JP4019450B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の制動制御装置に係り、特に、車両の制動時に車輪がロックしないように制動力を制御する制動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の安定性制御を行う装置として、種々の装置が用いられている。
【0003】
例えば、車両の制動制御装置として、アンチロック・ブレーキ・システムが用いられている。アンチロック・ブレーキ・システムは、制動時における車輪のロックないしはスキッド状態の発生を防止するものである。また、車両の加速時の制御装置として、トラクションコントロールシステムが用いられている。これは、路面に対する駆動輪のスリップ率が過大にならないようにエンジン出力を適当に調節することにより、車両の加速性及び安定性を高めるものである。
【0004】
一方、走行中の横滑り等に起因する不安定状態を回避し、車両の姿勢を制御する姿勢制御が知られている。姿勢制御は、車両の旋回走行時等において、実際の車両の姿勢が目標姿勢に合うように、四輪の制動力を個別に制御し、車両重心に対する安定方向のモーメントを車両に与える等して、車両の安定性を高めるものである。
【0005】
さらに、例えば特開平4−218453号公報に開示されているように、車両の制動時に後輪が早期にロックしないように後輪制動力を制御する後輪制動制御が知られている。後輪制動制御は、従来のプロポーショニングバルブの機能を電気的に行うものであり、例えば、後輪のスリップ率が所定値以上になると、前輪制動力と後輪制動力との割合を調節する。つまり、後輪のスリップ率が所定値以上になった場合に、後輪のブレーキ液圧がマスタシリンダ圧よりも小さくなるように制御する。
【0006】
上記の各制御はいずれも、液圧センサや加速度センサ等の各種センサ(以下、センサ群と称する)で検出した検出値に基づいて行われる。このような検出値のうち、とりわけ車輪速センサで検出する車輪速度は、各制御に不可欠な検出値である。つまり、上記各制御は、車輪速センサで検出した車輪速度を基にして行われていると言える。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、種々の原因により、車輪速センサに故障が発生する場合がある。このような場合には、上記各制御を行うことが不可能となる。
【0008】
ところで、アンチロックブレーキ制御、トラクションコントロール、及び上記姿勢制御は、車両の安定性を高度に高める制御であるのに対し、後輪制動制御は車両の安定性にとってより基本的な制御である。従って、後輪制動制御は、他の制御に比べて車両の安定性に与える影響が大きい。
【0009】
しかし、従来の制動制御装置では、車輪速センサに故障が発生した場合には、アンチロックブレーキ等だけでなく後輪制動制御までもが実行不可能となるため、車両の安定性が大きく低下するおそれがあった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車輪速センサが故障した場合であっても、少なくとも後輪制動制御を実行することにより、車両の安定性及び信頼性を高める制動制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、車輪速センサに異常が発生した場合には、正常に作動している他のセンサである、マスタシリンダ圧を検出する液圧センサからの出力値を流用して、後輪制動制御を行うこととした。
【0012】
具体的には、請求項1に記載の発明は、車両の状態を検出する複数のセンサから成るセンサ群と、上記センサ群からの出力値に基づいて車両のスリップ状態を検知し、該スリップ状態を抑制するように各車輪の制動力、またはエンジン出力のうちの少なくとも一つを変更する制動制御を実行する制御手段とを備えた制動制御装置において、上記センサ群は、車輪の速度を検出する車輪速センサと、マスタシリンダ圧を検出する液圧センサとを備え、上記制御手段は、上記車輪速センサからの出力値に基づいて、車両の制動時に前輪に比べて後輪のブレーキ操作変化に対する制動力変化割合を小さくする後輪制動制御を含む複数の制動制御を実行するように構成される一方、上記各車輪速センサの異常を検出する異常検出手段を備え、上記異常検出手段が少なくとも一つの車輪速センサの異常を検出すると、上記制御手段は、上記センサ群のうち異常のある車輪速センサ以外の正常なセンサである上記液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を実行することとしたものである。
【0013】
上記発明特定事項により、車輪速センサが正常に作動しているときには、上記制御手段によって車両のスリップ状態が抑制されるとともに、車輪速センサからの出力値に基づく高精度の後輪制動制御が行われ、車両の安定性が高度に維持される。一方、車輪速センサに異常が発生したときには、異常検出手段がその異常を検出し、制御手段によって、異常である車輪速センサ以外の正常なセンサである液圧センサからの出力値に基づく後輪制動制御が行われることになる。これにより、車輪速センサに異常が発生したときには、液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態が高精度に推定されるので、確実な後輪制動制御が実行される。その結果、たとえ車輪速センサに異常が発生しても、後輪制動制御機能停止による後輪の早期ロックは確実に防止される。従って、車両の信頼性及び安定性が向上する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動制御装置において、制御手段は、異常検出手段が少なくとも一つの車輪速センサの異常を検出したときには、正常に作動している車輪速センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を実行することとしたものである。
【0015】
