JP4655399B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品及び医薬品や電子部材等の非食品等の包装分野に用いられる包装用フィルムに関するもので、特に酸素や水蒸気等のガスの透過を抑えることで内容物の酸化や分解、変質を抑制するガスバリア性を持つプラスチックフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品や非食品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
従来のガスバリア材としては、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、更に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等が主に用いられてきた。
【0004】
しかしながら、金属箔や金属蒸着フィルムは、ガスバリア性に優れるが包装材料を透視して内容物が確認できない、検査の時に金属探知器が使用できない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない等の問題がある。またガスバリア性樹脂フィルムやそれらをコーティングしたフィルムは、温湿度依存性が大きく高度なガスバリア性を維持できない、更にポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリル等は廃棄・焼却の際に有害物質を発生する可能性があるなどの問題があった。また、セラミック蒸着フィルム等は、蒸着層がセラミック故に可撓性に欠け加工適性に十分注意しなければならない、加工機が高価なためコストが高くなる等の問題があった。
【0005】
このような課題を解決する技術に、安価で製造ができる湿式コーティングにより、密着性が強く高強度で、かつ、柔軟性を付与したセラミック骨格のガスバリア材料として、以下のような提案がある。
(1)重合体成型品表面に、珪酸アルカリ金属塩とシランカップリング剤を含有する水性液を塗布するガスバリア材料(特開平8−238711号公報等)。
(2)プラスチック基材上に、金属アルコキシドまたはその加水分解物と、水溶性樹脂との複合物を有するガスバリア材料(特開平6−192454号公報等)。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)のガスバリア材料は、M2O・nSiO2(Mはアルカリ金属)のnが2以上の珪酸アルカリ金属塩(水ガラス)にシランカップリング剤を配合し、500μN/cm以上の濡れ張力を持つ重合体成型品の表面に塗布して形成すると、高い密着性と酸素バリア性が得られたと報告している。しかし、この中では珪酸カリウムとシランカップリング剤の組成が最も高度な酸素バリア性が得られたと報告されているが、日本の夏季気候にある高湿度環境下を想定した評価はされておらず、珪酸カリウム系では高湿度下で酸素バリア性が得られないことについて触れられていない。またリチウムが必須成分であることにも触れられていない。
【0007】
さらに、上記(2)のガスバリア材料は、SiもしくはAlの金属アルコキシドあるいはその加水分解物に対し、水溶性樹脂(ポリビニルアルコール)が5〜80重量%含まれた複合物で、非常に高いガスバリア性を発現させている。しかし、金属アルコキシドの加水分解の反応程度にガスバリア機能が影響するため、反応制御がシビアであり、また、高いガスバリアを発現するためには被膜中の脱水を促進させなければならず、100℃を超える高温乾燥が必要となるため、使用できるプラスチック基材が制限されてしまうなどの欠点を有する。
【0008】
本発明の課題は、透明性に優れるため内容物が透視可能で且つ検査時に金属探知器が使用でき、さらに既存設備による湿式コーティング方式と短時間の乾燥工程でガスバリア性が発現するというコストパフォーマンスや良好な加工適性、高温高湿下での高度な酸素バリア性を持ち、包装材料として必要なフレキシブル性も改善され、環境に悪影響を及ぼす原因物質を使用しない、包装材料として最適なガスバリア機能フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、アンカーコート層、一般式M2O・nSiO2で表されるアルカリ金属ポリシリケートを主成分とするものからなるガスバリア性被膜層、ポリビニルアセタールを主成分とするものからなるオーバーコート層を順次積層したことを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0010】
次に、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、前記アンカーコート層がイソシアネート化合物を主成分とするものからなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0011】
次に、請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、前記アンカーコート層がウレタン結合またはウレア結合を有する有機高分子あるいはウレタン結合とウレア結合の双方を有する有機高分子を含むものからなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0012】
次に、請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記ガスバリア性被膜層が窒素化合物、水溶性高分子及び有機珪素化合物の少なくとも1種類以上を含むものからなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0013】
