JP4639301B2 - 寸法安定性防水膜材 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維布帛からなる基布と、その上に形成された1層以上の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物含有防水樹脂層を含む防水被覆層とを含み、寸法安定性に優れた防水膜材に関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、トラック幌、トラックシート、および屋内向けフロアシートなどに用いたとき、使用中の寸法変化による歪み及び弛みが少なく、フラット性が良好であり、内分泌攪乱物質として疑いを持たれている化学物質を含むことなく、従来方法によって製造することが可能で、かつ、耐久性に優れた防水膜材に関するものである。
繊維布帛からなる基布に、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む防水被覆層を形成した防水膜材は、大型〜小型テント、シート倉庫、トラック幌、トラック荷台のカバーシート、野積みシート、雨除け、建築現場の養生シート、屋内イベント向けフロアシートなど多くの分野で使用されている。
防水膜材に用いられる基布としては、ポリエステル、ナイロン、ビニロンなどの合成繊維からなるマルチフィラメント糸条を、経糸及び緯糸として用いて織編された繊維布帛、及びあるいは、ポリエステル、ビニロンなどの合成繊維からなる紡績糸条を経糸及び緯糸として用いて織編された繊維布帛が使用されている。これらの基布を含むターポリン及び防水帆布は、通常100cm〜300cmの幅を有する長尺の繊維布帛を基布として使用し、この基布の表裏面を軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物層により被覆したものであって、一般に連続長尺加工を施すことによって製造されている。
この連続長尺加工において、繊維布帛の表裏面に軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物層を均一な厚さで被覆するには、繊維布帛に張力を付加してフラットな状態に維持することが必要であるが、このような連続加工では、繊維布帛の長手(経)方向には幅(緯)方向よりも大きな張力が付加されるため、得られるターポリン及び防水帆布は、長手(経)方向に伸長され、幅(緯)方向では縮小される傾向、すなわち緯糸に比べて経糸がより伸長された状態になり、このため、ターポリンや防水帆布の経緯方向に張力がかかると、経時的に、緯糸(幅)方向の長さが経糸(長手)方向の長さ以上に伸びるという現象を起こし、使用時に歪み及び弛みを引き起こすという問題がある。
これらの経・緯の寸法変化のバランスを安定させるための対策として、繊維織物の経糸と緯糸のそれぞれの一部分を特定間隔で芳香族ポリアミド繊維のような高弾性率繊維糸条により構成した基布(例えば、特開昭59−9053号公報、特許文献1参照)を用いることも有効である。しかし、このような構成を有する基布では、2種類の繊維糸条の熱収縮率が大きく異なるため、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物層を形成するための加工の際に付加される熱により、基布全面に収縮歪み痕を生じ、ターポリンや防水帆布の外観及びフラット性が不良になるという問題がある。また、ポリエステルマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸として用いて織編された繊維布帛を基布として用い、この基布に軟質ポリ塩化ビニル系樹脂をコーティングする際に、基布に対して長手(経)方向に掛かる張力と同一の張力を幅(緯)方向に掛けることのできる特殊な加工機を用いることによって、得られる膜材の経・緯方向の寸法変化のバランスが同等となる商品(例えば、「プレコントラン、膜構造用膜材料」株式会社サエラ発行 非特許文献1参照)が提案されている。このような加工方法を用いることによって、経・緯方向の寸法変化のバランスを同等とすることは可能であるが、その加工方法は、基布の左右端縁部を固定して行うことが可能なコーティング法のみに限られ、ディッピング法、フィルムラミネート法などのようにロール圧搾及びロール圧着などの工程を含む膜材製造には適用できず、特に目合いの開いた粗目織物に対しては、塗工液が裏漏れするため、工業的に加工することができないという欠点があった。また、この方法で得られる膜材は、ポリエステルマルチフィラメント基布の表面に軟質ポリ塩化ビニル系樹脂によるコーティング被覆層が設けられただけのものとなるため、耐屈曲性が不十分であり、トラック走行時の風によるはためきやフロアシート上の歩行により樹脂被覆層に亀裂や剥離が発生し易く、耐久性が不十分であった。
一方、防水被覆層に含まれる軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、可塑剤として主にジ−(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)等のフタル酸系可塑剤が用いられており、また、特に耐寒性を必要とされる場合などには、DOPにジ−(2−エチルヘキシル)アジペート(DOA)をブレンドした可塑剤が用いられている。これらの可塑剤は比較的安価であり、加工性にも優れ、得られる軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の物性もバランスの良いものであるが、経時的に防水膜材表面に可塑剤がブリードし、表面に粘着を生じて汚れの原因となるという問題を有している。また、ブリードした可塑剤は、僅かずつ揮発して、屋内或いは大気中に拡散していくが、その経口毒性は非常に低いことが知られていたので、これらの可塑剤は、長年にわたって汎用の可塑剤として安心して使用されてきた。ところが、近年になって、環境庁(現環境省)が発表した内分泌攪乱作用が疑われる化学物質の中に、DOPおよびDOAが含まれており、このためこれらの可塑剤の大気中への拡散、屋内における吸引、産業廃棄物として埋め立てられた後の土壌或いは地下水の汚染、河川・湖沼への流出、などがにわかに懸念されるようになり、これらに代わる可塑剤を用いた防水膜材に対する要望が高まってきている。
DOP等のフタル酸エステル系可塑剤に代わる可塑剤として、従来からポリエステル系可塑剤が知られている。これらの高分子系可塑剤は、その高い分子量に起因して揮発性が低いけれども、DOPやDOAに較べて可塑化効率が劣るため、防水膜材を加工する際には通常よりも高温度の加熱条件と、長い熱処理時間を要し、このため基布の幅(緯)方向の収縮が大きくなり、得られる防水膜材の、経・緯方向の寸法変化のバランスがより悪くなるという問題があり、さらにDOP使用製品に比べて高分子系可塑剤を使用して得られる製品の風合いが硬くなり、耐寒性がより低くなるという問題がある。特に多量のポリエステル系可塑剤を配合した場合、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する相溶性が低いことに起因して、高温・高湿度の状態では高分子系可塑剤のブリードの問題がある。さらに、ペースト加工においては、ペーストゾルの粘度が高くなり過ぎてコーティングに用いることができず、粘度低減用の揮発溶剤を多量に必要とするが、大気中へのこれらの揮発溶剤の排出行為は昨今の環境法令上、制限事項とされている。また高分子系可塑剤として、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(例えば商品名:ELVALOY(三井・デュポンポリケミカル(株)製))が知られているが、これらを用いて得られる製品の風合は、ポリエステル系可塑剤使用品以上に硬くなり、さらに耐寒性が不十分になるなどの問題があり、さらに、常温で固体であるため、ペースト加工には使用できないなどの問題もある。
さらに、DOP等のフタル酸エステル系可塑剤及びDOA以外で衛生性に優れた可塑剤として、クエン酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤、安息香酸エステル系可塑剤、等も知られている。例えば、クエン酸エステル系可塑剤は食品包装や乳幼児向けの玩具にも使用されるなど、安全性の高い可塑剤であり、ポリ塩化ビニル系樹脂の可塑剤として用いた場合、耐寒性、耐候性、耐水性に優れた防水膜材を得ることができる。しかし、これを単独で配合した場合、DOPに較べて揮発性および表面への移行性が高いため、経時的に風合いの変化が大きく、汚れが付着しやすいという問題がある。また、スルホン酸エステル系可塑剤の場合は、ゲル化特性が良く、機械的特性、絶縁性、耐候性に優れた防水膜材を得ることができるが、それを単独で配合した場合、DOPを用いたときに比べて低温時の風合いが硬くなり、ペースト加工においては、加工液の粘度が高いため粘度調整用の揮発溶剤量の必要量が多量になるという問題があり、さらに、カレンダー加工の場合には、ロール滑性が劣るため、滑剤を加えたり、温度条件を調整しなければならないなどの制約もある。また、安息香酸エステル系可塑剤の場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する相溶性が非常によく、防汚性に優れているが、それを単独で配合した場合、DOPを用いたときに比べて耐寒性、耐水性が不十分になり、ペースト加工においては、粘度が経時的に著しく増加するため、加工安定性が低いという問題がある。
これらの可塑剤単独配合の問題点を解決するため、複数種の可塑剤をブレンドしてDOPと同様の加工性及び性能を得ようという試みもいくつかなされている。例えば、アセチルクエン酸トリブチルからなる可塑剤(1)と、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤から選ばれる少なくとも1種の可塑剤(2)とのブレンド可塑剤を用いる試み(特開2003−105150号公報、特許文献2参照。)及び、クエン酸エステル系可塑剤(a)、アジピン酸エステル系可塑剤(b)、及び安息香酸エステル系可塑剤(c)の3種類から選ばれる少なくとも2種類の可塑剤のブレンド可塑剤を用いる試み(特開2002−194159号公報、特許文献3参照。)などが知られているが、これらのブレンド可塑剤は、それぞれ消しゴム或は使い捨て手袋用に開発されたものであり、トラック幌、トラックシート、フロアシートの様な高い耐久性を求められる用途に用いるための軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物としては、物性、加工性の面で満足できるものではなく、また、使用する可塑剤に含まれる副生成物及び不純物に関して十分な検討がなされておらず、このため、製品分析上、内分泌攪乱作用が疑われる化学物質が検出されるなどの問題がしばしば発生している。
特にトラック幌、トラックシート、および屋内向けフロアシートなどの産業資材シートについては、これらの耐久性の向上、及び寸法安定性の向上が望まれると同時に、トラック幌構造物内における揮発可塑剤の吸引、積荷の可塑剤汚染並びに体育館、公民館などの集会場に使用されているときの揮発可塑剤の吸引などの心配が不必要で、安心性の高い可塑剤設計による防水膜材が望まれているが、この要望を十分に満足する防水膜材は未だ提案されていない。
特開昭59−9053号公報 特開2003−105150号公報 特開2002−194159号公報 フェラーリ社、「プレコントラン、膜構造用膜材料」株式会社サエラ発行、平成11年1月
本発明は、内分泌攪乱物質として疑いを持たれている化学物質を含むことなく、従来と同等の加工条件で製造することが可能であり、かつ、耐久性に優れ、特に使用中の寸法変化による歪み及び弛みが少なく、フラット性が良好であって、トラック幌、トラックシート、および屋内向けフロアシートなどに好適な、寸法安定性に優れた防水膜材を提供しようとするものである。
本発明は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、経糸に短繊維紡績糸条、緯糸にマルチフィラメント糸条を配置してなる繊維布帛を基布とし、その一面上以上に、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物含有防水樹脂層を含む防水被覆層が形成され、前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる複合可塑剤として、スルホン酸エステル系可塑剤化合物、或はスルホン酸エステル系可塑剤とポリエステル系可塑剤とのブレンドからなる可塑剤成分(A)と、クエン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(B)のブレンドを用いることにより前記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の寸法安定性防水膜材は、短繊維紡績糸条からなる経糸及びマルチフィラメント糸条を含む緯糸により構成された繊維布帛を含む基布と、この基布の少なくとも1面上に形成され、かつ軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む1層以上の防水樹脂層を含む防水被覆層とからなる可撓性積層体であって、
