JP4647488B2 - リップ型シール - Google Patents
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Description
このリップ型シールとしては、図1に示すように、ハウジングHの孔Haに嵌着される嵌着部1a及び嵌着部1aから径方向内側に向けて円錐環状に延出するリップ部1bを画定するようにゴム状弾性材料により形成されたシールリング1、嵌着部1aに接合される接合部2a及び接合部2aからリップ部1bの途中まで延出してリップ部1bを内側から支持する支持部2bを有するサポートリング2等により構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
そして、流体Fが及ぼす圧力が高圧の場合でも、リップ部1bの変形をできるだけ抑制して、リップ部1bの先端が回転軸Sの外周面と線接触状態を保つように形成されていた。
しかしながら、コンプレッサの冷媒としてCO2等を用いる場合には、常用で5MPa以上の高圧環境下に曝されるため、サポートリング2でリップ部1bを支持するにも拘わらず、リップ部1bの摩耗が著しく進行し、耐久性が低下するという問題があった。
すなわち、上記の目的を達成する本発明のリップ型シールは、所定のハウジングに支持された軸の外周を密封するリップ型シールであって、ハウジングの孔に嵌着される環状の嵌着部及び嵌着部から径方向内側に向けて略円錐環状に延出して軸に当接し得るリップ部を画定するように弾性材料により形成されたシールリングと、嵌着部に接合される環状の接合部及び軸を通す孔を画定すると共に接合部側からリップ部の途中の領域まで延出してリップ部を径方向内側から支持する環状の支持部を有するサポートリングとを含み、リップ部は、サポートリングの支持部と接触した範囲において略同一の肉厚に形成された基部と、この基部に続けて一体的に形成されサポートリングの支持部と非接触となり始める領域から先端に向かって徐々に薄肉となる先細りの断面形状をなすと共にリップ部全体の略半分の長さに形成された先端部とを有し、リップ部は、サポートリングの支持部と非接触となり始める領域の肉厚をT1、上記先端の肉厚をT0とするとき、α=T0/T1の値が、0.3〜0.7となるように形成され、かつ、上記先端の内径をD0、軸の外径をD1とするとき、β=(D1−D0)/D1の値が、0.03〜0.15となるように形成されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、サポートリングの支持部から外れた領域にあるリップ部の先端部の領域は、高圧環境下に曝されると適度に変形して、軸との接触幅が広がった状態で接触する。これにより、シール性が確保される適度な面圧が得られると同時に、面圧が分散されて最大面圧が低下するため、リップ部の摩耗が軽減されて、耐久性が向上する。
特に、リップ部が、サポートリングの支持部と接触した状態で略同一の肉厚に形成された基部と、この基部に続けて一体的に形成されサポートリングの支持部と非接触となり始める領域から先端に向かって徐々に薄肉となる先細りの断面形状をなす先端部とを有するように形成されているため、基部における過度の緊迫力を抑制しつつ先端部の変形を容易にして、面圧の分散による最大面圧の低下で、リップ部の摩耗が軽減され、耐久性が向上する。また、リップ部の先端部が上記の条件(α=0.3〜0.7)を満たす肉厚で、かつ、上記の条件(β=0.03〜0.15)を満たす締め代となるように形成されることにより、リップ部の全域における曲げ強度が均一化され、えぐれ摩耗、つんのめり現象を防止でき、シール性及び耐久性を一層向上させることができる。
また、リップ部の先端部は、リップ部全体の略半分の長さに形成されているため、シール性が得られる適度な面圧が得られると同時に、面圧が分散されて最大面圧が低下するため、リップ部の摩耗が軽減されて、耐久性が向上する。
この構成によれば、サポートリングの湾曲した支持部が、シールリングのリップ部を局部的にではなく均一的に緩やかな曲面にて支持するため、高圧環境下でのリップ部の緩やかな傾斜をなす変形を促し、接触面圧をより均一化することができる。
この構成によれば、シールリングのリップ部と軸との接触状態を最適な状態に保持することができ、耐摩耗性、耐久性がさらに向上する。
