JP4659769B2 - 冷却装置 - Google Patents

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Description

本発明は、冷却回路を循環する冷却水によって熱源である冷却対象を冷却する冷却装置に関するものである。
従来より、この種の冷却装置として、特許文献1に示されるように車載エンジンを冷却対象とし、冷却回路内の冷却水をポンプの駆動を通じて循環させて上記エンジンを冷却するようにしたものが知られている。また、このように冷却水を冷却回路内で循環させるポンプとしては、エンジンによって駆動される機械式ポンプを採用したり、エンジンとは別の駆動源であるモータによって駆動される電動ポンプを採用したりすることが考えられる。
ところで、冷却装置における冷却水の交換では、冷却回路から古い冷却水を抜いた後、その冷却回路に対し新しい冷却水の注水が行われる。この注水後には冷却回路内にある程度のエアが残ったままの状態となり、その状態で冷却装置を稼働させるとエンジンの冷却効率の悪化やポンプの吐出効率の悪化に繋がることとなる。このため、冷却回路にエア抜き部を設け、冷却回路内のエアを上記エア抜き部へと流すことで同回路からのエアの排出(エア抜き)を行う必要がある。
こうしたエア抜きとして具体的には、冷却水の交換後など冷却回路内にエアが存在しているとき、ポンプの駆動による冷却回路内の冷却水の流れを通じて上記エアをエア抜き部に向けて流すことが行われる。このように冷却回路内のエアをエア抜き部に向けて流すことで、同エアがエア抜き部に集められてそこに貯められる。これにより、冷却回路内に存在するエアの同回路からの排出が行われることとなる。
特開2005−16433公報
上述したようにポンプの駆動を通じて冷却回路内のエアをエア抜き部に向けて流し、そのエアをエア抜き部に集めて貯めることにより、冷却回路からのエアの排出を行うことができるようにはなる。ただし、冷却回路内のエアを効率的にエア抜き部に集めることができるとは限らず、同エアをエア抜き部に集めることに時間がかかるという問題があった。これは、冷却回路においては複数の箇所でエアが停滞しており、それらエアの流れにくさが各々の箇所で異なっていることが関係している。
すなわち、仮に、冷却水の吐出量を冷却回路中に停滞しているエアのうち、流れやすい箇所に停滞しているエアに合わせて、上記エア抜きのためのポンプの冷却水の吐出量を設定したとすると、そのポンプの駆動に基づき冷却回路を循環する冷却水の流れでは、流れにくい箇所に停滞しているエアをエア抜き部に向けて効果的に流すことが困難になる。このため、ポンプの駆動を通じて冷却回路内のエアをエア抜き部に集めることに時間がかかるようになる。
また、仮に、冷却回路中に停滞しているエアのうち、流れにくい箇所に停滞しているエアに合わせて、上記エア抜きのためのポンプの冷却水の吐出量を設定したとすると、そのポンプの駆動に基づき冷却回路を循環する冷却水の流れでは、流れやすい箇所に停滞しているエアを流すためには強くなりすぎる。その結果、同エアが冷却水中に気泡となって拡散してしまうことから、やはりポンプの駆動を通じて冷却回路のエアをエア抜き部に集めることに時間がかかるようになる。
なお、こうした問題は、熱源となる冷却対象として車載エンジンを冷却する冷却装置に限らず、車載エンジン以外の冷却対象を冷却する冷却装置においても、概ね共通するものとなっている。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷却回路のエア抜きを行うに際し、その冷却回路内のエアを効率的にエア抜き部に集めることのできる冷却装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、熱源である冷却対象を冷却するための冷却水が入れられるとともに前記冷却対象を通過するように形成された冷却回路と、その冷却回路内の冷却水を循環させるべく駆動される電動ポンプとを備え、前記冷却回路内のエアを同回路に設けられたエア抜き部へと流すことで同回路からのエア抜きを行う冷却装置において、前記電動ポンプを通常どおり駆動する通常モードと前記冷却回路内のエアを前記エア抜き部に集めるために前記電動ポンプを駆動するエア抜きモードとの間でモード切り換えを行う切換手段と、前記エア抜きモードの実施時、前記電動ポンプにおける冷却水の吐出量の変化として、前記冷却回路内の各所に停滞するエアを前記エア抜き部に向けて流すことの可能な変化パターンでの変化が得られるよう、前記電動ポンプを駆動制御する制御手段と、を備えた。
上記構成によれば、冷却回路のエア抜きを行うべくエア抜きモードが実施され、そのエア抜きモード時には電動ポンプの吐出量が上述した変化パターンで変化させられる。そして、電動ポンプの吐出量が上記変化パターンに従って少なくなったときには、冷却回路内のエアの流れやすい箇所に停滞したエアがエア抜き部に向けて流され、そのエアがエア抜き部に集められることとなる。このとき、冷却回路内のエアの流れにくい箇所に停滞したエアをエア抜き部に向けて効果的に流すことは、冷却回路内の冷却水の流れが弱いことから困難である。しかし、冷却回路内のエアの流れにくい箇所に停滞したエアに関しては、電動ポンプの吐出量が上記変化パターンに従って多くなり、冷却回路内の冷却水の流れが強くなったとき、エア抜き部に向けて効果的に流されてそこに集められることとなる。また、電動ポンプの吐出量が少ない状態から多い状態へ変化するように上記変化パターンを設定すれば、その吐出量が多くなったとき、冷却回路内のエアの流れやすい箇所に停滞したエアが既にエア抜き部に向けて流された状態になる。このため、上記のように電動ポンプの吐出量が多い状態なったとき、そのエアが冷却回路内における冷却水の強い流れにより冷却水中に気泡となって拡散してしまい、同エアをエア抜き部に集めることが困難になるということはない。以上のように、冷却回路のエア抜きを行うに際し、電動ポンプの吐出量を上述した変化パターンに従って変化させることにより、冷却回路内のエアを効率的にエア抜き部に集めることができるようになる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、前記冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が高くなるに従って前記電動ポンプの吐出量が多くなるよう、その冷却水の温度に基づき同電動ポンプを駆動制御するものとした。
エア抜きモードの実施時、電動ポンプの駆動を通じて冷却回路を循環する冷却水により冷却対象が冷却されると、その冷却対象を冷却した後の冷却水の温度は上昇してゆくことになる。従って、エア抜きモードの開始後、時間が経過するほど、冷却対象を冷却した後の冷却水の温度は高くなってゆく。上記構成によれば、その冷却水の温度が高くなるに従って、電動ポンプの吐出量が多くなってゆくよう同電動ポンプが駆動制御されるため、同制御を通じてエア抜きモード時における電動ポンプの吐出量の上記変化パターンに従った変化を実現することが可能になる。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記制御手段による前記電動ポンプの駆動制御には、前記冷却対象を冷却した後の冷却水の温度変化に対し前記電動ポンプの吐出量が一定となるよう同電動ポンプを駆動する低温制御領域及び高温制御領域があり、前記低温制御領域は、前記冷却水の低温側温度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を低量側の値である第1設定値で一定とするものであって、前記高温制御領域は、前記低温側温度範囲よりも高温側の温度範囲である前記冷却水の高温側温度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を多量側の値であって前記第1設定値よりも大きい値である第2設定値で一定とするものとした。
上記構成によれば、エア抜きモードの実施時、冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が上昇してゆく過程であって、同冷却水の温度が低温側温度範囲内の値である間には、電動ポンプの吐出量が第1設定値で一定にされ、それによって冷却回路におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが的確にエア抜き部に向けて流され、同エア抜き部に集められることとなる。また、その後であって、上記冷却水の温度が高温側温度範囲内の値である間には、電動ポンプの吐出量が第1設定値よりも大きい値である第2設定値で一定にされ、それによって冷却回路におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアが的確にエア抜き部に向けて流され、同エア抜き部に集められることとなる。以上により、冷却回路におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にエア抜き部に集めることができるようになる。