次に、請求項5に係る発明は、上記請求項4に係る発明において、前記窒素化合物がアミノ基含有シランカップリング剤を含むアミン類であることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0014】
次に、請求項6に係る発明は、上記請求項4又は請求項5に係る発明において、前記有機珪素化合物が加水分解性のあるメトキシ基やエトキシ基などC=1〜3の範囲内のアルコキシシランまたはその加水分解物であることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0015】
次に、請求項7に係る発明は、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に係る発明において、前記オーバーコート層がポリビニルアセタールと無機層状化合物を主成分とするものからなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
【0016】
【作用】
本発明によれば、プラスチック材料からなる基材上にアンカーコート層、アルカリ金属ポリシリケートを主成分とするガスバリア性被膜層、オーバーコート層を順次積層した構成において、アンカーコート層はガスバリア性被膜層を積層する基材を広く選択できるようにすると共に、ガスバリア性被膜層の密着を強固にする。また、アルカリ金属ポリシリケートを主成分とするガスバリア性被膜層は優れたガスバリア性を有し、湿式コーティング法で形成できるので低温で、かつ、安価に成膜できる。さらに、ラミネート適性及び印刷適性、耐湿性、しごきやひねり等に対する耐性を持つオーバーコート層を設けたことにより、インキや接着剤の密着性、印刷やラミネートなどウェブ加工時に生じる張力や熱処理などへの耐性、包装材料形態でのしごきやひねりによるガスバリア物性の劣化を最小限に抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のガスバリア性積層フィルムを実施又は参考の形態に沿って以下に詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態を示すガスバリア性積層フィルムの側断面図であり、フイルムの厚み方向に順に、基材1、アンカーコート層2、ガスバリア性被膜層3、オーバーコート層4が形成されている。
【0019】
本発明のガスバリア性積層フイルムは、以前より多数提案されているゾルゲル法を用いたセラミック骨格のガスバリア性材料では得られなかった100℃以下という低温の乾燥工程で高度な酸素バリア性の発現が得られるガスバリア性被膜層3の上に、さらに、樹脂組成のオーバーコート層4を設けることでインキや接着剤の密着性、印刷やラミネーションなどウェブ加工時に生じる張力や熱処理等の耐性、及び包装材料形態でのしごきやひねりにおけるガスバリア性の物性変化を最小限に抑えることが可能である。
また、前記ガスバリア性被膜層3は水溶性の材料であるため、表面に直接塗布できるプラスチック基材1は非常に制限される場合がある。このため、何らかの表面改質処理が必要となるが、広範囲なプラスチック基材を使用し、密着性及びぬれ性、耐湿性、耐アルカリ性を同時に持たせる必要があるため、基材1とガスバリア性被膜層3の中間にアンカーコート層2を1層設ける方法を本発明では用いた。この方法により、極性が低く、従来では特殊な表面改質処理が必要であったポリオレフィンに代表される基材1上にガスバリア性被膜層3の均一被膜形成が可能となり、さらに高湿環境下で発生する、基材1とガスバリア性被膜層3との界面に水分やアルカリ成分が浸透することによる基材あるいは被膜のダメージによる密着強度低下などを防ぐことができるため、温湿度依存性の極めて少ない酸素バリア性と高温高湿度環境下での長期的な物性安定性を得ることができる。
【0020】
また、前記アンカーコート層2及びガスバリア性被膜層3、オーバーコート層4は全て湿式コーティングでの塗布が可能であるため、塗布及び乾燥を繰り返すことでインラインでの同時加工が可能であり、既存のグラビア印刷機などを活用することで低コスト加工が可能である。
【0021】
前記基材1はプラスチック材料からなるフィルムであり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、6−ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のエンプラフィルム等が用いられ、さらにこれらの材料が共押出で成膜された複合多層フィルムも含まれる。
本発明のガスバリア性積層フィルムは100℃以下の低温乾燥が可能であるため、基材を構成する材料の制約は非常に少ないが、安定塗工性、ウェブ適性、引張耐性、耐熱性、寸法安定性、平滑性、印刷適性、透明性などを考慮すると2軸延伸されたポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが好ましく、さらに価格面、防湿性、耐アルカリ性などを考慮すると単層フィルムまたは共押出で多層化された2軸延伸ポリオレフィンフィルムがより好ましい。
【0022】
さらに、上記2軸延伸ポリオレフィンフィルムには、ジシクロペンタジエンやノルボーネン、シクロヘキセン、テルペン樹脂などの環状炭化水素を、混合またはエチレンとの共重合コポリマー化により導入された高防湿性、高透明性、高剛性、耐熱性を有する層を持つポリオレフィンフィルムや、ガスバリア性被膜層などを積層する反対面にポリオレフィン系ヒートシール層を持つヒートシール性のあるポリオレフィン系フィルムなどの多層共押出の2軸延伸ポリオレフィンフィルムも含まれる。
【0023】
この基材1の厚さは特に制限を受けるものではないが、加工時の寸法安定性や耐熱性、価格面、フレキシブル性、透明性、その他包装材料としての適性などを考慮して、実用的には4〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0024】
