JP6318349B2 - 軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シート - Google Patents

軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シート Download PDF

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Description

本発明は繊維織物を基材として、繊維織物基材に軟質塩化ビニル樹脂層を被覆して得られる帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、ターポリン(テント構造物用、建築養生用、電飾看板用、フレキシブルコンテナ用)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの可撓性積層体に関するものであり、特にフタル酸エステル系化合物を可塑剤として使用せずとも可塑化効率に優れ、かつ可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れる産業資材シートに関する。
ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート(DHP)などのフタル酸ジエステル系可塑剤が多量に配合された軟質塩化ビニル樹脂成形物では、経時的現象として可塑剤が表面に移行(ブリード)し、それが揮発することで成型物中の可塑剤を徐々に失い、それが原因で成型物の風合いを硬くし、終局的には成型物に亀裂を生じるなど、軟質塩化ビニル樹脂自体の脆化劣化を招く問題がある。また可塑剤のブリードは成型物表面をベトつかせ、このベトつきに煤塵や埃が沈着することで短期間のうちに汚れ易くなり、しかも沈着汚れが除去し難いという問題があった。
また、昨今ではフタル酸エステル系の可塑剤は変異原性物質の懸念物質とされ、特に玩具、食品ラップ、医療用具などの分野では非フタル酸エステル系の可塑剤への置き換えが検討され始めている。例えば特許文献1には、非フタル酸エステル系化合物による塩化ビニル系樹脂用可塑剤として、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを含む塩化ビニル系樹脂用可塑剤が例示されているが、しかし段落〔0057〕には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを含む塩化ビニル系樹脂では、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを多量に配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しくなることの注意点が記載され、同様の注意は特開2010−260967号公報の段落〔0015〕においても記載されている。同様に非フタル酸エステル系可塑剤を配合した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムとして、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを配合した事例(特許文献2)の開示がある。また、ロール剥離性、耐ブロッキング性、透明性、印刷適性、高周波ウエルダー適性に優れた塩化ビニル系樹脂フィルムとして、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを配合すること(特許文献3)が開示されているが、しかし上記した特許文献1〜3の塩化ビニル系樹脂成形物において、これらの1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルのブリード(移行)を抑止または防止するような具体的方法の検討はなされていない。
また一方、非フタル酸エステル系化合物による可塑剤として、テレフタル酸エステル系可塑剤を用いたことによる耐ブロッキング性の農業用ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(特許文献4)、テレフタル酸エステル系可塑剤を用いたことにより耐寒性に優れるポリ塩化ビニル壁紙(特許文献5)、イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)および/またはイソフタル酸ジイソノニルであるイソフタル酸エステル系可塑剤を含むことにより、人体に対する安全性に優れた電線・ケーブル被覆用塩化ビニル樹脂組成物(特許文献6)などが提案されている。しかしこれらの非フタル酸エステル系化合物による可塑剤系では直鎖状の塩化ビニル樹脂の双極子に対するエステル構造部分の配位スペースが分子構造的に嵩張り、そのため可塑化効率に劣り、さらに分子量増大(分子量350〜400)に伴っての可塑化効率がより低減することで、取り分け分子量250〜300程度の低分子量領域の非フタル酸エステル系化合物を使用しなければならないという必要を生じるが、しかしその反面、可塑剤が低分子化することでブリード(表面移行)を起こし易くなり、それによって可塑剤の揮発ロスを招いたり、ブリードした可塑剤に煤塵汚れが付着することで、短期間で外観を汚れたものとするなどの問題を有している。しかし上記した特許文献4〜6の塩化ビニル樹脂組成物などにおいて、テレフタル酸エステル系可塑剤やイソフタル酸エステル系可塑剤のブリード(移行)を抑止または防止するような具体的方法の検討はなされていない。従って、可塑化効率に優れながら可塑剤ブリードが抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れた軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、特に非フタル酸エステル系化合物による軟質塩化ビニル樹脂組成物が望まれていたが、そのような軟質塩化ビニル樹脂組成物はまだ存在していなかった。
特開2001−207002号公報 特開2002−363366号公報 特開2011−231226号公報 特開2002−234983号公報 特開2012−184529号公報 特開2012−89287号公報
本発明は繊維織物を基材として、繊維織物基材に軟質塩化ビニル樹脂層を被覆して得られる帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、ターポリン(テント構造物用、建築養生用、電飾看板用、フレキシブルコンテナ用)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートで、特にフタル酸エステル系化合物を可塑剤として使用せずとも可塑化効率に優れ、かつ可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れる産業資材シートを提供しようとするものである。
