JP3572647B2 - 路面摩擦係数推定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両におけるタイヤと路面との間の摩擦結合の状態を推定する装置に関するものであって、例えば、アンチスキッド制御装置(以下ABSと言う)に応用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
車両におけるタイヤと路面との間の摩擦結合は車両の走行安全性のために重要である。なぜならば、車両におけるどんな動的過程も(アクセルペダルを操作して車両を加速することやブレーキペダルを操作して車両を減速すること等)タイヤと路面との間にそれに相当する力の伝達が必要であるからである。この場合、タイヤと路面との摩擦結合は車輪の滑り率に依存し、滑り率が所定範囲以上となると、摩擦結合が弱まり、車両走行が不安定になる。
【0003】
そこで、車両減速時や車両加速時に車両の滑り率が所定範囲以上となることを防止するための制御装置が既に知られている。これらの装置では車輪センサによって車輪の車輪速度および車輪回転の加減速が検出され、この値から他の測定値とともに電子評価制御装置において車輪滑り等が計算される。車輪滑りが所定範囲以上となる恐れがある場合、適当な駆動装置等によってブレーキ圧を減じるとか、エンジントルクを減少させるというように制御する制御方法が考え出されている。
【0004】
上述したような制御方法において、制御開始以前にあらかじめ、車輪のタイヤと路面との摩擦結合の程度が分かっていると、制御開始当初からその結合の1度に適した制御を行うことが可能となる。
このため、例えば、特開平4−345562号公報のごとく、車両の前輪と後輪の車輪速度差を求め、その車輪速度差と車輪速度の差を有している状態が継続した時間との関係により路面摩擦状況が低摩擦路面か高摩擦路面かを推定することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術は、路面摩擦係数値を具体的に判断しているわけではなく、前輪と後輪の車輪速度差と車輪速度差を有している状態が継続した時間との関係から、走行路面が高摩擦路面か低摩擦路面かの2値に決定するものにすぎない。
【0006】
例えば、車両の走行路面を高摩擦路面か低摩擦路面化の2値に判別してしまうため、ウェット路や圧雪路等の、極端に低摩擦路面でも高摩擦路面でもない中摩擦路面では、路面状態の判断が2値のどちらかに偏ることになりかねない。そして、このように判断された高摩擦路面か低摩擦路面かの判定に基づいて車両を制御した場合、車両挙動は不安定になることも考えられる。
【0007】
そこで本発明は、車両の走行路面と車輪との摩擦結合をより細分化して推定することにより、推定精度を向上した路面摩擦係数推定装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記問題を解決するために、本発明による路面摩擦係数推定装置は、車両の前輪と後輪とにおける車輪速度のうち所定時間内での前記車輪速度変化が微小である一方の前記車輪速度の平均変化勾配を演算する演算手段と、
前記後輪の車輪速度と前記前輪の車輪速度との差の所定時間内における変化率が所定値以下の状態か否かを判別する判別手段と、
前記判別手段によって、前記変化率が所定値以下の状態であると判断された場合には、この直前の前記平均変化勾配により前記車両の走行路面と車輪との間の摩擦係数を推定する推定手段とを有する。
【0009】
また、本発明による路面摩擦係数推定装置は、車両の車体速度の所定時間内における平均変化勾配を演算する演算手段と、車両の後輪の車輪速度と前記車体速度との速度差および車両の前輪の車輪速度と前記車体速度との速度差の所定時間内における変化率が所定値以上になったか否かを判別する判別手段と、前記判別手段によって、前記変化率が所定値以上になったと判断された場合には、この直前の前記平均変化勾配により前記車両の走行路面と車輪との間の摩擦係数を推定する推定手段とを有することを特徴としてもよい。
【0010】
