JP4643007B2 - 合成樹脂組成物 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、合成樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、体積抵抗率が半導電性領域にあり、この領域内で体積抵抗率を所望の値に厳密に制御することが可能で、かつ、体積抵抗率の再現性が良好であり、さらには、溶融成形による体積抵抗率の変動が少ない合成樹脂組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、このような合成樹脂組成物を成形してなる成形物に関する。本発明の合成樹脂組成物及びその成形物は、静電気の制御、帯電防止、電磁波シールド、塵埃吸着防止などが要求される広範な分野に好適に適用することができる。
【0003】
さらに、本発明は、表面抵抗率を半導電性領域に厳密に制御することができ、表面抵抗率の場所によるバラツキが小さく、しかも機械的物性に優れた合成樹脂組成物に関する。本発明の合成樹脂組成物は、表面抵抗率が105 〜1012Ω(=Ω/□)で、機械的物性に優れ、かつ、不純物の滲み出しが極めて少ない成形物に成形することができるので、ウェーハを運搬または保管するための容器であるキャリアボックスなどのキャリア用成形材料として好適である。
【0004】
背景技術
体積抵抗率が105 〜1013Ω・cmの範囲内の樹脂材料は、体積抵抗率が絶縁体と金属導体との中間に位置するため、一般に半導電性樹脂材料(半導電性プラスチック)と呼ばれている。このような半導電性樹脂材料は、帯電防止性、塵埃吸着防止性、電磁波シールド性などの特性を生かして、例えば、電子部品包装用フィルム、OA機器外装材などとして広範な分野に適用されている。また、半導電性樹脂材料は、静電気の制御が要求される分野、例えば、電子写真複写機や静電記録装置などの画像形成装置における帯電ロール、帯電ベルト、除電ベルトなどの帯電部材の樹脂材料として使用されている。
【0005】
半導電性樹脂材料としては、合成樹脂自体が半導電性であるものもあるが、その多くは、絶縁体である合成樹脂に導電性カーボンブラックや金属粉末、金属繊維、炭素繊維などの導電性充填材を配合することにより、半導電性を付与した合成樹脂組成物である。ところが、合成樹脂に導電性充填材を配合した合成樹脂組成物は、その体積抵抗率が合成樹脂中での導電性充填材の分散状態と充填量に依存するため、(1) 導電性充填材の配合割合のわずかの変化でも、体積抵抗率が大幅に変化する、(2) 体積抵抗率の分布が均一ではなく、場所による体積抵抗率のバラツキが大きい、(3) 合成樹脂組成物を溶融成形すると、体積抵抗率が大きく変動する、(4) 半導電性領域の体積抵抗率を得るのに、大量の導電性充填材の充填が必要であり、その結果、合成樹脂組成物の成形加工性や機械的強度が低下したり、硬度が高くなり過ぎる、などの問題があった。したがって、導電性充填材を配合する方法では、所望の体積抵抗率を有する合成樹脂組成物及びその成形物を再現性よく得ることが極めて困難であった。
【0006】
より具体的に説明すると、合成樹脂と導電性充填材とを混合して樹脂組成物を製造する場合、両者の体積抵抗率が大きくかけ離れており、かつ、導電性の発現(体積抵抗率の低下)が導電性充填材の分散状態と充填量に依拠しているため、得られる合成樹脂組成物の体積抵抗率は、導電性充填材の含有量の変化に対して急激に変化しやすい。特に、合成樹脂組成物の体積抵抗率が105 〜1013Ω・cmの半導電性領域において、導電性充填材の含有量の変化に対する合成樹脂組成物の体積抵抗率の変化が急激である。また、導電性充填材が均一に分散していないと、場所による体積抵抗率のバラツキが大きくなる。したがって、105 〜1013Ω・cmの範囲内の体積抵抗率をもつ合成樹脂組成物を安定的に再現性よく製造することは、非常に困難であった。
【0007】
DBP吸油量が高い導電性カーボンブラックを合成樹脂に含有させた合成樹脂組成物や、ある種の黒鉛を含有させた合成樹脂組成物では、使用原料及び加工条件の厳密な管理により、105 〜1013Ω・cmの範囲内で所望の体積抵抗率を有する合成樹脂組成物をある程度の確率で得ることができる。
【0008】
しかしながら、この合成樹脂組成物は、体積抵抗率の再現性が充分ではなく、しかも、この合成樹脂組成物を射出成形などの溶融成形法により成形物に成形した場合に、体積抵抗率が大きく変動するという問題があった。さらに、この合成樹脂組成物から得られた成形物は、使用している間に体積抵抗率が変化するという問題があった。
【0009】
ウェーハ、半導体素子(IC、LSIなど)、電子部品(半導体ディバイス、回路部品、機能部品など)、情報記録媒体(磁気ディスク、光ディスクなど)などを搬送または保管するために、キャリアボックスなどの各種形状のキャリアが使用されている。キャリアは、一般に合成樹脂材料を用いて形成されている。このようなキャリアは、適度の表面抵抗率を有し、不純物の滲み出しやガスの放出などによりウェーハなどを汚染することがなく、機械的強度にも優れることが要求される。また、キャリアは、多くの場合、耐水性、耐熱性、耐薬品性などに優れることが求められる。
【0010】
より具体的に、シリコンウェーハや磁気ディスクなどを加工処理する場合、これらを搬送または保管するためにキャリアが使用される。例えば、ウェーハは、ウェーハ処理工程において、酸化、CVDによる薄膜形成、イオン注入、フォトプロセス(レジスト処理、露光、現像、洗浄、ドライエッチング、スパッタリングなど)などの処理を受けて、半導体素子となる。半導体素子は、組立工程で配線基板上に搭載され、電子部品が形成される。ウェーハ処理工程では、ウェーハを搬送するキャリアは、熱水や化学薬品に浸されかつ乾燥される。表面抵抗率が1012Ωを越えるキャリアを使用すると、乾燥時にキャリアが高電圧に帯電して、半導体素子などを損傷する。また、表面抵抗率が高いキャリアは、帯電しやすく、静電気により空気中に浮遊している塵埃等を吸着して、半導体素子などを汚染する。
【0011】
一方、表面抵抗率が105 Ω未満のキャリアを使用すると、該キャリアに、感電、漏電または帯電していた電子部品が接触した際に、急激な放電が起こり、半導体素子などが容易に損傷してしまう。このように、ウェーハ、半導体素子、電子部品、情報記録媒体などを静電気から保護し、塵埃等を寄せ付けず適切なクリーン度を保つには、キャリアの表面抵抗率を105 〜1012Ωの範囲内に厳密に制御することが必要である。
【0012】
合成樹脂自体は、一般に絶縁体であるため、その成形物の表面抵抗率を下げる方法として、例えば、(1) 成形物の表面に帯電防止剤を塗布する方法、(2) 合成樹脂に帯電防止剤を練り込んだ樹脂組成物を用いて成形する方法、(3) 合成樹脂に導電性カーボンブラックなどの導電性充填材を配合した樹脂組成物を用いて成形する方法などが知られている。しかし、成形物の表面に帯電防止剤を塗布する方法は、拭いたり洗浄したりすることにより、帯電防止剤が簡単に除去される。しかも、帯電防止剤の付着による半導体素子などの汚染の問題がある。
