本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、及びその製造方法に関する。さらに、当該ポジ型感光性樹脂組成物からなるレリーフパターンの形成方法に関する。
近年、半導体装置の高集積化、高信頼性化等に伴って、回路配線等の層間絶縁膜、表面保護膜、マルチチップモジュール等として用いられる材料として、無機材料に代わり高耐熱性樹脂が脚光を浴びている。高耐熱性樹脂の中でもポリベンゾオキサゾール樹脂は、熱的、機械的強度等の諸特性に優れるのみならず、同じく高耐熱性樹脂であるポリイミド樹脂に比して一般的に低誘電率であるため、特に注目を集めている。
ポリベンゾオキサゾール樹脂は、一般に感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」ともいう)の形で供される。当該組成物をシリコンウェハー等の支持体に塗布し、活性光線の照射、現像によるパターニング、及び熱環化処理を施すことにより、支持体上に微細加工された耐熱性樹脂組成物皮膜を容易に形成させることができる。また、感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物は、現像液としてアルカリ性水溶液によりパターン形成が可能であるので、昨今の環境負荷低減の観点からも、大きな期待が寄せられている。
感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、光活性成分であるジアゾキノン化合物より構成されるものが開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。この感光性樹脂の現像メカニズムは、未露光部の感光性ジアゾキノン化合物がアルカリ性水溶液に不溶であるのに対し、露光することにより感光性ジアゾキノン化合物が化学変化を起こし、インデンカルボン酸化合物となってアルカリ性水溶液に可溶となることを利用したものである。この露光部と未露光部の間の現像液に対する溶解速度の差を利用し、未露光部からなるポジ型のレリーフパターンの形成が可能となる。
本発明者である上田、福川らは、先に、下記式(4)で表されるポリヒドロキシアミド(以下、「PAHA」と略記する)に、下記式(5)で示される1,3,5−トリス[(2−ビニロキシ)エトキシ]ベンゼン(以下、「TVEB」と略記する)を加えて、さらに熱を加えることによりネットワーク状に架橋させたポリベンゾオキサゾール前駆体と、感光剤として下記式(6)のジフェニルヨードニウム 9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルフォネート(以下、「DIAS」と略記する)を含有するポジ型の感光性樹脂組成物を提案した(非特許文献1)。
このポジ型感光性樹脂の現像メカニズムは、未露光部のポリベンゾオキサゾール前駆体がアルカリ性水溶液に不溶であるのに対し、露光することにより、下記式(7)に示すように保護基が脱離してPAHAとなり、アルカリ性水溶液に可溶となることを利用したものである。化学増幅型であるため、効率よくレリーフパターンの形成が可能となる。
このポジ型感光性樹脂組成物によれば、365nmのi線に99%の透過性を有し、かつ低誘電率化を実現することができた。また、PAHAのフェノール性水酸基への保護基導入工程を加熱により行っているので、保護基導入に伴う製造工程の短縮化を図ることもできた。
なお、後述する課題を解決する手段で限定するtert−ブトキシカルボニル基を、フェノール性水酸基の保護基として用いる例が開示されている(非特許文献2)。これについては、後述する。また、特許文献3〜6及び非特許文献3については、後述する実施形態において説明する。
特公平1−46862号公報
特開平7−281441号公報
欧州特許第264678号明細書
欧州特許第291779号明細書
特開2004−341248号公報
特開平5−197153号公報
Fukukawa, K.; Ueda, M. etc Macromolecules 2004, 37, 8256.
Ueda, M. etc J. Photopolym. Sci. Technol. 2003, 16, 287.
Fukukawa, K.; Ueda, M. etc Chem.Lett. 2004,Vol 33, No.10 1342.
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術においては、保護基の導入率を厳密に制御することが難しかった。保護基の導入率を一定に保つためには、反応条件のコントロールを厳密に行う必要があるためである。
工業的利用の際には、リソグラフィー特性の再現性を高めることが重要であり、そのためにはポリベンゾオキサゾール前駆体に導入する保護基の導入率を一定に保つことが極めて重要な課題である。それと同時に、上述したように製造工程の短縮化を図ることも極めて重要な課題である。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造工程の短縮化が可能であって、かつ、フェノール性水酸基に導入する保護基の導入率の制御が容易なポジ型感光性樹脂組成物、及びその製造方法、並びに、当該ポジ型感光性樹脂組成物からなるレリーフパターンの形成方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下記態様において上記目的を達成できることを見出し、本件発明を完成するに至った。
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物の製造方法は、下記一般式(1)で表されるビス−o−アミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物を重縮合反応し、得られた重縮合物を溶媒に溶解して溶液を調製し、1気圧下での沸点が130℃以下である塩基性触媒下、前記重縮合物中のフェノール性水酸基の少なくとも一部に、tert−ブトキシカルボニル基を導入し、前記溶液に、活性光線の照射により酸を発生する光酸発生剤を配合するものである。
式中、Xは4価の芳香族基を示し、−NH2と、−OH基は互いに同一の芳香環上の隣り合った炭素に結合している。
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物の製造方法によれば、塩基性触媒の除去工程を行わずに保護基を導入したポリベンゾオキサゾール前駆体の反応溶液に、直接光酸発生剤を加えて、ポジ型感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」ともいう)を調製することができる。1気圧下(0.1GPa)における沸点が130℃以下の塩基性触媒を用いているので、ポリベンゾオキサゾールのレリーフパターン等を形成する工程中に、容易に塗膜中から塩基性触媒を揮発せしめることができるためである。また、tert−ブトキシカルボニル基(以下、「t−BOC基」とも言う)の分解物(二酸化炭素とイソブテン)においても、揮発性が高いのでポリベンゾオキサゾールのレリーフパターン等を形成する際に、容易に塗膜中から揮発せしめることができる。
また、上記非特許文献1に記載の保護基の反応点は3つであったが、tert−ブトキシカルボニル基の反応点は一つであるので、保護基導入によるポリマーのネットワーク構造を招来することがない。このため、光酸発生剤の膜内拡散や、保護基の脱離機構が複雑にならずに容易に、酸によりt−BOC基を脱離せしめることが可能となる。また、上記非特許文献1においては熱により保護基を導入しているので、保護基の導入率を厳密に制御することが困難であったが、本態様においては、触媒を用いているので製造条件の制御が容易である。