上記発明特定事項により、車輪速センサのいずれかに異常が発生したときには、正常に作動している車輪速センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御が行われる。正常に作動している車輪速センサで検出される車輪速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧によって車両の状態が高精度に推定されるので、確実な後輪制動制御が実行される。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動制御装置において、センサ群は、車両の加速度を検出する加速度センサを更に備え、制御手段は、異常検出手段が車輪速センサの異常を検出したときには、上記加速度センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を実行することとしたものである。
【0017】
上記発明特定事項により、車輪速センサに異常が発生したときには、加速度センサで検出される車両加速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態が高精度に推定されるので、確実な後輪制動制御が実行される。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の車両の制動制御装置において、制御手段は、各車輪速センサが正常に作動しているときには、該各車輪速センサからの出力値に基づく車両の減速度に応じて後輪制動制御を実行する一方、異常検出手段が上記各車輪速センサのうちの少なくとも一つの異常を検出したときには、正常に作動している車輪速センサからの出力値に基づく車輪の減速度及び液圧センサからの出力値に応じて後輪制動制御を実行することとしたものである。
【0019】
上記発明特定事項により、各車輪速センサが正常に作動しているときには、各車輪速センサからの出力値に基づいて車両の減速度が高精度かつ安定的に推定され、高度な後輪制動制御が行われる。一方、車輪速センサのいずれかに異常が発生したときには、正常に作動している車輪速センサの出力値から、車輪の減速度が求められる。車輪の減速度により車両の減速度が比較的高精度に推定され、車輪の減速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態を比較的高精度に推定することができるので、車輪速センサに異常が発生した場合であっても、確実な後輪制動制御が実行される。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の車両の制動制御装置において、制御手段は、各車輪速センサが正常に作動しているときには、該各車輪速センサからの出力値に基づく車両の減速度に応じて後輪制動制御を実行する一方、異常検出手段が上記各車輪速センサの異常を検出したときには、加速度センサからの出力値に基づく車両の減速度及び液圧センサからの出力値に応じて後輪制動制御を実行することとしたものである。
【0021】
上記発明特定事項により、各車輪速センサが正常に作動しているときには、各車輪速センサからの出力値に基づいて車両の減速度が高精度かつ安定的に推定され、高度な後輪制動制御が行われる。また、車輪速センサに異常が発生した場合であっても、加速度センサの出力値から車両の減速度が比較的高精度に推定され、車輪の減速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態を比較的高精度に推定することができるので、確実な後輪制動制御が実行される。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の車両の制動制御装置において、制御手段は、後輪制動制御の他に、操舵角と車両の加速度とヨーレートとに基づいて、車体姿勢を目標姿勢に一致させるように姿勢制御を行う姿勢制御手段を備えていることとしたものである。
【0023】
上記発明特定事項により、車輪速センサに異常が発生したときに、姿勢制御手段を利用して後輪制動制御が実行される。例えば、姿勢制御用の加速度センサを用いて後輪制動制御が実行される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。最初に本発明の参考となる参考形態を説明し、その後に本発明の実施形態を説明する。
【0025】
<参考形態1>
参考形態1に係る制動制御装置51は、車輪速センサの一つが故障して車体速度及び車体減速度の推定が不可能な場合に、正常に作動している車輪速センサの出力値に基づいて後輪制動制御を行うものである。
【0026】
−制動制御装置51の構成−
まず、制動制御装置51の構成を説明する。図1は、制動制御装置51のブレーキ油圧回路を示し、1はマスタシリンダ、2FRは右前輪ホイールシリンダ、2FLは左前輪ホイールシリンダ、2RRは右後輪ホイールシリンダ、2RLは左後輪ホイールシリンダである。マスタシリンダ1には、マスタバッグ3を介してブレーキペダル4が接続されている。
【0027】
マスタシリンダ1の前輪用吐出部は、途中で分岐した前輪用の第1ブレーキ油圧路(油圧配管)5Fを介して、左右前輪の各ホイールシリンダ2FR、2FLに接続されている。一方、マスタシリンダ1の後輪用吐出部は、途中で分岐した後輪用の第1ブレーキ液圧路5Rを介して、左右後輪の各ホイールシリンダ2RR、2RLに接続されている。第1ブレーキ液圧路5F、5Rの各幹路には、後述する第2ポンプ22の作動時に上記幹路を閉じる電磁式の液圧系統切換弁6F、6Rが設けられている。これら切換弁6F、6Rには、第2ポンプ22の作動時にブレーキペダル4による制動力付与を可能にするチェック弁7F、7R及びリリーフ弁8F、8Rがそれぞれ付設されている。また、第1ブレーキ液圧路5F、5Rの各分岐路には、それぞれ当該分岐路を閉じることによって各ホイールシリンダ2FR、2FL、2RR、2RLに作用するブレーキ液圧を保持するホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLが設けられている。これらホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLは、常開型電磁弁で構成されている。
【0028】
第1ブレーキ液圧路5Fにおけるホールドバルブ9FR、9FLの下流側にはそれぞれ第2ブレーキ液圧路12FR、12FLが分岐している。これら第2ブレーキ液圧路12FRと12FLとの間には、前輪用の第1リザーバ11Fが接続されている。また、第2ブレーキ液圧路12FR、12FLには、当該液圧路12FR、12FLを開通させることによってホイールシリンダ2FR、2FLに作用するブレーキ液圧を減圧する減圧バルブ13FR、13FLが設けられている。これら減圧バルブ13FR、13FLは、常閉型電磁弁で構成されている。また、後輪用の第1ブレーキ液圧路5Rにも、前輪用の第1ブレーキ液圧路5Fと同様に、後輪用の第1リザーバ11Rが第2ブレーキ液圧路12RR、12RLを介して接続されている。これら第2ブレーキ液圧路12RR、12RLにも、減圧バルブ13RR、13RLが設けられている。
