JP2011183826A - 車両の旋回制御装置 - Google Patents

車両の旋回制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2011183826A
JP2011183826A JP2010047834A JP2010047834A JP2011183826A JP 2011183826 A JP2011183826 A JP 2011183826A JP 2010047834 A JP2010047834 A JP 2010047834A JP 2010047834 A JP2010047834 A JP 2010047834A JP 2011183826 A JP2011183826 A JP 2011183826A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yaw rate
vehicle
braking force
turning
control amount
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010047834A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5358487B2 (ja
Inventor
Tomoyuki Nimura
知幸 二村
Takeshi Kojima
武志 小島
Kazutake Omura
一剛 大村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2010047834A priority Critical patent/JP5358487B2/ja
Publication of JP2011183826A publication Critical patent/JP2011183826A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5358487B2 publication Critical patent/JP5358487B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Regulating Braking Force (AREA)

Abstract

【課題】通常旋回時の回頭性を向上する。
【解決手段】車両の走行状態に基づいて左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能な車両の旋回制御装置1であって、横Gセンサ5と車速センサ4の検知信号に基づいて横G規範ヨーレートを算出する横G規範ヨーレート演算部14と、操舵角センサ3と車速センサ4の検知信号に基づいて定常規範ヨーレートを決定する定常規範ヨーレート演算部12と、定常規範ヨーレートに基づいて横G規範ヨーレートを増加方向に補正して限界規範ヨーレートを算出する補正部15と、限界規範ヨーレートとヨーレートセンサ6により検知された実ヨーレートとのヨーレート偏差を算出し、ヨーレート偏差を打ち消す方向へ制動力制御量を決定するFB制御量演算部19と、FB制御量演算部19により決定された制動力制御量に基づいて制動力を制御するブレーキ装置10と、を備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、制動を利用して車両の旋回を制御する車両の旋回制御装置に関するものである。
この種の旋回制御装置には、車両の左右方向の加速度(以下、横加速度という)と車速に基づいて算出される横G規範ヨーレートと車両の実ヨーレートとの偏差を0に近づける方向に、特定の車輪を制動制御することにより、車両挙動の安定化を図るものが知られている。
また、別の旋回制御装置として、制動時に、旋回状態(例えば、操舵角や操舵角の変化率)に応じて、前輪の左右の制動力を異ならせるとともに後輪の左右の制動力を異ならせるように制御することにより、ヨーモーメントをアシストし、回頭性の向上を図るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、操舵角速度または操舵角加速度に基づき算出した第1ヨーモーメントと、操舵角と車速とヨーレートに基づき算出した第2ヨーモーメントと、を加算して修正ヨーモーメントを算出し、この修正ヨーモーメントを発生するように前輪の左右の制動力を異ならせるとともに後輪の左右の制動力を異ならせるように制御して、回頭性の向上を図るものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許第2572860号公報 特開2005−153716号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載の旋回制御装置では、制動時の旋回時に常にヨーモーメントをアシストするので、ヨーモーメントが過大となって安定性が低減する場合が考えられ、現実的ではない。
一方、前記特許文献2に記載の旋回制御装置は、急旋回時(操舵角速度や操舵角加速度が大きいとき)に前記第1ヨーモーメントが大きく反映されるようになっており、このときには回頭性が向上するが、通常旋回時には効果的でない。そのため、通常旋回時に回頭性を向上することができる旋回制御装置が切望されている。
そこで、この発明は、通常旋回時の回頭性を向上させることができる車両の旋回制御装置を提供するものである。
この発明に係る車両の旋回制御装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両の操舵量を検知する操舵量検知手段(例えば、後述する実施例における操舵角センサ3)と、前記車両の車速を検知または推定する車速検知手段(例えば、後述する実施例における車速センサ4)と、前記車両の左右方向の加速度を検知する横加速度検知手段(例えば、後述する実施例における横Gセンサ5)と、前記車両のヨーレートを検知するヨーレート検知手段(例えば、後述する実施例におけるヨーレートセンサ6)とを備え、前記車両の走行状態に基づいて左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能な車両の旋回制御装置(例えば、後述する実施例における車両の旋回制御装置1)であって、
前記横加速度検知手段および前記車速検知手段の検知信号に基づいて第1規範ヨーレート(例えば、後述する実施例における横G規範ヨーレートω_low)を算出する制御量演算部(例えば、後述する実施例における横G規範ヨーレート演算部14)と、
前記操舵量検知手段および前記車速検知手段の検知信号に基づいて車速が低速ほど高ゲインとなる補正基準値(例えば、後述する実施例における定常規範ヨーレートω_high)を決定する補正基準値設定手段(例えば、後述する実施例における定常規範ヨーレート演算部12)と、
前記補正基準値に基づいて前記第1規範ヨーレートを増加方向に補正して第2規範ヨーレート(例えば、後述する実施例における限界規範ヨーレートω_TAR)を算出する補正部(例えば、後述する実施例における補正部15)と、
前記第2規範ヨーレートと前記ヨーレート検知手段により検知された実ヨーレートとのヨーレート偏差を算出し、前記ヨーレート偏差を打ち消す方向へ制動力制御量を決定する制動力制御量演算部(例えば、後述する実施例におけるFB制御量演算部19)と、
前記制動力制御量演算部により決定された制動力制御量に基づいて前記制動力を制御する制動制御手段(例えば、後述する実施例におけるブレーキ装置10)と、