また、本発明による、前記判別手段は、前記判別手段は、前記車両の前輪と後輪の車輪速度の速度差を周期的に順次積算した積算値の所定時間内における変化率が所定値以下の状態か否かを判断することを特徴とする請求項1記載の路面摩擦係数推定装置を採用するようにしてもよい。また、本発明による、前記判別手段は、前記車両の前輪の車輪速度と前記車体速度との速度差および前記車両の後輪の車輪速度と前記車体速度との速度差の、所定時間内における変化率が所定値以下の状態か否かを判断することを特徴とする請求項2記載の路面摩擦係数推定装置を採用してもよい。
【0011】
【作用】
上記構成によれば、本発明の請求項1記載の路面摩擦係数推定装置は、車両走行時に、車両の前輪と後輪との車輪速度の速度変化が、所定時間内において微小な方の車輪速度の変化勾配の所定時間における平均を演算する。また、車両の前後輪の車輪速度差の所定時間内の変化率があらかじめ定められた所定値範囲内の状態か否かを判断する。ここで、前記変化率が所定値範囲内の状態であると判断された直前の車輪速度の平均変化勾配より車両の走行路面と車輪との間の摩擦係数を推定する。
【0012】
また、本発明の請求項2記載の路面摩擦係数推定装置は、車両走行時に、前記車両における車体速度の所定時間内の変化勾配の平均を演算する。また、車両の前輪の車輪速度と車体速度との速度差および後輪の車輪速度と車体速度との速度差の所定時間内の変化率が、あらかじめ定められた所定値範囲内の状態であるか否かを判断する。ここで、前記判別手段によって、変化率が所定値範囲内の状態であると判断された直前の車体速度の平均変化勾配より車両の走行路面と車輪との間の摩擦係数を推定する。
【0013】
また、請求項3記載によれば、車両の前後輪の速度差を、周期的に順次積算して積算値を求め、その積算値の所定時間内における変化率を求める。そして前記判別手段によって変化率が所定値範囲内かどうか判断する。また、請求項4記載によれば、前記車両の前輪の速度と車体速度との速度差、および、後輪の速度と車体速度との速度差を周期的に順次積算して積算値を求め、その積算値の所定時間内における変化率を求める。そして、前記判別手段によって変化率が所定値範囲内かどうか判断する。
【0014】
【実施例】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。以下、実施例においては、本発明の路面摩擦係数推定装置をABS制御装置に適用する場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのABS制御装置の構成を示す構成図である。図1において、ブレーキペダル20は、真空ブースタ21を介してマスタシリンダ28に連結されている。したがって、ブレーキペダル20を踏むことによりマスタシリンダ28に油圧が発生し、この油圧は、各車輪(左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RR)に設けられたホイールシリンダ31、32、33、34に供給され、ブレーキ力が発生する。
【0015】
マスタシリンダ28は互いに同じ圧力のブレーキ油圧を発生する2つの圧力室(図示せず)を有し、各圧力室にはそれぞれ供給管40、50が接続されている。
供給管40は連通管41、42に分岐している。連通管41は、電磁弁60aを介して、ホイールシリンダ31に連通するブレーキ管43と接続されている。同様に、連通管42は、電磁弁60cを介して、ホイールシリンダ34に連通するブレーキ管44と接続されている。
【0016】
供給管50も供給管40と同様な接続関係にあり、連通管51、52に分岐している。連通管51は、電磁弁60bを介して、ホイールシリンダ32に連通するブレーキ管53と接続されている。同様に、連通管52は、電磁弁60dを介して、ホイールシリンダ33に連通するブレーキ管54と接続されている。
また、ホイールシリンダ33、34に接続されるブレーキ管54、44中には公知のプロポーショニングバルブ59、49が設置されている。このプロポーショニングバルブ59、49は、後輪RL、RRに供給されるブレーキ油圧を制御して前後輪FL〜RRの制動力の分配を理想に近づけるものである。
【0017】
各車輪FL〜RRには、電磁ピックアップ式の車輪速度センサ71、72、73、74が設置され、電子制御回路ECUにその信号が入力される。電子制御回路ECUは、入力された各車輪FL〜RRの車輪速度に基づいて各ホイールシリンダ31〜34のブレーキ油圧を制御すべく、電磁弁60a〜60dに対して駆動信号を出力する。
【0018】
