JP4639490B2 - 反応染料混合物及びそれらの繊維材料への適用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保存安定性の優れた反応染料混合物に関し、詳しくは、シアナミドトリアジン反応染料と有機カルボン酸又はその塩を含有する反応染料混合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シアナミドトリアジン反応染料としては、例えば、特表平4−506531号公報に記載の染料が公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反応染料は一般に保存期間中に製品や空気中に含まれる水分により加水分解されやすく、特に、シアナミドトリアジン反応染料は分解されやすいという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決して保存安定性の良いシアナミドトリアジン反応染料を提供すべく鋭意検討した結果、シアナミドトリアジン反応染料と有機カルボン酸又はその塩を含有する反応染料混合物であって、且つ、該混合物を水で希釈したときのpHが特定範囲である混合物が、上記目的を達成することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、
(イ)下記(A)成分及び(B)成分を含有する混合物であって、(A)及び(B)成分の合計3重量部を100重量部の水で希釈した希釈水のpHが6〜8の範囲であることを特徴とする反応染料混合物:
(A)・・下式(1)で示される反応染料の1種以上
(B)・・1〜4個の−COOHを有するカルボン酸又はその塩の1種以上
【0006】
【化3】
【0007】
〔式中、Fはモノアゾ染料残基、ビスアゾ染料残基、トリスアゾ染料残基、テトラキスアゾ染料残基、アントラキノン染料残基、フタロシアニン染料残基、ホルマザン染料残基、トリフェニルメタン染料残基、アゾメチン染料残基、スチルベン染料残基、オキサジン染料残基、ジオキサジン染料残基又はニトロアリール染料残基であり、上記アゾ染料残基は重金属との錯体であってもよく、又、Fは、1又は2個の繊維反応基で置換されていてもよいが、該繊維反応基は式(1)中の[ ]内の基とは異なるものである。
R1は水素又は置換されていてもよいアルキルを表し、Xはフルオロ、クロロ、又は置換されていてもよいピリジニオを表し、nは1又は2を表す。〕
並びに、
(ロ)上記(イ)の混合物を用いることを特徴とする繊維材料の染色又は捺染方法を提供するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の混合物における(A)成分は式(1)で示されるシアナミドトリアジン反応染料であるが、式(1)におけるR1は、水素又は置換されていてもよいアルキルを表す。
R1で表されるアルキルは、好ましくは炭素数1〜4のものであり、該アルキルの置換基としては、例えば、ヒドロキシ、シアノ、炭素数1〜4のアルコキシ、炭素数1〜4のヒドロキシアルコキシ、ハロゲノ、カルバモイル、カルボキシ、アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル、アルキル(炭素数1〜4)カルボニルオキシ、スルホ及びスルファモイル等の非繊維反応基を挙げることができる。
上記アルキル、並びに、該アルキルの置換基としての炭素数1〜4のアルコキシ、炭素数1〜4のヒドロキシアルコキシ、アルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル及びアルキル(炭素数1〜4)カルボニルオキシは、直鎖状でもよく、分岐状であってもよい。
【0009】
R1で表される置換可能なアルキルの具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−ヒドロキシエチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、3−エトキシプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、1−ヒドロキシメチル−1−メチルエチル、1,1−ジ(ヒドロキシメチル)エチル、1,1−ジ(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、3,4−ジヒドロキシブチル、シアノメチル、2−シアノエチル、3−シアノプロピル、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、3−メトキシプロピル、3−エトキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、クロロメチル、ブロモメチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、3−クロロプロピル、3−ブロモプロピル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、1,2−ジカルボキシエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、3−カルバモイルプロピル、4−カルバモイルブチル