JP5206990B2 - 車両の旋回挙動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の旋回挙動制御装置に関するものである。
従来から、旋回している車両の走行安定性を向上させる旋回挙動制御技術として、車両のヨーレイトに基づいて制動力を制御するヨーレイトフィードバック制御が知られている。
具体的には、車両の左右輪の制動力を独立して調整可能な構成とし、操舵角や車速といった車両の走行状態に基づいて車両の目標ヨーレイトを算出するとともに、ヨーレイトセンサを用いて実ヨーレイトを検出する。そして、これら目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの差に応じて左右輪の制動力を制御して、実ヨーレイトを目標ヨーレイトに近付ける(特許文献1)。
特開平3−276852号公報
車両には通常、左右駆動輪の回転速度差を許容しつつ、エンジンからの駆動力を左右に等しく伝達するディファレンシャル装置(以下、デフという)が設けられている。しかしデフは、ディファレンシャルギアのように機械的な構造のものが広く用いられており、内部フリクションを有するため、左右の回転速度差を許容できずに、左右に等しく駆動力を伝達できない場合がある。したがって、上記特許文献1のように車両の挙動に基づいて左右輪の制動力を制御しようとしても、デフのフリクションにより左右の回転速度差を完全に許容できずにその差が抑えられ、左右駆動力差が生じるため、これを考慮しない制動力の制御では目標とする左右駆動力差を正確に発生する事ができず、その効果が十分に得られない虞がある。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ヨーレイトフィードバック制御における制動力の制御を正確に行い、走行安定性能を向上させる車両の旋回挙動制御装置を提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1の車両の旋回挙動制御装置は、エンジンから前輪及び後輪の少なくとも一方の左右駆動輪に回転速度差を許容しつつ動力を伝達するディファレンシャル装置を有する車両において、左右駆動輪に独立して制動力を付与可能な制動手段と、車両の走行状態に基づいて目標ヨーレイトを演算する目標ヨーレイト演算手段と、車両の実ヨーレイトを検出する実ヨーレイト検出手段と、目標ヨーレイト演算手段により演算された目標ヨーレイトと実ヨーレイト検出手段により検出された実ヨーレイトとの差に基づいて左右駆動輪の制動力を設定し、該制動力が左右駆動輪に付与されるように制動手段を制御する制動力制御手段と、ディファレンシャル装置におけるフリクションによる左右駆動輪の拘束トルクに応じて、制動制御手段において設定した左右駆動輪の制動力を補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項2の車両の旋回挙動制御装置は、請求項1において、補正手段は、車両がアンダーステア状態である場合には、制動制御手段において設定した左右駆動輪の旋回内輪の制動力から、ディファレンシャル装置における左右駆動輪の拘束トルクに応じた制動力を減算して補正することを特徴とする。
また、請求項3の車両の旋回挙動制御装置は、請求項1または2において、補正手段は、車両がオーバーステア状態である場合には、制動制御手段において設定した旋回外輪の制動力に、ディファレンシャル装置における左右駆動輪の拘束トルクに応じた制動力を加算して補正することを特徴とする。
本発明の請求項1の車両の旋回挙動制御装置によれば、目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの差に基づいて左右駆動輪に制動力を付与する際に、ディファレンシャル装置におけるフリクションによる左右駆動輪の拘束トルクに応じて左右駆動輪に付与する制動力を補正するので、ディファレンシャル装置のフリクションによる影響を相殺して解消させることが可能となる。したがって、目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの差に基づく左右駆動輪の制動力制御を正確に行うことができ、車両の走行安定性を向上させることができる。
