JP4662693B2 - スローアウェーチップおよび円盤フライス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にクランクシャフトをフライス加工するための円盤フライスおよび該円盤フライスで使用するスローアウェーチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
フライス加工は、工具を回転させて、ワークと工具との間で工具の回転軸線に垂直に相対移動させることにより、材料を除去するプロセスである。工具には複数のカッタが装着され、工具が中心軸線回りに回転する間に、前記カッタが切削作用をなす。種々の方向に送り動作を行うことができる。こうした送り動作は、工具またはワーク若しくは両者により行われる。旋削加工やドリル加工とは異なり、カッタはワークに対して係合し続けることは無い。反対に、ワークに対して一度切り込んだ後に、カッタは再び初期位置へ戻る。これには、カッタを冷却可能となり、また、切屑をチップポケットから除去可能となるとの利点がある。
【0003】
フライス加工に関連して、一般的に、適切な切刃を提供する複数のスローアウェーチップが使用工具に装着される。この種のスローアウェーチップは、また、ツールチップと称され、かなり以前から知られている。
【0004】
クランクシャフトは、直線運動を回転運動に或いは回転運動を直線運動に変換するための機械要素である。クランクシャフトを大量生産する際、鍛造または鋳造クランクシャフトが一般的に用いられる。近時のエンジンデザインでは、クランクシャフトが円滑に動作することが要求されている。また、製造コストも最小限でなければならない。不可欠な要求として、同じピストン行程で一層高いエンジン性能を発生すること、効率の改善つまり摩擦損失を低減すること、および、重量の低減が求められている。このことは、寸法、材料特性、表面処理、特に低い表面公差といった全ての設計パラメータが最適化されなければならないことを意味している。同時に、クランクシャフトを製造する際の製造コストを低減するために、材料の除去量によって、研削は切刃による加工、例えば旋削、旋削ブローチまたはフライス加工により置換されている。
【0005】
特に、クランクシャフトのクランクジャーナルの加工のために、ペンジュラム法を用いた外フライス加工が近時採用されている。これに関連して、粗フライス加工と仕上フライス加工が区別され、700mmの直径と270個に上るスロアウェーチップを供えたフライスが広く採用されている。
【0006】
仕上フライス加工に関連して、フライスには外径カッタと切下げカッタとが取り付けられている。外径カッタはジャーナルの外径を加工し、この外径加工されたジャーナルの表面は、更に、次工程において研削加工により仕上げられる。切下げカッタは、仕上げられたジャーナルの幅、すなわち連接棒のための止カラー(stop collar、所謂オイルカラー)の対向面を創成すると共に、ジャーナル頸部(bearing neck)と止カラーとの間の部分に研削出口として使用する切り下げまたは溝をクランク腕の半径方向内側の部分に創成する。
【0007】
例えば、図1はクランクシャフト5を取り付けた状態で示している。クランクシャフト5は、クランクジャーナルA、B、C、D、Eと、クランクピン1、2、3、4とを有している。個々のクランクジャーナルは、ペンジュラム法を用いて円盤フライス6により加工される。ペンジュラム法に関連して、クランクシャフトは加工中にそれ自体の中心軸線回りに回転させられる。円盤フライス6は、所望の切削速度で回転して、クランクピン1、2、3、4の対応する動作に追従する。クランクシャフト5のクランクピン1、2、3、4の加工は、本質的にクランクシャフト5の個々の回転が完了したときに完了する。クランク腕の周面もまた同様の方法により加工することができる。
【0008】
図2は、クランクピン3の加工の様子を拡大して示す図である。この場合、円盤フライス6には、互い違いに配置された外径カッタ7と、切下げカッタ8が装着されている。外径カッタ7は接線配置されており、切下げカッタ8は横配置されている。周知となっている横配置された切下げカッタは、装着方向によりワークと係合する4つの切刃を有したスロアウェーチップとなっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特に、連接棒が案内されるクランクシャフト5の止カラーまたはオイルカラー27の表面には高い要求があり、特に注意して加工しなければならない。近時の円盤フライスは加工精度が20μmとなっており、止カラー27はフライス加工のみでは加工されず、次工程の研削加工または精密旋削加工が必要となっている。
【0010】
