JP3709929B2 - 防汚性膜体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性膜体及びその製造方法に関するものである。さらに詳しく説明するならば、本発明は、中大型テント、日除けテント、内照式テント、テントハウス、テント倉庫、トラック幌などの膜構造物に有用な防汚性膜体に関し、特に屋外環境で自然発生する煤塵付着汚れ、及び煤塵付着汚れに起因する雨筋汚れなどの汚染現象を効果的に予防する自浄機能を有し、かつ防汚性膜体と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
中大型テント、日除けテント、内照式テント、テントハウス、テント倉庫、トラック幌などに使用される産業用シートは、繊維織物を基布として用い、その表面を着色軟質ポリ塩化ビニル樹脂で被覆加工した繊維複合膜材であり、この産業用シートを用いることによって5〜10年間屋外使用が可能である耐久性膜構造物を得ることができる。しかし、これらのシートを構成する軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層はそれに配合された可塑剤を多量に含むため、この可塑剤が時間の経過と共にシートの表面にブリードし、この滲み出た可塑剤が大気中を浮遊する油性の煤塵(主に燃焼排気ガスなどに由来するカーボン煤と砂埃・土埃との混合物)を吸着することによって、短期間内に膜構造物が汚れて色相が黒ずむ問題を生じ、さらに膜構造物の側壁面に筋状の汚れ、所謂雨筋汚れを発生するという問題がある。この汚れの原因となる可塑剤の表面移行は、配合組成要因、加工要因、季節要因、環境要因などが複雑に作用して起こる現象であって、特に夏季をピークに顕著となる傾向がある。このシート表面に滲み出た可塑剤は表面に留まることはなく、夜間、気温の低下と共に、滲み出た可塑剤の一部が、再び軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層内に拡散して戻るという、滲みの移行と戻りの移行との拡散循環を常時繰り返しているのである。この時、油性の煤塵で汚染された可塑剤が軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層内に戻る現象が、煤塵が軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層内に吸着されるのを助長して煤塵汚染や雨筋汚れを沈着するために、通常の水洗い洗浄ではこれらの汚れを完全に除去することが非常に困難である。
【0003】
このため、従来、軟質ポリ塩化ビニル樹脂製シートの表面には、可塑剤移行を防止するアクリル系樹脂、ふっ素系樹脂などによる表面処理層、あるいはアクリル系樹脂フィルム層、ふっ素系樹脂フィルム層などを形成することによって、可塑剤に起因する煤塵汚れを防ぐ方法が一般的に行われている。これらの方法によると、シートに付着した煤塵汚れは可塑剤と混和して更に油性度合いを高める現象が僅少であるため、付着した煤塵汚れは常時降雨により洗い流され易い状態に置かれ、膜構造物の美観を長期持続可能とするものである。しかし、降雨の度に膜構造物の表面伝いに流れ落ちる煤塵汚れを含んだ水滴が特に膜構造物側壁部表面を伝って重力方向に垂れ落ち、この時、煤塵に含まれる砂埃・土埃などの微細無機物の擦過によって膜構造物の表面には微細な浸食傷を形成し、さらに浸食傷の凹凸部に煤塵が物理的に引っ掛かり、これが雨水の滴下流れの道筋に沿って連続的な雨筋汚れを発生する。この煤塵付着の蓄積は膜構造物表面の濡れ性を部分的に変質させ、このため、降雨の度に雨水の滴流進路が繰り返し同じ道筋を辿る現象を促し、徐々に黒ずみ度合いを増長しながらストライプ状に煤塵が沈着した雨筋汚れに成長するのである。
【0004】
雨筋汚れは、雨自体が含んでいる煤塵と、膜構造物の表面に付着した煤塵、及び接合部などの縁部に堆積した煤塵・砂塵の両者を原因として形成されるもので、汚れの成長過程は雨粒の大きさ(霧雨〜豪雨)、降雨時間と気温など、さらには膜構造物表面の傾斜角などにも深く関係している。膜構造物表面の傾斜角が0〜30°程度の緩やかな場合(湾曲部を含む)には、雨滴が膜材表面を濡らす様に拡張することにより連続水膜を形成し易くなり雨筋汚れの発生頻度は少ないが、この緩やかな傾斜部分では膜材全面が汚れる傾向がある。しかし、膜構造物の鉛直方向に形成されている側壁部分を伝い落ちる雨水は、側壁表面に濡れ拡がるよりも重力支配を受けて水滴状となり、これが滴下流れを形成する傾向が強い。この時特に膜構造物表面が平坦であり、側壁が鉛直である程、滴下流れはより直線状となり、かつこの滴下流れが同じ道筋を長時間にわたり連続して通過する間に煤塵汚れが道筋上に徐々に蓄積することによって雨筋汚れを形成する。この現象は膜構造物天蓋部に雨樋を設けても、雨樋表面から裏周りして滴る雨滴と直接側壁面に降り注ぐ降雨の雨滴とがあるため、それを完全に防ぐことは困難である。また、特に都市部の降雨は大気中を浮遊する煤塵を多く巻き込み、さらに排気ガスから発生する窒素酸化物などが溶け込んだ酸性雨であるため、いっそう膜構造物表面の腐蝕を促進させ、更に汚染に拍車を掛けているのが現状である。
【0005】
一般に防汚機能を有する表面保護膜として、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体樹脂、フルオロオレフィンビニルエステル共重合体樹脂などの、ふっ素系樹脂を含む塗料による表面処理、及び、ポリふっ化ビニリデン樹脂、ポリふっ化ビニル樹脂などの、ふっ素系樹脂からなるフィルムによる表面被覆膜などが知られている。しかし、これらの表面処理、及び表面被覆を施した膜材の表面は親水性に乏しく、緩傾斜膜材表面上で撥水する水滴粒は乾いて水滴痕汚れを形成し易く、また急傾斜面上では撥水現象と重力支配とが加算されることにより、より水滴流れを起こし易い状態を形成する。すなわち、ふっ素系樹脂被覆膜材においても、これらの表面処理を施した膜構造物の表面が降雨で濡れた時に2〜6mm程度の水滴粒を発生する撥水現象を起こし、この雨粒が垂れ落ちることによって、軟質ポリ塩化ビニル樹脂膜材と同様に、雨筋汚れが発生する。(軟質ポリ塩化ビニル樹脂製シートなどに比較すると雨筋の成長過程はかなり遅い。)このように、ふっ素系樹脂被覆膜材の場合、水滴流れは、ふっ素樹脂層表面に撥かれながら側壁を伝って垂れ落ちると同時に、所々で撥水による水滴粒を生成するため、雨筋汚れと水滴粒痕が混在した外観トラブルを招く傾向がある。この、ふっ素系樹脂層表面に発生する雨筋汚れや水滴粒痕は、拭き取り除去、水洗除去できる程度ではあるが、ふっ素系樹脂層表面との親和性が高い性質のため、降雨によるシャワー効果だけで自浄性を発揮するレベルには至らない。
【0006】
そこで、ふっ素系樹脂被覆とは別の観点で、屋外使用物の表面を親水性化して表面を均一に濡らすことにより雨筋の発生要因となる雨粒の発生を抑制する方法が試行されている。例えば、特開平7−136583号公報、及び特開平8−12922号公報などにはオルガノシリケートを塗膜表面に塗工した物品が煤塵汚れの自浄効果が大きいことが示されている。この防汚機構はオルガノシリケートの有する水酸基を架橋縮合によって塗膜表面に配向させることによって塗膜表面を親水性化し、付着汚れと物品との間に浸透した雨水が汚れを浮き上がらせ、降雨がこの汚れを洗い流すというものである。しかし、オルガノシリケート塗膜は高密度架橋縮合体であるため折り曲げに脆く、その塗工対象は建築物(ビル・家屋など)外装や、建造物(タンク・プラント設備など)外装など、何れも混凝土素材や金属素材などの硬質素材に限定されるものであった。従って中大型テント、日除けテント、内照式テント、テントハウス、テント倉庫、トラック幌などのように、高い屈曲性を必要とする軟質ポリ塩化ビニル樹脂製繊維複合膜材に対しては特殊なプライマー塗装と、オルガノシリケート塗膜を極力薄く形成する必要があり、また、この様にして得られた、オルガノシリケート塗膜を表面層に設けた軟質ポリ塩化ビニル樹脂製繊維複合膜材では確かにテント用途において雨筋汚れを防止する効果が得られるが、オルガノシリケート塗膜層を表面に設けたことによって、従来可能であった高周波融着法や熱融着法による膜材のラップ縫製が不可能となり、このためラップ縫製部の界面に介在するオルガノシリケート塗膜層の除去作業の手間を余儀なくされていた。