なお、上記非特許文献2には、前述したように保護基としてt−BOC基を導入したポリベンゾオキサゾール前駆体の例が開示されている。フェノール性水酸基へのt−BOC基の導入は、非特許文献2に記載のように触媒として4−ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と略記する)が一般的に用いられる。DMAPを触媒として用いた場合、保護基導入後にDMAPを除去するためのポリマーの単離、精製工程を行わなければならなかった。DMAPは、常温で固体であり沸点が高いためである。一方、本実施形態によれば、前述したようにt−BOC化せしめた反応溶液に光酸発生剤を直接配合せしめることにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。従って、製造工程の簡便化を図ることができる。
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物は、下記式(3)の繰り返し構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体と、活性光線の照射により酸を発生する光酸発生剤と、下記一般式(2)で表される塩基性触媒と、溶媒を含有するものである。
式中、Xは4価の芳香族基を示し、−NHCO基と、OH基及び−OCOOC(CH3)3基とはそれぞれ互いに同一の芳香環上の隣り合った炭素に結合している。なお、上記繰り返し単位の配列順序は問わない。
式中、R1は、同一若しくはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示す。但し、式中の炭素原子の合計の数が8以下である。
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物によれば、ポリベンゾオキサゾール前駆体中のt−BOC基導入の際に用いる塩基性触媒として、上記式(2)のものを用いているので、t−BOC化反応に用いた反応溶液から塩基性触媒を除去することなく、直接光酸発生剤を配合してポジ型感光性樹脂組成物を調製可能である。上記塩基性触媒を用いることにより、ポリベンゾオキサゾールのレリーフパターン等を形成する工程中に、容易に塗膜中から揮発せしめることができるためである。従って、製造工程の短縮化を図ることができる。また、t−BOC基の分解物(二酸化炭素とイソブテン)においても、揮発性が高いのでポリベンゾオキサゾールのレリーフパターン等を形成する際に、容易に塗膜中から揮発せしめることができる。また、塩基性触媒として、3級アミンを用いることにより、類似構造の2級アミン等を用いる場合に比して塩基性度を高めることができる。また、求核攻撃を抑制することができるので、副反応の生成やポリマーの分解を抑制することができる。
本発明に係るレリーフパターンの形成方法は、上記態様のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法により製造されたポジ型感光性樹脂組成物、若しくは上記態様のポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜に、所定のパターン形状のマスクを介して前記光酸発生剤の活性光線を照射し、前記塗膜中に発生した酸により塗膜中に形成された保護基の分解が促進されるように加熱し、前記塗膜の露光部を現像液により除去し、ポリベンゾオキサゾール膜のレリーフパターンを得るように前記塗膜を加熱するものである。
保護基としてt−BOC基を導入したポリベンゾオキサゾール前駆体に、光酸発生剤を配合せしめた感光性樹脂組成物を用いることにより、ポジ型のレリーフパターンを形成することが可能である。具体的には、所望のパターン形状を有するマスクを介して前記組成物の塗膜に光酸発生剤の活性光線を照射することにより酸を発生させ、この酸によりt−BOC基を光分解せしめる。すると、X基に直結する−OCOOC(CH3)3基をアルカリ可溶性基たるフェノール性水酸基に変換することができる。そして、露光部をアルカリ現像液によって除去してパターンを形成することができる。得られたパターンは、加熱により脱水環化して耐熱性に優れるポリベンゾオキサゾールに変換することができる。
本発明によれば、製造工程の短縮化が可能であって、かつ、フェノール性水酸基に導入する保護基の導入率の制御が容易なポジ型感光性樹脂組成物、及びその製造方法、並びに、当該ポジ型感光性樹脂組成物からなるレリーフパターンの形成方法を提供することができるという優れた効果がある。
以下、本発明を適用可能な実施の形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(b)塩基性触媒、(c)溶媒、(d)活性光線の照射により酸を発生する光酸発生剤、を含有するものである。
<(a)ポリベンゾオキサゾール前駆体> 実施形態に係るポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記式(3)の繰り返し単位を有するポリマーである。
式中、Xは4価の芳香族基、Yは2価の有機基を示し、−NHCO基と、OH基及び−OCOOC(CH3)3基とはそれぞれ互いに同一の芳香環上の隣り合った炭素に結合している。なお、上記繰り返し単位の配列順序は問わない。
Y基は、高耐熱性を要する用途の場合には、芳香族基を選定することが好ましく、短波長光により感光性樹脂組成物をパターン形成する場合には、ポリマーの吸収特性の観点から脂肪族基を用いることが好ましい。Xの炭素数は6〜15とすることが好ましい。また、Yが脂肪族基の場合の炭素数は、6〜30とすることが好ましく、芳香族基の炭素数は6〜25とすることが好ましい。ポリベンゾオキサゾール前駆体の好ましい分子量は、5000〜10万であり、より好ましくは1万〜5万である。ポリマーの固有粘度は、0.3〜1.0dL/gとすることが好ましい。
実施形態に係るポリベンゾオキサゾール前駆体において、その繰り返し単位中のX基は、原料として用いる下記式(1)で示されるようなビス−o−アミノフェノール類に由来する。
式中のXは、上述したとおりである。
実施形態で用いることのできるビス−o−アミノフェノールの具体的な例としては、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンなどを挙げることができる。
ビス−o−アミノフェノールのうち特に好ましいものは、Xが下記式(8)から選ばれる場合である。
これらのビス−o−アミノフェノールは単独あるいは混合して使用することができる。なお、上記具体例は一例であり、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを用いることができることは言うまでもない。
本実施形態に係るポリベンゾオキサゾール前駆体において、その繰り返し単位中のY基は、原料として用いる下記式(9)で示されるようなジカルボン酸類に由来する。
式中のYは、上述したとおりである。
Yが2価の芳香族基の場合の例としては、下記式(10)のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Yが2価の脂肪族基の場合としては、例えば、1−シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シスシクロプロパンジカルボン酸、1,2−トランスシクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シスシクロブタンジカルボン酸、1,2−トランスシクロブタンジカルボン酸、1,3−シスシクロブタンジカルボン酸、1,3−トランスシクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シスシクロペンタンジカルボン酸、1,2−トランスシクロペンタンジカルボン酸、1,3−シスシクロペンタンジカルボン酸、1,3−トランスシクロペンタンジカルボン酸、1,2−シスシクロヘキサンジカルボン酸、1,2−トランスシクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シスシクロヘキサンジカルボン酸、1,3−トランスシクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シスシクロヘキサンジカルボン酸、及び、1,4−トランスシクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができる。また、橋かけ環式炭化水素を含むジカルボン酸も好適に用いることができる。橋かけ環式炭化水素には、例えば、アダマンタンジカルボン酸、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンジカルボン酸などが挙げられる。さらに、スピロ炭化水素系のジカルボン酸なども含まれる。ジカルボン酸は単独または複数用いることができる。