本発明者は、軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートについて上記の現状に鑑みて研究、検討を行った結果、本発明による軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体において、軟質塩化ビニル樹脂層が塩化ビニル系樹脂を主体に含み、さらにイソフタル酸ジアルキルエステル,テレフタル酸ジアルキルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた1種以上の可塑剤、及び(メタ)アクリレート化合物とを質量比10:1〜3:1の範囲で含む配合で構成し、(メタ)アクリレート化合物が、軟質塩化ビニル樹脂層内で重合して架橋網目立体構造を形成することによって、得られる産業資材シートが、可塑化効率に優れながら可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れていることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体による軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートであって、前記軟質塩化ビニル樹脂層が塩化ビニル系樹脂を主体に含み、さらにイソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた1種以上の可塑剤、及び(メタ)アクリレート化合物とを質量比10:1〜3:1の範囲で含む配合で構成され、前記(メタ)アクリレート化合物が、1分子当たり(メタ)アクリロイル基を1〜6個有する化合物から選ばれた1種以上であって、前記(メタ)アクリレート化合物が、前記軟質塩化ビニル樹脂層内で重合し、架橋網目立体構造を形成し、さらに前記軟質塩化ビニル樹脂層上に、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質をバインダー成分に担持して含む防汚層が設けられ、前記無機コロイド物質が、シリカ(酸化ケイ素)ゾル、アルミナ(酸化アルミニウム)ゾル、ジルコニア(酸化ジルコニウム)ゾル、セリア(酸化セリウム)ゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上で、前記バインダー成分が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むことが好ましい。これによって得られる産業資材シートでは、可塑化効率に優れながら可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも優れた屈曲柔軟性を発現するようになる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、前記(メタ)アクリレート化合物が分子構造の一部に、アルキル鎖、ヒドロキシアルキル鎖、アルキレンオキサイド、アルキレングリコール、ペンタエリスリトール、及びトリメチロールアルカンから選ばれた何れか1種以上の構造成分を含有するアクリレート化合物またはメタアクリレート化合物であることが好ましい。これによって得られる産業資材シートでは、可塑剤ブリードが高度に抑止されるようになる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、前記(メタ)アクリレート化合物が、前記軟質塩化ビニル樹脂層内で重合し、架橋網目立体構造を形成することにより、前記可塑剤のブリード防止(抑止)効果に作用することが好ましい。これによって得られる産業資材シートでは、可塑剤ブリードが高度に抑止されるようになる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、前記軟質塩化ビニル樹脂層上に、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質をバインダー成分に担持して含む防汚層が設けられていることが好ましい。これによって得られる産業資材シートでは、可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも優れた屈曲柔軟性及び防汚性を発現できるようになる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、前記バインダー成分が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むことが好ましい。これによって得られる産業資材シートでは、可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも優れた屈曲柔軟性及び防汚性を発現できるようになる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、前記無機コロイド物質が、シリカ(酸化ケイ素)ゾル、アルミナ(酸化アルミニウム)ゾル、ジルコニア(酸化ジルコニウム)ゾル、セリア(酸化セリウム)ゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって得られる産業資材シートでは、可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも優れた屈曲柔軟性及び防汚性を発現できるようになる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートは、特にフタル酸エステル系化合物を可塑剤として使用せずとも可塑化効率に優れ、かつ可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れているので、帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、ターポリン(テント構造物用、建築養生用、電飾看板用、フレキシブルコンテナ用)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの産業資材シートとして長期間使用することができる。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートの要件は、繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体であって、前記軟質塩化ビニル樹脂層が塩化ビニル系樹脂を主体に含み、さらにイソフタル酸ジアルキルエステル,テレフタル酸ジアルキルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた1種以上の可塑剤、及び(メタ)アクリレート化合物とを質量比10:1〜3:1の範囲で含む配合で構成され、前記(メタ)アクリレート化合物が、1分子当たり(メタ)アクリロイル基を1〜6個有する化合物から選ばれた1種以上であることを必須とする。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートに用いる基材としての繊維織物は、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種類以上から成る混用繊維から製織された質量50〜500g/m程度、好ましくは質量65〜280g/mの織物である。合成繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエスエル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、及びヘテロ環ポリマー繊維が挙げられる。天然繊維としては木綿、麻、ケナフが挙げられ、半合成繊維にはレーヨン、アセテートが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などが挙げられる。特に本発明においては合成繊維によるフィラメントヤーンまたはスパンヤーンによる平織物、綾織物、朱子織物、模紗織物など公知の織物などが使用できる。これら基布は必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されても良い。本発明に用いる繊維織物はポリエスエル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維などから成る平織物が好ましい。