【0007】
また最近では物品の表面に光触媒物質を塗布して、物品の表面に付着した排気ガス、排煙などによる煤塵汚れを、光触媒物質の酸化還元作用によって分解、除去する防汚技術が数多く提案されている。例えば、特開平10−156999号公報には基材表面を光触媒物質の光励起によって親水性化させる技術が示され、これらが自己洗浄効果を有することが記されている。また、特開平11−76923号公報にはアルキルシリケートと光触媒物質とを含有するコーティング剤が示され、これらが雨筋汚れの防止性に優れることが記されている。また、特開2001−88247号公報には疎水性樹脂と光触媒物質とを混合して含むコーティング剤とその部材が示され、これらの塗布部材には汚れが付着し難い性質があることが記されている。
【0008】
これらの光触媒物質を軟質ポリ塩化ビニル樹脂製繊維複合膜材の表面に直接塗布した製品では、膜材の被覆層である軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対しても分解作用の影響を及ぼすため、短期間のうちに光触媒物質が基材樹脂の分解物と供に風化・脱落する問題がある。また、光触媒物質の分解作用は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂の分解だけではなく、軟質ポリ塩化ビニル樹脂中に配合される可塑剤や有機系着色剤などに対しても働くため、より基材の劣化を進行させるのである。そこで、膜材と光触媒物質との中間に光触媒物質の分解作用に耐性を有する保護層を設けることによって基材劣化を防ぎながら光触媒物質本来の汚れ防止効果を長期間持続させる方法がWO96/29375号公報に示されている。しかし、これらの光触媒物質を膜材表面全面に形成した軟質ポリ塩化ビニル樹脂製繊維複合膜材では、テント用途において確かに付着汚れを分解し、雨筋汚防止効果が得られるが、光触媒物質塗膜層を表面に設けたことによって、従来可能であった高周波融着法や熱融着法による膜材のラップ縫製が不可能となり、このためラップ縫製部の界面に介在する光触媒物質塗膜層の除去作業の手間を余儀なくされていた。
【0009】
従って、上記オルガノシリケート塗膜層や光触媒物質含有塗膜層などを表面に設けた防汚性膜材において、これらを縫製する際にラップ縫製部の界面に介在するオルガノシリケート塗膜層や光触媒物質塗膜層などの除去作業の手間を必要とせず、高周波融着法、または熱融着法などの常法によって容易に縫製可能な雨筋汚れ防止性に優れた膜材が望まれていたのである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は特に屋外環境で自然発生する煤塵付着汚れ、及び煤塵付着汚れに起因する雨筋汚れなどの汚染現象を効果的に予防する自浄機能を有し、かつ膜構造物の縫製が、高周波融着や熱融着などの融着縫製法によって可能であり、特に中大型テント、日除けテント、内照式テント、テントハウス、テント倉庫、トラック幌などの膜構造物に好適な防汚性膜体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の防汚性膜体は、1層以上の繊維布帛からなる基布と、この基布の少なくとも一面の全面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂からなる被覆層とを含むシート状基材と、このシート状基材の前記熱可塑性被覆層上に形成された外面複合塗膜層とを有し、
前記外面複合塗膜層が、(1)疎水性高分子材料を主成分として含み、外面に露出している複数個の疎水性塗膜領域単位と、(2)親水性高分子材料を主成分として含み、外面に露出している複数個の親水性塗膜領域単位とを有し、
前記疎水性塗膜領域単位(1)と前記親水性塗膜領域単位(2)とが、それぞれ0.04〜1.0cm2 の面積を有し、かつ、これら2種の単位(1)及び(2)が、互に交差する二方向に、互に隣接して交互に配置されている、
ことを特徴とするものである。
本発明の防汚性膜体の前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む疎水性塗膜が形成され、この疎水性塗膜上に前記複数個の親水性塗膜領域単位が形成され、前記疎水性塗膜の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成していてもよい。
本発明の防汚性膜体の前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む親水性塗膜が形成され、この親水性塗膜上に、前記複数個の疎水性塗膜領域単位が形成され、前記親水性塗膜の、前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成していてもよい。
本発明の防汚性膜体において、前記疎水性塗膜領域単位の水に対する静止接触角θ1 と、前記親水性塗膜領域単位の水に対する静止接触角θ2 との差(Δθ=θ1 −θ2 )が、40〜135度であることが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記外面複合塗膜層中の前記疎水性塗膜領域単位と前記親水性塗膜領域単位との面積比が35:65〜65:35であることが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記疎水性塗膜領域単位を形成する疎水性高分子材料が、ふっ素系樹脂、またはふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含むことが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、オルガノシリケート化合物、又はその低縮合物の加水分解物を含むことが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、光触媒物質を含むことが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、オルガノシリケート化合物又はその低縮合物と、光触媒物質とを含むことが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、及びシリカから選ばれた少なくとも1種のけい素化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記光触媒物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23 )、酸化鉄(Fe23 )、から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記光触媒物質が、無機系多孔質微粒子に担持されていることが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記被覆層用熱可塑性樹脂が、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系共重合体樹脂、エチレン系共重合体樹脂[エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂]、プロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記シート状基材において、前記被覆層は、単層構造体をなしていてもよく、又は複層構造体をなしていてもよい。