また、Yとして下記式(11)のものを用いてもよい。
これらのジカルボン酸は単独あるいは混合して使用することができる。なお、上記具体例は一例であり、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを用いることができることは言うまでもない。
上記式(3)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体において、その末端基を特定の有機基で封止することも本発明の範囲に含まれる。封止基としては、例えば、上記特許文献6に記載されているような不飽和結合を有する基が挙げられる。ポリベンゾオキサゾール前駆体末端を、これらで封止した場合、加熱硬化後の塗膜の機械物性(特に伸度)や、レリーフパターン形状が良好となることが期待される。このような封止基のうちの好適例としては、以下の式(12)ものが挙げられる。
(ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法) まず、保護基としてt−BOC基を導入する前のポリ(ヒドロキシアミド)の具体的な合成方法に関して説明する。本実施形態に係るポリ(ヒドロキシアミド)の具体的な合成方法に関しては、公知の方法(例えば、上記特許文献3〜5に記載の方法)を採用することができる。
具体例としては、ビス−o−アミノフェノール化合物とジカルボン酸化合物を縮合剤の存在下で重縮合反応させることにより得ることができる。反応に用いるビス−o−アミノフェノール化合物及びジカルボン酸化合物の種類により、多少の違いはあるが、以下の各条件で行うことが好ましい。
重縮合反応を行う際のビス−o−アミノフェノール化合物と、ジカルボン酸化合物のモル比は、1.0付近であることが好ましいが、目的とするポリ(ヒドロキシアミド)の分子量に応じて0.7〜1.3の範囲で用いることができる。
縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC),1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド,(2,3−ジヒドロー2−チオキソ−3−ベンズオキサゾリル)ホスホン酸 ジフェニル,オキシ塩化リンなどを用いることができる。縮合剤は,ビス−o−アミノフェノール化合物に対して,重縮合反応を効率的に進行せしめる観点から等量以上加えることが好ましい。縮合剤は,1種類で用いても複数種類を用いてもよい。反応温度は,0〜80℃の範囲で行うことが好ましい。
上記反応には,反応溶媒を用いることができ,例えば,反応溶媒としては,トルエン,アニソール,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドン,クロロベンゼン,オルト−クロロベンゼン,及びジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。ただし,これらに限定されない。また,反応は無溶媒で行うことも可能である。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の別の製造方法として、以下の方法により製造してもよい。すなわち、ビス−o−アミノフェノール化合物と、ジカルボン酸ジクロライド化合物とを重縮合反応させることにより得ることができる。重縮合反応を行う際のビス−o−アミノフェノール化合物とジカルボン酸ジクロライド化合物のモル比は,1.0付近であることが好ましいが、目的とするポリ(ヒドロキシアミド)の分子量に応じて例えば、0.7〜1.3の範囲で用いることができる。
上述したように,ビス−o−アミノフェノール化合物と,ジカルボン酸ジクロライド化合物の重縮合反応は,塩基性化合物の存在下に行う。塩基性化合物は,ビス−o−アミノフェノール化合物に対して,重縮合反応を効率的に進行せしめる観点から等量以上加えることが好ましい。塩基性化合物は,1種類で用いても複数種類を用いてもよい。反応温度は,0〜50℃の範囲で行うことが好ましい。上記反応には,反応溶媒を用いることができ,反応溶媒としては,上記と同様のものを用いることができる。
次に、上記ポリ(ヒドロキシアミド)のフェノール性水酸基にt−BOC基を導入する方法について説明する。
実施形態に係る上記一般式で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体は、ポリ(ヒドロキシアミド)中のフェノール性水酸基にジ−tert−ブチルジカーボネートを反応させることにより得ることができる。これにより、フェノール性水酸基が、t−BOC基により保護される。フェノール性水酸基とt−BOC基の合計に対するt−BOC基の割合は、8〜70mol%であることが好ましい。8mol%未満であると、後述するレリーフパターン形成工程中の現像プロセスの際に露光部と未露光部の溶解度差が大きく取れない恐れがある。また、70mol%を超えると、光酸発生剤をより多く配合する必要が生じ、感度が低くなってしまうという恐れがある。より好ましい割合は、10〜50mol%であり、さらに好ましい割合は15〜25mol%である。
なお、t−BOC化反応を進行させる際に用いることができる塩基性触媒及び溶媒については、以下に説明する。また、t−BOC基を導入する方法としては、酸クロライド化合物と反応させる方法も知られているが、後処理工程が必要となってしまうため、本件発明においては酸クロライドを用いずに合成する必要がある。
<(b)塩基性触媒> 本実施形態においてt−BOC化反応を進行させる際に用いることができる塩基性触媒としては、1気圧下(0.1GPa)の環境下で、沸点が130℃以下のものであれば、本発明の趣旨に反しない限り特に限定されない。有機塩基であっても、無機塩基であってもよい。本発明の塩基性触媒の1気圧下でのより好ましい沸点は110℃以下であり、さらに好ましい沸点は90℃以下である。沸点の下限値は、t−BOC化反応を行うことが可能な温度範囲であれば特に限定されないが、製造工程の簡便化の観点から−10℃以上であることが好ましい。感光性樹脂組成物は、基材上に塗布して乾燥させるが、一般には後述するように加熱乾燥が行われる。この加熱温度にて塩基性触媒が揮発可能なものであることが理想的である。
感光性樹脂組成物中に塩基性触媒が含有されていても、1気圧下(0.1GPa)における沸点が130℃以下の塩基性触媒を用いているので、ポリベンゾオキサゾールのレリーフパターン等を形成する工程中に、容易に塗膜中から揮発せしめることができる。また、t−BOC基の分解物(二酸化炭素とイソブテン)においても、揮発性が高いのでポリベンゾオキサゾールのレリーフパターン等を形成する際に、容易に塗膜中から揮発せしめることができる。
塩基性触媒の好ましい例としては、下記式(2)の3級アミンを挙げることができる。
式中、R1は、同一若しくはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基を示す。但し、式中の炭素数の合計は8以下とする。
具体的な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジプロピルメチルアミン、ジプロピルエチルアミンなどが挙げられる。