前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物、或いは、少なくとも1種のポリエステル系可塑剤化合物と少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物とのブレンドからなる可塑剤成分(A)と、少なくとも1種のクエン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(B)とのブレンドのみからなる複合可塑剤を、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して30〜150質量部の添加量で含み、
前記複合可塑剤中の前記可塑剤成分(A)及び(B)の質量ブレンド比(A):(B)が30:70〜90:10の範囲内にありまた
前記可撓性積層体のJIS L1096に準拠する引張試験に供された経方向用試験片および、緯方向用試験片の応力と伸び率との関係曲線(S−Sカーブ)において、経方向用試験片の破断応力の1/10の応力における伸び率(%)と、緯方向用試験片の破断応力の1/10の応力における伸び率(%)との差の絶対値が0〜1%の範囲内にある
ことを特徴とするものである。
本発明の防水膜材において、前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる複合可塑剤が、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(A)30〜90質量%と、前記クエン酸エステル系可塑剤成分(B)70〜10質量%からなることが好ましい。
本発明の防水膜材において、前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる複合可塑剤が、少なくとも1種のポリエステル系可塑剤化合物と少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物とのブレンドからなる可塑剤成分(A)30〜90質量%と、前記クエン酸エステル系可塑剤成分(B)70〜10質量%からなり、前記可塑剤成分(A)中のポリエステル系可塑剤化合物と前記スルホン酸エステル系可塑剤化合物の質量ブレンド比が、10:90〜90:10であることが好ましい。
本発明の防水膜材において、前記ポリエステル系可塑剤化合物を含む可塑剤成分(A)が、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを含まないことが好ましい。
本発明の防水膜材において、前記クエン酸エステル系可塑剤化合物がアセチルクエン酸トリブチルであることが好ましい。
本発明の防水膜材において、前記緯糸が、マルチフィラメント糸条からなる芯部と、この芯部の全周面を被覆し、かつ短繊維からなる鞘部とにより構成されたコア−スパン糸条を含むことが好ましい。
本発明の防水膜材において、前記防水被覆層が、前記防水樹脂層の最外面上に形成された防汚層をさらに含んでいてもよい。
本発明の防水膜材において、前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が、さらに多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、それによって前記防水樹脂層が紫外線架橋性を有していることが好ましい。
本発明の防水膜材において、前記防水樹脂層中の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が、電子線、またはγ線の照射により架橋されていることが好ましい。
本発明の防水膜材は内分泌攪乱物質として疑いを持たれている化学物質を含むことなく、従来と同様の加工条件で製造することが可能で、かつ、耐久性に優れ、特に使用中の寸法変化による歪み、弛みが少なく、フラット性が良好であり、このため、トラック幌、トラックシート、および屋内向けフロアシートなどに好適である。
本発明の寸法安定性防水膜材(以下本発明の防水膜材と表記する)は、経糸に短繊維紡績糸条、緯糸にマルチフィラメント糸条を配置してなる繊維布帛を基布として含み、その一面上以上に、1層以上の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物含有防水樹脂層を含む防水被覆層が形成された可撓性積層体である。本発明の防水膜材において、前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、複合可塑剤として、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物、或は、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物と少なくとも1種のポリエステル系可塑剤化合物とのブレンドからなる可塑剤成分(A)と、少なくとも1種のクエン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(B)とのブレンドが用いられる。可塑剤成分(A)と可塑剤成分(B)との質量ブレンド比は30:70〜90:10(質量比)であり、特に可塑剤成分(A)にポリエステル系可塑剤化合物が含まれる場合、その製造工程において生成する副生成物、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを含まないものを用いることが好ましい。上記のような特定組織をもつ基布を使用することにより、経・緯方向の寸法変化のバランスに優れ、使用中の寸法変化による歪み、及び弛みが少ない防水膜材を得ることができ、さらに、上記のような軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いることにより、内分泌攪乱物質として疑いを持たれている化学物質を含むことなく、かつ、耐久性に優れる防水膜材を、従来同様の方法により製造することが可能となる。
本発明の防水膜材は、JIS L1096に準拠する引張試験に供された経方向用試験片および、緯方向用試験片の応力と伸び率との関係曲線(S−Sカーブ)図、例えば図1において、経方向用試験片破断応力の1/10の応力における伸び率(%)と、緯方向用試験片の破断応力の1/10の応力における伸び率(%)との差の絶対値が0〜1%の範囲内にあることを特徴とする。経方向用試験片または緯方向用試験片の引張試験において、試験片に付加された応力(stress)を縦軸に示し、それに対応する試験片の伸び率(strain,%)を横軸にして、両者の関係を示す曲線(S−Sカーブ)を描くと、例えば、図1に示されているカーブが得られる。カーブの点1は、試験片の破断点を示し、点1に対応する応力の値は点2によって示される。この破断応力2の1/10の値を縦軸上に点3で示すと、この点3に対応する伸び率は横軸上の点4の値として求めることができる。本発明の防水膜材において、経方向および緯方向の伸び率(%)が同値であることが好ましいが、その差の絶対値が1%以内であれば、経・緯の何れが大きくともよい。経方向と緯方向の伸び率の差の絶対値が1%を超えると、得られる防水膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の寸法変化のバランスを良好に保つことが困難になり、防水膜材の使用時に歪みや弛みを生じ、膜材のフラット性(平坦性)が損なわれる。また、一方本発明の防水膜材は、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向用試験片の破断応力の1/10の応力荷重下における24時間後のクリープ歪み率(%)と、緯方向用試験片の破断応力の1/10の応力荷重下における24時間後のクリープ歪み率(%)との差の絶対値が0〜1%の範囲内にあることが好ましい。クリープ歪み率は経方向と緯方向が同値であることが好ましいが、クリープ歪み率の差の絶対値が1%以内であれば、経方向と緯方向の何れが大きくともよい。経方向と緯方向のクリープ歪み率の差の絶対値が1%を超えると、得られる防水膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の寸法変化のバランスを良好に保つことが困難になることがあり、防水膜材の使用時に歪みや弛みを生じ、膜材のフラット性が損なわれることがある。本発明の防水膜材において、その経方向と緯方向の伸び率の差の絶対値が0〜1%、かつ/もしくは経方向と緯方向のクリープ歪み率の差の絶対値が0〜1%であることが好ましい。
本発明の防水膜材には、経糸条と緯糸条とからなる織布、または編布を基布として使用できるが、経(長手)方向と緯(幅)方向の寸法変化のバランスを良好に保つために、特に織布を用いることが好ましい。本発明の防水膜材において、その基布として編布が用いられる場合、経糸とは縦目(ウェール、wales)を形成する糸条を意味し、経方向とは、縦目方向を意味し、緯糸とは、横目(コース、course)を形成する糸条を意味し、緯方向とは横目方向を意味する。基布として織布が用いられる場合、この織布は、平織、綾織、繻子織などいずれの構造を有していてもよいが、防水膜材の経・緯方向のバランスから、平織布を用いることが最も好ましい。編布の場合は、ラッセル編物を用いると引裂強さに優れていて、本発明の基布として好ましい。これらの繊維布帛には、必要に応じて、公知の繊維処理加工、例えば、精練処理、漂白処理、染色処理、柔軟化処理、撥水処理、吸水防止処理、防黴処理、防炎処理およびバインダー樹脂処理、などを施して使用する事ができる。
繊維布帛を形成する経糸は、ポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、および天然短繊維から選ばれた何れか1種の短繊維の紡績糸条、もしくはこれらの繊維の混紡による短繊維紡績糸条から選ばれることが好ましい。また、繊維布帛を形成する緯糸は、ポリエステルマルチフィラメント、ビニロンマルチフィラメント、ポリプロピレンマルチフィラメント、およびナイロンマルチフィラメントから選ばれた何れか1種のマルチフィラメント糸条、並びにこれらの繊維の混合によるマルチフィラメント糸条、またはこれらのマルチフィラメント糸条を含む芯部と、この芯部の全周面を被覆し、かつポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、ナイロン短繊維、および天然短繊維から選ばれた1種以上の短繊維を含む鞘部とから構成されるコア−スパン糸条などから選ばれる。本発明において、基布に用いられる天然繊維は、例えば、綿、麻、ケナフ、竹などのセルロース系繊維から選ばれることが好ましい。本発明に用いる繊維布帛の経糸および緯糸には、ポリエステル短繊維とポリエステルマルチフィラメント、ビニロン短繊維とビニロンマルチフィラメント、ポリプロピレン短繊維とポリプロピレンマルチフィラメント、或はナイロン短繊維とナイロンマルチフィラメントなどのように同種の繊維を用いることは、経(長手)方向と緯(幅)方向の寸法変化のバランスを良好に保つために好ましい。前記マルチフィラメントは、それと同一種の重合体からなる短繊維とからなるコア−スパン糸条であってもよい。例えば本発明に用いる繊維布帛の最良の形態は、経糸としてポリエステル短繊維紡績糸条を用い、緯糸としてポリエステルマルチフィラメント糸条を用いて得られる交織ポリエステル繊維布帛、および経糸としてポリエステル短繊維紡績糸条を用い、緯糸として、ポリエステルマルチフィラメント糸条からなる芯部と、この芯部の全周面がポリエステル短繊維により被覆されているコア−スパン糸条を用いて得られる交織ポリエステル繊維布帛である。前記コア−スパン糸条に占める短繊維の含有量は50質量%以下であり、5〜35質量%であることが好ましい。短繊維含有量が50質量%を超えると、得られる膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の寸法変化のバランスを良好に保つことが困難となることがある。ポリエステル繊維としては、具体的に、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート樹脂から紡糸されたポリエステル繊維は汎用性、繊維強度、寸法安定性および、耐熱クリープ性の全ての面で好ましいものである。
本発明の防水膜材において、基布用繊維布帛の経糸に使用される短繊維紡績糸条の糸条織度は、591dtex(10番手)〜97dtex(60番手)の範囲内にあることが好ましく、これらの中でも、特に591dtex(10番手)、422dtex(14番手)、370dtex(16番手)、295dtex(20番手)、246dtex(24番手)、197dtex(30番手)などの太さを有する紡績糸を用いることが好ましい。これらの短繊維紡績糸条は、単糸双糸、単糸3本以上の合撚糸、またはこれらの2本引揃糸、或いは2本合撚糸などの形態で用いることができる。繊維布帛が織物組織を有する場合、経糸打ち込み密度は、25.4mm(1インチ)当り20〜120本であることが好ましく、より好ましくは30〜70本である。この場合、経糸として特に591〜295dtex(10〜24番手)の単糸、または422〜197dtex(14〜30番手)の双糸を用いることが好ましい。また、経糸の撚り回数は、普通撚糸の場合500〜2000回/mであることが好ましく、強撚糸の場合、2000回以上/mであることが好ましい。また、短繊維紡績糸条の引張破断伸び率は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。短繊維紡績糸条の150℃における乾熱収縮率は、0〜35%であることが好ましく、0〜20%であることがより好ましい。