【0013】
合成樹脂に帯電防止剤を練り込む方法は、成形物の表面に滲み出た帯電防止剤が水洗、摩擦などにより除去されると、帯電防止性が失われやすい。しかも、成形物の表面にブリードアウトした帯電防止剤が半導体素子などを汚染したり、あるいは、塵埃などを粘着して、半導体素子などを汚染する。また、帯電防止剤は、溶出や揮発により、周囲の環境を汚染する。
【0014】
合成樹脂に導電性充填材を配合する方法によれば、半導体素子などを汚染することのないキャリアを製造することができる。ところが、この方法は、前述の如き問題点を有している。すなわち、導電性充填材と合成樹脂とは体積抵抗率が大きくかけ離れており、しかも導電性の発現が導電性充填材の分散状態に依存しているため、樹脂組成物の体積抵抗率は、導電性充填材の含有量の僅かの変化によっても急激に変化し、成形物の表面抵抗率も急激に変化する。
【0015】
特にウェーハキャリアなどのキャリアにおいて要求される表面抵抗率の領域において、導電性充填材の含有量の変化に伴う成形物の表面抵抗率の変化が急激である。また、導電性充填材が合成樹脂中に均一に分散していないと、成形物の場所による表面抵抗率のバラツキが大きくなる。そのため、導電性充填材を含有する合成樹脂組成物を用いて、表面抵抗率を105 〜1012Ωの範囲の中の所望の表面抵抗率値に正確に制御し、かつ、どの箇所をとっても一定の帯電特性を示すキャリアなどの成形物を安定して製造することが困難であった。また、近年のシリコンウェーハや半導体素子などの大型化に伴い、キャリアには、その使用中に従来よりも高い応力がかかるため、クリープ特性、弾性率、強度などにも改善が求められている。しかしながら、従来技術では、これらの諸要求を満足させることが困難であった。
【0016】
特開平9−87418号公報には、合成樹脂と炭素前駆体粒子からなる合成樹脂組成物が開示されているが、合成樹脂と炭素前駆体粒子だけでは、体積抵抗率を105 〜1013Ω・cmの範囲内にするために、大量の炭素前駆体粒子の充填が必要であり、その結果、得られる合成樹脂組成物の成形加工時の溶融流動性や機械的強度が大幅に低下してしまうという問題があった。また、該公報に記載の合成樹脂組成物において、炭素繊維を比較的多量に含有させたものは、表面抵抗率の場所によるバラツキが大きいものである。
【0017】
発明の開示
本発明の目的は、体積抵抗率を半導電性領域内の所望の値に厳密に制御することが可能で、かつ、体積抵抗率の再現性が良好であり、さらには、溶融成形による体積抵抗率の変動が少ない合成樹脂組成物を提供することにある。
【0018】
また、本発明の目的は、必要に応じて、成形物の外層(表面部分)と内部とで体積抵抗率を所望の範囲内で異なるように制御することができる合成樹脂組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、このような合成樹脂組成物を成形してなる成形物を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明の目的は、表面抵抗率を半導電性領域の所望の値に制御することが可能で、かつ、表面抵抗率の再現性が良好であり、さらには、機械的特性に優れ、不純物の滲み出しも極めて少ない合成樹脂組成物を提供することにある。
【0021】
本発明のさらなる他の目的は、表面抵抗率が半導電性領域にあり、機械的物性に優れ、不純物の滲み出しが極めて少ない合成樹脂成形物を提供することにある。
【0022】
特に本発明の目的は、表面抵抗率が105 〜1012Ω(=Ω/□)の範囲にあり、場所による表面抵抗率のバラツキが小さく、機械的物性に優れ、かつ、不純物の滲み出しが極めて少ないウェーハキャリアなどのキャリアを提供することにある。
【0023】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、合成樹脂に、体積抵抗率が102 〜1010Ω・cmの炭素前駆体と、体積抵抗率が102 Ω・cm未満の非繊維状導電性充填材及び/または金属繊維状物(以下、「導電性充填材」という)とを特定の割合で組み合わせて配合し、合成樹脂組成物(1) とすることにより、前記目的を達成できることを見いだした。この合成樹脂組成物(1) は、体積抵抗率を105 〜1013Ω・cmの範囲内の所望の値に厳密にコントロールすることが可能であり、かつ、体積抵抗率の再現性に優れ、さらには、射出成形や押出成形などの溶融成形加工条件下での体積抵抗率の変動が小さいという特徴を有している。
【0024】
本発明の合成樹脂組成物(1) は、炭素前駆体と導電性充填材の種類や配合割合などを調整することにより、成形物の外層と内部の体積抵抗率を変化させることができ、それによって、例えば、成形物の外層を半導電性領域の体積抵抗率とし、内部を導電性領域(通常、0.1×101 Ω・cm以上、105 Ω・cm未満)の体積抵抗率とすることも可能である。外層と内部で体積抵抗率が異なる成形物は、例えば、電磁波シールド部材として有用である。本発明の合成樹脂組成物(1) は、導電性充填材の配合割合または炭素前駆体と導電性充填材との合計の配合割合が比較的小さくても、半導電性領域の体積抵抗率を達成することができる。
【0025】
さらに、本発明者らは、合成樹脂に、前記炭素前駆体と、体積抵抗率が102 Ω・cm未満の炭素繊維とを特定の割合で組み合わせて配合した合成樹脂組成物(2) により、表面抵抗率を半導電性領域の所望の値に厳密に制御することが可能であることを見いだした。炭素繊維を比較的小割合で配合することにより、合成樹脂組成物を成形物とした場合に、場所による表面抵抗率のバラツキが極めて小さな成形物を得ることができる。また、炭素繊維を配合することにより、曲げ弾性率などの機械的特性を改善することもできる。
【0026】
合成樹脂組成物(2) は、ガスの放出や金属その他の不純物の滲み出しを極めて少なくすることができる。本発明の合成樹脂組成物(2) は、半導電性領域の表面抵抗率が要求される広範な分野における各種成形物とすることができるが、特にウェーハ、半導体素子、電子部品、または情報記録媒体用のキャリアとしての用途に好適である。
本発明は、これらの知見に基づいて、完成するに至ったものである。
【0027】
本発明によれば、合成樹脂(A) 46〜97重量%、体積抵抗率が102 〜1010Ω・cmの炭素前駆体(B) 1〜40重量%、及び体積抵抗率が102 Ω・cm未満の導電性カーボンブラックである導電性充填材(C) 0.5〜14重量%を含有する合成樹脂組成物であって、
(1)該合成樹脂(A) が、熱可塑性ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、かつ、
(2)該合成樹脂組成物が、該合成樹脂組成物を成形してなる成形物の外層の体積抵抗率が105 〜1013Ω・cmで、内部の体積抵抗率が0.1×101 Ω・cm以上、105 Ω・cm未満である特性を有し、その際、体積抵抗率が10 8 Ω・cm以上の場合は、JIS K6911に準拠し、印加電圧100Vで測定し、体積抵抗率が10 8 Ω・cm未満の場合は、JIS K7194に準拠して測定し、かつ、成形物の外層の体積抵抗率は、射出成形物(130mm×100mm×3mm;平板)をそのまま用いて測定し、成形物の内部の体積抵抗率の測定は、厚み方向の両サイドから1mmずつ削った残りの厚み1mmの平板について測定することを特徴とする合成樹脂組成物が提供される。
