JPH101040A - 後輪荷重抜け検出,抑制および後輪動的荷重推定装置 - Google Patents

後輪荷重抜け検出,抑制および後輪動的荷重推定装置

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JPH101040A
JPH101040A JP15379496A JP15379496A JPH101040A JP H101040 A JPH101040 A JP H101040A JP 15379496 A JP15379496 A JP 15379496A JP 15379496 A JP15379496 A JP 15379496A JP H101040 A JPH101040 A JP H101040A
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rear wheel
deceleration
wheel
front wheel
load
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Yosuke Takahira
洋介 高比良
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】後輪荷重抜けを早期に検出し得る後輪荷重抜け
検出装置と、それを利用した後輪荷重抜け抑制装置とを
得る。 【解決手段】S300〜304で代表前輪加速度G
WFを、S306〜310で代表後輪加速度GWRをそれぞ
れ取得し、それら前後輪の代表車輪加速度の差として代
表車輪加速度差ΔGW をS312で取得する。代表車輪
加速度差ΔGW が設定代表加速度差ΔGWth 以上である
場合には、後輪荷重抜けが発生するとして、S316で
前輪の増圧勾配を抑制し、代表車輪加速度差ΔGW が設
定車輪加速度差ΔGWth 未満である場合には、後輪荷重
抜けは発生しないとして、S318で前輪の増圧勾配を
通常通りとする。車輪加速度に基づいて後輪荷重抜けを
検出するのであるため、スリップ量に基づく場合より早
期に検出でき、後輪荷重抜けを良好に抑制できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両制動時におけ
る後輪荷重抜けを検出する後輪荷重抜け検出装置と、後
輪荷重抜けの発生を抑制する後輪荷重抜け抑制装置と、
車両制動時に動的に変化する後輪動的荷重を推定する後
輪動的荷重推定装置とに関するものであり、特に、検出
や推定の早期化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】後輪荷重抜け検出装置は、前輪の回転を
抑制する前輪ブレーキと後輪の回転を抑制する後輪ブレ
ーキとを有する車両の制動時に、減速度に基づく荷重移
動により後輪荷重の減少量が過大となる後輪荷重抜けを
検出する装置であり、特開平6−255468号公報に
その2例が記載されている。その一つは、制動開始後の
車体減速度が設定車体減速度を超えるとき高減速度制動
と判定する高減速度制動判定手段と、制動開始後の前記
車体減速度の時間的変化量が設定変化量を超えるとき急
ブレーキと判定する急ブレーキ判定手段と、それら高減
速度制動判定手段および急ブレーキ判定手段の判定成立
時に後輪荷重抜けと判定する判定手段とを含むものであ
る。別の一つは、上記高減速度制動判定手段と、前輪の
車輪速度よりも先に後輪の車輪速度が設定速度差を超え
て低下したとき、すなわち、後輪のスリップ量が大きく
なったときに後輪荷重抜けと判定する判定手段とを含む
ものである。この公開公報には、後輪荷重抜けと判定さ
れた場合に前輪ブレーキの制動力の増大勾配を抑制する
前輪制動力勾配抑制手段を設けて、後輪荷重抜けを抑制
する後輪荷重抜け抑制装置も記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記2つの後輪荷重抜
け検出装置のうち、高減速度制動判定手段および急ブレ
ーキ判定手段の判定成立時に後輪荷重抜けを検出するも
のは、早くて強いブレーキ操作が行われたときは後輪荷
重抜けの可能性が高いことに基づいて後輪荷重抜けを検
出するものであり、現実に後輪荷重抜けが発生したこと
を検出するものではないため、検出の信頼性が十分とは
言えない。後輪荷重の大きさは車両の積載状態、すなわ
ち積載荷重の大きさおよび分布や、路面の勾配等によっ
ても変わるものであるため、早くて強いブレーキ操作が
行われたからと言って必ず後輪荷重抜けが発生するわけ
ではない。
【0004】それに対して、車体減速度が大きく、か
つ、前輪よりも先に後輪の車輪速度が設定速度差を超え
て下回ったときに後輪荷重抜けを検出するものは、後輪
荷重の減少に起因する後輪スリップ量の増大に基づいて
後輪荷重抜けを検出するものであるため、車両の積載状
態や路面の摩擦係数を加味した検出を行うことができ
る。しかし、この後輪荷重抜け検出装置にもまだ改良す
べき点が残されている。後輪荷重抜けをできる限り早期
に検出するという要求に十分応え得ないのである。例え
ば、後輪荷重抜けの検出時期が遅れれば、後輪が発生し
ている横力は小さなものとなっているため、車両の走行
方向安定性を向上させることが困難なものとなる。ま
た、後輪荷重抜けの程度、すなわち後輪動的荷重を早期
に推定することができれば、車両の操縦安定性の改善等
に利用することができる。後輪荷重抜け抑制制御を例に
とれば、後輪動的荷重の推定値に応じて前輪制動力の増
大勾配を変更することによって、よりきめ細かな制御を
行うことができるのである。しかし、従来は後輪動的荷
重を推定すること自体が行われておらず、それの利用は
できなかった。
【0005】本願の請求項1に係る第1発明は以上の事
情を背景としてなされたものであり、したがってその課
題は、後輪荷重抜けを制動開始当初の早い時期に検出し
得る後輪荷重抜け検出装置を得ることである。また、請