本発明に用いる基布で、帆布に適した基布は10番手(591dtex)〜60番手(97dtex)の範囲のスパンヤーン(短繊維紡績糸条)、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)のスパンヤーンを用いた目抜け空隙率5%未満の平織基布である。具体的に20番手単糸、または20番手双糸を用いて1インチ間に経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で含むスパン平織物が適している。これらのスパンヤーンには芯鞘型を含み、例えばアラミド繊維スパンヤーンを芯成分として、その外周にポリエスエル繊維短繊維を絡めて鞘成分としたもの、さらには例えばアラミド繊維マルチフィラメント糸条を芯成分として、その外周にポリエスエル繊維短繊維を絡めて鞘成分としたものなど、同様に段落〔0016〕に記載した繊維2種類からの組み合わせが挙げられる。このような仕様とすることで得られる帆布の引裂強度、突起物による穴開防止性を飛躍的に高くすることを可能とする。また、ターポリンに適する基布は、278〜1666dtex、好ましくは555〜1111dtexのマルチフィラメントヤーンを用いた目抜け空隙率5%〜35%、好ましくは空隙率5%〜25%の平織物である。また、メッシュシートに適した基布は、222〜1666dtex、好ましくは555〜1111dtexのマルチフィラメントヤーンを用いた目抜け空隙率20〜60%、好ましくは空隙率25%〜40%の平織物、模紗織物である。これらのターポリン用、及びメッシュ用の基布にはリップストップ基布を含み、例えばポリエスエルマルチフィラメントヤーンによる基布の経糸及び/または緯糸の一部を規則的、またはランダムにアラミド繊維マルチフィラメントヤーンに置換し配置したもの、同様に段落〔0016〕に記載した繊維2種類からの組み合わせ配置が挙げられる。このような仕様とすることで得られるターポリンやメッシュシートの引裂強度、突起物による破壊防止性を飛躍的に高くすることを可能とする。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートにおける軟質塩化ビニル樹脂層には、塩化ビニル樹脂を主体として含み、さらに可塑剤として、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の液状化合物を含んでいる。〔化1〕〜〔化5〕に示すジアルキルエステルの群において式中、Rは個々に同一又は異なって、炭素(C)数4〜13の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基、脂環族基などを表している。
イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群)の可塑剤は例えば、イソフタル酸と2−エチルヘキサノールとのエステル化反応によって合成されるイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)が特に好ましく、その他イソフタル酸ジブチル(C4:MW278)、イソフタル酸ジイソブチル(C4:MW278)、イソフタル酸ジヘキシル(C6:MW334)、イソフタル酸ジヘプチル(C7:MW362)、イソフタル酸ジノニル(C9:MW418)、イソフタル酸ジイソノニル(C9:MW418)、イソフタル酸ジイソデシル(C10:MW447)、イソフタル酸ジデシル(C10:MW447)、イソフタル酸ブチルベンジル(C4,C7:MW312)などが例示される。テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)の可塑剤は例えば、テレフタル酸と2−エチルヘキサノールとのエステル化反応によって合成されるジ−2−エチルヘキシルテレフタレート(ジオクチルテレフタレート)(C8:MW390)が特に好ましく、その他、その他テレフタル酸ジブチル(C4:MW278)、テレフタル酸ジイソブチル(C4:MW278)、テレフタル酸ジヘキシル(C6:MW334)、テレフタル酸ジヘプチル(C7:MW362)、テレフタル酸ジノニル(C9:MW418)、テレフタル酸ジイソノニル(C9:MW418)、テレフタル酸ジイソデシル(C10:MW447)、テレフタル酸ジデシル(C10:MW447)、テレフタル酸ブチルベンジル(C4,C7:MW312)などが例示される。これら〔化1〕及び〔化2〕に示すジアルキルエステルの群において式中、Rは個々に同一又は異なって、炭素数4〜10の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。炭素数11以上となると、イソフタル酸構造及びテレフタル酸構造により、アルキルエステルの配置構造による立体障害が大きくなり、塩化ビニル系樹脂の双極子へのエステル極性部の配位秩序が粗密化することで可塑化効率が低下する傾向がある。
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)の可塑剤は例えば、(〔化1〕の群)のベンゼン環を水素化して得られる1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)が特に好ましく、その他1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW365)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示される。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)の可塑剤は例えば、(〔化2〕の群)のベンゼン環を水素化して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)が特に好ましく、その他1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW362)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示される。1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)の可塑剤は例えば、DOP(フタル酸ジオクチル)のベンゼン環を水素化して得られる1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)が特に好ましく、その他1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW362)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示される。これら〔化3〕〜〔化5〕に示すジアルキルエステルの群において式中、Rは個々に同一又は異なって、炭素数4〜10の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。炭素数11以上となると、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸構造、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸構造、及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸構造により、アルキルエステルの配置構造による立体障害が大きくなり、塩化ビニル系樹脂の双極子へのエステル極性部の配位秩序が粗密化することで可塑化効率が低下する傾向がある。
