(第1実施形態)以下、本発明を具体化した制動力配分制御装置の第1実施形態について図1〜図13に従って説明する。
図1は、本実施形態が適用されるブレーキ液圧制御装置の全体構成図である。同図に示されるように、車両前方右側の車輪FR、前方左側の車輪FL、後方右側の車輪RR、後方左側の車輪RLには、それぞれホイールシリンダ21,22,23,24が装着されている。車輪FR及びRL用のホイールシリンダ21,24は、第1の液圧配管P1を介してタンデム型のマスタシリンダ11の一方の圧力室(図示せず)に接続され、車輪FL及びRR用のホイールシリンダ22,23は、第1の液圧配管P1とは液密的に分離された第2の液圧配管P2を介してマスタシリンダ11の他方の圧力室(図示せず)に接続され、いわゆるX配管(ダイアゴナル配管)を構成している。前輪FR,FLは駆動輪であり、後輪RL,RRは従動輪であるが、本発明における駆動方式はこれに限定されるものではない。
マスタシリンダ11は、バキュームブースタ12を介してブレーキペダル14に連結され、マスタリザーバ13に接続されている。ブレーキペダル14の操作に応じてバキュームブースタ12を介してマスタシリンダ11が倍力駆動され、マスタリザーバ13内のブレーキ液が昇圧されて第1及び第2の液圧配管P1,P2にマスタシリンダ液圧が出力される。
第1の液圧配管P1には、2つの常開型の2ポート2位置の電磁開閉弁33a及び34a、2つの常閉型の2ポート2位置の電磁開閉弁33b及び34b、補助リザーバ32a、液圧ポンプ31aなどが配設されている。開閉弁33a,34aは、それぞれホイールシリンダ21,24及びマスタシリンダ11間に配設され、開閉弁33b,34bは、それぞれホイールシリンダ21,24及び補助リザーバ32a間に配設されている。補助リザーバ32aは、マスタリザーバ13とは独立して設けられ、アキュムレータということもでき、ピストンとスプリングを備え、所定の容量のブレーキ液を貯蔵し得るように構成されている。液圧ポンプ31aは、その吸入側が補助リザーバ32aに接続され、その吐出側が開閉弁33a,34a及びマスタシリンダ11間に接続されている。この液圧ポンプ31aは、電動モータ37によって駆動され、補助リザーバ32a内のブレーキ液を吸入し、開閉弁33a,34a及びマスタシリンダ11間に吐出する。
一方、第2の液圧配管P2にも同様に、2つの常開型の2ポート2位置の電磁開閉弁35a及び36a、2つの常閉型の2ポート2位置の電磁開閉弁35b及び36b、補助リザーバ32b、液圧ポンプ31bなどが配設されている。開閉弁35a,36aは、それぞれホイールシリンダ22,23及びマスタシリンダ11間に配設され、開閉弁35b,36bは、それぞれホイールシリンダ22,23及び補助リザーバ32b間に配設されている。補助リザーバ32bも、マスタリザーバ13とは独立して設けられ、所定の容量のブレーキ液を貯蔵し得るように構成されている。液圧ポンプ31bは、その吸入側が補助リザーバ32bに接続され、その吐出側が開閉弁35a,36a及びマスタシリンダ11間に接続されている。この液圧ポンプ31bも、電動モータ37によって駆動される。
上述の開閉弁33a〜36a,33b〜36bは、その通電・非通電の時間間隔が調整されることで、各ホイールシリンダ21〜24のブレーキ液圧を個別に減圧(パルス減圧)、保持、及び増圧(パルス増圧)するもので、液圧制御弁として機能する。
車輪FR,FL,RR,RLには、それぞれ車輪速度センサ41,42,43,44が配設され、これらが電子制御装置40に接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置40に入力されるように構成されている。
また、ブレーキペダル14が踏みこまれたときにオンとなるストップスイッチ45、車両の加速度を検出する加速度センサ46が電子制御装置40に接続されており、その検出信号等が電子制御装置40に入力されるように構成されている。
電子制御装置40は、バス47aを介して相互に接続されたCPU47b、ROM47c、RAM47d、タイマ47e、入力インターフェース回路47f及び出力インターフェース回路47g等から成るマイクロコンピュータ47を備えている。上記車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45、及び加速度センサ46の出力信号は、増幅回路48a〜48fを介してそれぞれ入力インターフェース回路47fからCPU47bに入力されるように構成されている。また、出力インターフェース回路47gからは駆動回路49a〜49iを介して電動モータ37及び電磁開閉弁(液圧制御弁)33a〜36a,33b〜36bにそれぞれ制御信号が出力されるように構成されている。
マイクロコンピュータ47において、CPU47bはROM47cに予め記憶された制御プログラム及び初期データ等に従って、各種演算処理を実行する。また、RAM47dはCPU47bによる演算結果等を一時的に記憶する。
上記電動モータ37、電磁開閉弁(液圧制御弁)33a〜36a,33b〜36bは、上記電子制御装置40によって駆動制御され、後述するアンチスキッド制御、制動力配分制御及び制動力配分バックアップ制御が行われる。アンチスキッド制御は、ブレーキペダル操作時に、車輪のロックを防止するように、各車輪に付与する制動力をそれぞれ制御するものである。制動力配分制御は、ブレーキペダル操作時に後輪の制動力を前輪の制動力に対し所定の関係に調整するもので、後輪の制動力の上昇勾配を抑制することにより後輪の早期ロックを防止する。
次に、本実施形態における制動力の制御態様について図3〜図13に基づき説明する。図3は、制動力制御のためのメインルーチンを示すフローチャートであり、この処理は所定時間(例えば、6ms[ミリ秒])ごとの定時割り込みで実施される。