求項2に係る第2発明の課題は、第1発明における後輪
荷重抜けの検出の信頼性を高めることである。請求項3
に係る第3発明の課題は、第1発明または第2発明の後
輪荷重抜け検出装置を利用して後輪荷重抜けを抑制し得
る後輪荷重抜け抑制装置を得ることである。さらに、請
求項4に係る第4発明の課題は、後輪動的荷重を推定で
き、しかも早期に推定できる後輪動的荷重推定装置を得
ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段,作用および効果】上記課
題は、第1発明においては、前輪の回転を抑制する前輪
ブレーキと後輪の回転を抑制する後輪ブレーキとを有す
る車両の制動時に、減速度に基づく荷重移動により後輪
荷重の減少量が過大となる後輪荷重抜けを検出する後輪
荷重抜け検出装置を、前輪の回転減速度を検出する前輪
減速度検出手段と、後輪の回転減速度を検出する後輪減
速度検出手段と、それら両減速度検出手段により検出さ
れた後輪減速度が前輪減速度より大きいことを少なくと
も1つの条件として前記後輪荷重抜けの判定を行う判定
手段とを含むものとすることにより解決される。前輪と
後輪との回転減速度検出手段は、それらの回転速度を検
出する回転速度センサと、それらセンサの検出結果に基
づいて回転減速度を演算する減速度演算手段とを含むも
のとすることも、また、前輪と後輪との回転減速度を直
接検出するものとすることも可能である。
【0007】前輪と後輪とを有する車両においては、操
縦安定性を確保しつつ制動距離を効果的に短縮するため
に、通常、制動時に前輪の方が後輪より先にスリップの
増大を開始するように設計され、後輪減速度が前輪減速
度より大きくなることはないのが普通であるため、その
ような事態が発生したということは後輪荷重抜けが発生
した可能性が高いことを意味する。しかし、前輪と後輪
とが同時にスリップの増大を開始するように設計された
車両においては、単に後輪減速度が前輪減速度より大き
くなったのみでは、後輪荷重抜けが発生したとすること
はできない。この場合には、後輪減速度が前輪減速度よ
り大きくなることに加えて、両者の減速度差が設定減速
度を超えることを後輪荷重抜け発生検出の条件とすべき
である。
【0008】第1発明に従って、後輪減速度が前輪減速
度より大きいことを少なくとも1つの条件として後輪荷
重抜けの判定を行えば、前記従来装置による場合より早
期に後輪荷重抜けを検出することができる。従来装置に
おいては、前輪よりも先に後輪の車輪速度が設定速度差
を超えて下回ったことに基づいて後輪荷重抜けが検出さ
れるため、前輪と後輪との車輪速度が相当程度減少する
まで後輪荷重抜けを検出できないのであるが、第1発明
に係る後輪荷重抜け検出装置においては、後輪減速度が
前輪減速度より大きいことに基づいて後輪荷重抜けが検
出され、前輪および後輪の回転減速度が相当程度減少し
たことは、回転速度が相当程度減少したことより早期に
検出し得るからである。
【0009】第2発明においては前記課題が、前記判定
手段を、後輪減速度から前輪減速度を引いた減速度差が
設定減速度差を超える状態が予め定められた条件を超え
て発生した場合に後輪荷重抜けが発生したと判定する過
大減速度差発生状態依拠判定手段を含むものとするとに
より解決される。車輪の回転減速度の検出値には相当大
きな誤差が含まれることが多いため、瞬間的に後輪減速
度が前輪減速度より大きくなったのみで後輪荷重抜けが
発生したと判定すれば信頼性に欠ける恐れがある。そこ
で、第2発明においては、後輪減速度から前輪減速度を
引いた減速度差が設定減速度を超える状態が予め定めら
れた条件を超えて発生した場合に始めて後輪荷重抜けが
発生したと判定されるようにしたのである。
【0010】上記「予め定められた条件」としては、例
えば、減速度差が設定減速度差を超える状態が設定継続
時間以上継続したこと、減速度差が設定減速度を超える
状態の時間の合計が設定合計時間を超えたこと、減速度
差が設定減速度を超える状態の合計時間から減速度差が
設定減速度を超えない状態の合計時間を引いた時間差が
設定時間差を超えること等を採用することができる。ま
た、設定減速度差を複数段階に設定して、後輪減速度か
ら前輪減速度を引いた減速度差が大きい設定減速度差を
超えるほど設定継続時間,設定合計時間,設定時間差等
を小さくすることも可能である。さらに、後輪減速度や
前輪減速度の変動度を検出する減速度変動度検出手段を
設け、減速度変動度が大きい場合には、小さい場合に比
較して設定減速度差を大きくし、それとともに、または
それに代えて、設定継続時間,設定合計時間,設定時間
差等を大きくすることも可能である。減速度変動度とし
ては、例えば、一定微小時間毎に取得される2つずつの
減速度の差の最大値,差の絶対値の平均値,二乗平均値
や、一定微小時間毎に取得される2つずつの減速度の差
や差の絶対値が設定絶対値を超える頻度等を採用するこ
とができる。
【0011】第3発明においては前記課題が、後輪荷重
抜け抑制装置を、第1発明または第2発明の後輪荷重抜
け検出装置と、その後輪荷重抜け検出装置により後輪荷
重抜けが検出された場合に前記前輪ブレーキの制動力の
増大勾配を抑制する前輪制動力勾配抑制手段とを含むも
のとすることにより達成される。前輪ブレーキが液圧に
より作動するホイールシリンダを含む場合には、そのホ
イールシリンダの液圧の増圧勾配を抑制する手段を前輪
制動力勾配抑制手段として採用することができる。例え
ば、ホイールシリンダと、そのホイールシリンダにブレ
ーキ操作力に応じた液圧を供給するマスタシリンダと、
それらマスタシリンダとホイールシリンダとを接続する
主液通路に設けられて主液通路を連通,遮断する増圧制
御弁装置とを含む場合に、増圧制御弁装置を連通状態と
遮断状態とに交互に切り換えるのである。また、主液通
路にその主液通路を絞る状態と絞らない状態とに切換え
可能な可変絞り弁装置を設け、その可変絞り弁装置を絞
り状態にすることによりホイールシリンダの増圧勾配を