また、本発明の防水膜材において、基布用繊維布帛の緯糸には、111〜2222dtex(100〜2000デニール)の範囲のマルチフィラメント糸条を用いることが好ましく、277〜1111dtex(250〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条を用いることがより好ましい。マルチフィラメント糸条の太さが111dtex(100デニール)より細いと、得られる防水膜材の引裂強力が不十分になることがあり、また、それが2222dtex(2000デニール)よりも太くなると、得られる防水膜材が剛直となり風合いが不満足になり、質量/単位面積も過度に大きくなるなど、使用上問題となることがある。繊維布帛に対する緯糸の打ち込み密度は、25.4mm(1インチ)当り10〜80本であることが好ましい。特に555dtex(500デニール)のマルチフィラメント糸条を緯糸として25.4mm(1インチ)当り15〜50本の緯密度で打ち込んで得られる繊維布帛及び1111dtex(1000デニール)のマルチフィラメント糸条を、緯糸として25.4mm(1インチ)当り10〜35本の緯密度で打ち込んで得られる繊維布帛がより好ましい。これらのマルチフィラメント糸条は無撚であってもよく、或いは、加撚されたものであってもよい。
また、本発明の防水膜材において、繊維布帛の緯糸に使用するコア−スパン糸条としては、マルチフィラメント糸条からなる芯部と、その全周面を被覆し、かつ短繊維からなる鞘部とからなるコア−スパン糸条を用いると、得られる防水膜材の耐屈曲性が著しく向上する。芯部を形成するマルチフィラメント糸条は、277〜1666dtex(250〜1500デニール)の範囲内の織度を有するものであることが好ましく、355〜1111dtex(320〜1000デニール)の範囲内にあることがさらに好ましい。芯部を形成するマルチフィラメント糸条の太さが277dtex(250デニール)よりも細いと、短繊維による被覆が困難となるばかりでなく、防水膜材の引裂強力が不十分になることがある。またそれが、1666dtex(1500デニール)よりも太いと、得られる膜材が必要以上に嵩高となり、使用上の問題となることがある。前記コア−スパン糸条に占める短繊維含有量は50質量%以下であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましい。短繊維の含有量が50質量%を超えると、得られる防水膜材の経(長手)方向と緯(幅)方向の寸法変化のバランスを良好に保つことが困難になることがある。鞘部の短繊維は、芯部を形成している加撚されたマルチフィラメント糸条の単フィラメントの間に絡まって保持され、かつ捲き回わされていること(マルチフィラメント糸条の加撚方向と反対方向でもよく同一方向でもよい)が好ましい。これらのコア−スパン糸条の2本以上を加撚して1本の糸条として、これを緯糸として用いることもできる。前記コア−スパン糸条の鞘部用短繊維の繊度は、0.55〜11.1dtex(0.5〜10デニール)であることが好ましく、1.1〜5.5dtex(1〜5デニール)であることがより好ましい。また、鞘部用短繊維の長さは、30〜200mmであることが好ましく、50〜150mmであることがより好ましい。繊維布帛において、経糸打ち込み密度は、25.4mm(1インチ)当り10〜60本であることが好ましい。例えば555dtex(500デニール)のマルチフィラメント糸条を芯とするコア−スパン糸条(短繊維含有率:35質量%)を緯糸として用い、これを25.4mm(1インチ)当り15〜50本の織密度で打ち込んで得られる繊維布帛、並びに、例えば1111dtex(1000デニール)のマルチフィラメント糸条を芯として含むコア−スパン糸条(短繊維含有率:35質量%)を緯糸として用い、これを25.4mm(1インチ)当り10〜35本の織密度で打ち込んで得られる繊維布帛などが本発明に好適に用いられる。また、マルチフィラメント糸条、およびコア−スパン糸条の引張破断伸び率は50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。マルチフィラメント糸条、およびコア−スパン糸条の150℃における乾熱収縮率は、0〜35%であることが好ましく、0〜20%であることがより好ましい。
上記経糸として短繊維紡績糸条を用い、緯糸としてマルチフィラメント糸条、またはコア−スパン糸条を用いて交織して得られる繊維布帛は、糸間に空隙率5〜35%の空隙を有する目抜け織物であってもよく、空隙率が0〜5%の高密度織物であってもよい。糸間の空隙率が35%を超えると、膜材に含む繊維糸条の含有率が過小になり、得られる膜材の寸法安定性が不十分になることがある。ここで、空隙率とは繊維性基布の単位表面積(A)中に占める糸の合成面積(B)の百分率(B/A×100%)を求め、これを100から差し引いた値〔100−(B/A×100)%〕として求めることができる。例えば空隙率は経方向10cm×緯方向10cmの面積100cm2を表面単位面積として用いることができる。特に簡便法として、市販の複写機を用いて繊維布帛の表面形状を複写して得られた画像から経方向25.4mm×緯方向25.4mmの正方形を切り出し、これをさらに複写機で任意の倍率に拡大して、紙またはフィルムに複写し、この紙またはフィルムから繊維布帛の画像が写された部分(正方形)を切り出し、この質量(S)を求め、さらに、空隙部分を切り抜いてその合計質量(S1)を求め、S1×100/Sの値をもって目開き空隙率とみなすことができる。本発明に用いる繊維布帛としては、その目付量が、好ましくは150〜500g/m2、さらに好ましくは200〜350g/m2の高密度織物、或いは、好ましくは80〜300g/m2、さらに好ましくは120〜200g/m2の目抜け織物、を好適に用いることができる。繊維布帛の引張破断伸び率は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。繊維布帛の150℃における乾熱収縮率は0〜35%であることが好ましく、0〜20%であることがさらに好ましい。
本発明の防水膜材に使用する繊維布帛において、糸間の空隙率が0〜5%の高密度織物は、後述する軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物による防水被覆層形成の1手段として、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂ペーストゾルを用いるディッピング加工(繊維布帛への両面加工)、およびコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)に用いる基布として好適である。また、糸間の空隙率が5〜35%の目抜け織物は、後述の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物による防水被覆層形成の1手段として、カレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形されたフィルムまたはシートを、繊維布帛片面または両面に接着剤を介して積層する方法、あるいは繊維布帛の両面に基布の空隙部分を介して熱ラミネート積層する方法に用いる基布として好適である。また、糸間の空隙率が0〜5%の高密度織物は、ディッピング加工(繊維布帛への両面加工)、およびコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)を施した後、この表面にカレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形されたフィルムまたはシートを、熱ラミネート積層する方法に、基布として用いることもできる。これらの繊維布帛は何れも本発明の防水膜材に用いる基布として有用なものである。
本発明の防水膜材において、上記基布の少なくとも1面上に、1層以上の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物含有防水樹脂層を含む防水被覆層が形成されている。特に、基布の両面に、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物含有防水樹脂層を含む防水被覆層が形成されていることが、防水性と熱融着接合性を高めるという観点から好ましい。
本発明の防水膜材において、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に使用される樹脂としては、主にポリ塩化ビニル樹脂が用いられるが、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−ウレタン共重合体樹脂等の塩化ビニル系共重合体樹脂を、単独で、あるいは2種類以上組み合わせて用いることもできる。ポリ塩化ビニル系樹脂に、さらにその他の樹脂、例えば、ポリメタアクリル酸メチル、ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ酢酸ビニルなどのビニル系重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタアクリル酸メチル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体などのビニル系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエン−スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−グラフト共重合体(ABS)、メタアクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン−グラフト共重合体(MBS)などのゴム系樹脂、などをブレンドして用いることができる。これらブレンド樹脂は、単独で、あるいは複数組み合わせて用いることができる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂は、乳化重合によって得られ、好ましくは数平均分子量P=700〜3800、より好ましくは1000〜2000のペーストポリ塩化ビニル樹脂、および、懸濁重合によって得られ、好ましくは数平均分子量P=700〜3800、より好ましくは1000〜2000のストレートポリ塩化ビニル樹脂、から選ばれる。また、上記ポリ塩化ビニル系共重合体樹脂(好ましくは数平均分子量P=700〜3800)中に、塩化ビニルとともに含まれる共重合成分の含有量は、2〜30質量%であることが好ましい。
本発明に用いられる軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる複合可塑剤としては、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物、或は少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物と、少なくとも1種のポリエステル系可塑剤化合物からなり、好ましくは、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペートなどの副生成物を含まない可塑剤成分(A)と、少なくとも1種のクエン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(B)のブレンドが用いられ、可塑剤成分(A)と可塑剤成分(B)との比は30:70〜90:10(質量比)である。可塑剤成分(A)及び(B)の合計質量に占める可塑剤成分(B)の質量の比が70%を超えると、経時的に失われる可塑剤量が多くなり、可塑効果の耐久性が不十分になることがあり、それが10%未満であると、得られる樹脂組成物の加工性が不良となることがある。可塑剤成分(A)はスルホン酸エステル系可塑剤化合物単独、又は好ましくはジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを含まないポリエステル系可塑剤化合物とスルホン酸エステル系可塑剤化合物とのブレンド、のいずれであってもよいが、成分(A)が前記2種の可塑剤化合物のブレンドの場合には、好ましくはジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを含まないポリエステル系可塑剤化合物とスルホン酸エステル系可塑剤化合物のブレンド比は10:90〜90:10(質量比)であることが好ましく、30:70〜70:30であることがさらに好ましい。一方の可塑剤化合物のブレンド量が10%未満である場合、他方の可塑剤化合物を単独で使用した場合と加工性面および物性面で差が無く、ブレンドする効果が実質上認められない。
上記ジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを含まないポリエステル系可塑剤化合物としては、アジピン酸、セバシン酸などの二塩基酸と、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの二価のアルコールと、さらに必要に応じて末端封止剤として2−エチルヘキシルアルコール以外の一価のアルコールまたは一価の脂肪酸を加えて得たものであり、数平均分子量500〜4000、好ましくは700〜2500のものを使用することができる。分子量が500未満では耐移行性、耐抽出性が不十分となることがあり、4000を超えると加工性に問題がでたり、得られる防水膜材の柔軟性が損なわれたりすることがある。ここで、末端封止剤として2−エチルヘキシルアルコールを使用しないのは、反応時にジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを副生してしまうためであり、二塩基酸としてフタル酸を用いないのは、フタル酸エステルを副生してしまうからである。