段落〔0019〕〔0020〕に述べた(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤に併用可能な他の可塑剤成分としては、必要に応じてアセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリクレジルホスフェート、分子末端、または側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する反応性アクリル系化合物、及びアリル基を2個以上有するアリルフタレート系化合物などを(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤に対して5〜15質量%程度併用することができる。
本発明において軟質塩化ビニル樹脂層は、塩化ビニル系樹脂を主体に含み、段落〔0019〕〔0020〕に述べた(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤を1種以上含み、可塑剤を含むことによって塩化ビニル系樹脂を効果的に可塑化して軟質塩化ビニル樹脂とし、さらに1分子当たり(メタ)アクリロイル基を1〜6個有する(メタ)アクリレート化合物を含むとによって軟質塩化ビニル樹脂層内に緻密な架橋構造を導入することで可塑剤ブリードを高度に抑止し、さらに繊維織物基材との接着性を増すと同時に軟質塩化ビニル樹脂層の耐熱性を向上する。そして(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)の可塑剤と(メタ)アクリレート化合物との含有比が質量比10:1〜3:1の範囲で構成されることが好ましい。(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し35〜100質量部、好ましくは50〜80質量部である。従って塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤を100質量部配合する場合に使用する(メタ)アクリレート化合物の使用量範囲は10〜33.3質量部であり、同様に(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤を35質量部配合する場合に使用する(メタ)アクリレート化合物の使用量範囲は3.5〜11.65質量部である。また、塩化ビニル系樹脂とは塩化ビニルモノマーの単独重合体(乳化重合タイプ、懸濁重合タイプで重合度が700〜3800のもの)の他、塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のモノマー類との共重合体やグラフト重合体を含むものであるが、このような共重合体の場合、塩化ビニル含有成分が60質量%を越える比率が望ましい。共重合成分としては、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類、マレイン酸及びそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテルなどのビニル化合物などが挙げられる。軟質塩化ビニル樹脂層には塩化ビニル系樹脂以外の成分として、ポリオール化合物、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などを、加工性改良剤、柔軟性改良剤、低温特性改良剤、耐熱特性改良剤、衝撃緩和剤などの目的で、塩化ビニル系樹脂に対して5〜25質量%程度併用することができる。また軟質塩化ビニル樹脂層には、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤、及びトリイソシアネート化合物以外の成分として、軟質塩化ビニル樹脂用の公知の添加剤を種々任意量配合することができ、軟質塩化ビニル樹脂用安定剤として、カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系などの安定剤を単独あるいは複数種併用して用いることができる。必要に応じて、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤(顔料)、蛍光増白剤、帯電防止剤、ワックスなどを含むことができる。
本発明において軟質塩化ビニル樹脂層には、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤と併用して(メタ)アクリレート化合物を含有し、(メタ)アクリレート化合物の重付加反応により軟質塩化ビニル樹脂層内に緻密な架橋構造を形成し、それによって可塑剤の移行を抑止する効果を得る。(メタ)アクリレート化合物は、分子構造の一部に、アルキル鎖、ヒドロキシアルキル鎖、アルキレンオキサイド、アルキレングリコール、ペンタエリスリトール、及びトリメチロールアルカンから選ばれた何れか1種以上の構造成分を含有し、かつ1分子当たり(メタ)アクリロイル基を1〜6個有するアクリレート化合物、またはメタアクリレート化合物であることが特に好ましい。具体的に(メタ)アクリロイル基を1個有するアクリレート化合物、及びメタアクリレート化合物として、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの炭素数5〜20のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する炭素数1〜5のアルキル(メタ)アクリレート、及びジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなど、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性オクチルオキシ化リン酸(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