抑制することもできる。
【0012】本発明に係る後輪荷重抜け抑制装置におい
ては、後輪荷重抜けが検出された場合に、前輪制動力が
減少させられるのではなく、増大勾配が抑制される。第
2発明に係る後輪荷重抜け検出装置によれば、後輪荷重
抜けを早期に検出することができるため、前輪制動力が
過大となる前にその増大勾配の抑制を開始することがで
き、それによって十分後輪荷重抜けを回避することがで
きるのである。したがって、車両の走行安定性を向上さ
せることができる。
【0013】第4発明においては前記課題が、前輪の回
転を抑制する前輪ブレーキと後輪の回転を抑制する後輪
ブレーキとを有する車両の制動時に、減速度に基づく荷
重移動により動的に変動する後輪荷重の値である後輪動
的荷重を推定する後輪動的荷重推定装置を、前輪の回転
減速度を検出する前輪減速度検出手段と、後輪の回転減
速度を検出する後輪減速度検出手段と、後輪減速度検出
手段により検出された後輪減速度から前輪減速度検出手
段により検出された前輪減速度を引いた減速度差が大き
い場合に小さい場合に比して後輪動的荷重が小さいと推
定する推定手段とを含むものとすることにより解決され
る。
【0014】第4発明に従えば制動開始当初の早い時期
の後輪動的荷重を簡単な構成の装置で推定することがで
きる。先の説明から明らかなように、制動開始直後の後
輪減速度と前輪減速度との差は、制動時の荷重移動が大
きい場合は小さい場合より大きくなるものであるから、
両減速度の差が大きいほど後輪動的荷重が小さいと推定
することは妥当なことである。後輪動的荷重は3段階以
上の多段階で推定しても、連続的な値として推定しても
よい。また、絶対値として推定することも、相対値とし
て推定することも可能である。前者の場合は、後輪の静
的荷重を予め調べてメモリに記憶させておき、その静的
荷重から、後輪減速度と前輪減速度との差に応じて決ま
る荷重移動分を引いて後輪動的荷重の絶対値を得るので
ある。後者の場合は、後輪減速度と前輪減速度との差に
応じて決まる荷重移動が大きいほど後輪動的荷重の相対
値が小さいとすればよい。絶対値にしろ、相対値にし
ろ、後輪動的荷重が推定できれば、車両の操縦安定性を
増すため等の種々の制御に有効に使用することができ
る。例えば、推定された後輪動的荷重が大きい場合には
小さい場合より前輪制動力の増大勾配の抑制を緩くする
ことにより、制動力が過度に減少することを防ぎつつ、
車両の操縦安定性を良好に保つことができるのである。
【0015】
【発明の望ましい態様】本発明は、前記各請求項に記載
の態様の他に、以下の態様でも実施可能である。 (1)制動開始当初のみ前記判定手段または前記推定手
段を有効化して前記判定の結果または前記推定の結果を
出させる制動開始当初有効化手段を含む請求項1〜4の
いずれか1つに記載の後輪荷重抜け検出装置,後輪荷重
抜け抑制装置または後輪動的荷重推定装置。制動開始当
初有効化手段は、制動開始当初のみ前輪減速度検出手段
および後輪減速度検出手段の検出結果を判定手段または
推定手段に供給する制動開始当初減速度供給手段でも、
制動開始当初のみ判定手段または推定手段の作動を許可
する制動開始当初作動許可手段でも、制動開始当初のみ
判定または判定の結果を読み出す制動開始当初結果読出
手段でもよい。 (2)前記制動開始当初有効化手段が、前記前輪減速度
および後輪減速度が共に増大傾向にある間は前記判定手
段または前記推定手段を有効化するが、少なくとも一方
が減少傾向になった後は無効化する減速度増大傾向時有
効化手段を含む態様1に記載の後輪荷重抜け検出装置,
後輪荷重抜け抑制装置または後輪動的荷重推定装置。減
速度が増大傾向にあるとは、外乱等による減速度の一時
的な減少を無視した場合に減速度が増大していることを
言う。減速度の一時的な減少を無視するためには、例え
ば、フィルタ,変化勾配制限手段等減速度を平滑化する
減速度平滑化手段とその減速度平滑化手段により平滑化
された減速度が減少した場合に減速度が減少に転じたと
判定する平滑化減速度依拠減少判定手段との組合せや、
一定微小時間毎に取得される減速度が連続して設定回数
減少した場合に減速度が減少に転じたと判定する連続減
少依拠減少判定手段や、一定微小時間毎に取得される減
速度の予め定められた数の平均値が減少した場合に減速
度が減少に転じたと判定する平均値依拠減少判定手段等
を採用することができる。 (3)前記車両が、前記前輪および前記後輪の制動力を
それぞれ制御することにより前輪および後輪のスリップ
率を適正範囲に制御するアンチロック制御装置を備え、
前記制動開始当初有効化手段が、そのアンチロック制御
装置が前輪および後輪のいずれかの制動力を最初に低下
させる第1回制動力低下制御を開始するまでは前記判定
手段または前記推定手段を有効化するが、前記第1回制
動力低下制御の開始後は無効化するアンチロック制御開
始前有効化手段を含む態様1または2に記載の後輪荷重
抜け検出装置,後輪荷重抜け抑制装置または後輪動的荷
重推定装置。 (4)前記制動開始当初有効化手段が、制動の開始を検
出する制動開始検出手段と、その制動開始検出手段によ
り制動開始が検出されてから設定時間が経過するまでは
前記判定手段または前記推定手段を有効化し、設定時間
の経過後は無効化する経過時間依拠有効化手段とを含む
態様1〜3のいずれか1つに記載の後輪荷重抜け検出装
置,後輪荷重抜け抑制装置または後輪動的荷重推定装
置。制動開始検出手段としては、例えば、ブレーキペダ
ル等のブレーキ操作部材が原位置から操作されたことを
検出するブレーキスイッチや、ブレーキ操作部材の操作
に応じて液圧を発生させるマスタシリンダやその液圧を
受けて作動するホイールシリンダの液圧が設定液圧を超
えたことを検出する液圧増大検出手段や、車輪や車体の
減速度の増加開始を検出する減速度増加開始検出手段等
を採用することができる。また、前記設定時間は、予め
定められた固定設定値でもよく、液圧の増大勾配や、車