OW 01/76796 A1はクランクシャフトのフライス用のスローアウェーチップを開示している。このスローアウェーチップの切刃は、第1の直線部分と、90°から180°の間の角度で該第1の直線部分につながる第2の直線部分と、凸状に湾曲した第3の切刃部分とを有している。然しながら、このカムシャフトフライスは加工精度が20μmのオーダーとなっている。
【0011】
本発明の目的は、エンジンデザインの高まる要求に適したスローアウェーチップおよびフライスであって、加工精度が高く、特に、クランクシャフトの止カラーの表面を研削加工により仕上げることなく、1回のフライス加工により創成することのできるスローアウェーチップおよびフライスを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この目的は、円盤状のカッタ、特にクランクシャフトをフライス加工用カッタのための頂面と底面と、前記頂面と底面とを連結する側面とを有するスローアウェーチップにおいて、少なくとも2つの隅部において、前記頂面には隆起部を有し、前記隆起部は好ましくは、前記カッタの1つの側面の全長に渡って延設されており、少なくとも1つの側面により形成される切刃面の平面において、前記頂面を前記切刃面へ連結する縁部が、該縁部の2つの端部分の各々において、中央部分に対して膨出した部分を有していることを特徴としたスローアウェーチップにより達成される。切削面の切刃輪郭は、従って、中央部分と2つの膨出した輪郭を有する端部分であって実際の切刃を形成する端部分とを具備している。この中央部分については、ここでは詳細には説明されていないが、概ね直線状に形成されている。
【0013】
スローアウェーチップは傾斜させて装着され、傾斜の方向によって1つの隆起した端部分のみがワークに係合し、切刃として作用するようになっている。こうした構成により、2つの有効切刃、すなわち、左右の切刃がスローアウェーチップの側面の各々に切刃として設けられる。ワークに係合する切刃が摩耗すると、もう一方の装着位置、つまり、最初の装着位置に関して円盤フライスの反対側の位置において、同一の方向にて再びスローアウェーチップを使用することができる。
【0014】
スローアウェーチップにおいて上述したのとは反対側もまた切削面として使用されるならば、つまり、頂面へつながる部分において、1つの切刃を隆起した端部分の各々に設ける場合には、有効な切刃の数は倍の4つになる。
【0015】
隆起部分の輪郭は、クランクシャフトのクランクジャーナルの頸部と、クランク腕との間の研削出口として作用する切下げ部の所望の輪郭に対応させて形成される。
【0016】
前記隆起部分は、従って、凸状に湾曲した輪郭が適宜与えられ、この湾曲部は、互いに角度をなす個々の直線部分を含むことができ、前記凸状に湾曲した部分は90°より大きな角度範囲、好ましくは、95°より大きく。そして特に好ましくは約110°より大きな角度範囲に渡って延在するように形成できる。切削隅部に形成された凸状の主切刃は、頂面の膨出部分と側面との間のつなぎの部分により形成され、また、主切刃は、この切削隅部に隣接する2つの側面の間の副切刃へつながっている。切削隅部に隣接する2つの側面の一方は切削面を形成し、他方が副フランク面を形成する。
【0017】
切削面は、好ましくは、鈍角の遷移角を以て、頂面と側面かつまたは切削面との間の縁部の中央部分に伸びており、切刃において前記中央部分に向かう部分が頂面または底面により規定される平面に対して実質的に90°よりも小さな角度で傾斜している。これにより、スローアウェーチップそれ自体、および、連接棒を支持する実際の支承面から研削出口へつながる部分へ印加される応力または荷重が低減される。
【0018】
特に好ましくは、スローアウェーチップは実質的に直方体形状を有し、2つの側面と頂面および/または頂面の隆起部分との間のつなぎの部分に4つの切刃を有し、かつ、好ましくは平坦な底面とを有している。平坦な底面は支持面として作用し、平坦であるが故、研削加工により単純に精密に形成することができる。
【0019】
スローアウェーチップを傾斜させて装着するので、切削面と頂面との間の縁部および切削面の反対側の側面と頂面との間の縁部は切刃を形成するが、その一方のみがワークに接触する。総計で4つの切刃、つまり、左右に2つずつの切刃が設けられ、そのうち3つの切刃が、装着位置に従って切削輪郭の内側に自動的に配置され、それらは切屑の衝接等による偶発的損傷から守られる。
突状湾曲部分の正確な輪郭は、切下げ部の所望形状およびスローアウェーチップの所望の傾斜角度に合わせて決定される。
【0020】