本発明の防汚性膜体において、前記シート状基材の他の面(裏面)上に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の何れか1種による裏面塗膜層が形成されていることが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記シート状基材の被覆層が前記熱可塑性樹脂に混合された添加剤を含み、この被覆層と、前記外面複合塗膜層との間に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、又はふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体による添加剤移行防止層が形成されていることが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記添加剤移行防止層上に、前記複数個の親水性塗膜領域単位が形成され、前記添加剤移行防止層の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が、前記複数値の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成していてもよい。
本発明の防汚性膜体において、前記添加剤移行防止層が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカから選ばれた少なくとも1種のけい素化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記シート状基材の熱可塑性樹脂が、高周波融着、超音波、及び熱融着によって接合可能であることが好ましい。
本発明の防汚性膜体において、前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位、及び親水性塗膜領域単位の形状が、それぞれ正方形、長方形、三角形、矢がすり模様状、六角形と蝶形六角形との組み合わせ、八角形と蝶形八角形との組み合わせ、及びこれらの歪形状から選ばれることが好ましい。
本発明の防汚性膜体の製造方法は、1層以上の繊維布帛を含むシート状基布の少なくとも一面の全面上に熱可塑性樹脂を含む被覆層が形成されているシート状基材を製造し、
前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層上に、外面複合塗膜層を形成する工程を含み、
前記外面複合塗膜層形成工程において、疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液により、外面に露出している複数個の疎水性塗膜領域単位を形成し、また親水性高分子材料を主成分として含む塗布液により外面に露出している複数個の親水性塗膜領域単位を形成し、このとき、前記疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位のそれぞれの面積を0.04〜1.0cm2 とし、かつ、これら2種の単位が互に交差する二方向に、互に隣接して交互に配置されるように形成する、ことを特徴とすものである。
本発明の防汚性膜体の製造方法において、前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位の形成に際し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液を塗布して、疎水性塗膜を形成し、この疎水性塗膜上に、前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成し、前記疎水性塗膜の前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成してもよい。
本発明の防汚性膜体の製造方法において、前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位の形成に際し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む塗布液を塗布して、親水性塗膜を形成し、この親水性塗膜上に、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成し、前記親水性塗膜の前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成してもよい。
本発明の防汚性膜体の製造方法において、前記外面複合塗膜層の形成工程において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層面上に、前記疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液と、前記親水性高分子材料を主成分として含む塗布液とを、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位と外面露出親水性塗膜領域単位とを形成するように、同時に塗布してもよく、または任意の順序に塗布してもよい。
本発明の防汚性膜体の製造方法において、前記シート状基材の前記被覆層用熱可塑性樹脂が添加剤を含み、この被覆層上に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、又はふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含む添加剤移行防止層を形成する工程をさらに含み、この添加剤移行防止層上に前記外面複合塗膜を形成してもよい。
本発明の防汚性膜体の製造方法において、前記外面複合塗膜の形成に当り、前記添加剤移行防止層上に、前記複数個の親水性塗膜領域単位を形成し、前記添加剤移行防止層の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、疎水性塗膜領域単位としてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の防汚性膜体は、1層以上の繊維布帛からなる基布と、この基布の少なくとも一面の全面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂からなる被覆層とを含むシート状基材と、このシート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層上に形成された外面複合塗膜層とを有するものであって、
前記外面複合塗膜層は、(1)疎水性高分子材料を主成分として含み、外面に露出している複数個の疎水性塗膜領域単位と、(2)親水性高分子材料を主成分として含み、外面に露出している複数個の親水性塗膜領域単位とを有し、
前記疎水性塗膜領域単位(1)と前記親水性塗膜領域単位(2)とは、それぞれ0.04〜1.0cm2 の面積を有し、かつ、これら2種の単位(1)及び(2)が、互に交差する二方向に、互に隣接して交互に配置されている。
【0013】
本発明の防汚性膜体は、その前記外面複合塗膜層において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む疎水性塗膜が形成され、この疎水性塗膜上に前記複数個の親水性塗膜領域単位が形成され、前記疎水性塗膜の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成している態様を包含し、また、前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む親水性塗膜が形成され、この親水性塗膜上に、前記複数個の疎水性塗膜領域単位が形成され、前記親水性塗膜の、前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成している態様も包含する。