を備えることを特徴とする車両の旋回制御装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記補正部は、車速が大きいほど前記第2規範ヨーレートが小さくなるように補正量を決定することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、アクセル開度またはアクセルペダル操作量に基づいて要求トルクの大きさを検知する要求トルク検知手段(例えば、後述する実施例におけるアクセル開度センサ7)を備え、前記補正部は、前記要求トルク検知手段の検知信号が所定値よりも小さいときに、車速が小さいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように補正量を決定することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記補正部は、前記操舵量検知手段の検知信号に基づいて算出される転舵速度または転舵量が大きいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように補正量を決定することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記補正基準値設定手段が決定した補正基準値に基づいて第2の制動力制御量を決定する第2制動力制御量演算部(例えば、後述する実施例におけるFF制御量演算部18)を備え、前記制動制御手段は、前記制動力制御量演算部が決定した前記制動力制御量と前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量とを加算または乗算することにより得られる総制動力制御量に基づいて前記制動力を制御することを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、所定の運転状態のときに前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量を無効にする無効化手段(例えば、後述する実施例におけるゲインテーブル63,67)を備えることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、横加速度と車速に基づいて算出される第1規範ヨーレートを増加方向に補正して第2規範ヨーレートを算出し、この第2規範ヨーレートと実ヨーレートとのヨーレート偏差を打ち消す方向に制動力を制御してヨーモーメントを発生させることができるので、通常の旋回時にも回頭性が向上し、操舵の応答性が向上する。
請求項2に係る発明によれば、高速域において車両挙動の安定性が低下するのを防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、例えば、低中車速のタックイン時の回頭性が向上する。
請求項4に係る発明によれば、前方障害物からの回避操作やレーンチェンジなどのときの操舵の応答性が向上する。
請求項5に係る発明によれば、操舵の応答性が向上するとともに、追従性が向上する。例えば、定常円旋回時などのように、操舵入力後に操舵保持という過程において、制御量の変動が抑制されて追従性が向上する。
請求項6に係る発明によれば、第2の制動力制御量を加味すると車両挙動の安定性を低下させる虞のある特定の条件下、例えば、高車速時や高操舵速度時やABS作動時などにおいて、第2の制動力制御量を無効とすることができ、車両挙動の安定性を維持することができる。
この発明に係る車両の旋回制御装置の実施例における制御ブロック図である。 実施例における補正部のブロック図である。 横G規範ヨーレートと舵角規範ヨーレートと限界規範ヨーレートの関係を説明する図である。 配分係数HB1の算出方法を説明する図である。 補正係数HS1の算出方法を説明する図である。 補正係数HS2決定処理を示すフローチャートである。 補正係数HS3の算出方法を説明する図である。 実施例における制動力制御量算出のブロック図である。
以下、この発明に係る車両の旋回制御装置の実施例を図1から図8の図面を参照して説明する。
図1は、実施例の車両の旋回制御装置における制御ブロック図である。
車両の旋回制御装置1は、ブレーキ制御部2と、ブレーキ装置10とを備えている。
ブレーキ制御部2は車両の走行状態に応じて前後左右輪の制動力制御量を決定し、ブレーキ装置10は、ブレーキ制御部2によって決定された各輪の制動力制御量に基づいて、各輪の制動力を制御する。
ブレーキ制御部2には、車両のステアリングホイールの操舵角(操舵量)を検知する操舵角センサ3、車速を検知する車速センサ4、車両の左右方向(車幅方向)の加速度すなわち横加速度(以下、横Gと略す)を検知する横加速度センサ(以下、横Gセンサと略す)5、車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサ6、車両のアクセル開度を検知するアクセル開度センサ7から、それぞれ検出値に応じた検知信号が入力され、また、車両の車輪と路面との摩擦係数を算出するμ算出部8から、算出した摩擦係数に応じた電気信号が入力される。
ブレーキ制御部2は、舵角規範ヨーレート演算部11、定常規範ヨーレート演算部12、定常ヨーレート偏差演算部13、横G規範ヨーレート演算部14、補正部15、限界ヨーレート偏差演算部16、制御量演算部17とを備えており、制御量演算部17は、フィードフォワード制御量演算部(以下、FF制御量演算部と略す)18と、フィードバック制御量演算部(以下、FB制御量演算部と略す)19と、を備えている。
舵角規範ヨーレート演算部11は、操舵角センサ3により検知された舵角と、車速センサ4により検知された車速とに基づいて、舵角規範ヨーレートを算出する。運転者が車両を積極的に曲げたいときには操舵角を大きくするので、舵角規範ヨーレートは大きくなる。つまり、舵角に基づいて算出される舵角規範ヨーレートが大きいときは、車両を曲げたいという運転者の操舵意志が大きいと推定することができる。
定常規範ヨーレート演算部12は、定常規範ヨーレートゲインテーブル21を参照して車速に応じた定常規範ヨーレートゲインKvを算出し、舵角規範ヨーレートに定常規範ヨーレートゲインKvを乗じて定常規範ヨーレートω_highを算出する。この実施例における定常規範ヨーレートゲインテーブル21は、横軸が車速、縦軸が定常規範ヨーレートゲインKvであり、車速が大きくなるほど定常規範ヨーレートゲインKvは1に収束し、車速が小さくなるほど定常規範ヨーレートゲインKvが大きくなるように設定されている。この実施例において、定常規範ヨーレートω_highは補正基準値を構成し、定常規範ヨーレートω_highは車速が低いほど高ゲインとなる。
定常ヨーレート偏差演算部13は、定常規範ヨーレートω_highから舵角規範ヨーレートを減算し、定常ヨーレート偏差Δωffを算出する。
横G規範ヨーレート演算部14は、横Gセンサ5により検知された横Gと、車速センサ4により検知された車速とに基づいて、横G規範ヨーレートω_lowを算出する。横G規範ヨーレートω_lowは、現在の横Gで発生することができるヨーレートであり、例えばω_low=Gy/Vで表される。ここでGyは横Gセンサ5により検知された横加速度検出値、Vは車速センサ4により検知された車体速である。
補正部15は、定常規範ヨーレートω_highと横G規範ヨーレートω_lowとに基づいて限界規範ヨーレートω_TARを算出する。補正部15における限界規範ヨーレートω_TARの算出方法については後で詳述する。
限界ヨーレート偏差演算部16は、限界規範ヨーレートω_TARからヨーレートセンサ6により検知されたヨーレート(実ヨーレート)を減算し、限界ヨーレート偏差Δωfbを算出する。
制御量演算部17は、FF制御量演算部18において定常ヨーレート偏差Δωffに基づいてフィードフォワード制御量(以下、FF制御量と略す)を算出し、FB制御量演算部19において限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいてフィードバック制御量(FB制御量と略す)を算出し、FF制御量とFB制御量を加算して総制御量を算出し、ブレーキ装置10に指令値として出力する。制御量演算部17における総制御量の算出方法については後で詳述する。
次に、図2から図7の図面を参照して、補正部15における限界規範ヨーレートω_TARの算出方法を説明する。
図2に示すように、補正部15は、配分係数HB1演算部31、基準限界規範ヨーレート演算部32、補正係数HS1演算部33、補正係数HS2演算部34、補正係数HS3演算部35を備えている。
補正部15では、基準限界規範ヨーレート演算部32において、配分係数HB1演算部31で算出した配分係数HB1と定常規範ヨーレートω_highと横G規範ヨーレートω_lowとに基づいて基準限界規範ヨーレートω_t1が算出される。さらに、この基準限界規範ヨーレートω_t1に、補正係数HS1演算部33および補正係数HS2演算部34で算出した補正係数HS1,HS2を乗じ、さらに補正係数HS3演算部35で算出した補正係数HS3を加算することにより、限界規範ヨーレートω_TARが算出される。
ω_TAR=ω_t1×HS1×HS2+HS3 ・・・ 式(1)