【0028】
また、本発明によれば、前記の合成樹脂組成物を成形してなる成形物が提供される。
【0029】
発明を実施するための最良の形態
1.合成樹脂
使用する合成樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ−p−キシレン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルニトリル、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ジアリルテレフタレート樹脂、トリアジン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これらの変性物が挙げられる。
【0030】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。
【0031】
これらの合成樹脂の中でも熱可塑性樹脂が好ましく、耐熱性の点からは、結晶融解温度が100℃以上の結晶性樹脂、並びにガラス転移温度が100℃以上の非晶性樹脂がより好ましい。
【0032】
特に好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレーなどの熱可塑性ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)に代表されるポリアリーレンスルフィド、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(ポリオキシメチレン;POM)、PFAなどのフッ素樹脂などが挙げられる。
【0033】
これらの合成樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ウェーハキャリアなどのキャリアには、揮発ガスの放出や金属の溶出が極めて少ないことが要求されるので、合成樹脂組成物をキャリアの用途に使用する場合には、揮発ガス及び金属溶出に配慮して製造され、精製された合成樹脂を用いることが望ましい。
本発明で用いられる合成樹脂は、熱可塑性ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0034】
2.炭素前駆体
本発明で使用する体積抵抗率が102 〜1010Ω・cmの範囲にある炭素前駆体は、有機物質を不活性雰囲気中、400〜900℃の温度で焼成することにより得ることができる。このような炭素前駆体は、例えば、(i) 石油タール、石油ピッチ、石炭タール、石炭ピッチ等のタールまたはピッチを加熱し、芳香族化と重縮合を行い、必要に応じて、酸化雰囲気中において酸化・不融化し、さらに不活性雰囲気において加熱・焼成する方法、(ii)ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を酸化雰囲気中において不融化し、さらに不活性雰囲気中で加熱・焼成する方法、(iii) フェノール樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂を加熱硬化後、不活性雰囲気中で加熱・焼成する方法などにより製造することができる。炭素前駆体とは、これらの処理によって、炭素の含有量が97重量%以下の完全には炭素化していない物質を意味する。
【0035】
有機物を不活性雰囲気中で加熱・焼成すると、焼成温度が上昇するにつれて、得られる焼成体の炭素含有量が上昇する。炭素前駆体の炭素含有量は、焼成温度を適正に設定することによって、容易に制御することができる。本発明で使用する炭素前駆体は、炭素含有量が通常80〜97重量%、好ましくは85〜95%の完全に炭化していない状態の炭素前駆体であることが好ましい。
【0036】
炭素前駆体の炭素含有量が少なすぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率及び表面抵抗率が大きくなり、これらの値を所望の範囲内に制御することが困難になる。炭素前駆体の炭素含有量が多すぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率及び表面抵抗率が小さくなりすぎ、しかも炭素前駆体の配合量の僅かな変化でも体積抵抗率及び表面抵抗率が急激に変化しやすくなる。したがって、炭素含有量が前記の範囲外の炭素前駆体を用いると、所望の範囲の体積抵抗率や表面抵抗率を有する成形物を、安定して再現性良く製造することが困難となる。炭素前駆体の体積抵抗率は、好ましくは103 〜109 Ω・cm、より好ましくは104 〜108 Ω・cmである。
【0037】
炭素前駆体は、通常、粒子または繊維の形状で使用される。本発明で用いる炭素前駆体粒子の平均粒径は、1mm以下であることが好ましい。炭素前駆体粒子の平均粒径が大きすぎると、良好な外観の成形物を得ることが難しくなる。炭素前駆体粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm〜1mm、より好ましくは1μm〜0.1mm、特に好ましくは5〜500μmである。多くの場合、5〜50μm程度の平均粒径の炭素前駆体粒子を使用することにより、良好な結果を得ることができる。本発明で使用する炭素前駆体繊維の平均直径は、0.1mm以下であることが好ましい。炭素前駆体繊維の平均直径が0.1mmを越えると、良好な外観の成形物を得ることが難しくなる。炭素前駆体繊維は、短繊維であることが分散性の観点から好ましい。
【0038】
3.導電性充填材
使用する体積抵抗率が102 Ω・cm未満の非繊維状導電性充填材としては、特に制限はなく、例えば、黒鉛、導電性カーボンブラック、金属粉末などが挙げられる。これらの中でも、体積抵抗率の制御性や再現性などの観点から、黒鉛、導電性カーボンブラック、及びこれらの混合物などの導電性炭素材料が好ましい。導電性炭素材料は、一般に粉末状や鱗片状の粒子である。本発明では、導電性カーボンブラックを用いる。
【0039】
本発明で使用する導電性カーボンブラックとしては、体積抵抗率が102Ω・cm未満のものであれば特に制限はなく、例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
DBP吸油量が250ml/100g以上、好ましくは300ml/100g以上と大きい導電性カーボンブラックを用いると、成形物の外層に対する内部の体積抵抗率が相対的に低くなるため、用途・目的に応じてDBP吸油量の異なる導電性カーボンブラックを使いわけることが可能である。導電性カーボンブラックのDBP吸油量は、ASTM D2414で規定された方法で測定する。すなわち、測定装置(Absorpotometer)のチャンバー中に導電性カーボンブラックを入れ、そのチャンバー中に、一定の速度でDBP(n−ジブチルフタレート)を加える。DBPを吸収するに従い、導電性カーボンブラックの粘度は上昇し、ある程度に達した時までに吸収したDBPの量からDBP吸油量を算出する。粘度の検出は、トルクセンサーで行う。