【0029】
前輪用の第1リザーバ11Fは、第3ブレーキ液圧路14Fを介して第1ブレーキ液圧路5Fの分岐部に接続されている。第3ブレーキ液圧路14Fには、各ホイールシリンダ2FR、2FLに作用するブレーキ液圧を上昇させる第1ポンプ15Fが設けられている。また、第3ブレーキ液圧路14Fにおける第1ポンプ15Fの上流側には、チェック弁20Fが設けられ、下流側には蓄圧器16F及びチェック弁17Fが設けられている。第1ポンプ15Fには、圧力調整用のリリーフ弁18Fが付設されている。
【0030】
後輪用の第1リザーバ11Rも、前輪用の第1リザーバ11Fと同様に、第3ブレーキ液圧路14Rを介して第1ブレーキ液圧路5Rの分岐部に接続されている。第3ブレーキ液圧路14Rには、チェック弁20R、第1ポンプ15R、蓄圧器16R、及びチェック弁17Rが設けられている。さらに、第1ポンプ15Rには、圧力調整用のリリーフ弁18Rが付設されている。
【0031】
第3ブレーキ液圧路14Fの第1ポンプ15Fの上流側と、第3ブレーキ液圧路14Rの第1ポンプ15Rの上流側とには、第4ブレーキ液圧路21を介して第2リザーバ19が接続されている。第4ブレーキ液圧路21の幹路には、第2ポンプ22が設けられている。第4ブレーキ液圧路21の各分岐路には、段付きのコントロールピストン23F、23Rが設けられている。これらコントロールピストン23F、23Rは、第2ポンプ22の吐出圧を受けて、各第1ポンプ15F、15Rの上流側のブレーキ液圧を上昇させる。
【0032】
また、第4ブレーキ液圧路21の前輪側分岐路には、蓄圧器24が設けられている。一方、後輪側分岐路からは、第1のリターン路25が第2リザーバ19へ延びている。このリターン路25には、上流側から順に、絞り26とリリーフ弁27とが設けられている。後輪側分岐路からは、さらに、第2のリターン路28が第2リザーバ19へ延びている。このリターン路28には、電磁開閉弁29が設けられている。
【0033】
センサ群として、ブレーキペダル4には、その踏み込みを検出するブレーキスイッチ31が付設されている。前輪用第1ブレーキ液圧路5Fの幹路には、ブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)を検出する液圧センサ32が設けられている。
【0034】
右前輪、左前輪、右後輪、左後輪の各車輪に対しては、それぞれ車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLが設けられている。
【0035】
さらに、操舵角を検出する操舵角センサ33、アクセル開度を検出するスロットルセンサ34、車両加速度を検出する加速度センサ35、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ36等のセンサ群(いずれも図1においては図示せず)が設けられている。
【0036】
これらのセンサ群は、制御手段たるコントロールユニット41に接続されている。また、このコントロールユニット41には、各電磁弁も接続されている。そして、コントロールユニット41は、センサ群からの検出信号を受信するとともに、後述の各種制御を行うように各電磁弁等に出力信号を送信する。
【0037】
図2に示すように、コントロールユニット41は、姿勢制御を行う姿勢制御部42、アンチロックブレーキ制御を行うアンチロックブレーキ制御部43、トラクションコントロールを行うトラクションコントロール制御部44、及び後輪制動制御を行う後輪制動制御部45を備えるとともに、車輪速センサ異常検出部47及び後輪制動制御切換部46を備えている。
【0038】
後輪制動制御部45には、各車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLが正常に作動しているときに行う通常後輪制動制御の他に、上記各車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLのうちの少なくとも一つに異常が発生したときに行う異常時後輪制動制御のプログラムが記憶されている。本参考形態1では、異常時後輪制動制御として、後述する車輪減速度基準後輪制動制御のプログラムが記憶されている。
【0039】
車輪速センサ異常検出部47は、各車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLの出力信号を監視し、各車輪速センサに異常が発生したか否かを検出する部分である。具体的には、センサ回路の抵抗値を検出し、抵抗値が所定値以上のときには断線と判定したり、四輪の車輪速センサのいずれか一つの出力値が他の所定値より所定値以上に大きくずれた場合に、出力値のずれたセンサを異常と判定したりする。この車輪速センサ異常検出部47は、少なくとも一つの車輪速センサに異常が発生した場合には、異常が発生した旨と異常が起こった車輪速センサを特定する識別信号とを含む異常発生信号を後輪制動制御切換部46に送信する。後輪制動制御切換部46は、所定条件下で後輪制動制御部45に対して後輪制動制御切換指令を送信する部分である。つまり、後輪制動制御切換部46は、車輪速センサ異常検出部47から異常発生信号を受け取ると、後輪制動制御部45に対して、正常に作動している車輪速センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を行うように、後輪制動制御切換指令を送信する後輪制動制御切換手段を構成している。
【0040】
−制動制御装置51の動作−
次に、制動制御装置51の動作を説明する。まず、通常制動制御、アンチロックブレーキ制御、トラクションコントロール制御、姿勢制御、及び後輪制動制御のそれぞれについて説明する。
【0041】
−通常制動制御−
通常制動制御とは、上記のアンチロックブレーキ制御等を行わない通常の制動時における制動制御のことである。通常制動制御では、図1のブレーキ液圧回路にあっては、切換弁6F、6Rは開位置、ホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLは開位置、減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLは閉位置、第1及び第2の各ポンプ15F、15R、22は非作動の各状態にある。
