキ液圧制御装置20は、後輪側独立ブレーキ液圧調整弁FCVrを制御することで、ブレーキペダルBPの操作にかかわらず上述した減圧制御によりRch圧を適宜減圧できるようになっている。これにより、周知の後輪側ABS制御が達成できるようになっている。
再び、図1を参照すると、この連動ブレーキ装置10は、前輪、後輪FW,RWが所定角度回転する毎にパルスを有する信号をそれぞれ出力する車輪速度センサ31f,31rと、ブレーキレバーBLの操作の有無に応じてオン信号又はオフ信号を出力するブレーキレバースイッチ32と、ブレーキペダルBPの操作の有無に応じてオン信号又はオフ信号を出力するブレーキペダルスイッチ33と、ECU40とを備えている。
ECU40は、CPU41、CPU41が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM、CPU41が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM、及びADコンバータを含むインターフェース等からなるマイクロコンピュータである。
ECU40は、前記車輪速度センサ31f,31r、ブレーキレバースイッチ32、及びブレーキペダルスイッチ33と接続され、CPU41に車輪速度センサ31f,31r等からの信号を供給するとともに、CPU41の指示に応じて、ブレーキ液圧制御装置20の電磁弁(調整弁FCVf,FCVr,FCVc)、及びモータM(即ち、液圧ポンプHPf,HPr)に駆動信号を送出するようになっている。
以上、説明したブレーキ液圧制御装置20(CPU41)は、前記車輪速度センサ31f,31r等からの信号に基づいて、上述した周知の前輪側ABS制御、及び/又は後輪側ABS制御を実行できるようになっている。前輪側ABS制御、及び後輪側ABS制御の詳細についての説明は省略する。
(運転者の意思に反する不要な前輪側スキッドの発生の抑制)
次に、上記本発明の第1実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置10(以下、「本装置」と云うこともある。)が実行する、運転者の意思に反する不要な前輪側スキッドの発生抑制のための「Cch圧増大抑制制御」(連動ブレーキ液圧増大抑制制御)について、図3を参照しながら説明する。
図3は、運転者が、時刻t1にてブレーキレバーBL及びブレーキペダルBPの操作を開始したことによりその後において後輪側ABS制御のみが開始された場合における、Fch圧、Rch圧、及びCch圧のそれぞれの変化の一例を示したタイムチャートである。図3における実線、一点鎖線、破線はそれぞれ、Fch圧、Rch圧、Cch圧の変化を示している。
図3に示した例では、時刻t1以降、レバーマスタシリンダLMCの液圧、及びペダルマスタシリンダPMCの液圧が共に、前輪FWがスキッドを開始する圧力よりも僅かに小さい圧力(以下、「前輪側スキッド開始圧」と称呼する。)に達するまで同じパターンで増大し、その後、上記前輪側スキッド開始圧に維持されている。これにより、Fch圧及びRch圧は時刻t1から増大している。Cch圧が時刻t1よりも僅かに後の時点から増大しているのは、上述したメータリング弁MTVの機能に基づく。
そして、ペダルマスタシリンダPMCの液圧が上記前輪側スキッド開始圧に達する前の時刻t2にて、Rch圧(プロポーショニング弁PVの機能を無視すれば、ペダルマスタシリンダPMCの液圧に等しい)が後輪側ABS制御の開始圧力(<前輪側スキッド開始圧)に達したことで後輪側ABS制御が開始されている。この結果、時刻t2以降、Rch圧が適宜減圧制御されることで後輪側ABS制御が達成されている。
この場合、時刻t2にて、後輪側ABS制御の開始(具体的には、調整弁FCVrの作動によるRch圧の初回の減圧制御の開始)と同時に液圧ポンプHPf,HPrが作動開始する。これにより、上記Rch圧の減圧制御により後輪側リザーバBCrに還流されてきたブレーキ液が調整弁FCVc(及び、調整弁FCVr)の上流側に吐出される。この結果、時刻t2の直後において調整弁FCVcの上流側の液圧が一時的に増大する現象が発生する。
一方、この段階では、前輪側ABS制御は実行されていない。従って、上述した「Cch圧増大抑制制御」が実行されないものと仮定すると、調整弁FCVc(及び、調整弁FCVf)は非励磁状態に維持される。これにより、上記一時的に増大した調整弁FCVcの上流側の液圧はそのままCch圧として前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWcに供給され得る。即ち、時刻t2以降、図3における細い破線で示すように、Cch圧は一時的に上記前輪側スキッド開始圧よりも大きい圧力となる。この結果、運転者の意思に反して前輪FWに不要なスキッドが発生する場合がある。
これに対し、本装置は、「Cch圧増大抑制制御」として、後輪側ABS制御の開始(具体的には、調整弁FCVrの作動によるRch圧の初回の減圧制御の開始)以降(この場合、時刻t2以降)、調整弁FCVcを所定時間に亘って励磁状態に維持することでCch圧の減圧制御を同所定時間に亘って実行する。
この場合、図3における太い破線で示すように、Cch圧は、時刻t2から(時刻t2から上記所定時間が経過した時点である)時刻t3の間に亘って減少し続ける。この結果、上述した「Cch圧が一時的に上記前輪側スキッド開始圧よりも大きい圧力となる」現象が発生しない。従って、運転者の意思に反して前輪FWに不要なスキッドが発生する事態の発生を抑制できる。
時刻t3以降、調整弁FCVrは再び非励磁状態に戻される。この結果、図3における太い破線で示すように、Cch圧は、時刻t3以降、ペダルマスタシリンダPMCの液圧である上記前輪側スキッド開始圧に向けて増大していく。以上が、運転者の意思に反する不要な前輪側スキッドの発生防止のための「Cch圧増大抑制制御」の概要である。