【0041】
使用する黒鉛は、体積抵抗率が102 Ω・cm未満のものであれば特に制限はなく、コークス、タール、ピッチなどを高温で黒鉛化処理した人造黒鉛、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、及び土状黒鉛等の天然黒鉛を用いることができる。
【0042】
使用する金属繊維状物としては、ステンレス、アルミニウム、チタン、鋼、真鍮等の金属繊維を挙げることができる。
本発明で使用する導電性充填材の体積抵抗率は、102 Ω・cm未満であり、その下限は、通常、金属粉末や金属繊維などの金属材料の体積抵抗率である。
【0043】
4.炭素繊維
使用する炭素繊維は、体積抵抗率が102 Ω・cm未満のものであれば特に制限はなく、セルロース系、ポリアクリルニトリル(PAN)系、リグニン系、ピッチ系(石炭ピッチ系、石油ピッチ系)などの種々の炭素繊維を使用することができる。これらの中でもPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、及びこれらの混合物が好ましく、PAN系炭素繊維がより好ましい。
【0044】
炭素繊維の平均直径は、0.1mm以下であることが好ましい。この平均直径が0.1mmを越えると、良好な外観の成形物を得ることが難しくなる。炭素繊維は、平均繊維長が50μm以上の短繊維であることが好ましい。炭素繊維の平均繊維長が50μm以上であることにより、クリープ特性、弾性率、強度等の機械的性質の改善効果が顕著となる。炭素繊維の混合前の平均繊維長の上限は、通常80mm程度である。混合・押出後の合成樹脂組成物中での炭素繊維の平均繊維長の上限は、1000μm程度である。
【0045】
5.その他の充填材
本発明の合成樹脂組成物には、機械的強度や耐熱性を上げることを目的に、その他の充填材を配合することができる。
その他の充填材として、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維などの無機繊維状物;ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質;等の繊維状充填材が挙げられる。
【0046】
また、その他の充填材として、例えば、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、クレー、ガラス粉、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の非繊維状充填材を挙げることができる。非繊維状充填材は、一般に粉末状や鱗片状の粒子である。
【0047】
これらの充填材は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。充填材は、必要に応じて、集束剤または表面処理剤により処理されていてもよい。集束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物の官能性化合物が挙げられる。これらの化合物は、充填材に対して予め表面処理または集束処理を施して用いるか、あるいは合成樹脂組成物の調製の際に充填材と同時に添加してもよい。
【0048】
合成樹脂組成物の体積抵抗率または表面抵抗率を厳密に制御し、同時に機械的強度や耐熱性を高める上で、これらの充填材の中でも、ガラス繊維などの導電性をもたない無機繊維状充填材、及びタルク、炭酸カルシウムなどの導電性をもたない非繊維状充填材が好ましい。
【0049】
6.添加剤
本発明の合成樹脂組成物には、添加剤として、例えば、エポキシ基含有α−オレフィン共重合体のような衝撃改質剤、エチレングリシジルメタクリレートのような樹脂改良剤、ペンタエリスリトールテトラステアレートのような滑剤、熱硬化性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ポロンナイトライドのような核剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤等を適宜添加することができる。
【0050】
7.合成樹脂組成物
<合成樹脂組成物(1) >
合成樹脂組成物(1) は、合成樹脂(A) 40〜98.5重量%、体積抵抗率が102 〜1010Ω・cmの炭素前駆体(B) 1〜40重量%、及び体積抵抗率が102 Ω・cm未満の導電性カーボンブラックである導電性充填材(C) 0.5〜30重量%を含有する合成樹脂組成物である。合成樹脂組成物(1) は、所望により、その他の充填材(D) 0〜60重量%をさらに含有することができる。その他の充填材(D) としては、非導電性の無機充填材が好ましく、特に、ガラス繊維などの非導電性の無機繊維状充填材、並びにタルク、炭酸カルシウムなどの非導電性の非繊維状無機充填材が好ましい。各成分の割合は、合成樹脂組成物全量基準であり、合計で100重量%となる。
【0051】
合成樹脂組成物(1) の体積抵抗率は、半導電性領域である105 〜1013Ω・cmであることが、その用途との関連で好ましい。
【0052】
合成樹脂組成物(1) 中での合成樹脂(A) の割合は好ましくは46〜98.5重量%である。多くの場合、合成樹脂(A) の割合が46〜97重量%の範囲で特に良好な結果を得ることができる。本発明では、46〜97重量%の範囲である。合成樹脂の割合が大き過ぎると、体積抵抗率を充分に低くすることができず、所望の半導電性領域の体積抵抗率を有する合成樹脂組成物を得ることが困難になる。合成樹脂の割合が小さ過ぎると、体積抵抗率が低くなりすぎて、所望の半導電性領域の体積抵抗率を有する合成樹脂組成物を得ることが困難になる。
【0053】
合成樹脂組成物(1) 中での炭素前駆体(B) の割合は、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは3〜30重量%である。合成樹脂組成物(1) においては、多くの場合、炭素前駆体(B) の割合が3〜15重量%程度と小さくても、所望の体積抵抗率を安定して得ることが可能である。炭素前駆体(B) の割合が大き過ぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率が低くなりすぎ、体積抵抗率を105 〜1013Ω・cmの範囲内に制御することが困難になる。炭素前駆体(B) の割合が小さ過ぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率を充分に下げることが困難となるか、体積抵抗率を105 〜1013Ω・cmの範囲内に制御することが困難となる。
【0054】