この限界規範ヨーレートω_TARは、フィードバック制御におけるヨーレート目標値となる。
詳述すると、基準限界規範ヨーレート演算部32は、従来の操舵アシストブレーキ制御におけるフィードバック制御において目標値としていた横G規範ヨーレートω_lowを、操舵角に基づいて算出された定常規範ヨーレートω_highに関連させて、増加する方向に補正して基準限界規範ヨーレートω_t1を算出する。これにより、車体に発生しているヨーモーメントを安定させる制御と、操舵の応答性を向上させる制御の両立を図っている。
ここで、横G規範ヨーレートの増加補正について図3を参照して説明する。図3は、直進状態からステアリングホイールを回転し、所定の操舵角に保持するまでの舵角規範ヨーレートと横G規範ヨーレートの時間的変化を示している。このように、通常、舵角規範ヨーレートは横G規範ヨーレートよりも大きい。そこで、横G規範ヨーレートを増加補正する方法として、舵角規範ヨーレートに近づけるように補正することとし、舵角規範ヨーレートにどの程度近づけるかを走行状態に応じて調整し、その調整手段に横G規範ヨーレートと舵角規範ヨーレートの配分係数という概念を採用した。
そして、この実施例では、これをさらに発展させて、横G規範ヨーレートを増加補正する方法として、舵角規範ヨーレートに基づいて算出された定常規範ヨーレートω_highに近づけるように補正することとした。
詳述すると、この実施例では、配分係数HB1演算部31により算出された配分係数HB1と、横G規範ヨーレートω_lowと、定常規範ヨーレートω_highに基づいて、式(2)から基準限界規範ヨーレートω_t1を算出する。
ω_t1=HB1×ω_high+(1−HB1)×ω_low ・・・ 式(2)
ここで、配分係数HB1は0から1の数値であり、HB1=0の場合には基準限界規範ヨーレートω_t1は横G規範ヨーレートω_lowとなり、HB1=1の場合には基準限界規範ヨーレートω_t1は定常規範ヨーレートω_highとなる。
次に、図4を参照して、配分係数HB1演算部31において算出される配分係数HB1について説明する。
配分係数HB1は、車速に応じて算出される配分係数HB1aと、ヨーレート変化率に応じて算出される配分係数HB1bと、ヨーレート偏差積分に応じて算出される配分係数HB1cと、転舵速度に応じて算出される配分係数HB1dとを乗算して算出される。
HB1=HB1a×HB1b×HB1c×HB1d ・・・ 式(3)
各配分係数HB1a,HB1b,HB1c,HB1dは、それぞれ図4に示す配分係数テーブル40,41,42,43を参照して算出される。この実施例における各配分係数テーブル40,41,42,43を説明する。
配分係数HB1aを算出する配分係数テーブル40において、横軸は車速であり、縦軸は配分係数HB1aである。この配分係数テーブル40は、低車速域ではHB1a=1で一定で、車速が所定値以上になると車速が高くなるにしたがって配分係数HB1aが徐々に小さくなっていき、高速域ではHB1a=0で一定となる。これにより、車速が低いときには、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくして、回頭性および追従性を向上させ、車速が高いときには、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにして、車両挙動の安定性を確保することができる。
配分係数HB1bを算出する配分係数テーブル41において、横軸はヨーレート変化率であり、縦軸は配分係数HB1bである。この配分係数テーブル41は、ヨーレート変化率が小さい領域ではHB1b=1で一定で、ヨーレート変化率が所定値以上になるとヨーレート変化率が大きくなるにしたがって配分係数HB1bが徐々に小さくなっていき、ヨーレート変化率が大きい領域ではHB1b=0で一定となる。ここで、ヨーレート変化率とは、ヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートの時間的変化であり、実ヨーレートを時間微分することにより算出することができる。例えば、激しいスラローム走行をしているときや、車両挙動が不安定であるときなどには、大きなヨーレート変化率が現れる。このようなときには、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくすべきではないので、ヨーレート変化率が大きいときには配分係数HB1bを小さい値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
配分係数HB1cを算出する配分係数テーブル42において、横軸はヨーレート偏差積分値であり、縦軸は配分係数HB1cである。この配分係数テーブル42は、ヨーレート偏差積分値が小さい領域ではHB1c=1で一定で、ヨーレート偏差積分値が所定値以上になるとヨーレート偏差積分値が大きくなるにしたがって配分係数HB1cが徐々に小さくなっていき、ヨーレート偏差積分値が大きい領域ではHB1c=0で一定となる。ここで、ヨーレート偏差積分値とは、限界規範ヨーレートとヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートとの偏差すなわち限界ヨーレート偏差Δωfbを操舵を開始したときから積算した値である。例えば、限界ヨーレート偏差Δωfbが小さくてもその状態が長時間続いた場合にはヨーレート偏差積分値が大きくなる。このようなときは、ゆっくりではあるが徐々に車がスピン状態になっている可能性があるので、FB制御量演算部19において目標値となる限界規範ヨーレートω_TARを大きくすべきではない。そこで、ヨーレート偏差積分値が大きいときには配分係数HB1cを小さい値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
配分係数HB1dを算出する配分係数テーブル43において、横軸は転舵速度であり、縦軸は配分係数HB1dである。
この配分係数テーブル43は、転舵速度が大きいほど配分係数HB1dが大きくなり、且つ、転舵速度が正の場合には転舵速度が負の場合よりも配分係数HB1dが大きくなるように設定されている。ここで、転舵速度は操舵角センサ3で検知される操舵角の時間変化量と舵角に基づき決定される値であり、操舵角を時間微分して舵角と比較することにより算出することができる。転舵速度が正の場合とは、ステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から離間する方向に回転操作している状態で同方向に向けた時間変化量が生じているときおよびステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)に向けて回転操作している状態で同方向への時間変化量が生じているときであり、転舵速度が負の場合とは、ステアリングホイールを中立位置(直進方向位置)から離間する方向に回転操作している状態で中立位置に向く方向に時間変化量が生じているときおよびステアリングホイールを中立位置に戻す方向に回転操作している状態で中立位置から離間する方向に時間変化量が生じているときである。
転舵速度が正の場合は、運転者が車両を大きく曲げたいという操作意志が大きいと推定することができるので、転舵速度が大きくなるほど配分係数HB1dを大きい値にして(最大値はHB1d=1で一定)、限界規範ヨーレートω_TARが大きくなるようにする。これにより、操舵の応答性を向上させる。一方、転舵速度が負の場合は、運転者が操作を収束させたい状態と推定することができるので、転舵速度の絶対値が大きくなるほど配分係数HB1dを小さい値にして(最小値はHB1d=0で一定)、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにする。
これにより、前方障害物からの回避操作やレーンチェンジなどのときの操舵の応答性が向上する。
なお、配分係数HB1dは転舵速度に代えて転舵角(転舵量)に基づいて算出してもよい。転舵角が大きいほど、運転者が車両を積極的に曲げたいという操作意志が大きいと推定することができるからである。この場合の、転舵角は操舵角と同義である。
次に、図5を参照して、補正係数HS1演算部33において算出される補正係数HS1について説明する。
この補正係数HS1は、運転者が車両を前荷重にしてハンドルを切ることにより車両を曲げる操作を行うときなどを想定した補正係数である。