請求項4記載の発明では、請求項3記載の発明において、前記冷却回路には熱交換器が設けられており、前記第2設定値は前記熱交換器内に停滞したエアを流すことの可能な値とされていることを要旨とした。
冷却回路における熱交換器はエアの流れにくい箇所であり、こうした箇所に停滞したエアに関しては、エア抜きモードが実施されて冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が高温側温度範囲内に入り、電動ポンプの吐出量が第2設定値で一定とされることによって、的確にエア抜き部に向けて流されるようになる。従って、エアの流れにくい箇所である熱交換器に停滞したエアを的確にエア抜き部に集めることができる。
請求項5記載の発明では、請求項3又は4記載の発明において、前記冷却回路内の冷却水と外気との熱交換を通じて同冷却水を冷却する熱交換器と、その熱交換器への送風を行うファンとを備え、前記ファンは、前記冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が駆動開始温度以上であるときに駆動され、前記冷却水の温度が前記駆動開始温度よりも低い値である駆動停止温度以下であるときに駆動停止されるものであり、前記駆動開始温度は前記高温側温度範囲内の値に設定されるとともに、前記駆動停止温度は前記低温側温度範囲内の値に設定されるものとした。
上記構成によれば、エア抜きモード時に冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が高温側温度範囲内の駆動開始温度以上に上昇すると、ファンが駆動されて熱交換器への送風が行われ、同熱交換機での冷却水と外気との熱交換が効果的に行われる。その結果、熱交換器を通過する冷却水が外気により効果的に冷却され、それに伴い冷却対象を冷却した後の冷却水の温度も低下する。そして、冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が低温側温度範囲内の駆動停止温度以下まで低下すると、ファンの駆動が停止されて熱交換器への送風が停止される。その結果、熱交換器を通過する冷却水が外気によって効果的に冷却されることがなくなるため、それに伴い冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が上昇する。以上のようなファンの駆動及びその停止により、冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が低温側温度範囲と高温側温度範囲との間で行き来するようになり、電動ポンプの吐出量が第1設定値で一定とされることと、第2設定値で一定とされることとが繰り返されるようになる。これにより、冷却回路におけるエアの流れやすい箇所と流れにくい箇所とに停滞したエアをより効果的にエア抜き部に集めることができる。
請求項6記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、時間経過に応じて前記電動ポンプの吐出量が変化するよう同電動ポンプを駆動制御するものとした。
上記構成によれば、エア抜きモードが実施されると、時間経過に応じて電動ポンプの吐出量が変化するよう電動ポンプが駆動制御されるため、同制御を通じてエア抜きモード時における電動ポンプの吐出量の上記変化パターンに従った変化を実現することが可能になる。
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明において、前記制御手段による前記電動ポンプの駆動制御では、所定時間が経過する毎に前記電動ポンプの吐出量が増減され、その所定時間が経過するまでの間は時間経過に対し前記電動ポンプの吐出量が一定となるようにされるものとした。
上記構成によれば、エア抜きモードの実施時であって電動ポンプの吐出量が小さい値で一定とされたときには、それによって冷却回路におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが的確にエア抜き部に向けて流され、同エア抜き部に集められることとなる。また、エア抜きモードの実施時であって電動ポンプの吐出量が多い値で一定とされたときには、それによって冷却回路におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアが的確にエア抜き部に向けて流され、同エア抜き部に集められることとなる。以上により、冷却回路におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にエア抜き部に集めることができるようになる。
請求項8記載の発明では、請求項7記載の発明では、前記冷却回路には熱交換器が設けられており、時間経過に対し一定となる前記電動ポンプの吐出量のうち最大値は、前記熱交換器内に停滞したエアを流すことの可能な値に設定されるものとした。
冷却回路における熱交換器はエアの流れにくい箇所であり、こうした箇所に停滞したエアに関しては、時間経過に対し一定となる前記電動ポンプの吐出量が最大値となることによって、的確にエア抜き部に向けて流されるようになる。従って、エアの流れにくい箇所である熱交換器に停滞したエアを的確にエア抜き部に集めることができる。
請求項9記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記冷却対象は、アクセル操作に応じてエンジン回転速度が変化する車載エンジンであり、前記制御手段は、エンジン回転速度が上昇するに従って前記電動ポンプの吐出量が多くなるよう、そのエンジン回転速度に基づき同電動ポンプを駆動制御するものであり、前記制御手段による前記電動ポンプの駆動制御では、エンジン回転速度の変化に対し電動ポンプの吐出量が一定となるよう同電動ポンプを駆動する低速制御領域及び高速制御領域があり、前記低速制御領域は、アイドル回転速度付近の回転速度範囲である低速回転速度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を低量側の値である第3設定値で一定とするものであって、前記高速制御領域は、前記低速回転速度範囲よりも高速側の回転速度範囲であってアクセル操作としてレーシング操作を行った状態でのエンジン回転速度付近の回転速度範囲である高速回転速度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を多量側の値であって前記第3設定値よりも大きい値である第4設定値で一定とするものとした。
エア抜きモードの実施時、アクセル操作が行われていない状態では、エンジン回転速度が低速回転速度範囲内の値となって電動ポンプの吐出量が第3設定値で一定にされ、それによって冷却回路におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが的確にエア抜き部に向けて流され、同エア抜き部に集められることとなる。また、アクセル操作としてレーシング操作が行われると、エンジン回転速度がアイドル回転速度から上昇し高速回転速度範囲内の値となって電動ポンプの吐出量が第4設定値で一定とされ、それによって冷却回路におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアが的確にエア抜き部に向けて流され、同エア抜き部に集められることとなる。従って、アクセル操作を行わない状態とレーシング操作を行った状態とを繰り返すことにより、電動ポンプにおける冷却水の吐出量が冷却回路内の各所に停滞するエアをエア抜き部に向けて流すことの可能な変化パターンで変化するようになる。その結果、冷却回路におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にエア抜き部に集めることができるようになる。
請求項10記載の発明では、請求項9記載の発明において、前記冷却回路には熱交換器が設けられており、前記第4設定値は前記熱交換器内に停滞したエアを流すことの可能な値とされていることを要旨とした。
冷却回路における熱交換器はエアの流れにくい箇所であり、こうした箇所に停滞したエアに関しては、エア抜きモードの実施時にアクセル操作としてレーシング操作を行い、エンジン回転速度を高速回転速度範囲内の値へと上昇させ、電動ポンプの吐出量が第4設定値で一定とされるようにすることで、的確にエア抜き部に向けて流されるようになる。従って、エアの流れにくい箇所である熱交換器に停滞したエアを的確にエア抜き部に集めることができる。
[第1実施形態]
以下、本発明を車載エンジンの冷却装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
この冷却装置は、自動車に搭載されたエンジン1を通過するように形成された冷却回路2、及び同冷却回路2内に入れらた冷却水を循環させるべく駆動される電動ポンプ3を備えている。そして、電動ポンプ3の駆動により冷却回路2内の冷却水が循環してエンジン1を通過すると、その際に冷却水とエンジン1との間で熱交換が行われ、同エンジン1が冷却されるとともにエンジン1から出た冷却水の温度(エンジン出口水温)が上昇する。なお、冷却回路2はエンジンのスロットルバルブ4や空調装置のヒータコア5も通過しており、冷却回路2を循環する冷却水の一部がスロットルバルブ4及びヒータコア5に導かれる。