処理がこのルーチンに移行すると、まずステップ101においてCPU47bは、前記車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45及び加速度センサ46の検出信号等を読み込み、ステップ102に移行する。
ステップ102においてCPU47bは、上記車輪速度センサ41〜44の検出信号に基づき各車輪の車輪速度VwFR,VwFL,VwRR,VwRLを演算し、ステップ103に移行する。
ステップ103においてCPU47bは、各車輪の車輪速度VwFR,VwFL,VwRR,VwRLを微分し、各車輪の車輪加速度DVwFR,DVwFL,DVwRR,DVwRLを演算する。
次いで、CPU47bはステップ104に移行して、各車輪速度VwFR,VwFL,VwRR,VwRLに基づき車両の重心位置における推定車体速度Vsoを演算すると共に、同推定車体速度Vsoを微分して車両の重心位置における前後方向の車体加速度DVsoを演算する。なお、この車体加速度DVsoの演算値に代えて、例えば前後加速度センサを別途設けてその検出信号を用いることとしても良い。
次に、CPU47bはステップ105に移行して、上記加速度センサ46の検出信号に基づき実車体加速度DVrを演算し、ステップ106に移行する。ステップ106においてCPU47bは、アンチスキッド制御開始条件を充足しているか否かを判断する。ここで、アンチスキッド制御開始条件を充足していると判定されるとCPU47bは、ステップ107に移行して後述する制御ルーチンに基づきアンチスキッド制御を実行し、その後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ106において、アンチスキッド制御開始条件を充足していないと判定されるとCPU47bは、ステップ108に移行して制動力配分制御開始条件を充足しているか否かを判断する。ここで、制動力配分制御開始条件を充足していないと判定されるとCPU47bは、そのままその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
一方、ステップ108において、制動力配分制御開始条件を充足していると判定されるとCPU47bは、ステップ109に移行して上記車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45及び加速度センサ46のいずれかが異常状態にあるか否かを判断する。なお、これら車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45及び加速度センサ46の異常状態は、それぞれ周知の方法で検出されてCPU47bの判断に供されるようになっている。
ステップ109において車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45及び加速度センサ46の全てが正常状態にあると判定されるとCPU47bは、ステップ110に移行して後述する制御ルーチンに基づき制動力配分制御を実行し、その後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ109において、車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45及び加速度センサ46のいずれかが異常状態にあると判定されるとCPU47bは、ステップ111に移行して後述する制御ルーチンに基づき制動力配分バックアップ制御を実行し、その後の処理を一旦終了する。
次に、上記アンチスキッド制御のための処理ルーチンについて、図4〜図7に基づき説明する。処理がこのルーチンに移行すると、まずステップ201においてCPU47bは、制御中フラグXABSが「1」に設定されているか否かを判断する。この制御中フラグXABSは、アンチスキッド制御が実行されているときに「1」に設定されるもので、アンチスキッド制御が実行中であることの判定に供されるものである。
ここで、制御中フラグXABSが「0」に設定されていると判定されると、アンチスキッド制御中ではないものとしてCPU47bはステップ202に移行し、アンチスキッド制御の開始条件を満たしているか否かを判断する。そして、アンチスキッド制御の開始条件を満たしていないと判定されるとCPU47bは、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ202においてアンチスキッド制御の開始条件を満たしていると判定されるとCPU47bは、ステップ203に移行して制御中フラグXABSを「1」に設定し、次いでステップ204に移行して前記推定車体速度Vsoに基づき第1速度しきい値VSN及び第2速度しきい値VSHを演算する。なお、これら第1及び第2速度しきい値VSN,VSHは、推定車体速度Vsoに対して図5に示される値に演算されるもので、第1速度しきい値VSNは第2速度しきい値VSHよりも大きな値に設定されている。また、各速度しきい値VSN,VSHは、それぞれ前記ストップスイッチ45がオンされているときの方がオフされているときに比べて大きな値に設定されている。これら速度しきい値VSN,VSHは、後述する制御液圧モードの設定に供される。
第1及び第2速度しきい値VSN,VSHを演算したCPU47bはステップ205に移行し、前記実車体加速度DVrに基づき第1加速度しきい値G1及び第2加速度しきい値G2を演算等する。なお、この第1加速度しきい値G1は実車体加速度DVrに対して図6に示されるマップに従い演算されるものである。ちなみに、同図に併せ示される第2加速度しきい値G2は定数(=0)であって、上記第1加速度しきい値G1よりも大きな値に設定されている。これら加速度しきい値G1,G2は、後述する制御液圧モードの設定に供される。