本発明の請求項2の車両の旋回挙動制御装置によれば、車両がアンダーステア状態である場合には、左右駆動輪の旋回内輪の制動力にディファレンシャル装置における拘束量に応じた制動力を減算するので、旋回内輪への制動力の必要以上の付与を防止して、目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの差に基づいて旋回内輪の制動力を正確に制御することができるとともに、制動力制動装置の使用を軽減させることで、制動装置の寿命低下や劣化を抑制することができる。
本発明の請求項3の車両の旋回挙動制御装置によれば、車両がオーバーステア状態である場合には、左右駆動輪の旋回外輪の制動力にディファレンシャル装置における拘束量に応じた制動力を加算するので、旋回外輪への制動力の付与不足を防止して、オーバーステアを抑制することができ、車両の走行安定性を向上させることができる。
本発明に係る車両の旋回挙動制御装置の構成を示すブロック図である。 ブレーキ制御コントローラにおいて実行されるヨーレイトフィードバック制御要領を示すフローチャートである。 デフの拘束トルクを求めるマップである。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1には本発明に係る車両の旋回挙動制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態では、当該旋回挙動制御装置は前輪駆動方式の車両1に適用されている。
車両1に搭載されたエンジン2の出力はトランスミッション3、デフ(ディファレンシャル装置)4及び車軸5L,5Rを介して左右前輪(左右駆動輪)6L,6Rにそれぞれ伝達される。
デフ4にはエンジン2から入力されたトルクを左右前輪6L,6Rに回転速度差(差動)を許容しながら等しく配分する目的でディファレンシャルギアが適用されている。しかしながら、一般的にディファレンシャルギアは機械的なフリクションがどうしても存在してしまうため、特にエンジン2から入力されるトルクの大きさに応じて左右前輪6L,6Rの差動を制限してしい、左右輪の駆動力に差が生じてしまう特性を有している。
また、車両1の車輪6L,6R,7L,7Rには、それぞれ、ブレーキ装置(制動手段)8L,8R,9L,9Rが設けられている。
車両1の各車輪6L,6R,7L,7Rには、車輪速度を検出する車輪速度センサ10L,10R,11L,11Rが設けられている。また、車両1には、操舵角を検出する舵角センサ12、車両1の実ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ(実ヨーレイト検出手段)13、及びブレーキ装置8L,8Rを制御するブレーキ制御コントローラ14が備えられている。
ブレーキ制御コントローラ14は、図示しないインタフェイス,メモリ,CPU等が備えられた電子制御ユニットであって、前輪側のブレーキ装置8L,8Rを利用したヨーレイトフィードバック制御を実行する機能を有している。ブレーキ制御コントローラ14は、舵角センサ12、各車輪速度センサ10L,10R,11L,11R、及びヨーレイトセンサ13から各検出情報を入力し、ブレーキ装置8L,8Rの制動圧、即ち左右駆動輪(左右前輪)8L,8Rの制動力を制御する。
図2は、ブレーキ制御コントローラ14において実行されるヨーレイトフィードバック制御要領を示すフローチャートである。
本ルーチンは、エンジン2の運転中に繰り返し実行される。先ず、ステップS10では、車両挙動情報として、舵角センサ47によって検出された操舵角θ、車速Vb、ヨーレイトセンサ13によって検出された実ヨーレイトγを入力する。なお、車速Vbは、各車輪速度センサ10L,10R,11L,11Rによって検出された各車輪速度から、例えば2番目に大きい車輪速度を車速Vbとして求めればよい。そして、ステップS20に進む。
ステップS20では、車両状態量を演算する。具体的には、ステップS10において入力した操舵角θと車速Vbとに基づいて目標ヨーレイトγtを演算する(目標ヨーレイト演算手段)。そして、ステップS30に進む。
ステップS30では、アンダーステア状態であるか否かを判別する。具体的には、ステップS10においてヨーレイトセンサ13から入力した実ヨーレイトγと、ステップS20において演算した目標ヨーレイトγtとを比較して、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγtより低い場合にはアンダーステア状態であると判定し、目標ヨーレイトγt以上である場合にはアンダーステア状態でないと判定する。アンダーステア状態である場合には、ステップS40に進む。