冷却回路2には冷却水を外気と熱交換させて冷却する熱交換器6が設けられている。冷却回路2においては、熱交換器6の上流側で同熱交換器6を通過する通路2aと熱交換器6を迂回する通路2bとに分岐するとともに、熱交換器6の下流側にて上記二つの通路2a,2bが一つに集合している。また、冷却回路2における二つの通路2a,2bの集合部分には、通路2aを介しての熱交換器6への冷却水の流通を禁止・許可すべく動作するサーモスタット7が設けられている。このサーモスタット7には、上記通路2a,2bの集合部分を通過する冷却水の温度の高いとき(例えば80℃以上のとき)のみ開弁して通路2aを介しての熱交換器6への冷却水の流通を許可する感温弁が設けられている。
従って、通路2a,2bの集合部分を通過する冷却水の温度の高くないときには、サーモスタット7の動作、より詳しくは感温弁の閉弁により、通路2aを介しての熱交換器6への冷却水の流通が禁止される。また、通路2a,2bの集合部分を通過する冷却水の温度が高くなると、サーモスタット7の動作、より詳しくは感温弁の開弁により、通路2aを介しての熱交換器6への冷却水の流通が許可される。そして、冷却水が熱交換器6を通過することで、その冷却水が同熱交換器6での外気との熱交換によって冷却される。
熱交換器6の近傍には、その熱交換器6への送風を行う電動ファン8が設けられている。この電動ファン8は、エンジン1を冷却した後の冷却水の温度(エンジン出口水温)に基づき駆動開始及び駆動停止される。すなわち、エンジン出口水温が高くなると、電動ファン8が駆動開始されて熱交換器6への送風を行い、その熱交換器6での冷却水と外気との熱交換を促進する。その結果、冷却水が熱交換器6にて効果的に冷却される。また、エンジン出口水温が低くなると、電動ファン8が駆動停止されて熱交換器6への送風が行われなくなる。
この実施形態における冷却装置においては、冷却回路2が密閉された密閉型となっており、このように密閉された冷却回路2に対し冷却水の不足が生じたときに同不足分の冷却水を供給したり、冷却回路2の余分な冷却水を一時的に貯留したりするためのリザーブタンク9を備えている。同リザーブタンク9は、密閉された冷却回路2内の冷却水に混入したエアを同冷却水から取り除くための気液分離機能を有するとともに、冷却水を補充するための注水口9aを備えている。なお、リザーブタンク9の気液分離機能とは、同タンク9内の気相と液相とのうち気相から冷却水を入れて液相にて冷却水を一時的に貯留することにより、冷却水に含まれるエアの同冷却水からの分離を実現するものである。
リザーブタンク9は、冷却回路2におけるエンジン1からの出口部分に繋がる通路10、冷却回路2におけるエアの停滞しやすい部分である熱交換器6の最上部に繋がる通路11、及び冷却回路2の通路2aにおける熱交換器6の下流側の部分に繋がれる通路12とそれぞれ接続されている。そして、冷却回路2内の冷却水の温度が高くなってサーモスタット7の動作を通じて通路2aを介しての熱交換器6への冷却水の流通が許可されると、リザーブタンク9内の冷却水を通路12を介して冷却回路2(通路2a)に流すことが可能になる。その結果、冷却回路2におけるエンジン1からの出口部分及び熱交換器6の最上部の冷却水が、同冷却回路2内の水圧等に基づき通路10,11を介してリザーブタンク9に送られる。また、リザーブタンク9にて気液分離された後の冷却水は、通路12を介して冷却回路2(通路2a)に送り出される。
また、冷却装置は、自動車におけるエンジン1等の各種搭載機器を駆動制御する電子制御装置13を備えている。電子制御装置13は、上記各種搭載機器の駆動制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置13の入力ポートには、アクセルペダル14の踏み込み量(アクセル操作量)を検出するアクセルポジションセンサ15、エンジン1の吸入空気量を検出するエアフローメータ16、エンジン1の回転速度を検出する回転速度センサ17、及び冷却回路2におけるエンジン出口水温を検出する水温センサ18等の各種センサが接続されている。一方、電子制御装置13の出力ポートには、エンジン1の燃料噴射弁、電動ポンプ3、及び電動ファン8等の駆動回路が接続されている。
電子制御装置13は、上記各センサ類から入力される検出信号より把握される自動車及びエンジン1の運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各機器類の駆動回路に指令信号を出力する。こうして、エンジン1における燃料噴射制御等の運転制御や冷却装置における電動ポンプ3及び電動ファン8の駆動制御などの各種制御が電子制御装置13により実施されている。
ここで、電子制御装置13によるエンジン1の燃料噴射制御等を通じて行われる同エンジン1の出力調整は、例えば次のようにして行われる。すなわち、アクセルペダル14が踏み込み操作されると、そのときのアクセル操作量に応じたエンジン出力が得られるようエンジン1の燃料噴射制御等が行われる。従って、自動車の停車時などエンジン出力の車輪側への伝達を遮断した状況のもとで所定のアクセル操作を行うと、そのときのアクセル操作量に応じたエンジン出力の調整を通じてエンジン回転速度が変化する。なお、上記アクセル操作として、例えばアクセル操作量を「0」から急速に増大させるレーシング操作を行ったとすると、それに応じてエンジン出力が急速に増大されてエンジン回転速度が上昇することとなる。
電子制御装置13による電動ポンプ3の駆動制御に関しては、エンジン回転速度及びエンジン負荷等のエンジン運転状態に基づき電動ポンプ3の駆動指令値であるポンプデューティを設定し、そのポンプデューティに対応した冷却水の吐出量が得られるよう電動ポンプ3を駆動することによって実現される。上記ポンプデューティに関しては、最小値(例えば40%)と最大値(100%)との間で可変とされ、エンジン1の発熱が多くなるエンジン運転状態であるときほど、例えばエンジン高回転になるとともにエンジン高負荷になるほど、大きい値に設定される。そして、このポンプデューティが大きい値になるほど、上記電動ポンプ3の駆動制御を通じて同電動ポンプ3の冷却水の吐出量が多くなるようにされる。従って、アイドル運転時などエンジン1の発熱が少ない状況下では、電動ポンプ3の吐出量が少ない値で一定とされてエンジン1を通過する冷却水の量が少なくされ、その冷却水によるエンジン1の必要以上の冷却が回避される。また、エンジン1の高回転高負荷運転時などエンジン1の発熱が多くなるほど、電動ポンプ3の吐出量が多くされてエンジン1を通過する冷却水の量が多くされ、その冷却水によって効率よくエンジン1の冷却が行われる。
また、電子制御装置13による電動ファン8の駆動制御に関しては、エンジン出口水温に基づき電動ファン8の駆動開始及び駆動停止を行うことによって実現される。具体的には、電動ファン8に関しては、エンジン出口水温が駆動開始温度以上になることに基づき図2の実線で示されるように駆動開始され、その駆動後にはエンジン出口水温が上記駆動開始温度よりも低い値である駆動停止温度以下になることに基づき同図の破線で示されるように駆動停止される。なお、上記駆動開始温度及び駆動停止温度は、サーモスタット7の感温弁が開弁する温度(この実施形態では80℃)よりも高い値であって、例えばそれぞれ96℃及び94℃に設定されている。従って、冷却回路2内の冷却水の温度(エンジン出口水温)が高くなると電動ファン8の駆動を通じて熱交換器6への送風が行われて冷却水が熱交換器6にて外気により効果的に冷却され、上記冷却水の温度が低くなると電動ファン8が駆動停止されて熱交換器6への送風が行われなくなる。
次に、冷却装置における冷却水の交換後等に行われる冷却回路2のエア抜きについて、図1を参照して説明する。
冷却装置における冷却水の交換では、冷却回路2から古い冷却水を抜き、その後にリザーブタンク9の注水口9aから新しい冷却水が注水される。このように注水口9aを介してリザーブタンク9に入れられた冷却水は、リザーブタンク9から通路10,11を介して冷却回路2に入ってゆく、そして、冷却回路2に冷却水が入れられると、その冷却水と入れ替わりに冷却回路2内のエアが通路10,11を介してリザーブタンク9に押し出され、更に注水口9aから外部に放出される。こうした注水により、冷却回路2や通路10,11内に冷却水が満たされるとともに、リザーブタンク9の所定位置まで冷却水が満たされると、リザーブタンク9の注水口9aが閉じられる。
