JP4186542B2 - 冷却システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水を用いて被冷却物を冷却するための冷却システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の冷却システムとしては、例えば、特開平11−117744号公報に記載されたものがある。このシステムにおいて、冷却水が循環される冷却回路(冷却水循環通路)には、被冷却物となる、ハイブリッド車両の発電機やインバータ、走行用電動機等が設けられている。そして、このような冷却回路においては一般的に、該回路内にできるエア溜まりが冷却性能の低下の要因となっている。
【0003】
そこで、この公報に記載のシステムは、このエア溜まりのエア抜きを容易とするために、次のような構成を採用している。即ち、前記冷却回路には予備の冷却水を蓄えるためのサブタンクを接続し、このサブタンクのエア抜き孔に、弁手段を介して圧気源からの圧気を導入するエア配管を接続するようにしている。
【0004】
このような構成によれば、前記サブタンクに圧気を導入した状態で冷却水を循環させることで、前記エア溜まりのエアの容積が減少されるとともに、そのエアが循環水流によって前記サブタンクに送られて放出されるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、上記公報に記載のシステムにあっては、サブタンクへの圧気の導入を通じてエア抜きが実現されるとはいえ、このエア抜きのためにサブタンクや圧気源が新たに必要とされることにもなる。そして、このことが、上記冷却システムとしての配設空間を圧迫してその自由度の低下を招くとともに、コストダウンを阻害する要因ともなっている。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却水循環通路における冷却水の循環効率を高く維持しつつ、冷却水循環通路内のエア抜きについてもこれをより簡易に実現可能な冷却システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明は、ポンプの駆動に基づき冷却水が循環される冷却水循環通路にて熱交換器と被冷却物との間を接続し、前記熱交換器を通じて熱交換される冷却水によって前記被冷却物の冷却を行う冷却システムを対象としている。この冷却システムにおいては、前記冷却水循環通路の少なくとも一部が前記熱交換器よりも重力方向上方に設けられるとともに、該冷却水循環通路の更に重力方向上方から前記熱交換器に冷却水を注入するための冷却水注入通路が備えられている。また、前記冷却水注入通路の前記冷却水循環通路よりも重力方向上方にある一部と同冷却水循環通路の重力方向最上部とは、前記冷却水循環通路から前記冷却水注入通路への冷却水の漏出を抑制するための漏出抑制機構を有するバイパス通路によって接続され、前記漏出抑制機構が、前記バイパス通路を介しての前記冷却水の流通を同冷却水とエアとの粘性の差を利用して制限する絞り機構である
【0008】
この発明によれば、例えば、冷却水注入通路を介した熱交換器への冷却水の注入時やポンプの駆動時には、冷却水循環通路内のエアがバイパス通路を介して前記冷却水注入通路の上部に排出される。前記バイパス通路は、前記冷却水注入通路の前記冷却水循環通路よりも重力方向上方にある一部と同冷却水循環通路の重力方向最上部とを接続している。そのため、前記熱交換器が前記冷却水循環通路の重力方向最上部よりも重力方向下方に配置された状態であっても、前記冷却水循環通路内のエア抜きが容易になる。すなわち、圧気源等を設けるとともにこれを用いて冷却水循環通路内のエア抜きを行うようにした従来の装置に比較して、構成が簡易となりコストダウンを図ることも容易になるとともに、冷却システムとしての配設空間を小さくすることが可能になる。また、前記バイパス通路に漏出抑制機構を設けたことにより、ポンプ駆動による冷却水の循環時における前記バイパス通路を介した前記冷却水循環通路から前記冷却水注入通路への冷却水の漏出が抑制される。これにより、冷却水の循環効率の低下が抑制される。