ステップS40では、デフ4の拘束トルクTdを演算する。拘束トルクTdは、デフ4におけるフリクションによって左右の回転速度差を許容できずに発生するトルクであって、デフ4に入力する駆動トルクTnに基づいて、例えば図3に示したマップを用いて演算される。拘束トルクTdは、駆動トルクTnの増加に応じて増え、例えば図3に示すように駆動トルクTnと比例関係にある。なお、デフ4に入力する駆動トルクTnは、エンジン2の運転状態に基づいて演算すればよい。そして、ステップS50に進む。
ステップS50では、拘束トルクTdに対応する制動圧PLを演算する。制動圧PLは、ステップS40において演算した拘束トルクTd相当の制動力を発生させる制動圧である。そして、ステップS60に進む。
ステップS60では、旋回内輪の制動圧Pu’を設定する。旋回内輪の制動圧Pu’は、次式(1)に示すように、アンダーステア抑制制動圧PuからステップS50において演算した拘束トルクTdに対応する制動圧PLを減算して求められる。アンダーステア抑制制動圧Puは、ステップS10においてヨーレイトセンサ13から入力した実ヨーレイトγと、ステップS20において演算した目標ヨーレイトγtとの差に応じて設定される旋回内輪の制動圧であり、例えば特許文献1に記載されている公知のヨーレイトフィードバック制御と同様に設定すればよい。そして、ステップS110に進む。
Pu’=Pu−PL・・・(1)
ステップS30において、アンダーステア状態ではないと判定された場合には、ステップS70に進む。
ステップS70では、オーバーステア状態であるか否かを判別する。具体的には、ステップS10においてヨーレイトセンサ13から入力した実ヨーレイトγと、ステップS20において演算した目標ヨーレイトγtとを比較して、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγtより高い場合にはオーバーステア状態であると判定し、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγt以下である場合にはオーバーステア状態でないと判定する。オーバーステア状態である場合には、ステップS80に進む。
ステップS80では、ステップS40と同様に、デフ4の拘束トルクTdを演算する。そして、ステップS90に進む。
ステップS90では、ステップS50と同様に、拘束トルクTdに対応する制動圧PLを演算する。そして、ステップS100に進む。
ステップS100では、旋回外輪の制動圧Po’を設定する。旋回外輪の制動圧Po’は、次式(2)示すように、オーバーステア抑制制動圧PoにステップS100において演算した拘束トルクTdに対応する制動圧PLを加算して求められる。オーバーステア抑制制動圧Poは、ステップS10においてヨーレイトセンサ13から入力した実ヨーレイトγと、ステップS20において演算した目標ヨーレイトγtとの差に応じて設定される旋回外輪の制動圧であり、公知のヨーレイトフィードバック制御と同様に設定すればよい。そして、ステップS70に進む。
Po’=Po+PL・・・(2)
ステップS70において、オーバーステア状態でないと判定された場合、即ちニュートラルステア状態である場合には、ステップ110に進む。
ステップS110では、ステップS60にて設定された制動圧Pu’あるいはステップS100において設定された制動圧Po’でブレーキ装置8L,8Rを作動させて、左右駆動輪(左右前輪)8L,8Rに付与される制動力を制御する。なお、ステップS60またはステップS100において設定されない車輪側のブレーキ装置8L、8Rの制動圧は0に設定する。そして、本ルーチンを終了する。
なお、ステップS60におけるアンダーステア抑制制動圧Puの設定及びステップS100におけるオーバーステア抑制制動圧Poの設定は、本発明の制動力制御手段に該当する。また、ステップS60における制動圧PLの減算による旋回内輪の制動圧Pu’の設定、及びステップS100における制動圧PLの加算による旋回外輪の制動圧Po’の設定は、本発明の補正手段に該当する。
以上のように制御することで、本実施形態では、実ヨーレイトγと目標ヨーレイトγtとの差に応じて旋回内輪または旋回外輪の制動圧Pu、Poを設定するヨーレイトフィードバック制御において、デフ4のフリクションによる拘束トルクTdを演算し、車両1がアンダーステア状態である場合には拘束トルクTdに相当する分を旋回内輪の制動圧Puから減算する一方、オーバーステア状態である場合には拘束トルクTdに相当する分を旋回外輪の制動圧Poに加算してブレーキ装置8L、8Rの制動圧を補正する。