塩基性触媒として、3級アミンを用いることにより、類似構造の2級アミン等を用いる場合に比して塩基性度を高めることができる。また、求核攻撃を抑制することができるので、副反応の生成やポリマーの分解を抑制することができる。塩基性触媒の添加量としては、t−BOC化剤、例えば、ジ−tert−ブチルジカーボネートに対して5〜10mol%加える。
上記非特許文献2に記載のように、フェノール性水酸基のt−BOC化に通常用いられるDMAPを用いる場合には、得られるポリベンゾオキサゾール前駆体を単離、精製しなければならず、後処理工程が煩雑であった。一方、本実施形態によれば、前述したようにt−BOC化反応後に後処理工程を経ずに、その反応溶液に直接光酸発生剤を配合してポジ型感光性組成物を調製できるので、製造工程の短縮化を図ることができる。なお、感光性樹脂組成物の粘度調製のために必要に応じて溶媒を添加したり、反応溶液を濃縮させたりすることは適宜行うことができる。
<(c)溶媒> t−BOC化のための反応溶液、及び感光性樹脂組成物に含有する兼用の溶媒としては、t−BOC化反応に用いることができる溶媒であって、ポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤、他の添加剤を溶解させるものであれば特に制限はない。この他、反応溶媒として用いることができないものであっても、感光性樹脂組成物を調製する際に添加することにより感光性樹脂組成物の溶媒として機能し得るものであってもよい。一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等を単独または混合して使用できる。これらの溶媒のうち、非アミド系溶媒がフォトレジストなどへの影響が少ない点から好ましく、具体的なより好ましい例としてはγ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いても構わない。
<(d)光酸発生剤> 実施形態に係る光酸発生剤は、活性光線の照射により酸を発生するものである。ここで、活性光線とは、可視光線、紫外線、電子線、X線等をいう。特に、365nm、435nmの紫外線が好ましい。使用する光酸発生剤の量は、膜厚、光酸発生剤の種類、ポリベンゾオキサゾール前駆体の種類等に応じて適宜選択する。感光時の感度、解像度を良好とする観点から、ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対し、光酸発生剤の添加量を0.1〜30重量部とすることが好ましく、1〜20重量部とすることがより好ましく、5〜15重量部とすることがさらに好ましい。光酸発生剤の添加量が0.1重量部未満では、酸によるt−BOC基の分解効果が十分でない恐れがある。また、光酸発生剤の添加量が30重量部以上では、感度が低下する恐れがある。
波長365nmのi線を利用して後述するレリーフパターンの形成を行うためには、吸収極大を310〜390nmに有するものを用いることが好ましく、より好ましくは330〜370nmに有するものを用いることである。365nmのi線とする場合の、光酸発生剤としては、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、キノンジアジド化合物、スルホン酸エステル化合物などを用いることができる。光酸発生剤は、単独又は2種以上を併用することができる。また、他の増感剤と組み合わせて使用してもよい。
前記オニウム塩の具体例としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩などを挙げることができる。特に好ましい例としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜8)、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩を挙げることができる。前記オニウム塩の対アニオンとしては、例えば、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが好ましい。
前記ハロゲン化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物が挙げられる。特に好ましい例としては、トリクロロメチルトリアジン、ブロモアセチルベンゼンを挙げることができる。前記キノンジアジド化合物としては、例えば、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などを挙げることができる。
前記スルホン酸エステル化合物としては、1)フェノール性水酸基を有する芳香族化合物、2)アルキルスルホン酸、及び3)芳香族スルホン酸とのエステルを挙げることができる。このうち、上記1)のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、例えば、フェノール、レゾルシノー ル、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジホドロキシナフタレンなどが挙げられる。また、上記2)のアルキルスルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸等を好適に用いることができる。さらに、上記3)の芳香族スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、ナフチルスルホン酸、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルなどを挙げることができる。
上記光酸発生剤の中でも、特に、芳香族スルホン酸エステル、芳香族オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネートは、高感度の点で好ましく、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩は、未露光部に適度な溶解阻止効果が期待できる点で好ましい。
ごく最近においては、ポリベンゾオキサゾール前駆体からポリベンゾオキサゾールを得る工程を低温で行う技術が切望されている。その理由は、以下の通りである。すなわち、第1に、電子部品や半導体装置等に用いられる材料が多様化し、十分なオキサゾール化を達成するための高温(例えば、350℃)のプロセスに耐えられない電子部品等が出てきたこと、第2に、回路配線等がより高精細化し、高温プロセスに起因する回路配線等の歩留まりの低下も懸念されること、第3に、バンプ形成プロセスでは金属薄膜を積層するが、高温プロセスに起因して、バンプと金属薄膜層間において相互拡散が生じる問題があることが挙げられる。
その他、製造の効率化のために、半導体製造に用いるシリコンウェハー等の基材を大径化する傾向が著しいことを挙げることもできる。半導体装置における表面保護膜としてポリベンゾオキサゾール膜を用いる場合、加熱硬化時の温度から室温に戻す際の基材とポリベンゾオキサゾール膜との熱収縮率差によって界面に応力が発生する。そして、この応力は基材を曲げようとする方向に働く。この基材の屈曲量は、基材の径が大きいほど大きい。屈曲量が大きくなりすぎると製造プロセス上の不具合が生じたり、ポリベンゾオキサゾール膜にクラックが発生する恐れがある。従って、ポリベンゾオキサゾール膜を得るための加熱温度をできるだけ低く設定することが好ましい。
上記理由により、ポリベンゾオキサゾールを低温プロセスで得ることができる光酸発生剤であることが特に好ましい。このような例として、活性光線の照射により酸を発生する特性に加えて、ベンゾオキサゾール化せしめる加熱温度にて(熱により)酸を発生する光酸発生剤を挙げることができる。このような光酸発生剤を用いることにより、後述する現像工程後にパターンとして残った未露光部において、熱により酸を発生させて、t−BOC基を効率的に分解してフェノール性水酸基に変換せしめることができる。その結果、ベンゾオキサゾール化反応を従来より低温で達成することができる。このような例としては、スルホン酸を発生する化合物を挙げることができる(非特許文献3参照)。具体例としては、下記式(13)のものを挙げることができる。