電磁弁60a、60b、60c、60dは、3ポート3位置型の電磁弁で図1のA位置においては、連通管41、42、51、52とブレーキ管43、44、53、54とをそれぞれ連通し、B位置においては、連通管41、42、51、52、ブレーキ管43、44、53、54、枝管47、48、57、58間を全て遮断する。また、C位置においては、ブレーキ管43、44、53、54と、枝管47、48、57、58とをそれぞれ連通する。
【0019】
枝管47、48はともに排出管81に接続され、枝管57、58はともに排出管91に接続される。これら排出管81、91は、それぞれリザーバ93a、93bに接続されている。リザーバ93a、93bは、各電磁弁60a〜60dがC位置のとき、各ホイールシリンダ31〜34から排出されるブレーキ液を一時的に蓄えるものである。このため電磁弁60a〜60dでは、A位置においてはホイールシリンダ31〜34のブレーキ油圧を増圧し、B位置においてはそのブレーキ油圧を保持し、C位置においてはそのブレーキ油圧を減圧することができる。すなわち、電磁弁60a、60bは、ブレーキ力調整手段に相当する。
【0020】
ポンプ99a、99bは、リザーバ93a、93bに蓄積されたブレーキ液を汲み上げてマスタシリンダ28側に還流させる。また、チェック弁97a、98a、97b、98bは、リザーバ93a、93bから汲み上げられたブレーキ液が、再びリザーバ93a、93b側に逆流するのを防ぐためのものである。
なお、ストップスイッチ10は、運転者がブレーキペダル20を踏んでいるか否かを検出するものである。
【0021】
次に、このように構成された本実施例において実行されるABS制御について図2〜7に基づき説明する。
まず図2は本発明による路面摩擦係数推定装置をABS制御装置に適用した場合のメインルーチンを表すフローチャートである。なお、この処理は図示しないイグニッションスイッチがオンされたとき、ステップ100より開始される。
【0022】
処理を開始すると、まずステップ110にて、各種フラグや各種カウンタの初期設定を行う。続くステップ120では、車輪速度センサ71〜74から車輪速度信号を、中央演算処理装置ECU100に入力する。ステップ130では、車輪速度センサ71〜74から入力される信号に基づき、制御対象の車輪(FL〜RRのいずれか)の車輪速度および加速度を演算する。次に、ステップ140では、前後輪における速度差を演算する。この前後輪速度差演算は、FR輪−RR輪、FL輪−RL輪といった右側、左側独立に演算する方法を用いる。また、(FR輪+FL輪)/2−(RR輪+RL輪)/2といった平均値を演算する方法を用いてもよい。
【0023】
ここで、車輪の落ち込み現象について考えると、図3に示すように車輪の運動方程式(数1)から各車輪の車輪速度の落ち込み状態ωは制動力TBに依存することが分かる。
【0024】
【数1】
ω=(μ*r*W−TB)/I
ただし、それぞれ、ω ・車輪の落ち込み状態(車輪角速度)
μ ・路面摩擦係数
r ・車輪半径
W ・車輪荷重
TB・制動力
I ・車輪の慣性モーメント、を表す。
【0025】
また、図4に示すように、Pバルブによる制動力配分線から実制動力は後輪より前輪の方が高いということが分かる。これより、一般的に数1より前輪の落ち込みタイミングは後輪より速くなると考えられる。
続くステップ150では、ステップ140で求めた前後輪速度差を周期的に順次積算する積算演算を行う。ここでは、図5に示すように、前後輪速度差の絶対値を積算する。この、積算演算を行うことで、前後輪の車輪速度に含まれるノイズ成分の影響を低減することができる。例えば、図5のAポイントに示すように、前輪の落ち込みが後輪より早い状態において、後輪がノイズ的に落ち込んだ場合には、この時点で、前後輪速度差が一時的に通常走行状態に戻ってしまい、落ち込みが収まったと判断されてしまう危険性がある。しかし、前後輪速度差を周期的に順次積算することによって、このノイズ誤差成分の影響を低下することができ、連続的な前後輪速度差状態を表すことを可能にしている。
【0026】
ステップ160では、ステップ150にて演算された積算値が、積算周期内においてある所定値以上か以下かを判断する。すなわち、その積算周期内において前輪と後輪との速度差が、実際発生している状態か否かを判定する。ここで、積算値が所定値以上、すなわち前輪と後輪との速度差が存在している状態であると判断された場合にはステップ170に進む。また、積算値が所定値以下、すなわち前輪と後輪とが同じ車輪速度状態であると判断された場合には、ステップ300に進む。