具体的に(メタ)アクリロイル基を2個有するアクリレート化合物、及びメタアクリレート化合物として、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレートなどが挙げられる。具体的に(メタ)アクリロイル基を3個有するアクリレート化合物、及びメタアクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレートなどのトリメチロールC2〜C10アルカントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレートなどのトリメチロールC2〜C10アルカンポリアルコキシトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリス(エチルオキシ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的に(メタ)アクリロイル基を4個以上有するアクリレート化合物、及びメタアクリレート化合物として、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらの(メタ)アクリレート化合物は、加熱、紫外線照射(例えば光増幅剤としてベンゾフェノンを併用する)、電子線、触媒(例えばバナジウム系を併用する加熱硬化)、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイル)などによる(メタ)アクリロイル基の開裂により、(メタ)アクリロイル基同士が付加重合することで緻密な架橋網目立体構造を成すと同時に、繊維織物表面の官能基に対して結合を成し、軟質塩化ビニル樹脂層全体に架橋網目立体構造を形成し、それによって軟質塩化ビニル樹脂層と繊維織物との界面を強固に接着すると同時に、架橋網目立体構造は軟質塩化ビニル樹脂層に可塑剤として共存する(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤の分子が架橋網目立体構造を通り抜けることを困難とするフィルター効果によって、これらの可塑剤のブリード防止(抑止)効果を発現させる。従って架橋網目立体構造の立体網目が細密化するほど、これら可塑剤のブリード防止(抑止)効果をより高いものとする。細密化された立体網目を得るためには、(メタ)アクリレート化合物の分子量が比較的小さく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するアクリレート化合物、及びメタアクリレート化合物を段落〔0023〕〔0024〕に上述した中から1種または複数にての選択使用が好ましい。
繊維織物に軟質塩化ビニル樹脂層を形成する方法として、例えば、乳化重合タイプの塩化ビニル樹脂(100質量部)に、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤(35〜100質量部)及び、(メタ)アクリレート化合物(0.35〜33.3質量部)を主成分とするペースト状組成物を用いての公知の塗工方法、例えばディッピング(繊維織物への両面加工)、コーティング(繊維織物への片面加工または両面加工で、ナイフコーティング、グラビアコーテイング、クリアランスコーティングなど)などが挙げられる。本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートが帆布の場合、段落〔0017〕に記載した帆布用平織基布に対してディッピングまたはコーティング、もしくはディッピングとコーティングとの併用手段により、繊維織物の隙間(繊維糸条と繊維糸条との隙間、及び繊維糸条を構成するフィラメント単糸とフィラメント単糸との隙間)にペースト状組成物を含浸し、かつ、帆布用平織基布の両面をペースト状組成物で被覆し、これを熱処理してゲル化させることで軟質塩化ビニル樹脂層を形成して目的の帆布を得る。また本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートがメッシュシートの場合、段落〔0017〕に記載した目抜けの平織物に対してディッピングまたはコーティングの手段により、繊維糸条を構成するフィラメント単糸とフィラメント単糸との隙間にペースト状組成物を含浸し、かつ、目抜けの平織物の全面をペースト状組成物で被覆し、これを熱処理してゲル化させることで軟質塩化ビニル樹脂層を形成して目的のメッシュシートを得る。また本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートがターポリンの場合、段落〔0017〕に記載した目抜けの平織物の片面、または両面に対して、例えば、懸濁重合タイプの塩化ビニル樹脂(100質量部)に、(〔化1〕の群)〜(〔化5〕の群)から選ばれた可塑剤(35〜100質量部)、及び、(メタ)アクリレート化合物(0.35〜33.3質量部)を主成分とするコンパウンド組成物を用い、これをカレンダー法で成型したフィルム(シート)、またはTダイス法で押出成型したフィルム(シート)を目抜け部ブリッジ法による熱ラミネート、あるいは接着剤ラミネートすることで目的のターポリンを得る。これら軟質塩化ビニル樹脂層の形成量に限定は無いが、表裏合計で繊維織物の質量に対して100〜1000質量%程度、特に150〜500質量%である。
本発明の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートにおける軟質塩化ビニル樹脂層の表面には、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質をバインダー成分に担持して含む防汚層が設けられていることが好ましく、特にバインダー成分にシランカップリング剤の加水分解縮合物を含むことが好ましい。無機コロイド物質としては、シリカ(酸化ケイ素)ゾル、アルミナ(酸化アルミニウム)ゾル、ジルコニア(酸化ジルコニウム)ゾル、セリア(酸化セリウム)ゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上が使用できる。バインダー成分は有機系のものとして、アクリル系樹脂、フッ素系共重合樹脂、アクリル−シリコン共重合樹脂、アクリルーフッ素共重合樹脂、アクリル−ウレタン共重合樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合樹脂とのブレンドなどが挙げられる。バインダー成分はシランカップリング剤として、一般式:XR−Si(Y)で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有する化合物で、例えば、X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、クロル基、メルカプト基など(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、エトキシ基などである。またこれらの加水分解物、及びアルコキシシラン化合物との共加水分解化合物なども使用できる。具体的にシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。防汚層に占める無機コロイド物質の含有率に限定は無いが、特に25〜50質量%が好ましい。これらの防汚層の形成方法は、溶剤あるいは水に可溶な樹脂の溶液、またはエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコートなどのコーティング法で塗布・乾燥することで形成される。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に実施例及び比較例のシートの評価方法を説明する。
〈耐熱性〉
〈接合体による耐熱クリープ特性による評価〉
2枚のシートの端部同士を4cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、4cm幅×30
cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター社
製YF−7000型:出力7KW)を用い、陽極電流1.0Aでシート同士の融着接
合を行い接合体シートを得た。これより融着接合部を重ね合わせ幅4cmを含む、
3cm幅×30cm長の試験片を9片採取し、クリープ試験機(東洋精機製作所社製