この状態にあっては、冷却回路2内にある程度のエアが残ったままとなっており、冷却水の交換後には冷却回路2に残ったままのエアを同冷却回路2から排出するためのエア抜きが行われる。すなわち、エンジン1を自立運転させることによって電動ポンプ3を駆動し、冷却回路2内の冷却水を循環させるとともに、その冷却水の温度を上昇させてサーモスタット7の感温弁を開弁させる。電動ポンプ3の駆動を通じて冷却回路2内の冷却水を循環させると、その冷却水の流れによって冷却回路2の所定箇所に停滞しているエアが押し流されるようになる。そして、サーモスタット7の感温弁の開弁後には、冷却回路2の冷却水が上記のように押し流したエアと共に通路10,11を介してリザーブタンク9に送られ、そこで気液分離が行われて分離後のエアが貯められることとなる。一方、リザーブタンク9での気液分離後の冷却水は、通路12を介して冷却回路2(通路2a)に送り出される。
以上のように、サーモスタット7の感温弁が開弁している状況のもとで、電動ポンプ3の駆動を通じて冷却回路2内に停滞しているエアを押し流すと、そのエアがリザーブタンク9に向けて流されて同タンク9に集められる。このように冷却回路2に停滞していたエアをリザーブタンク9に集めることにより、冷却回路2からエアが排出されて同回路のエア抜きが行われる。従って、冷却回路2に通路10〜12を介して接続することによって同回路2に設けられるリザーブタンク9は、冷却回路2内に停滞したエアが流し込まれて集められるエア抜き部として機能することとなる。
ところで、上述したように冷却回路2のエア抜きを行ったとしても、冷却回路2内のエアを効率的にリザーブタンク9に集めることができるとは限らず、同エアをリザーブタンク9に集めることに時間がかかるという問題が生じる。これは冷却回路2においては複数の箇所でエアが停滞しており、それらエアの流れにくさが各々の箇所で異なっていることが関係している。例えば、冷却回路2において、熱交換器6は、他の箇所に比べてエアが流れにくい箇所、言い換えれば冷却回路2における最もエアが流れにくい箇所となっている。
ここで、冷却回路2からのエア抜きのためにエンジン1を自立運転させる際、エンジン1をアイドル運転で放置したとすると、ポンプデューティが最小値(40%)となって電動ポンプ3の吐出量も最小値となる。この場合、冷却回路2を循環する冷却水の流れが弱いことから、同回路2に停滞しているエアのうち、流れやすい箇所に停滞しているエアは冷却水によってリザーブタンク9に向けて流されるものの、流れにくい箇所に停滞しているエアについては冷却回路2内の冷却水の流れによりリザーブタンク9に向けて効率よく流すことは難しい。このため、電動ポンプ3の駆動を通じて冷却回路2内のエアをリザーブタンク9に集めることに時間がかかるようになる。
また、上記エア抜きに要する時間を短くするため、作業者がアクセル操作としてレーシング操作を行ってエンジン回転速度を上昇させ、電動ポンプ3の吐出量を多くすることが行われる場合もある。この場合、レーシング操作時のアクセル操作量が大きくなってエンジン回転速度が上がりすぎ、電動ポンプ3の吐出量が過多になる傾向があることは否めない。これは、そのときの電動ポンプ3の吐出量を適切な値に調整するためには精密なアクセル操作を行ってアクセル操作量を適切な値に調整しなければならず、こうした精密なアクセル操作を作業者が実施できずにアクセル操作量を大きくしすぎるためである。そして、電動ポンプ3の吐出量が過多になると、冷却回路2を流れる冷却水の流れが強くなりすぎ、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞しているエアが冷却水中に気泡となって拡散してしまうことから、やはり冷却回路2内のエアをリザーブタンク9に集めることに時間がかかるようになる。
この実施形態では、上記の問題に対処するため、エア抜きの際には通常とは異なる電動ポンプ3の駆動制御を行うようにしている。より詳しくは、電動ポンプ3を通常どおり駆動する通常モードとエア抜きのために駆動するエア抜きモードとの間でのモード切り換えを可能とし、エア抜きモードでは電動ポンプ3の吐出量の変化として冷却回路2の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンでの変化が得られるよう電動ポンプ3を駆動制御する。
この場合、エア抜きモードの実施により、電動ポンプ3の吐出量が上述した変化パターンで変化させられる。そして、電動ポンプ3の吐出量が上記変化パターンに従って少なくなったときには、冷却回路2内のエアの流れやすい箇所に停滞したエアがリザーブタンク9に向けて流され、そのエアがリザーブタンク9に集められる。また、冷却回路2内のエアの流れにくい箇所に停滞したエアに関しては、電動ポンプ3の吐出量が上記変化パターンに従って多くなり、冷却回路2内の冷却水の流れが強くなったとき、リザーブタンク9に向けて効果的に流されて同タンク9に集められる。このように電動ポンプ3の吐出量を上記変化パターンに従って変化させることで、冷却回路2内のエアを効率的にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
次に、エア抜きモード時に電動ポンプ3の吐出量を上述した変化パターンで変化させる具体的な手法について説明する。
電動ポンプ3の吐出量の上記変化パターンに従った変化は、ポンプデューティをエンジン出口水温に基づいて図3に示されるように設定することによって実現される。図3から分かるように、エア抜きモード時にはポンプデューティがエンジン出口水温の上昇に従って大きくされる。また、エンジン出口水温が低温側温度範囲(T1〜T2)にあるときにはポンプデューティがD1という値で一定とされ、エンジン出口水温が低温側温度範囲(T1〜T2)よりも高温側の温度範囲である高温側温度範囲(T3〜T4)にあるときにはポンプデューティがD1よりも大きい値であるD2という値で一定とされる。
そして、エア抜きモード時にポンプデューティがエンジン出口水温に基づき図3に示されるように設定されると、そのポンプデューティに基づき駆動される電動ポンプ3の吐出量が同ポンプデューティのエンジン出口水温に応じた変化に対応して変化することとなる。すなわち、エア抜きモード時には、電動ポンプ3の吐出量がエンジン出口水温の上昇に従って多くなってゆく。また、エンジン出口水温が低温側温度範囲(T1〜T2)にあるときには電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティD1に対応した値である第1設定値で一定となり、エンジン出口水温が高温側温度範囲(T3〜T4)にあるときには電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティD2に対応した値である第2設定値で一定となる。この第2設定値は上述した第1設定値よりも大きい値となる。
従って、エア抜きモードでの電動ポンプ3の駆動制御においては、エンジン出口水温が低温側温度範囲内にあるときに電動ポンプ3の吐出量を第1設定値で一定とする低温制御領域と、エンジン出口水温が高温側温度範囲内にあるときに電動ポンプ3の吐出量を第2設定値で一定とする高温制御領域とがあることになる。なお、上記第2設定値は冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所である熱交換器6に停滞したエアを流すことの可能な値とされ、こうした第2設定値を得るためのポンプデューティD2として例えば80%という値が採用されている。また、上記第1設定値は第2設定値よりも小さい値であって冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所以外の箇所に停滞したエアを流すうえで最適な値とされ、こうした第1設定値を得るためのポンプデューティD1として例えば60%という値が採用されている。
エンジン1が自立運転した状態でエア抜きモードが実施されると、電動ポンプ3の駆動を通じて冷却回路2内の冷却水が循環し、その冷却水とエンジン1との熱交換を通じてエンジン出口水温が上昇してゆく。従って、エア抜きモードの開始後、時間が経過するほどエンジン出口水温が高くなってゆき、それに伴い図3に示されるように可変とされるポンプデューティに基づき電動ポンプ3が駆動制御される。こうした電動ポンプ3の駆動制御によって、エア抜きモード時における電動ポンプ3の吐出量の上述した変化パターンに従った変化が実現されるようになる。
エア抜きモードの実施時、エンジン出口水温が上昇してゆく過程であって、同エンジン出口水温が低温側温度範囲(T1〜T2)内の値である間は、ポンプデューティがD1(60%)という値で一定にされ、それに伴い電動ポンプ3の吐出量も第1設定値で一定にされる。これにより、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが、的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められる。また、その後であって、エンジン出口水温が高温側温度範囲(T3〜T4)内の値である間には、ポンプデューティがD2(80%)という値で一定にされ、それに伴い電動ポンプ3の吐出量が第1設定値よりも大きい値である第2設定値で一定にされる。これにより、冷却回路2における熱交換器6などのエアの流れにくい箇所に停滞したエアが的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められる。以上により、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