また、漏出抑制機構が、バイパス通路を介しての冷却水の流通を冷却水と空気との粘性の差を利用して制限する絞り機構であるため、エアの排出を可能としつつ冷却水の漏出制限を行うことが可能である。また、例えば可動弁体を有する漏出抑制機構を採用した場合に比較して、冷却水の循環時におけるバイパス通路を介した冷却水循環通路から冷却水注入通路への冷却水の漏出制限を、より簡易な構成で実現可能である。つまり、冷却水の循環効率の低下を抑えつつ前記冷却水循環通路からのエア抜きを行うことができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の発明において、前記冷却水循環通路は、前記ポンプが設けられて前記熱交換器により熱交換された冷却水を前記被冷却物に供給する上流側冷却水循環通路と、前記被冷却物から排出される冷却水を前記熱交換器に還流せしめる下流側冷却水循環通路とからなっている。また前記バイパス通路は、前記冷却水注入通路と前記下流側冷却水循環通路との間に接続されてなる。
【0010】
この発明によれば、冷却水循環通路の流路抵抗となりがちな被冷却物が上流側冷却水循環通路と下流側冷却水循環通路との間に存在することによって、前記下流側冷却水循環通路は前記上流側冷却水循環通路に比較して低圧になり易い。即ち本構成では、比較的低圧となり易い前記下流側冷却水循環通路と前記冷却水注入通路との間にバイパス通路が接続されている。そのため、例えば、バイパス通路が上流側冷却水循環通路に対して接続された形態に比較して、漏出抑制機構によるバイパス通路を介した冷却水循環通路から冷却水注入通路への冷却水の漏出の抑制が容易になる。
【0015】
請求項に係る発明では、請求項1または2に記載の発明において、前記被冷却物が車両に搭載された熱源である。
この発明によれば、車両の熱源を冷却するための冷却システムにおいて、請求項1または2に記載の発明の効果が得られる。
【0016】
請求項に係る発明では、請求項に記載の発明において、前記被冷却物として前記車両に搭載された熱源が、同車両の原動機である電動モータを駆動するためのインバータである。
【0017】
この発明によれば、電動モータを原動機として走行可能な車両における前記電動モータを駆動するためのインバータの冷却を行う冷却システムにおいて、請求項1または2に記載の発明の効果が得られる。
【0018】
請求項に係る発明では、請求項に記載の発明において、前記車両が、前記原動機として前記電動モータと内燃機関とを搭載するハイブリッド車両である。
この発明によれば、ハイブリッド車両に搭載された原動機としての電動モータを駆動するためのインバータを被冷却物とする冷却システムにおいて、請求項1または2に記載の発明の効果が得られる。
【0019】
請求項に係る発明では、請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記熱交換器が、その両側部に設けられた冷却水タンク間を冷却水が流動するように構成されたクロスフローラジエータからなる。
【0020】
この発明によれば、クロスフローラジエータを有する冷却システムにおいて請求項のいずれか一項に記載の発明の効果が得られる。なお、クロスフローラジエータは、その重力方向上下側に設けられた冷却水タンク間を冷却水が流動するように構成されたダウンフローラジエータに比較して一般に熱交換率が高い反面、ラジエータ内のエア抜きが困難であるという傾向がある。そのため、クロスフローラジエータを有する冷却システムにおいて本発明を具体化することは高い熱交換率を確保する上で好適であるといえる。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を車両用の冷却システムに具体化した第1の実施形態を図1を用いて説明する。図1(a)は、冷却システムを車両の上方から見た状態を示す模式平面図である。なお、図1(a)においては図面の下方が車両の前方となっている。また、図1(b)は、冷却システムを車両の前方から見た状態を示す模式正面図である。なお、図1(a),(b)においては、図面の左方が車両の右方となっている。
【0022】
本実施形態において、上記車両は、図示しない電動モータと内燃機関(エンジン)とを原動機として搭載したハイブリッド車両であり、冷却システムは、車両のエンジンルーム内に設置されている。そして冷却システムは、車両に搭載された熱源となる被冷却物としてのインバータ11を冷却するための冷却水が循環する冷却水循環通路10を備えている。インバータ11は、前記電動モータを駆動べく該電動モータに電力を供給するための電気回路を有する装置である。