図5に示すように、補正係数HS1は、操舵速度に応じて算出される補正係数HS1aと、車両の前荷重に応じて算出される補正係数HS1bとを乗算して算出される。
HS1=HS1a×HS1b ・・・ 式(4)
車両の前荷重とは車両前方への荷重移動量であり、例えば、車両の前後方向の加速度を検知する図示しない前後加速度センサに基づいて推定することができる。この場合、前後加速度センサは、前後方向への荷重移動量を推定する荷重移動量推定手段と言うことができる。
各補正係数HS1a,HS1bは、それぞれ図5に示す補正係数テーブル44,45を参照して算出される。この実施例における補正係数テーブル44,45を説明する。
補正係数HS1aを算出する補正係数テーブル44において、横軸は操舵速度であり、縦軸は補正係数HS1aである。この補正係数HS1aテーブル44は、操舵速度が小さい領域ではHS1a=1で一定で、操舵速度が所定値以上になると操舵速度が大きくなるにしたがって補正係数HS1aが徐々に小さくなっていき、操舵速度が大きい領域ではHS1a=0で一定となる。
補正係数HS1bを算出する補正係数テーブル45において、横軸は前荷重(車両前方への荷重移動量)であり、縦軸は補正係数HS1bである。この補正係数HS1bテーブル45は、前荷重が小さい領域ではHS1b=1で一定で、前荷重が所定値以上になると前荷重が大きくなるにしたがって補正係数HS1bが徐々に小さくなっていき、前荷重が大きい領域ではHS1b=0で一定となる。
前述したように車両を前荷重にしてハンドルを切ると車両を曲げ易くなるが、前荷重が大きくなるにしたがって車両挙動が不安定になり易く、また、操舵速度が大きいほど車両挙動が不安定になり易い。補正係数HS1は、このような操舵時の限界規範ヨーレートω_TARを調整するための補正係数である。
補正係数HS1を上述のように算出する結果、操舵速度が小さい領域で且つ前荷重が小さい領域では補正係数HS1は1となるので、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすることができ、回頭性を向上することができる。これに対して、操舵速度および前荷重が大きくなるにしたがって補正係数HS1は1よりも小さくなっていくので、限界規範ヨーレートω_TARを小さくすることができ、車両挙動の安定性を確保することができる。
次に、補正係数HS2演算部34において算出される補正係数HS2について説明する。
この補正係数HS2は、車輪と路面との摩擦係数(以下μと略す)が高い路面(以下、高μ路と略す)でレーンチェンジ(操舵をして、すぐに元の進行方向に戻す操作)をする場合を想定した補正係数である。
補正係数HS2は、1を最大値として、下記の条件を満たした場合に所定の減少カウント値を初期値から減算し、下記のいずれの条件も満たさない場合に1に向けて所定の増加カウント値を加算するよう構成されるゲインである。条件としては、(a)摩擦係数μが高いと判断されたとき(または高摩擦係数の路面走行に対応する前後または横方向加速度が検出されているとき)、(b)操舵角が大きいと判断されたとき、(c)横G減少率が大きいと判断されたとき、(d)ヨーレート減少率が大きいと判断されたときに所定の減少カウント値を減算する。なお、上記条件は、(a)から(d)のうち少なくとも1つまたは複数を任意に組合わせたものであればよい。特に高摩擦係数時の車両挙動収束性を考慮すると、上記(a)と、(b)から(d)のいずれかを組合わせて用いることが好ましい。
なお、摩擦係数μは、μ算出部8により算出される。また、横G減少率とは、横Gの減少速度であり、横Gセンサ5で検知される横Gに基づいて算出することができ、ヨーレート減少率とは、ヨーレートセンサ6で検知される実ヨーレートの減少速度である。
図6のフローチャートに従って、補正係数HS2を決定する処理の一例を説明する。
初めに、ステップS01において、摩擦係数μが閾値μthよりも大きいか否かを判定する。
ステップS01における判定結果が「YES」(μ>μth)である場合には、ステップS02に進み、操舵角δが閾値δthよりも大きいか(δ>δth)、あるいは、横G減少率ΔGが閾値ΔGthよりも大きいか(ΔG>ΔGth)、あるいは、ヨーレート減少率γが閾値γthよりも大きいか(γ>γth)のうち1つでも満たすものがあるか否かを判定する。
ステップS02における判定結果が「YES」である場合には、ステップS03に進み、減算処理により補正係数HS2を決定し、本ルーチンの実行を一旦終了する。この減算処理は、補正係数HS2の初期値から所定の減算カウント値を減算していき、補正係数HS2が0に収束していくようにする。
一方、ステップS01における判定結果が「NO」(μ≦μth)である場合、および、ステップS02における判定結果が「NO」である場合には、ステップS04に進み、加算処理により補正係数HS2を決定し、本ルーチンの実行を一旦終了する。この加算処理は、所定の増加カウント値を加算していき、補正係数HS2が1に収束していくようにする。
なお、補正係数HS2の初期値は0から1の間の所定値とする。
高μ路においてレーンチェンジを行ったときに、ヨーレートおよび横Gが急激に減少する場合には、操舵により進行したい方向と逆の方向へ大きなヨーレートが発生することがある。この時に、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすると、操舵に対する車両のトレース性が悪化する虞がある。補正係数HS2はこれを抑制するためのものである。つまり、摩擦係数μ、操舵角、横G減少率、ヨーレート減少率が大きい場合には、補正係数HS2を小さい値とすることで、限界規範ヨーレートω_TARを大きくしないようにし、これによりレーンチェンジ後のヨーレートの収束性を向上する。
次に、図7を参照して、補正係数HS3演算部35において算出される補正係数HS3について説明する。
この補正係数HS3は、運転者がタックインをしたときなどを想定した補正係数である。タックインは、旋回中にアクセルペダルを急に戻したときに車両が前荷重となって旋回内側に入り込む現象であるが、運転者によってはこれを利用して積極的に旋回操作を行う場合がある。しかしながら、このタックインを利用した旋回操作は、車両への要求トルクが大きいとき(換言すると、アクセル開度が大きいとき)からアクセルを開放するときや、車速が大きいときには、車両挙動が不安定になり易い。補正係数HS3は、タックイン時の限界規範ヨーレートω_TARを調整するための補正係数である。
図7に示すように、補正係数HS3は、車速に応じて算出される補正係数HS3aと、車両の要求トルクに応じて算出される補正係数HS3bとを乗算して算出される。
HS3=HS3a×HS3b ・・・ 式(6)
なお、車両の要求トルクは、アクセル開度センサ7で検知したアクセル開度から算出することができる。
各補正係数HS3a,HS3bは、それぞれ図7に示す補正係数テーブル51,52を参照して算出される。この実施例における補正係数テーブル51,52を説明する。
補正係数HS3aを算出する補正係数テーブル51において、横軸は車速であり、縦軸は補正係数HS3aである。この補正係数HS3aテーブル51は、車速が所定値よりも小さい領域ではHS3aは正の一定値であり、車速が前記所定値以上になると車速が大きくなるにしたがって補正係数HS3aが徐々に小さくなっていき、所定速度V0を越えると負の値となり、車速が非常に大きい領域ではHS3aは負の一定値となる。
補正係数HS3bを算出する補正係数テーブル52において、横軸は車両の要求トルクであり、縦軸は補正係数HS3bである。この補正係数HS3bテーブル52は、要求トルクが所定値T0よりも小さい領域ではHS3bが正の値で、要求トルクが所定値T0以上の領域では補正係数HS3b=0となる。ここで、前記所定値T0は極めて小さい値であり、例えば、アクセル開度がゼロに近いときに対応した要求トルクに設定する。
このように補正係数テーブル51,52を設定することにより、要求トルクが所定値T0以上の場合(すなわち、タックイン状態ではないと判断されるとき)には、車速の大きさに関わらず補正係数HS3が0となり、限界規範ヨーレートω_TARを補正しないようにすることができる。