例えば、中央切刃部分に面する湾曲した切刃部分の側部に直線部分を設けることができる。この直線部分は、前記頂面により形成される平面に対して90°より大きく180°より小さな角度、好ましくは110°より大きく160°より小さな角度、特に好ましくは130°より大きく150°より小さな角度を形成する。こうした構成により、クランクピンと切下げ部との間の部分において損傷する危険性が低減される。
【0021】
前記隆起部分を、切削面および底面に対して垂直な平面に関して対称に形成することが特に有利である。
また、好ましくは、隆起部の最も外側の部分に副切刃を設け、クランク腕の内面および/または止カラーを副切刃により加工するようにできる。
【0022】
切削面の平面において、副切刃は底面に対して95°より大きな角度、好ましくは98°より大きく110°より小さな角度、特に好ましくは100°の角度を形成する。
【0023】
円盤フライスに関して、既述した目的は、円盤フライスの弓形部材に接線配置されるように、スローアウェーチップを受容する少なくとも1つの座を備え、前記座の半径方向の支持面を円盤フライスの中心軸線に関して傾斜させた円盤フライスにより達成される。前記座の半径方向の支持面を周方向、つまり周面に関して僅かに傾斜させることにより、垂直逃げ面が確保される。
【0024】
これにより、スローアウェーチップを実質的に接線配置することができ、1つの切刃のみがワークに係合するようにできる。接線配置することにより、スローアウェーチップの交換に際して、スローアウェーチップを操作し易くなる。と言うのは、取付孔が(僅かに所望の傾斜角にもかかわらず)半径方向に延設され、従って、固定ねじをフライスの周面で操作することが可能だからである。スローアウェーチップを傾けて配置することにより、特に、外径カッタと切下げカッタとを備えた円盤フライスの場合に、外径カッタが存在するために、切下げカッタの切刃の一部がワークと係合せず、上述した複数の隆起部分を有した切下げカッタが使用可能となる。傾斜配置することにより、切刃を形成する隆起部分の1つが外径カッタの輪郭の背後に隠れ、この切刃がワークに係合しなくなる。
【0025】
座、より詳細には座の支持面は、好ましくは、主として軸方向に、15°より小さい角度、好ましくは4°から10°の角度、特に好ましくは6°から8°の角度を以て傾斜している。前記座の支持面は、周方向に所望の逃げを確保するように、例えば約3°の傾斜角を以て周方向に傾いている。
【0026】
スローアウェーチップのための傾斜した座はが円盤フライスの周面の左右側部に工具に配設される。更に、外径カッタを円盤フライスに装着し、適切な長さを選択することにより、交互配置を用いて、クランクピンおよび隣接する停止面を一回の加工工程で加工可能となる。
【0027】
加工精度を高めるために、スローアウェーチップのための座の各々には、該座に装着されたスローアウェーチップの軸方向の位置決めのための調節装置が配設されている。この調節装置は、スローアウェーチップを個別に軸方向に調節することが可能で、これにより、加工精度が著しく高まる。
【0028】
好ましくは、前記調節装置は楔部材を具備しており、該楔部材の1つの面が、スローアウェーチップのための座の軸方向接触面として作用し、以て、前記楔部材は、半径方向に移動可能となっており、軸方向の座面が、半径方向の調節距離に関して楔角と作用角とにより決定される比率で、楔部材の半径方向の変位と同時に軸方向に変位するように調節される。楔部材を移動させることにより、座に装着されたスローアウェーチップは座内で軸方向に変位する。楔部材をあらゆる楔状の面または斜面により形成することができる。
【0029】
楔部材は、座に装着されたスローアウェーチップの位置を非常に正確に調節できるとの利点がある。
楔部材は、一例として15°より小さな角度、好ましくは、10°より小さな角度、特に好ましくは5°から8°の角度の作用角を有している。
【0030】
更に好ましくは、楔部材のために前記調節装置は、2つのねじ部を有した差動ねじを具備している。差動ねじを使用することにより非常に正確に調節可能となる。楔部材は、前記差動ねじの1つのねじ部に対応した内ねじを有している。前記差動ねじの他方のねじ部は、円盤フライスの弓形部材においてスローアウェーチップのための座に隣接させて形成された対応のねじ孔に螺合する。
【0031】
前記差動ねじは、ピッチの差、好ましくは1mmより小さな、特に好ましくは0.1mmから0.4mmのピッチ差を有した2つのねじ部、好ましくは、2つの右ねじを有している。
【0032】
スローアウェーチップのための座の支持面により形成される半径方向の停止面、および、上述した軸方向の調節可能な接触面に加えて、スローアウェーチップのための座に適宜に接線方向の停止面を設けて、座に装着されたスローアウェーチップに少なくとも半径方向の停止面に対して予荷重が印加されるようにする。
【0033】