本発明の防汚性膜体の製造方法は、1層以上の繊維布帛を含むシート状基布の少なくとも一面の全面上に熱可塑性樹脂を含む被覆層が形成されているシート状基材を製造し、
前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層上に、外面複合塗膜層を形成する工程を含み、
前記外面複合塗膜層形成工程において、疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液により、外面に露出している複数個の疎水性塗膜領域単位を形成し、また親水性高分子材料を主成分として含む塗布液により外面に露出している複数個の親水性塗膜領域単位を形成し、このとき、前記疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位のそれぞれの面積を0.04〜1.0cm2 とし、かつ、これら2種の単位が互に交差する二方向に、互に隣接して交互に配置されるように形成する。
前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位の形成に際し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液を塗布して、疎水性塗膜を形成し、この疎水性塗膜上に、前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成し、前記疎水性塗膜の前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成してもよい。
また、前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位の形成に際し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む塗布液を塗布して、親水性塗膜を形成し、この親水性塗膜上に、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成し、前記親水性塗膜の前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成してもよい。
さらに前記外面複合塗膜層の形成工程において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層面上に、前記疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液と、前記親水性高分子材料を主成分として含む塗布液とを、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位と外面露出親水性塗膜領域単位とを形成するように、同時に、または任意の順序に塗布してもよい。
【0014】
本発明の膜体に使用されるシート状基材のは、1層以上の繊維布帛からなる基布と、この基布の少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂からなる被覆層とを含むものであるテント用膜体に用いる基材としては強度、伸び、引裂強度、防水性などの観点から、熱可塑性樹脂組成物で表面被覆された繊維布帛をシート状基材として用いることが好ましい。これに用いる繊維布帛としては、織布、編布、不織布などの何れの形態でも使用できるが、強度、伸び、引裂強度の観点から織布、及び編布を用いることが好ましい。織布としては、例えば、平織物(経糸と緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、綾織物(経糸と緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文、8枚斜文など)、朱子織物(経糸と緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)などが使用できる。その他、拡大法、交換法、配列法、配置法、添糸法、削糸法などによって得られるこれらの変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物などが挙げられるが、特に平織物が縦緯物性バランスに優れ好ましい。編布としてはラッセル編物が引裂強度に優れ好ましい。また、長繊維スパンボンド不織布なども使用できる。
【0015】
また、繊維布帛を構成する縦糸、及び緯糸の糸条には合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維、またはこれらの2種以上から成る混用繊維が用いられ、これらの繊維種としては、具体的に、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維であり、これらの形態は、モノフィラメント糸条、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績(スパン)糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどの糸条である。また、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維による、マルチフィラメント糸条も好ましく使用できる。本発明においては、これらの糸条のうち、汎用性が高く、引張強力、引裂強力、耐熱クリープ特性などの物性バランスに優れているポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、及びこれらの混合繊維や、混用繊維などから製織されたマルチフィラメント平織繊維織布または、スパン平織繊維布帛を用いることが好ましい。これらの織布の製織は、シャットル織機、シャットルレス織機(レピア方式、グリッパ方式、ウォータージェット方式、エアジェット方式)などの従来公知の織機を用いて製織することができる。上記の繊維布帛には公知の繊維処理加工、例えば、精練処理、漂白処理、染色処理、柔軟化処理、撥水処理、防水処理、防カビ処理、防炎処理、手焼き処理、カレンダー処理、及びバインダー樹脂処理などの処理加工を施して使用することが好ましい。
【0016】
本発明に使用する繊維布帛としては、短繊維紡績布(スパン)、またはマルチフィラメント糸条からなる織布であることが好ましく、短繊維紡績糸条の番手としては591dtex(10番手)〜97dtex(60番手)の範囲のもの、特に591dtex(10番手)、422dtex(14番手)、370dtex(16番手)、295dtex(20番手)、246dtex(24番手)、197dtex(30番手)などの短繊維紡績糸条が好ましく使用できる。短繊維紡績糸条の太さが、97dtex(60番手)よりも細いと、得られる膜体の引裂強力に劣り、また591dtex(10番手)よりも太いと、得られる膜体の破断強力及び引裂強力は向上するが、糸径が太くなるにつれて織糸交差部の凹凸を増して膜体が過度に厚くなる。これらの短繊維紡績糸条は、単糸及び、双糸、さらには単糸3本以上の撚糸、またはこれらの2本合糸、あるいは2本合撚糸などの糸条を用いることが好ましく、このような糸条を経糸及び緯糸として25mm(1インチ)間に30〜160本打込んで得られる短繊維紡績布が本発明用基布として好ましく、特に591〜295dtex(10〜20番手)の単糸、または591〜295dtex(10〜20番手)の双糸を用いて1インチ間に経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で糸を打込んで得られる短繊維紡績布がより好適である。