合成樹脂組成物(1) 中での導電性充填材(C) の配合割合は、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは0.5〜14重量%である。本発明では、0.5〜14重量%である。導電性充填材(C) の配合割合の下限は、1重量%が特に好ましい。導電性充填材(C) の配合割合が大き過ぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率が低くなりすぎ、体積抵抗率を105 〜1013Ω・cmの範囲内に制御することが困難となる。導電性充填材の配合割合が小さ過ぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率を充分に下げることが困難となるか、体積抵抗率を105 〜1013Ω・cmの範囲内に制御することが困難となる。
【0055】
その他の充填材(D) を配合する場合には、その配合割合は、合成樹脂組成物の全量基準で、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜50重量%である。その他の充填材(D) を配合することにより、合成樹脂組成物の機械的物性や耐熱性等を改善することができる。
【0056】
本発明の合成樹脂組成物(1) において、体積抵抗率を半導電性領域の所望の値に厳密に制御するには、非繊維状導電性充填材の割合をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0057】
この観点から、合成樹脂(A) 46〜98.5重量%、炭素前駆体(B) 1〜40重量%、及び導電性充填材(C) 0.5〜14重量%を含有する合成樹脂組成物が好ましい。また、本発明の合成樹脂組成物(1) において、炭素前駆体(B) 及び導電性充填材(C) の割合を共に小さくすることが可能である。この場合、炭素前駆体(B) の割合を3〜15重量%程度にまで小さくすることができる。さらに、炭素前駆体(B) 及び導電性充填材(C) の合計割合を好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下にまで低減することも可能である。
本発明の合成樹脂組成物(1)は、合成樹脂(A) 46〜97重量%、体積抵抗率が10 2 〜10 10 Ω・cmの炭素前駆体(B) 1〜40重量%、及び体積抵抗率が10 2 Ω・cm未満の導電性カーボンブラックである導電性充填材(C) 0.5〜14重量%を含有する合成樹脂組成物であって、
(1)該合成樹脂(A) が、熱可塑性ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、かつ、
(2)該合成樹脂組成物が、該合成樹脂組成物を成形してなる成形物の外層の体積抵抗率が10 5 〜10 13 Ω・cmで、内部の体積抵抗率が0.1×10 1 Ω・cm以上、10 5 Ω・cm未満である特性を有し、その際、体積抵抗率が10 8 Ω・cm以上の場合は、JIS K6911に準拠し、印加電圧100Vで測定し、体積抵抗率が10 8 Ω・cm未満の場合は、JIS K7194に準拠して測定し、かつ、成形物の外層の体積抵抗率は、射出成形物(130mm×100mm×3mm;平板)をそのまま用いて測定し、成形物の内部の体積抵抗率の測定は、厚み方向の両サイドから1mmずつ削った残りの厚み1mmの平板について測定することを特徴とする合成樹脂組成物である。
【0058】
<合成樹脂組成物(2) >
合成樹脂組成物(2) は、合成樹脂(A) 46〜98.5重量%、体積抵抗率が102 〜1010Ω・cmの炭素前駆体(B) 1〜40重量%、及び体積抵抗率が102 Ω・cm未満の炭素繊維(E) 0.5〜14重量%を含有する合成樹脂組成物である。合成樹脂組成物(2) には、所望により、その他の充填材(D) 0〜60重量%をさらに含有することができる。その他の充填材(D) としては、非導電性の無機充填材が好ましく、特に、ガラス繊維などの非導電性の無機繊維状充填材、並びにタルク、炭酸カルシウムなどの非導電性の非繊維状無機充填材が好ましい。各成分の割合は、合成樹脂組成物全量基準であり、合計で100重量%となる。
【0059】
合成樹脂組成物(2) の表面抵抗率は、105〜1012Ωであることが、用途との関連で好ましい。
【0060】
合成樹脂組成物(2) 中での合成樹脂(A) の割合は、好ましくは51〜94重量%、より好ましくは57〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%である。合成樹脂(A) の割合が大き過ぎると、成形物の表面抵抗率を所望の程度にまで低くすることが困難である。合成樹脂(A) の割合が小さ過ぎると、炭素前駆体や炭素繊維の割合が多くなり、その結果、成形物の表面抵抗率が低くなりすぎる。
【0061】
合成樹脂組成物(2) 中での炭素前駆体(B) の含有量は、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。炭素前駆体(B) の割合が大きすぎると、成形物の表面抵抗率が低くなりすぎて、表面抵抗率を特にキャリアとして好適な105〜1012Ωの範囲内に制御することが困難となる。炭素前駆体(B) の割合が小さすぎると、成形物の表面抵抗率を充分に下げることが困難となるか、あるいはキャリアとして好適な表面抵抗率の範囲内に制御することが困難となる。
【0062】
合成樹脂組成物(2) 中での炭素繊維(E) の割合は、好ましくは1〜14重量%、より好ましくは2〜13、特に好ましくは5〜10重量%である。炭素繊維(E) の割合が大きすぎると、成形物の表面抵抗率が低くなりすぎて、キャリアとして好適な表面抵抗率の範囲内に制御することが困難となる。
【0063】
また、合成樹脂組成物(2) 中での炭素繊維(E) の割合が大きすぎると、ウェーハキャリアなどの成形物に成形した場合、場所による表面抵抗率のバラツキが大きくなる傾向が現れる。合成樹脂組成物(2) を成形して得られる成形物は、安定した帯電特性などを示す上で、場所による表面抵抗率のバラツキが極めて小さいことが望ましい。当該成形物の表面抵抗率の測定(測定法は後記)において、最大表面抵抗率ΩL と最小表面抵抗率ΩS との比(ΩL /ΩS )は、好ましくは10未満、より好ましくは6.5以下、特に好ましくは6以下であることが、安定した諸特性を示す上で望ましい。
【0064】
炭素繊維(E) の割合が小さすぎると、成形物の表面抵抗率を充分に下げることが困難となるか、特にキャリアとして好適な表面抵抗率の範囲内に制御することが困難となる。また、炭素繊維(E) の割合が少なすぎると、クリープ特性、弾性率、強度等の機械的性質の改善効果が小さい。
【0065】
<製造方法>
合成樹脂組成物(1) 及び(2) は、一般に合成樹脂組成物の調製に用いられる設備と方法により製造することができる。例えば、各原料成分をヘンシェルミキサー、タンブラー等により予備混合し、必要があればガラス繊維等の充填材や添加剤を加えてさらに混合した後、1軸または2軸の押出機を使用して混練し、押し出して成形用ペレットとすることができる。必要成分の一部をマスターバッチとしてから残りの成分と混合する方法、また、各成分の分散性を高めるために、使用する原料の一部を粉砕し、粒径を揃えて混合し溶融押出することも可能である。
【0066】
8.成形物及び用途