【0042】
この状態において、ブレーキペダル4が踏まれると、マスタシリンダ1によって発生したブレーキ液圧が第1ブレーキ液圧路5F、5Rを介して各ホイールシリンダ2FR、2FL、2RR、2RLに与えられ、ブレーキ液圧に応じた制動力が各輪のブレーキディスクに付与される。
【0043】
−アンチロックブレーキ制御−
ブレーキスイッチ31がオンとなり、コントロールユニット41のアンチロックブレーキ制御部43が推定車体速度と各輪の車輪速度とを比較等して、所定の条件が満たされたと判定したときに、アンチロックブレーキ制御が行われる。なお、推定車体速度は、各車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLから検出した四輪の車輪速度に基づいて演算される。
【0044】
具体的には、第1ポンプ15F、15Rが作動するとともに、各輪のホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RL及び減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLが開閉されることによって、各ホイールシリンダ2FR、2FL、2RR、2RLに作用するブレーキ液圧の制御(減圧、保持、増圧)が各々独立に行われ、各輪にロックないしはスキッドを招かない最適な制動力が付与される。
【0045】
この場合、第1ポンプ15F、15Rの作動によって第1ブレーキ液圧路5F、5Rのホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLの上流側に高圧が付与され、四輪のホイールシリンダ2FR、2FL、2RR、2RLは、ホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLが開位置、減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLが閉位置になったときは増圧状態となり、この両開閉弁が閉位置になったときはブレーキ液圧保持状態となり、ホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLが閉位置、減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLが開位置になったときは減圧状態になる。
【0046】
−トラクションコントロール制御−
車両の加速時に、コントロールユニット41のトラクションコントロール制御部44が、推定車体速度と車輪速度とを比較等して所定の条件が満たされたと判定したときに、トラクションコントロール制御が行われる。
【0047】
具体的には、トラクションコントロール制御部44が、推定車体速度と駆動輪の車輪速度との偏差を減少させるように、スロットルボディに設けられたサブスロットル(図示せず)の開度を制御すること等により、駆動輪が空転しないような最適な加速力が付与される。
【0048】
−姿勢制御−
車両の旋回時等には、車両の安定性を向上させるために姿勢制御が行われる。
【0049】
姿勢制御時には、コントロールユニット41の姿勢制御部42がセンサ群からの各出力値を受け取り、実際の車両姿勢と目標姿勢とを演算する。そして、実際の車両姿勢が目標姿勢になるように、エンジン出力及び各輪の制動力の制御を行う。つまり、車両の姿勢を安定させるために、車両重心に対して安定方向のモーメントが働くように、各輪に異なった制動力を発生させ、あるいはスロットル開度等を制御する。
【0050】
具体的には、図1のブレーキ液圧回路にあっては、第1ブレーキ液圧路5F、5Rの切換弁6F、6Rは閉位置に、第4ブレーキ液圧路21の第2リターン路28の開閉弁29は閉位置に設定され、第1ポンプ15F、15Rが作動するとともに、第2ポンプ22も作動し、各輪のホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RL及び減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLの開閉が行われることによって、各ホイールシリンダ2FR、2FL、2RR、2RLに作用するブレーキ液圧の制御が各々独立に行われる。
【0051】
この場合、第2ポンプ22の作動によって、第4ブレーキ液圧路21及び第3ブレーキ液圧路14F、14Rにおける第1ポンプ15F、15Rの上流側のブレーキ液圧が高くなる。そして、この高くなったブレーキ液圧を受けて、第1ポンプ15F、15Rは、さらに高いブレーキ液圧を第1ブレーキ液圧路5F、5Rにおける切換弁6F、6Rとホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLとの間に付与することになる。四輪のホイールシリンダ2FR、2FL、2RR、2RLは、ホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLが開位置、減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLが閉位置になった時は減圧状態、この両開閉弁が閉位置になった時はブレーキ液圧保持状態、ホールドバルブ9FR、9FL、9RR、9RLが閉位置、減圧バルブ13FR、13FL、13RR、13RLが開位置になった時は減圧状態となる。
【0052】
また、第4ブレーキ液圧路21の蓄圧器24は第2ポンプ22の駆動によって発生する液圧エネルギーを蓄え、第2ポンプ22の脈動を除去して、コントロールピストン23F、23Rを介して第1ポンプ15F、15Rの上流側に与えるブレーキ液圧を一定に保つ。
【0053】
−後輪制動制御−
後輪制動制御は、車両の制動時に、後輪の早期ロックを抑制するように後輪のブレーキ操作変化に対する制動力変化割合を調節する制御である。つまり、ブレーキをかけたときに、後輪が早期にロックしないように、所定条件下で後輪側ブレーキ液圧をマスタシリンダ圧以下に調節する制御である。
【0054】
本制動制御装置51では、コントロールユニット41の後輪制動制御部45が、車輪速センサの作動状態に応じて、通常後輪制動制御または車輪減速度基準後輪制動制御のいずれかを行う。まず、各後輪制動制御について説明する。