次いで、CPU47bはステップ206に移行し、前記ステップ102,103において各車輪FR,FL,RR,RLごとに演算された車輪速度Vw**及び車輪加速度DVw**(ここで、**はそれぞれFR,FL,RR,RLに対応)に対して、それぞれ第1、第2速度しきい値VSN,VSH及び第1、第2加速度しきい値G1,G2により図7に示されるように区分される領域に従って、制御液圧モードを設定する。すなわち、CPU47bは、各車輪**の車輪速度Vw**を第1及び第2速度しきい値VSN,VSHと比較するとともに、車輪加速度DVw**を第1及び第2加速度しきい値G1,G2と比較する。そして、CPU47bは、これらとの比較結果に応じて制御液圧モードを設定する。例えば、車輪**の車輪速度Vw**が第1速度しきい値VSNよりも大きく、且つ、車輪加速度DVw**が第2加速度しきい値G2よりも大きい場合には、パルス増圧のモードが設定される。
なお、この制御液圧モードの設定は、車両の車輪速度Vw**及び車輪加速度DVw**に対応して好適なアンチスキッド制御を行うためのものである。ちなみに、パルス増圧が設定されることで制動力が加えられ、減圧(パルス減圧)が設定されることで制動力が緩められるようになっている。
制御液圧モードを設定したCPU47bは、ステップ207に移行してリヤローセレクトの状態か否かを判断する。このリヤローセレクトは、回転速度(車輪速度)の低い方の後輪の回転速度に基づき、両後輪RR,RLの制動力を制御するもので、具体的には右後輪RR及び左後輪RLの制御液圧モードが互いに異なる場合において、より制動力を減じる側の制御液圧モードに設定されている後輪に合わせて残りの後輪の制御液圧モードを設定する。ここで、リヤローセレクトの状態と判定されるとCPU47bは、ステップ208に移行して当該後輪が右後輪RRに選択されているか否かを判断する。そして、右後輪RRが選択されている場合には、CPU47bはステップ209に移行して左後輪RLの制御液圧モードを右後輪RRの制御液圧モードに合わせて設定し、右後輪RRが選択されていない(左後輪RLが選択されている)場合には、CPU47bはステップ210に移行して右後輪RRの制御液圧モードを左後輪RLの制御液圧モードに合わせて設定する。そして、CPU47bは、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ207においてリヤローセレクトの状態ではないと判定されるとCPU47bは、設定された制御液圧モードの状態で図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
上記ステップ201において制御中フラグXABSが「1」に設定されていると判定されると、アンチスキッド制御中であるとしてCPU47bはステップ211に移行し、アンチスキッド制御の終了条件を満たしているか否かを判断する。ここで、アンチスキッド制御の終了条件を満たしていないと判定されるとCPU47bは、上記ステップ203〜210の処理を行い、その状態に応じた制御液圧モードを設定して図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ211においてアンチスキッド制御の終了条件を満たしていると判定されるとCPU47bは、ステップ212に移行して制御中フラグXABSを「0」に設定してアンチスキッド制御を終了し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
なお、CPU47bは、このように設定された制御液圧モードに従い前記電磁開閉弁(液圧制御弁)33a〜36a,33b〜36b及び電動モータ37を駆動制御し、各車輪FR,FL,RR,RLの制動力をそれぞれ好適に制御する。
次に、上記制動力配分制御のための処理ルーチンについて、図8〜図12に基づき説明する。処理がこのルーチンに移行すると、まずステップ301においてCPU47bは各種定数を設定し、ステップ302に移行する。
ステップ302においてCPU47bは、車輪速度VwFR,VwFL,VwRR,VwRLに基づき、それぞれ基準速度VwsFR,VwsFL,VwsRR,VwsRLを演算する。具体的には、右前輪FRを例にとって説明すると、今回の演算周期における右前輪FRの車輪速度VwFR(n)と前回の演算周期における右前輪FRの車輪速度VwFR(n一1)に所定値αup・tを加えた値とのうち低い値と、前回の車輪FRの車輪速度VwFR(n一1)に所定値αdn・tを減じた値とのうちで高い値を、右前輪FRの基準速度VwsFRとして設定する。
ここで、値αupは、車輪加速度、即ち車輪速度の増加率の上限値を表し、例えば2Gに設定される。値tは演算周期で、値αdnは、車輪減速度、即ち車輪速度の減少率の上限値を表し、例えば−1G,1.5Gに設定される。このように基準速度を演算することにより、悪路、段差等の路面外乱の影響で正確な車輪速度が得られない場合でも、正確な基準速度を演算することができる。
続いてCPU47bはステップ303に移行し、車輪の基準速度VwsFR,VwsFL,VwsRR,VwsRLをそれぞれ微分し、車輪基準加速度DVwsFR,DVwsFL,DVwsRR,DVwsRLを演算する。
次いで、CPU47bはステップ304に移行し、後輪RR,RLに対して制動力配分制御演算処理を実行する。すなわち、図9に制動力配分制御演算のための処理ルーチンを示すように、まずステップ311においてCPU47bは、制御中フラグXEBDが「1」に設定されているか否かを判断する。この制御中フラグXEBDは、制動力配分制御が実行されているときに「1」に設定されるもので、制動力配分制御が実行中であることの判定に供されるものである。