(実際の作動)
次に、以上のように構成された本発明の第1実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置10の実際の作動について、ECU40のCPU41が実行するルーチンをフローチャートにより示した図4〜図7を参照しながら説明する。
CPU41は、図4に示した車輪速度等の算出を行うルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU41はステップ400から処理を開始し、ステップ405に進んで、前輪車輪速度Vwf(前輪FWの外周の速度)と、後輪車輪速度Vwr(後輪RWの外周の速度)を算出する。具体的には、CPU41は車輪速度センサ31f,31rが出力する信号が有するそれぞれのパルスの時間間隔に基づいて前輪車輪速度Vwf、及び後輪車輪速度Vwrをそれぞれ算出する。
次いで、CPU51はステップ410に進み、ブレーキレバースイッチ32、及びブレーキペダルスイッチ33が共に、オフ信号を出力しているか否か(即ち、運転者がブレーキレバーBL、ブレーキペダルBP共に操作していないか否か)を判定し、「Yes」と判定する場合(非制動中)、ステップ415に進んで車体速度Vsoの値を上記算出した前輪車輪速度Vwfの値に設定する。一方、「No」と判定する場合(制動中)、CPU41はステップ420に進んで車体速度Vsoの値を上記算出した前輪、後輪車輪速度Vwf,Vwrのうち大きい方の値に設定する。
続いて、CPU41はステップ425に進み、上記車体速度Vsoと、上記前輪、後輪車輪速度Vwf,Vwrと、同ステップ425内に記載の式に従って、前輪スリップ量SLIPfと、後輪スリップ量SLIPrを求める。次に、CPU41はステップ430に進み、下記(1)式、(2)式に従って、前輪車輪速度Vwf、及び後輪車輪速度Vwrのそれぞれの時間微分値である前輪車輪減速度DVwf、及び後輪車輪減速度DVwrをそれぞれ求める。
DVwf=(Vwf1-Vwf)/Δt ・・・(1)
DVwr=(Vwr1-Vwr)/Δt ・・・(2)
上記(1)式、(2)式において、Vwf1,Vwr1はそれぞれ、前回の本ルーチン実行時におけるステップ405にて算出された前輪、後輪車輪速度Vwf,Vwrであり、ΔtはCPU41の本ルーチンについての実行周期である。
そして、CPU41はステップ435に進み、下記(3)式に従って、車体速度Vsoの時間微分値である車体減速度DVsoを求めた後、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。下記(3)式において、Vso1は、前回の本ルーチン実行時におけるステップ415、或いはステップ420にて算出された車体速度Vsoであり、ΔtはCPU41の本ルーチンについての実行周期である。
DVso=(Vso1-Vso)/Δt ・・・(3)
また、CPU41は、図5に示した前輪側ASB制御を実行するルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU41はステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで、フラグABSfの値が「0」であるか否かを判定する。ここで、フラグABSfは、その値が「0」のとき前輪側ABS制御が実行されていないことを示し、その値が「1」のとき前輪側ABS制御が実行されていることを示す。
いま、前輪側ABS制御が実行されておらず、且つ、前輪側ABS制御開始条件が成立していないものとすると、フラグABSfの値は「0」になっているから、CPU41はステップ505にて「Yes」と判定してステップ510に進み、前輪側ABS制御開始条件が成立しているか否かを判定する。
ここにおいて、前輪側ABS制御開始条件は、本例では、「SLIPf > SLIPth、且つ、DVwf>DVwth」である。SLIPfとしては先のステップ425にて算出されている最新値が使用され、DVwfとしては先のステップ430にて算出されている最新値が使用される。SLIPth、DVwthはそれぞれ所定の定数である。
現時点では、前輪側ABS制御開始条件が成立していないから、CPU41はステップ510にて「No」と判定してステップ595に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。以降、CPU41は、前輪側ABS制御開始条件が成立しない限りにおいて、ステップ500、505、510の処理を繰り返し実行する。
次に、この状態にて、運転者がブレーキレバーBLを操作することにより、前輪側ABS制御開始条件が成立したものとすると、CPU41はステップ510に進んだとき「Yes」と判定してステップ515に進み、フラグABSfの値を「0」から「1」に変更する。
続いて、CPU41はステップ520に進み、前輪側ABS制御の実行指示を行い、続くステップ525にてモータM(従って、液圧ポンプHPf,HPr)の駆動指示を行った後、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、前輪側ABS制御が実行開始されるとともに液圧ポンプHPf,HPrが駆動開始される。即ち、調整弁FCVf,調整弁FCVcが制御されてFch圧、及びCch圧の減圧制御が適宜実行されていく。加えて、調整弁FCVfの作動によるFch圧の減圧制御によりリザーバBCfに還流されてきたブレーキ液が調整弁FCVfの上流側に戻されるとともに、調整弁FCVcの作動によるCch圧の減圧制御によりリザーバBCrに還流されてきたブレーキ液が調整弁FCVc(及び調整弁FCVr)の上流側に戻される。