【0055】
(通常後輪制動制御)
通常後輪制動制御は、推定車体速度を基にして行う後輪制動制御である。この推定車体速度は、各車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLで検出した各車輪速度から演算によって求められる。従って、通常後輪制動制御は、すべての車輪速センサが正常に作動しているときに行われるものである。
【0056】
通常後輪制動制御は、コントロールユニット41の後輪制動制御部45が、推定車体速度と後輪速度との差から後輪のスリップ率を演算し、このスリップ率が所定スリップ値以上であると判定したときに開始される。後輪制動制御部45は、上記スリップ率が所定スリップ値以上であると判定したときは、後輪側のブレーキ液圧の増加を停止する。その後、単位時間あたりの推定車体速度の変化量、つまり車体の減速度に応じて、後輪側ブレーキ液圧を増加させる。これらの後輪側ブレーキ液圧の変動は、後輪用のホールドバルブ9RR、9RL及び減圧バルブ13RR、13RLの作動を制御することにより行われる。
【0057】
具体的には、図3のタイミングチャートに示すように、時刻t1においてブレーキペダル4が踏まれ、車両の制動が開始される。その後、推定車体速度と後輪速度との差が徐々に大きくなり、時刻t2において、後輪のスリップ率が所定スリップ値を越える。その結果、後輪制動制御が開始され、マスタシリンダ圧の上昇にもかかわらず、後輪側のブレーキ液圧が保持される。その後、車体の減速度が所定値Aにまで減少すると後輪のブレーキ液圧を増加する。そして、車体の減速度が所定値Aよりも大きいA’にまで上昇すると、再び後輪のブレーキ液圧を保持するように制御を行う。このとき、保持後のブレーキ液圧の増加割合は、車体の減速度に応じて制御される。
【0058】
従って、後輪のスリップ率が大きく後輪の挙動が不安定になりやすい状態では、後輪側ブレーキ液圧が前輪側ブレーキ液圧よりも低く維持されるので、制動時にロックしやすい後輪が前輪よりも早期にロックすることが防止される。そして、車体の減速度が小さくなり後輪の挙動が安定する状態では、再び後輪側ブレーキ液圧が増加するので、後輪側ブレーキ液圧が前輪側ブレーキ液圧に追従し、後輪の制動力が高められる。
【0059】
(車輪減速度基準後輪制動制御)
車輪減速度基準後輪制動制御は、車輪速センサで検出した車輪速度を基にして行う後輪制動制御である。従って、この車輪減速度基準後輪制動制御は、推定車体速度を用いないで行う後輪制動制御である。
【0060】
車輪減速度基準後輪制動制御は、後輪制動制御部45が車輪の減速度に応じて後輪用のホールドバルブ9RR、9RL及び減圧バルブ13RR、13RLの作動を制御することにより行われる。
【0061】
具体的には、図4のタイミングチャートに示すように、単位時間あたりの車輪速度の変化量、つまり車輪の減速度が所定値Bになると後輪制動制御を開始して後輪のブレーキ液圧を保持し、この所定値Bよりも小さい所定値B’にまで減少すると、再び後輪のブレーキ液圧を増加するような制御を行う。
【0062】
車輪速度と車体速度との間には相関関係があり、車輪の減速度によって後輪のスリップや車体の減速度等を比較的高精度に推定することができることが経験的に分かっている。従って、本制御においても、制動時に後輪が前輪よりも早期にロックすることが防止される。
【0063】
(後輪制動制御の全体動作)
次に、図5のフローチャートを参照しながら、本制動制御装置51による後輪制動制御の全体の動作を説明する。
【0064】
まず、ステップST1において、車輪速センサの異常診断が行われる。この異常診断は、図2に示す車輪速センサ異常検出部47が各車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLの出力信号を監視することにより行われる。
【0065】
車輪速センサ異常検出部47がいずれかの車輪速センサに異常が発生したと判定したときは、ステップST2に進み、車輪速センサ異常検出部47が後輪制動制御切換部46に異常発生信号を送信し、後輪制動制御切換部46が後輪制動制御部45に後輪制動制御切換指令を送信する。後輪制動制御切換指令を受け取った後輪制動制御部45は、後輪制動制御を通常後輪制動制御から車輪減速度基準後輪制動制御に切り換える。そして、その後は、正常に作動している車輪速センサからの出力値に基づいて、ステップST3〜ST7の車輪減速度基準後輪制動制御が行われる。
【0066】
つまり、ステップST3において、車輪減速度が所定値B以上か否かが判定され、所定値B以上である場合には後輪が不安定状態にあると判断してステップST4に進み、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧が実施される。なお、緩加圧とは、ブレーキ液圧の増加を停止ないし緩和することである。一方、ステップST3において車輪減速度が所定値Bに満たない場合には、後輪は不安定状態にないと判断してステップST7に進み、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧は実施されない。
【0067】
ステップST4で緩加圧を実施した後は、ステップST5に移り、車輪減速度が上記所定値Bよりも小さい所定値B’以下か否かが判定される。所定値B’以下の場合には、後輪は安定状態に移行したと判断し、ステップST6に進んで後輪側ブレーキ液圧の緩加圧を停止する。一方、ステップST5において、車輪減速度が所定値B’よりも大きい場合には、後輪を安定させるためには依然としてブレーキ液圧の緩加圧が必要であると判断し、ステップST4に戻って緩加圧を継続する。
【0068】
そして、ST6においてブレーキ液圧の緩加圧を不実施とした後は、ステップST7に進んで、ブレーキスイッチ31がOFF状態か否かが判定される。ブレーキスイッチ31がON状態のときは、再びST3に戻り、後輪制動制御を続行する。一方、ブレーキスイッチ31がOFF状態の場合には、後輪制動制御を終了する。
【0069】
これに対し、ST1において、車輪速センサに異常が発生していないと判定されたときは、ステップST8〜ST13で表される通常後輪制動制御が行われる。
【0070】
通常後輪制動制御では、まず、ステップST8において、後輪のスリップ率が所定値S以上か否かが判定される。