固定ねじによりスローアウェーチップを軸方向の停止面に対して予荷重を以て付勢することにより、調節装置によりスローアウェーチップが軸方向に更に調節されることは妨げられない。と言うのは、スローアウェーチップおよび円盤フライスおよび/または円盤フライスの弓形部材は相対的に正確に製造されており、小さな加工誤差を調節するために要求される軸方向の調節距離は10〜50μmのオーダーだからである。弾性変形により、スローアウェーチップを座に固定するための固定装置は、調節楔部材を通じて適切に限定されたスローアウェーチップの軸方向への移動を許容する。こうした限定された移動を許容する弾性を与える固定ねじが好ましく使用される。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1、2は既述したクランクシャフト製造への応用で用いられる方法を示している。
図3から図6は、本発明によるスローアウェーチップを種々の方向から見た図を示している。図3には、概ね直方体形状のスローアウェーチップが示されている。スローアウェーチップ14は合計で4つの切刃101、102、103、104を有している。
【0035】
切刃面30の側面図である図6に示すように、頂面11と切刃面30との間の縁部は、中央部分9と、該中央部分から上方に隆起して円弧状の切刃を形成する部分101、102から成る。
【0036】
図示する実施形態では、前記中央部分は実質的に直線状に形成されている。更に、直線状の中央部分9の両側部には直線部分28が連結されている。直線部分28は、中央部分9に対して約140°の角度γを画成する。約110°の角度範囲αで示す湾曲領域が形成されるように、隆起部分101、102は直線部分28に連結され実質的に突状の湾曲部分を形成している。2つの湾曲領域101、102は、副切刃13への遷移領域を提供しており、副切刃13は底面12に対して約101°の角度βを画成している。中央部分9に連結された直線部分28は必要不可欠な要素ではない。従って、図7の実施形態では、直線部分は設けられておらず、突状の湾曲部分はより大きな角度範囲に渡って延在している。部分101、102、28の正確な構成は、主として該凹所の所望の輪郭形状ににより決定される。
【0037】
図6を参照すると、スローアウェーチップは、図面に示された2つの隅部に2つの隆起部分101、28および102、28を有している。この隆起部分は、破線31で示す頂面11の他の部分の高さから上方に隆起している。このスローアウェーチップは、対称軸線32に関して線対称形状を呈している。
【0038】
スローアウェーチップ14の頂面および底面の概ね中央部分には、取付孔29が形成されている。該スローアウェーチップは、円盤フライスに接線配置されるように挿入、取付けられる。この場合、面30が切刃面となり、頂面11の隆起部分はフランクを形成する。
【0039】
図5はスローアウェーチップの側面図である。図示する実施形態では、切削角は、切削力を低減するために鈍角となっているが、鋭角構成であってもよい。
【0040】
図8、9は、円盤フライスの弓形部材15の斜視図および断面図である。弓形部材15には、スローアウェーチップ16は外径カッタとして用いられ、本発明によるスローアウェーチップ14は切下げカッタとして用いられる。図9を参照すると、本発明によるスローアウェーチップ14は傾斜するように配置されており、内側の隆起部分が外径カッタ16の輪郭の背後に隠れるようになっている。本実施形態では、従って、本発明によるスローアウェーチップ14において外部の隆起部分だけがワークに接触する。この点、軸に関する傾斜角は約7°となっている。チップポケットは切下げカッタと外径カッタの双方に割り当てられ、そして、これらは切屑を保持するために用いられ、切屑排出の改善に寄与する。
【0041】
図10、11は、円盤フライスの弓形部材15の他の実施形態である。この弓形部材15には外径カッタ16が配設されておらず、本発明によるスローアウェーチップ14のみが切下げカッタとして使用され、互い違いに配設されている。この円盤フライスは、クランクピンの外径が他のフライスを用いて既にフライス加工された後に使用される。このフライスは、クランクジャーナルおよび/またはクランクピンとクランク腕との間の領域の研磨出口(grinding outlet)として作用する切下げ部を含む止カラー(stop collar)を加工するためにのみ用いられる。
【0042】
図12を参照すると、円盤フライスの弓形部材15が円盤フライス18に取付けられている。この実施形態では、円盤フライスは、15個の弓形部材が取付けられるようになっており、弓形部材の各々に多数のスローアウェーチップが取付けられる。これは図12、13に示されている。