ここで、制御中フラグXEBDが「0」に設定されていると判定されると、制動力配分制御中ではないものとしてCPU47bはステップ312に移行し、制動力配分制御の開始条件を満たしているか否かを判断する。この開始条件としては、例えば車体加速度DVsoの変化量の大きさが所定値を超える急ブレーキの傾向にあること等がある。そして、制動力配分制御の開始条件を満たしていないと判定されるとCPU47bは、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ312において制動力配分制御の開始条件を満たしていると判定されるとCPU47bは、ステップ313に移行して制御中フラグXEBDを「1」に設定し、次いでステップ314に移行して前記推定車体速度Vsoに基づき第1速度しきい値VWS1及び第2速度しきい値VWS2を演算する。なお、これら第1及び第2速度しきい値VWS1,VWS2は、推定車体速度Vsoに対して図10に示される値に演算されるもので、第1速度しきい値VWS1は第2速度しきい値VWS2よりも大きな値に設定されている。また、各速度しきい値VWS1,VWS2は、それぞれ前記ストップスイッチ45がオンされているときの方がオフされているときに比べて大きな値に設定されている。これら速度しきい値VWS1,VWS2は、後述する制御液圧モードの設定に供される。
第1及び第2速度しきい値VWS1,VWS2を演算したCPU47bはステップ315に移行し、前記実車体加速度DVrに基づき第1加速度しきい値GS1及び第2加速度しきい値GS2を演算等する。なお、この第1加速度しきい値GS1は実車体加速度DVrに対して図11に示されるマップに従い演算されるものである。ちなみに、同図に併せ示される第2加速度しきい値GS2は定数(=0)であって、上記第1加速度しきい値GS1よりも大きな値に設定されている。これら加速度しきい値GS1,GS2は、後述する制御液圧モードの設定に供される。
次いで、CPU47bはステップ316に移行し、各後輪RR,RLに対して演算された車輪基準速度VwsR*及び車輪基準加速度DVwsR*(ここで、*はそれぞれR,Lに対応)に対して、それぞれ第1、第2速度しきい値VWS1,VWS2及び第1、第2加速度しきい値GS1,GS2により図12に示されるように区分される領域に従って、制御液圧モードを設定する。すなわち、CPU47bは、各後輪R*の車輪基準速度VwsR*を第1及び第2速度しきい値VWS1,VWS2と比較するとともに、車輪基準加速度DVwsR*を第1及び第2加速度しきい値GS1,GS2と比較する。そして、CPU47bは、これらとの比較結果に応じて制御液圧モードを設定する。例えば、後輪R*の車輪基準速度VwsR*が第1速度しきい値VWS1よりも大きく、且つ、車輪基準加速度DVwsR*が第2加速度しきい値GS2よりも大きい場合には、パルス増圧のモードが設定される。
なお、この制御液圧モードの設定は、車両の車輪基準速度VwsR*及び車輪基準加速度DVwsR*に対応して好適な制動力配分制御を行うためのものである。ちなみに、パルス増圧が設定されることで制動力が加えられ、パルス減圧が設定されることで制動力が緩められるようになっている。
制御液圧モードを設定したCPU47bは、ステップ317に移行してリヤローセレクトの状態か否かを判断する。ここで、リヤローセレクトの状態と判定されるとCPU47bは、ステップ318に移行して当該後輪が右後輪RRに選択されているか否かを判断する。そして、右後輪RRが選択されている場合には、CPU47bはステップ319に移行して左後輪RLの制御液圧モードを右後輪RRの制御液圧モードに合わせて設定し、右後輪RRが選択されていない(左後輪RLが選択されている)場合には、CPU47bはステップ320に移行して右後輪RRの制御液圧モードを左後輪RLの制御液圧モードに合わせて設定する。そして、CPU47bは、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ317においてリヤローセレクトの状態ではないと判定されるとCPU47bは、設定された制御液圧モードの状態で図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
上記ステップ311において制御中フラグXEBDが「1」に設定されていると判定されると、制動力配分制御中であるとしてCPU47bはステップ321に移行し、制動力配分制御の終了条件を満たしているか否かを判断する。この終了条件としては、例えば車体加速度DVsoが所定値(例えば−0.25G)を超えること等がある。ここで、制動力配分制御の終了条件を満たしていないと判定されるとCPU47bは、上記ステップ313〜320の処理を行い、その状態に応じた制御液圧モードを設定して図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
一方、ステップ321において制動力配分制御の終了条件を満たしていると判定されるとCPU47bは、ステップ322に移行して制御中フラグXEBDを「0」に設定して制動力配分制御を終了し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
なお、CPU47bは、このように設定された制御液圧モードに従い前記電磁開閉弁(液圧制御弁)33a〜36a,33b〜36b及び電動モータ37を駆動制御し、前輪FR,FLに対する各後輪RR,RLの制動力配分をそれぞれ好適に制御する。
次に、上記制動力配分バックアップ制御のための処理ルーチンについて、図13に基づき説明する。なお、本実施形態における制動力配分のバックアップ制御は、上記アンチスキッド制御の態様を準用して行うものである。
処理がこのルーチンに移行すると、まずステップ401においてCPU47bは、加速度センサ46が正常か否かを判断する。ここで、加速度センサ46が異常であると判定されるとCPU47bはステップ402に移行し、その検出信号に対応する実車体加速度DVrをデフォルト値である−1Gに設定し、ステップ405に移行する。このように実車体加速度DVrを設定するのは、図6に示されるように、アンチスキッド制御において制御液圧モードの領域選定に供される第1加速度しきい値G1を最小値に設定し、図7において車輪加速度DVw**に対する制御液圧モードをより制動力が加わるように補正するためである。