合成樹脂組成物(1) 及び(2) は、射出成形や押出成形などの一般的な溶融成形加工法により、例えば、シート、フィルム、チューブ、容器、その他各種形状の成形物に成形加工することができる。本発明の合成樹脂組成物を成形して得られる成形物は、静電気の制御、帯電防止、電磁波シールド、塵埃吸着防止などが要求される広範な分野に好適に適用することができる。
【0067】
特に本発明の合成樹脂組成物(1) を用いると、体積抵抗率の場所によるバラツキが小さな成形物を得ることができる。一方、炭素前駆体と非繊維状導電性充填材の種類や配合割合などを調整することにより、必要に応じて、成形物の外層と内部の体積抵抗率を変化させることができる。例えば、成形物の外層を半導電性領域の体積抵抗率とし、内部を導電性領域(通常、0.1×101 Ω・cm以上、105 Ω・cm未満)の体積抵抗率とすることができる。外層と内部で体積抵抗率が異なる成形物は、例えば、電磁波シールド部材として好適である。もちろん、本発明の合成樹脂組成物(1) を用いて、外層と内部の体積抵抗率がいずれも105 〜1013Ω・cmの成形物を得ることができる。
合成樹脂組成物(2) は、特に半導電性領域の表面抵抗率が要求される広範な分野において、各種成形物として好適に使用することができる。
【0068】
本発明の合成樹脂組成物及び成形物の具体的な用途としては、電気電子分野では、例えば、トートビン、ウェーハボート、ウェーハキャリア、ウェーハカセット、ICチップトレイ、ICチップキャリア、IC搬送チューブ、ICカード、テープ及びリールパッキング、各種ケース、保存用トレイ、保存用ビン、搬送装置部品、磁気カードリーダー、コンピュータハウジング、モデムハウジング、モニターハウジング、CR−ROMハウジング、コネクター、コンピュータスロット、HDキャリア、MRヘッドキャリア、GMRヘッドキャリア、HSAキャリア、HDDのVCM、液晶パネルキャリアなどが挙げられる。
【0069】
OA機器分野では、電子写真複写機や静電記録装置などの画像形成装置における帯電ロール、帯電ベルト、除電ベルト、転写ロール、転写ベルト、現像ロールなどの帯電部材;記録装置用転写ドラム、ブッシュ、紙及び紙幣搬送部品、紙送りレール、フォントカートリッジ、インクリボンキャニスター、ガイドピン、トレー、ローラー、ギア、スプロケット、プリンターハウジング、コネクターなどが挙げられる。
通信機分野では、携帯電話部品、ペーガー、セルラーホーン部品、各種摺動材などが挙げられる。
【0070】
自動車分野では、内装材、アンダーフード、電子電気機器ハウジング、ガスタンクキャップ、燃料フィルタ、燃料ラインコネクタ、燃料ラインクリップ、燃料タンク、機器ビージル、ドアハンドル、燃料ライン、その他の各種部品などが挙げられる。
その他の分野では、電線及び電力ケーブル被覆材、電線支持体、電波吸収体、床材、カーペット、防虫シート、パレット、靴底、テープ、ブラシ、送風ファン、面状発熱体、ポリスイッチなどが挙げられる。
【0071】
特に、合成樹脂組成物(2) は、ウェーハ、半導体素子(IC、LSIなど)、電子部品(半導体ディバイス、回路部品、機能部品など)、情報記録媒体(磁気ディスク、光ディスクなど)などを搬送または保管するためのキャリアとしての用途に好適である。キャリアの形状、大きさなどは、それぞれの具体的な用途に応じて適宜定めることができる。具体例としては、例えば、キャリアボックスなどの単段・単層容器状、多段・多層の容器状、トレー状、シート状などの成形物を挙げることができる。
【0072】
実施例
以下に実施例、参考例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、物性の測定方法は、以下に示すとおりである。
【0073】
(1)体積抵抗率
体積抵抗率が108 Ω・cm以上の場合は、JIS K6911に準拠し、印加電圧100Vで測定した。体積抵抗率が108 Ω・cm未満の場合は、JIS K7194(導電性プラスチックの4深針法により抵抗率測定試験法)に準拠して測定した。
成形物の外層の体積抵抗率は、射出成形物(130mm×100mm×3mm;平板)をそのまま用いて測定し、成形物の内部の体積抵抗率の測定は、厚み方向の両サイドから約1mmずつ削った残りの厚み約1mmの平板について測定した。
【0074】
(2)表面抵抗率
試料の表面抵抗率が106 Ω以上の場合は、JIS−K6911に準拠し、定電圧器(菊水社製300−1A型)、電流計(ケースレー社製616型)及び試料セル(横河・ヒューレトパッカード社製1608A型)を用い、印加電圧100Vで測定した。試料の表面抵抗率が106 Ω未満の場合は、JIS−K7194に準拠し、三菱化学社製ロレスターUPを用いて測定した。
ウェーハキャリアの表面抵抗率の測定は、三菱化学社製ハイレスターUP及び微小サンプル用プローブ(ガード電極直径10mm:UR−SSプローブ)を用い、印加電圧500Vで測定した。測定は、成形物上の10点について行い、最大と最小の表面抵抗率を示す。
【0075】
(3)曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
【0076】
[製造例1]炭素前駆体B 1 の製造
軟化点210℃、キノリン不溶分1重量%、H/C原子比0.63の石油系ピッチ68kgとナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、190℃に加熱して溶解混合した後、80〜90℃に冷却して押出し、直径が約500μmの紐状成形体を得た。
【0077】
次いで、この紐状成形体を長さと直径の比が約1.5になるように粉砕し、得られた粉砕物を93℃に加熱した0.53%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)水溶液中に投下し、攪拌分散した後、冷却して、球状ピッチを得た。さらに、濾過を行って水分を除去し、球状ピッチの約6倍量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。
【0078】
このようにして得られた球状ピッチを、加熱空気を通じながら、260℃で1時間保持して酸化処理を行い酸化ピッチを得た。この酸化ピッチを窒素気流中で580℃で1時間処理した後、粉砕し、平均粒径が約25μmの炭素前駆体粒子を得た。このようにして得られた炭素前駆体粒子の炭素含有量は、91.0%であった。
【0079】
この炭素前駆体の体積抵抗率を調べるために、酸化ピッチを粉砕し、次いで、目開き約100μmのメッシュを用いて、100μm以上の粒子をふるい分けて除去した。この粉砕酸化ピッチ粉末13gを、断面積80cm2 の円筒金型に充填し、圧力196MPaで成形して成形体を得た。この成形体を窒素気流中で上述の炭素前駆体粒子の製造方法における熱処理温度と同一温度である580℃で1時間熱処理して、炭素前駆体の体積抵抗率測定用試料を得た。この試料について、JIS K7194に準拠して、体積抵抗率を測定したところ、3×107 Ω・cmであった。
【0080】
[製造例2]炭素前駆体B 2 の製造方法