【0027】
ステップ170では、ステップ180で行われる車輪速度差の積算値の平均変化率の演算を行うタイミングを判定する。具体的には、あらかじめ定められた所定時間を経過したかを判定する。この所定時間は、ステップ150において車輪速度差の積算を行う周期よりも長い時間に設定されている。ステップ170において、所定時間経過したと判断された場合、ステップ180に進む。また、あらかじめ定められた所定時間経過前ではステップ220に進み、従来のABS制御開始判定を行い、路面摩擦係数推定処理は行わない。
【0028】
ここで、車輪速度の積算値の変化率演算を行うタイミングを判定する方法として、前回の演算タイミングからの経過時間によらないで、前後輪の速度差の積算値が所定量以上になったかによって判断する方法を採用するようにしてもよい。ステップ180では、ステップ150で演算された積算値の所定時間内の平均変化率を演算する。ここで、例えば積分演算は5msごとに行い、この積算値の変化率演算は50msごとに行う。これは、車輪速度差の積算を行う周期よりも短い時間または同じ時間を用いて平均変化率を演算すると、平均変化率は前後輪の速度差になるからである。
【0029】
ステップ190においては、ステップ180で求めた車輪速度差の積算値の平均変化率の大きさによって、ABS制御開始前に路面摩擦係数を推定するかどうかの判断を行う。この平均変化率があらかじめ定められた所定値以下の場合は、図6に示すように、前後輪の落ち込み状態が路面とタイヤとによる摩擦結合の最大になるμ−peak以前の車輪挙動安定領域にあると判断される。この場合には、路面摩擦係数の正確な推定が可能であり、ステップ200に進む。一方、平均変化率が所定値以上の場合、前輪(または後輪)の落ち込みが急激に大きくなって、前後輪が路面とタイヤとによる摩擦結合が最大になるμ−peakを越えた車輪挙動不安定領域に入っている状態であると判断される。この正確な路面摩擦係数の推定は行えない不安定領域に入っている場合には、ステップ220へ進みABS制御開始判定処理を行う。また、ここでステップ220に進む場合には、後述する、ステップ200にて前回演算された路面摩擦係数が、車輪と走行路面とのμ−peak直前の摩擦係数に対応したものとなっている。
【0030】
ステップ200では、ステップ190で変化率が所定値以下の場合に、路面摩擦係数を正確に推定できると判断され、路面摩擦係数を推定するために演算を行う。ここで、路面摩擦係数推定値の演算を行う方法としては、前述したように、車輪速度が落ち込んだ前後輪において、車輪速度変化が微小な方の車輪速度の平均変化勾配、すなわち、ステップ200では、平均減速度勾配を推定路面摩擦係数とする方法を採用する。
【0031】
すなわち、ステップ170、および180において用いられた、あらかじめ定められた所定時間内において、前後輪において車輪速度変化が微小な方の車輪速度の平均減速度勾配を算出する。具体的には、例えば、所定時間内において、ステップ140にて車輪速度差を演算した周期を用いて、その周期における前後輪の車輪速度変化が微小な方の車輪の車輪速度をピックアップする。その後、このピックアップした点を近似的に通過する1次方程式を演算し、その方程式の傾きを上記平均減速度勾配とする。
【0032】
また、DRY路面では車輪に制動力が加わる場合に高い車体減速度を発生する。この場合には、この車体減速度により、前輪への荷重移動分が増え、後輪が先行して落ち込むことがある。しかし、この場合は車体の荷重移動と、路面と車輪との高摩擦結合によって車輪速度の落ち込みが少ない前輪速度が、前述した周期における前後輪の車輪速度変化が微小な方の車輪の車輪速度に相当する。よって、この前輪速度を用いて平均減速度勾配を演算する。
【0033】
なお、平均減速度勾配の算出については、単に、前回ステップ130において、車輪速度を演算した際の所定時間経過時の値と、今回車輪速度を演算した際の所定時間経過時の値との差を所定時間で割った値を、平均減速度勾配として採用してもよい。