:100LDR型)により60℃×25kgf荷重(条件1)、65℃×25kgf
荷重(条件2)、70℃×25kgf荷重(条件3)の3条件で耐熱クリープ性を
24時間評価した。
評価の基準
1 :24時間経過後、接合部に異変や異常なく良好。
2 :24時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した。
〈破壊した時間を記録〉
3 :1時間以内に接合部が破壊し、試験片が分断した。
〈破壊した時間を記録〉
破壊状態の判断:接合部糸抜け破壊(糸の断裂なし),本体破壊等(糸の断裂あり)
〈屈曲耐久性〉
JIS L1096 8.19項「摩耗強さB法(スコット法)」により、1kgf荷重500回での、軟質塩化ビニル樹脂層の摩耗状態(摩耗カス量で評価)、及び亀裂の有無(20倍の拡大鏡による目視観察)を評価した。
1:摩耗カスが少なく、亀裂の発生を認めない
2:摩耗カスを若干発生するが、亀裂の発生は認めない
3:亀裂を認める
〈可塑剤ブリードの抑止効果:濡れ性評価〉
10cm×10cmサイズの試料を2枚のガラス板(10cm×10cmサイズ×5mm厚)で挟み、これを65℃に設定したギアーオーブン中に平置した状態で72時間静置し、取り出し直後のガラス板面の曇り(フォギング)や濡れ(ブリード)の有無の目視及び指触判断を以って可塑剤のブリードの抑止性(防止性)を判断した。
1(良好):ガラス板面にやや曇りを認めるレベル
2(やや不良):ガラス板面に曇りを認め、触ると滑るレベル
3(不良):ガラス板面に顕著な濡れを認め、試料表面にも濡れを認めるレベル
〈可塑剤ブリードの抑止効果:揮発減量評価〉
質量の明らかな10cm×10cmサイズの試料を85℃に設定したギアーオーブン中に吊した状態で72時間静置し、取り出し後の試料の質量より可塑剤の揮発量を求め、この揮発減量の「多い」「少ない」を以って可塑剤のブリードの抑止性(防止性)を判断した。
1:(ブリード防止効果を認める):50mg以下のレベル
2:(ブリード抑止効果を認める):50〜150mgのレベル
3:(ブリード防止効果が認めなれない):150mgを越えるレベル
参考例1]
ポリエステル(PET)短繊維紡績糸条からなる平織スパン布を基布1として用いた。
〈繊維織物:基布1〉
〔糸密度:経糸20番手双糸(590dtex)44本/インチ×緯糸20番手双糸(590dtex)40本/インチ:空隙率4.2%:質量228g/m:両面にコロナ放電処理〕
下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を適度な粘度に調製し、この〔配合1〕のペーストゾル組成物を充填した液浴中に、基布1を浸漬し、基布1に完全に〔配合1〕のペーストゾル組成物を含浸し、基布1を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合1〕のペーストゾル組成物のゲル化と、アクリレート化合物(1)の重付加反応を進行させ、〔配合1〕のペーストゾル組成物で含浸し、かつ被覆されることで基布1の両面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390) 60質量部
※〔化1〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基
アクリレート化合物(1)(有効成分100%) 10質量部
※トリプロピレングリコールジアクリレート(アクリロイル基を2個有する)
CH=CHCO−(OCH−OCOCH=CH
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
※イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)とアクリレート化合物(1)との質量比は
60:10(6:1)である。
参考例2]
参考例1において〔配合1〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化2〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(1)10質量部を、トリメチロールプロパントリアクリレート〔アクリロイル基を3個有するアクリレート化合物(2):(CH=CHCOOCH−CCHCH〕10質量部に置換した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
参考例3]
参考例1において〔配合1〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化3〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(1)10質量部を、ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔アクリロイル基を4個有するアクリレート化合物(3):(CH=CHCOOCH−C〕10質量部に置換した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
参考例4]
参考例1において〔配合1〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化4〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(1)10質量部を、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート〔アクリロイル基を3個有するアクリレート化合物(4):〔CH=CHCO−(OC)−OCH−CCHCH〕10質量部に置換した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
参考例5]
ポリエステル(PET)マルチフィラメント糸条からなる目抜け平織物を基布2として用いた。
〈繊維織物:基布2〉
〔糸密度:750d/3本模紗(833dtex/3本模紗)を経緯糸条として、経糸条11本/インチ、緯糸条11本/インチの打ち込みで製織した粗目模紗織物(質量225g/m:空隙率11%:両面にコロナ放電処理)
実施例1において〔配合1〕に用いたアクリレート化合物(1)10質量部を、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(アクリロイル基を2個有するアクリレート化合物(5):C(CH(CH=CH−CO−(OC−O−(C)10質量部に置換した〔配合2〕をペーストゾル組成物とした。
〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を適度な粘度に調製し、この〔配合2〕のペーストゾル組成物を充填した液浴中に、基布2を浸漬し、基布2に完全に〔配合2〕のペーストゾル組成物を含浸し、基布2を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合2〕のペーストゾル組成物のゲル化と、アクリレート化合物(5)の重付加反応を進行させ、〔配合2〕のペーストゾル組成物で含浸し、かつ被覆されることで基布2の両面に軟質塩化ビニル樹脂層が形成された厚さ0.36mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
参考例6]