なお、現時点にて、後述するCch圧増大抑制制御が実行中(後述するフラグCCH=1)である場合、調整弁FCVcに対する駆動指示について、Cch圧増大抑制制御による駆動指示よりも前輪側ABS制御による駆動指示が優先する。これにより、調整弁FCVcについての(従って、Cch圧についての)制御の干渉の発生が防止される。
以降、CPU41はステップ505に進んだとき「No」と判定してステップ530に進むようになり、同ステップ530にて前輪側ABS制御終了条件が成立しているか否かをモニタする。前輪側ABS制御終了条件は、例えば、ブレーキレバースイッチ32がオフ信号を出力しているとき(即ち、運転者がブレーキレバーBLの操作を終了したとき)、或いは、調整弁FCVf,FCVcが所定時間以上継続して非励磁状態に維持されているときに成立する。
現時点は前輪側ABS制御開始条件が成立した直後であるから、CPU41はステップ530にて「No」と判定する。以降、ステップ530の前輪側ABS制御終了条件が成立しない限りにおいて、CPU41はステップ500、505、530の処理を繰り返し実行する。
そして、前輪側ABS制御終了条件が成立したものとすると、CPU41はステップ530に進んだとき「Yes」と判定してステップ535に進み、フラグABSfの値を「1」から「0」に変更し、続くステップ540にて前輪側ABS制御の終了指示を行い、続くステップ545にてモータM(従って、液圧ポンプHPf,HPr)の停止指示を行った後、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、前輪側ABS制御が終了するともに液圧ポンプHPf,HPrが停止する。以降、フラグABSfの値が「0」になっているから、CPU41はステップ505にて「Yes」と判定するようになり、ステップ510にて上記前輪側ABS制御開始条件が成立しているか否かをモニタするようになる。このようにして、本ルーチンの繰り返し実行により、フラグABSfの値が前輪側ABS制御の実行の有無に応じて「1」又は「0」に逐次設定・変更されていく。
また、CPU41は、図6に示した後輪側ASB制御を実行するルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。この図6のルーチンは、上述した図5のルーチンに類似していて、図6のルーチンにおけるステップ605〜645はそれぞれ、図5のルーチンにおけるステップ505〜545に対応している。従って、図6のルーチンの各ステップの詳細な説明は省略する。
フラグABSrは、その値が「0」のとき後輪側ABS制御が実行されていないことを示し、その値が「1」のとき後輪側ABS制御が実行されていることを示す。後輪側ABS制御開始条件は、本例では、「SLIPr
> SLIPth、且つ、DVwr>DVwth」である。SLIPrとしては先のステップ425にて算出されている最新値が使用され、DVwrとしては先のステップ430にて算出されている最新値が使用される。SLIPth、DVwthはそれぞれ、上述した前輪側ABS制御開始条件に使用される値と同じである。
後輪側ABS制御開始条件が成立すると、スリップ620、625の実行により、後輪側ABS制御が実行開始されると同時に液圧ポンプHPf,HPrが駆動開始される。これにより、調整弁FCVrが制御されてRch圧の減圧制御が適宜実行されていくとともに、調整弁FCVrの作動によるRch圧の減圧制御によりリザーバBCrに還流されてきたブレーキ液が調整弁FCVc(及び調整弁FCVr)の上流側に戻される。
また、後輪側ABS制御終了条件は、例えば、ブレーキペダルスイッチ33がオフ信号を出力しているとき(即ち、運転者がブレーキペダルBPの操作を終了したとき)、或いは、調整弁FCVrが所定時間以上継続して非励磁状態に維持されているときに成立する。以上、本ルーチンの繰り返し実行により、フラグABSrの値が後輪側ABS制御の実行の有無に応じて「1」又は「0」に逐次設定・変更されていく。
また、CPU41は、図7に示したCch圧増大抑制制御を実行するルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU41はステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで、フラグABSfの値が「0」であるか否かを判定し、「No」と判定する場合(前輪側ABS制御が実行されている場合)、ステップ795に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、前輪側ABS制御が実行されている場合、Cch圧増大抑制制御は開始されない。これにより、調整弁FCVcについての(従って、Cch圧についての)制御の干渉の発生が防止される。以下、前輪側ABS制御が開始されないものとして説明を続ける。
一方、前輪側ABS制御が実行されていない場合、CPU41はステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、フラグCCHの値が「0」であるか否かを判定する。ここで、フラグCCHは、その値が「1」のときCch圧増大抑制制御が実行されていることを示し、その値が「0」のときCch圧増大抑制制御が実行されていないことを示す。
いま、Cch圧増大抑制制御が実行されていないものとすると、CPU41はステップ710にて「Yes」と判定してステップ715に進んでフラグABSrの値が「0」から「1」に変化したか否か(即ち、後輪側ABS制御が開始された直後であるか否か)を判定し、「No」と判定する場合、ステップ795に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。以降、CPU41は、ステップ705、710、715の処理を繰り返し実行する。このステップ715の条件は、Cch圧増大抑制制御の開始条件に対応する。