上記式(13)において,Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基を挙げることができる。なお、上記光酸発生剤は一例であり、活性光線の照射により酸を発生可能なものであれば上記のものに限定されないことは言うまでもない。
光酸発生剤の活性光線を照射した際に発生する分解物(光酸発生剤及びt−BOC基の分解物)の50%熱重量減少温度は、感光性樹脂組成物を基材上に塗布して塗膜を形成したときの塗膜中のポリベンゾオキサゾール前駆体がポリベンゾオキサゾールに変換するために必要な温度より低い温度であることが好ましい。塗膜中から、分解物を低温プロセスにて揮発させることができるためである。なお、ここでいうポリベンゾオキサゾールとは、塗膜中において部分的に環化が進行したものを指すのではなく、十分に環化されたポリベンゾオキサゾールからなる膜をいう。
感光性樹脂組成物の塗膜に活性光線を照射した際、厚み方向に均一に光酸発生剤の分解が進行するように、ポリベンゾオキサゾール前駆体や光酸発生剤の組み合わせや添加量を、塗布膜厚等に応じて適宜選択する。低露光量化を達成し、厚膜化にも対応可能なよう、ポリベンゾオキサゾール前駆体は、活性光線の波長に対して吸収が小さいものを用いることが好ましい。ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子設計により、吸収プロファイルを適宜変更することができる。例えば、ポリベンゾオキサゾール前駆体の吸収領域を短波長シフトさせるためには、芳香族基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を用いる場合、上記X又は/及びY等の共役系を短くすること、電荷移動錯体の形成を妨げること等が有用である。また、Y基として脂肪族基を用いることが有用である。
光酸発生剤は、活性光線の照射により分解して光吸収波長がシフトするものが特に好ましい。このようなものを用いることにより、効率的に光酸発生剤の分解を促進できるからである。光酸発生剤が活性光線の照射により分解しても光吸収波長が略同一である場合には、活性光線波長に対して、感光性樹脂組成物を基体上に塗布して乾燥後に形成される塗膜の活性光線波長における膜厚10μm当たりの吸光度が、1.5以下となるようにすることが好ましい。このようにすることにより、パターンを良好に形成することができる。
<その他の添加剤> 実施形態に係る感光性組成物には、必要に応じて、従来感光性樹脂組成物の添加剤として用いられている染料、界面活性剤、安定剤、基板との密着性を高めるための接着助剤、架橋剤等を添加することも可能である。
上記染料の具体例としては、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等が挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリグリコール類あるいはその誘導体からなる非イオン系界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友3M社製)、メガファック(商品名、大日本インキ化学工業社製)あるいはスルフロン(商品名、旭硝子社製)等のフッ素系界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業社製)、DBE(商品名、チッソ社製)、グラノール(商品名、共栄社化学社製)等の有機シロキサン界面活性剤が挙げられる。また、接着助剤としては、例えば、アルキルイミダゾリン、酪酸、アルキル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルメチルエーテル、t−ブチルノボラック、エポキシシラン、エポキシポリマー等、及び各種シランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤の具体的な好ましい例としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、2−(トリアルコキシシリルエチル)ピリジン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシランもしくは3−アミノプロピルジアルコキシアルキルシラン並びに酸無水物もしくは酸二無水物の反応物、3−アミノプロピルトリアルコキシシランまたは3−アミノプロピルジアルコキシアルキルシランのアミノ基をウレタン基またはウレア基に変換したものなどを挙げることができる。なお、この際のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが、酸無水物としてはマレイン酸無水物、フタル酸無水物などが、酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物などが、ウレタン基としてはt−ブトキシカルボニルアミノ基などが、ウレア基としてはフェニルアミノカルボニルアミノ基などが挙げられる。
架橋剤としては1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、オルソセカンダリーブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、アセチルアセトンアルミ(III)塩、アセチルアセトンチタン(IV)塩、アセチルアセトンクロム(III)塩、アセチルアセトンマグネシウム(II)塩、アセチルアセトンニッケル(II)塩、トリフルオロアセチルアセトンアルミ(III)塩、トリフルオロアセチルアセトンチタン(IV)塩、トリフルオロアセチルアセトンクロム(III)塩、トリフルオロアセチルアセトンマグネシウム(II)塩、トリフルオロアセチルアセトンニッケル(II)塩などの金属キレート剤、ニカラックMW−30MH、MW−100LH(商品名、三和ケミカル社製)、サイメル300、サイメル303(商品名、三井サイテック社製)などのアルキル化メラミン樹脂がある。
<感光性樹脂組成物のレリーフパターンの製造方法> 次に、上記感光性樹脂組成物を用いたレリーフパターンの製造方法について説明する。
まず、ステップS1として感光性組成物を基材上に塗布し、乾燥することにより塗膜を得る。感光性組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応が起こらないような条件で、かつ、光酸発生剤が熱による分解を起こさない温度範囲で行うことが望ましい。さらに、塩基性触媒の揮発温度以上で行うことが理想的である。用いるポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤により、適宜、風乾、あるいは加熱乾燥の条件を設定する。一般的には、20℃〜140℃で1分〜1時間の条件で行われる。好ましくは、ホットプレート上で1〜5分行う。真空乾燥を行う場合は、室温で1分〜1時間の条件で行うことができる。
基材としては、半導体が形成されたシリコンウェハーや、ガラスエポキシ樹脂やビスマレイミド−トリアジン樹脂をコアの基板材料として用いるパッケージ用基板等を用いることができる。また、セラミック基板、アルミ基板等を用いてもよい。形態の感光性樹脂組成物を、半導体装置のパッシベーション保護膜として用いる場合には、例えば、トランジスター、熱酸化膜、電極等が形成されたシリコンウェハー(以下、単に「ウェハー」ともいう。)を用いる。