【0071】
後輪のスリップ率が所定値S以上である場合には、ステップST9に進み、後輪制動制御が開始されて後輪側ブレーキ液圧の緩加圧が実施される。一方、上記スリップ率が所定値Sよりも小さい場合には、後述するステップST13に移る。
【0072】
ステップST9において緩加圧が実施された後は、ステップST10に進んで、車体減速度が所定値A以下か否かが判定される。車体減速度が所定値A以下の場合には、ステップST11に進んで後輪側ブレーキ液圧の緩加圧が停止される。一方、車体減速度が所定値Aよりも大きい場合には、再びST9に戻って緩加圧が継続される。
【0073】
ステップST11において緩加圧が停止された後は、ステップST12に進んで、車体減速度が所定値Aよりも大きい所定値A’以上か否かが判定される。車体減速度が所定値A’以上である場合には、ステップST9に進んで後輪側ブレーキ液圧の緩加圧が実施される。一方、車体減速度が所定値A’よりも小さい場合には、ステップST13に進む。
【0074】
ステップST13においては、ブレーキスイッチ31がOFF状態か否かが判定される。ブレーキスイッチ31がON状態のときは、再びST8に戻り、後輪制動制御を続行する。一方、ブレーキスイッチ31がOFF状態の場合には、後輪制動制御を終了する。
【0075】
−制動制御装置51の効果−
このように、本制動制御装置51によれば、車輪速センサのいずれかに故障が発生した場合であっても、正常に作動している車輪速センサから検出した車輪速を用いることにより、後輪制動制御を行うことができる。
【0076】
従って、車輪速センサに異常が起こっても、後輪制動制御の機能が停止することによる後輪スリップの発生を確実に防止することができる。そのため、車輪速センサ異常時の車両の安定性が増し、車両の信頼性が向上する。
【0077】
なお、上記の車輪減速度基準後輪制動制御においては、車輪速センサで検出した車輪速度をそのまま用いたが、悪路走行時のように車輪速度の微小変動が大きい場合には、出力値にフィルタリングを施してもよい。このことにより、車輪速度の微小変動に伴う後輪側ブレーキ液圧の煩雑な緩加圧が回避され、好適な後輪制動制御を行うことが可能となる。
【0078】
<参考形態2>
参考形態2に係る制動制御装置は、車体速度の推定が不可能な場合に、加速度センサ35で検出した車両加速度(車体G)に基づいて後輪制動制御を行うものである。
【0079】
参考形態2に係る制動制御装置の構成は、参考形態1の制動制御装置51と同様なので、その説明は省略する。ただし、本参考形態の制動制御装置では、コントロールユニット41の後輪制動制御部45には、通常後輪制動制御の他に、車体G基準後輪制動制御のプログラムが記憶されている。
【0080】
車体G基準後輪制動制御は、加速度センサ35で検出した車体Gが所定値C以下になったときに、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧を行う制御である。本制御においては、図6のタイムチャートに示すように、車体Gが所定値Cになると後輪のブレーキ液圧を保持し、この所定値Cよりも大きいC’にまで増加すると、再び後輪のブレーキ液圧を増加する。
【0081】
車体Gと車体速度との間には相関関係があり、加速度センサ35で検出した検出値(車体Gの大きさ)によって車体の減速度を比較的高精度に推定できることが経験的に分かっている。従って、車体G基準後輪制動制御においても、制動時に後輪が前輪よりも早期にロックすることが確実に防止される。
【0082】
本参考形態の制動制御装置による後輪制動制御は、図5のフローチャートに示す参考形態1の後輪制動制御において、ステップST3〜ST7で表される車輪減速度基準後輪制動制御を、図7のフローチャートに示すステップST23〜ST27で置き換えたものである。ここでは、ステップST23〜ST27のみを説明し、参考形態1と同様の部分の説明は省略する。
【0083】
参考形態1と同様にして、後輪制動制御切換部46が後輪制動制御部45の後輪制動制御を通常後輪制動制御から車体G基準後輪制動制御に切り換えた後は、ステップST23に進み、車体Gが所定値C以下か否かが判定される。車体Gが所定値C以下の場合には、ステップST24に進んで、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧が実施される。一方、車体Gが所定値Cよりも大きい場合には、ステップST27に進んで、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧は実施されない。
【0084】
ステップST24で緩加圧を実施した後は、ステップST25に移り、車体Gが上記所定値Cよりも大きい所定値C’以上か否かが判定される。所定値C’以上の場合には、後輪は安定状態に移ったと判断し、ステップST26に進んで後輪側ブレーキ液圧の緩加圧を停止する。一方、ステップST25において、車体Gが所定値C’よりも小さい場合には、依然としてブレーキ液圧の緩加圧が必要であると判断し、ステップST24に戻って緩加圧を継続する。
【0085】
そして、ステップST26においてブレーキ液圧の緩加圧を不実施とした後は、ステップST27に進み、ブレーキスイッチ31がOFF状態か否かが判定される。ブレーキスイッチ31がON状態のときは、再びST23に戻り、後輪制動制御を続行する。一方、ブレーキスイッチ31がOFF状態の場合には、後輪制動制御を終了する。
【0086】
−参考形態2の制動制御装置の効果−
従って、参考形態2の制動制御装置においても、車輪速センサに異常が発生した場合であっても、後輪制動制御を行うことができる。つまり、後輪制動制御機能の停止による後輪スリップを確実に防止することが可能となり、車両の安定性及び信頼性を向上することができる。
【0087】
しかも、本制動制御装置では、車輪速センサの異常時には、加速度センサ35で検出した車体Gに基づいて後輪制動制御を行うので、たとえすべての車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLに異常が発生したとしても、後輪制動制御を行うことが可能である。そのため、車両の信頼性を一層向上させることができる。
【0088】
<実施形態>
ここで、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る制動制御装置は、車体速度の推定が不可能な場合に、液圧センサ32で検出したマスタシリンダ圧に基づいて後輪制動制御を行うものである。