【0023】
冷却水循環通路10は、熱交換器としてのラジエータ13と前述のインバータ11との間に接続されており、ラジエータ13の下流側であってインバータ11の上流側には、冷却水循環通路10において冷却水を循環させるための電動ポンプ(ポンプ)12が設けられている。また、インバータ11の下流側であってラジエータ13の上流側には、前記電動モータを冷却するために該モータに接合されたモータ冷却器14が設けられている。
【0024】
即ち、冷却水循環通路10は、ラジエータ13と電動ポンプ12との間の部分通路15Aと、電動ポンプ12とインバータ11との間の部分通路15Bと、インバータ11とモータ冷却器14との間の部分通路15Cと、モータ冷却器14とラジエータ13との間の部分通路15Dとを有している。そして、冷却水循環通路10においては、ラジエータ13とインバータ11との間におけるインバータ11の上流側を構成する上流側冷却水循環通路が、部分通路15A,15Bによって構成されている。また、ラジエータ13とインバータ11との間におけるインバータ11の下流側を構成する下流側冷却水循環通路が、部分通路15C,15Dによって構成されている。
【0025】
前記上流側冷却水循環通路は、ラジエータ13により熱交換された冷却水をインバータ11に供給する。また、前記下流側冷却水循環通路は、インバータ11から排出される冷却水をラジエータ13に環流せしめる。
【0026】
本実施形態において、ラジエータ13は、その両側部に設けられた冷却水タンク間を冷却水が流動するように構成されたクロスフローラジエータとされている。即ち、ラジエータ13は、本体部13aと、該本体部13aの左右両端にそれぞれ接合された上流側冷却水タンク13b、及び、下流側冷却水タンク13cを備えている。
【0027】
上流側冷却水タンク13bには前述の部分通路15Dの出口側(下流側)の端部が接続され、下流側冷却水タンク13cには部分通路15Aの入口側(上流側)の端部が接続されている。そして部分通路15Dから上流側冷却水タンク13bに導入された冷却水は、本体部13a内を横方向に(車両の右側から左側に向けて)流動しながら熱交換によって冷却され、下流側冷却水タンク13cに導入される。なお、ラジエータ13は前記エンジンルームの最前部に配置されている。また、ラジエータ13には、ラジエータ13内の冷却水の排出作業時に開放される排出口(図示なし)が設けられている。
【0028】
また本実施形態においてインバータ11内には、インバータ内冷却水通路16が設けられている。このインバータ内冷却水通路16は、インバータ11内をまんべんなく冷却すべくその通路長さを確保するために、部分通路15A,15B,15C,15Dに比較して細く(流路面積が小さく)形成されている。インバータ内冷却水通路16は、インバータ11内における配置高さがその全長に亘ってほぼ一定とされている。
【0029】
またインバータ11は、被水等を避けるために前記エンジンルームにおける重力方向のほぼ最上位置かつ最後方位置(車室寄りの位置)にあたる前記内燃機関の上方に配置されており、ラジエータ13よりも重力方向上方の位置に配置された状態となっている。そして、部分通路15Cにおけるインバータ11近傍の部分は、冷却水循環通路10における重力方向最上部Hとなっている。なお、インバータ内冷却水通路16の重力方向の位置は、冷却水循環通路10の重力方向最上部Hとほぼ同じ位置となっている。
【0030】
ラジエータ13には、冷却水循環通路10の更に重力方向上方から冷却水を注入するための冷却水注入通路20が設けられている。冷却水注入通路20の一端はラジエータ13の下流側冷却水タンク13cに接続され、冷却水注入口20aが形成された他端は前記エンジンルームの前域において冷却水循環通路10の重力方向最上部Hよりも重力方向上方に配置されている。なお、冷却水注入通路20の冷却水注入口20aには、圧力調整弁を備えたキャップ(図示なし)が装着されるようになっている。
【0031】
また、冷却水注入通路20の途中にはリザーブタンク部20bが形成されている。このリザーブタンク部20bと冷却水循環通路10の重力方向最上部Hとは、バイパス通路21によって接続されている。このバイパス通路21とリザーブタンク部20bとの接続箇所は、冷却水循環通路10よりも(即ち重力方向最上部Hよりも)重力方向上方の位置に設定されている。バイパス通路21は、冷却水循環通路10との接続箇所を除き全長に亘って冷却水循環通路10よりも重力方向上方の位置に配置されている。