輪または車体の減速度の増大勾配等に応じて変えられる
可変設定値でもよい。 (5)車体の減速度を取得する車体減速度取得手段と、
その車体減速度取得手段により取得された車体減速度が
設定車体減速度を超えた場合にのみ前記判定手段または
前記推定手段を有効化して前記判定の結果または前記推
定の結果を出させる車体減速度大時有効化手段を含む請
求項1〜4,態様1〜4のいずれか1つに記載の後輪荷
重抜け検出装置,後輪荷重抜け抑制装置または後輪動的
荷重推定装置。後輪動的荷重の大きな減少が発生するの
は、摩擦係数の高い路面上で強いブレーキ操作が行わ
れ、大きな車体減速度が生じた場合であるから、後輪動
的荷重の大きな減少が生ずる場合にのみ後輪荷重抜けの
検出または後輪動的荷重の推定を行いたい場合には本態
様において設定車体減速度を大きな値に設定しておけば
よい。しかし、車両の操縦安定性の低下は、たとえ後輪
動的荷重の減少が比較的小さくても発生する恐れがある
ため、設定車体減速度を比較的小さく設定し、あるい
は、車体減速度取得手段および車体減速度大時有効化手
段を省略してもよい。 (6)前記判定手段または前記推定手段が、路面の摩擦
係数に関連した摩擦係数関連量を前記後輪荷重抜けの判
定または前記後輪動的荷重の推定に加味する摩擦係数関
連量加味手段を含む請求項1〜4,態様1〜5のいずれ
か1つに記載の後輪荷重抜け検出装置,後輪荷重抜け抑
制装置または後輪動的荷重推定装置。後輪減速度から前
輪減速度を引いた減速度差と後輪動的荷重との関係は路
面の摩擦係数の影響を受ける。したがって、摩擦係数関
連量加味手段を設ければ後輪荷重抜けの判定や後輪動的
荷重の推定の信頼性を高めることができる。路面の摩擦
係数の影響は理論的に推定しても、予め種々の摩擦係数
の路面上で実測してもよい。 (7)前記摩擦係数関連量加味手段が、車体減速度と前
輪減速度との少なくとも一方を前記摩擦係数関連量とし
て加味するものである態様6に記載の後輪荷重抜け検出
装置,後輪荷重抜け抑制装置または後輪動的荷重推定装
置。例えば、後輪減速度から前輪減速度を引いた減速度
差が大きい状態で車体減速度または前輪減速度が大きけ
れば、路面の摩擦係数が高いと推定することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明のいくつかの実施形
態を図面に基づいて説明する。まず、ハードウエア構成
について説明する。このハードウエア構成は以下に述べ
るすべての実施形態に共通に用いられるものである。図
1において、10はブレーキペダルを示す符号であり、
ブレーキペダル10は図示しないブースタを介してマス
タシリンダ12に連携させられている。マスタシリンダ
12は2個の加圧室が互いに直列に並んで成るタンデム
型であり、それら加圧室に互いに等しい高さのブレーキ
圧を発生させる。本ブレーキ回路は互いに独立した2つ
のブレーキ系統がX字状に配置されたX配管式である。
第一のブレーキ系統は、マスタシリンダ12の一方の加
圧室が液通路20,ノーマルオープン型の電磁開閉弁2
2および液通路24を経て左後輪RLのブレーキのブレ
ーキシリンダ26に接続されるとともに、液通路20,
30,ノーマルオープン型の電磁開閉弁32および液通
路34を経て右前輪FRのブレーキのブレーキシリンダ
36に接続されることによって構成されている。一方、
第二のブレーキ系統は、他方の加圧室が液通路40,ノ
ーマルオープン型の電磁開閉弁42および液通路44を
経て右後輪RRのブレーキのブレーキシリンダ46に接
続されるとともに、液通路40,50,ノーマルオープ
ン型の電磁開閉弁52および液通路54を経て左前輪F
Lのブレーキのブレーキシリンダ56に接続されること
によって構成されている。
【0017】また、第一のブレーキ系統においては、前
記液通路24がノーマルクローズド型の電磁開閉弁60
を経て、前記液通路34もノーマルクローズド型の電磁
開閉弁62を経てそれぞれリザーバ64に接続されてい
る。このリザーバ64は、逆止弁66を経てポンプ68
の吸込み口に接続され、それの吐出し口は逆止弁70,
ダンパ72,絞り74を経て前記液通路20に接続され
ている。一方、第二のブレーキ系統においては、前記液
通路44がノーマルクローズド型の電磁開閉弁80を経
て、前記液通路54もノーマルクローズド型の電磁開閉
弁82を経てそれぞれリザーバ84に接続されている。
このリザーバ84は逆止弁86を経てポンプ88の吸込
み口に接続され、それの吐出し口は逆止弁90,ダンパ
92,絞り94を経て前記液通路40に接続されてい
る。そして、それら2個のポンプ68,88は共通のモ
ータ96により駆動される。
【0018】また、液通路20から液通路24へ向かう
作動液の流れは阻止するが、その逆向きの流れは許容す
る逆止弁100,液通路30から液通路34へ向かう作
動液の流れは阻止するが、その逆向きの流れは許容する
逆止弁102,液通路40から液通路44へ向かう作動
液の流れは阻止するが、その逆向きの流れは許容する逆
止弁104,液通路48から液通路52へ向かう作動液
の流れは阻止するが、その逆向きの流れは許容する逆止
弁106が、それぞれ設けられている。なお、逆止弁6
6,70はそれぞれポンプ68による作動液の流れは許
容するがその逆の向きの流れを阻止する向きに取り付け
られている。逆止弁86,90の向きとポンプ88によ
る流れの向きについても同様である。また、ダンパ72
と絞り74、およびダンパ92と絞り94は、それぞれ
ポンプ68および88の吐出脈動を低減させるために設
けられている。
【0019】以上説明したハードウエア構成によれば、
例えば、左後輪RLのブレーキ圧については、電磁開閉
弁22,60をいずれも非通電状態とすることによって
増圧状態が実現され、電磁開閉弁22のみを通電状態と
することによって保持状態が実現され、電磁開閉弁2
2,60をいずれも通電状態とすることによって減圧状