図8、10を参照すると、切下げカッタとして使用されるスローアウェーチップ14の各々に調節装置17が配設されている。
【0043】
図14は、前記調節装置の拡大断面図である。本発明によるスローアウェーチップ14は、固定ねじ19により弓形部材15の座26に取付けられる。固定ねじ19はスローアウェーチップの取付孔に挿入され、弓形部材15に形成されたねじ孔に螺合する。前記取付孔、固定ねじ19および弓形部材の対応のねじ孔は、スローアウェーチップの取付に際して、停止面20に対してスローアウェーチップに予荷重が作用するように配置されている。こうした組立条件では、然しながら、スローアウェーチップは前記調節装置により軸方向に僅かに移動することができる。停止面20は調節装置17の構成要素であり、該調節装置は、停止面20を形成する楔部材22をスローアウェーチップ14に押圧する差動ねじを具備している。本実施形態において、楔部材22の作用角δは6°である。
【0044】
調節装置17の詳細な構造を図15から図20に示す。図15、16は差動ねじの端面図および側面図である。図15はトルクスソケット(Torx Socket)を示しており、これにより、差動ねじ21を調節可能となる。然しながらトルクスソケットに代えて他のソケット、例えば、六角穴ソケット等を用いることができる。差動ねじ21は2つの右ねじから成るねじ部23、24を有している。調節装置17の他の構成要素は、傾斜した停止面20を有した楔部材22である。図17から図20は楔部材22の断面図、頂面図、側面図および斜視図である。この楔部材は、外側に停止面20を有した実質的にねじ付きのスリーブ部材から成る。
【0045】
楔部材22の下端部には、円筒状の連結部34が設けられている。この連結部は、図14に示すように、前記弓形部材に形成されたねじ孔の上方に同軸状に形成された大径孔部35に係合する。円筒状の連結部34が大径孔部35内に拘束されるように、円筒状の連結部34および大径孔部35は相互に対応形状に形成されている。このように前記連結部を大径孔部内に拘束するように案内することにより、停止面20の反対側の側面において、楔部材22は弓形部材の案内面に支持されるようになる。これにより、スローアウェーチップの交換が容易になる。と言うのは、解放した状態でも、楔部材は正確に定められた位置を占めるからである。
【0046】
図21に調節方法を示す。先ず、スローアウェーチップ14が固定ねじ19により弓形部材15に固定される。このとき、スローアウェーチップ14は、固定ねじ19により楔部材22の停止面20に押圧されるが、軸方向に僅かに移動させることができる。次いで、適当な工具25を差動ねじ21のトルクスソケットに係合させて、楔部材22を下方に押圧する。これによりスローアウェーチップ14は外側に押圧される。例えば、固定ねじの弾性を利用してスローアウェーチップを限定された範囲内で移動可能とすることができる。
【0047】
本実施形態において、差動ねじ21の2つのねじ23、24のピッチの差は0.25mmとなっている。これは、差動ねじを一回転させることにより、楔部材22は径方向に0.25mm変位し、スローアウェーチップが軸方向に0.025mm調節されることを意味している。工具(スパナ)を14°回転させることにより、スローアウェーチップが軸方向に0.001mm調節される。その結果、正確に調節可能となり、本発明の円盤フライスによれば、許容誤差からの逸脱が低減される。図示する実施形態では、許容誤差は0.005mmとなっている。
【0048】
このようにスローアウェーチップを軸方向に正確に位置決めすることにより、全ての切刃が面形成に関連し、ワークに形成される波打ちや面粗度が著しく低減される。
【0049】
本発明による調節装置17は、また、他のスローアウェーチップおよび円盤フライスで用いることにも有利な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術によるクランクシャフトの製造を示す図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明によるスローアウェーチップの斜視図である。
【図4】本発明によるスローアウェーチップの平面図である。
【図5】本発明によるスローアウェーチップの側面図である。
【図6】本発明によるスローアウェーチップの他の側面図である。
【図7】他の実施形態によるスローアウェーチップの図6と同様の側面図である。
【図8】円盤フライスの弓形部材の斜視図である。
【図9】円盤フライスの弓形部材の端面図である。
【図10】他の実施形態による円盤フライスの弓形部材の斜視図である。
【図11】図10の円盤フライスの弓形部材の端面図である。
【図12】弓形部材を取付けた円盤フライスの部分斜視図である。