【0032】
また、バイパス通路21は全長に亘って部分通路15A,15B,15C,15Dよりも流路面積が小さく形成されている。即ち、バイパス通路21は、該バイパス通路21を介した冷却水循環通路10から冷却水注入通路20への冷却水の漏出を抑制するための絞り機構(漏出抑制機構)として機能する。
【0033】
次に、前述のように構成された冷却システムの作用について説明する。
冷却水循環通路10への冷却水の充填作業において冷却水注入通路20の冷却水注入口20aに注水を行うと、冷却水は冷却水注入通路20を介してラジエータ13に導入され、更に、部分通路15Aや部分通路15Dを介して電動ポンプ12側やモータ冷却器14側に導入される。このとき、冷却水循環通路10内のエアは、冷却水注入通路20とラジエータ13の下流側冷却水タンク13cとの接続部分、及び、冷却水注入通路20(リザーブタンク部20b)とバイパス通路21との接続部分を介して冷却水注入通路20の上部に導入され冷却水注入口20aから外部に排出される。
【0034】
バイパス通路21の一端は冷却水循環通路10の重力方向最上部Hに接続されているとともにバイパス通路21はこの接続箇所を除き全長に亘って冷却水循環通路10よりも重力方向上方の位置に配置されている。そのため、冷却水注入通路20が接続されたラジエータ13が冷却水循環通路10の重力方向最上部Hよりも低い位置に配置されていても、冷却水循環通路10内のエアは良好に外部に排出される。
【0035】
なお、上述の注水作業によって仮に冷却水循環通路10内のエアが完全には排出されず、一部のエアが残ったとしても、電動ポンプ12の作動によりその残留エアは徐々に冷却水循環通路10の重力方向最上部Hに向けて運ばれる。そして、やがてはバイパス通路21を介して冷却水注入通路20の上部に導入され、冷却水循環通路10内は冷却水で満たされる。
【0036】
また、冷却水循環通路10において電動ポンプ12の駆動による冷却水の循環が行われている状態では、部分通路15Cにおける重力方向最上部H付近の圧力は冷却水注入通路20のリザーブタンク部20bの圧力よりも高くなる。この場合、バイパス通路21が絞り機構として機能することで、バイパス通路21を介した冷却水循環通路10から冷却水注入通路20への冷却水の漏出は抑制される。仮にバイパス通路21を介して冷却水循環通路10から冷却水注入通路20に冷却水が漏出しても、漏出後の冷却水はリザーブタンク部20bに導入されることとなり、再度ラジエータ13の下流側冷却水タンク13cに供給されることとなる。なお前記絞り弁機構においては、例えば冷却水とエアとの粘性の差などにより、冷却水の漏出制限と残留エアの排出とが両立される。
【0037】
一方、冷却水の交換等のための冷却水循環通路10からの冷却水の排出作業においては、冷却水注入口20aに装着された前記キャップを外すとともに、ラジエータ13に設けられた前記排出口を開放することで冷却水の排出が行われる。このとき、冷却水循環通路10内には冷却水注入通路20及びバイパス通路21を介してラジエータ13の両タンク13b,13c側に外部のエアが導入されるため、冷却水循環通路10内の冷却水は前記排出口を介して良好に外部に排出される。
【0038】
以上説明した本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1)冷却水注入通路20を介したラジエータ13への冷却水の注入時や電動ポンプ12の駆動時には、冷却水循環通路10内のエアがバイパス通路21を介して冷却水注入通路20の上部に排出される。バイパス通路21は、冷却水注入通路20の冷却水循環通路10よりも重力方向上方にある一部と冷却水循環通路10の重力方向最上部Hとを接続している。そのため、ラジエータ13が冷却水循環通路10の重力方向最上部Hよりも重力方向下方の位置に配置された状態であっても、冷却水循環通路10内のエア抜きが容易になる。すなわち、圧気源等を設けるとともにこれを用いて冷却水循環通路内のエア抜きを行うようにした従来の装置に比較して、構成が簡易となりコストダウンを図ることも容易になるとともに、冷却システムとしての配設空間を小さくすることが可能になる。
【0039】