また、この実施形態では、電動ファン8の駆動停止温度(図2)が上記低温側温度範囲(図3のT1〜T2)に関連づけられるとともに、電動ファン8の駆動開始温度(図2)が及び上記高温側温度範囲(図3のT3〜T4)と関連づけられている。詳しくは、電動ファン8の駆動停止温度が低温側温度範囲内の値、例えば低温側温度範囲の最大値(T2)となるよう上記駆動停止温度及び低温側温度範囲が定められている。従って、電動ファン8の駆動停止温度を例えば上述したように94℃に設定したとすると、低温側温度範囲の最大値(T2)も同じく94℃に設定されることとなる。一方、電動ファン8の駆動開始温度が高温側温度範囲内の値、例えば高温側温度範囲の最小値(T3)となるよう上記駆動開始温度及び高温側温度範囲が定められている。従って、電動ファン8の駆動開始温度を例えば上述したように96℃に設定したとすると、高温側温度範囲の最大値(T3)も同じく96℃に設定されることとなる。
図4(a)〜(c)は、上記のように電動ファン8の駆動停止温度及び駆動開始温度、並びに、低温温度範囲及び高温側温度範囲を設定した場合のエア抜きモード時におけるエンジン出口水温、ポンプデューティ、及び電動ファン8の駆動状態の変化を示したタイムチャートである。
エア抜きモード時にエンジン出口水温が低温側温度範囲(T1〜T2)内から高温側温度範囲(T3〜T4)内に上昇すると、ポンプデューティがD1(60%)という値からD2(80%)という値へと変化してゆく。そして、エンジン出口水温が高温側温度範囲の最小値T4(96℃)以上になってポンプデューティがD2という値になると(タイミングt1)、電動ファン8が駆動されて熱交換器6への送風が行われ、同熱交換器6での冷却水と外気との熱交換が効果的に行われる。その結果、熱交換器6を通過する冷却水が外気によって効果的に冷却され、それに伴いエンジン出口水温も低下する。そして、エンジン出口水温が低温側温度範囲内まで低下して同範囲の最大値T2(94℃)以下になると(タイミングt2)、ポンプデューティがD1という値になるとともに、電動ファン8が駆動停止されて熱交換器6への送風が停止される。その結果、熱交換器6を通過する冷却水が外気によって効果的に冷却されることがなくなるため、それに伴いエンジン出口水温が上昇する。
以上のような電動ファン8の駆動開始及び駆動停止とそれに伴うエンジン出口水温の増減とは、その後も繰り返され、図4の例ではそれぞれタイミングt3〜t6にて生じる。その結果、エンジン出口水温は低温側温度範囲と高温側温度範囲との間で行き来するようになり、電動ポンプ3の吐出量が第1設定値(D1に対応)で一定とされることと、第2設定値(D2に対応)で一定とされることとが繰り返される。これにより、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所とエアの流れにくい箇所とに停滞したエアを、より一層的確にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
最後に、冷却装置での冷却水の交換に伴う冷却回路2への注水作業、及び冷却回路2からのエア抜き作業の実行手順について、図5のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
冷却回路2から古い冷却水を抜いた後、冷却回路2を新しい冷却水で満たすための注水作業が行われる(S101)。より詳しくは、エンジン1の停止させた状態で、リザーブタンク9内が注水口9aを介して大気に開放されるとともに、その注水口9aから新しい冷却水が注入される。これにより、冷却回路2内や通路10,11内等に新しい冷却水が満たされるとともに、その冷却水と入れ替わりに冷却回路2内や通路10,11内等にあったエアが押し出されて注水口9aから外部に放出される。そして、上記注水によってリザーブタンク9内の所定位置までが新しい冷却水によって満たされると、リザーブタンク9の注水口9aが閉じられることとなる。
続いて、エア抜きモードが実施され(S102)、その状態でエンジン1の自立運転、例えばアイドル運転が実施される(S103)。更に、エンジン出口水温に基づいてエア抜きモードでの電動ポンプ3の駆動制御が実行されるとともに(S104)、エンジン出口水温に基づいて電動ファン8の駆動制御が実行される(S105)。こうした電動ポンプ3及び電動ファン8の駆動制御により、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所とエアの流れにくい箇所とに停滞したエアがそれぞれ的確かつ効果的にリザーブタンク9に集められ、冷却回路2からリザーブタンク9へのエアの排出(エア抜き)が行われることとなる。
冷却回路2のエア抜きが行われてから、ある程度の時間が経過すると、エンジン1の運転が停止され、それに伴い上記電動ポンプ3の駆動制御及び電動ファン8の駆動制御も停止される(S106)。この状態で、リザーブタンク9の水位が規定範囲よりも低ければ(S107:NO)、冷却回路2からのエア抜きに起因してリザーブタンク9の水位低下が生じている状態であることから、冷却回路2のエア抜きが未完である旨判断される。この場合、リザーブタンク9の注水口9aから同タンク9内への冷却水の追加注入が行われ(S108)、その後にステップS102以降の動作が繰り返される。一方。ステップS107において、リザーブタンク9の水位が規定範囲内にあれば(YES)、冷却回路2からのエア抜きに起因したリザーブタンク9の水位低下が生じていない状態であることから、冷却回路2のエア抜きが完了した旨判断される。この場合、エア抜き作業が終了され、エア抜きモードから通常モードへのモード切り換えが行われる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)電動ポンプ3を通常どおり駆動する通常モードとエア抜きのために駆動するエア抜きモードとの間でのモード切り換えを可能とし、エア抜きモードでは電動ポンプ3の吐出量の変化として冷却回路2の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンでの変化が得られるよう電動ポンプ3を駆動制御するようにした。そして、冷却回路2からのエア抜きを行う際には、エア抜きモードでの電動ポンプ3の駆動制御を通じて、電動ポンプ3の吐出量が上述した変化パターンで変化させられる。この場合、電動ポンプ3の吐出量が上記変化パターンに従って少なくなったときには、冷却回路2内のエアの流れやすい箇所に停滞したエアがリザーブタンク9に向けて流され、そのエアがリザーブタンク9に集められる。また、冷却回路2内のエアの流れにくい箇所に停滞したエアに関しては、電動ポンプ3の吐出量が上記変化パターンに従って多くなり、冷却回路2内の冷却水の流れが強くなったとき、リザーブタンク9に向けて効果的に流されて同タンク9に集められる。以上により、冷却装置における冷却水の交換後などに冷却回路2からのエア抜きを実施する際、その冷却回路2内の各所に停滞したエアを効率的にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
(2)エンジン1が自立運転した状態でエア抜きモードが実施されると、電動ポンプ3の駆動を通じて冷却回路2を循環する冷却水がエンジン1からの熱を受け、エンジン出口水温が時間経過に従って高くなってゆく。こうしたエンジン出口水温の上昇に伴いポンプデューティが図3に示されるように増加側の値へと可変設定され、同ポンプデューティに基づき電動ポンプ3が駆動制御される。このようにポンプデューティの可変設定及び電動ポンプ3の駆動制御を行うことにより、エア抜きモード時における電動ポンプ3の吐出量の上述した変化パターンに従った変化を実現することができるようになる。
(3)上述した電動ポンプ3の吐出量の変化パターンでは、その電動ポンプ3の吐出量が少ない状態から多い状態へ変化する。このため、電動ポンプ3の吐出量が多くなったときには、冷却回路2内のエアの流れやすい箇所に停滞したエアが既にリザーブタンク9に向けて流された状態になる。従って、上記のように電動ポンプ3の吐出量が多い状態になったとき、そのエアが冷却回路2内における冷却水の強い流れにより冷却水中に気泡となって拡散してしまい、同エアをリザーブタンク9に集めることが困難になるということはない。