また、糸条の撚りには格別の限定はないが、例えば、単糸または2本以上の単糸を引き揃えてS撚り(右)、もしくはZ撚り(左)によって加撚された片撚糸、単糸または2本以上の単糸を引き揃えて下撚りされた加撚糸を2本以上引き揃えて上撚りを掛けた諸撚糸、その他強撚糸などを用いることが好ましい。これらの撚糸の撚り回数は片撚糸、諸撚糸の普通撚糸で500〜2000回/m、強撚糸で2000回以上/mであることが好ましい。また、糸の番手と撚数との関係を表す比例定数の撚係数の範囲として、撚係数1.3〜3.0程度の甘撚り、撚係数3.0〜4.5程度の普通撚り、撚係数4.5〜5.5程度の強撚糸が挙げられ、特に撚り係数3.0〜4.5の範囲の普通撚り糸であることが好ましい。また、短繊維紡績布の空隙率(目抜け率)は、0〜8%のものが好ましく適している。空隙率が8%を越えると、経緯方向の繊維糸条の含有量が少なくなりすぎて得られる膜体の寸法安定性に劣るだけでなく、膜体の引裂き強度と突起物に対する耐貫通性が低下するため実用的に問題となり好ましくない。空隙率は繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率は経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として求めることができる。これらの短繊維紡績布の目付量は、100〜600g/m2 のものが適している。
【0017】
本発明の防汚性膜体のシート状基材に使用される繊維布帛としては、マルチフィラメント糸条からなる織布も好ましい。マルチフィラメント糸条としては、111〜2222dtex(100〜2000デニール)の範囲のもの、特に138から1111dtex(125〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条が好ましい。マルチフィラメント糸条が111dtex(100デニール)よりも小さいと、得られる膜体の引裂強力に劣り、また2222dtex(2000デニール)よりも大きいと、得られる膜体の破断強力及び引裂強力は向上するが、糸径が太くなり織交点の凹凸を増すことで、得られる膜体表面に汚れが堆積し易くなるという問題が発生する。これらマルチフィラメント糸条からなる織布の経糸及び緯糸糸条の打込み密度に特に限定はないが、111〜2222dtex(100〜2000)デニールの糸条を経糸及び緯糸として25.4mm(1インチ)間10〜80本打込んで得られる織布が使用できる。例えば278dtex(250デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間18〜44本、555〜1111dtex(500〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間14〜38本、1667dtex(1500デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間10〜28本程度の打込み組織で得られる目抜け平織織布、または非目抜け平織織布が適している。これらのマルチフィラメント糸条は無撚であっても、撚りが掛けられたものであっても良い。これらの織布の目付量は、50〜400g/m2 のものが適している。また、マルチフィラメント織布の空隙率(目抜け)は、0〜30%のものが好ましく適している。空隙率が30%を越えると、経緯方向の繊維糸条の含有量が少なくなりすぎて得られる膜体の寸法安定性に劣るだけでなく、膜体の引裂強度と突起物に対する耐貫通性が低下するため実用的に問題となり好ましくない。空隙率は繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率は経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として求めることができる。
【0018】
本発明の防汚性膜体のシート状基材の基布に用いられる短繊維紡績糸条、またはマルチフィラメント糸条としては、その汎用性から考えて、特にポリエステル繊維糸条であることが好ましく、ポリエステル繊維としては、具体的に、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート樹脂から紡糸されるポリエステル繊維が繊維強力及び、溶融紡糸性の観点で好ましく使用できる。
【0019】
本発明の防汚性膜体のシート状基材に用いられる繊維布帛のうち、空隙率(目抜け率)0〜8%の短繊維紡績布、特に空隙率5%以下の短繊維紡績布及び、空隙率(目抜け率)0〜30%のマルチフィラメント織布が好ましい。特に空隙率5%以下のマルチフィラメント織布などは、後述の熱可塑性樹脂組成物被覆法の1種として、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂、または水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などを用いるデッピィング加工(繊維布帛への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)に適している。また一方、空隙率5〜30%のマルチフィラメント織布は、後述の熱可塑性樹脂組成物から得られたフィルム状成型物を、織布の片面または両面に、接着剤を用いて、あるいは熱圧着だけによって積層して用いる加工方法に適している。
【0020】
上記1層以上の繊維布帛からなる基布は、その少なくとも1面を熱可塑性樹脂組成物によって表面被覆されており、本発明においては特に繊維布帛の両面が熱可塑性樹脂組成物によって表面被覆されていることが防水性と熱融着接合の観点で好ましい。熱可塑性樹脂としては、汎用的には、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が最も好ましく、また、特に環境問題に配慮して、焼却廃棄時にハロゲン化水素ガスを排出させないハロゲン非含有設計の産業資材シートが所望される場合においては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系共重合体樹脂[エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂]、プロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種以上の、単層構造体、または多層構造体などが最も好適に使用できる。
【0021】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、種別的に塩化ビニル系共重合体樹脂を包含し、具体的に、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−ウレタン共重合体樹脂などであり、これらの樹脂は2種以上を併用することもできる。本発明において、熱可塑性樹脂組成物による表面被覆層の厚さに特に制限はないが、表面被覆層の固形分付着量が、50〜500g/m2 、特に100〜350g/m2 にコントロールされるのが好ましい。表面被覆層の塗布量が50g/m2 よりも少ないと、被覆層の摩耗耐久性が十分に得られないことがあり、また、それが500g/m2 を超えると膜体の質量が超過となり、取り扱いが困難となることがある。
【0022】