上記スルホン酸エステル系可塑剤化合物としては、アルキルスルホン酸フェニルエステル(例えば商標:Mesamoll(Bayer社製))を好適に用いることができる。上記クエン酸エステル系可塑剤化合物としては、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシル、クエン酸ジステアリル、クエン酸トリステアリルなどが挙げられるが、特にアセチルクエン酸トリブチルが好適に用いられる。
上記ポリエステル系可塑剤は、使用する原料物質(二塩基酸や二価のアルコール)によって性質が変動し、また、当然のことながら分子量によっても性質が異なるが、一般にDOPに比べて耐熱老化性、耐油性に優れ、揮発性もほとんどないため、長期にわたって安定して使用することができる。しかし、一般にDOPに較べて可塑化性が劣り、相溶性が低いため加工性では劣り、風合いも硬い。一方、上記スルホン酸エステル系可塑剤は、同じくDOPに較べて耐熱老化性、耐油性に優れ、揮発性も少ないが、これらの性質は一般にポリエステル系可塑剤よりはやや劣る。しかし、可塑化性やポリ塩化ビニル系樹脂との相溶性には優れているため、加工性の面では一般にポリエステル系可塑剤よりは優れており、さらに耐加水分解性、耐アルカリ性では非常に優れているため、スルホン酸エステル系可塑剤を用いる場合、DOPを用いたよりも耐加水分解性、耐アルカリ性に優れた防水膜材が得られるという利点もある。本発明は、これらスルホン酸エステル系可塑剤化合物単独、或は、スルホン酸エステル系可塑剤化合物とポリエステル系可塑剤化合物とのブレンド可塑剤成分(A)として含むが、可塑剤成分(A)だけでは、加工性、風合いの面でDOPを使用した場合に比べて不十分であり、本発明の目的を達成する事ができない。そのため、本発明においては、少なくとも1種のクエン酸エステル系可塑剤化合物を可塑剤成分(B)として含むことが必須である。
クエン酸エステル系可塑剤化合物は、食品包装用や玩具用途などにも使用されている安全性の確認された可塑剤であり、ポリ塩化ビニル系樹脂用可塑剤として加工性面でも非常に優れているが、耐熱老化性や耐油性が劣り、移行性、揮発性が高いため、耐久性を求められる産業資材向けの防水膜材などには単独で用いることはできなかった。しかし、それを上記可塑剤成分(A)と組み合わせることによって、DOPを使用した場合と同等の加工性を示し、かつ、得られる防水膜材の耐久性面でも同等のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。さらにクエン酸エステル系可塑剤には抗菌性があり、黴の発生を防ぐという効果もあるため、得られる防水膜材に抗菌性や防黴性を付与できるという利点もある。
本発明において、上記可塑剤成分(A)、可塑剤成分(B)のみからなる複合可塑剤の合計添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、30〜150質量部であり、40〜100質量部であることがより好ましい、それぞれの配合割合は、加工方法及び防水膜材の要求性能に応じて、上記ブレンド比の範囲内で適宜設定される。
また、本発明の目的に反しない限り、上記複合可塑剤に加えて、その他の通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されるエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを用いることができる。
本発明において、防水被覆層の防水樹脂層を形成する軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限り、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防炎剤、滑剤、充填剤、着色剤、接着剤、架橋剤、架橋助剤、抗菌剤、防黴剤、希釈溶剤などの添加剤を適宜加えることができる。添加剤が粉体である場合には、分散性を良くするためにあらかじめ可塑剤に分散させておくこともできる。
本発明の防水膜材の防水被膜層において、その防水樹脂層の表面に可塑剤が移行して粘着を生じ、汚れ付着の原因となることを防ぐために、防水膜材の防水樹脂層の少なくとも1最外層表面上に防汚層が形成されていてもよい。このような防汚層として好ましいものは、下記のとおりである。
(1).アクリル系樹脂、およびフッ素系樹脂から選ばれた1種以上による塗膜層。
(2).アクリル系樹脂、およびフッ素系樹脂から選ばれた1種以上と、シリカ微粒子とを含む塗膜層。
(3).最外層に少なくともフッ素系樹脂層が配置されている1層以上のフィルム層。
上記防汚層(1)および(2)に用いられるアクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類、メタアクリル酸アルキルエステル類、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸i−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸n−ヘキシルなどの重合体が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種類以上の組み合わせで用いることができる。また、上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーと反応性を有する共重合モノマーをアクリル系モノマーと置換して最大30質量%程度まで含んでいてもよく、これらは例えば、エチレン性不飽和カルボン酸類、アクリルアミド化合物類、水酸基含有(メタ)アクリル酸類、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、アクリル酸類、α−オレフィン類、ビニルエーテル類、アルケニル類、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物類などが挙げられる。
防汚層用フッ素系樹脂としては、有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂、またはフルオロオレフィン共重合体樹脂の水分散体を用いることが好ましい。また、フルオロオレフィン共重合体樹脂としては、それを硬化剤と併用することにより架橋を生成可能な水酸基を分子構造内に含有するものであることが好ましい。フルオロオレフィンモノマーとしては、例えば、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)など、エチレン、プロピレン、およびα−オレフィンなどのオレフィン骨格にフッ素原子を構成単位当り1個以上含有するモノマーを用いることが好ましい。
フルオロオレフィン共重合体樹脂は、上記フルオロオレフィンモノマーから選ばれた2種類以上を共重合して得られるものであり、塗料形態で用いられることが好ましい。特にVdFを含有するVdF系共重合体樹脂は、有機溶剤への溶解性に優れており、その共重合体中のVdF含有量が50〜90モル%であることが好ましい。具体的に有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂としては、VdF、TFE、CTFE成分を共重合成分として含有するものが好ましく、例えば、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、及びVdF−TFE−CTFE共重合体樹脂などを包含する。これらの共重合体樹脂には、VF、TrFE、HFPなどのフルオロオレフィンモノマーが共重合成分としてさらに含まれていてもよい。また、有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂は、CF2=CFX(Xは、−H、−F、−CF3)で示されるフルオロオレフィンとビニルモノマーとの共重合体樹脂であることが好ましい。このような塗料形態のフッ素系樹脂としては、商標:ルミフロン(旭硝子(株)製)、商標:セフラルコート(セントラル硝子(株)製)、商標:ザフロン(東亞合成(株)製)、商標:ゼッフル(ダイキン工業(株)製)、商標:カイナー(アトケム社製)などが挙げられる。これらのフルオロオレフィン共重合体樹脂は、その共重合ビニル成分中に含有される水酸基、カルボニル基などの反応性基を、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物などの硬化剤(架橋剤)により架橋されていてもよい。前記架橋剤は、フルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分)に対して、固形分量換算で1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%の添加量で用いられる。このようにして架橋することにより塗膜の耐摩耗性、耐候性などを改善することができる。中でもイソシアネート化合物は水酸基との反応性に優れており、特に脂肪族ポリイソシアネート化合物、および脂環式ポリイソシアネート化合物を架橋剤として用いると、得られる塗膜の耐候性を向上させることができる。また、有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂としては、上記フルオロオレフィンモノマーとアクリルモノマーとの共重合体樹脂であってもよく、得られるフルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂には、フルオロオレフィン成分が合計量として35〜85モル%、特に40〜70モル%を含有されていることが好ましい。
上記防汚層(2)に使用されるシリカ微粒子には、防汚層表面に親水性を付与して雨筋汚れを抑制する効果がある。防汚層(2)に使用されるシリカは、乾式法により合成された無水シリカ、湿式法により合成された含水シリカなどの合成シリカから選ばれることが好ましく、これらはいずれも非晶質シリカである。特に防汚層(2)用シリカとしては、粒子表面に多数のシラノール基(Si−OH基)を有する湿式シリカを用いると、得られる防汚層(2)に親水性を付与することができる。合成シリカの平均凝集粒径(コールカウンター法)は1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましい。また、シリカ微粒子のBET比表面積が40〜400m2/gであることが好ましい。シリカ微粒子は、樹脂固形分100質量部に対し、10〜200質量部であることが好ましく、30〜100質量部であることがより好ましい。シリカ微粒子の配合量が10質量部未満では、得られる防汚層(2)の雨筋汚れ抑制効果が不十分になることがあり、またそれが200質量部をこえると、得られる防汚層の耐摩耗性が不十分になることがある。
上記防汚層(1)又は(2)の形成方法としては、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む防水樹脂層の最外面上に均一塗布可能なコーティング方式を用いることが望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、スクリーンコート法、フローコート法、及びスプレーコート法などが挙げられ、防汚層の厚さは0.1〜50μmであることが好ましい。防汚層の厚さが0.1μmよりも薄いと、得られる防水膜材の防汚効果が不十分で長続きしないことがあり、また、防汚層の厚さを50μmを超えて厚くしても効果は頭打ちであり、しかも複数回コーティングしなければならず、資材面、工程面とも経済的に不利である。また、防水膜材を熱融着する必要がある場合、防汚層(1)及び(2)が表面だけでなく裏面にも形成されることが好ましい。その場合、樹脂組成に関しては表面と裏面を同じにすることが好ましいが、シリカ微粒子は必ずしも裏面側防汚層に含有させる必要はなく、用途に応じて含有させても含有させなくてもよく、表裏で含有量が異なっても良い。
また、前記防汚層(3)を形成するためのフィルムは、最外層に少なくともフッ素系樹脂層を有する1層以上の層構造を有するものであり、具体的には、フッ素系樹脂フィルム、フッ素系樹脂/アクリル系樹脂からなる2層フィルム、フッ素系樹脂/アクリル系樹脂/ポリ塩化ビニル樹脂からなる3層フィルムなどである。フッ素系樹脂としてはポリフッ化ビニル(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)などフッ素原子を構成単位中に1個以上含有するエチレン、プロピレン、およびα−オレフィンなどのオレフィン骨格のモノマーからなるものであれば特に限定はなく、これらは共重合体であってもよい。防汚層用フィルムの厚さは10〜500μmであることが好ましく、50〜150μmであることがさらに好ましい。特に防汚層用多層フィルムにおいては、最外層のフッ素系樹脂層の厚さが3〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。このようなフィルムは透明であっても着色されていても良く、積層は接着剤を用いて、または接着剤を用いずに熱融着によって防水膜材の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる防水被覆層上に貼着することができる。また、防水膜材を熱融着する必要がある場合、防汚層(3)が形成されている防水膜材の裏側にはフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド樹脂による裏面塗工層が生成されていることが好ましい。