また、この基材1のフィルムに、印刷適性、後加工適性、充填包装適性、耐内容物適性などの包装材料としての適性やフィルム成膜上の適性などから、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などが添加されていても良く、またラミネート用として使用されるプラスチックフィルムの表面は一般にコロナ放電処理や低温プラズマ処理、フレーム処理などで表面の極性を向上させているが、これらの表面改質処理でぬれ性を向上させているものがより好ましい。
【0025】
一般的に用いられるコロナ放電処理では、ポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムで600μN/cm以上の表面濡れ張力が得られるためアルカリシリケート水溶液のような表面張力の高い塗液を直接塗布することもできるが、ポリプロピレンフィルムに代表されるポリオレフィン系フィルムでは450μN/cm以上を得るのは難しいため、基材に直接塗布することは困難である。
【0026】
前記アンカーコート層2は、上記のプラスチック材料からなる基材1の片面もしくは両面に設けられ、主にガスバリア性被膜層3の被膜形成性や密着性を高めることを目的に設けられる。上記の従来表面改質処理では十分な表面濡れ張力が得られないポリオレフィン系フィルムだけでなく、ポリエステル系フィルムで特徴的に見られるガスバリア性被膜形成時及び高湿環境下保存におけるガスバリア性被膜からのアルカリ成分の溶出による基材ダメージ(加水分解によるエステル結合の切断)を防ぐ効果も得られる。
【0027】
前記アンカーコート層2の形成方法はコーティング法により設けられるが、その材料は表面の平滑性を考慮すると、水または有機溶媒に溶解して湿式コ―ティングで設けることがより好ましい。材料としては、ポリエチレンイミンまたはその誘導体、シランカップリング剤や有機チタネート、ポリアクリル、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノールなどが考えられるが、耐アルカリ性を考慮すると主鎖にエステル結合を持たない樹脂であることが好ましく、低温乾燥での基材及びガスバリア性被膜との密着性を考慮するとウレタン結合及びウレア結合を少なくとも1つ以上を有する有機高分子が含まれることがより好ましい。
【0028】
上記ウレタン結合及びウレア結合は、あらかじめ重合段階で導入したポリマーを使用しても、アクリル及びメタクリル系ポリオール、ポリビニルアルコールを一部アセタール化したポリビニルアセタールなどのポリオールとイソシアネート基を持つイソシアネート化合物、またアミノ基を持つアミン樹脂とエポキシ基及びグリシジル基を持つエポキシ化合物などを反応させてウレタン結合を形成させたものや、イソシアネート化合物と水、またはアミノ基を持つアミン樹脂との反応によりウレア結合を形成させたものでも良い。
【0029】
上記イソシアネート化合物とは、一般にTDI系(トリレンジイソシアネート)、MDI系(ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI系(1、5−ナフタレンジイソシアネート)、HDI系(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI系(イソホロンジイソシアネート)、XDI系(キシリレンジイソシアネート)、H6XDI系(水添XDI)等やそれらのアダクト体やヌレート体が挙げられる。これらのいずれを用いても良く、またこれらの2種類以上を混合して用いても良いが、積層するガスバリア性被膜の乾燥時の熱ダメージによるクラック発生を考慮すると、ガラス転移点の高い被膜が得られるTDI系、MDI系、XDI系、IPDI系がより好ましい。
【0030】
アンカーコート層2のガラス転移点は、ガスバリア性被膜の乾燥時の熱によるアンカーコート層2を構成する樹脂の分子振動や収縮などの動きによるガスバリア性被膜のクラック発生を防止するため、より高いほうが好ましく、アンカーコート層2を形成する樹脂成分のガラス転移点は30℃以上がより好ましい。
【0031】
また、アンカーコート層2の成分への添加剤として、ガスバリア性被膜層3との濡れ性、密着性、収縮防止を考慮してシランカップリング剤やコロイダルシリカ、スメクタイトなどの粘土鉱物、セラミック系無機粒子、有機チタネートなどを導入しても良く、また4級アンモニウム塩などの界面活性剤や、3級アミンなどのアミン樹脂などを導入しても良い。これらはポリマー重合段階で主骨格として導入しても、また、側鎖末端に反応させる方法や希釈済みの使用状態の溶液にそのまま直接添加する方法でもどちらでも良い。
【0032】
アンカーコート層2の厚さは特に限定されるものではないが、厚さが0.001μm以下では密着性や被膜形成性が得られず、1μm以上では不経済であるため好ましくない。一般的には0.01〜1μmの範囲が実用的でより好ましい。
【0033】
アンカーコート層2の形成方法としては、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の通常の湿式コーティング方法を用いることができる。これらの塗工方式を用いて基材の片面もしくは両面に塗布する。乾燥する乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射など公知で一般的に使用される乾燥方法で、特に限定しない。
【0034】
前記ガスバリア性被膜層3は、温湿度依存性が極めて少なく、高温高湿下で物性劣化することのない高度な酸素バリア性を付与することを目的とする。上記目的の達成のためにガスバリア性被膜としては、一般式 M2O・nSiO2(式中、Mはリチウムまたはリチウムを含む複数のアルカリ金属、nはモル比で2〜10の範囲内である。)で表されるアルカリ金属ポリシリケートを主成分とする被膜である必要がある。