上記ポリ塩化ビニル樹脂は、乳化重合によって得られた数平均分子量、P=700〜3800、好ましくは1000〜2000のペーストポリ塩化ビニル、または懸濁重合によって得られた数平均分子量、P=700〜3800、好ましくは1000〜2000のストレートポリ塩化ビニルから選ばれることが好ましく、また、上記塩化ビニル系共重合体樹脂(数平均分子量、P=700〜3800)中に含まれる共重合成分は2〜30重量%であることが好ましい。本発明において、繊維布帛を被覆する熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂を用いる場合、その配合には格別の制限はなく、公知の軟質配合を用いることができるが、特に軟質配合に使用する可塑剤には平均分子量380〜560のフタル酸エステル系可塑剤の他、防炎性の観点から塩素化パラフィン系可塑剤を使用すること、可塑剤揮散防止効果の観点から平均分子量が900〜6000、特に1000〜3200のポリエステル系可塑剤を使用すること、さらに可塑剤揮散防止効果の観点から平均分子量が10000以上、特に20000以上のエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素3元共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素3元共重合体樹脂などの高分子可塑剤を用いることが好ましい。
【0023】
ポリエステル系可塑剤は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどから任意に合成されたものが使用できる。これらの可塑剤の好ましい使用例としては、1).ペースト塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤の合計量として40〜100質量部の配合であり、全可塑剤量の10〜50質量%にポリエステル系可塑剤、または塩素化パラフィン系可塑剤を含むペースト組成物を用いたコーティング加工、またはデッピング加工である。これらの組成物は必要に応じて有機溶剤で希釈して液粘度を調整することができる。また、2).ストレート塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤の合計量として50〜100質量部の配合であり、全可塑剤量の30〜100質量%にポリエステル系可塑剤、または塩素化パラフィン系可塑剤を含むコンパウンド組成物で、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルム成型される。また、3).ストレート塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤の合計量として60〜140質量部の配合であり、全可塑剤量の30〜100質量%に高分子可塑剤を含むコンパウンド組成物で、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルム成型される。(註:前記使用例2)と3)において、ストレート塩化ビニル樹脂の代わりにペースト塩化ビニル樹脂を使用することもできる)。これらの軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物において、安定剤、及び顔料(着色剤)は公知のものから適宜選定して使用すればよく、必要に応じて、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤など公知の添加剤を使用できる。
【0024】
上記エチレン系共重合体樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂などの共重合体樹脂であり、これらは具体的に、チーグラー・ナッタ系触媒、あるいはメタロセン系触媒の存在下、気相法、スラリー液相法、または高圧法によってエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる、密度0.880〜0.920g/cm3 、MFR(メルトフローレート:190℃、2.16kg荷重)が、0.3〜10g/10min のエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂が挙げられる。前記α−オレフィンモノマーとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1などが用いられる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとをラジカル共重合して製造された、酢酸ビニル成分量を6〜35質量%、好ましくは15〜30質量%含有するエチレン系共重合体樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと(メタ)アクリル酸モノマーとのラジカル共重合によって製造された、(メタ)アクリル酸成分量を6〜35質量%、好ましくは15〜30質量%含有するエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、エチレンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーとのラジカル共重合によって製造された、(メタ)アクリル酸エステル成分を6〜35質量%、好ましくは15〜30質量%含有するエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂など、及びこれらの2種類以上の混合物からなるエチレン系共重合体樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとは、具体的に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどである。これらのエチレン系共重合体樹脂の密度は0.925〜0.960g/cm3 、MFR(メルトフローレート:190℃、2.16kg荷重)が、0.3〜10g/10min であるものが特に好ましい。これらの樹脂は、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルム成型することができる。
【0026】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンモノマーの単独重合によって得られるホモポリマー、及びプロピレンモノマーとエチレンモノマーとを共重合して得られるエチレン−プロピレン共重合体、及び、プロピレンモノマーとα−オレフィンモノマーとを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィン共重合体樹脂、及び、予備重合で得られたエチレン−プロピレン共重合体に連続してプロピレンモノマーを共重合させる多段階重合によって得られるプロピレン・エチレン−プロピレン系共重合エラストマー、及び予備重合で得られたエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体に連続してプロピレンモノマーを共重合させる多段階重合によって得られるプロピレン−エチレン・プロピレン・非共役ジエン系共重合エラストマーなどを包含する。プロピレン−α−オレフィン共重合体樹脂の重合に使用するに好ましいα−オレフィンとしては、炭素数4〜10のα−オレフィン、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ヘプテン−1,3−メチル−ブテン−1,4−メチル−ペンテン−1,4−メチル−ヘキセン−1,4,4−ジメチル−ペンテン−1などが挙げられ、得られるプロピレン系共重合体は、ランダム共重合体であっても、あるいはブロック共重合体の何れの共重合体であってもよい。
【0027】