態が実現される。他の車輪のブレーキ圧についても同様
である。すなわち、各車輪のブレーキ圧は2個の電磁開
閉弁の開閉状態の組合せによって、増圧状態,保持状態
および減圧状態が択一的に実現されるのである。増圧状
態,保持状態および減圧状態をそれぞれ実現するために
各電磁開閉弁に供給される信号を、それぞれ増圧信号,
保持信号および減圧信号と称する。
【0020】なお、液通路24,44の途中には、Pバ
ルブ98が取り付けられている。このPバルブ98は、
後輪のブレーキシリンダ26,46の液圧と前輪のブレ
ーキシリンダ36,56の液圧との配分を、制動による
車体の減速度DS0の大きさに対応させて変更することに
より、理想的な前後輪の制動力配分に近い制動力配分を
実現するためのものである。理想制動力配分は前後輪が
同時にロックするように決められるものであり、図2に
示すように、車体減速度DS0が増加するほど、後輪制動
力BR よりも前輪制動力BF を大きくすることで実現さ
れる。実際には、理想制動力配分を常に実現することは
困難である。そこで、Pバルブ98によって後輪のブレ
ーキシリンダ26,46の液圧があるしきい液圧を超え
る場合に、その液圧を、前輪のブレーキシリンダ36,
56の液圧に比例する液圧だけ減少させる。このように
して、近似的に望ましい前後輪の制動力配分を得ている
のである。
【0021】上記電磁開閉弁22等は電子制御装置10
0により制御される。この電子制御装置100は図3に
示すように、コンピュータ102を主体として構成され
ており、CPU104,ROM106,RAM108,
タイマ120,入力インターフェース回路122および
出力インターフェース回路124を含んでいる。この出
力インターフェース回路124には各ドライバ126を
介して前記モータ96および電磁開閉弁22等がそれぞ
れ接続されている。一方、入力インターフェース回路1
22には各バッファアンプ128を介して4個の車輪速
度センサ140,142,144,146、ストップラ
ンプスイッチ150がそれぞれ接続されている。各車輪
速度センサ140,142,144,146は各車輪と
共に回転するロータの回転を検出し、回転速度に対応し
た周波数の電気的パルス信号を出力するものである。ス
トップランプスイッチ150はドライバによるブレーキ
ペダル10の踏込みを取得するものである。
【0022】次に、すべての実施形態に共通に用いられ
るソフトウエア構成について説明する。図4は、荷重抜
け抑制装置のメイン処理の内容を示すフローチャートで
ある。なお、このメイン処理のプログラムは、イグニッ
ションスイッチがONである間、後輪の荷重抜け検出を
検出し、荷重抜けの発生を抑制するために繰り返し実行
されるものであり、ROM106に格納されている。こ
の処理は、アンチスキッド制御やトラクション制御等の
他の処理を含まないものとする。これらの他の処理を行
う場合には、例えば、前記ROM106に格納されるソ
フトウェアを複数のタスクを同時に実行可能な構成とし
たり、これらの他の処理を専用に実行する他の電子制御
装置を設けたりすればよい。
【0023】まず、ステップ100(以下、単にS10
0と記す。他のステップについても同じ)において、ス
トップランプスイッチ150がONであるか否かが判定
される。ストップランプスイッチ150がOFFで、制
動中でないと判定されると、S102において通常処理
が行われる。通常処理の内容については、後述する。S
102において通常処理が実行された後は、S100か
らの処理が繰り返し実行される。S100の判定結果が
YESであれば、S104で、ストップランプ150が
ONとなっている期間中(つまり、制動期間中)におい
て、いずれかの車輪についてアンチスキッド制御が実行
されたことがあるか否かが判定される。この判定結果が
YESであれば、S102の通常処理が行われる。な
お、S104の判定は、1回の制動中において、少なく
とも1つの車輪のアンチスキッド制御の実行が開始され
てから、設定時間ΔTだけ時間が経過したか否かを判定
するものとしてもよい。
【0024】S104の判定結果がNOであれば、S1
06において車体加速度GS0が、予め設定された設定車
体加速度GS0th(負値)未満であるか否かが判定され、
結果がNOならS102の通常処理が実行される。この
判定は、車体加速度GS0が負値である設定車体加速度G
S0thよりも小さくなって、車両が急減速状態にあると見
なし得るか否かを判定するものである。なお、車体加速
度GS0の取得方法については、図5を参照しつつ後述す
る。また、このS106において、さらに、ブレーキ操
作速度が設定操作速度以上であるか否かの判定が行われ
るようにしてもよい。
【0025】上記車体加速度GS0に基づく第1の判定
は、車両の制動力ないし路面摩擦係数が大きい場合に後
輪の荷重抜けが起こる可能性があると判定するものであ
る。この判定に際しては、路面摩擦係数μを他の方法に
よって直接または間接的に取得し、その取得された値に
基づいた判定が行われるようにしてもよい。また、ブレ
ーキ操作速度に基づく第2の判定は、後輪の荷重抜けが
生じるのはブレーキ操作速度が大きい場合が多いという
事実に基づくものである。ブレーキ操作速度が大きいか
否かは、ブレーキペダル10の操作速度自体やマスタシ
リンダ液圧の増大勾配を検出し、それらが設定値以上で
あるか否かによって判定することができるが、ブレーキ
ペダル10の操作開始がストップランプスイッチ150
により検出されてから車体加速度GS0が設定車体加速度
S0th未満となるまでの時間が設定時間以下であるか否
か等によっても判定することができる。なお、ブレーキ
ペダル10の操作速度は、例えば、ブレーキペダル10
の可動部の位置を検出するポテンショメータの出力の時
間的変化率や、その可動部がある位置を通過することを
検出する2つ以上の(異なる位置に配設される)センサ
の検出時間差等に基づいて取得することができる。ま