次に、ステップS2として、所望のパターンを有するフォトマスクを介して塗膜を露光する。露光光線は、光酸発生剤の活性光線、すなわち光酸発生剤を分解させることができるものを用いる。上述したように、適宜増感剤を用いて調整ことができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等を用いることができる。これにより、光酸発生剤が分解して酸が発生する。光線としては、例えば、紫外線、可視光源や、X線、電子線を挙げることができる。
続いて、ステップS3として、塗膜の加熱を行う。塗膜の加熱方法としては、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応が起こらないような条件で、かつ、光酸発生剤が熱による分解を起こさない温度範囲で行うことが望ましい。用いるポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤により、適宜、風乾、あるいは加熱乾燥の条件を設定する。一般的には、100℃〜140℃で1分〜1時間の条件で行われる。好ましくは、ホットプレート上で1〜5分行う。
次いで、ステップS4として塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の露光部分を除去して、基材上にポリベンゾオキサゾール前駆体からなるパターンを形成することができる。現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、ディップ法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、アルカリ可溶性ポリマーを溶解除去するものであり、アルカリ化合物を溶解したアルカリ性水溶液を用いる必要がある。現像液中に溶解されるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物のいずれであってもよい。
無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
また、有機アルカリ化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、上記アルカリ性水溶液に、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤、保存安定剤、樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン塗膜を得る。リンス液としては、蒸留水、脱イオン水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、酢酸水溶液等の酸性水溶液を用いることもできる。
その後、ステップS5としてパターン化された塗膜を加熱する。加熱温度は、ポリベンゾオキサゾールのパターンを得るように設定する。このようにしてポリベンゾオキサゾール構造を有するレリーフパターンを得る。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。例えば、不活性ガス中で、150〜300℃で5〜120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、150〜280℃であり、さらに好ましい範囲は180〜250℃である。
本発明に係るポジ型感光性樹脂組成物は、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、あるいはバンプ構造を有する装置の保護膜として用いることができる。また、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜等としても好適に利用できる。
次に、実施例によりさらに本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下に記載する試薬等は、特に断らない限りは一般に市販されているものである。また、ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、GPC測定(Tosoh HLC-8120)を行い、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することにより算出した。赤外吸収スペクトル測定(IR)は、HORIBA FT-210フーリエ変換赤外分光光度計を、核磁気共鳴吸収スペクトル測定(1H NMR,13C NMR)は、Bruker GPX 300スペクトロメーター1H NMR(300MHz)、13C NMR(75MHz)を用いた。また、熱重量測定(TGA)は、SEIKO EXSTAR6000TG/DTA6300を用いて、昇温速度2.5℃/min、窒素雰囲気下の条件で測定した。フィルム膜厚測定は、Veeco Instruments Inc. Dektak3 systemを用いて行った。
本実施例においては、ポリベンゾオキサゾール前駆体として下記式(4)のポリ(ヒドロキシアミド)(以下、「PAHA」という)のフェノール性水酸基の少なくとも一部をt−BOC基により保護したもの(以下、「PAtBA」という)を用いた。また、光酸発生剤として、下記式(14)に記載の(5−プロピルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェンー2−イリデン)−2−(メチルフェニル)アセトニトリル(以下、「PTMA」という)を用いた。
光酸発生剤であるPTMAは、チバスペシャリティケミカルズ社から提供を受けたもので、冷蔵保存したものを精製せずに使用した。ジ−tert−ブチルジカーボネートは、純度97%のアルドリッチ社製のものを、ジエチルメチルアミンは同じくアルドリッチ社製、シクロヘキサノン及び2−メトキシエタノールは和光社製のものを用いた。
<ポリベンゾオキサゾール前駆体のモデル化合物> ポリベンゾオキサゾール前駆体のモデル化合物を合成し、t−BOC化反応の進行状況をNMR測定により追跡した。
ポリベンゾオキサゾール前駆体のモデル化合物として、下記式(15)の5,5'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス−(2−tert−ブトキシカルボニルオキシアダマンタンカルボアニリド)(以下、「PAtBAモデル化合物」という)を以下の手順で合成した。
まず、下記式(16)のポリ(ヒドロキシアミド)のモデル化合物である5,5'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス−(2−ヒドロキシアダマンタンカルボアニリド)を上記非特許文献1に記載の方法により合成した。
具体的には、リチウムクロリド0.653g(15.4mmol)と4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス−(o−アミノフェノール)2.56g(7.00mmol)をNMP(20mL)に溶解させ、この中に氷冷下でアダマンタン−1−カルボニルクロリド2.92g(14.7mmol)を加えた。反応溶液を上記温度で3時間攪拌させ、その後水の中に注ぎ込んだ。沈殿した固体を濾過し、100℃で8時間乾燥させた。得られた固体はトルエン−THFにより再結晶させた。
得られた化合物の測定結果は以下のとおりであり、上記式(16)と一致することを確認した。
・収率:64%(3.1g)
・昇華点:348−350℃
・1H NMR(DMSO-d6, δ, ppm):10.32 (s, 2H, OH), 8.39 (s, 2H, NHCO), 8.11 (s, 2H, Ar), 6.87 (dd, J = 12.6, 8.4 Hz, 4 H, Ar), 2.01 (s, 6 H, CH), 1.88 (s, 12H, COC(CH2)3), 1.69 (s, , 12 H, CHCH2CH)
・元素分析:Calcd for C37H40F6N2O4: C, 64.34; H, 5.84; N, 4.06; Found: C, 64.62; H, 6.07; N, 4.07.