このうちポリプロピレン系樹脂としては、特にメタロセン系触媒の存在下で気相法、スラリー液相法、または高圧法の何れかの方法によって重合されたシンジオタクティック立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂、またはアイソタクティック立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。また、プロピレン−エチレン・プロピレン系共重合エラストマー及び、プロピレン−エチレン・プロピレン・非共役ジエン系エラストマーは、具体的に、例えば下記の様な連続多段階重合法により製造されたものが使用できる。まず、第1段階として、チタン化合物触媒及び、アルミニウム化合物触媒、またはメタロセン系触媒の存在下において、プロピレンモノマー及び、必要に応じてプロピレンモノマー以外のα−オレフィンモノマーを用いて重合を行い、第1のプロピレン系ポリオレフィンを得る。このポリオレフィンはプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などであり得る。第2段階として、前記触媒を含有したままで、次のオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、非共役ジエンなど)とを共重合させることによって得ることができ、この多段階重合によって得られるプロピレン系共重合エラストマーは、通常のポリプロピレン樹脂とプロピレン−エチレン共重合体樹脂とのポリマーブレンドによって得られるエラストマーとは、分子構造において種類を異にするものである。これらのポリプロピレン系樹脂のMFR(メルトフローレート:230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜50g/10min 、特に1〜20g/10min のものが好ましい。これらの樹脂組成物は、カレンダー成型、T−ダイ押出成型など、公知の成型法によってフィルム成型される。
【0028】
上記エチレン系共重合体樹脂、及びポリプロピレン系樹脂には、柔軟性、及び加工性を改良する目的で、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−共役ジエン系ゴムなどのソフト成分と上記ポリオレフィン系樹脂との架橋、加硫アロイ体であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などをブレンド使用することもできる。特に、テント膜体の柔軟化の目的で、上記エチレン系共重合体樹脂、及びポリプロピレン系樹脂に、スチレン系共重合体樹脂をブレンドすることが好ましく、スチレン系共重合体樹脂としては、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックである。)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(AとBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合樹脂及び、これらのスチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂(二重結合を水素置換したもの)などである。これらの市販品としては、例えば、シェル.ケミカル社のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:クレイトンG)、旭化成工業(株)のスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:タフテック)、(株)クラレのスチレン系ブロック共重合体樹脂(商標:ハイブラー、商標:セプトン)、日本合成ゴム(株)のスチレン系ランダム共重合体樹脂((商標:ダイナロン)などが挙げられる。これらのスチレン系共重合体樹脂は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、10〜50質量部をブレンドして使用することが好ましい。
【0029】
前記ポリウレタン系樹脂としては、ジイソシアネート化合物とヒドロキシル基を分子構造内に2個以上有するポリオール化合物の中から選ばれた1種以上とイソシアネート基と反応する官能基を含有する化合物との付加重合反応によって得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂を使用できる。ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)のジイソシアネート化合物が用いられ、これらは例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール化合物としては、分子量300〜10000、好ましくは、500〜5000であり、ジイソシアネート化合物と反応する量を含有するもの、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジヒドロキシポリエチレンアジペート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが用いられる。ポリウレタン系樹脂は、用いるポリオールの種類に応じてポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂が使用できる。
【0030】
前記ポリエステル系樹脂としては、高融点結晶性ポリエステルセグメント(A)と、脂肪族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(B)とからなるブロック共重合体樹脂が挙げられ、セグメント(A)はジカルボン酸と、ジオールとの重合によって得られるポリエステルであり、ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナルタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。ジオール成分としては、炭素数1〜12の脂肪族、または脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。また、(B)セグメントを構成する脂肪族ポリエーテル単位としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール、及びこれらの共重合体のグリコールなどが挙げられる。また、セグメント(B)を構成する脂肪族ポリエステル単位としては、ポリε−カプロラクトン、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。上記これらの熱可塑性樹脂被覆層の厚さは、被覆層(固形分付着量)が、50〜500g/m2 、特に100〜350g/m2 に形成されるのが好ましい。被覆層が50g/m2 よりも少ないと、本発明のテント膜体の摩耗耐久性が不十分になることがあり、また、500g/m2 を超えるとテント膜体の質量が超過となることがある。また、上記熱可塑性樹脂には、必要に応じて、着色剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤など公知の添加剤を使用できる。
【0031】