また、要求トルクが所定値T0以下の場合(すなわち、タックイン状態であると判断されるとき)には、車速がV0よりも小さいときには、補正係数HS3が正の値となるので、限界規範ヨーレートω_TARが大きくすることができ、車速がV0以上のときには、補正係数HS3が負の値となるので、限界規範ヨーレートω_TARを小さくすることができる。さらに、車速がV0よりも小さい場合、要求トルクが同じときには、車速が小さいほど補正係数H3を正値の大きな値にして、限界規範ヨーレートω_TARを大きくすることができる。これにより、車速が低中速のタックイン時の回頭性を向上させることができる。一方、車速がV0以上の場合、要求トルクが同じときには、車速が大きいほど補正係数H3を負値の大きな値にして、限界規範ヨーレートω_TARを小さくすることができる。
次に、図8を参照して、制御量演算部17において実行されるブレーキ制御量演算について説明する。
前述したように、制御量演算部17は、FF制御量演算部18において定常ヨーレート偏差Δωffに基づいてFF制御量を算出し、FB制御量演算部19において限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいてFB制御量を算出し、FF制御量とFB制御量を加算して各輪に対する総制御量を算出する。
初めに、FF制御量演算部18におけるFF制御量の算出について説明する。
まず、操舵角センサ3で検知された操舵角に基づいて、前輪側の旋回内輪(以下、FR旋回内輪と略す)と後輪側の旋回内輪(以下、RR旋回内輪と略す)に対する増圧配分を決定し、この増圧配分に基づいて、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frとRR旋回内輪に対する増圧係数K1rrを算出する。ここで、操舵による荷重移動が大きい場合には、操舵角に応じて、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frが大きくなるように設定してもよい。
そして、FR旋回内輪に対する増圧係数K1frとRR旋回内輪に対する増圧係数K1rrに基づいて、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出と、RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出が、並行して実施される。
まず、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffの算出を説明する。定常ヨーレート偏差演算部13で演算された定常ヨーレート偏差Δωffに増加係数K1frを乗じて、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffを算出する。
次に、増圧量テーブル60を参照し、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffに応じて、FR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkを算出する。増圧量テーブル60において、横軸は定常ヨーレート偏差Δω1ffであり、縦軸はブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkである。この実施例では、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffが0以下の場合にはブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkは0であり、FR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω1ffが0以上では定常ヨーレート偏差Δω1ffが大きくなるにしたがってブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkが増大していく。
次に、リミット処理部61において、FR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、上限値算出部62によって算出される任意の値であり、この値を超えないよう設定することで液圧増圧量ΔPlffkの急変動を抑制する。
次に、リミット処理されたFR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP1ffkに、車速に応じたゲインを乗じて、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP1ffを算出する。なお、車速に応じたゲインは、ゲインテーブル63に基づいて算出される。このゲインテーブル63において、横軸は車速であり、縦軸はゲインであって、車速が小さい領域ではゲイン=1で一定で、車速が所定値以上になると車速が大きくなるにしたがってゲインが徐々に小さくなっていき、車速が大きい領域ではゲイン=0で一定となる。
このように車速に応じたゲインを乗じる結果、車速が大きいときには、FR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffは0となる。換言すると、高車速時にはFR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffが無効とされる。これにより、高車速時に操舵アシストブレーキに起因して車両挙動が不安定になるのを防止することができる。この実施例において、ゲインテーブル63は無効化手段を構成する。なお、車速に応じたゲインを乗じるのに替えて、高車速ほど低くなる制限値を与え、この制限値をΔPlffが上回らないように設定してもよい。
RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffの算出は、FR旋回内輪に対するFF増圧量ΔPfr1の算出と同じであるので、簡単に説明する。
定常ヨーレート偏差演算部13で演算された定常ヨーレート偏差Δωffに、RR旋回内輪に対する増加係数K1rrを乗じて、RR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω2ffを算出する。
次に、増圧量テーブル64を参照し、RR旋回内輪に対する定常ヨーレート偏差Δω2ffに応じて、RR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkを算出する。増圧量テーブル64は増圧量テーブル60と同じであるので説明を省略する。
次に、リミット処理部65において、RR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkが上限値を超えないようにリミット処理を行う。上限値は、上限値算出部66によって算出される。上限値算出部66は上限値算出部62と同じである。
次に、リミット処理されたRR旋回内輪のブレーキ液圧増圧量ΔP2ffkに、ゲインテーブル67により算出したゲインを乗じて、RR旋回内輪に対するFF増圧量ΔP2ffを算出する。ゲインテーブル67はゲインテーブル63と同じであるので、説明を省略する。この実施例において、ゲインテーブル67は無効化手段を構成する。
また、FF制御量演算部18は、内輪減圧量算出部70を備えている。内輪減圧量算出部70は、高速時や高横Gの時には制動により車両挙動が不安定となるという前提の下に、予め旋回内輪のブレーキ液圧を制限するためのものである。
内輪減圧量算出部70では、第1減圧率テーブル71を参照して車速に応じた減圧率を算出するとともに、第2減圧率テーブル72を参照して横Gに応じた減圧率を算出し、これら減圧率を乗じることで総減圧率を算出する。
第1減圧率テーブル71において、横軸は車速であり、縦軸は減圧率であって、車速が小さい領域では減圧率=0で一定で、車速が所定値以上になると車速が大きくなるにしたがって減圧率が徐々に大きくなっていき、車速が大きい領域では減圧率=1で一定となる。
第2減圧率テーブル72において、横軸は横Gであり、縦軸は減圧率であって、横Gが小さい領域では減圧率=0で一定で、横Gが所定値以上になると横Gが大きくなるにしたがって減圧率が徐々に大きくなっていき、横Gが大きい領域では減圧率=1で一定となる。
これにより、総減圧率は、走行時の車速および横Gに応じて、0から1の間の値に設定されることとなる。