次に、この状態にて、後輪側ABS制御が開始されて図6のステップ615が実行された場合(図3における時刻t2を参照。即ち、Cch増大抑制制御の開始条件が成立した場合)について説明する。この場合、CPU41はステップ715に進んだとき「Yes」と判定してステップ720に進み、フラグCCHの値を「0」から「1」に変更する。
続いて、CPU41はステップ725に進んで、Cch圧増大抑制制御としてのCch圧の減圧制御の実行指示を行い、続くステップ730にてECU40のROMに内蔵されたタイマにより計時される経過時間Tをリセットした後、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、Cch圧増大抑制制御が実行開始される(図3における時刻t2を参照。)。即ち、調整弁FCVcが励磁状態に維持されることでCch圧の減圧制御が開始・継続される。また、経過時間Tは、Cch圧増大抑制制御が開始されてからの経過時間を表す。
以降、フラグCCHの値は「1」になっているから、CPU41は、ステップ705からステップ710に進んだとき「No」と判定してステップ735に進み、Cch圧増大抑制制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。
このCch圧増大抑制制御の終了条件は、「経過時間Tが所定の一定時間Tref以上であって、且つ、前輪スリップ量SLIPfが所定の閾値SLIPend以下であること」である。即ち、Cch圧増大抑制制御が継続される時間(前記「所定時間」)は、上記一定時間Tref以上であって、前輪スリップ量SLIPfの程度に応じて変更される。なお、上記閾値SLIPend<SLIPth(上述したABS制御開始条件として使用される定数)である。
現時点は、Cch圧増大抑制制御が開始された直後であって経過時間T<Trefであるから、このCch圧増大抑制制御の終了条件は成立していない。従って、CPU41はステップ735にて「No」と判定してステップ795に直ちに進む。以降、CPU41は、Cch圧増大抑制制御の終了条件が成立しない限りにおいて、ステップ705、710、735の処理を繰り返し実行する。
そして、Cch圧増大抑制制御の終了条件が成立したものとすると(図3における時刻t3を参照)、CPU41はステップ735に進んだとき「Yes」と判定してステップ740に進み、フラグCCHの値を「1」から「0」に変更し、続くステップ745にて、Cch圧増大抑制制御としてのCch圧の減圧制御の終了指示を行った後、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、Cch圧増大抑制制御が終了する(図3における時刻t3を参照。)。即ち、調整弁FCVcが励磁状態から非励磁状態に変更されることでCch圧の減圧制御が終了する。以降、フラグCCHの値が「0」になっているから、CPU41はステップ710からステップ715に進むようになり、Cch圧増大抑制制御の開始条件が成立したか否かのモニタを再び開始する。
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置は、ブレーキレバーBL(レバーマスタシリンダLMC)と前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3(前輪側独立ブレーキ)とを接続する調整弁FCVfが介装された前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfと、ブレーキペダルBP(ペダルマスタシリンダPMC)と後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWr(後輪側独立ブレーキ)とを接続する調整弁FCVrが介装された後輪側独立ブレーキ液圧回路Crと、ブレーキペダルBP(ペダルマスタシリンダPMC)と前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダWc(前輪側連動ブレーキ)とを接続する調整弁FCVcが介装された前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccとを備えている。液圧ポンプHPf,HPrは、前輪側ABS制御及び後輪側ABS制御の何れかが開始されるのと同時に駆動開始される。
前輪側ABS制御が実行されていない状態(即ち、前輪側にスキッドが発生していない状態)で後輪側ABS制御が開始されたとき、Cch圧の減圧制御を所定時間継続的に行うことで、液圧ポンプHPrの駆動開始に伴う上述した「Cch圧が一時的に増大する」現象の発生を抑制できる。従って、運転者の意思に反して前輪FWに不要なスキッドが発生する事態の発生を抑制できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含んだ連動ブレーキ装置について説明する。この第2実施形態は、液圧調整手段として上述した3ポート2位置型電磁弁(調整弁FCVf,FCVr,FCVc)に代えて常開電磁開閉弁と常閉電磁開閉弁とを使用する点、並びに、Cch圧増大抑制制御として減圧制御に代えて緩増圧制御を実行する点のみが上記第1実施形態と異なっている。従って、以下、係る相違点を中心に説明する。
図8は、第2実際形態に係る連動ブレーキ装置10の概略構成を示している。図8に示すように、ハイドロリックユニットHU内の前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfの途中には、上述した調整弁FCVfに代えて常開電磁開閉弁である増圧弁FCVUfと常閉電磁開閉弁である減圧弁FCVDfとが介装されている。