上記により得られた5,5'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス−(2−ヒドロキシアダマンタンカルボアニリド)0.256g(0.371mmol)とジ−tert−ブチルジカーボネート0.170g(0.779mmol)をシクロヘキサノン1.46g(15wt%に相当)に溶解し、これにジエチルメチルアミン9.4μL(0.0779mmol)を加えた。その反応溶液を室温下で10時間攪拌させた。溶液の一部を0、1、3、5、8時間の時点で1H NMR測定のために取り出した。室温下で10時間攪拌させた後、反応溶液を水に注ぎ込み、沈殿物を濾過した。得られた沈殿物を水で洗浄し、減圧下80℃で乾燥させた。得られた白色固体はヘキサンにより再結晶させた。
得られたPAtBAモデル化合物の測定結果は以下の通りであり、上記式(15)と一致することを確認した。
・収率71%(0.235g)
・IR (KBr, ν, cm-1): 2935 (Ali), 2857 (Ali), 1766 (C=O), 1650 (C=O), 1640 (Ar), 1253 (CF3)
・1H NMR(DMSO-d6, δ, ppm):1.47 (s, 18H, C(CH3)3), 1.69 (s, 12 H, CHCH2CH), 1.88 (S, 12 H, COC(CH2)3), 2.00 (s, 6H, CH), 7.11 (d, J = 9.3 Hz, 2H, Ar), 7.35 (d, J = 8.7 Hz, 2H, Ar), 7.59 (s, 2H, Ar), 8.89 (s, 2H, NHCO)
・13C NMR (DMSO-d6, δ, ppm):27.3, 28.1, 28.5, 36.8, 39.7, 42.2, 85.2, 121.9, 125.0, 126.9, 130.5, 131.6, 141.7, 151.0, 176.2
・元素分析:Calcd for C47H56F6N2O8: C, 63.36; H, 6.34; N, 3.14; Found: C, 63.34; H, 6.64; N, 3.10.
図1は、上記ジエチルメチルアミンを添加した反応溶液を一定時間ごとにサンプルして1H NMR測定したときのスペクトルである。同図に示すように、反応開始から8時間後のサンプルでは、ジ−tert−ブチルジカーボネートのピーク(1.47ppm)が消失し、式(15)で示されるPAtBAのモデル化合物のtert−ブトキシカルボニルのシングルピーク(1.48ppm)、副生成物のtert−ブチルアルコールのピーク(1.11ppm)が出現することを確認した。これにより、塩基性触媒存在下でt−BOC化反応がスムーズに進行することが明らかである。
<ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成> 本実施例に係るポリベンゾオキサゾール前駆体として以下のものを合成した。まず、ポリ(ヒドロキシアミド)として上記式(4)のもの(以下、「PAHA」という)を上記非特許文献1に記載の方法により合成した。
具体的には、窒素雰囲気下、リチウムクロリド0.0933g(2.20mmol)と4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス−(o−アミノフェノール)0.366g(1.00mmol)をNMP(1.5mL)に溶かし、氷冷下、その溶液に1,3−アダマンタンジカルボニルクロライド0.261g(1.00mmol)を一気に加えた。次いで、反応溶液を、同温度、窒素雰囲気下で12時間攪拌させ、その後反応溶液を水の中に注ぎ込んだ。沈殿したポリマーを濾過、水で数回洗浄した後に減圧乾燥させた。得られたポリマーの収率はおおよそ定量的(>98%)であった。
続いて、PAHAのフェノール性水酸基をt−BOC基により100%保護されたポリマー(以下、「PAtBA−100」という)を以下の手順により合成した。まず、PAHA0.771g(OH基濃度:2.78mmol)、ジ−tert−ブチルジカーボネート0.609g(2.79mmol)をシクロヘキサノン4.37g(15wt%に相当)に溶解させ、その中にジエチルメチルアミン67.3μL(0.556mmol,PAHAの水酸基の0.200当量に相当)を加えた。室温下で攪拌を10時間継続した。リソグラフィー特性評価は、この反応溶液に光酸発生剤をそのまま加えて感光性樹脂組成物を調製した。また、後述するその他の物性評価においては、上記反応溶液を水の中に注ぎ込み、濾過して得られた粉末を水で洗浄し、真空下で80℃にて乾燥したものを用いた。
PAHAのフェノール性水酸基のt−BOC化率が20%、35%、50%、70%保護されたポリマーについても上記と同様の手順により合成した。すなわち、PAHAのフェノール水酸基に対してt−BOC基により保護したい率と同じ添加量となるようにジ−tert−ブチルジカーボネート加えることにより上記各t−BOC化率のものを合成した。以降、ジ−tert−ブチルジカーボネートの添加量がPAHAのフェノール性水酸基含有量に対してxmol%のものを「PAtBA−x」と表記する。
<ポリベンゾオキサゾール前駆体の特性評価>
PAHAにおけるフェノール性水酸基の含有量に対するジ−tert−ブチルジカーボネートの添加量と、t−BOC化率との関係を検討した。一部のフェノール性水酸基を保護したPAtBAは、水により沈降させた後に減圧下で80℃にて乾燥することにより得た。得られたポリマーの保護率を調べるために、TGA分析を行った。
図2に、ジ−tert−ブチルジカーボネートの添加量を変えて合成されたポリマーPAtBA−xのTGAプロファイルを示す。すべてのサンプルにおいて、3つの定常状態が観測された。すなわち、(1)130℃以下、(2)180〜250℃、(3)330℃以上である。130〜180℃の温度範囲はt−BOC基の熱的分解領域であり、第2の定常状態の緩やかな重量減少、及び第3の定常状態までぐらいの温度範囲は、ベンゾオキサゾールの熱的環化反応領域であることが示唆される。
フェノール性水酸基を100%保護したPAtBA−100は、他のポリマーよりも曲線が高温側にシフトしていた。これは、ポリマー中に酸性のフェノールが無いため、環化するための温度がより高温化したものと考えられる。
表1に、上記各PAtBA−xに対する重量減少の計算値及びTGA測定による実測値と、プロトン比の計算値及びNMR測定による実測値を示す。表1に示す重量減少値(wt%)は、190℃における値である。但し、PAtBA−100においては、220℃における値を示している。プロトン比は、t−BOC基のプロトン面積(tBu:1.41−1.43ppm)を、芳香環部分とアミノ基(6.80−9.05ppm)のプロトン面積で除したものである。なお、NMR測定は、DMSO−d