【0035】
上記のガスバリア性を有するアルカリ金属ポリシリケートの必須成分であるリチウムシリケートはLi2O・nSiO2(nはモル比)で表され、その溶液は水を溶媒とした一般に水ガラス(珪酸ナトリウム水溶液の通称)として知られるアルカリシリケート水溶液である。リチウム以外でもアルカリ金属はIA族に属する全ての元素を指すが、工業的には比較的安価なナトリウムやカリウムなどが一般的に多く使用される。しかし、リチウムを含まない単独または複数のアルカリ金属で構成されるアルカリシリケート水溶液の乾燥被膜では、温湿度依存性の少ない高い酸素バリア性は得られない。例えば、ナトリウム系は酸素バリア性が発現せず、カリウム系では酸素バリア性は発現するものの高湿下で低下してしまう。
【0036】
リチウムポリシリケートがガスバリア性材料、特に酸素バリア性を向上させる材料として有用であることは以前より知られている。しかし、リチウムポリシリケート単体でプラスチックフィルム上に被膜を形成すると、Li2O・nSiO2自身の被膜形成性が不足しているため、モル比がn≦2あるいはn≧5であると被膜の形成ができない、2<n<5の範囲で形成されたリチウムポリシリケート被膜も成膜時の乾燥による急激な収縮と高い表面張力によりプラスチック基材に対する濡れ性が不足しているため、被膜形成に際して乾燥条件・基材などの制約が非常に多い問題がある。さらに、形成した被膜は高温高湿下に暴露されると容易に変性がおこり、被膜表面に炭酸塩が析出する白華現象が起こったり、水分の浸透により被膜内にクラックなどが発生し、酸素バリア性が急激に低下してしまう吸湿劣化現象が起こりやすい。
【0037】
リチウムポリシリケートが低温乾燥でもガスバリア性を発現する被膜を形成する理由として、アルカリ成分が低温でもシラノール基の脱水縮合を促進することと、リチウムが酸化珪素のアモルファス構造に適度な結晶性を持たせているためと思われ、またリチウムのイオン半径が他のアルカリ金属に比べ非常に小さいことが酸化珪素のアモルファス構造中の欠陥となりにくいためと考えられる。しかし、リチウムは水分と共にイオン化してシリカ被膜から溶出して空孔を生み出す可能性があるため、リチウムポリシリケート中のLi2O成分比は必要最小限にする必要がある。
【0038】
以上の問題を解決する手段として、窒素化合物、水溶性高分子及び有機珪素化合物の一種以上を導入することで被膜形成性や濡れ性、吸湿防止性を付与することができる。無機酸化物被膜を有機系材料と結びつける効果により、プラスチック基材または表面改質処理面への濡れ性や密着性を改善したり基材界面への水分の浸透を防ぐ、また乾燥時の脱水収縮によるクラックの発生及び水分の浸透による被膜内クラックの発生を防ぐことができる。さらに、上記の有機珪素化合物に窒素を含んだ有機成分を持たせることで、リチウムシリケート水溶液との分散性、溶液安定性、乾燥被膜のガスバリア性の向上、高温高湿下での吸湿劣化を大幅に改善することもできる。これは、リチウムポリシリケートを主成分とした無機成分の被膜中にアミンなどの有機成分が均一に分散し、シリカとの結合性及びシリカ/リチウムの偏析(相分離)防止や水分の浸透によるリチウムの溶出防止などが起こっているものと考えられる。
【0039】
上記有機珪素化合物とは、有機材料に珪素が導入されたものを指し、有機ポリマー(分子量1000以上)及びオリゴマー、モノマー(分子量1000未満)に珪素が導入されものを指し、前者はシラン変性ポリビニルアルコールなど、後者はシランカップリング剤などが属する。中でも、メトキシ基やエトキシ基など炭素数が1〜3までの低級アルコキシル基を持つモノアルコキシシラン、ジアルコキシシランまたはトリアルコキシシラン末端の加水分解性を持つものがリチウムシリケートとの相溶性や分散性を考慮するとより好ましい。炭素数が1〜3である理由として、加水分解時に発生するアルコールの炭素数が多いと乾燥時の残留及びより疎水性を有するため、リチウムシリケート水溶液との混合時に水溶液が不安定となり、シリカの沈殿が発生しやすくなるためである。
【0040】
上記窒素化合物とは、アンモニア、ハロゲノアミン、ジハロゲノアミン、ハロゲン化窒素、金属アミド、金属イミド、金属窒化物、アミン類、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、アジ化水素、金属アジ化物、ヒドラジン、ヒドラジウム塩、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアンモニウム塩、硝酸塩、次亜硝酸塩、ニトロキシル酸塩、亜硝酸塩、ペルオクソ亜硝酸塩、ペルオクソ硝酸塩、ハロゲン化ニトロシル、ハロゲン化ニトリル、硝酸ハロゲン、シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩、窒化リン、硫化窒素またはそれらの誘導体などが含まれるが、安定性、安全性、環境性、価格、またアルカリシリケート水溶液との相溶性、被膜強度、柔軟性、収縮防止などを考慮すると、水溶性の高いアミン類がより好ましい。アミン類には、アミノ基(NH2−)を持つ1級アミン、イミノ基(−NH−)を持つ2級アミン、水素が全て置換されている3級アミン及び4級アンモニウム塩があり、これらの官能基を多数持つポリアミン、ポリエチレンイミンやアミノエチル化樹脂、アジリジニル基含有化合物などのエチレンイミン系ポリマーなども含まれる。また、アルコキシシリル基を持つモノアミンまたはジアミンであるアミノ基含有シランカップリング剤などシリル化処理されたものが、吸湿安定性などを考慮するとより好ましい。
さらに、アミン類を導入することで、イソシアネート化合物が含まれるアンカーコート層2へのぬれ性が非常に向上することから、アミン類のアミノ基やイミノ基は、アンカーコート層2に含まれるイソシアネート基との反応により、塗工時のレベリングを大幅に向上させているものと思われる。
【0041】