これにより、増圧弁FCVUfと減圧弁FCVDfとが共に非励磁状態(図2に示す状態)にある場合、レバーマスタシリンダLMCと前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3とが連通されるようになっている。即ち、Fch圧が増圧制御されるようになっている。増圧弁FCVUfが励磁状態にあり減圧弁FCVDfが非励磁状態にある場合、Fch圧が保持される(即ち、Fch圧が保持制御される)ようになっている。加えて、増圧弁FCVUfと減圧弁FCVDfとが共に励磁状態にある場合、リザーバBCfと前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダWf1,Wf2,Wf3とが連通されるようになっている。即ち、Fch圧が減圧制御されるようになっている。
同様に、ハイドロリックユニットHU内の後輪側独立ブレーキ液圧回路Crの途中には、上述した調整弁FCVrに代えて常開電磁開閉弁である増圧弁FCVUrと常閉電磁開閉弁である減圧弁FCVDrとが介装されている。ハイドロリックユニットHU内の前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccの途中には、上述した調整弁FCVcに代えて常開電磁開閉弁である増圧弁FCVUcと常閉電磁開閉弁である減圧弁FCVDcとが介装されている。これにより、上述したFch圧と同様、Rch圧、Cch圧についても増圧制御・保持制御・減圧制御が実行できるようになっている。
第2実施形態に係る連動ブレーキ制御装置は、Cch圧増大抑制制御として、Cch圧増大抑制制御の開始条件(フラグABSrの値が「0」から「1」に変化したこと)の成立後、Cch圧の緩増圧制御を所定時間だけ行う。
図9は、図3に示した例と同じ状況において、Cch圧増大抑制制御として、時刻t12〜時刻t13の間、Cch圧の減圧制御に代えてCch圧の緩増圧制御を行った場合における、Fch圧、Rch圧、及びCch圧のそれぞれの変化の一例を示したタイムチャートである。図9においても図3と同様、実線、一点鎖線、破線はそれぞれ、Fch圧、Rch圧、Cch圧の変化を示している。また、図9における時刻t11、t12、t13はそれぞれ、図3における時刻t1、t2、t3に対応している。
図9に示すように、Cch圧の緩増圧制御とは、Cch圧の保持制御と増圧制御を交互に実行することで(即ち、Cch圧を保持する期間を設けながら)Cch圧を緩やかに増大させる制御である。図9から理解できるように、Cch圧増大抑制制御としてCch圧の減圧制御に代えてCch圧の緩増圧制御を行っても、上述した「Cch圧が一時的に上記前輪側スキッド開始圧よりも大きい圧力となる」現象が発生しない。従って、運転者の意思に反して前輪FWに不要なスキッドが発生する事態の発生を抑制できる。
(第2実施形態の実際の作動)
以下、第2実施形態に係る連動ブレーキ制御装置の実際の作動について説明する。この装置のCPU41は、第1実施形態のCPU41が実行する図4〜図7に示したルーチンのうち図4〜図6のルーチンを実行するとともに、図7に示したルーチンに代えて、図7に対応する図10にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎にそれぞれ繰り返し実行する。
ここで、Cch圧増大抑制制御を実行する図10に示したルーチンのステップ1005〜1045は、図7に示したルーチンのステップ705〜745にそれぞれ対応している。特に、図10に示したルーチンのステップ1005〜1020、ステップ1030〜1040は、図7に示したルーチンのステップ705〜720、ステップ730〜740とそれぞれ同じである。従って、これらのステップについての詳細な説明は省略する。
図10のルーチンの図7のルーチンに対する相違点として、ステップ1020とステップ1025の間に、ステップ1023が挿入された点、ステップ1025にて調整弁FCVcによるCch圧の減圧制御に代えて増圧弁FCVUc及び減圧弁FCVDcによるCch圧の緩増圧制御の実行指示がなされる点、並びに、ステップ1045にてCch圧の減圧制御に代えてCch圧の緩増圧制御の終了指示がなされる点が挙げられる。
ステップ1023では、図4のステップ435にて計算されている車体減速度DVsoの最新値からCch圧の緩増圧制御におけるCch圧の(平均的な)増加勾配が決定される。これにより、車体減速度DVsoが小さいほど(従って、路面摩擦係数が小さいほど)上記増加勾配がより小さい値に決定される。換言すれば、前輪FWのスキッドが発生しない範囲内で増加勾配をより大きい値に決定できる。
以上、説明したように、本発明の第2実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置によれば、Cch圧増大抑制制御として減圧制御に代えて緩増圧制御が実行される。これによっても、運転者の意思に反して前輪FWに不要なスキッドが発生する事態の発生を抑制できる。
加えて、Cch圧増大抑制制御中において減圧制御に代えて緩増圧制御が実行されることは、Cch圧増大抑制制御中におけるCch圧が、運転者によるブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧(即ち、ペダルマスタシリンダPMCの液圧)により近い値になることを意味する。更には、上述したように、前輪FWのスキッドが発生しない範囲内でCch圧の緩増圧制御における増加勾配がより大きい値に決定されることにより、Cch圧増大抑制制御中におけるCch圧を、前輪FWのスキッドが発生しない範囲内でペダルマスタシリンダPMCの液圧により一層近づけることができる。以上のことから、運転者が感じるブレーキペダルBPの操作フィーリングの悪化を可及的に抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含んだ連動ブレーキ装置について説明する。この第3実施形態は、Cch圧増大抑制制御としての緩増圧制御の開始条件及び終了条件のみが上記第2実施形態と異なっている。従って、以下、係る相違点を中心に説明する。なお、第3実際形態における連動ブレーキ装置10の構成は、図8に示した第2実施形態のものと同じである。