(2)バイパス通路21に漏出抑制機構(本実施形態では絞り機構)を設けたことにより、電動ポンプ12の駆動による冷却水の循環時におけるバイパス通路21を介した冷却水循環通路10から冷却水注入通路20への冷却水の漏出が抑制される。これにより、冷却水の循環効率の低下が抑制される。
【0040】
(3)流路面積が小さく設定され冷却水循環通路10の流路抵抗となりがちなインバータ内冷却水通路16を内蔵するインバータ11が、前記上流側冷却水循環通路と前記下流側冷却水循環通路との間に設けられている。これにより、前記下流側冷却水循環通路は前記上流側冷却水循環通路に比較して低圧になり易い。つまり本実施形態では、比較的低圧となり易い前記下流側冷却水循環通路に対してバイパス通路21が接続されている。そのため、例えば、バイパス通路が上流側冷却水循環通路に対して接続された形態に比較して、漏出抑制機構によるバイパス通路を介した冷却水循環通路から冷却水注入通路への冷却水の排出の抑制が容易になる。
【0041】
(4)バイパス通路21を、絞り機構として機能させた。これによれば、例えば可動弁体を有する漏出抑制機構を採用した場合に比較して、冷却水の循環時におけるバイパス通路21を介した冷却水循環通路10から冷却水注入通路20への冷却水の漏出制限を、より簡易な構成で実現可能である。前記絞り弁機構においては、例えば冷却水とエアとの粘性の差などを利用して、エアの排出を可能としつつ冷却水の漏出制限を行うことが可能である。つまり、冷却水の循環効率の低下を抑えつつ冷却水循環通路10からのエア抜きを行うことができる。
【0042】
(5)ラジエータ13は、その両側部に設けられた両冷却水タンク13b,13c間を冷却水が流動するように構成されたクロスフロータイプのラジエータ(クロスフローラジエータ)からなっている。クロスフローラジエータは、その重力方向上下側に設けられた冷却水タンク間を冷却水が流動するように構成されたダウンフローラジエータに比較して一般に熱交換率が高い反面、ラジエータ内のエア抜きが困難であるという傾向がある。そのため、クロスフローラジエータを有する冷却システムにおいて本発明を具体化することは高い熱交換率を確保する上で好適であるといえる。
【0043】
(6)前記車両は原動機として電動モータと内燃機関とを搭載したハイブリッド車両であり、前記電動モータを駆動するためのインバータ11を被冷却物としている。前記車両のエンジンルームという限られたスペースにおいて前記電動モータや前記内燃機関、前記冷却システムを収容せねばならない本実施形態の構成においては、例えば下記のような問題が生じがちである。即ち例えば、被水を避けるためにインバータ11をラジエータ13よりも重力方向上方の位置(内燃機関の上方)に配置するなど、冷却水循環通路10内のエア抜きには不都合な構成となりがちである。つまり、このような構成において本発明を具体化することは、特に有意義であると言える。
【0044】
(7)冷却水注入通路20の冷却水注入口20aが前記エンジンルームの前域に配置されている。これによれば、冷却水注入通路20への冷却水注入作業や冷却水循環通路10からの冷却水排出作業等において作業性(視認性等)をよくすることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
この第2の実施形態は、前記第1の実施形態において漏出抑制機構の構成を変更したものであり、その他の点では第1の実施形態と同様の構成になっている。従って、第1の実施形態と共通する構成部分については図面上に同一符号を付して重複した説明を省略する。なお、図2(a)は、冷却水注入通路20のリザーブタンク部20b近傍を示す部分拡大断面図であり、図2(b)は、本実施形態の漏出抑制機構を示す部分拡大断面図である。
【0046】
本実施形態において冷却水循環通路10の重力方向最上部Hと冷却水注入通路20のリザーブタンク部20bとを連通するバイパス通路30は、前記第1の実施形態のバイパス通路21ほど細くは形成されていない。即ち、図2に示す本実施形態のバイパス通路30は、絞り機構として機能しない。
【0047】
その代わりに、本実施形態の冷却システムは、下記の構成を有している。即ち、バイパス通路30においてリザーブタンク部20bとの接続端側には、弁室30a、及び、該弁室30aの上方に形成されるとともに弁室30aとリザーブタンク部20b内のリザーブタンク空間とを連通する連通孔30bが形成されている。弁室30aの上面における連通孔30bの開口30cの形状(下方からみたときの開口外周形状)は円形となっている。