参考例5において〔配合2〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化2〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(5)10質量部を、エチレンオキサイド(n=3)変性イソシアヌル酸トリアクリレート〔アクリロイル基を3個有するアクリレート化合物(6)〕10質量部に置換した以外は参考例5と同様として、厚さ0.36mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
参考例7]
参考例5において〔配合2〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化5〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(6)10質量部を、アクリレート化合物(1)10質量部に置換した以外は参考例5と同様として、厚さ0.36mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
参考例8]
参考例5において〔配合2〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化4〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(6)10質量部を、アクリレート化合物(2)10質量部に置換した以外は参考例5と同様として、厚さ0.36mm、質量470g/m、空隙率10%のメッシュシートを得た。
参考例9]
ポリエステル(PET)マルチフィラメント糸条からなる目抜け平織物を基布3として用いた。
〈繊維織物:基布3〉
〔糸密度:1000d(1111dtex)を経緯糸条として、経糸条19本/インチ、緯糸条20本/インチの打ち込みで製織した粗目平織物(質量190g/m:空隙率7%:両面にコロナ放電処理)
基布3の両面に〔配合3〕の軟質塩化ビニル樹脂コンパウンドから165℃〜180℃の熱条件でカレンダー成型された厚さが0.16mmのフィルムを、ラミネーターにより170℃の熱ロール条件でフィルムを軟化させた状態で積層し、厚さが0.75mm、質量が940g/mのターポリンを得た。
〔配合3〕軟質塩化ビニル樹脂コンパウンド組成物
懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390) 60質量部
※〔化1〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基
アクリレート化合物(3)(有効成分100%) 10質量部
※ペンタエリスリトールテトラアクリレート
〔アクリロイル基を4個有する:(CH=CHCOOCH−C〕
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
ルチル型酸化チタン(白色顔料) 5質量部
※イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)とアクリレート化合物(3)との質量比は
60:10(6:1)である。
参考例10]
参考例9において〔配合3〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化2〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(3)10質量部を、アクリレート化合物(4)10質量部に置換した以外は参考例9と同様として、厚さが0.75mm、質量が940g/mのターポリンを得た。
参考例11]
参考例9において〔配合3〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化3〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(3)10質量部を、アクリレート化合物(5)10質量部に置換した以外は参考例9と同様として、厚さが0.75mm、質量が940g/mのターポリンを得た。
参考例12]
参考例9において〔配合3〕に用いたイソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390)60質量部を、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化5〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基)60質量部に置換し、さらにアクリレート化合物(3)10質量部を、アクリレート化合物(6)10質量部に置換した以外は参考例9と同様として、厚さが0.75mm、質量が940g/mのターポリンを得た。
参考例1〜12]
参考例1〜4の帆布、参考例5〜8のメッシュシート、及び参考例9〜12のターポリンの表面に下記〔配合4〕による防汚層を形成し、各々、実施例1〜4の防汚層を片表面に設けた帆布、実施例5〜8の防汚層を両面に設けたメッシュシート、及び実施例9〜12の防汚層を片表面に設けたターポリンを得た。
〈防汚層〉
参考例1〜12の基材を100メッシュグラビアロール塗工条件の塗工機に掛け、軟質塩化ビニル樹脂層上に下記〔配合4〕の防汚組成物による表面処理を行い、120℃の熱風炉で3分間乾燥した。この防汚層は室温で約3日間養生した以降より効果を発現する。
〔配合4〕防汚組成物
シリカゾル(粒子径20〜30nm:固形分48質量%) 100質量部
ビニルトリエトキシシラン(シランカップリング剤) 50質量部
ベンゾトリアゾール化合物(紫外線吸収剤) 1質量部
ポリエチレングリコール型非イオン活性剤(帯電防止剤) 1質量部
希釈剤(水) 100質量部
参考例1〜12のシートは、いずれもフタル酸エステル系化合物を可塑剤として使用せずとも可塑化効率に優れ、かつ可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れているので、帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、ターポリン(テント構造物用、建築養生用、電飾看板用、フレキシブルコンテナ用)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの産業資材シートに長期間利用することができる。特に参考例1〜12のシートに防汚層を設けた実施例1〜12のシート(帆布、メッシュ、ターポリン)は防汚性に優れ、粉塵汚れが付着しても数週間経過レベルであれば、ワイピングクロスなどでの拭き取りまたは叩き落しによって容易に粉塵が除去可能であり、拭き取り時の静電気発生による粉塵の再付着トラブルなどは認められず、しかも軟質塩化ビニル樹脂層に防汚層を設けたことで可塑剤のブリード防止(抑止)効果がさらに向上し、屋外可使時間を倍増するものとした。
[比較例1]
参考例1において、〔配合1〕に用いたアクリレート化合物(1):トリプロピレングリコールジアクリレートを省略した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
[比較例2]
参考例1において、〔配合1〕に用いたアクリレート化合物(1)を3質量部に減量し、イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化1〕)及びアクリレート化合物(1)との質量比を、60質量部:3質量部(20:1)に変更した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