(第3実施形態の実際の作動)
以下、第3実施形態に係る連動ブレーキ制御装置の実際の作動について説明する。この装置のCPU41は、第2実施形態のCPU41が実行する図4〜図6のルーチンを実行するとともに、図10に示したルーチンに代えて、図10に対応する図11にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎にそれぞれ繰り返し実行する。
ここで、Cch圧増大抑制制御を実行する図11に示したルーチンのステップ1105〜1125、ステップ1135〜1145は、図10に示したルーチンのステップ1005〜1025、ステップ1035〜1045にそれぞれ対応している。特に、図11に示したルーチンのステップ1105、1110、1120、1123、1140、1145は、図10に示したルーチンのステップ1005、1010、1020、1023、1040、1045とそれぞれ同じである。従って、これらのステップについての詳細な説明は省略する。
図11のルーチンの図10のルーチンに対する相違点として、ステップ1030に対応するステップが削除された点、ステップ1115のCch圧増大抑制制御(即ち、緩増圧制御)の開始条件、及びステップ1135のCch圧増大抑制制御の終了条件が変更された点が挙げられる。
ステップ1115に示すように、第3実施形態に係る連動ブレーキ制御装置は、Cch圧増大抑制制御の開始条件として、「フラグABSrの値が「0」から「1」に変化したこと(即ち、後輪側ABS制御が開始したこと)」に代えて、「後輪側ABS制御開始後(ABSr=1)であって、前輪スリップ量SLIPf≧閾値SLIPstartであること」を採用する。
ここで、上記閾値SLIPend<上記閾値SLIPstart<SLIPth(上述したABS制御開始条件として使用される定数)の関係がある。ステップ1115におけるSLIPfとしては、図4のステップ425にて計算されているSLIPfの最新値が使用される。
また、ステップ1135に示すように、第3実施形態に係る連動ブレーキ制御装置は、Cch圧増大抑制制御の終了条件として、図10のステップ1035の条件から「T≧Tref」を除いた条件「SLIPf≦SLIPend」のみが採用される。
以上、説明したように、本発明の第3実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置によっても、Cch圧増大抑制制御として緩増圧制御が実行されることで、運転者の意思に反して前輪FWに不要なスキッドが発生する事態の発生を抑制できる。
更に、Cch増大抑制制御は、後輪側ABS制御が開始されても、前輪スリップ量SLIPfが閾値SLIPstart以上とならない限りにおいて開始されない。これにより、Cch増大抑制制御が不必要に開始・実行される事態の発生を抑制することができる。
また、実行されているCch増大抑制制御は、前輪スリップ量SLIPfが閾値SLIPend以下となった時点で、上記所定の一定時間Trefの経過を待つことなく直ちに終了する。これにより、Cch圧増大抑制制御が不必要に継続される事態の発生を抑制することができる。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第1実施形態においては、Cch圧増大抑制制御としてCch圧の減圧制御を実行しているが、Cch圧の保持制御と減圧制御を交互に実行することで(即ち、Cch圧を保持する期間を設けながら)Cch圧を緩やかに減少させる制御(Cch圧の緩減圧制御)を実行してもよい。
また、上記第2、第3実施形態においては、Cch圧増大抑制制御としてCch圧の緩増圧制御を実行しているが、Cch圧の保持制御、又はCch圧の減圧制御を実行してもよい。
また、上記第1、第2実施形態においては、Cch圧増大抑制制御が継続される時間(前記「所定時間」)が、上記一定時間Tref以上であって前輪スリップ量SLIPfの程度に応じて変更されるように構成されているが、Cch圧増大抑制制御が継続される時間を上記一定時間Trefに固定してもよい。
また、上記第3実施形態においては、Cch圧増大抑制制御の開始条件として、「後輪側ABS制御開始後(ABSr=1)であって、前輪スリップ量SLIPf≧閾値SLIPstartであること」が採用されているが、この条件に、「後輪側ABS制御開始後、所定時間経過前であること」を加えても良い。
また、上記第1〜第3実施形態においては、前輪側ABS制御実行中(ABSf=1)では常に、Cch圧増大抑制制御が開始されないように構成されているが(図7のステップ705、図10のステップ1005、図11のステップ1105を参照)、前輪側ABS制御実行中(ABSf=1)であって同前輪側ABS制御に基づくCch圧の減圧制御が実行されている期間だけCch圧増大抑制制御が開始されないように構成されてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態においては、Cch圧増大抑制制御終了後は、Cch圧の増圧制御が実行されているが、Cch圧増大抑制制御終了後において、第2、第3実施形態でのCch圧の緩増圧制御における増加勾配よりも大きい増加勾配を有する緩増圧制御を実行してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態においては、ブレーキレバーBLと前輪側独立ブレーキ(Wf1,Wf2,Wf3)とを接続する前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfと、ブレーキペダルBPと後輪側独立ブレーキ(Wr)とを接続する後輪側独立ブレーキ液圧回路Crと、ブレーキペダルBPと前輪側連動ブレーキ(Wc)とを接続する前輪側連動ブレーキ液圧回路Ccとを備えているが、図12に示すように、ブレーキレバーBLと前輪側独立ブレーキ(Wf1,Wf2,Wf3,Wf4)とを接続する前輪側独立ブレーキ液圧回路Cfと、ブレーキペダルBPと後輪側独立ブレーキ(Wr)とを接続する後輪側独立ブレーキ液圧回路Crと、ブレーキレバーBLと後輪側連動ブレーキWcとを接続する後輪側連動ブレーキ液圧回路Ccとを備えるように構成してもよい。
本発明の第1実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置を搭載した自動2輪車の概略構成図である。 図1に示した連動ブレーキ装置の概略構成図である。 後輪側ABS制御のみが開始された場合におけるFch圧、Rch圧、及びCch圧のそれぞれの変化を、Cch圧増大抑制制御としてのCch圧の減圧制御が実行される場合と実行されない場合とで比較しながら示したタイムチャートである。 図1に示したCPUが実行する車輪速度等を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する前輪側ABS制御の実行を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する後輪側ABS制御の実行を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行するCch圧増大抑制制御の実行を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る連動ブレーキ制御装置を含む連動ブレーキ装置の概略構成図である。 後輪側ABS制御のみが開始された場合におけるFch圧、Rch圧、及びCch圧のそれぞれの変化を、Cch圧増大抑制制御としてのCch圧の緩増圧制御が実行される場合と実行されない場合とで比較しながら示したタイムチャートである。 本発明の第2実施形態に係る連動ブレーキ装置が実行するCch圧増大抑制制御の実行を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係る連動ブレーキ装置が実行するCch圧増大抑制制御の実行を行うためのルーチンを示したフローチャートである。 本発明の実施形態の変形例に係る連動ブレーキ装置の概略構成図である。 本発明が適用される、背景技術に係る連動ブレーキ装置の概略構成図である。
符号の説明
10…連動ブレーキ装置、20…ブレーキ液圧制御装置、31f,31r…車輪速度センサ、40…ECU、41…CPU、BL…ブレーキレバー、BP…ブレーキペダル、HU…ハイドロリックユニット、FCVf,FCVr,FCVc…調整弁、FCVUf,FCVUr,FCVUc…増圧弁、FCVDf,FCVDr,FCVDc…減圧弁、HPf,HPr…液圧ポンプ、BCf,BCr…リザーバ、Wf1,Wf2,Wf3,Wf4…前輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダ、Wr…後輪側独立ブレーキ用ホイールシリンダ、Wc…前輪側連動ブレーキ用ホイールシリンダ

Claims (5)

  1. 第1の車輪(FW)に制動力を付与するために運転者により操作される第1ブレーキ操作部材(BL)と、
    第1車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cf)を介して前記第1ブレーキ操作部材(BL)と接続された、同第1車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cf)から供給される液圧である第1車輪側独立ブレーキ液圧(Fch圧)に応じた制動力を前記第1の車輪(FW)に発生させる第1車輪側独立ブレーキ(Wf1,Wf2,Wf3,Wf4,Df)と、
    前記第1ブレーキ操作部材(BL)と前記第1車輪側独立ブレーキ(Wf1,Wf2,Wf3)との間の前記第1車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cf)に介装され、同第1ブレーキ操作部材(BL)の操作に応じて発生する液圧を利用して前記第1車輪側独立ブレーキ液圧(Fch圧)を調整するための第1車輪側独立ブレーキ液圧調整手段(FCVf,FCVUf,FCVDf)と、
    第2の車輪(RW)に制動力を付与するために前記運転者により操作される第2ブレーキ操作部材(BP)と、
    第2車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cr)を介して前記第2ブレーキ操作部材(BP)と接続された、同第2車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cr)から供給される液圧である第2車輪側独立ブレーキ液圧(Rch圧)に応じた制動力を前記第2の車輪(RW)に発生させる第2車輪側独立ブレーキ(Wr,Dr)と、
    前記第2ブレーキ操作部材(BP)と前記第2車輪側独立ブレーキ(Wr)との間の前記第2車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cr)に介装され、同第2ブレーキ操作部材(BP)の操作に応じて発生する液圧を利用して前記第2車輪側独立ブレーキ液圧(Rch圧)を調整するための第2車輪側独立ブレーキ液圧調整手段(FCVr,FCVUr,FCVDr)と、