上記水溶性高分子とは、分子量が1000〜400000までの糖類、ポリビニルアルコールまたはこれらの誘導体などを指す。
上記ポリビニルアルコールとは、主原料である酢酸ビニルを重合、ケン化をおこなって得られるポリマーであり、本発明で用いるポリビニルアルコールとしては、ガスバリア性被膜の成膜性・柔軟性・相溶性・耐水性を考慮し重合度300〜3000、ケン化度95mol%以上のものがより好ましい。また、ポリビニルアルコール誘導体には、水酸基以外に共重合変性することでアルコキシシリル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アセトアセチル基などを10mol%以下で導入された変性ポリビニルアルコールなどが含まれるが、リチウムポリシリケートの相溶性・吸湿劣化防止からアルコキシシリル基が導入されたものがより好ましい。
【0042】
上記糖類とは、グルコースを主成分とした有機化合物を指し、少糖類、オリゴ糖類、多糖類などがある。本発明で用いる糖類としては、ガスバリア性被膜の成膜性・柔軟性を考慮すると、グルコースが高分子化した多糖類に属する澱粉類やセルロース類がより好ましい。また、セルロース類に吸着しやすいアミノ基含有シランカップリング剤などで末端をシリル化処理して珪素を導入してから用いても良い。
【0043】
リチウムポリシリケートも含め、アルカリシリケートから生成される被膜は、経時変化で空気中の炭酸ガスや水分と反応して被膜が白化する白華現象(エフロレッセンス)がある。これらを解決するための手段として、アルカリポリシリケート内に金属粉末や多価金属酸化物、多価金属水酸化物、リン酸塩、ホウ酸塩、コロイダルシリカなどの無機化合物粒子を添加・分散する方法が知られているが、これらを被膜の柔軟性や被膜凝集力、透明性が低下しない程度に適時添加してもよい。また、有機珪素化合物、窒素化合物、糖類やポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を添加することでも同様な効果を得ることはできる。
【0044】
また、リチウムポリシリケートに、安価なナトリウムポリシリケートや耐水性を持つことで知られるカリウムポリシリケートを組み合わせることも可能であり、リチウムポリシリケートのガスバリア機能を損なうことなく、低価格化、耐水性などの特徴が付与されたアルカリ金属ポリシリケートを得ることができる。リチウム以外のアルカリ金属を添加する場合、ガスバリア性を考慮してLi2O/M′2O(式中、M′はリチウム以外のアルカリ金属)モル比で1以上であることが好ましい。
【0045】
以上の結果より、 M2O・nSiO2(式中、Mはリチウムまたはリチウムを含む複数のアルカリ金属)で表されるモル比nが2〜10の広範囲におけるアルカリ金属ポリシリケートに有機珪素化合物、窒素化合物及び水溶性高分子が少なくとも1種類以上導入されることで、成膜性・柔軟性・耐クラック性が付与でき、温湿度依存の極めて少ない高度な酸素バリア性が得られ、長期的な高温高湿下での暴露に対しても安定して酸素バリア性を維持することができる。
【0046】
アルカリ金属ポリシリケートと有機珪素化合物、窒素化合物及び水溶性高分子の混合方法については、周知の方法が使用でき特に限定しない。また、配合比はガスバリア性や被膜強度・耐水性などから、アルカリ金属ポリシリケート中のSiO2(シリカ成分)重量比率が固形分全体の40%以上であることが好ましい。 SiO2(シリカ成分)が40%未満であると、リチウムポリシリケートが本来持つガスバリア性発現が起こらないためである。
【0047】
ガスバリア性被膜層3の厚さは、一般的には乾燥後の厚さで0.005〜5μmの範囲になるようにコーティングすることが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmの範囲にあることである。0.01μm以下の場合は塗工技術の点から均一な塗膜が得られにくく、逆に1μmを越える場合は乾燥時の脱水収縮により被膜が割れやすくなり、また不経済のため問題がある。
【0048】
また、ガスバリア性被膜層3の形成方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等が用いることができる。これらの塗工方式を用いて基材の片面もしくは両面に塗布する。乾燥する乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射など公知で一般的に使用される乾燥方法で、特に限定しない。
【0049】
前記オーバーコート層4は、インキや接着剤の密着性、印刷やラミネートなどウェブ加工時に生じる張力や熱処理などへの耐性など、包装材料形態にするための後加工適性を向上させることができ、主にガスバリア性被膜層3を印刷やラミネートなどの後加工時に生じるダメージから保護することを目的に設けられる。印刷用インキやラミネート用接着剤のレベリングや密着性、ウェブ加工時に生じる張力への耐性、ガスバリア性被膜の高湿環境からの保護、溶融押出ラミネートでの熱ダメージ、アルカリシリケート材料から溶出されるアルカリ成分からの保護、包装材料として輸送時に生ずるしごきやひねりなどの外部的応力によるダメージなどの防止の役割を有する。
【0050】
前記オーバーコート層4の積層方法は、コーティング法により設けられるが、使用する材料としては耐アルカリ性及びガスバリア性被膜との密着性、外部的応力によるダメージ防止などの特性から、水酸基を持つ水溶性高分子が好ましく、さらに、乾燥被膜の滑り性や吸湿防止、水溶液の泡立ち防止などの点から無機層状化合物を導入したものでも良い。
【0051】