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニルプロピル、3−エトキシカルボニルプロピル、4−メトキシカルボニルブチル、4−エトキシカルボニルブチル、メチルカルボニルオキシメチル、エチルカルボニルオキシメチル、2−メチルカルボニルオキシエチル、2−エチルカルボニルオキシエチル、3−メチルカルボニルオキシプロピル、3−エチルカルボニルオキシプロピル、4−メチルカルボニルオキシブチル、4−エチルカルボニルオキシブチル、スルホメチル、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、スルファモイルメチル、2−スルファモイルエチル、3−スルファモイルプロピル及び4−スルファモイルブチル等を挙げることができる。
【0010】
R1としては、水素、メチル又はエチルが好ましく、水素がより好ましい。
【0011】
式(1)におけるXは、フルオロ、クロロ又は置換されていてもよいピリジニオを表すが、上記置換されていてもよいピリジニオとしては、例えば、ピリジニオ、2−、3−又は4−カルボキシピリジニオ、2−、3−又は4−カルバモイルピリジニオ、3−スルホピリジニオ、4−(2−スルホエチル)ピリジニオ、3−(2−ヒドロキシエチル)ピリジニオ、4−クロロピリジニオ、3−メチルピリジニオ、及び、3,5−ジカルボキシピリジニオ等を挙げることができる。
置換されていてもよいピリジニオとしては、3−又は4−カルボキシピリジニオが好ましい。
【0012】
上記のXとしては、フルオロ、クロロが好ましく、特にクロロが好ましい。
【0013】
式(1)におけるFは、モノアゾ染料残基、ビスアゾ染料残基、トリスアゾ染料残基、テトラキスアゾ染料残基、アントラキノン染料残基、フタロシアニン染料残基、ホルマザン染料残基、トリフェニルメタン染料残基、アゾメチン染料残基、スチルベン染料残基、オキサジン染料残基、ジオキサジン染料残基又はニトロアリール染料残基であり、上記のモノアゾ染料残基、ビスアゾ染料残基、トリスアゾ染料残基及びテトラキスアゾ染料残基は重金属との錯体であってもよく、又、Fは、1又は2個の繊維反応基で置換されていてもよいが、該繊維反応基は式(1)中の[ ]内の基とは異なるものである。
【0014】
好ましいFとしては、例えば、下式(a)〜(n)で示される染料残基等を挙げることができる。なお、式(a)〜(n)中の「−」は、基−N(R1)−に接続している結合を意味する。
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、D1は下式(a-1)〜(a−3)で示される基を表し、R2およびR3は、同一又は相異なり、水素、スルホ、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ又は非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキルを表す。なお、式(a-1)〜(a−3)中の「−」は、基−N=N−に接続していることを意味する。]
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
[式中、R4は水素、シアノ、カルバモイル、スルホ又はスルホアルキルを表し、R5は非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキル又はシクロヘキシル基を表す。]
【0020】
【化7】
【0021】
[式中、R6は水素、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキル、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ、アセチルアミノ又はウレイドを表し、R7は水素、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキル、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルコキシを表す。]
【0022】
【化8】
[式中、(R8)0-2は、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキル、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ、クロロ及びスルホからなる群より選択される、0〜2個の同一又は相異なるR8基であり、Zは−CH=CH2又は−CH2CH2Lを表し、Lはアルカリの作用で脱離する基であり、R9は水素、メチル又はエチルを表し、R10は水素、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキル、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、スクシニル、マレイニル、フタロイル又は下式(3)の基を表す。
【0023】
【化9】
【0024】
0{式中、X2は、Xと同一又は相異なり、同義であり、Uはヒドロキシ、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルコキシ、非繊維反応基で置換されていてもよいフェノキシ、非繊維反応基で置換されていてもよいC1〜C4アルキルチオ又は非繊維反応基で置換されていてもよいアミノ或いは、下式(4a)、(4b)、(4c)又は(4d)で示される基である。}