コンプレッサは、外輪郭を画定するハウジングH、ハウジングH内に収容された圧縮機構に外部から回転駆動力を伝達する回転軸S等を備えている。そして、回転軸S(の外周面)とハウジングH(の孔の内壁面)との間を密封するように、本発明に係るリップ型シール10が装着されて、内部空間(流体)Fを大気Aから遮断している。
円筒部22は、嵌着部21とリップ部23とを一体的に連結するものであり、軸線方向S1におけるその長さは適宜選定される。すなわち、円筒部22は、リップ部23を、嵌着部21から径方向内側に延出させるために介在するものであり、リップ部23が嵌着部21に隣接して形成されるように、円筒部22は短く形成されてもよい。
先端部23bは、図4Bに示すように、基部23aの終端すなわち後述するサポートリング30の支持部33と非接触となる領域23b´から先端23b´´に向かって、徐々に薄肉となる先細りの断面形状に形成されている。
これにより、リップ部23の全域において生じる曲げ応力の均一化、すなわち、曲げ強度の均一化がなされ、特異な形態の変形が抑制されて局部的な摩耗を防止でき、シール性及び耐久性がさらに向上する。
これにより、リップ部23の先端23b´´が回転軸Sにより圧縮される際の締め代が好ましい状態に管理されて、局部的な摩耗を防止でき、シール性及び耐久性がさらに向上する。
このように硬度を設定することにより、シールリング20のリップ部23(先端部23b)と回転軸Sとの接触状態を最適な状態に保持することができ、耐摩耗性、耐久性がさらに向上する。
尚、シールリング20の材料としては、高圧下で適度な弾性変形が得られる材料であれば、ゴム材料に限らず、樹脂材料を適用してもよい。
尚、支持部33の先端領域33aは、図4A及び図4Bに示すように、高圧で押圧されて変形したリップ部23に対してエッジ作用を及ぼさないように(局部的に応力が高くならないように)、湾曲して形成されている。
また、リップ部42の内壁面(回転軸Sの外周面と接触する領域)には、ネジ状の螺旋切込み43が設けられている。螺旋切込み43は、そのネジポンプ作用により、密封流体を内部空間F内に押し戻す役割をなす。
接合部91は、シールリング20のカシメ部24bで第3シールリング80の接合部81に向けて押し付けられて堅固に固定されている。
これにより、順次に挿入されたサポートリング30,第2シールリング40,第2サポートリング50,スペーサリング60,ホルダリング70,第3シールリング80,第3サポートリング90は全て、シールリング20により挟持されて固定され、リップ型シール10が完成する。
本発明のリップ型シール10では、リップ部23に高圧が作用しない場合は、図5Aに示すように、リップ部23はサポートリング30の支持部33に支持されて直線的に伸びて回転軸Sと狭い幅で接触しており、リップ部23に高圧が作用すると、図5Bに示すように、リップ部23の先端部23bが適度に弾性変形して、回転軸Sとの接触幅Wが広くなる。
一方、従来のリップ型シールでは、リップ部1bに高圧が作用しない場合は、図6Aに示すように、リップ部1bはサポートリング2の支持部2bに支持されて直線的に伸びて回転軸Sと狭い幅で接触しており、リップ部1bに高圧が作用すると、図6Bに示すように、リップ部1bの先端部分が僅かに弾性変形するものの基本的に変形し難く、回転軸Sとの接触幅は僅かに広がった幅Wcとなり、図6Cに示すように、最大面圧Pcmaxも非常に高くなり、摩耗が進行する状況にある。
このように、接触幅Wが広がることで、シール面での面圧が分散されて摩耗が軽減され、耐久性が向上する。また、シール面全域に亘ってある程度の面圧が得られ、最大圧力も極端に低下せず適度な面圧に保持されるため、良好なシール性能が得られる。
その結果、図8に示すように、α(=T0/T1)の値が0.65を超えると、「つんのめり現象」が大きくなる傾向にある。一方、αの値が0.35よりも小さいと、先端部23bの剛性低下が大きくなり過ぎる。
結果的には、αの値が0.35〜0.65の範囲で、シール面の接触幅が広くなる好適な変形が得られることが確認された。
尚、αの値としては、0.30〜0.70の範囲でも十分許容されることが確認されている。