上記水酸基を持つ水溶性高分子とは、主鎖または側鎖に水酸基(OH基)を持つ水溶性のポリマーで、分子量1000〜400000までのポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体、糖類またはそれらの誘導体を指す。また、ポリビニルアルコールの誘導体には、水酸基以外に共重合変性したアルコキシシリル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アセトアセチル基などを10mol%以下で導入された変性ポリビニルアルコールや、ポリビニルアルコールにアルデヒドによりアセタール化したポリビニルアセタールなども含まれる。
【0052】
上記無機層状化合物とは、層状構造を有する結晶性の無機化合物をいい、例えばカオリナイト、ハイロサイト、緑泥石、スメクタイト、バーミキューライト、パイロフィライト、雲母等に代表される天然産出の粘土鉱物、合成スメクタイトや合成雲母などの化成品を挙げることができる。
無機層状化合物である限りは、その種類、粒径、アスペクト比等は目的とする要求品質等により適宜選択することができ特に限定されるものではないが、膨潤性が高く、層状構造の相関に水溶性高分子が入り込んでナノコンポジット構造を形成しやすい点からスメクタイト群の無機層状化合物が適している。スメクタイト群の具体例としては、モンモリロナイト、サポナイト等を挙げることができ、その中でも膨潤性や分散性、価格面や加工性の点からモンモリロナイトがより好ましい。
【0053】
水酸基を持つ水溶性高分子と無機層状化合物の混合方法については、一般の方法が採用でき、特に限定されるものではない。また、配合比は要求品質によりその値が異なるが、水溶液の粘性や分散性、乾燥被膜の凝集力などの点から、水溶性高分子と無機層状化合物との混合比が重量比で50:50〜99:1の範囲であることが好ましい。
【0054】
また、オーバオコート層4の成分への添加剤として、ガスバリア性被膜層3やインキ及び接着剤との濡れ性や密着性、耐水性などを考慮して、シランカップリング剤やコロイダルシリカ、有機チタネート、ポリエチレンイミン、界面活性剤などを導入しても良い。これらはポリマー重合段階で主骨格として導入しても、また側鎖末端に反応させる方法や希釈済みの使用状態の溶液にそのまま直接添加する方法でもどちらでも良い。
【0055】
オーバーコート層4の厚さは特に限定されるものではないが、厚さが0.001μm以下では密着性や被膜形成性が得られず、1μm以上では不経済であるため好ましくない。一般的には0.01〜1μmの範囲が、実用的でより好ましい。
【0056】
オーバーコート層4の形成方法としては、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の通常の湿式コーティング法を用いることができる。これらの塗工方式を用いて基材の片面もしくは両面に塗布する。乾燥する乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射など公知で一般的に使用される乾燥方法で、特に限定しない。
【0057】
さらに、前記プラスチック基材1にアンカーコート層2、ガスバリア性被膜層3、オーバーコート層4が順次積層された積層フィルムのオーバーコート層4の面あるいはその反対面に、包装材料として実用的な積層構成、例えば、印刷層や熱可塑性樹脂などのヒートシール層を設けることが出来る。
【0058】
前記印刷層は、包装される内容物の商品性や美粧性、陳列表示効果などを目的としたもので、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ポリアマイド、塩酢ビ系、天然植物油等のインキバインダー樹脂に各色顔料及びビヒクル、可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなる印刷用インキにより構成される層で、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法等の周知の塗布方式を用いることができる。厚さは、0.1〜2.0μmの範囲で適宜選択される。
【0059】
また、印刷層を積層する時に多色グラビア印刷機等を用いる場合、前もってアンカーコート層2、ガスバリア性被膜層3、オーバーコート層4を順次設けた後に、そのまま同じ印刷機を用いてインラインで印刷層を設けても一向に構わない。
【0060】
また、前記ヒートシール層は、袋状包装体などを形成する際の融着に利用されるものであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
【0061】
ヒートシール層の形成方法としては、上述樹脂からなるフィルム状のものを2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベント型ラミネート法、上述した樹脂を加熱溶融させカーテン状に押し出し貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等いずれも公知の積層方法により形成することができる。
【0062】
【実施例】
本発明のガスバリア性積層フィルムを具体的な実施例又は参考例を挙げて更に説明する。
【0063】
〈アンカーコート液の調整〉
ポリウレタンイソシアネート(武田薬品工業(株)製、商品名「M407」)を酢酸エチルで希釈後、TDIヌレートタイプイソシアネート化合物(武田薬品工業(株)製、商品名「D217」)を固形分重量比で30/70の割合で混合し、全固形分が5%になるように調整し、アンカーコート層2のアンカーコート液を得た。
【0064】
〈ガスバリア性被膜液の調整〉