(4)エア抜きモードの実施時、エンジン出口水温が上昇してゆく過程であって、同エンジン出口水温が図3の低温側温度範囲(T1〜T2)内の値である間は、ポンプデューティがD1(60%)という値で一定にされ、それに伴い電動ポンプ3の吐出量も第1設定値で一定にされる。この第1設定値は、冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所以外の箇所に停滞したエアをリザーブタンク9に向けて流すうえで最適な値とされている。このため、電動ポンプ3の吐出量を第1設定値で一定とすることで、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが、的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められる。また、その後であって、エンジン出口水温が図3の高温側温度範囲(T3〜T4)内の値である間には、ポンプデューティがD2(80%)という値で一定にされ、それに伴い電動ポンプ3の吐出量が第1設定値よりも大きい値である第2設定値で一定にされる。この第2設定値は、冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所である熱交換器6に停滞したエアを流すことの可能な値とされている。このため、電動ポンプ3の吐出量を第2設定値で一定とすることで、冷却回路2における熱交換器6などのエアの流れにくい箇所に停滞したエアが的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められる。以上により、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
(5)電動ファン8の駆動停止温度は上記低温側温度範囲(T1〜T2)内の値に設定され、電動ファン8の駆動開始温度は上記高温側温度範囲(T3〜T4)内の値に設定されている。このため、エア抜きモード時にエンジン出口水温が高温側温度範囲内の上記駆動開始温度(T3)以上に上昇すると、電動ファン8が駆動されて熱交換器6への送風が行われる。その結果、熱交換器6を通過する冷却水が外気によって効果的に冷却され、それに伴いエンジン出口水温も低下する。そして、エンジン出口水温が低温側温度範囲内の上記駆動停止温度(T2)以下に低下すると、電動ファン8が駆動停止されて熱交換器6への送風が停止される。その結果、熱交換器6を通過する冷却水が外気によって効果的に冷却されることがなくなるため、それに伴いエンジン出口水温が上昇する。以上のような電動ファン8の駆動開始及び駆動停止により、エンジン出口水温は低温側温度範囲と高温側温度範囲との間で行き来するようになり、電動ポンプ3の吐出量が第1設定値(D1に対応)で一定とされることと、第2設定値(D2に対応)で一定とされることとが繰り返されるようになる。これにより、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所とエアの流れにくい箇所とに停滞したエアとを、より効果的にリザーブタンク9に集めることができる。
(6)冷却回路2に停滞したエアが集められるエア抜き部として機能するリザーブタンク9は、冷却回路2においてエアの停滞しやすい箇所である熱交換器6の最上部に対し通路11を介して接続され、そこから冷却水を引き込むようにしている。このため、冷却回路2のエア抜き時、冷却回路2のエアが停滞しやすい箇所である熱交換器6の最上部から効果的にエアをリザーブタンク9へと集めることができる。
(7)エア抜きモードの実施時、冷却回路2内の冷却水の温度がサーモスタット7の感温弁の開弁する温度未満であってリザーブタンク9への冷却水の引き込みが行われていないときにも、冷却回路2に停滞するエアを効果的に押し流すためのエンジン出口水温に基づく電動ポンプ3の駆動が行われる。仮に、冷却水の温度がサーモスタット7の感温弁の開弁する温度未満であるときに、こうした電動ポンプ3の駆動が行われないとすると、感温弁回りに停滞したエアをそこから押し流すことができず、そのエアによって感温弁の冷却水の温度に対する感度が悪化し、感温弁の開弁が遅れるおそれがある。また、このときにヒータコア5に停滞したエアをそこから押し流すこともできず、同ヒータコア5でのエア噛みを早期に解消することができないおそれもある。しかし、上述したように電動ポンプ3の駆動を行うことで、これらの不具合が生じることを回避できるようになる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図6に基づき説明する。
この実施形態は、エア抜きモード時、時間経過に応じて電動ポンプ3の吐出量が変化するよう同電動ポンプ3を駆動制御し、その駆動制御を通じて電動ポンプ3の吐出量が冷却回路2の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンで変化するようにしたものである。
電動ポンプ3の吐出量の上記変化パターンに従った変化は、ポンプデューティをエア抜きモード開始からの時間経過に基づいて図6に示されるように設定することによって実現される。図6から分かるように、エア抜きモード時において、ポンプデューティは、所定時間の経過毎に「D2(80%)→D1(60%)」→最小値(40%)→D1(60%)」→D2(80%)」という順で繰り返し変化するよう可変設定される。また、ポンプデューティは、こうした変化の生じるタイミング以外のときには一定となるようにされる。
従って、エア抜きモード時の電動ポンプ3の駆動制御では、同電動ポンプ3からの冷却水の吐出量として、時間経過に伴い上記のように可変設定されるポンプデューティに対応した吐出量が得られるようになる。すなわち、所定時間の経過毎に電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティの変化に応じて増減され、その所定時間が経過するまでの間は時間経過に対し同吐出量が一定となる。そして、時間経過に対し一定となる吐出量のうち最大値は、ポンプデューティD2(80%)に対応した値、すなわち第1実施形態における第1設定値と等しい値となるため、熱交換器6に停滞したエアを的確にリザーブタンク9に向けて流すことが可能になる。
この実施形態によれば、第1実施形態の(1))、(3)、(6)、及び(7)の効果に加え、以下に示す効果が得られる。
(8)エア抜きモードが実施されると、時間経過に応じて電動ポンプ3の吐出量が変化するよう電動ポンプ3が駆動制御される。このように電動ポンプ3の駆動制御を行うことにより、エア抜きモード時における電動ポンプ3の吐出量の上述した変化パターンに従った変化を実現することができるようになる。
(9)エア抜きモードの実施時であって電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティD1(60%)に対応する値で一定とされたときには、それによって冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められることとなる。また、エア抜きモードの実施時であって電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティD2(80%)に対応する値で一定とされたときには、それによって冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所である熱交換器6に停滞したエアが的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められることとなる。以上により、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
(10)エア抜きモードの実施時であって、時間経過に対し一定となる電動ポンプ3の吐出量のうち最小値は、ポンプデューティの最小値(40%)に対応する値となる。従って、仮に冷却回路2に停滞していたエアがエア抜き作業中の冷却水の流れにより気泡となって冷却水中に拡散したとしても、電動ポンプ3の吐出量をポンプデューティの最小値(40%)に対応する値で一定となったときに冷却水の流れを弱くし、冷却水中に拡散したエア(気泡)を冷却回路2の所定箇所に集めて停滞させることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図7及び図8に基づき説明する。
この実施形態は、エンジン回転速度に基づく電動ポンプ3の駆動制御とアクセルペダル14のレーシング操作とを組み合わせて、エア抜きモード時に電動ポンプ3の吐出量が冷却回路2の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンで変化するようにしたものである。
アクセル操作としてレーシング操作を行うと、それに応じてエンジン回転速度が急速に上昇する。そして、エア抜きモード時には、こうしたレーシング操作によるエンジン回転速度の急速な上昇を生じさせたとき、そのエンジン回転速度に基づいてポンプデューティを図7に示されるように設定する。これにより電動ポンプ3の吐出量の上記変化パターンに従った変化が実現されるようになる。
同図から分かるように、エア抜きモードでは、ポンプデューティがエンジン回転速度の上昇に従って大きくされる。そして、エンジン回転速度が低速回転速度範囲(アイドル回転速度〜NE1)にあるときには、ポンプデューティが「D1(60%)」で一定とされる。また、エンジン回転速度が上記低速回転速度範囲(アイドル回転速度〜NE1)よりも高速側の回転速度範囲であって上記レーシング操作を行ったときのエンジン回転速度付近の回転速度範囲である高速回転速度範囲(NE2〜NE3)にあるときには、ポンプデューティがD1よりも大きい値である「D2(60%)」で一定とされる。なお、この実施形態では、上記低速回転速度範囲として例えば「アイドル回転速度〜1100rpm」という範囲が採用され、上記高速回転速度範囲として例えば「1200〜1800rpm」という範囲が採用されている。