[比較例3]
参考例1において、〔配合1〕に用いたアクリレート化合物(1)を30質量部に増量し、イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化1〕)及びアクリレート化合物(1)との質量比を、60質量部:30質量部(2:1)に変更した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
[比較例4]
参考例1において、〔配合1〕に用いた、イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化1〕)60質量部を、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート(別名:フタル酸ジオクチル:DOP)60質量部に置換した以外は参考例1と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
[比較例5]
参考例2の配合に用いた、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(C8:MW390:〔化2〕)60質量部を、ジヘプチルフタレート(別名:フタル酸ジヘプチル:DHP)60質量部に置換した以外は参考例2と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
[比較例6]
参考例3の配合に用いた、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化3〕)60質量部を、ジイソノニルフタレート(別名:フタル酸ジイソノニル:DINP)60質量部に置換した以外は参考例3と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
[比較例7]
参考例4の配合に用いた、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393:〔化4〕)60質量部を、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:アジピン酸ジオクチル:DOA)60質量部に置換した以外は参考例4と同様として、厚さ0.47mm、質量560g/mの帆布を得た。
比較例1の帆布は、軟質塩化ビニル樹脂層にアクリレート化合物を含まないことで、得られる帆布の可塑剤ブリード防止(抑止)性に劣り、さらに耐熱性が不足し、そのために溶着縫製した帆布において、その接合部が夏場のような高温環境下で破壊し易いものとなった。比較例1に対して比較例2の帆布は、軟質塩化ビニル樹脂層にアクリレート化合物を含むものではあるが、可塑剤量に対するアクリレート化合物の併用量が本願下限値の10:1の質量比率量を下回る20:1としたことにより、比較例1の帆布同様、得られる帆布の可塑剤ブリード防止(抑止)性に劣り、さらに耐熱性が不足し、そのために溶着縫製した帆布において、その接合部が夏場のような高温環境下で破壊し易いものとなった。比較例1に対して比較例3の帆布は、可塑剤量に対するアクリレート化合物の併用量が本願上限値の3:1の質量比率量を上回る2:1としたことにより、塩化ビニル樹脂に対して相溶性に劣り、剛直な架橋網目立体構造を過剰に含み、その結果得られる帆布の柔軟性を悪くして、短期間で軟質塩化ビニル樹脂層の摩耗劣化や表面亀裂を伴うなど、実用的耐久性を欠くものとなった。比較例4〜6の帆布は、軟質塩化ビニル樹脂層にフタル酸エステル系可塑剤を用いたことで、軟質塩化ビニル樹脂組成物中におけるアクリレート化合物との初期相溶性が悪く、軟質塩化ビニル樹脂組成物の攪拌や熟成が不十分だと互いの成分が不均一な分散状態のままゲル化処理がなされ、それが原因で軟質塩化ビニル樹脂層の架橋生成が局所不安定となり、結果的にフタル酸エステル系可塑剤のブリードの抑止を阻害する要因となった。比較例7の帆布は、軟質塩化ビニル樹脂層にアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名:アジピン酸ジオクチル)を可塑剤に用いたことで、可塑剤のブリードが助長され、帆布表面に可塑剤が滲み出してベタ付き、それが揮発ロスとなると同時に帆布表面に煤塵汚れが付着してこびり付くなど、汚れ易く外観を損うものとなった。
本発明によれば、特にフタル酸エステル系化合物を可塑剤として使用せずとも可塑化効率に優れ、かつ可塑剤ブリードが高度に抑止され、しかも屈曲柔軟性に優れているので、帆布(シートハウス用、トラック幌用、野積シートなど)、ターポリン(テント構造物用、建築養生用、電飾看板用、フレキシブルコンテナ用)及びメッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの産業資材シートとして長期間使用することができる。

Claims (3)

  1. 繊維織物を基材として、その少なくとも1面上に軟質塩化ビニル樹脂層が設けられた可撓性積層体による軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シートであって、前記軟質塩化ビニル樹脂層が塩化ビニル系樹脂を主体に含み、さらにイソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)から選ばれた1種以上の可塑剤、及び(メタ)アクリレート化合物とを質量比10:1〜3:1の範囲で含む配合で構成され、前記(メタ)アクリレート化合物が、1分子当たり(メタ)アクリロイル基を1〜6個有する化合物から選ばれた1種以上であって、前記(メタ)アクリレート化合物が、前記軟質塩化ビニル樹脂層内で重合し、架橋網目立体構造を形成し、さらに前記軟質塩化ビニル樹脂層上に、1次粒子径3〜150nmの無機コロイド物質をバインダー成分に担持して含む防汚層が設けられ、前記無機コロイド物質が、シリカ(酸化ケイ素)ゾル、アルミナ(酸化アルミニウム)ゾル、ジルコニア(酸化ジルコニウム)ゾル、セリア(酸化セリウム)ゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛−五酸化アンチモン複合または酸化スズ−五酸化アンチモン複合)ゾルから選ばれた1種以上で、前記バインダー成分が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むことを特徴とする軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シート。
  2. 前記(メタ)アクリレート化合物が分子構造の一部に、アルキル鎖、ヒドロキシアルキル鎖、アルキレンオキサイド、アルキレングリコール、ペンタエリスリトール、及びトリメチロールアルカンから選ばれた何れか1種以上の構造成分を含有するアクリレート化合物またはメタアクリレート化合物である請求項1に記載の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シート。
  3. 前記架橋網目立体構造が、前記シクロヘキサンカルボン酸アルキルエステルのブリード防止(抑止)効果に作用する請求項1に記載の軟質塩化ビニル樹脂製産業資材シート。
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