【0025】
【化10】
【0026】
(式中、R11は水素又は非繊維反応基で置換されていてもよいアルキルを表し、R12及びR13は、同一又は相異なり、R11と同義であるか、或いは無置換のフェニルを表し、A1は非繊維反応基で置換されていてもよいフェニレン又は非繊維反応基で置換されていてもよいナフチレンを表し、A2は非繊維反応基で置換されていてもよいアルキレンを表し、Bは−O−、−S−又は−NR14−を表し、R14は水素、非繊維反応基で置換されていてもよいアルキル又は非繊維反応基で置換されていてもよいフェニルを表し、o及びpは、同一又は相異なり、2、3又は4を表し、qは1〜6の整数を表し、Zは前記と同義である。)]
【0027】
【化11】
【0028】
[式中、R9及びR10は前記と同義である。]
【0029】
【化12】
【0030】
[式中、R8は前記と同義である。]
【0031】
【化13】
【0032】
[式中、Pcは銅フタロシアニンのフタロシアニン核を表し、Vは脂肪族の二価基、脂環式二価基又は芳香族の二価基を表し、r及びsは、同一又は相異なり、0、1又は2を表し、tは1又は2を表し、r+s+tは4以下である。]
【0033】
【化14】
[式中、Wは非繊維反応基で置換されていてもよいフェニレン基又は非繊維反応基で置換されていてもよいジフェニレン基を表す。]
【0034】
【化15】
【0035】
[式中、Qは−O−又は−COO−を表し、G及びG'は、同一又は相異なり、非繊維反応基で置換されていてもよいフェニレンを表し、G''は非繊維反応基で置換されていてもよいフェニルを表し、Zは前記と同義である。]
【0036】
【化16】
【0037】
[式中、V及びZは前記と同義である。]
【0038】
【化17】
【0039】
[式中、Lはスルホ、ハロゲン又はアルコキシを表し、R15及びR16は、同一又は相異なり、水素又は非繊維反応基で置換されていてもよいアルキルを表す。]
【0040】
【化18】
【0041】
[式中、T1及びT2は、一方がヒドロキシ、他方がアミノであり、R8、R9、R10及びZは前記と同義である。]
【0042】
【化19】
【0043】
【化20】
【0044】
[式中、D2は非繊維反応基で置換されていてもよいフェニル又は非繊維反応基で置換されていてもよいナフチルを表し、K1及びK2は、同一又は相異なり、非繊維反応基で置換されていてもよいフェニレン又は非繊維反応基で置換されていてもよいナフチレンを表す。]
【0045】
上記(a)〜(c)、(h)〜(i)、(k)及び(n)式中の各基の置換基である非繊維反応基、並びに、上記(d)式における式(3)及び(4a)〜(4c)中の各基の置換基である非繊維反応基の具体例としては、ヒドロキシ、シアノ、直鎖状または分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、直鎖状または分岐状の炭素数1〜4のヒドロキシアルコキシ、ハロゲノ、カルバモイル、カルボキシ、直鎖状または分岐状のアルコキシ(炭素数1〜4)カルボニル、直鎖状または分岐状のアルキル(炭素数1〜4)カルボニルオキシ、スルホ、スルホン酸エステル及びスルファモイル等の非繊維反応基を挙げることができる。
【0046】
上式(1)におけるnは、1又は2である。
【0047】
式(1)で示される反応染料としては、特に、下式(2)で示される染料が好ましい。
【0048】
【化21】
【0049】
〔式中、F1はモノアゾ染料残基、ビスアゾ染料残基、トリスアゾ染料残基、テトラキスアゾ染料残基、アントラキノン染料残基、フタロシアニン染料残基、ホルマザン染料残基、トリフェニルメタン染料残基、アゾメチン染料残基、スチルベン染料残基、オキサジン染料残基、ジオキサジン染料残基又はニトロアリール染料残基であり、又、F1は、複素環式繊維反応基を有していてもよい。
Zは−CH=CH2又は−CH2CH2Lを表し、Lはアルカリの作用で脱離する基であり、sは1〜3の整数を表し、X、n及びR1は上記の意味を表す。〕
【0050】
(B)成分である1〜4個の−COOHを有する化合物としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ケイ皮酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸又はエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0051】
好ましい1〜4個の−COOHを有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸又はエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0052】
本発明で用いられる式(1)の反応染料及び、1〜4個の−COOHを有する化合物は、遊離酸の形であってもよく、塩の形であってもよく、それらの混合物の形であってもよい。好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びこれらを含有する混合物の形であり、特に好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩及びそれらを含有する混合物の形である。