そして、このようにして求めた総減圧率にブレーキ装置10のマスタシリンダ圧を乗じ、さらにマイナス1を乗じて内輪減圧量ΔPdを求める。
次に、FB制御量演算部19におけるFB制御量の算出について説明する。
FB制御量演算部19では、限界ヨーレート偏差演算部16で演算された限界ヨーレート偏差Δωfbに基づいて、FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fb、前輪側の旋回外輪(以下、FR旋回外輪と略す)のFB増圧量ΔP3fb、RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fb、後輪側の旋回外輪(以下、RR旋回外輪と略す)のFB増圧量ΔP4fbを算出する。なお、以降の旋回方向は偏差Δωfbの符号が正で、規範ヨーレートおよび実ヨーレートがともに正の場合を例に説明する。
FR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル80を参照して算出する。増圧量テーブル80において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP1fbである。この実施例では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合にはFB増圧量ΔP1fbは0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上では限界ヨーレート偏差Δωfbが大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP1fbが増大していく。
RR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル81を参照して算出する。増圧量テーブル81において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP2fbである。この実施例では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合にはFB増圧量ΔP2fbは0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上では限界ヨーレート偏差Δωfbが大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP2fbが増大していく。
FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル82を参照して算出する。増圧量テーブル82において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP3fbである。この実施例では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合にはFB増圧量ΔP3fbは0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下では限界ヨーレート偏差Δωfbの絶対値が大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP3fbが増大していく。
RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbは、限界ヨーレート偏差Δωfbに基づき、増圧量テーブル83を参照して算出する。増圧量テーブル83において、横軸は限界ヨーレート偏差Δωfbであり、縦軸はFB増圧量ΔP4fbである。この実施例では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合にはFB増圧量ΔP4fbは0であり、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下では限界ヨーレート偏差Δωfbの絶対値が大きくなるにしたがってFB増圧量ΔP4fbが増大していく。
つまり、FB制御量演算部19では、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以上の場合は、実ヨーレートが限界規範ヨーレートよりも小さいので、ヨーレートを増大させる方向(換言すれば、限界ヨーレート偏差Δωfbを打ち消す方向)に、各輪のFB制御量を設定する。具体的には、FR旋回内輪およびRR旋回内輪のブレーキ液圧を増大させる方向にFB増圧量を設定し、FR旋回外輪およびRR旋回外輪のブレーキ液圧を増大させないようにFB増圧量を設定する。
一方、限界ヨーレート偏差Δωfbが0以下の場合は、実ヨーレートが限界規範ヨーレートよりも大きいので、ヨーレートを減少させる方向(換言すれば、限界ヨーレート偏差Δωfbを打ち消す方向)に、各輪のFB制御量を設定する。具体的には、FR旋回外輪およびRR旋回外輪のブレーキ液圧を増大させる方向にFB増圧量を設定し、FR旋回内輪およびRR旋回内輪のブレーキ液圧を増大させないようにFB増圧量を設定する。
そして、制御量演算部17は、FR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffとFR旋回内輪のFB増圧量ΔP1fbと内輪減圧量ΔPdを加算した値をFR旋回内輪に対する総制御量とし、RR旋回内輪のFF増圧量ΔP2ffとRR旋回内輪のFB増圧量ΔP2fbと内輪減圧量ΔPdを加算した値をRR旋回内輪に対する総制御量とし、FR旋回外輪のFB増圧量ΔP3fbをFR旋回外輪の総制御量とし、RR旋回外輪のFB増圧量ΔP4fbをRR旋回外輪の総制御量として、ブレーキ装置10に出力する。
ブレーキ装置10は、入力した各輪の制御量に応じて、各輪のブレーキ圧を制御する。
この実施例の車両の旋回制御装置によれば、補正部15により、操舵角に基づいて算出される定常規範ヨーレートω_highに関連させて、横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正し、限界規範ヨーレートω_TARを算出しているので、車体に発生しているヨーモーメントを安定させる制御と、操舵の応答性を向上させる制御を両立することができる。その結果、運転者の旋回意志が応答良く反映され、操舵フィールが向上する。
また、横G規範ヨーレートω_lowを増加する方向に補正して限界規範ヨーレートω_TARとしているので、FB制御量演算部19における目標値を大きくすることができ、回頭性が向上する。これにより、車両を走路に沿って旋回させることが可能となり、路面追従性能(トレース性)が向上する。
また、この実施例の車両の旋回制御装置によれば、車体挙動に基づき算出されたFB制御量に、操舵入力に基づき算出されたFF制御量を加えた総制御量に基づいてブレーキ圧を制御しているので、車両挙動の安定性を確保しつつ、操舵の応答性を向上させることができる。また、操舵の追従性も向上する。例えば、定常円旋回時などのように、操舵入力後に操舵保持という過程において、制御量の変動が抑制されて追従性が向上する。
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では、FF制御量とFB制御量を加算して総制御量を算出したが、FF制御量とFB制御量を乗算して総制御量を算出することも可能である。
また、車速センサの検出値に替えて、車輪速センサの検出値に基づき推定される推定車速を用いてもよい。
また、前述した実施例では、FF制御量演算部18において、高車速時にFR旋回内輪のFF増圧量ΔP1ffおよびRR旋回内輪のFF増圧量ΔP2ffを無効とすることで、高車速時に操舵アシストブレーキに起因して車両挙動が不安定になるのを防止したが、操舵速度が極めて大きいときやABS作動時にも旋回内輪のFF増圧量を無効にしてもよい。
1 車両の旋回制御装置
3 操舵角センサ(操舵量検知手段)
4 車速センサ(車速検知手段)
5 横Gセンサ(横加速度検知手段)
6 ヨーレートセンサ(ヨーレート検知手段)
7 アクセル開度センサ(要求トルク検知手段)
10 ブレーキ装置(制動制御手段)
12 定常規範ヨーレート演算部(補正基準値設定手段)
14 横G規範ヨーレート演算部(第1規範ヨーレート演算部)
15 補正部
18 FF制御量演算部(第2制動力制御量演算部)
19 FB制御量演算部(制動力制御量演算部)
63,67 ゲインテーブル(無効化手段)