リチウムシリケート水溶液( 日産化学工業(株)製、商品名「LSS35」/「LSS45」=1/1、Li2O・nSiO2、n=4mol比)の固形分を20重量%に調整した水溶液に、窒素化合物としてシランカップリング剤(日本ユニカー(株)製、商品名「A1122」、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を溶解した水溶液をSiO2/窒素化合物=1.6/1(重量比)になるように加えて攪拌した混合液に、さらに水溶性高分子としてシラン変性ポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名「R2105」、ケン化度約98mol%)を90℃で加熱溶解した5重量%水溶液を、全固形分中のシラン変性ポリビニルアルコール成分が4重量%となるように添加して、最終的に全固形分が7重量%となるように1時間攪拌してガスバリア性被膜層3のガスバリア性被膜液を得た。
【0065】
〈オーバーコート液Aの調整〉
水溶性高分子であるポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名「PVA110」、重合度1000、ケン化度約98mol%)を90℃で加熱溶解後、最終的に全固形分が5重量%水溶液となるように水、メタノールで調整してオーバーコート層4のオーバーコート液Aを得た。
【0066】
〈オーバーコート液Bの調整〉
水溶性高分子であるポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名「PVA110」、重合度1000、ケン化度約98mol%)を90℃で加熱溶解後、無機層状化合物としてモンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、商品名「クニピアF」)を分散させた5重量%水溶液を水溶性高分子/無機層状化合物=9/1(重量比)となるように添加後、最終的に全固形分が5重量%水溶液となるように水、メタノールで調整してオーバーコート層4のオーバーコート液Bを得た。
【0067】
〈オーバーコート液Cの調整〉
水溶性高分子であるポリビニルアセタール(積水化学工業(株)製、商品名「KW−3」)、アセタール化度30mol%、固形分20wt%)を、最終的に全固形分が5重量%水溶液となるように水、メタノールで調整してオーバーコート層4のオーバーコート液Cを得た。
【0068】
〈オーバーコート液Dの調整〉
水溶性高分子であるポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名「PVA124」、重合度2400、ケン化度約98mol%)を90℃で加熱溶解後、最終的に全固形分が5重量%水溶液となるように水、メタノールで調整してオーバーコート層4のオーバーコート液Dを得た。
【0069】
〈オーバーコート液Eの調整〉
水溶性高分子であるアクリル樹脂(東亞合成(株)製、商品名「A7070」、多価カルボン酸アクリル系共重合体)を、最終的に全固形分が5重量%水溶液となるように水、メタノールで調整してオーバーコート層4のオーバーコート液Eを得た。
【0070】
〈参考例1〉
基材1として、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(サントックス(株)製、商品名「PF20」)のコロナ放電処理面に、グラビアコーティング機を用いて、加工速度50m/分、乾燥オーブン設定80℃で、アンカーコート層2のアンカーコート液(塗布量:Wet約3g/m2)を塗布し乾燥後、その上に同様な方法でガスバリア性被膜層3のガスバリア性被膜液(塗布量:Wet約5g/m2)とオーバーコート層4のオーバーコート液A(塗布量:Wet約6g/m2)を順次積層して、本発明の参考例1のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0071】
〈参考例2〉
参考例1において、オーバーコート層4にオーバーコート液Bを用いたこと以外は、同様にして本発明の参考例2のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0072】
〈実施例1〉
参考例1において、オーバーコート層4にオーバーコート液Cを用いたこと以外は、同様にして本発明の実施例1のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0073】
〈参考例3〉
参考例1において、オーバーコート層4にオーバーコート液Dを用いたこと以外は、同様にして本発明のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0074】
〈参考例4〉
基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名「P60」)のコロナ放電処理面に、グラビアコーティング機を用いて、加工速度50m/分、乾燥オーブン設定80℃で、ガスバリア性被覆層3のガスバリア性被膜液(塗布量:Wet約5g/m2)を塗布し乾燥後、同様な方法でその上にオーバーコート層4のオーバーコート液A(塗布量:Wet約6g/m2)を積層して、本発明の参考例4のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0075】
〈比較例1〉
参考例1において、オーバーコート層4にオーバーコート液Eを用いたこと以外は、同様にして比較用のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0076】
〈比較例2〉
参考例1において、オーバーコート層4を設けなかったこと以外は、同様にして比較用のガスバリア性積層フィルムを得た。
【0077】
〈評価〉
実施例1、参考例1〜4及び比較例1〜2の各ガスバリア性積層フィルムと、そのガスバリア性積層フィルムを溶融押出ラミネート機に装着して、その積層フィルムのオーバーコート層側に、メタノールで希釈した溶融押出ラミネート用AC剤(日本曹達(株)製、商品名「T185/T185硬化剤」)をWet約5g/m2塗布し乾燥後、Tダイから溶融したポリエチレン(三井化学(株)製、商品名「ミラソン14P」)をダイ下樹脂温度320℃、エアギャップ110mm、加工速度60m/分でカーテン状に樹脂厚み15μmで押出し、シーラントフィルム(東セロ(株)製、厚さ25μmの無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、商品名「TUX−TCS」)をサンドラミネーションし、さらに40℃で2日間エージングしてラミネート品を得た。