【0053】
本発明で用いられる反応染料(1)は、例えば、特公昭48−22818号公報や特表平4−506531号公報に記載の方法又は該方法に準じて製造することができる。
又、1〜4個の−COOHを有するカルボン酸又はその塩と反応染料(1)との混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、反応染料(1)の製造時に混合されてもよく、製造後に混合されてもよい。混合時の形態は、粉状や顆粒状等の固体でもよく、水溶液でもよく、それらの組み合わせでもよい。
【0054】
好ましい本発明の反応染料混合物は、反応染料(1)の100重量部に対して、1〜4個の−COOHを有する化合物が5〜30重量部の混合割合である。
【0055】
本発明の反応染料混合物は、好ましくは、(A)成分及び(B)成分以外に、リン酸塩化合物を含有するものである。
リン酸塩化合物としては、第一リン酸、第二リン酸、ジリン酸、トリポリリン酸の塩が挙げられる。リン酸塩化合物としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びこれらを含有する混合物の形であり、特に好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩及びこれらの混合物である。
【0056】
本発明の反応染料混合物は、例えば、繊維材料を染色又は捺染する染料として有用である。繊維材料としては、ヒドロキシ基及び/又はカルボンアミド基を含有するものであれば特に限定されないが、例えば、天然又は再生セルロース繊維材料、天然又は合成ポリアミド繊維材料、ポリウレタン繊維材料、皮革、及びこれらを含有する混紡材料等を挙げることができる。
【0057】
天然セルロース繊維材料として、具体的には、木綿、あるいはその他の植物繊維、例えばリネン、麻、ジュート及びラミー繊維等を挙げることができる。
再生セルロース繊維材料としては、例えばレーヨン、ポリノジック、キュプラ繊維、及び商品名「テンセル」、「タフセル」、「モダール」、「セルティマ」等を挙げることができる。
【0058】
天然又は合成ポリアミド繊維材料として、具体的には、羊毛、その他の動物毛、絹、ポリアミド−6,6、ポリアミド−6、ポリアミド−11、ポリアミド−4等を挙げることができる。
【0059】
又、これらを含有する混紡材料としては、これらの繊維材料の混紡材料の他、これらの繊維材料と、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維との混紡材料等も例示することができる。
【0060】
本発明の反応染料混合物は、上述の材料上に、特に上述の繊維材料上に、物理化学的性状に応じた方法で染色又は捺染することができる。
【0061】
具体的には、例えば、上述の繊維材料上に、吸尽染色法、コールドバッチアップ法、連続染色法、捺染法等の方法により染色又は捺染する方法を挙げることができる。
例えばセルロース繊維材料上に吸尽染色する場合、炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダ、重炭酸ソーダ、苛性ソーダのような酸結合剤の存在下、必要に応じて、芒硝や食塩等の中性塩を加え、さらに必要に応じて、溶解助剤、浸透剤又は均染剤等を併用し、30〜100℃程度の温度で染色する方法等が例示される。ここで酸結合剤、中性塩等の添加は、一度に行ってもよく、又常法により分割して行ってもよい。
【0062】
セルロース繊維上にコールドバッチアップ法で染色する場合においては、芒硝や食塩等の中性塩、及び、苛性ソーダやケイ酸ソーダ等の酸結合剤を用いてパジング後、密閉包装材料中に一定温度で放置して処理する方法等が例示される。
【0063】
セルロース繊維上に連続染色法で染色する場合においては、炭酸ソーダや重炭酸ソーダ等の酸結合剤の存在下、公知の方法で室温又は高められた温度でパジング後、スチーミング又は乾熱により処理する一相パジング法や、本発明の化合物が溶解されているパジング液に繊維を浸漬後、芒硝や食塩等の中性塩、及び、苛性ソーダやケイ酸ソーダ等の酸結合剤をパジングし、スチーミング又は乾熱することにより処理する二相パジング法等が例示される。
【0064】
セルロース繊維上に捺染を行う場合においては、一相で、重曹等の結合剤を含有する捺染ペーストで印捺し、次いで80℃以上の高温でスチーミングする方法や、二相で、例えば中性又は弱酸性の捺染ペーストで印捺し、これを電解質含有のアルカリ性浴に通過させた後、又はアルカリ性の電解質含有パジング液でオーバーパジングし、その後スチーミング又は乾熱することにより処理する方法等が例示される。ここで、捺染ペーストには、例えばアルギン酸ソーダや澱粉エーテル等の糊剤及び/又は乳化剤を含んでいてもよく、また必要に応じて、例えば尿素等の捺染助剤及び/又は分散剤を含んでいてもよい。
【0065】