Claims (6)

  1. 車両の操舵量を検知する操舵量検知手段と、前記車両の車速を検知または推定する車速検知手段と、前記車両の左右方向の加速度を検知する横加速度検知手段と、前記車両のヨーレートを検知するヨーレート検知手段とを備え、前記車両の走行状態に基づいて左右車輪に制動力を付与することにより車体にヨーモーメントを発生可能な車両の旋回制御装置であって、
    前記横加速度検知手段および前記車速検知手段の検知信号に基づいて第1規範ヨーレートを算出する第1規範ヨーレート演算部と、
    前記操舵量検知手段および前記車速検知手段の検知信号に基づいて車速が低速ほど高ゲインとなる補正基準値を決定する補正基準値設定手段と、
    前記補正基準値に基づいて前記第1規範ヨーレートを増加方向に補正して第2規範ヨーレートを算出する補正部と、
    前記第2規範ヨーレートと前記ヨーレート検知手段により検知された実ヨーレートとのヨーレート偏差を算出し、前記ヨーレート偏差を打ち消す方向へ制動力制御量を決定する制動力制御量演算部と、
    前記制動力制御量演算部により決定された制動力制御量に基づいて前記制動力を制御する制動制御手段と、
    を備えることを特徴とする車両の旋回制御装置。
  2. 前記補正部は、車速が大きいほど前記第2規範ヨーレートが小さくなるように補正量を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両の旋回制御装置。
  3. アクセル開度またはアクセルペダル操作量に基づいて要求トルクの大きさを検知する要求トルク検知手段を備え、
    前記補正部は、前記要求トルク検知手段の検知信号が所定値よりも小さいときに、車速が小さいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように補正量を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の旋回制御装置。
  4. 前記補正部は、前記操舵量検知手段の検知信号に基づいて算出される転舵速度または転舵量が大きいほど前記第2規範ヨーレートが大きくなるように補正量を決定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  5. 前記補正基準値設定手段が決定した補正基準値に基づいて第2の制動力制御量を決定する第2制動力制御量演算部を備え、
    前記制動制御手段は、前記制動力制御量演算部が決定した前記制動力制御量と前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量とを加算または乗算することにより得られる総制動力制御量に基づいて前記制動力を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
  6. 所定の運転状態のときに前記第2制動力制御量演算部が決定した前記第2の制動力制御量を無効にする無効化手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の車両の旋回制御装置。
JP2010047834A 2010-03-04 2010-03-04 車両の旋回制御装置 Active JP5358487B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010047834A JP5358487B2 (ja) 2010-03-04 2010-03-04 車両の旋回制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010047834A JP5358487B2 (ja) 2010-03-04 2010-03-04 車両の旋回制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011183826A true JP2011183826A (ja) 2011-09-22
JP5358487B2 JP5358487B2 (ja) 2013-12-04