【0048】
弁室30a内には、上下方向に移動可能に収容された球状の弁体30dが配設されている。弁体30dは冷却水よりも比重の小さい樹脂からなっている。また、弁体30dの直径は、連通孔30bの開口30cの直径よりも大きい。弁室30a、連通孔30b、開口30c、及び、弁体30dは、逆止弁機構(漏出抑制機構)を構成している。
【0049】
上記構成の漏出抑制機構においては、電動ポンプ12の駆動により冷却水循環通路10の重力方向最上部H付近の圧力がリザーブタンク部20bの圧力よりも高くなると、バイパス通路30を介して冷却水循環通路10側から弁室30aに冷却水が導入される。この導入に基づく弁室30a内の冷却水位上昇により、弁体30dは上方に押し上げられる。そして、この押し上げにより弁体30dが開口30cに当接され該開口30cが閉塞されると、バイパス通路30と冷却水注入通路20との連通が遮断され、バイパス通路30を介しての冷却水循環通路10側から冷却水注入通路20側への冷却水の漏出が阻止される(図2(b)の状態)。
【0050】
また、冷却水循環通路10への冷却水の充填作業時において冷却水注入口20aに注水する際や、冷却水循環通路10からの冷却水の排出作業時には、バイパス通路30を介した冷却水循環通路10側から冷却水注入通路20側への冷却水の導入が行われない。そのため、開口30cは弁体30dによって閉塞されない。つまり、バイパス通路30を介して冷却水循環通路10の重力方向最上部Hと冷却水注入通路20とが連通された状態となり、前記充填作業時における冷却水循環通路10内のエア抜きや、前記排出作業時における冷却水循環通路10の前記排出口から外部への冷却水排出が良好に行われるようになる。
【0051】
即ち、前記逆止弁機構は、バイパス通路30を介しての冷却水循環通路10から冷却水注入通路20への冷却水の流通に対して選択的に閉弁される。なお、この逆止弁機構においては、冷却水に対する浮力を利用して弁体30dを移動させることにより、冷却水の漏出制限と残留エアの排出とが両立される。
【0052】
以上説明した本実施形態では、先の第1の実施形態の前記(1)〜(3)及び(5)〜(7)の効果と同様の効果の他に、以下のような効果を得ることができる。
【0053】
(8)漏出抑制機構として、バイパス通路30を介しての冷却水循環通路10から冷却水注入通路20への冷却水の流通に対して選択的に閉弁される逆止弁機構を設けた。これによれば、例えば絞り機構からなる漏出抑制機構を採用した場合に比較して、冷却水の循環時におけるバイパス通路を介した冷却水循環通路から冷却水注入通路への冷却水の漏出制限をより確実に行うことが可能になる。前記逆止弁機構においては、冷却水に対する浮力を利用して弁体30dを移動させることにより、エアの排出を可能としつつ冷却水の漏出制限を好適に行うことが可能である。つまり、冷却水の循環効率の低下を好適に抑えつつ冷却水循環通路10からのエア抜きを行うことができる。
【0054】
なお、実施の形態は前記各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の様態としてもよい。
・前記実施形態では、インバータ11とモータ冷却器14とを共通の冷却水循環通路10の途中に直列的に配置して冷却するように構成した。これに対して、インバータ11とモータ冷却器14とを、それぞれ別個の冷却水循環通路を用いて冷却してもよい。この場合、例えば前記実施形態の冷却システムからモータ冷却器14を取り除き、冷却水循環通路10の部分通路15Cを延長して部分通路15Dを介することなく直接的にラジエータ13の上流側冷却水タンク13bに接続する。そしてモータ冷却器14を上記とは別個の冷却水循環通路を用いて冷却する。
【0055】
・インバータ11は、冷却水循環通路10における重力方向の最上位置に配置される必要はない。
・前記実施形態では、熱交換器をクロスフローラジエータとしたが、これに限定されない。例えば、ダウンフローラジエータとしてもよい。
【0056】
・前記実施形態では、被冷却物をインバータ11としたが、これに限定されない。例えば、冷却が必要なものであればよく、前記内燃機関等を被冷却物としてもよい。
【0057】