本発明の防水膜材は、膜材表面に可塑剤が移行して粘着を生じ、汚れ付着の原因となることを防止し、さらに表面の耐摩耗性を向上させるために、防水樹脂層の少なくとも1最外表面に電子線、またはγ線を照射することにより、防水樹脂層に架橋構造を付与してもよい。
また、防水樹脂層に架橋構造を付与するには、少なくとも最外表面を構成する軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部の多官能(メタ)アクリレートを含む架橋剤を、加え、この架橋剤含有軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いて最外層の防水被覆層を形成すればよく、得られた防水膜材を屋外使用すると、それに照射された紫外線によって経時的にその防水被覆層に架橋構造を生成することができる。また屋内使用の場合には、必要に応じて防水樹脂層の最外表面に、電子線、γ線または紫外線を照射すればよい。多官能(メタ)アクリレートの添加量が0.5質量部未満であると、充分な架橋構造が得られず、可塑剤の移行をとめることができないことがあり、またはそれが20質量部を超えると、得られる防水被覆層が硬くなり防水膜材の柔軟性が損なわれたり、反りを生じることがある。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、1,6−ヘキサメチレングリコールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明を下記実施例、比較例、参考例および参考比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
本発明の実施例、比較例、参考例および参考比較例における試料作成方法および試験方法は下記の通りである。
(1)<ペーストゾルの調整>
表1に示す配合の樹脂組成物を混合撹拌し、1時間静置脱泡した。
<粘度の評価>
BH型回転粘度計(東京計器(株)製、6号ローター、回転数20回/分)を使用し、室温20℃、湿度65%の雰囲気において、ペーストゾル調整直後、72時間経過(3日)後、168時間経過(7日)後にそれぞれ粘度を測定した。
(2)<ペーストゾルからのシート状試験片作成方法および破断強さ・伸び率の評価>
ペーストゾルを0.1mmのPETフィルム(東レ(株)製)上に約1mmの厚さでコーティングし、熱風乾燥器内で150℃で1分間ゲル化した後、さらに160℃〜220℃で1分間熱処理を行い、シートを作成した。該シートよりJIS K6723に準じてJIS3号ダンベルで打ち抜き、PETフィルムから引き剥がしてダンベル状試験片を作成し、雰囲気温度20℃、引張速度200mm/minで破断強さおよび破断伸び率を測定した。
(3)<柔軟性の評価>
ペーストゾルを0.1mmのPETフィルム(東レ(株)製)上に約1mmの厚さでコーティングし、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、シートを作成した。作成したシートから50mm幅×150mm長にカットした供試片を丸めて直径40mm×長さ50mmの円筒を作成し(のりしろをシアノアクリレート系瞬間接着剤で固定した。)10〜−20℃雰囲気下で50%圧縮時(直径が20mmになるまで潰した状態)の応力を測定した。
(4)<評価用カレンダーフィルムの作成方法および破断強さの評価>
表2に示す配合を混合し、テスト用2本ロール(西村工機製)を用いて165℃で混練し、ロールのクリアランスを調整して0.3mmのフィルムを採取した。1分、2分、3分、4分、5分の混練時間でそれぞれフィルムを作成した。該フィルムよりJIS K6723に準じてJIS3号ダンベルで打ち抜き、ダンベル状試験片を作成し、雰囲気温度20℃、引張速度200mm/minで破断強さを測定した。
(5)<加熱後質量減少率の評価>
試験片を100℃ギアオーブン中に48時間投入し、前後の質量差から下記(1)式により質量減少率を求めた。
質量減少率(%)=((投入前質量−48時間投入後の質量)÷投入前質量)×100・・・(1)式
ペーストゾルは190℃で熱処理したシートを、カレンダーフィルムは5分間混練したフィルムを、それぞれ試験片として使用した。
(6)<ロール引き剥がし性の評価>
表2に示す配合を混合しテスト用2本ロールを用いて30分間混練後、ロールのクリアランスを調整して0.3mmのフィルムを作成し、ロールからの引き剥がし性を評価した。引き剥がし性の評価基準は以下の通りとした。
3:ロールから容易に引き剥がせる。
2:ロールへの粘着があったが、引き剥がしは可能である。
1:ロールへの粘着が強く、引き剥がしが困難である。
(7)<配合剤>
表1および表2で使用した配合剤は下記の通りである。
(i)樹脂
ペーストポリ塩化ビニル樹脂(表1):P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
ストレートポリ塩化ビニル樹脂(表2):S−1001(商標、重合度1050、(株)カネカ製)
(ii)可塑剤
成分(A)用ポリエステル系可塑剤化合物:W−230S(商標、分子量約800、大日本インキ化学工業(株)製)(ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート非含有)
成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤化合物:Mesamoll(商標、Bayer製)
成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤化合物:アセチルクエン酸トリブチル(新日本理化(株)製)
DOP:ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート
(iii)その他
耐熱安定性付与剤:エポキシ化大豆油
安定剤:Ba−Zn系安定剤
無機顔料:TiO2
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系
なお、表1および表2において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また、各配合には共通してエポキシ化大豆油が添加されているが、エポキシ化大豆油は加工時の耐熱安定性を付与するために加えたものであり、本発明に用いられる可塑剤成分(A)及び(B)には包含されない。本発明の実施例・比較例、参考例および参考比較例において、可塑剤成分として、DOP、ポリエステル系可塑剤化合物、スルホン酸エステル系可塑剤化合物及び、クエン酸エステル系可塑剤化合物が用いられる。
(8)<防水膜材の引張強さ>
防水膜材から基布の糸目に沿って長手方向300mm、幅方向30mmの短冊(経方向試料)、長手方向30mm、幅方向300mmの短冊(緯方向試料)を採取し、JISL1096ストリップ法により破断強さを測定した。
(9)<防水膜材の引張試験>
防水膜材から基布の糸目に沿って長手方向300mm、幅方向30mmの短冊(経方向試料)、長手方向30mm、幅方向300mmの短冊(緯方向試料)を採取し、JISL1096ストリップ法により引張試験を行い、応力−伸び曲線(S−Sカーブ:図1)を得た。この応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向試料および緯方向試料各々の破断強さに対して1/10応力における経方向と緯方向との伸び率を測定した。(試料つかみ間隔距離:200mm、引張速度:50mm/分、20℃)
また、破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との伸び率の差の絶対値は下記(2)式により求めた。
伸び率の差の絶対値(%)=(|経方向の伸び率−緯方向の伸び率|)・・・(2)
(10)<引張クリープ試験>
防水膜材から基布の糸目に沿って長手方向300mm、幅方向30mmの短冊(経方向試料)、長手方向30mm、幅方向300mmの短冊(緯方向試料)を採取し、JIS K7115に準拠して経方向試料および緯方向試料の引張クリープ試験を行い、歪みゲージを用いて破断強さの1/10荷重下における20℃、24時間後クリープたわみを測定し、24時間後クリープ歪み率を計算した。(試料幅:30mm、試料つかみ間距離:200mm、試料荷重:破断強さの1/10荷重、たわみの測定:つかみ間隔、クリープ歪み(%)=「クリープたわみ/200」×100)
また、破断強さの1/10応力における経方向と緯方向の歪み率の差の絶対値は、下記式(3)により求めた。
歪み率の差の絶対値(%)=(|経方向の伸び率−緯方向の伸び率|)・・・(3)式
(11)<動的耐久性試験(繰り返し屈曲試験)>
図2において、膜材から長さ50mm×幅40mmの試料1を採取し、試料の幅方向に折り目6に沿って2つ折りにして、これを「Y.S.S.式繰り返し永久疲労試験機」((株)安田精機製作所製)に装着し、折り目7により形状(A)(屈曲形状)および(B)(展張形状)の間を往復するように屈曲させて動的耐久性試験を実施した。試験後、ルーペを用いて試料1の外観の異常の有無を観察し、動的耐久性を製造直後と1年間曝露後で下記のように評価判定した。
試験雰囲気温度: 初期 0℃、20℃、 1年間曝露後 20℃
屈曲回数:50000回
3:異常を認めない
2:樹脂被覆層に亀裂が認められる
1:樹脂被覆層の剥離と亀裂が認められる
(12)防汚性
傾斜角30度の設置資料について、初期の資料を基準とし、屋外曝露1年後の資料表面の色差ΔE値を測定し、防汚性を下記のように判定した。
3;ΔE= 10以下:汚れが認められない
2; 10以上30未満:汚れが認められる
1; 30以上:顕著な汚れが認められる
参考例1(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の調製及び性能)
ペーストポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、複合可塑剤として、成分(A)用ポリエステル系可塑剤30質量部、及び成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤30質量部を加えたペーストゾルを調製し、粘度を測定した。また、このペーストゾルを用いてシートを作製し各種試験に供した。それぞれの結果を表1に示す。
参考例2(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の調製及び性能)
複合可塑剤として、成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤30質量部、成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤30質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し、各種試験に供した。結果を表1に示す。
参考例3(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の調製及び性能)
複合可塑剤として、成分(A)用ポリエステル系可塑剤15質量部、及びスルホン酸エステル系可塑剤15質量部、並びに成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤30質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し、各種試験に供した。結果を表1に示す。
参考例4(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の調製及び性能)
複合可塑剤として、成分(A)用ポリエステル系可塑剤20質量部、及びスルホン酸エステル系可塑剤20質量部、並びに成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤20質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し、各種試験に供した。結果を表1に示す。
参考比較例1(ペーストゾルの調製・性能)
可塑剤としてDOP60質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し、各種試験に供した。結果を表1に示す。
Figure 0004639301
表1に示したとおり、参考例1〜4では、何れもペーストゾル粘度はDOPを用いた参考比較例1と同等かそれ以下であり、各熱処理条件における樹脂の破断強さ・伸び率に関してはDOPを用いた場合と同等以上の結果が得られている。参考例1〜4のペーストゾルは、重量減少率においてもDOPを用いた場合とほぼ同等であることから、得られる防水膜材の性能を落とすことなく、従来のDOPを用いた場合とほぼ同様の条件における加工が可能であると思われる。参考例1〜4のペーストゾルは、柔軟性に関しても、−10℃までは、DOPを用いた場合と同等であり、−20℃でもその差はあまり大きくはないため、通常の用途では、DOPの代わりに参考例2〜4のペーストゾルを用いても差し支えが無く、また、低温時の柔軟性を求められる用途向けには、配合の組み合わせによって、参考例2〜4のペーストゾルは、DOPを用いた場合と同等の低温柔軟性を得ることが可能である。