セルロース繊維上に本発明の反応染料混合物を染色又は捺染する場合、用いられる酸結合剤は特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と無機又は有機酸との水溶性塩基性塩、あるいは加熱状態でアルカリを遊離する化合物等を例示できる。特に、アルカリ金属の水酸化物及び弱ないし中程度の強さの無機又は有機酸のアルカリ金属塩が挙げられ、これらの中でも、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。このような酸結合剤として具体的には、上述した炭酸ソーダ、第三燐酸ソーダ、重炭酸ソーダ、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、重曹の他に、苛性カリ、蟻酸ソーダ、炭酸カリ、第一又は第二燐酸ソーダ、トリクロロ酢酸ソーダなども挙げられる。
【0066】
合成又は天然のポリアミド繊維上や、ポリウレタン繊維上に吸尽染色する場合においては、酸性〜弱酸性の染浴中、pH値の制御下、本発明の反応染料混合物を吸尽させ、次いで60〜120℃程度の温度下、中性〜アルカリ性のpH値に変化させる方法等が例示される。ここで必要に応じて、均染剤等、例えば塩化シアヌルと3倍モル量のアミノベンゼンスルホン酸又はアミノナフタレンスルホン酸との縮合生成物あるいは、例えばステアリルアミンとエチレンオキサイドとの付加生成物等の均染剤等を用いても差し支えない。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。例中、「部」及び「%」は、重量部及び重量%である。
【0068】
実施例1
遊離酸の形が、下式(5)
【0069】
【化22】
【0070】
で表される化合物1264部とフタル酸ソーダ210部、リン酸二水素ナトリウム193部を、それぞれ水溶液として混合後、乾燥して黒色の粉体染料混合物を得た。得られた粉体染料混合物は、30重量倍の水に溶解したときのpHは7であった。上記の粉体染料混合物を60℃の条件で、保存安定性試験を行ったが、28日後でも、式(5)の化合物の残存率が83%と高く、染色力の低下は殆ど認められなかった。
【0071】
比較例1
1264部の上記化合物(5)及び193部のリン酸二水素ナトリウムから、黒色の紛体染料混合物を得(30倍希釈時のpHは7)、実施例1と同様の保存安定性試験を行った。式(5)の化合物の残存率は70%と、実施例1に比べて低かった。
【0072】
実施例2
フタル酸ソーダの代わりにマレイン酸ソーダ160部を用いる以外は、実施例1と同様にして、黒色の紛体染料混合物を得た。この混合物を用いて、実施例1と同様の保存安定性試験を行った結果、式(5)の化合物の残存率が高く、染色力の低下は殆ど認められなかった。
【0073】
実施例3
フタル酸ソーダの代わりにフマル酸ソーダ160部を用いる以外は、実施例1と同様にして、黒色の紛体染料混合物を得た。この混合物を用いて、実施例1と同様の保存安定性試験を行った結果、式(5)の化合物の残存率が高く、染色力の低下は殆ど認められなかった。
【0074】
実施例4
フタル酸ソーダの代わりに安息香酸ソーダ144部を用いる以外は、実施例1と同様にして、黒色の紛体染料混合物を得た。この混合物を用いて、実施例1と同様の保存安定性試験を行った結果、式(5)の化合物の残存率が高く、染色力の低下は殆ど認められなかった。
【0075】
実施例5
フタル酸ソーダの代わりにコハク酸ソーダ162部を用いる以外は、実施例1と同様にして、黒色の紛体染料混合物を得た。この混合物を用いて、実施例1と同様の保存安定性試験を行った結果、式(5)の化合物の残存率が高く、染色力の低下は殆ど認められなかった。
【0076】
実施例6
実施例1においてフタル酸ソーダの代わりにエチレンジアミン四酢酸ナトリウム38.0部を用い黒色の紛体を得た。このものを60℃、28日間の加速貯蔵試験を行った結果、残存率が高く、染色力の低下は殆ど認められなかった。
【0077】
実施例7
上式(5)で示される化合物を下表1〜5における第2欄の化合物に変える以外は、実施例1〜6と同様に調製して得られる紛体染料混合物は、いずれも、有機カルボン酸塩を含まない組成物に比べて、安定性が向上する。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
実施例8
実施例1で得た反応染料混合物の0.1、0.3及び0.6部を、各々、水200部に溶解し、芒硝6部と木綿10部を加え、70℃に昇温し、炭酸ソーダ4部を加えて、1時間染色し、水洗、ソーピング、水洗、乾燥後に得られる染色物は、いずれも均一で色の濃い紺色であり、諸堅牢度、固着率、ビルドアップ性、溶解性及び均染性が良好である。又、上記の水洗時及びソーピング時における染色排水の着色も僅かである。
【0084】
実施例9
芒硝量を6部から4部に変える以外は実施例8と同様にして得られる染色物は、各々、実施例1で得た染色物と同等の品質を有する。
【0085】
実施例10
染色温度を60℃に変える以外は実施例8、9と同様にして得られる染色物は、各々、実施例8〜9で得られる染色物と同等の品質を有する。
【0086】
【発明の効果】
本発明の反応染料混合物は、式(1)で表される反応染料に比べて、保存安定性に優れており、特にセルロース繊維材料を染色する際に、溶解性、均染性及び染色再現性に優れるという利点がある。
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