た、S106の判定において、さらに、前輪減速度およ
び後輪減速度が共に増大傾向にあるか、それらのうちの
少なくとも一方が減少傾向にあるかの判定結果等が参酌
されるようにしてもよい。
【0026】S106の判定結果がYESであれば、S
108において、後述する前輪増圧勾配変更処理が行わ
れる。なお、S102の通常処理は、S108の前輪増
圧勾配変更処理が行われる必要がない場合に、前輪に関
する各電磁開閉弁32,52等の状態を、通常の状態に
する処理である。ここで、通常の状態とは、アンチスキ
ッド制御または(前輪駆動の車両の場合に)トラクショ
ン制御が行われている場合においては、それらの制御に
よって決定された通りの状態である。そして、これらの
制御が行われていない場合には、すべての電磁開閉弁が
非通電の状態である。
【0027】図5は、タイマ割り込み処理の内容を示す
フローチャートである。この処理は、一定時間、例えば
10ms毎に呼び出される処理であり、後述する各車輪
の車輪速度VWFL 等,車輪加速度GWFL 等,車体速度V
S0および車体加速度GS0を取得する処理である。つま
り、これらの値は一定時間毎に更新される。なお、以下
の説明においては、理解を容易にするために、車輪速度
等のノイズ除去,平滑化の説明は省略するが必要に応じ
て適宜行われる。
【0028】まず、S200において、各車輪の車輪速
度VWFL (左前輪),VWFR (右前輪),VWRL (左後
輪),VWRR (右後輪)が取得される。これらは、車輪
速度センサ140〜146からの出力パルスに応じて実
行される図示しない外部割り込み処理によりRAM10
8に格納される各車輪毎の割り込み回数の計数値と、タ
イマ割り込み処理が呼び出される時間間隔Δt(例えば
10ms)とに基づいて取得される。つまり、今回のタ
イマ割り込み処理実行時の計数値と前回の計数値との差
を時間間隔Δtで除した値に比例した値として取得され
る。比例係数は、車輪が1回転する間に車輪速度センサ
140等から出力されるパルス数に基づいて決定され
る。また、本実施形態においては、前記車輪速度VWFL
の単位が、後述する車体速度VS0と直接比較できるよう
に、同じ単位(例えば、m/sやkm/h等)とされて
いる。
【0029】つぎに、S202において、各車輪の車輪
加速度GWFL (左前輪),GWFR (右前輪),G
WRL (左後輪),GWRR (右後輪)が、前記車輪速度V
WFL 等と時間間隔Δtとに基づいて取得される。つま
り、今回のタイマ割り込み処理実行時の車輪速度VWFL
等と前回の車輪速度VWFL 等との差を時間間隔Δtで除
した値として取得される。つぎに、S204において、
車体速度VS0が取得される。車体速度VS0は、例えば、
各車輪の車輪速度VWFL 等の最大のものに基づいて取得
することができる。ドップラ式対地車速センサ等の他の
直接あるいは間接的な手段によって取得してもよい。つ
ぎに、S206において、車体加速度GS0が取得され
る。車体加速度GS0は、今回のタイマ割り込み処理実行
時のS204において取得された車体速度VS0と前回の
車体速度VS0との差の値を時間間隔Δtで除した値とし
て取得することも、車体加速度センサ等の他の直接ある
いは間接的な手段によって取得することもできる。
【0030】図4のS108の前輪増圧勾配変更処理の
内容を示すフローチャートを、図6に示す。この処理
は、後輪の荷重抜けの発生を早期に検出し(厳密には荷
重抜けの発生を予知し)、前輪の増圧勾配を抑制するこ
とにより、後輪の荷重抜けを回避する処理である。
【0031】まず、S300〜304において、左右前
輪の車輪速度VWFL ,VWFR のどちらが車体速度VS0
近いかが判定され、近い方の前輪の車輪加速度(GWFL
またはGWFR )が、代表前輪加速度GWFとして採用され
る。つぎに、S306〜310において、左右後輪の車
輪加速度GWRL ,GWRR のどちらが小さいかが判定さ
れ、小さい方が代表後輪加速度GWRとされる。そして、
S312において、それら2つの代表加速度GWF,GWR
に基づいて後輪荷重抜けの可能性が判定される。具体的
には、S312において代表車輪加速度差ΔGW が、代
表前輪加速度GWFから代表後輪加速度GWRを減じた値と
して取得され、S314においてその代表車輪加速度差
ΔGW が予め設定された設定車輪加速度差ΔGWth (正
値)以上であるか否かが判定され、結果がYESであれ
ばS316において2つの前輪FL,FRの増圧勾配が
抑制される(緩増圧)。この緩増圧は、例えば、電磁開
閉弁32,52を通電状態と非通電状態とに交互に置
く、所謂デューティ制御によって実現される。
【0032】その際に、通電状態にある期間と非通電状
態にある期間との比(デューティ比)を調整することに
よって、増圧勾配を調整できる。S314の判定結果が
NOであれば、S318において通常の制動時と同様の
増圧勾配(急増圧)とされる。なお、上記のように、車
輪速度が車体速度VS0により近い方の前輪の車輪加速度
が代表前輪加速度GWFとされるのは、スリップ量が小さ
い方の前輪の車輪減速度に基づいて判定を行うためであ
り、また、2つの後輪の車輪減速度の小さい方が代表後
輪加速度GWRとされるのは、左右の後輪の減速度が異な
っていても、確実に後輪の荷重抜けを検出できるように
するためである。これら両代表車輪加速度の採用によ
り、後輪荷重抜けの検出感度を高くすることができる。
上記代表前輪加速度GWFおよび代表後輪加速度GWRは、
それぞれ、前輪減速度および後輪減速度の符号を逆にし
たものに相当し、代表車輪加速度差ΔGW は、減速度差
に相当する。以上の説明を、車輪の減速度に基づいて行
っても同様の判定が可能であることはいうまでもないこ
とである。この場合は、S314の判定は、後輪の車輪
減速度が前輪の車輪減速度より設定車輪加速度差ΔG
Wth 以上大きいか否かという判定にすればよい。
【0033】図7には、定速走行末期から制動開始当初