比較例1(ペーストゾルの調製・性能)
比較可塑剤としてポリエステル系可塑剤60質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し各種試験に供した。結果を表1に示す。比較例1において、ポリエステル系可塑剤だけではDOPを用いた場合に比べてペーストゾルの粘度が非常に高いため、DOPよりも希釈溶剤を多量に必要とし、しかも、低い熱処理条件ではゲル化が不完全であるため、得られたシートの強伸度が不十分なものであった。
比較例2(ペーストゾルの調製・性能)
比較可塑剤としてスルホン酸エステル系可塑剤60質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し、各種試験に供した。結果を表1に示す。比較例2において、スルホン酸エステル系可塑剤だけを用いた場合、熱処理条件ではむしろDOPよりも低い条件でもよいが、ペーストゾルの粘度は高く、希釈溶剤を多量に必要とすると思われる。また、柔軟性の評価において、低温時には非常に硬くなるため、低温時の柔軟性を必要とする用途には不適切となる。
比較例3(ペーストゾルの調製・性能)
比較可塑剤としてクエン酸エステル系可塑剤60質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し各種試験に供した。結果を表1に示す。比較例3のペーストゾルは、クエン酸エステル系可塑剤単独では、熱処理条件はDOPを用いた場合より低い条件でよく、ペーストゾル粘度もDOPよりかなり低いが、質量減少率が非常に高いことから、長期的に物性の低下が懸念され、従って耐久性を求められる産業資材用途には不向きなものであった。
比較例4(ペーストゾルの調製・性能)
比較可塑剤としてポリエステル系可塑剤30質量部、スルホン酸エステル系可塑剤30質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し各種試験に供した。結果を表1に示す。比較例4より、ポリエステル系可塑剤とスルホン酸エステル系可塑剤の混合では、熱処理条件に関して若干の改善がみられるものの、粘度、低温時の硬さに関して改善が不十分であることが確認された。
比較例5(ペーストゾルの調製・性能)
比較可塑剤としてポリエステル系可塑剤30質量部、スルホン酸エステル系可塑剤25質量部、クエン酸エステル系可塑剤5質量部を用いたこと以外は参考例1と同様にしてペーストゾルを調製し各種試験に供した。結果を表1に示す。比較例5より、クエン酸エステル系可塑剤を少量加えただけでは、熱処理条件、ペーストゾルの粘度に関して改善が不十分であることが確認された。
参考例5(フィルムの調製・性能)
ストレートポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、複合可塑剤として成分(A)用ポリエステル系可塑剤30質量部、及び成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤30質量部を加え、得られた樹脂組成物からカレンダーフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した結果を表2に示す。
参考例6(フィルムの調製・性能)
複合可塑剤として成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤30質量部、及び成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤30質量部を加えたこと以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した。結果を表2に示す。
参考例7(フィルムの調製・性能)
複合可塑剤として、成分(A)用ポリエステル系可塑剤15質量部、及びスルホン酸エステル系可塑剤15質量部、並びに成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤30質量部を加えたこと以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した。結果を表2に示す。
参考例8(フィルムの調製・性能)
複合可塑剤として、成分(A)用ポリエステル系可塑剤20質量部、及びスルホン酸エステル系可塑剤20質量部、並びに成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤20質量部を加えた以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した。結果を表2に示す。
参考比較例2(フィルムの調製・性能)
単一可塑剤としてDOP60質量部を用いた以外は参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した。結果を表2に示す。
Figure 0004639301
参考例5〜8のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ロール混練時間、破断強さ、質量減少率の測定結果から明らかなようにカレンダー加工においてもDOPを用いた参考比較例2と同等の条件での加工が可能であり、同等の物性が得られることが確認された。
比較例6(フィルムの調製・性能)
比較可塑剤としてポリエステル系可塑剤60質量部を用いたこと以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した結果を表2に示す。比較例6では、ポリエステル系可塑剤単独の場合、1分では混練が不十分でフィルムの採取が不可能であり、DOPと同等の破断強さを示すまでには、1分間の混練差があった。このように、ポリエステル系可塑剤を単独で使用する場合、加工効率の面でDOPに比べて劣ることが確認された。
比較例7(フィルムの調製・性能)
比較可塑剤としてスルホン酸エステル系可塑剤60質量部を用いたこと以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した結果を表2に示す。比較例7では、スルホン酸エステル系可塑剤単独の場合、DOPと同等の混練条件で同等の破断強さを得ることができるが、ロールへの粘着があり、加工性面の不具合が確認された。
比較例8(フィルムの調製・性能)
比較可塑剤としてクエン酸エステル系可塑剤60質量部を用いたこと以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した結果を表2に示す。比較例8では、クエン酸エステル系可塑剤単独では、ペーストゾルでの結果同様、質量減少率が非常に大きく、長期的には物性の低下が進行するものと思われ、耐久性を求められる産業資材用途には不適切であることが確認された。
比較例9(フィルムの調製・性能)
比較可塑剤としてポリエステル系可塑剤30質量部、スルホン酸エステル系可塑剤30質量部を用いたこと以外は、参考例5と同様にしてフィルムを作成した。このフィルムを各種試験に供した結果を表2に示す。比較例9では、ポリエステル系可塑剤とスルホン酸エチレン系可塑剤のブレンドでは、それぞれを単独で用いるよりは、加工効率、加工容易性において改善が見られたが、その効果は軽微であった。
実施例9
経糸としてポリエステル短繊維紡績糸条295.3dtex(20番手)双糸を用い、緯糸として、ポリエステルマルチフィラメント糸条555dtex(500d)からなる芯層と、その全周面を被覆している1.56dtex(1.4d)、繊維長さ100mmのポリエステル短繊維からなる被覆層とが、重量比:65/35で複合されているコア−スパン糸条を用い、経糸打ち込み密度:55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度:38本/25.4mmにおいて質量250g/m2の長尺平織物を製造し、これを基布として用いた。この基布を、下記配合1のポリ塩化ビニル樹脂組成物ペーストゾルの溶剤希釈液バス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布中に含浸されたペーストゾルを150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにこれに鏡面エンボス処理を施した。これにより基布に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物が320g/m2付着して、基布の両面に防水樹脂層からなる防水被覆層を形成し、合計質量570g/m2の防水膜材を作製した。この連続加工において、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表3に示す。
<配合1>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
成分(A)用ポリエステル系可塑剤:W−230S(商標、分子量約800)
25質量部
成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤:Mesamoll(商標) 20質量部
成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル 25質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
実施例11
ペーストゾル配合を下記配合3のように変更したこと以外は実施例9と同様に加工を行い、合計質量570g/m2の防水膜材を作製した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表3に示す。
<配合3>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤:Mesamoll(商標) 35質量部
成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル 35質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
参考比較例3
ペーストゾル配合を下記配合4のように変更したこと以外は実施例9と同様に加工を行い、合計質量570g/m2の防水膜材を作製した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表3に示す。
<配合4>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
DOP 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
実施例12
実施例9と同様にして防水膜材を製造した。但し基布として、経糸にポリエステル短繊維紡績糸条295.3dtex(20番手)双糸を配置し、緯糸にポリエステルマルチフィラメント糸条555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が38本/25.4mm、質量220g/m2の長尺平織物を用いた。得られた防水膜材の合計質量は550g/m2であった。この連続加工において、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表3に示す。
実施例13
実施例12と同じ基布を用いて防水膜材を製造した。但し、防水被覆層形成工程を下記のように変更した。基布を下塗り樹脂組成物の溶剤希釈液バス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾して、基布に樹脂組成物を含浸し、樹脂組成物を150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、これにより基布に軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物100g/m2の下塗り層を形成した。下塗り樹脂層の組成は、実施例9の配合1と同一であった。次に下記配合5のカレンダー用軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるフィルム(厚さ0.12mm)をカレンダー成形により製造し、このフィルムを前記下塗り層含浸基布の両面に160℃で熱貼着して、片面当り150g/m2の防水樹脂層からなる防水被覆層を形成し、合計質量620g/m2の防水膜材を得た。この2工程において、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表3に示す。
<配合5>カレンダー用樹脂組成
ポリ塩化ビニル樹脂:S−1001(商標、重合度1050、(株)カネカ製)
100質量部
成分(A)用ポリエステル系可塑剤:W−230S(商標、分子量約800)
20質量部
成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤:Mesamoll(商標) 20質量部
成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル 20質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
実施例14