【0089】
本実施形態の制動制御装置の構成は、参考形態1の制動制御装置51と同様なので、その説明は省略する。ただし、本実施形態の制動制御装置では、コントロールユニット41の後輪制動制御部45には、通常後輪制動制御の他に、マスタシリンダ圧基準後輪制動制御のプログラムが記憶されている。
【0090】
マスタシリンダ圧基準後輪制動制御は、液圧センサ32で検出したマスタシリンダ圧が所定値以上になったときに、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧を行う制御である。具体的には、図8に示すように、マスタシリンダ圧が所定値D以上のときに、後輪のブレーキ液圧を保持する。
【0091】
マスタシリンダ圧が小さいときは、前輪及び後輪は共に安定な状態にあるが、マスタシリンダ圧が大きくなるにつれ、前輪に比べて後輪が不安定な状態になりやすい。そのため、マスタシリンダ圧が所定値D以上では、後輪が早期にロックする危険性があるとみなし、後輪のブレーキ液圧の緩加圧を行うこととしている。その結果、後輪側ブレーキ液圧は前輪側ブレーキ液圧よりも小さい状態になり、後輪のロック状態を未然に防止することができる。
【0092】
本実施形態の制動制御装置による後輪制動制御は、図5のフローチャートに示す参考形態1の後輪制動制御において、ステップST3〜ST7で表される異常時後輪制動制御を、図9のフローチャートに示すステップST33〜ST37で置き換えたものである。ここでは、ステップST33〜ST37のみを説明し、参考形態1と同様の部分の説明は省略する。
【0093】
参考形態1と同様にして、後輪制動制御切換部46が後輪制動制御部45の後輪制動制御を通常後輪制動制御からマスタシリンダ圧基準後輪制動制御に切り換えた後は、ステップST33に進み、マスタシリンダ圧が所定値D以上か否かが判定される。マスタシリンダ圧が所定値D以上の場合には、ステップST34に進んで後輪側ブレーキ液圧の緩加圧が実施され、再びステップST33に戻る。一方、マスタシリンダ圧が所定値Dよりも小さいときは、ステップST36に進み、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧を行わない。ステップST36で緩加圧を不実施とした後は、ステップST37に進み、ブレーキスイッチ31がOFF状態か否かが判定される。ブレーキスイッチ31がON状態のときは、再びST33に戻り、後輪制動制御を続行する。一方、ブレーキスイッチ31がOFF状態の場合には、後輪制動制御を終了する。
【0094】
−実施形態の制動制御装置の効果−
従って、実施形態の制動制御装置においても、車輪速センサに異常が発生した場合であっても、後輪制動制御を行うことが可能である。つまり、後輪制動制御機能が停止することによる後輪スリップを確実に防止することが可能となり、車両の安定性及び信頼性を向上することができる。
【0095】
しかも、参考形態2と同様、たとえすべての車輪速センサ30FR、30FL、30RR、30RLに異常が発生したとしても、後輪制動制御を行うことが可能である。
【0096】
さらに、本実施形態の制動制御装置では、マスタシリンダ圧が所定値D以上であるか否かの比較的簡単な判定を基にして後輪制動制御を行うので、異常時の後輪制動制御を簡易に行うことができる。
【0097】
<その他の実施形態>
本発明による制動制御装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、車輪速センサの異常時に行う後輪制動制御は、液圧センサ32からの出力値を含む複数の出力値を組み合わせて後輪制動制御を行ってもよい。このことにより、正確かつ確実な後輪制動制御が可能となる。
【0098】
また、例えば、実施形態におけるマスタシリンダ圧基準後輪制動制御において、加速度センサ35で検出した車体Gの値に基づいて、所定値Dの補正を行ってもよい。
【0099】
つまり、積載重量が大きい場合や、車輪と路面との間の摩擦係数(μ)が大きい場合には、同一のマスタシリンダ圧に対して車体Gが大きくなる。この場合、後輪は相対的にスリップしにくくなるので、図10に示すように、後輪側ブレーキ液圧の緩加圧を開始する所定値をDよりも大きいD1とする補正を行う。一方、積載重量が小さい場合や、上記摩擦係数が小さい場合には、相対的に車体Gが小さくなる。そのため、加速度センサ35で検出した車体Gが小さい場合には、緩加圧を開始する所定値をDよりも小さいD2とする補正を行う。このような補正を行うことにより、積載状況や路面状態に応じたより精度の高い後輪制動制御を行うことが可能となる。
【0100】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、車輪速センサが正常に作動しているときには、車両のスリップを抑制する制御が行われるとともに、各車輪速度に基づく高度な後輪制動制御が行われる。一方、車輪速センサに異常が発生したときには、異常を起こした車輪速センサ以外の正常なセンサである液圧センサからの出力値を流用することにより、後輪制動制御を行う。そのため、車輪速センサの異常により車体速度が推定できなくなった場合であっても、液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態を高精度に推定することができるので、後輪制動制御を継続して行うことが可能となる。従って、後輪制動制御の機能停止による後輪の早期ロックを確実に防止することができ、車両の信頼性及び安定性を向上することができる。
【0101】
請求項2に記載の発明によれば、車輪速センサのいずれかに故障が発生したときには、正常に作動している車輪速センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を行うことができる。そのため、正常に作動している車輪速センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて車両の状態を高精度に推定することができるので、後輪制動制御を確実に実行することができる。
【0102】
請求項3に記載の発明によれば、すべての車輪速センサに異常が起こった場合であっても、加速度センサで検出される車両加速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態を高精度に推定することができるので、後輪制動制御を確実に実行することができる。