製造例1の炭素前駆体B1 の製造方法と同様にして得た球状ピッチ成形体を、加熱空気を通じながら、260℃で1時間保持して酸化処理を行い、酸化ピッチを得た。この酸化ピッチを窒素気流中で680℃で1時間熱処理した後、粉砕し、平均粒子径が約22μmの炭素前駆体粒子とした。この炭素前駆体粒子の炭素含有量は、95.0%であった。
【0081】
この炭素前駆体の体積抵抗率を調べるために、酸化ピッチを粉砕し、次いで、目開き約100μmのメッシュを用いて、100μm以上の粒子をふるい分けて除去した。この粉砕酸化ピッチ粉末13gを、断面積80cm2 の円筒金型に充填し、圧力196MPaで成形して成形体を得た。この成形体を窒素気流中で上述の炭素前駆体粒子の製造方法における熱処理温度と同一温度である680℃で1時間熱処理して、炭素前駆体の体積抵抗率測定用試料を得た。この試料について、JIS K7194に準拠して、体積抵抗率を測定したところ、2×104 Ω・cmであった。
【0082】
[製造例3]炭素前駆体B 3 の製造方法
製造例1の炭素前駆体B1 の製造方法と同様にして得た球状ピッチ成形体を、加熱空気を通じながら、260℃で1時間保持して酸化処理を行い、酸化ピッチを得た。この酸化ピッチを窒素気流中で800℃で1時間熱処理した後、粉砕し、平均粒子径が約27μmの炭素前駆体粒子とした。この炭素前駆体粒子の炭素含有量は、98.0%であった。
【0083】
この炭素前駆体の体積抵抗率を調べるために、酸化ピッチを粉砕し、次いで、目開き約100μmのメッシュを用いて、100μm以上の粒子をふるい分けて除去した。この粉砕酸化ピッチ粉末13gを、断面積80cm2 の円筒金型に充填し、圧力196MPaで成形し成形体を得た。この成形体を窒素気流中で上述の炭素前駆体粒子の製造方法における熱処理温度と同一温度である800℃で1時間熱処理して、炭素前駆体の体積抵抗率測定用試料を得た。この試料について、JIS K7194に準拠し体積抵抗率を測定したところ、5×10-1Ω・cmであった。
【0084】
[製造例4]炭素前駆体B 4 の製造方法
製造例1と同様にして、炭素含有量が91.0%の炭素前駆体粒子を得た。この炭素前駆体粉末13%を、断面積80cm2 の円筒金型に充填し、圧力196MPaで成形し、成形体を得た。この試料について、JIS−K7194に準拠して体積抵抗率を測定したところ、5×107Ω・cmであった。
【0085】
[実施例1〜2、参考例1〜9、及び比較例1〜6]
表1に示す各成分(数値は重量%)をヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドし、45mmφの2軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、溶融押出を行い、ペレットを作製した。得られたペレットを真空乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製IS−75)に供給し、射出成形して、体積抵抗率測定用の平板(130mm×100mm×3mm)を作成した。結果を表1及び表2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
(脚注)
(1) PPS:ポリフェニレンスルフィド(呉羽化学工業社製、フォートロンKPS W205)
(2) PBT:ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス社製、ジュラネックス3300)
(3) POM:ポリオキシメチレン(ポリプラスチックス社製、ジュラコンM140;ポリアセタール)
(4) PC:ポリカーボネート(日本ジーイープラスチックス社製、レキサンSP1110)
(5) PP:ポリプロピレン(グランドポリマー社製、J107W)
(6) PE:ポリエチレン(日本ポリケム社製、ノバテックLJ801N)
(7) 黒鉛:鱗状黒鉛(日本黒鉛工業社製、CB−150;体積抵抗率1×10-2Ω・cm)
(8) カーボンブラックA:DBP吸油量180ml/100g(電気化学工業社製、デンカブラック粉状品;体積抵抗率1×10-2Ω・cm)
(9) カーボンブラックB:DBP吸油量500ml/100g(ライオン社製、ケッチェンブラックEC600JD;体積抵抗率1×10-2Ω・cm)
(10)ガラスファイバー:直径13μm(日本電気硝子社製)
(11)タルク:松村産業株式会社、クラウンタルクDR
(12)炭酸カルシウム:白石工業社製、ホワイトンP30
【0089】
表1の参考例1、実施例1〜2の結果から明らかなように、炭素前駆体(B) と導電性充填材(C) とを併用し、かつ、導電性充填材の種類と配合割合を選択することにより、成形物の外層(表面部分)と内部と体積抵抗率をほぼ同様にしたり(参考例1)、内部の体積抵抗率を小さくしたり(実施例1〜2)することができる。特に、DBP吸油量が大きい導電性カーボンブラックを添加すると(実施例2)、成形物の外層の体積抵抗率を半導電性領域に維持しつつ、内部の体積抵抗率を導電性領域に近付けることができる。したがって、本発明によれば、成形物の外層と内部の体積抵抗率を所望の範囲内に制御することが可能である。
【0090】
参考例1と参考例2を対比すると、体積抵抗率が異なる炭素前駆体を使用することにより、成形物の体積抵抗率の高低を制御することができる。参考例2〜4を見ると、炭素前駆体(B) の割合が変化しても、合成樹脂組成物の体積抵抗率は、あまり変化せずに安定していることがわかる。参考例5〜9は、合成樹脂の種類を変化させても、体積抵抗率が安定で均一な合成樹脂組成物及び成形物の得られることを示している。
【0091】
表2の比較例1の結果から明らかなように、炭素前駆体のみを充填しても、合成樹脂組成物の体積抵抗率は、ほとんど低下しない。比較例2の結果からは、DBP吸油量が高いカーボンブラックを充填した場合、たまたま成形物外層の体積抵抗率が2E+08(=2×108 )Ω・cmとなっても、成形物内部の体積抵抗率は、低いものしかできない。つまり、成形物の外層と内部とで同程度の体積抵抗率を得ることができない。比較例6は、合成樹脂の種類をPPSからPBTにかえても、比較例2と同様の結果が得られることを示している。これらの比較例2及び6の合成樹脂組成物は、後の表3の比較例7〜8に示すように、射出成形条件のわずかの変化により、成形物(外層)の体積抵抗率が大幅に変動するものである。
【0092】
表2の比較例3及び4の結果からは、黒鉛だけの充填では、黒鉛の充填量の変化に対する合成樹脂組成物の体積抵抗率の変化が急激であり、体積抵抗率を精密に制御することが困難であることがわかる。比較例5の結果からは、炭素前駆体の体積抵抗率が低すぎると、合成樹脂組成物の体積抵抗率を半導電性領域に制御できないことがわかる。
【0093】
[参考例10〜11、及び比較例7〜8]
前記の参考例1、参考例5、比較例2、及び比較例6の各合成樹脂組成物について、表3に示すように、射出成形時の射出速度を変えて体積抵抗率測定用平板を作成し、体積抵抗率(外層)を測定した。結果を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示された実験結果から明らかなように、参考例1及び参考例5の合成樹脂組成物を用いた場合(参考例10〜11)は、成形物の体積抵抗率は、射出成形条件にほとんど依存せず安定しているが、導電性カーボンブラックのみの充填で製造した合成樹脂組成物を用いた場合(比較例7〜8)には、射出条件が変化すると、成形物の体積抵抗率が大きく変動することがわかる。