基布として、経糸にポリエステル短繊維紡績糸条295.3dtex(20番手)双糸を配置し、緯糸にポリエステルマルチフィラメント糸条555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が31本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が21本/25.4mm、質量123g/m2の目抜け長尺平織物を用いた。前記配合5のカレンダー用軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるフィルム(厚さ0.23mm)をカレンダー成形により製造し、このフィルムを、前記基布の両面に160℃で熱貼着して、片面当り287g/m2の防水樹脂層からなる防水被覆層を形成し、合計質量697g/m2の防水膜材を得た。この工程において、基布の長手方向の張力は基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表3に示す。
Figure 0004639301
実施例9及び11〜14で得た防水膜材は、表3に示されているように、参考比較例3で得た防水膜材と同様にしてJIS L1096に準拠して作成された引張試験の応力伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との差の絶対値が全て1%以下であり、また、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向の20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1%以下を満足するものであった。また、実施例9及び11〜14の防水膜材は耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験においても優れていた。このため、膜材の連続加工において幅方向の張力が解放状態であり、しかも可塑剤としてDOPを用いた場合と加工条件が全く同じであったにも拘わらず、実施例9及び11〜14で得た防水膜材は、使用中の寸法変化による歪み、弛みが少なく、フラット性に優れ、長期間の使用にも耐えうるものであった。また、実施例9及び11〜14で得た防水膜材は、高周波ウェルダー性、熱風融着性に関しても参考比較例3と同様優れていた。
実施例15
実施例9と同様にして防水膜材を製造した。但し、表裏両面の防水樹脂層の最外面上に防汚層を形成して防水被覆層を形成した。防汚層は下記配合6のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥して形成した。得られた防汚層の塗布量は表裏面とも5g/m2であり、合計質量580g/m2の防水膜材を得た。防汚層形成の段階においても、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合6>アクリル系樹脂組成
アクリル系樹脂 20質量部
(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレン ペレットHBS001)
希釈溶剤(トルエン−MEK 50:50質量比) 80質量部
実施例16
実施例15と同様にして防水膜材を製造した。但し、防水樹脂層の上に形成する防汚層を下記のように変更した。防汚層は表面側防水被覆層の上に、下記配合7のフッ素系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥し、5g/m2のフッ素系樹脂による防汚層を形成した。さらに裏面の防水被覆層にも配合7のフッ素系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて、塗布量15g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥し、3g/m2のフッ素系樹脂による裏面処理層を形成し、合計質量578g/m2の防水膜材を得た。この防汚層形成の段階においても、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合7>フッ素系樹脂組成
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201)
希釈溶剤(MEK) 80質量部
実施例17
実施例15と同様にして防水膜材を製造した。但し、防水樹脂層の上に形成する防汚層の組成を下記のように変更した。防汚層は表面側防水樹脂層の上に、下記配合8の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥し、シリカ微粒子を25質量%含有する、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂のブレンド(フッ素系樹脂とアクリル系樹脂の比は質量比で3:1)樹脂による5g/m2の防汚層を形成した。さらに裏面の防水樹脂層上には、前記配合6のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて、塗布量15g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成し、合計質量578g/m2の防水膜材を得た。この防汚層・裏面処理層形成の段階においても、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合8>シリカ微粒子を含有するフッ素系樹脂とアクリル系樹脂のブレンド組成
アクリル系樹脂 4質量部
(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレン ペレットHBS001)
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 12質量部
(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201)
シリカ微粒子(湿式法非晶質シリカ) 4質量部
(日本シリカ工業(株)製、商標:ニップシールE−220、平均粒子径
2μm、BET比表面積130m2/g)
希釈溶剤(トルエン−MEK 50:50質量比) 80質量部
実施例18
実施例15と同様にして防水膜材を製造した。但し、防水樹脂層の上に形成する防汚層の組成を下記のように変更した。防汚層は表面側防水樹脂層の上に、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)樹脂/アクリル系樹脂構成の多層フィルムとして呉羽化学(株)製、商標:KFCフィルムST−50Y、厚さ50μmのフィルムを160℃で熱ラミネートして、フッ素系樹脂層が最外層に配置された50g/m2のフィルム防汚層を形成した。さらに裏面の防水樹脂層には前記配合6のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビアコーターを用いて、塗布量15g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成し、合計質量623g/m2の防水膜材を得た。この防汚層・裏面処理層形成の段階においても、基布の長手方向には基布幅1m当り300Nの張力がかけられていたが、幅方向は解放状態であり張力はかけられていなかった。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
Figure 0004639301
実施例15〜18で作製された防水膜材は、防汚層形成の工程を経たために、加工の長手方向に余分な張力履歴が掛かっているにもかかわらず、表4に示されているようにJIS L1096に準拠した引張試験の応力伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との差の絶対値が全て1%以下であり、また、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向の20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1%以下を満足するものであった。また、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験にも優れていた。実施例15〜18で得た防水膜材は、使用中の寸法変化による歪み、弛みが少なく、長期間の使用にも耐えうるものであった。またこれらの防水膜材には、その表面に特定の防汚層を有するため、外観が長期的にわたり美麗に保たれ、環境汚れが付着しても、その除去が容易な物であった。これらの防汚層は何れも実施例9〜14の防水膜材にも付加することが可能である。また、実施例15〜18で得た防水膜材は、高周波ウェルダー性、熱風融着性に関しても優れていた。
実施例19
多官能(メタ)アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレートを含む下記配合9のペーストゾルを用いて、実施例9と同様にして、合計質量570g/m2の防水膜材を作製した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合9>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
成分(A)用ポリエステル系可塑剤:W−230S(商標、分子量約800)
25質量部
成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤:Mesamoll(商標) 20質量部
成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル 25質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
実施例20
多官能(メタ)アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレートを含む下記配合10のカレンダーフィルム用樹脂組成物を表面側のカレンダーフィルム用配合に用い、裏面側のカレンダーフィルム用配合には前記配合5を用い、それぞれのフィルムを下塗り層含浸基布の表裏面に熱貼着した後に、表フィルム面側から電子線を照射して架橋したことを除き、その他は実施例13と同様にして、合計質量620g/m2の防水膜材を作製した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
<配合10>カレンダーフィルム配合
ポリ塩化ビニル樹脂:S−1001(商標、重合度1050、(株)カネカ製)
100質量部
成分(A)用ポリエステル系可塑剤:W−230S(商標、分子量約800)
20質量部
成分(A)用スルホン酸エステル系可塑剤:Mesamoll(商標) 20質量部
成分(B)用クエン酸エステル系可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル 20質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
実施例21
表面側のカレンダーフィルム用配合を前記配合10とし、裏面側のカレンダーフィルム用配合を前記配合5とし、それぞれのフィルムを基布の表裏両面に熱ラミネートした後に、表フィルム面側から電子線を照射して架橋したことを除き、その他は実施例14と同様にして、合計質量697g/m2の防水膜材を製造した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表4に示す。
実施例19〜21で得られた防水膜材は、表4に示されているようにJIS L1096に準拠した引張試験の応力伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との差の絶対値が全て1以下であり、また、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向の20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1%以下を満足するものであった。また、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験にも優れていた。実施例19〜21で得た防水膜材は、使用中の寸法変化による歪み、弛みが少なく、長期間の使用にも耐えうるものであった。さらに、実施例19では屋外の紫外線により、実施例20、21では電子線により、表面側の防水被覆層に架橋構造が形成されているため、可塑剤のブリードによる汚れの付着もなく、外観が長期的にわたり美麗に保たれ、環境汚れが付着しても、その除去が容易であった。
比較例11
基布を下記のように変更したこと以外は、実施例9と同様にして防水膜材を製造した。基布として、経糸、緯糸ともにポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が48本/25.4mmであり、質量230g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量560g/m2の防水膜材を製造した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表5に示す。比較例11の防水膜材は、実施例9と同じ加工方法、であり、基布幅1mあたり300Nの張力であったにもかかわらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向の伸び率の差の絶対値が1%を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10の荷重を経方向及び緯方向に、20℃、24時間付加した後のクリープ歪み率の差の絶対値が1%を超えており、使用中に寸法変化による歪み、弛みを発生し易いものであった。