一方、ステップ401において加速度センサ46が正常であると判定されるとCPU47bは、ステップ403に移行してストップスイッチ45が正常か否かを判断する。ここで、ストップスイッチ45が異常であると判定されるとCPU47bはステップ404に移行し、ストップスイッチ45がオフであると設定し、ステップ405に移行する。このようにストップスイッチ45の状態を設定するのは、図5に示されるように、アンチスキッド制御において制御液圧モードの領域選定に供される第1及び第2速度しきい値VSN,VSHを小さい方の値に設定し、図7において車輪速度Vw**に対する制御液圧モードをより制動力が加わるように補正するためである。
ステップ405においてCPU47bは、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42が異常か否かをそれぞれ判断する。ここで、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ406に移行して後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44が異常か否かをそれぞれ判断する。
そして、後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ415に移行して正常な車輪速度センサ43,44を備えた後輪(すなわち、両後輪RR,RL)に対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
また、ステップ406において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ409に移行してリヤローセレクト制御を設定してステップ415に移行する。そして、ステップ415において正常である一方の車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪RR若しくはRLに対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定するとともに、この制御液圧モードに合わせて残りの後輪(異常である車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪)RR若しくはRLの制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
さらに、ステップ406において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ410に移行して後輪RR,RLに対するアンチスキッド制御に準じた制御液圧モードの設定を禁止し、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
上記ステップ405において、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ407に移行して後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44が異常か否かをそれぞれ判断する。
そして、後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ415に移行して正常な車輪速度センサ43,44を備えた後輪(すなわち、両後輪RR,RL)に対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
また、ステップ407において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ411に移行してリヤローセレクト制御を設定してステップ415に移行する。そして、ステップ415に移行して正常である一方の車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪RR若しくはRLに対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定するとともに、この制御液圧モードに合わせて残りの後輪(異常である車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪)RR若しくはRLの制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
さらに、ステップ407において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ412に移行して後輪RR,RLに対するアンチスキッド制御に準じた制御液圧モードの設定を禁止し、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
上記ステップ405において、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ408に移行して後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44が異常か否かをそれぞれ判断する。
そして、後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ415に移行して正常な車輪速度センサ43,44を備えた後輪(すなわち、両後輪RR,RL)に対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