上記のようにエンジン回転速度に応じて可変設定されるポンプデューティに基づき電動ポンプ3が駆動されると、同電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティのエンジン回転速度に応じた変化に対応して変化することとなる。すなわち、電動ポンプ3の吐出量がエンジン回転速度の上昇に従って多くなってゆく。また、エンジン回転速度が低速回転速度範囲(アイドル回転速度〜NE1)にあるときには電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティD1(60%)に対応した値で一定となり、エンジン出口水温が高速回転速度範囲(NE2〜NE3)にあるときには電動ポンプ3の吐出量がポンプデューティD2(80%)に対応した値で一定となる。なお、この実施形態では、電動ポンプ3の吐出量におけるポンプデューティD1に対応した値のことを第3設定値といい、電動ポンプ3の吐出量におけるポンプデューティD2に対応した値のことを第4設定値という。この第4設定値は上述した第3設定値よりも大きい値となる。
従って、エア抜きモードでの電動ポンプ3の駆動制御においては、エンジン出口水温が低温回転速度範囲内にあるときに電動ポンプ3の吐出量を第3設定値で一定とする低速制御領域と、エンジン回転速度が高温側温度範囲内にあるときに電動ポンプ3の吐出量を第4設定値で一定とする高速制御領域とがあることになる。なお、上記第4設定値は、第1実施形態の第2設定値と同じく、冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所である熱交換器6に停滞したエアを流すことの可能な値となる。また、上記第3設定値は、第4設定値よりも小さい値であって、第1実施形態の第1設定値と同じく冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所以外の箇所に停滞したエアを流すうえで最適な値となる。
エンジン1が自立運転した状態でエア抜きモードが実施されると、アクセル操作が行われていない状態(アクセル操作量「0」)では、エンジン回転速度が低速回転速度範囲(アイドル回転速度〜NE1)内の値となることから、ポンプデューティが「D1(60%)」で一定とされ、電動ポンプ3の吐出量が第3設定値で一定にされる。この状態では、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアが的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められることとなる。
また、アクセル操作としてレーシング操作が行われると、エンジン回転速度が上記低速回転速度範囲から上昇し高速回転速度範囲(NE2〜NE3)内にしばらくの間とどまることとなる。そして、エンジン回転速度が高速回転速度範囲内にどどまっている間は、ポンプデューティが「D2(80%)」で一定とされ、電動ポンプ3の吐出量が第4設定値で一定にされる。この状態では、冷却回路2における熱交換器6などのエアの流れにくい箇所に停滞したエアが的確にリザーブタンク9に向けて流され、同タンク9に集められることとなる。
従って、アクセル操作を行わない状態とレーシング操作を行った状態とを繰り返すことにより、電動ポンプ3における冷却水の吐出量が冷却回路2内の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンで変化するようになる。その結果、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとを、それぞれ的確にリザーブタンク9に集めることができるようになる。
図8は、この実施形態における冷却装置での冷却水の交換に伴う冷却回路2への注水作業、及び冷却回路2からのエア抜き作業の実行手順を示すフローチャートである。
同フローチャートにおいては、ステップS201〜S203及びステップS206〜S209がそれぞれ、第1実施形態における図5のフローチャートにおけるステップS101〜S103及びステップS105〜S108と同じであり、ステップS204,S205が上記図5のフローチャートと異なっている。
そして、上記ステップS204では、エア抜きモードでの電動ポンプ3の駆動制御が行われる(S204)。具体的には、エンジン回転速度に基づきポンプデューティが図7に示されるように可変設定され、その可変設定されたポンプデューティに基づき電動ポンプ3が駆動される。その後、ステップS205では、アクセル操作としてレーシング操作が例えばアクセル操作を行わない状態とレーシング操作を行った状態とを複数回繰り返すというかたちで実施される。
以上のようなエンジン回転速度に基づく電動ポンプ3の駆動制御とアクセルペダル14のレーシング操作との組み合わせにより、電動ポンプ3における冷却水の吐出量が冷却回路2内の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンで変化する。その結果、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとが、それぞれ的確にリザーブタンク9に集められることとなる。
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態における(1)、(3)、(6)、及び(7)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(11)エア抜きモードでのエンジン回転速度に基づく電動ポンプ3の駆動制御を行った状態で、アクセル操作を行わない状態とレーシング操作を行った状態とを複数回繰り返すことにより、電動ポンプ3における冷却水の吐出量が冷却回路2内の各所に停滞するエアをリザーブタンク9に向けて流すことの可能な変化パターンで変化する。その結果、冷却回路2におけるエアの流れやすい箇所に停滞したエアと、同冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアとが、それぞれ的確にリザーブタンク9に集められるようになる。
(12)エア抜きモードの実施時にレーシング操作を行い、エンジン回転速度が高速回転速度範囲(NE2〜NE3)まで上昇すると、ポンプデューティが「D2(80%)」で一定とされるため、それに伴い電動ポンプ3の吐出量も第4設定値で一定とされる。この第4設定値は、冷却回路2における最もエアの流れにくい箇所である熱交換器6に停滞したエアを流すことの可能な値とされている。このため、上記のように電動ポンプ3の吐出量を第4設定値で一定とすることにより、熱交換器6に停滞したエアを的確にリザーブタンク9に向けて流して同タンク9に集めることができる。
(13)レーシング操作を通じてエンジン1の温度が効率よく上昇するため、冷却回路2を循環する冷却水の温度を速やかにサーモスタット7における感温弁の開弁温度以上に上昇させることができる。従って、エア抜きモードの実施開始後の早期に、熱交換器6に冷却水を流すことが可能になり、その熱交換器6に停滞したエアをリザーブタンク9に向けて流すことがエア抜きモード開始後の早期に行われるようになる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態において、電動ファン8の駆動停止温度及び駆動開始温度を適宜変更してもよい。この場合、駆動停止温度を低温側温度範囲(図1のT1〜T2)内の値に設定し、駆動開始温度が高温側温度範囲(図1のT3〜T4)内の値に設定することが好ましい。
・第2実施形態において、エア抜きモード時における時間経過に伴うポンプデューティの可変設定態様を適宜変更してもよい。例えば、ポンプデューティを所定時間の経過毎に「最小値(40%)→D1(60%)」→D2(80%)→D1(60%)」→最小値(40%)」という順で繰り返し変化するよう可変設定してもよい。この場合も、第1実施形態の(3)と同等の効果が得られるようになる。
・第3実施形態において、低速回転速度範囲や高速回転速度範囲を適宜変更してもよい。
・第1〜第3実施形態において、リザーブタンク9の容積を大きくすることにより、エア抜き作業時におけるリザーブタンク9への冷却水の追加注入(補充)を省略できるようにしてもよい。
・第1〜第3実施形態において、冷却回路2に対する通路10〜12を介してのリザーブタンク9の接続箇所を適宜変更してもよい。例えば、通路10の冷却回路2に対する接続箇所を同冷却回路2における熱交換器6以外のエアの流れにくい箇所としてもよい。また、通路12の冷却回路2に対する接続箇所をサーモスタット7における感温弁の開閉に関係なく冷却水の流れる箇所としてもよい。