・前記実施形態では、前記車両を、原動機として電動モータ及び内燃機関を搭載したハイブリッド車両としたが、これに限定されない。例えば前記電動モータ及び前記内燃機関の一方のみを原動機として搭載したタイプとしてもよい。
【0058】
・前記実施形態では、冷却システムを車両に用いられるものとしたが、これに限定されない。冷却が必要な被冷却物を対象とするものであればどのようなものでもよい。
【0059】
・前記第1の実施形態では、バイパス通路21がその全長に亘って細く形成されることで絞り機構としての機能を有するものとされたが、バイパス通路21の一部のみが細く形成されて絞り機構として機能するように構成されていてもよい。
【0060】
・前記第2の実施形態において、バイパス通路30に、該バイパス通路30を介しての冷却水の流通を制限する絞り機構としての機能を持たせてもよい。
・前記実施形態では、バイパス通路21は、ラジエータ13とインバータ11との間におけるインバータ11の下流側を構成する下流側冷却水循環通路と冷却水注入通路20とを接続するように構成された。これに対して、バイパス通路21が、上流側を構成する上流側冷却水循環通路と冷却水注入通路20とを接続するように構成されていてもよい。この場合、冷却水循環通路10とバイパス通路21とを、冷却水循環通路10における重力方向最上部において接続する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る冷却システムの第1の実施形態についてその概要を示す模式平面図、(b)は、同じく模式正面図。
【図2】(a)は、本発明に係る冷却システムの第2の実施形態についてリザーブタンク部近傍を示す部分拡大断面図、(b)は、同じく漏出抑制機構を示す部分拡大断面図。
【符号の説明】
10…冷却水循環通路、11…被冷却物としてのインバータ、12…電動ポンプ、13…熱交換器としてのラジエータ、13b…上流側冷却水タンク、13c…下流側冷却水タンク、14…モータ冷却器、15A,15B,15C,15D…部分通路(15A,15Bは上流側冷却水循環通路を構成し、15C,15Dは下流側冷却水循環通路を構成する)、20…冷却水注入通路、20a…冷却水注入口、21…バイパス通路(絞り機構(漏出抑制機構))、30…バイパス通路、30a…弁室、30b…連通孔、30c…開口、30d…弁体(30a〜30dは逆止弁機構(漏出抑制機構)を構成する)、H…重力方向最上部。

Claims (6)

  1. ポンプの駆動に基づき冷却水が循環される冷却水循環通路にて熱交換器と被冷却物との間を接続し、前記熱交換器を通じて熱交換される冷却水によって前記被冷却物の冷却を行う冷却システムにおいて、
    前記冷却水循環通路の少なくとも一部を前記熱交換器よりも重力方向上方に設けるとともに、該冷却水循環通路の更に重力方向上方から前記熱交換器に冷却水を注入するための冷却水注入通路を備え、該冷却水注入通路の前記冷却水循環通路よりも重力方向上方にある一部と同冷却水循環通路の重力方向最上部とを、前記冷却水循環通路から前記冷却水注入通路への冷却水の漏出を抑制するための漏出抑制機構を有するバイパス通路によって接続し
    前記漏出抑制機構が、前記バイパス通路を介しての前記冷却水の流通を同冷却水とエアとの粘性の差を利用して制限する絞り機構であることを特徴とする冷却システム。
  2. 前記冷却水循環通路は、前記ポンプが設けられて前記熱交換器により熱交換された冷却水を前記被冷却物に供給する上流側冷却水循環通路と、前記被冷却物から排出される冷却水を前記熱交換器に還流せしめる下流側冷却水循環通路とからなり、前記バイパス通路は、前記冷却水注入通路と前記下流側冷却水循環通路との間に接続されてなる請求項1に記載の冷却システム。
  3. 前記被冷却物が車両に搭載された熱源である請求項1または2に記載の冷却システム。
  4. 前記被冷却物として前記車両に搭載された熱源が、同車両の原動機である電動モータを駆動するためのインバータである請求項3に記載の冷却システム。
  5. 前記車両が、前記原動機として前記電動モータと内燃機関とを搭載するハイブリッド車両である請求項4に記載の冷却システム。
  6. 前記熱交換器が、その両側部に設けられた冷却水タンク間を冷却水が流動するように構成されたクロスフローラジエータからなる請求項3〜5のいずれか一項に記載の冷却システム。
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