【図13】弓形部材を取付けた円盤フライスの側面図である。
【図14】楔部材と共に示すスローアウェーチップの断面図である。
【図15】差動ねじの端面図である。
【図16】差動ねじの側面図である。
【図17】楔部材の断面図である。
【図18】楔部材の頂面図である。
【図19】楔部材の側面図である。
【図20】楔部材の斜視図である。
【図21】本発明による調節装置の操作方法を示す図である。
【符号の説明】
9…中央部分
101…切刃
102…切刃
103…切刃
104…切刃
11…頂面
12…底面
13…副切刃
14…スローアウェーチップ(切下げカッタ)
15…弓形部材
16…スローアウェーチップ(外径カッタ)
17…調節装置
20…停止面
21…差動ねじ
22…楔部材
23…ねじ部
24…ねじ部
28…直線部分
30…切刃面

Claims (28)

  1. 円盤状のフライス加工用カッタのための、頂面(11)と底面(12)と、前記頂面と底面とを連結する側面とを有し、前記頂面(11)は少なくとも2つの隅部において隆起部(101、102)を有するスローアウェーチップ(14)において、
    少なくとも1つの側面により形成される切刃面(30)の平面視において、前記頂面(11)を前記切刃面(8)へ連結する縁部が、該縁部の2つの端部分の各々において、中央部分(9)に対して膨出した前記隆起部(101、102)を有し、該隆起部(101、102、28)が主切刃(101、102)を有し、該主切刃(101、102)が、前記隅部に隣接する2つの側面の間の副切刃(13)に連結し、該副切刃(13)が前記底面(12)に対して95°より大きな角度(β)で交差していることを特徴としたスローアウェーチップ。
  2. 前記隆起部(101、102、28)により突状に湾曲した輪郭が形成され、湾曲部分(101、102)は、互いに連結される直線部分(28)を含み、かつ、90°より大きな角度範囲(α)で形成されることを特徴とした請求項1に記載のスローアウェーチップ。
  3. 前記隆起部(101、102、28)により突状に湾曲した輪郭が形成され、湾曲部分(101、102)は、互いに連結される直線部分(28)を含み、かつ、95°より大きく120°より小さな角度範囲(α)で形成されることを特徴とした請求項1に記載のスローアウェーチップ。
  4. 前記隆起部(101、102、28)により突状に湾曲した輪郭が形成され、湾曲部分(101、102)は、互いに連結される直線部分(28)を含み、かつ、110°の角度範囲(α)で形成されることを特徴とした請求項1に記載のスローアウェーチップ。
  5. 前記隆起部(101、102)が切刃(9、102、103、28)を形成していることを特徴とした請求項1から4の何れか1項に記載のスローアウェーチップ。
  6. 前記スローアウェーチップは、概ね直方体形状を有し、前記切刃面(8)と前記頂面(11)との間の前記縁部および前記切刃面(8)の反対側の側面と前記頂面(11)との間の前記縁部に4つの切刃(101、102、103、104)を備えていることを特徴とした請求項1から5の何れか1項に記載のスローアウェーチップ。
  7. 前記2つの隆起部分(101、102)が、切刃面に対して垂直で、かつ、底面に対して垂直な平面に関して互いに対称になっている請求項1から6の何れか1項に記載のスローアウェーチップ。
  8. 前記副切刃(13)と前記底面(12)との間の前記角度(β)が、98°より大きく110°より小さな角度であることを特徴とした請求項1から7の何れか1項に記載のスローアウェーチップ。
  9. 前記副切刃(13)と前記底面(12)との間の前記角度(β)が、100°であることを特徴とした請求項1から8の何れか1項に記載のスローアウェーチップ。
  10. 円盤フライスの弓形部材(15)に接線配置されるように、スローアウェーチップ(14)を受容する少なくとも1つの座(26)を備えた円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材において、