・第1〜第3実施形態において、サーモスタット7を省略して常に冷却水が熱交換器6を流れる構成としてもよい。
・第1〜第3実施形態において、電動ファン8を設けることは必須ではない。
・第1〜第3実施形態において、冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所に停滞したエアを流すためのポンプデューティD2を、そのエアの流れにくさに合わせて「80%」という値から適宜変更してもよい。また、冷却回路2におけるエアの流れにくい箇所以外の箇所に停滞したエアを流すためのポンプデューティD1を、そのエアの流れにくさに合わせて「60%」という値から適宜変更してもよい。更に、ポンプデューティの最小値を「40%」という値から適宜変更してもよい。このようにポンプデューティの最小値を変更する場合、冷却水中に気泡となって拡散したエアを冷却回路2の所定箇所に貯めて再び集めるうえで適した値となるようにすることが好ましい。
・第1〜第3実施形態において、熱交換器6の最上部に冷却水を注入する注水口を設け、その注水口をラジエータキャップで塞ぐようにした簡易密閉型の冷却装置を採用してもよい。なお、上記ラジエータキャップに関しては、注水口を密封する機能、及び、熱交換器6の最上部に貯まったエアが冷却回路2内の冷却水の温度上昇に伴う膨張を通じて高圧となったときに外部に放出する機能を有するものが用いられる。この場合、リザーブタンクは、ラジエータキャップに形成された通路を介して冷却回路2(熱交換器6)に接続され、冷却回路2内の冷却水の温度変化に基づく膨張・収縮に応じて冷却水を引き込んだり送り出したりするものとなる。従って、こうした簡易密閉型の冷却装置においては、熱交換器6の最上部が冷却回路2内に停滞したエアの集められるエア抜き部として機能することとなる。この場合、エア抜き作業での冷却回路2への冷却水の注入を熱交換器6の注入口からも行うことが可能になる。
・第1〜第3実施形態において、エンジン1を自動的に停止・再始動するものとしてもよい。この場合、エア抜きモード時にはエンジン1の自動停止を禁止する。これはエア抜きモード時にエンジン1が自動停止すると、エンジン1の発熱による冷却水の温度上昇が生じなくなり、サーモスタット7の感温弁を開弁することができなくなるおそれがあるためである。更に、第1実施形態ではエア抜きモード時の電動ポンプ3の駆動制御に関係するエンジン出口水温を上昇させられなくなり、第3実施形態ではレーシング操作によるエンジン回転速度の上昇を行えなくなるためでもある。
・第1〜第3実施形態ではエンジン1(内燃機関)を冷却対象とする冷却装置に本発明を具体化したが、エンジン1以外の冷却対象を冷却する冷却装置に本発明を具体化することもできる。
第1実施形態の冷却装置を示す略図。 同冷却装置における電動ファンのエンジン出口水温に応じた駆動態様を示す図。 エア抜きモード時におけるエンジン出口水温に応じたポンプデューティの可変設定態様を示す図。 (a)〜(c)は、エア抜きモード時におけるエンジン出口水温、ポンプデューティ、及び電動ファンの駆動状態の変化態様を示すタイムチャート。 冷却回路2への注水作業、及び冷却回路2からのエア抜き作業の実行手順を示すフローチャート。 第2実施形態におけるエア抜きモード開始からの時間経過に応じたポンプデューティの可変設定態様を示す図。 第3実施形態におけるエア抜きモード時のエンジン回転速度の変化に基づくポンプデューティの可変設定態様を示す図。 冷却回路2への注水作業、及び冷却回路2からのエア抜き作業の実行手順を示すフローチャート。
符号の説明
1…エンジン、2…冷却回路、2a,2b…通路、3…電動ポンプ、4…スロットルバルブ、5…ヒータコア、6…熱交換器、7…サーモスタット、8…電動ファン、9…リザーブタンク、9a…注水口、10〜12…通路、13…電子制御装置(切換手段)、14…アクセルペダル、15…アクセルポジションセンサ、16…エアフローメータ、17…回転速度センサ、18…水温センサ。

Claims (10)

  1. 熱源である冷却対象を冷却するための冷却水が入れられるとともに前記冷却対象を通過するように形成された冷却回路と、その冷却回路内の冷却水を循環させるべく駆動される電動ポンプとを備え、前記冷却回路内のエアを同回路に設けられたエア抜き部へと流すことで同回路からのエア抜きを行う冷却装置において、
    前記電動ポンプを通常どおり駆動する通常モードと前記冷却回路内のエアを前記エア抜き部に集めるために前記電動ポンプを駆動するエア抜きモードとの間でモード切り換えを行う切換手段と、
    前記エア抜きモードの実施時、前記電動ポンプにおける冷却水の吐出量の変化として、前記冷却回路内の各所に停滞するエアを前記エア抜き部に向けて流すことの可能な変化パターンでの変化が得られるよう、前記電動ポンプを駆動制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする冷却装置。
  2. 前記制御手段は、前記冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が高くなるに従って前記電動ポンプの吐出量が多くなるよう、その冷却水の温度に基づき同電動ポンプを駆動制御する
    請求項1記載の冷却装置。
  3. 前記制御手段による前記電動ポンプの駆動制御には、前記冷却対象を冷却した後の冷却水の温度変化に対し前記電動ポンプの吐出量が一定となるよう同電動ポンプを駆動する低温制御領域及び高温制御領域があり、
    前記低温制御領域は、前記冷却水の低温側温度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を低量側の値である第1設定値で一定とするものであって、
    前記高温制御領域は、前記低温側温度範囲よりも高温側の温度範囲である前記冷却水の高温側温度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を多量側の値であって前記第1設定値よりも大きい値である第2設定値で一定とするものである
    請求項2記載の冷却装置。
  4. 前記冷却回路には熱交換器が設けられており、前記第2設定値は前記熱交換器内に停滞したエアを流すことの可能な値とされている
    請求項3記載の冷却装置。
  5. 請求項3又は4記載の冷却装置において、
    前記冷却回路内の冷却水と外気との熱交換を通じて同冷却水を冷却する熱交換器と、その熱交換器への送風を行うファンとを備え、
    前記ファンは、前記冷却対象を冷却した後の冷却水の温度が駆動開始温度以上であるときに駆動され、前記冷却水の温度が前記駆動開始温度よりも低い値である駆動停止温度以下であるときに駆動停止されるものであり、
    前記駆動開始温度は前記高温側温度範囲内の値に設定されるとともに、前記駆動停止温度は前記低温側温度範囲内の値に設定される
    ことを特徴とする冷却装置。
  6. 前記制御手段は、時間経過に応じて前記電動ポンプの吐出量が変化するよう同電動ポンプを駆動制御する
    請求項1記載の冷却装置。
  7. 前記制御手段による前記電動ポンプの駆動制御では、所定時間が経過する毎に前記電動ポンプの吐出量が増減され、その所定時間が経過するまでの間は時間経過に対し前記電動ポンプの吐出量が一定となるようにされる
    請求項6記載の冷却装置。
  8. 前記冷却回路には熱交換器が設けられており、時間経過に対し一定となる前記電動ポンプの吐出量のうち最大値は、前記熱交換器内に停滞したエアを流すことの可能な値に設定される
    請求項7記載の冷却装置。
  9. 前記冷却対象は、アクセル操作に応じてエンジン回転速度が変化する車載エンジンであり、
    前記制御手段は、エンジン回転速度が上昇するに従って前記電動ポンプの吐出量が多くなるよう、そのエンジン回転速度に基づき同電動ポンプを駆動制御するものであり、
    前記制御手段による前記電動ポンプの駆動制御では、エンジン回転速度の変化に対し電動ポンプの吐出量が一定となるよう同電動ポンプを駆動する低速制御領域及び高速制御領域があり、
    前記低速制御領域は、アイドル回転速度付近の回転速度範囲である低速回転速度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を低量側の値である第3設定値で一定とするものであって、
    前記高速制御領域は、前記低速回転速度範囲よりも高速側の回転速度範囲であってアクセル操作としてレーシング操作を行った状態でのエンジン回転速度付近の回転速度範囲である高速回転速度範囲内にて、前記電動ポンプの吐出量を多量側の値であって前記第3設定値よりも大きい値である第4設定値で一定とするものである
    請求項1記載の冷却装置。
  10. 前記冷却回路には熱交換器が設けられており、前記第4設定値は前記熱交換器内に停滞したエアを流すことの可能な値とされている
    請求項9記載の冷却装置。
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