にかけての車体速度VS0,車輪速度VW ,車輪加速度G
W の変化の一例が、時刻tを横軸として示されている。
この例においては、時刻t0 において制動が開始される
と、短い過渡期間を経て車体速度VS0と車輪速度VW
は共にほぼ一定の割合で減少する。車輪加速度GW は過
渡期間中において、図示したように急激に変動するが、
前後輪の車輪加速度はほぼ等しい状態を保っている。時
刻t1 付近から車両の前方への荷重移動が大きくなりは
じめると、前輪車輪速度VWFは車体速度VS0とほぼ同じ
減少傾向を示すが、後輪車輪速度VWRの減少傾向は徐々
に大きくなり始める。
【0034】このとき、後輪の車輪加速度GWRは、図示
したように前輪の車輪加速度GWFに対して急激に減少す
る。この減少量が、前記設定車輪加速度差ΔGWth 以上
となれば、図6のS312〜S316の処理によって前
輪の増圧勾配が抑制される(時刻ta1)。図7において
は、時刻ta2において、再び前後輪の車輪加速度の差が
設定車輪加速度差ΔGWth 以上となっている。従来の後
輪荷重抜け検出装置においては、前後輪の車輪速度差Δ
W に基づいて後輪荷重抜けが検出されていたので、例
えば図7の時刻tb のように、前後輪の車輪速度差ΔV
W が大きくなった段階においてはじめて後輪の荷重抜け
が生じたと判定されていたのであるが、本実施形態にお
いては、それ以前のta1,ta2のような早い段階で後輪
荷重抜けが生じたと判定されるのである。
【0035】このように、本実施形態においては、コン
ピュータ102のS200およびS202を実行する部
分によって前輪減速度検出手段および後輪減速度検出手
段が構成され、また、S300〜S314を実行する部
分によって判定手段の一例である過大減速度差発生状態
依拠判定手段が構成され、これらによって後輪荷重抜け
検出装置が構成されている。そして、この後輪荷重抜け
検出装置に、S316およびS318を実行する部分に
より構成される前輪制動力勾配抑制手段が付加されるこ
とによって、後輪荷重抜け抑制装置が構成されている。
本実施形態の後輪荷重抜け抑制装置によれば、制動時に
おける車体のピッチングを小さく抑えることができ、車
両の操縦安定性や乗り心地を良好に保つことができ、ま
た、後輪荷重抜けを抑制する制御が行われた後にアンチ
ロック制御が行われる場合には、その制御精度を向上さ
せることができることとなる。
【0036】図8は、図4に示した前輪増圧勾配変更処
理の別の実施形態の内容を示すフローチャートである。
本実施形態においては、前輪の増圧勾配を連続的に変更
できる。まず、S400〜S412において、図6のS
300〜S312と同様の処理が行われて、代表車輪加
速度差ΔGW が取得される。つぎに、S414におい
て、後述する関数f(x)を用いた次式によって、前輪
増圧勾配PF ′が、代表車輪加速度差ΔGW の関数とし
て決定される。 PF ′=(PFMAX′−PFMIN′)・f(ΔGW )+PFMIN′ ・・・(1) ここで、PFMAX′,PFMIN′はそれぞれ最大および最小
の前輪増圧勾配である。そして、S416において、S
414で決定された前輪増圧勾配に基づいて、両前輪が
増圧される。(1)式による前輪増圧勾配PF ′の決定
は一例であって、この他の決定方法,決定式等を用いて
もよい。
【0037】図9は、前記関数f(x)の概形を表すグ
ラフである。このような概形を示す関数としては、例え
ば次式で示されるものがある。 f(x)=1/〔exp{ξ・(x−ζ)}+1〕 ・・・(2) この関数は、変数xの値に対応して、1からゼロまでの
値を取り、パラメータξ,ζによってその概形が特徴付
けられるものである。パラメータξの値を変更すること
により、変数xの変化に対する関数f(x)の変化の大
きさを変更でき、パラメータζの値を変更することによ
り、関数f(x)の値が1/2となる変数xの値を変更
できる。例えば、ξを非常に大きな値とし、ζ=ζ1
すれば、変数x<ζ1 では関数f(x)≒1、変数x>
ζ1 では関数f(x)≒0とすることができる。これ
は、図8のS414において、前輪増圧勾配PF ′を、
最大前輪増圧勾配PFMAX′または最小前輪増圧勾配P
FMIN′のいずれかとすることに相当する。なお、最小前
輪増圧勾配PFMIN′をゼロとして、保持状態が実現され
るようにしてもよい。
【0038】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、コンピュータ102のS400〜S41
4を実行する部分により推定手段が構成され、この推定
手段と、前記S200およびS202を実行する部分で
構成される前輪減速度検出手段および後輪減速度検出手
段とによって後輪動的荷重推定装置が構成されている。
そして、この後輪動的荷重推定装置と、コンピュータ1
02のS416を実行する部分で構成される前輪制動力
勾配抑制手段とによって後輪荷重抜け抑制装置が構成さ
れている。
【0039】図10は、図4に示した前輪増圧勾配変更
処理のさらに別の実施形態の内容を示すフローチャート
である。本実施形態においては、左右の前輪の増圧勾配
を独立に変更できる。まず、S500において、左前輪
と、左右の後輪との車輪加速度の差である左前輪左後輪
加速度差ΔGLL,左前輪右後輪加速度差ΔGLRがそれぞ
れ取得される。つぎに、S502において、右前輪と、
左右の後輪との車輪加速度の差である右前輪左後輪加速
度差ΔGRL,右前輪右後輪加速度差ΔGRRがそれぞれ取
得される。そして、S504において、各前輪の平均車
輪加速度である左前輪平均加速度差ΔGL ,右前輪平均
加速度差ΔGR が、例えば図10に示した式に基づいて
取得される。ここで、α,βは係数である。
【0040】これら係数の値を変更することによって、
左右の各前輪の増圧勾配の決定に際して、両後輪の加速
度の寄与の大きさや比率等を変更できることとなる。な