【0103】
請求項4に記載の発明によれば、各車輪速センサが正常に作動している場合には、各車輪速センサからの出力値に基づいて車両の減速度を高精度かつ安定して推定することができ、高度な後輪制動制御を行うことができる。一方、車輪速センサのいずれかに異常が起こった場合であっても、正常に作動している車輪速センサの出力値から車輪の減速度を求めることができる。従って、車輪の減速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態を比較的高精度に推定することができるので、たとえ車輪速センサに異常が発生しても、後輪制動制御を確実に行うことができる。
【0104】
請求項5に記載の発明によれば、各車輪速センサが正常に作動している場合には、各車輪速センサからの出力値に基づいて車両の減速度を高精度かつ安定して推定することができ、高度な後輪制動制御を行うことができる。一方、車輪速センサに異常が起こった場合であっても、加速度センサの出力値から車両の減速度が高精度に求められ、車輪の減速度及び液圧センサで検出されるマスタシリンダ圧に基づいて車両の状態を比較的高精度に推定することができるので、後輪制動制御を確実に行うことができる。
【0105】
請求項6に記載の発明によれば、車輪速センサに異常が発生したときに、姿勢制御用のセンサ、例えば姿勢制御用の加速度センサ、操舵角センサ、ヨーレートセンサ等を利用して後輪制動制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 制動制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図2】 コントロールユニットのブロック構成図である。
【図3】 通常後輪制動制御についてのタイムチャートである。
【図4】 車輪減速度基準後輪制動制御についてのタイムチャートである。
【図5】 参考形態1に係る後輪制動制御のフローチャートである。
【図6】 参考形態2に係る車体G基準後輪制動制御についてのタイムチャートである。
【図7】 参考形態2に係る車体G基準後輪制動制御のフローチャートである。
【図8】 実施形態に係るマスタシリンダ圧と後輪側ブレーキ液圧との関係を示すグラフである。
【図9】 実施形態に係るマスタシリンダ圧基準後輪制動制御のフローチャートである。
【図10】 補正後のマスタシリンダ圧と後輪側ブレーキ液圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 マスタシリンダ
4 ブレーキペダル
30FR 右前輪の車輪速センサ
30FL 左前輪の車輪速センサ
30RR 右後輪の車輪速センサ
30RL 左後輪の車輪速センサ
32 液圧センサ
35 加速度センサ
41 コントロールユニット
45 後輪制動制御部
47 車輪速センサ異常検出部
Claims (6)
- 車両の状態を検出する複数のセンサから成るセンサ群と、
上記センサ群からの出力値に基づいて車両のスリップ状態を検知し、該スリップ状態を抑制するように各車輪の制動力、またはエンジン出力のうちの少なくとも一つを変更する制動制御を実行する制御手段とを備えた制動制御装置において、
上記センサ群は、車輪の速度を検出する車輪速センサと、マスタシリンダ圧を検出する液圧センサとを備え、
上記制御手段は、上記車輪速センサからの出力値に基づいて、車両の制動時に前輪に比べて後輪のブレーキ操作変化に対する制動力変化割合を小さくする後輪制動制御を含む複数の制動制御を実行するように構成される一方、
上記各車輪速センサの異常を検出する異常検出手段を備え、
上記異常検出手段が少なくとも一つの車輪速センサの異常を検出すると、上記制御手段は、上記センサ群のうち異常のある車輪速センサ以外の正常なセンサである上記液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を実行する
ことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
制御手段は、異常検出手段が少なくとも一つの車輪速センサの異常を検出したときには、正常に作動している車輪速センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を実行する
ことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
センサ群は、車両の加速度を検出する加速度センサを更に備え、
制御手段は、異常検出手段が車輪速センサの異常を検出したときには、上記加速度センサからの出力値及び液圧センサからの出力値に基づいて後輪制動制御を実行する
ことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項2に記載の車両の制動制御装置において、
制御手段は、各車輪速センサが正常に作動しているときには、該各車輪速センサからの出力値に基づく車両の減速度に応じて後輪制動制御を実行する一方、
異常検出手段が上記各車輪速センサのうちの少なくとも一つの異常を検出したときには、正常に作動している車輪速センサからの出力値に基づく車輪の減速度及び液圧センサからの出力値に応じて後輪制動制御を実行する
ことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項3に記載の車両の制動制御装置において、
制御手段は、各車輪速センサが正常に作動しているときには、該各車輪速センサからの出力値に基づく車両の減速度に応じて後輪制動制御を実行する一方、
異常検出手段が上記各車輪速センサの異常を検出したときには、加速度センサからの出力値に基づく車両の減速度及び液圧センサからの出力値に応じて後輪制動制御を実行する
ことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項3に記載の車両の制動制御装置において、
制御手段は、後輪制動制御の他に、操舵角と車両の加速度とヨーレートとに基づいて、車体姿勢を目標姿勢に一致させるように姿勢制御を行う姿勢制御手段を備えている
ことを特徴とする車両の制動制御装置。
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