6を用いて40℃の条件化で行った。
表1の結果より、測定された重量減少値と計算値とがよく一致していることがわかる。また、実測されたプロトンの比率は、計算値とほぼ一致しているという結果を得た。これにより、PAHAのフェノール性水酸基の含有量に対するジ−tert−ブチルジカーボネートの添加量に応じたフェノール性水酸基がt−BOC基により保護され、保護基の導入率を簡便に制御することができることがわかった。
上記各PAtBA−xのサンプルについて、2−メトキシエタノール中でUVスペクトルを測定した。濃度は、1.0×10−3mol/lとした。i線である365nmにおいては、いずれのサンプルも99%の高い透過性を示すことを確認した。
<ポジ型感光性樹脂組成物の特性評価>
シクロヘキサノン中にPAtBA−20が15wt%となるように調製し、さらにこのポリマー溶液に、光酸発生剤としてPTMAを配合せしめることにより感光性樹脂組成物Aを得た。PTMAの配合量は、PAtBA−20に対して10wt%となるように調製した。この感光性樹脂組成物の溶液をシリコンウェハー上にスピンコーターにより回転塗布し、80℃で180秒間加熱し、1.8μmの感光性樹脂組成物の塗膜を得た。
次いで、感光性樹脂組成物Aの塗膜に、ライン&スペース(L/S)のパターンを有するフォトマスクを介して50mJ/cm2の365nm(i線)を照射した。光源としては、超高圧水銀灯を用い、フィルターを組み合わせることにより365nmの活性光線を得た。続いて、ホットプレート上で110℃にて300秒間加熱を行った。
その後、2.38%テトラメチルアンモニウム水溶液(以下、「TMAH溶液」と略記する)にて現像を行った。本実施例においては、25℃で45秒間現像を行い、蒸留水を用いてリンスを行った。上記工程後、未露光部のパターンが良好に残存したポジ型のレリーフパターンが得られた。図3は、上記工程により得られたレリーフパターンのSEM写真である。図3に示すように、7.8μmのL/Sパターンが形成されていることを確認した。
次に、本実施例に係る感光性樹脂組成物の塗膜の露光部と未露光部それぞれの溶解速度を検討した。溶解速度は、現像前後における膜厚から算出した。溶解速度の検討は、上記感光性樹脂組成物Aと、ポリマーとしてPAHA(t−BOC化前のポリマー)について行った。塗膜、乾燥条件、用いた現像液、リンス液は上記と同様である。露光は行わずに溶解速度を求めた。その結果、感光性樹脂組成物Aの未露光部の溶解速度は0.1nm/min(すなわち、1Å/min)であった。この値は、PAHAの未露光部の溶解速度に比して1/1000倍小さな値であった。
続いて、上記レリーフパターンに用いた感光性樹脂組成物Aにおいて、60mJ/cm2で露光したサンプルの溶解速度を求めた。その結果、前述した感光性樹脂組成物Aの未露光部の溶解速度に比して、露光部の溶解速度は約320倍高い値であった。
図4は、感光性樹脂組成物Aを用い、露光量以外は上記レリーフパターン形成条件で現像した場合の感度曲線を示したものである。現像時間を45秒に固定し、塗膜の露光部を完全に溶解除去し得る最小露光量を求めた。その結果、最小露光量は、35mJ/cm2であり、このときのコントラストはγD=12.8であった。上記非特許文献1に開示したPAHA/TVED/DIASからなるポジ型感光性樹脂組成物よりも感度が高いという結果を得た。
図5は、感光性樹脂組成物Aの塗膜の各工程のIRスペクトルを示している。図中、(a)は感光性樹脂組成物を塗膜して110℃で5分間加熱した後のサンプル、(b)は110℃で5分間加熱した後に、2.38%TMAH溶液で45秒間現像し、続いて、20wt%の酢酸水溶液を用いて10秒間リンスを行ったサンプル、(c)は現像及びリンス後、さらに150℃で15分間加熱した後のサンプル、(d)は上記現像及びリンス後、さらに200℃で15分間加熱した後のサンプル、(e)は上記現像及びリンス後、さらに250℃で15分間加熱した後のサンプル、(f)はリファレンスであり、窒素雰囲気下、350℃で60分間加熱したものである。
200℃以上の温度で加熱することにより、1045cm−1、1620cm−1のバンドのピークが出現することがわかる(図5中の(d)、(e)、(f)のスペクトル参照)。これらは、ベンゾオキサゾールに由来するピークに相当する。また、アミド基の1645cm−1、PAHAの水酸基3400cm−1の消失も確認できる。(c)のスペクトル(現像及びリンス後に150℃で15分加熱した後のサンプルのスペクトル)は、リファレンスである(f)のスペクトルとは異なり、オキサゾール化は部分的に起こっているにすぎないことがわかる。一方、(e)のスペクトル(現像及びリンス後に、さらに250℃で15分間加熱した後のサンプルのスペクトル)は、リファレンスである(f)のスペクトルと一致することを確認した。これは、250℃の温度で15分間加熱を行えば、感光性樹脂組成物Aのオキサゾール化を十分に達成できることを意味している。
図6は、上記サンプルにおけるオキサゾール化率(以下、単に「環化率」ともいう)を温度に対してプロットしたものである。サンプルとしては、感光性樹脂組成物Aをシリコンウェハー上に塗布して塗膜を形成後、110℃で300秒加熱し、膜厚が0.8μmのものを用いた。得られた試料を、TMAH溶液で現像し、20wt%の酢酸水溶液でリンス後に、ホットプレート上にて、150、200、250、300℃の各温度で15分間加熱している。それぞれの温度履歴後のオキサゾール化率を以下の数式(1)を用いて算出した。リファレンスとしては、窒素雰囲気下、350℃で60分間加熱したものを用いた。
上記数式中、A1045は1045cm−1(オキサゾール基のCO伸縮)における吸光度を示し、A609は609cm−1(シリコンウェハー)の吸光度を示す。また、[samp]、[init]及び[PABO]はそれぞれ、各温度で処理されたサンプル、110℃で加熱乾燥した後のサンプル、及びリファレンス(350℃で処理されたサンプル)の吸収強度であることを意味する。
図6に示すように、本実施例に係る感光性樹脂組成物Aは、従来に比して低温環境下でしかも短時間でポリオキサゾール化を達成できることがわかった。従って、高温プロセスに耐えられない半導体装置等の用途などに特に有用である。また、前述したように、t−BOC基を導入したポリベンゾオキサゾール前駆体の反応溶液に、光酸発生剤を配合することにより感光性樹脂組成物を得ているので製造プロセスの短縮化を達成することができる。
実施例に係るt−BOC化反応の進行状況を示すNMRスペクトル。
実施例に係るPAtBA−xのTGAプロファイル。
実施例に係る感光性樹脂組成物から形成されたレリーフパターンのSEM写真。
実施例に係る感光性樹脂組成物の感度曲線。
実施例に係る塗膜のIRスペクトル。
実施例に係る加熱温度に対する環化率をプロットした図。