    第1車輪側連動ブレーキ液圧回路(Cc)を介して前記第2ブレーキ操作部材(BP)と接続された、同第1車輪側連動ブレーキ液圧回路(Cc)から供給される液圧である第1車輪側連動ブレーキ液圧(Cch圧)に応じた制動力を前記第1の車輪(FW)に発生させる第1車輪側連動ブレーキ(Wc,Df)と、
    前記第2ブレーキ操作部材(BP)と前記第1車輪側連動ブレーキ(Wc)との間の前記第1車輪側連動ブレーキ液圧回路(Cc)に介装され、同第2ブレーキ操作部材(BP)の操作に応じて発生する液圧を利用して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧(Cch圧)を調整するための第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段(FCVc,FCVUc,FCVDc)と、
    前記第1ブレーキ操作部材(BL)と前記第1車輪側独立ブレーキ液圧調整手段(FCVf)との間の前記第1車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cf)、前記第2ブレーキ操作部材(BP)と前記第2車輪側独立ブレーキ液圧調整手段(FCVr)との間の前記第2車輪側独立ブレーキ液圧回路(Cr)、及び前記第2ブレーキ操作部材(BP)と前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段(FCVc)との間の前記第1車輪側連動ブレーキ液圧回路(Cc)にブレーキ液を吐出する液圧ポンプ(HPr)と、
    を備えた自動2輪車用の連動ブレーキ装置に適用され、
    前記第1車輪側独立ブレーキ液圧調整手段(FCVf)及び前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段(FCVc)を制御して前記第1車輪側独立ブレーキ液圧(Fch圧)及び前記第1車輪側連動ブレーキ液圧(Cch圧)を調整することで前記第1の車輪(FW)におけるロックの発生を抑制する第1車輪側アンチスキッド制御を行う第1車輪側アンチスキッド制御手段(41,520)と、
    前記第2車輪側独立ブレーキ液圧調整手段(FCVr)を制御して前記第2車輪側独立ブレーキ液圧(Rch圧)を調整することで前記第2の車輪(RW)におけるロックの発生を抑制する第2車輪側アンチスキッド制御を行う第2車輪側アンチスキッド制御手段(41,620)と、
    前記第1車輪側アンチスキッド制御及び前記第2車輪側アンチスキッド制御の何れかが開始されたとき、前記液圧ポンプ(HPr)を駆動するための指示を行う液圧ポンプ駆動手段(41,625)と、
    を備えた自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置であって、
    前記第1車輪側アンチスキッド制御が実行されていない状態において前記第2車輪側アンチスキッド制御が開始されたことに基づいて、前記第1車輪側連動ブレーキ液圧調整手段(FCVc)を制御して前記第1車輪側連動ブレーキ液圧(Cch圧)を減少させる減圧制御である連動ブレーキ液圧増大抑制制御を行う連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段(41,図7、図10、図11のルーチン)を更に備えた自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置。
  2. 請求項1に記載の自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置において、
    前記第1の車輪は前輪(FW)であり、前記第2の車輪は後輪(RW)である自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置において、
    前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、
    前記第2車輪側アンチスキッド制御が開始された後、直ちに、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御を開始する(41,715,1015)ように構成された自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置において、
    前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、
    前記第2車輪側アンチスキッド制御が開始された後であって、前記第1の車輪のスリップの程度(SLIPf)が所定の程度(SLIPstart)を超えたとき、前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御を開始する(41,1115)ように構成された自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置において、
    前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御手段は、
    前記連動ブレーキ液圧増大抑制制御の開始後、所定の時間が経過した時点で同連動ブレーキ液圧増大抑制制御を終了する(41,735,1035)ように構成され
    前記所定の時間は、前記第1の車輪のスリップの程度に応じて変更される(41,735,1035)ように構成された自動2輪車用の連動ブレーキ制御装置。
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