Family

ID=44790648

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010047834A Active JP5358487B2 (ja) 2010-03-04 2010-03-04 車両の旋回制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5358487B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102014202197A1 (de) 2013-02-08 2014-08-14 Honda Motor Co., Ltd. Fahrzeug-Kurvenfahrt-Controller
JP2016107953A (ja) * 2014-12-10 2016-06-20 本田技研工業株式会社 車両運動制御装置
JP2021117725A (ja) * 2020-01-27 2021-08-10 三菱電機株式会社 車両用衝突防止装置および車両用衝突防止方法
US11505177B2 (en) 2018-03-07 2022-11-22 Subaru Corporation Control apparatus for vehicle and control method for vehicle

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0524422A (ja) * 1991-07-23 1993-02-02 Nissan Motor Co Ltd 制動力制御装置
JPH06127354A (ja) * 1992-09-07 1994-05-10 Nissan Motor Co Ltd 制動力制御装置
JPH0848226A (ja) * 1994-08-09 1996-02-20 Mitsubishi Motors Corp 左右制動力制御装置
JPH101040A (ja) * 1996-06-14 1998-01-06 Toyota Motor Corp 後輪荷重抜け検出,抑制および後輪動的荷重推定装置
JPH11115719A (ja) * 1997-08-11 1999-04-27 Fuji Heavy Ind Ltd 4輪駆動車の動力配分制御装置
JP2001058564A (ja) * 1999-08-24 2001-03-06 Mazda Motor Corp 自動車の旋回姿勢制御装置
JP2006306204A (ja) * 2005-04-27 2006-11-09 Nissan Motor Co Ltd 車線逸脱防止装置
JP2008126916A (ja) * 2006-11-24 2008-06-05 Honda Motor Co Ltd 車両の運動制御装置

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0524422A (ja) * 1991-07-23 1993-02-02 Nissan Motor Co Ltd 制動力制御装置
JPH06127354A (ja) * 1992-09-07 1994-05-10 Nissan Motor Co Ltd 制動力制御装置
JPH0848226A (ja) * 1994-08-09 1996-02-20 Mitsubishi Motors Corp 左右制動力制御装置
JPH101040A (ja) * 1996-06-14 1998-01-06 Toyota Motor Corp 後輪荷重抜け検出,抑制および後輪動的荷重推定装置
JPH11115719A (ja) * 1997-08-11 1999-04-27 Fuji Heavy Ind Ltd 4輪駆動車の動力配分制御装置
JP2001058564A (ja) * 1999-08-24 2001-03-06 Mazda Motor Corp 自動車の旋回姿勢制御装置
JP2006306204A (ja) * 2005-04-27 2006-11-09 Nissan Motor Co Ltd 車線逸脱防止装置
JP2008126916A (ja) * 2006-11-24 2008-06-05 Honda Motor Co Ltd 車両の運動制御装置

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102014202197A1 (de) 2013-02-08 2014-08-14 Honda Motor Co., Ltd. Fahrzeug-Kurvenfahrt-Controller
JP2016107953A (ja) * 2014-12-10 2016-06-20 本田技研工業株式会社 車両運動制御装置
US11505177B2 (en) 2018-03-07 2022-11-22 Subaru Corporation Control apparatus for vehicle and control method for vehicle
JP2021117725A (ja) * 2020-01-27 2021-08-10 三菱電機株式会社 車両用衝突防止装置および車両用衝突防止方法
JP7072591B2 (ja) 2020-01-27 2022-05-20 三菱電機株式会社 車両用衝突防止装置および車両用衝突防止方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5358487B2 (ja) 2013-12-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5245005B2 (ja) 車両の旋回制御装置
JP5277345B2 (ja) 車両の旋回制御装置
JP5265808B2 (ja) 車両の旋回制御装置
JP4556775B2 (ja) 車両用操舵装置
JP5431745B2 (ja) 車両の運動制御装置
JP2017043246A (ja) 車両の制御装置及び車両の制御方法
JP5277346B2 (ja) 車両の旋回制御装置
KR20180003655A (ko) 차량용 자세 제어방법
JP5358487B2 (ja) 車両の旋回制御装置
JP2007230527A (ja) ステアリング装置、自動車、及びステアリング制御方法
KR101194807B1 (ko) 차량의 감속도를 이용한 비대칭 노면에서의 협조제어제어량 결정 방법
JP5272570B2 (ja) 舵角制御装置及び舵角制御方法
JP5185792B2 (ja) ヨーレート制御装置
JP4909937B2 (ja) 電動パワーステアリング装置
JP5332700B2 (ja) 車両用転舵制御装置
JP4630039B2 (ja) 車両の操舵制御装置
JP2006123611A (ja) 車両用操舵装置
JP2015182516A (ja) 車両挙動制御装置
JP5206990B2 (ja) 車両の旋回挙動制御装置
JP2020032961A (ja) 車両制御装置
JP2011207309A (ja) 車両の運動制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120807

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121002

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130205

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130408

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130806

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130902

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5358487

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250