    前記円盤フライスまたは前記円盤フライスの弓形部材は、請求項1から9の何れか1項に記載のスローアウェーチップを備え、前記座(26)の半径方向の支持面が前記円盤フライスまたは前記円盤フライスの弓形部材(15)の中心軸線に関して傾斜していることを特徴とした円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  11. 前記座(26)の半径方向の支持面が周方向に更に傾斜していることを特徴とした請求項10に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  12. 前記スローアウェーチップのための座(26)の軸方向の傾斜角が15°より小さいことを特徴とした請求項10または11に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  13. 前記座(26)の軸方向の傾斜角が、4°〜10°であることを特徴とした請求項10または11に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  14. 前記座(26)の軸方向の傾斜角が、6°〜8°であることを特徴とした請求項10または11に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  15. 周方向の左右両側で傾斜が反対のスローアウェーチップのための座(26)が、周面の左右側部に交互配置されていることを特徴とした請求項10から14の何れか1項に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  16. 座(26)に装着されたスローアウェーチップ(14)の軸方向の位置決めのための調節装置(17)が、少なくとも1つの座(26)に配設されていることを特徴とした請求項10から15の何れか1項に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  17. 前記調節装置(17)が楔部材(22)を具備し、該楔部材は、座(26)に装着されたスローアウェーチップ(14)に係合すると共に、該楔部材(22)の動作を通じて座(26)に装着された前記スローアウェーチップ(14)が、該座(26)内で軸方向に変位するように移動可能となっていることを特徴とした請求項16に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  18. 前記楔部材(22)が15°より小さな作用角(δ)を有している請求項17に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  19. 前記楔部材(22)が10°より小さな作用角(δ)を有している請求項17に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  20. 前記楔部材(22)が5°〜8゜の作用角(δ)を有している請求項17に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  21. 前記調節装置(17)が差動ねじ(21)を具備する請求項16から20の何れか1項に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  22. 前記差動ねじ(21)が2つのねじ部(23、24)を有することを特徴とした請求項21に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  23. 前記差動ねじ(21)が2つの右ねじ部(23、24)を有することを特徴とした請求項21に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  24. 前記2つのねじ部(23、24)が1mmより小さくピッチを有することを特徴とした請求項22または23に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  25. 前記2つのねじ部(23、24)が0.1mm〜0.4mmのピッチを有することを特徴とした請求項22または23に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  26. 前記座(26)が、周方向の停止面に加えて軸方向および接線方向の停止面を有しており、組み立てた状態において、前記スローアウェーチップ(14)に少なくとも軸方向の停止面に対して予荷重が印加されるようになっていることを特徴とした請求項1から9の何れか1項に記載の少なくとも1つのスローアウェーチップを供えた請求項10から25の何れか1項に記載の円盤フライスまたは円盤フライスの弓形部材。
  27. 前記スローアウェーチップ(14)は、前記調節装置(17)により少なくとも限定された範囲内で軸方向に移動可能に前記座(26)に固定されていることを特徴とした請求項16から26の何れか1項に記載の円盤フライスまたは円盤フライス弓形部材。
  28. クランクシャフト(5)のジャーナル頸部またはクランク腕をフライス加工するための請求項10から27の何れか1項に記載の円盤フライスまたは円盤フライス弓形部材の使用方法。
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