一般的に、アンダーステア時では、車両1のアクセルを踏み増すことで旋回内輪のトラクションが限界に達し空転気味となって車輪速度が増加する。このとき、デフ4のフリクションによって左右の回転差が拘束され、旋回外輪の駆動力が増加してアンダーステアを抑制する方向にヨーモーメントが発生する。本実施形態では、このデフ4のフリクションによる拘束トルクTdに応じて旋回内輪の制動圧Puを低下させるので、制動力の必要以上の付与を防ぎ、ブレーキパッドの摩耗及び加熱を抑えて寿命低下や劣化を抑制することができる。
一方、オーバーステア時には、旋回外輪に制動がかかり車輪速度が低下するが、デフ4のフリクションにより左右の回転差が拘束されて旋回外輪の駆動力が増加することで、オーバーステアが助長されてしまう。本実施形態では、デフ4のフリクションによる拘束トルクTdに応じて旋回外輪の制動圧Poを増加させることで、オーバーステアを抑えることができる。
以上のように、アンダーステアまたはオーバーステア時に、デフ4のフリクションを考慮してブレーキ装置8L、8Rの制動圧Pu、Poを補正させることで、デフ4の拘束トルクTdの影響を解消し、ヨーレイトフィードバック制御におけるブレーキ装置8L、8Rの制動圧Pu’、Po’を正確に設定することができ、車両1の挙動を安定化させ、走行安定性を向上させることができる。
また、近年の一般的な車両の旋回挙動制御装置は、ブレーキ制御とともにエンジン出力を絞っているため、スポーツ走行を行った場合にはもたつき感を伴う。このもたつき感解消のために、エンジン出力制御をやめてしまうとエンジン出力が大きくなり、デフ4のフリクションの影響が大きくなる。本発明は、エンジン2の出力からデフ4の拘束トルクTdの影響を解消するので、特にスポーツ走行に適した車両挙動制御を実現させることができる。
なお、上記実施形態では、アンダーステア時とオーバーステア時との両方で制動圧を補正したが、何れか一方のみ制動圧を補正してもよい。
また、本実施形態では、前輪駆動車に本発明を適用し、前輪の制動力制御を行うが、後輪駆動車に本発明を適用し、後輪の制動力制御を行ってもよい。また、四輪駆動車についても本発明を適用して、前輪及び後輪の制動力制御を行ってもよい。
また、本実施形態では、エンジンから入力されたトルクを左右前輪に回転速度差(差動)を許容しながら等しく伝達する一般的なディファレンシャルギアの搭載車両としたが、主に走破性向上を目的に適用されるリミッテドスリップデファレンシャル(LSD)を搭載した車両に本発明を適用してもよい。
1 車両
4 デフ
6L 左前輪
6R 右前輪
8L 左前輪ブレーキ装置
8R 右前輪ブレーキ装置
12 舵角センサ
13 ヨーレイトセンサ
14 ブレーキ制御コントローラ

Claims (3)

  1. エンジンから前輪及び後輪の少なくとも一方の左右駆動輪に回転速度差を許容しつつ動力を伝達するディファレンシャル装置を有する車両の旋回挙動制御装置において、
    前記左右駆動輪に独立して制動力を付与可能な制動手段と、
    車両の走行状態に基づいて目標ヨーレイトを演算する目標ヨーレイト演算手段と、
    車両の実ヨーレイトを検出する実ヨーレイト検出手段と、
    前記目標ヨーレイト演算手段により演算された目標ヨーレイトと前記実ヨーレイト検出手段により検出された実ヨーレイトとの差に基づいて前記左右駆動輪の制動力を設定し、該制動力が前記左右駆動輪に付与されるように前記制動手段を制御する制動力制御手段と、
    前記ディファレンシャル装置におけるフリクションによる前記左右駆動輪の拘束トルクに応じて、前記制動制御手段において設定した前記左右駆動輪の制動力を補正する補正手段と、
    を備えたことを特徴とする車両の旋回挙動制御装置。
  2. 前記補正手段は、前記車両がアンダーステア状態である場合には、前記制動制御手段において設定した前記左右駆動輪の旋回内輪の制動力から、前記ディファレンシャル装置における前記左右駆動輪の拘束トルクに応じた制動力を減算して補正することを特徴とする請求項1に記載の車両の旋回挙動制御装置。
  3. 前記補正手段は、前記車両がオーバーステア状態である場合には、前記制動制御手段において設定した前記左右駆動輪の旋回外輪の制動力に、前記ディファレンシャル装置における前記左右駆動輪の拘束トルクに応じた制動力を加算して補正することを特徴とする請求項1または2に記載の車両の旋回挙動制御装置。
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