ここで、路面摩擦係数推定の考え方について説明する。図6に示す、μ−peak近辺の特徴を表すグラフとμ−s特性グラフを用いることで路面摩擦係数を推定することができる。つまり、前後輪の速度差の状態が急激に大きくなった瞬間、すなわち、前後輪の速度差の所定時間内における積算値の変化率が、所定値を越えた直前には、先行して落ち込んだ輪の方は、すでに路面とタイヤとによる摩擦結合が最大になるμ−peakを越えており、急激な落ち込みが発生している領域である。これに対し、残った輪の方は、μ−peak寸前の領域に存在していると言える。よって、このときの残った輪の方、すなわち車輪速度変化が微小な方の車輪速度の減速度勾配が車体減速度VBに対応するものとなる。
【0034】
ここで、路面摩擦係数を推定する方法は、路面摩擦係数μと車体減速度VBとを用いて数2のように表される。
【0035】
【数2】
μF*WF+μR*WR=−(VB/g)*WB
【0036】
【数3】
μ(WF+WR)=−(VB/g)*WB
ただし、それぞれ、μF・前輪における路面摩擦係数
WF・前輪荷重
μR・後輪における路面摩擦係数
WR・後輪荷重
VB・車体減速度
WB・車両重量
g ・重力加速度、を表す。
【0037】
一般的には前輪と後輪のμが等しいと見なせるので(μF=μR=μ)、数2は数3として表されて路面摩擦係数μ∝車体減速度VBの関係が成立し、路面摩擦係数≒車体減速度として考えることができる。このような考え方によって、路面摩擦係数を正確に推定することを可能にしている。
ここで、ステップ160において ステップ150で演算された積算値が、積算周期内において所定範囲内にあると判定された場合、すなわち、前輪と後輪とが同じ車輪速度状態であると判断された場合について説明する。
【0038】
この場合は、車両が一定速度走行をしているか、制動力がかかっている際には4輪の車輪速度が揃って落ち込んでいる状態であると考えられる。ここで、車両制動時に4輪速度が揃って落ち込む現象は、車輪と路面との摩擦結合が強い、車輪の落ち込みがゆるやかな高μ路では、荷重移動が生じて実際には起こりえないものと思われる。しかし、低μ路では、車輪と路面との摩擦結合が弱いため、4輪が揃って落ち込むことが考えられる。この場合には、以下ステップ300、310に示すように、車両に制動力が加えられている状態で、所定時間以上、前後輪速度差がほとんど発生しない現象を捉えた場合に、低μ路と判別する。
【0039】
すなわち、ステップ300では、所定時間内において、前後輪の車輪速度差の積算値があらかじめ定められた所定値以上の値を取るかどうかを判定する。すなわち、所定時間前後輪の速度差がほとんど生じない状態が継続したかどうか判断する。ここで、所定時間内に積算値が所定値以上にならなかったと判断された場合にはステップ310に進み、所定値以上になったと判断された場合にはステップ220に進む。
【0040】
ステップ310では、所定時間内における車輪速度の平均速度勾配を判定する。すなわち、実際車輪速度が低下しているかどうかを判定して、ある所定値以上の平均速度勾配を検出した場合は、車輪に制動力が加えられていると判断する。ここで、平均速度勾配が所定値以上の値である場合にはステップ320に進み、以下の値を取る場合には、低摩擦係数路面と判断されずステップ220に進む。
【0041】
ステップ320では、車輪速度全輪同時に落ち込んでいる状態で所定時間以上前後輪速度差が発生しない現象を捉えたということで、現在の走行路面は低摩擦係数路面であると断定する。そして、この情報をステップ210に、ABS制御基準の情報として送る。
次の、ステップ210ではステップ200によって推定された路面摩擦係数によってABS制御前の状態から各種のABS制御基準(推定車体速度の減速度勾配、各輪の制御開始スリップ基準値、ABS制御開始後の減圧・増圧勾配等)を切り換える。
【0042】
ステップ220では、ステップ210で各種のABS制御基準を切り換えた状態を踏まえてABS制御を開始するか否かを判断する。
ステップ230では、ステップ220のABS制御開始判定結果に応じてソレノイド駆動を行っていく。
このようにして、ABS制御開始前に路面摩擦係数を推定することで、従来までは行えなかった、路面摩擦係数に応じた、すなわち路面状況に応じた適切な制御を、ABS制御開始初回サイクルから行える。さらに、ABSが制御開始されずに車体が非常に不安定になったり、制動力の低下が著しくなるといった状況(特に氷上などの低摩擦係数路面において)を未然に防止することができる。
【0043】