また、ステップ408において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ413に移行してリヤローセレクト制御を設定してステップ415に移行する。そして、ステップ415に移行して正常である一方の車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪RR若しくはRLに対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定するとともに、この制御液圧モードに合わせて残りの後輪(異常である車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪)RR若しくはRLの制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
さらに、ステップ408において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ414に移行して後輪RR,RLに対するアンチスキッド制御に準じた制御液圧モードの設定を禁止し、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
なお、CPU47bは、このように設定された制御液圧モードに従い前記電磁開閉弁(液圧制御弁)33a〜36a,33b〜36b及び電動モータ37を駆動制御し、各後輪RR,RLの制動力をそれぞれ好適に制御する。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、車輪速度センサ41〜44、ストップスイッチ45及び加速度センサ46のいずれかが異常の場合であっても、少なくとも両後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44がともに異常でない限り、アンチスキッド制御に準じて制御液圧モードを設定し、制動力配分制御を継続するようにした。従って、このような場合において、例えば制動力配分制御が禁止される制御に比べて、特に高G領域での車両の安定性を確保することができる。
(2)本実施形態では、制動力配分のバックアップ制御として、既存のアンチスキッド制御が準用されるため、マイクロコンピュータ47の演算負荷の増大を最小限に抑制することができる。
(3)本実施形態では、ストップスイッチ45若しくは加速度センサ46に異常が検出された場合には、その検出値等は制動力をより加える側の値に設定される。従って、バックアップ制御における制動力不足を防止することができる。
(第2実施形態)以下、本発明を具体化した制動力配分制御装置の第2実施形態について図14に従って説明する。なお、第2実施形態においては、制動力配分のバックアップ制御をアンチスキッド制御に代えて制動力配分制御の態様を準用して実行するようにしたことのみが第1実施形態と異なるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
図14は、図3のステップ111における制動力配分バックアップ制御の処理ルーチンを示す。処理がこのルーチンに移行すると、まずステップ500においてCPU47bは、前記ステップ301〜303と同様にして定数設定等を行い、ステップ501に移行する。
ステップ501においてCPU47bは、加速度センサ46が正常か否かを判断する。ここで、加速度センサ46が異常であると判定されるとCPU47bはステップ502に移行し、その検出信号に対応する実車体加速度DVrをデフォルト値である−1Gに設定し、ステップ505に移行する。このように実車体加速度DVrを設定するのは、図11に示されるように、制動力配分制御において制御液圧モードの領域選定に供される第1加速度しきい値GS1を最小値に設定し、図12において車輪基準加速度DVwsR*に対する制御液圧モードをより制動力が加わるように補正するためである。
一方、ステップ501において加速度センサ46が正常であると判定されるとCPU47bは、ステップ503に移行してストップスイッチ45が正常か否かを判断する。ここで、ストップスイッチ45が異常であると判定されるとCPU47bはステップ504に移行し、ストップスイッチ45がオフであると設定し、ステップ505に移行する。このようにストップスイッチ45の状態を設定するのは、図10に示されるように、制動配分制御において制御液圧モードの領域選定に供される第1及び第2速度しきい値VWS1,VWS2を小さい方の値に設定し、図12において車輪基準速度VwsR*に対する制御液圧モードをより制動力が加わるように補正するためである。
ステップ505においてCPU47bは、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42が異常か否かをそれぞれ判断する。ここで、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ506に移行して後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44が異常か否かをそれぞれ判断する。
そして、後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ515に移行して正常な車輪速度センサ43,44を備えた後輪(すなわち、両後輪RR,RL)に対して制動力配分制御に準じてその制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