結果的には、βの値が0.04〜0.12の範囲で、特異な変形が防止されて、シール面の接触幅が広くなる好適な変形が得られることが確認された。
尚、βの値としては、0.03〜015の範囲でも十分許容されることが確認されている。
この実施形態に係るリップ型シール10´は、図9に示すように、外輪郭を画定すると共に内部空間(流体)F側に面するシールリング20、シールリング20の内側に接合されたサポートリング30´を基本構成として備えており、又、サポートリング30´に続いて回転軸Sの軸線方向S1に順次に配列して接合された,第2シールリング40、第2サポートリング50、スペーサリング60、ホルダリング70、第3シールリング80、第3サポートリング90等を備えている。
これにより、湾曲した支持部33´が、シールリング20のリップ部23を局部的にではなく均一的に緩やかな曲面にて支持するため、高圧環境下でのリップ部23の緩やかな傾斜をなす変形を促し、接触面圧をより均一化することができる。したがって、前述同様に、シールリング20のリップ部23と回転軸Sとの接触状態を最適な状態に保持することができ、耐摩耗性、耐久性が向上する。
上記実施形態においては、リップ型シール10,10´を、自動車等の空調システムの一部をなすコンプレッサに適用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、回転軸又は軸線方向に往復動する軸を支持するハウジングを備える機械あるいは電気機器等であれば、いずれのものに対しても適用することができる。
Ha 孔
S 回転軸
S1 軸線方向
F 内部空間
10,10´ リップ型シール
20 シールリング
21 嵌着部
22 円筒部
23 リップ部
23a 基部(領域L1)
23b 先端部(領域L2)
23b´ 非接触となり始める領域
23b´´ 先端
24 金属環
24a フランジ部
24b カシメ部
30,30´ サポートリング
30a 円孔
31 接合部
32 円筒部
33,33´ 支持部
33a 先端領域
40 第2シールリング
41 接合部
42 リップ部
43 螺旋切込み
50 第2サポートリング
50a 円孔
51 接合部
52 支持部
60 スペーサリング
61 金属環
62 環状パッキン
70 ホルダリング
80 第3シールリング
81 接合部
82 リップ部
90 第3サポートリング
90a 円孔
91 接合部
92 支持部
Claims (3)
- 所定のハウジングに支持された軸の外周を密封するリップ型シールであって、
前記ハウジングの孔に嵌着される環状の嵌着部,前記嵌着部から径方向内側に向けて略円錐環状に延出して前記軸に当接し得るリップ部,を画定するように弾性材料により形成されたシールリングと、
前記嵌着部に接合される環状の接合部,前記軸を通す孔を画定すると共に前記接合部側から前記リップ部の途中の領域まで延出して前記リップ部を径方向内側から支持する環状の支持部,を有するサポートリングと、を含み、
前記リップ部は、前記支持部と接触した範囲において略同一の肉厚に形成された基部と、前記基部に続けて一体的に形成され前記支持部と非接触となり始める領域から先端に向かって徐々に薄肉となる先細りの断面形状をなすと共に前記リップ部全体の略半分の長さに形成された先端部とを有し、
前記リップ部は、前記支持部と非接触となり始める領域の肉厚をT1、前記先端の肉厚をT0とするとき、α=T0/T1の値が、0.3〜0.7となるように形成され、かつ、前記先端の内径をD0、前記軸の外径をD1とするとき、β=(D1−D0)/D1の値が、0.03〜0.15となるように形成されている、
ことを特徴とするリップ型シール。 - 前記サポートリングの支持部は、前記リップ部側に向けて凸状となるように湾曲して形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリップ型シール。 - 前記シールリングのリップ部は、その材質硬度が、JIS(DuroA)硬度で、85度〜98度である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリップ型シール。
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