例えば、図7に示すように、従来では、実際の車体速度から掛け離れた推定車体速度を用いていたため、制御基準が実際の車輪および路面の状況とは大きく異なってしまい、ABS制御が開始される時期が不安定であった。これについて、次に示す一般的な車体速度の推定式に基づいて説明する。
【0044】
【数4】
VSB(n) =MED( Vw0, VSB(n−1)−αdown*t, VSB(n−1)−αup*t)
ただし、 VSB・推定車体速度
MED・中間値採用
Vw0・選択車輪速度
αdown・車輪減速度上限定数
αup・ 車輪加速度上限定数
t ・演算周期
n ・演算回数、を採用する。
【0045】
上記数4を採用して、例えばステップ220においてABS開始時期を判定するための基準となる推定車体速度を演算する。この際、車輪加速度上限定数αup、および車輪減速度上限定数αdownがあらかじめ定められた一定の値を取っている場合、現在走行中の路面の摩擦係数は全く考慮されることなく推定車体速度が決定される。しかし、今回の技術により、あらかじめ路面の摩擦係数を推定できることから、この路面摩擦係数によって、推定車体速度をより現実に近づけることが可能となった。というのは、今回では推定路面摩擦係数が演算され、車輪加速度上限定数αup、および車輪減速度上限定数αdownの設定を変えることによって、推定車体速度をより正確に求めることができる。これにより、車輪と走行路面との間の摩擦結合の状態、すなわち、車輪と路面との間のスリップ状況を正確に把握することができる。これによって、車輪の最適なスリップ状況においてABS制御が開始され、安定した車両挙動を得ることが可能となった。
【0046】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、以下のように種々変形可能である。
例えば、図2のフローチャートのステップ200において、車両の前輪および後輪における車輪速度変化が微小な方の車輪速度を用いて路面摩擦係数を推定していたが、例えば、数4を用いて、各車輪速度から車両の車体速度を演算し、この車体速度の所定時間内における平均減速度勾配から路面摩擦係数を推定することができる。すなわち、ステップ140においては、車体速度と前輪の車輪速度との差、および、車体速度と後輪の車輪速度との差を演算する。ステップ150においては、車体速度と前輪の車輪速度との差の値と、車体速度と後輪の車輪速度との差の値との差の絶対値を求め、これを周期的に順次所定時間積算する。この積算値を用いて、ステップ180、190の積算値変化率の演算、および路面摩擦係数を推定するかどうかの判断を行う。ステップ200においては、ステップ190にて路面摩擦係数を正確に推定できると判断した場合に、路面摩擦係数を推定する。この際、所定時間内における車体速度の平均減速度勾配は、数2における車体減速度VBに相当する。よって路面摩擦係数μ∝VBの関係より、所定時間内における車体速度の平均変化減速度勾配によって、車両の走行路面と車輪との間の路面摩擦係数を正確に推定することができる。また、この車両速度は、随時、路面摩擦係数が推定されるごとに数4の車輪減速度下限定数αdownおよび車輪加速度上限定数αupを補正していくことによって、常に現実に即した値となっている。
【0047】
また、図2のフローチャートの、ステップ180において、前後輪の車輪速度差の積算値の、所定時間内における平均変化率を算出していたが、前後輪の車輪速度差の積算値があらかじめ定められた所定量になるごとの時間を求め、この間の平均減速度勾配を変化率とする方法を採用してもよい。
さらに、図2のフローチャートのステップ200において、高い車体減速度を発生するDRY路で、前輪への荷重移動分が増え、後輪が先行して落ち込む場合のことについて述べた。この場合、この荷重移動分を各車輪速度の落ち込み状態を推定する数1の車輪荷重Wに、補正された前輪および後輪の荷重WF’、WR’を用いるようにしてもよい。車体減速度による荷重移動分ΔWは数5に示すようになり、制動時の、前輪および後輪の荷重WF’、WR’は数5および数6に示される。
【0048】
【数5】
ΔW={WB*(H/L)*(−VB)}/g
【0049】
【数6】
WF’=WF0+ΔW
【0050】
【数7】
WR’=WR0−ΔW
ただし、それぞれ、ΔW ・車両の荷重移動分
H ・車両の重心高
L ・ホイールベース