比較例12
基布を下記のように変更したこと以外は、実施例9と同様にして防水膜材を製造した。基布として、経糸、緯糸ともにポリエステルマルチフィラメント糸555dtex(500d)を芯として、その全周を1.56dtex(1.4d)繊維長さ100mmのポリエステル短繊維紡績糸で比重が65/35になるように被覆してなるコア−スパン糸条を配置し、経糸打ち込み密度が34本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が38本/25.4mmであり、質量180g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量570g/m2の膜材を製造した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表5に示す。比較例12の防水膜材は、実施例9と同じ加工方法、であり、基布幅1mあたり300Nの張力であったにもかかわらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向の伸び率の差の絶対値が1%を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10の荷重を経方向及び緯方向に、20℃、24時間付加した後のクリープ歪み率の差の絶対値が1%を超えており、使用中に寸法変化による歪み、弛みを発生し易いものであり、さらに耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験の成績も不十分なものであった。
比較例13
基布を下記のように変更したこと以外は、実施例13と同様にして防水膜材を製造した。基布として、経糸、緯糸ともにポリエステルマルチフィラメント糸555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が34本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が36本/25.4mmであり、質量145g/m2の長尺平織物を使用し、合計質量640g/m2の膜材を製造した。この防水膜材を各種試験に供した結果を表5に示す。比較例13の防水膜材は、実施例13と同じ加工方法、であり、基布幅1mあたり300Nの張力であったにもかかわらず、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向の伸び率の差の絶対値が1%を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10の荷重を経方向及び緯方向に、20℃、24時間付加した後のクリープ歪み率の差の絶対値が1%を超えており、使用中に寸法変化による歪み、弛みを発生し易いものであった。また、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験の成績が不良であった。
比較例14
ペーストゾル配合を下記配合11に変更したこと以外は、実施例9と同様にして防水膜材を製造したが、ペーストゾルの粘度が高く、所々樹脂が付着しない部分もあり、防水被覆層を均一に形成する事はできなかった。防水被覆層が形成された部分から試料を採取し、一部の試験を行った結果を表5に示す。
<配合11>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
ポリエステル系可塑剤:W−230S(商標、分子量約800) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
比較例14では、ペーストゾルの粘度が高く、防水膜材の製造が不可能であった。基布内部への樹脂の含浸も不十分であり、また実施例9の熱処理条件と同じ190℃で1分間では、熱処理が不足していたため、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験の成績が不良であり、防汚性の評価においても劣っていた。
比較例15
希釈溶剤を50質量部にし、熱処理条件を210℃で1分間に変更したこと以外は、比較例14と同様にして防水膜材を製造した。希釈溶剤を50質量部にすることにより、防水被覆層を均一に形成することができた。この防水膜材を各種試験に供した結果を表5に示す。比較例15の防水膜材は、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験の成績は良好となり、防汚性の評価も実施例9と同等であったが、JIS L1096に準拠した引張試験の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向の伸び率の差の絶対値が1%を超え、またJIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10の荷重を経方向及び緯方向に、20℃、24時間付加した後のクリープ歪み率の差の絶対値が1%を超えており、使用中に寸法変化による歪み、弛みを発生し易いものであった。これは熱処理温度を高くしたため、加工時の緯方向の収縮が大きくなったためであると思われる。また、希釈溶剤量が大量に必要となることは、経済的に不利であり、大気中に排出する溶剤量が増えることは環境上甚だ不都合である。
比較例16
ペーストゾル配合を下記配合12に変更したこと以外は、実施例9と同様に防水膜材を製造したが、ペーストゾルの粘度が高く、所々樹脂が付着しない部分もあり、防水被覆層を均一に形成する事はできなかった。防水被覆層が形成された部分から試料を採取し、一部の試験を行った結果を表5に示す。
<配合12>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
スルホン酸エステル系可塑剤:Mesamoll(商標) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
比較例16では、ペーストゾルの粘度が高く防水膜材の製造が不可能であった。また、基布内部への含浸も不十分であったため、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験の成績が不良であった。
比較例17
ペーストゾル配合を下記配合13に変更したこと以外は、実施例9と同様に防水膜材を製造し合計質量570g/m2の防水膜材得た。この防水膜材を各種試験に供した結果を表5に示す。
<配合13>ペーストゾル配合
ポリ塩化ビニル樹脂:P21(商標、重合度1600、新第一塩ビ(株)製)
100質量部
クエン酸エステル系可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 2質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート 5質量部
無機顔料:TiO2 5質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
比較例17の防水膜材は、JIS L1096に準拠した引張試験の応力伸び曲線(S−Sカーブ)において、経方向と緯方向の破断強さの1/10応力における経方向と緯方向との差の絶対値が全て1%以下であり、また、JIS K7115に準拠した引張クリープ試験において、経方向と緯方向の破断強さの1/10荷重における経方向と緯方向の20℃、24時間後クリープ歪み率の差の絶対値が全て1%以下を満足するものであった。また、初期の、耐はためき性と相関性の高い繰り返し屈曲試験にも優れていた。しかし、1年間曝露後では風合いが硬くなり、繰り返し屈曲試験で表面にひび割れを生じた。さらに、1年間曝露後の防汚性も劣っており、比較例17の防水膜材は、長期間の使用に耐えることができないものであった。
Figure 0004639301
本発明の防水膜材は、内分泌攪乱物質として疑いを持たれている化学物質を含むことなく、従来と同等の加工条件で製造することが可能であり、従来これらの防水膜材に生じていた寸法変化、歪み、弛みの発生を防ぐことができ、フラット性が良好で、しかも風によるはためきに対する耐久性にもれているため、特にトラック幌、トラックシート、および屋内向けフロアシートなどに用いた場合、内分泌攪乱物質として疑いを持たれている化学物質の大気中への拡散、屋内での吸引、産業廃棄物として埋め立てられた後の土壌或いは地下水の汚染、河川・湖沼への流出などを懸念することなく使用でき、長期間初期の外観を保つことが可能である。
本発明の防水膜材の応力−伸び曲線(S−Sカーブ)の一例を示す説明図。 本発明の防水膜材の動的耐久性試験(繰り返し屈曲試験)の一例を示す説明図。
符号の説明
1 破断点
2 引張破断強さの1/10応力
3 破断強さの1/10応力
4 破断強さの1/10応力における伸び率
5 膜材試験片
6 試験片調整折り目
7 屈曲試験用折り目
(A) 屈曲形状
(B) 展張形状

Claims (9)

  1. 短繊維紡績糸条からなる経糸及びマルチフィラメント糸条を含む緯糸により構成された繊維布帛を含む基布と、この基布の少なくとも1面上に形成され、かつ軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む1層以上の防水樹脂層を含む防水被覆層とからなる可撓性積層体であって、
    前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物、或いは、少なくとも1種のポリエステル系可塑剤化合物と少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物とのブレンドからなる可塑剤成分(A)と、少なくとも1種のクエン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(B)とのブンレドとのみからなる複合可塑剤を、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して30〜150質量部の添加量で含み、
    前記複合可塑剤中の前記可塑剤成分(A)及び(B)の質量ブレンド比(A):(B)が30:70〜90:10の範囲内にあり、また
    前記可撓性積層体のJIS L1096に準拠する引張試験に供された経方向用試験片および、緯方向用試験片の応力と伸び率との関係曲線(S−Sカーブ)において、経方向用試験片の破断応力の1/10の応力における伸び率(%)と、緯方向用試験片の破断応力の1/10の応力における伸び率(%)との差の絶対値が0〜1%の範囲内にある
    ことを特徴とする寸法安定性防水膜材。
  2. 前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる複合可塑剤が、少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物からなる可塑剤成分(A)30〜90質量%と、前記クエン酸エステル系可塑剤成分(B)70〜10質量%からなる、請求項1に記載の防水膜材。
  3. 前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる複合可塑剤が、少なくとも1種のポリエステル系可塑剤化合物と少なくとも1種のスルホン酸エステル系可塑剤化合物とのブレンドからなる可塑剤成分(A)30〜90質量%と、前記クエン酸エステル系可塑剤成分(B)70〜10質量%からなり、前記可塑剤成分(A)中のポリエステル系可塑剤化合物と前記スルホン酸エステル系可塑剤化合物の質量ブレンド比が、10:90〜90:10である、請求項1に記載の防水膜材。
  4. 前記ポリエステル系可塑剤化合物を含む可塑剤成分(A)が、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペートを含まない、請求項1又は3に記載の防水膜材。
  5. 前記クエン酸エステル系可塑剤化合物がアセチルクエン酸トリブチルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防水膜材。
  6. 前記緯糸が、マルチフィラメント糸条からなる芯部と、この芯部の全周面を被覆し、かつ短繊維からなる鞘部とにより構成されたコア−スパン糸条を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防水膜材。
  7. 前記防水被覆層が前記防水樹脂層の最外面上に形成された防汚層をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防水膜材。
  8. 前記軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が、さらに多官能(メタ)アクリレート化合物を含み、それによって前記防水樹脂層が紫外線架橋性を有している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の防水膜材。
  9. 前記防水樹脂層中の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が、電子線、またはγ線の照射により架橋されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の防水膜材。
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