お、係数α,βは、定係数である必要はなく、旋回状態
等車両の走行状態に応じて動的に変化させてもよい。つ
ぎに、S506において、左前輪平均加速度差ΔGL
右前輪平均加速度差ΔGR を変数として、例えば図10
に示した関数に基づいて、左右の前輪増圧勾配PFL′,
FR′が決定される。S506に示した2つの式は、そ
れぞれが図8のS414と同様の内容をもつ。そして、
S508で、それら左右の前輪増圧勾配PFL′,PFR
で、左右の前輪が増圧される。
【0041】本実施形態においては、コンピュータ10
2のS500〜S506を実行する部分により推定手段
が構成され、この推定手段と、前記S200およびS2
02を実行する部分で構成される前輪減速度検出手段お
よび後輪減速度検出手段とによって後輪動的荷重推定装
置が構成されている。そして、この後輪動的荷重推定装
置と、コンピュータ102のS508を実行する部分で
構成される前輪制動力勾配抑制手段とによって後輪荷重
抜け抑制装置が構成されている。
【0042】以上、本願の各発明に共通の実施例を図面
に基づいて詳細に説明したが、これらの他にも、特許請
求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて
種々の変形,改良を施した態様で各発明を実施すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の各実施形態である後輪荷重抜け検出装
置,後輪荷重抜け抑制装置または後輪動的荷重推定装置
が設けられる制動装置の一例を示すシステム図である。
【図2】前後輪の一般的な理想制動力配分を説明するた
めのグラフである。
【図3】前記制動装置における電子制御装置の構成を示
すブロック図である。
【図4】上記電子制御装置のROMに格納されたメイン
処理プログラムを表すフローチャートである。
【図5】上記ROMに格納されたタイマ割り込み処理プ
ログラムを示すフローチャートである。
【図6】図4のフローチャートにおける前輪増圧勾配変
更処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図1の制動装置を備えた車両の定速走行末期か
ら制動開始直後までにおける車体速度VS0,車輪速度V
W ,車輪加速度GW の変化の一例を示すグラフである。
【図8】図4のフローチャートにおける前輪増圧勾配変
更処理の別の一例を示すフローチャートである。
【図9】図8の前輪増圧勾配変更処理において使用され
る関数f(x)の概形を示すグラフである。
【図10】図4のフローチャートにおける前輪増圧勾配
変更処理のさらに別の一例を示すフローチャートであ
る。
【符号の説明】
10 ブレーキペダル 12 マスタシリンダ 20,24,30,34 液通路 22,32,60,62 電磁開閉弁 26,36,46,56 ブレーキシリンダ 42,52,80,82 電磁開閉弁 40,44,50,54 液通路 64,84 リザーバ 68,88 ポンプ 96 モータ 98 Pバルブ 100 電子制御装置 102 コンピュータ 104 CPU 106 ROM 108 RAM 120 タイマ 140,142,144,146 車輪速度センサ 150 ストップランプスイッチ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前輪の回転を抑制する前輪ブレーキと後
    輪の回転を抑制する後輪ブレーキとを有する車両の制動
    時に、減速度に基づく荷重移動により後輪荷重の減少量
    が過大となる後輪荷重抜けを検出する後輪荷重抜け検出
    装置であって、 前記前輪の回転減速度を検出する前輪減速度検出手段
    と、 前記後輪の回転減速度を検出する後輪減速度検出手段
    と、 それら両減速度検出手段により検出された後輪減速度が
    前輪減速度より大きいことを少なくとも1つの条件とし
    て前記後輪荷重抜けの判定を行う判定手段とを含むこと
    を特徴とする後輪荷重抜け検出装置。
  2. 【請求項2】 前記判定手段が、前記後輪減速度から前
    記前輪減速度を引いた減速度差が設定減速度差を超える
    状態が予め定められた条件を超えて発生した場合に後輪
    荷重抜けが発生したと判定する過大減速度差発生状態依
    拠判定手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の後
    輪荷重抜け検出装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の後輪荷重抜け
    検出装置と、その後輪荷重抜け検出装置により後輪荷重
    抜けが検出された場合に前記前輪ブレーキの制動力の増
    大勾配を抑制する前輪制動力勾配抑制手段とを含むこと
    を特徴とする後輪荷重抜け抑制装置。
  4. 【請求項4】 前輪の回転を抑制する前輪ブレーキと後
    輪の回転を抑制する後輪ブレーキとを有する車両の制動
    時に、減速度に基づく荷重移動により動的に変動する後
    輪荷重の値である後輪動的荷重を推定する後輪動的荷重
    推定装置であって、 前記前輪の回転減速度を検出する前輪減速度検出手段
    と、 前記後輪の回転減速度を検出する後輪減速度検出手段
    と、 前記後輪減速度検出手段により検出された後輪減速度か
    ら前記前輪減速度検出手段により検出された前輪減速度
    を引いた減速度差が大きい場合に小さい場合に比して後
    輪動的荷重が小さいと推定する推定手段とを含むことを
    特徴とする後輪動的荷重推定装置。
JP15379496A 1996-06-14 1996-06-14 後輪荷重抜け検出,抑制および後輪動的荷重推定装置 Pending JPH101040A (ja)

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