WF0・前輪の静的荷重
WR0・後輪の静的荷重、を表す。
【0051】
上記、数5〜7により、制動時の荷重移動分は車体減速度VBに依存することが分かる。これから、実際の制動時の車輪の落ち込み状態は、制動力と制動によって生じる車体速度(荷重移動分)の釣り合いによって決定されていることが分かる。
なお、上記実施例においては、本発明を説明するために、一例としてABS制御装置を挙げたが、本発明は、トラクション・コントロール制御装置(TRC)等にも幅広く活用できる。
【0052】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明においては、車両の走行路面と車輪との摩擦結合が弱まる直前の路面摩擦係数を推定することによって、車両挙動を安定に保つことが可能な路面摩擦係数推定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブロック構成を表す構成図である。
【図2】本発明の第一実施例を表すフローチャート図である。
【図3】車輪の運動方程式について説明する説明図である。
【図4】車両における車輪の制動力配分線を表すグラフ図である。
【図5】車両における後輪と前輪との車輪速度差を積分した積分値を表すグラフ図である。
【図6】本発明における路面摩擦係数の推定の考え方を説明する説明図である。
【図7】本発明におけるABS制御の作動の様子を表すタイミングチャートである。
【符号の説明】
71 車輪速度センサ
72 車輪速度センサ
73 車輪速度センサ
74 車輪速度センサ
100 中央演算処理装置(ECU)

Claims (6)

  1. 車両の前輪と後輪とにおける車輪速度のうち所定時間内での前記車輪速度速度変化が微小である一方の前記車輪速度の平均変化勾配を演算する演算手段と、
    前記後輪の車輪速度と前記前輪の車輪速度との差の所定時間内における変化率が所定値以下の状態か否かを判別する判別手段と、
    前記判別手段によって、前記変化率が所定値以上になったと判断された場合には、この直前の前記平均変化勾配により前記車両の走行路面と車輪との間の摩擦係数を推定する推定手段とを有することを特徴とする路面摩擦係数推定装置。
  2. 車両の車体速度の所定時間内における平均変化勾配を演算する演算手段と、車両の後輪の車輪速度と前記車体速度との速度差および車両の前輪の車輪速度と前記車体速度との速度差の所定時間内における変化率が所定値以下の状態であるかを判別する判別手段と、
    前記判別手段によって、前記変化率が所定値以下の状態であると判断された場合には、この直前の前記平均変化勾配により前記車両の走行路面と車輪との間の摩擦係数を推定する推定手段とを有することを特徴とする路面摩擦係数推定装置。
  3. 前記判別手段は、前記車両の前輪と後輪の車輪速度の速度差を周期的に順次積算した積算値の所定時間内における変化率が所定値以下の状態か否かを判断することを特徴とする請求項1記載の路面摩擦係数推定装置。
  4. 前記判別手段は、前記車両の前輪の車輪速度と前記車体速度との速度差および前記車両の後輪の車輪速度と前記車体速度との速度差の、所定時間内における変化率が所定値以下の状態か否かを判断することを特徴とする請求項2記載の路面摩擦係数推定装置。
  5. 前輪の車輪速度を演算する前輪車輪速度演算手段と、
    後輪の車輪速度を演算する後輪車輪速度演算手段と、
    前輪と後輪の車輪速度差を演算する速度差演算手段と、
    前記速度差を所定時間積算する積算手段と、
    前記速度差の積算値が所定値未満である際に前記車輪速度の平均速度勾配が所定値以上の場合、低摩擦係数路面と判断する路面摩擦係数推定手段と、を備えることを特徴とする路面摩擦係数推定装置。
  6. 車輪速度を演算する車輪速度演算手段と、
    車体の車体速度を演算する車体速度演算手段と、
    前記車輪速度と車体速度との差を演算する速度差演算手段と、
    前記速度差を所定時間積分する積分手段と、
    前記積分手段による積分値が所定値以下の状態である場合に、
    前記車輪速度の平均速度勾配が所定値以上の場合、低摩擦係数路面と判断する路面摩擦係数推定手段と、を備えることを特徴とする路面摩擦係数推定装置。
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