【0096】
[参考例12〜17、比較例9〜12]
表4に示す配合処方(数値は重量%)に基づいて、合成樹脂、炭素前駆体、炭素繊維、及びカーボンブラックの各成分をタンブラーミキサーで均一にドライブレンドした後、45mmφの2軸混練押出機(磯貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、溶融押出を行ってペレットを調製した。得られたペレットを乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製IS−75)により、表面抵抗率測定用の平板及び曲げ弾性率測定用の試験片を作成し、表面抵抗率及び曲げ弾性率を測定した。さらに、このペレットを用いて、332mm×310mm×301mmのウェーハキャリアを射出成形し、表面抵抗率を測定した。結果を表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
(脚注)
(1) PBT(ポリブチレンテレフタレート):ジュラネックス2002(ポリプラスチックス社製)
(2) PPS(ポリフェニレンスルフィド):フォートロンKPS W214(呉羽化学工業社製)
(3) PP(ポリプロピレン):J109NW(グランドポリマー社製)
(4) PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体:P−63(旭硝子社製)
(5) PC(ポリカーボネート):CARIBRE351−15(住友ダウ社製)(6) PEEK(ポリエーテルケトン):450P(VICTREX社製)
(7) カーボンブラック:ケッチェンブラックEC600JD、DBP吸油量500ml/100g(ライオン社製)
(8) PAN系炭素繊維:ベスファイトHTA3000(東邦レーヨン社製;体積抵抗率1×10-3Ω・cm)
【0099】
表4の結果から明らかなように、炭素前駆体と炭素繊維を併用すると(参考例12〜17)、1E+07(=1×107 )〜2E+09(=2×109 )Ωの狭い範囲で半導電性領域の表面抵抗率を示すとともに、炭素繊維を充填したことにより、曲げ弾性率が5000MPa以上を示し、大型ウェーハキャリアなどに要求される剛性を達成していることがわかる。また、これらのキャリアは、その上のどの点における表面抵抗率も実質的に同一で、部分的に高抵抗の箇所がないために、空気中を浮遊している塵埃などを吸着することがない。もちろん、これらのキャリアは、半導体素子などを破壊するおそれもない。
【0100】
これに対して、合成樹脂に炭素繊維のみを含有させた場合(比較例9〜10)には、炭素繊維の含有量の僅かの差で表面抵抗率が極端に変化する。したがって、所望の表面抵抗率を有する成形物を安定して得ることが困難である。また、これらのキャリア上には、表面抵抗率のバラツキが見られ、この点でも実用上問題がある。
【0101】
また、合成樹脂に導電性カーボンブラックのみを含有させた場合(比較例11〜12)には、導電性カーボンブラックの含有量の僅かの差で表面抵抗率が極端に変化する。したがって、所望の表面抵抗率を有する成形物を安定して得ることが困難である。しかも、曲げ弾性率が3000MPa以下であり、大型ウェーハキャリアなどに要求される剛性を確保することができない。これらのキャリア上には、表面抵抗率のバラツキが見られ、この点でも実用上問題がある。
【0102】
産業上の利用可能性
本発明によれば、体積抵抗率を半導電性領域内の所望の値に厳密に制御することが可能で、かつ、体積抵抗率の再現性が良好であり、さらには、溶融成形による体積抵抗率の変動が少ない合成樹脂組成物が提供される。本発明によれば、必要に応じて、成形物の外層と内部とで体積抵抗率を所望の範囲内で異なるように制御することができる合成樹脂組成物が提供される。本発明によれば、このような合成樹脂組成物を成形してなる成形物が提供され、静電気の制御、帯電防止、電磁波シールド、塵埃吸着防止などが要求される広範な分野に好適に適用することができる。
【0103】
また、本発明によれば、表面抵抗率を半導電性領域の所望の値に制御することが可能で、かつ、表面抵抗率の再現性が良好であり、さらには、機械的特性に優れ、不純物の滲み出しも極めて少ない合成樹脂組成物が提供される。本発明の合成樹脂組成物を成形して得られる成形物は、表面抵抗率が半導電性領域にあり、機械的物性に優れ、不純物の滲み出しが極めて少ないものである。本発明の合成樹脂組成物は、特に表面抵抗率が105 〜1012Ωの範囲にあり、機械的物性に優れ、かつ、不純物の滲み出しが極めて少ないウェーハキャリアなどのキャリアの成形に好適である。
Claims (7)
- 合成樹脂(A) 46〜97重量%、体積抵抗率が102 〜1010Ω・cmの炭素前駆体(B) 1〜40重量%、及び体積抵抗率が102 Ω・cm未満の導電性カーボンブラックである導電性充填材(C) 0.5〜14重量%を含有する合成樹脂組成物であって、
(1)該合成樹脂(A) が、熱可塑性ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、かつ、
(2)該合成樹脂組成物が、該合成樹脂組成物を成形してなる成形物の外層の体積抵抗率が105 〜1013Ω・cmで、内部の体積抵抗率が0.1×101 Ω・cm以上、105 Ω・cm未満である特性を有し、その際、体積抵抗率が10 8 Ω・cm以上の場合は、JIS K6911に準拠し、印加電圧100Vで測定し、体積抵抗率が10 8 Ω・cm未満の場合は、JIS K7194に準拠して測定し、かつ、成形物の外層の体積抵抗率は、射出成形物(130mm×100mm×3mm;平板)をそのまま用いて測定し、成形物の内部の体積抵抗率の測定は、厚み方向の両サイドから1mmずつ削った残りの厚み1mmの平板について測定することを特徴とする
合成樹脂組成物。 - 炭素前駆体(B) が、有機物質を不活性雰囲気中で焼成して得られた焼成体である請求項1記載の合成樹脂組成物。
- 炭素前駆体(B) が、粒状または繊維状のものである請求項1記載の合成樹脂組成物。
- 炭素前駆体(B) の炭素含有量が80〜97重量%である請求項1記載の合成樹脂組成物。
- その他の充填材(D) 0〜60重量%をさらに含有する請求項1記載の合成樹脂組成物。
- その他の充填材(D) が、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウムまたはこれらの混合物である請求項5記載の合成樹脂組成物。
- 前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の合成樹脂組成物を成形してなる成形物。
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