【0078】
前記実施例1、参考例1〜4及び比較例1〜2の各ガスバリア性積層フィルムとそのラミネート品について、各種物性を以下の測定方法で測定し、評価した。その結果を表1に示す。
(1)酸素透過率
酸素透過率測定装置(MOCON社製OXTRAN−2/20)を用いて、各ガスバリア性積層フィルムを温度30℃、湿度90%RH中の雰囲気下で測定した。
(2)ゲルボフレックス試験
ゲルボフレックステスター(理学工業(株)製ねじり角度440度、ASTMF−392に準ずる)を用いて、各ガスバリア性積層フィルムを室温環境下で100回反復運動を繰り返した後に、前記(1)の条件にて酸素透過率の測定を行った。
(3)ラミネート強度
剥離試験測定装置((株)オリエンテック製テンシロン:RTC1250)を用いて、各ガスバリア性積層フィルムと前記シーラントフィルムを貼り合わせたラミネート品について、サンプル幅:15mm、剥離角度:T字剥離、剥離速度300mm/分の条件で、そのラミネート強度を測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から、実施例1及び参考例1〜4では、初期の酸素透過率も小さく、水酸基を持つ水溶性高分子を主成分とするオーバーコート層を設けているため、ゲルボフレックス試験100回後も酸素透過率の上昇も小さく抑えられている。一方、比較例1はオーバーコート層が水酸基ではなくカルボキシル基を持つ水溶性高分子であるためゲルボフレックス試験100回後の酸素透過率が大きく上昇している。また、比較例2ではガスバリア性被膜層上にオーバーコート層が形成されていないために、初期の酸素透過率も大きく、ゲルボフレックス試験100回後の酸素透過率の上昇も大きい。さらに、実施例1及び参考例1〜4を用いたラミネート品のラミネート強度も包装材料としては十分な強度を有している。このような結果から、オーバーコート層4に使用した樹脂の水酸基がガスバリア性被膜層3の被膜との密着性を向上させ、屈曲など外部からのダメージに対してもクラックの発生を防いでいるものと思われる。さらに、ラミネート条件で最も過酷と言われる溶融押出ラミネートなど耐熱性が必要とされる後加工後も十分使用できることから、フレキシブル性が要求される包装材料として十分な適性を有していると言える。
【0081】
【発明の効果】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、ウレタン結合又はウレア結合を有する有機高分子からなるアンカーコート層、アルカリ金属ポリシケートを主成分としたガスバリア性被膜層、さらにポリビニルアセタールを主成分としたオーバーコート層を積層しているので、ガスバリア性被膜層の密着強度もよく、日本の夏季環境に相当する高温高湿下でも温湿度依存のない高い酸素バリア性を持ち、ガスバリア性被膜層の被膜自体は柔軟性に欠けるにも拘わらず、印刷工程やドライラミネート、溶融押出ラミネート、熱圧着ラミネートなどの熱処理や張力がかかる加工においても広範囲な条件で安定した酸素透過率を維持し、また密着性や加工適性、透明性、柔軟性、コストパフォーマンスにも優れているので、包装分野において巾広く使用可能であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のガスバリア性積層フィルムの側断面図である。
【符号の説明】
1…基材
2…アンカーコート層
3…ガスバリア性被膜層
4…オーバーコート層
Claims (7)
- プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に、アンカーコート層、一般式M2O・nSiO2で表されるアルカリ金属ポリシリケートを主成分とするものからなるガスバリア性被膜層、ポリビニルアセタールを主成分とするものからなるオーバーコート層を順次積層したことを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
- 前記アンカーコート層がイソシアネート化合物を主成分とするものからなることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記アンカーコート層がウレタン結合またはウレア結合を有する有機高分子あるいはウレタン結合とウレア結合の双方を有する有機高分子を含むものからなることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記ガスバリア性被膜層が窒素化合物、水溶性高分子及び有機珪素化合物の少なくとも1種類以上を含むものからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記窒素化合物がアミノ基含有シランカップリング剤を含むアミン類であることを特徴とする請求項4記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記有機珪素化合物が加水分解性のあるメトキシ基やエトキシ基などC=1〜3の範囲内のアルコキシシランまたはその加水分解物であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記オーバーコート層がポリビニルアセタールと無機層状化合物を主成分とするものからなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のガスバリア性積層フィルム。
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