また、ステップ506において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ509に移行してリヤローセレクト制御を設定してステップ515に移行する。そして、ステップ515において正常である一方の車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪RR若しくはRLに対して制動力配分制御に準じてその制御液圧モードを設定するとともに、この制御液圧モードに合わせて残りの後輪(異常である車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪)RR若しくはRLの制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
さらに、ステップ506において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ510に移行して後輪RR,RLに対する制動力配分制御に準じた制御液圧モードの設定を禁止し、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
上記ステップ505において、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ507に移行して後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44が異常か否かをそれぞれ判断する。
そして、後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ515に移行して正常な車輪速度センサ43,44を備えた後輪(すなわち、両後輪RR,RL)に対して制動力配分制御に準じてその制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
また、ステップ507において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ511に移行してリヤローセレクト制御を設定してステップ515に移行する。そして、ステップ515に移行して正常である一方の車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪RR若しくはRLに対してアンチスキッド制御に準じてその制御液圧モードを設定するとともに、この制御液圧モードに合わせて残りの後輪(異常である車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪)RR若しくはRLの制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
さらに、ステップ507において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ512に移行して後輪RR,RLに対する制動力配分制御に準じた制御液圧モードの設定を禁止し、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
上記ステップ505において、前輪FR,FLの車輪速度センサ41,42の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ508に移行して後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44が異常か否かをそれぞれ判断する。
そして、後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれも異常でない(全てが正常である)と判定されるとCPU47bは、ステップ515に移行して正常な車輪速度センサ43,44を備えた後輪(すなわち、両後輪RR,RL)に対して制動力配分制御に準じてその制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
また、ステップ508において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44のいずれか一方が異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ513に移行してリヤローセレクト制御を設定してステップ515に移行する。そして、ステップ515において正常である一方の車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪RR若しくはRLに対して制動力配分制御に準じてその制御液圧モードを設定するとともに、この制御液圧モードに合わせて残りの後輪(異常である車輪速度センサ43若しくは44を備えた後輪)RR若しくはRLの制御液圧モードを設定し、図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。
さらに、ステップ508において後輪RR,RLの車輪速度センサ43,44の全てが異常であると判定されるとCPU47bは、ステップ514に移行して後輪RR,RLに対する制動力配分制御に準じた制御液圧モードの設定を禁止し、そのまま図3のメインフローに戻ってその後の処理を一旦終了する。従って、この場合は通常ブレーキに移行される。
なお、CPU47bは、このように設定された制御液圧モードに従い前記電磁開閉弁(液圧制御弁)33a〜36a,33b〜36b及び電動モータ37を駆動制御し、各後輪RR,RLの制動力をそれぞれ好適に制御する。
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果と同様の効果が得られるようになる。なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・前記各実施形態においては、ブレーキ配管の構成をX配管としたが、Y配管としてもよい。・前記各実施形態においては、車両に設けられた加速度センサ46の検出信号に基づき演算された第1加速度しきい値G1若しくはGS1により、アンチスキッド制御若しくは制動力配分制御の制御液圧モードを設定したが、このように加速度センサを設けることなく、制御液圧モードを設定してもよい。