また、熱可塑性樹脂を含む組成物による基布の表面被覆は、上記ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系共重合体樹脂[エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂]、プロピレン系樹脂などの水性樹脂(エマルジョン、ディスパージョン)、または有機溶剤溶液を使用することもできる。特にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンは、エチレンと酢酸ビニルとの乳化重合によって得られる60〜90質量%の酢酸ビニル成分を含有するもの、またエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂ディスパージョンとしては、酢酸ビニル成分含有量が10〜30質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を水中に強制分散させたものである。特に水性樹脂の場合、これらの水性樹脂は水酸基、カルボン酸基、4級アンモニウム塩基などを導入した親水性の変性体であってもよい。また、水性樹脂はコア−シェル型異相構造のハイブリッドエマルジョンなども使用でき、また必要に応じて、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂、酢酸ビニル−マレイン酸ジブチル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂、アイオノマー樹脂などのエマルジョンも併用できる。これらの水性樹脂の樹脂固形分含有量に限定はないが、樹脂固形分含有率20〜70質量%、特に30〜50質量%であることが好ましい。
【0032】
また、特に有機溶剤に溶解または分散させて使用できるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、酢酸ビニル成分、または(メタ)アクリル酸(エステル)の含有率が18〜45質量%、MFR(メルトフローレート:190℃、2.16kg荷重)が1.0〜20g/10min の共重合体樹脂が好ましく使用できる。これらの水性樹脂、または有機溶剤に上記熱可塑性樹脂を固形分濃度で5〜40質量%で溶解した樹脂溶液により繊維布帛の表面を被覆するには、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、ナイフコート法、キスコート法、フローコート法など公知のコーティング法、またはデッピング法などによって基材の表面に樹脂溶液を均一に塗布し、これを乾燥して樹脂被覆層を形成することができる。本発明において、熱可塑性樹脂組成物による表面被覆層の厚さに特に制限はないが、上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせなどによって、表面被覆層(固形分付着量)が、50〜500g/m2 、特に100〜350g/m2 に形成されることが好ましい。表面被覆層が50g/m2 よりも少ないと、テント膜体の摩耗耐久性が十分に得られないことがあり、また、500g/m2 を超えるとコーティング処理の工程数が増えるだけでなく、得られるテント膜体の質量が超過となり、取り扱い性が困難となることがある。これらの熱可塑性樹脂組成物には、着色剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ剤、抗菌剤など公知の添加剤を使用できる。
【0033】
また、本発明において、繊維布帛含有基布を被覆する上記熱可塑性樹脂組成物には、ハロゲン非含有化合物を配合することによって防炎性を付与することができ、このようにすることは廃棄処理の観点上好ましく、さらに、これらは消防法に定められる防炎試験に適合することが好ましい。ハロゲン非含有化合物としては、りん含有化合物、窒素含有化合物、無機系化合物のいずれか1種以上であることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、ハロゲン非含有化合物を10〜100重量部、特に30〜80重量部配合することによって、所望の防炎性を付与することができる。具体的なりん含有化合物としては、赤りん、(金属)りん酸塩、(金属)有機りん酸塩、ポリりん酸アンモニウムなどが挙げられる。また、窒素含有化合物としては、(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物及びこれらの誘導体化合物が用いられる。また無機系化合物としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属複合酸化物、金属複合水酸化物などが用いられる。これらのハロゲン非含有化合物は2種以上を併用することが好ましい。ハロゲン非含有化合物の配合量が10質量部未満では、防炎性が不十分になることがあり、また、それが100質量部を超えると、加工性と樹脂被覆層の摩耗耐久性とが不十分になることがある。
【0034】
本発明の防汚性膜体の、基布を表面被覆する熱可塑性樹脂組成物は、無色であってもよいが、顔料着色されていることが美観的、景観的に好ましく、特に白、パステル色などに着色されていることが、二次加工でプリントを施す場合の配色が鮮明となり好ましい。顔料着色に使用する顔料としては、公知の無機系顔料、及び公知の有機系顔料から選ばれて任意に組み合わせることによってカラーバリエーションを充実させることができる。無機系顔料としては例えば、金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、クロム酸金属塩、カーボンブラック、スピネル型構造酸化物、ルチル型構造酸化物、アルミニウム粉顔料、ブロンズ粉、ニッケル粉、ステンレス粉、パール顔料などである。本発明においては特に熱可塑性樹脂被覆層に隠蔽性を与える目的で、無機系顔料の一部に酸化チタン(TiO2 )を使用することが好ましい。酸化チタンとしては、チタン鉱石を硫酸と反応させて硫酸チタニルとし、これを加水分解して得た含水酸化チタンを焼成して得られるルチル型酸化チタン、及びアナタース型酸化チタン、またはチタン鉱石を還元剤と共に塩素を反応させ、得られた四塩化チタンを酸素と反応させて得られるルチル型酸化チタンなどである。
【0035】
本発明に使用される酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンを使用することが耐候性の観点で好ましく、その粒子径としては0.05〜0.5μm、好ましくは平均粒子径が0.2〜0.35μmの酸化チタンが隠蔽性に優れ適している。また、有機系顔料としては例えば、アゾ系顔料、(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料)、縮合多環系顔料(アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料)、その他ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリン系顔料などである。
【0036】
上記の無機系顔料、及び有機系顔料の添加量に関しては、目的とする色相の調整に応じて、任意に設定することができ特に制限はないが、一般に熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは、1〜30質量部である。着色剤の添加量が、0.1質量部以下では、熱可塑性樹脂組成物の着色性に劣り十分な隠蔽性が得られないことがあり、また、それが50質量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物の成形性を悪化させるだけでなく、熱可塑性樹脂組成物層の被膜強度と被膜摩耗強力を著しく低下させることがある。これらの無機系顔料及び有機系顔料は樹脂加工の方法に応じて、取り扱い性が工夫された加工顔料を使用することが好ましい。これらの加工顔料は、フラッシュドカラー、水性液状カラー、油性液状カラー、ペーストカラー(ビニルトーナーカラー)、ドライカラー、潤性カラー、マスターバッチ、カラードペレットなどの形態があり、ペースト塩ビゾルの成型の場合には、潤性カラーまたはペーストカラー(ビニルトーナーカラー)の形態が適し、ストレート塩化ビコンパウンドの成型には、ドライカラーまたは、マスターバッチの形態が適している。また、カレンダー成型、T−ダイ押出し成型、インフレーション成型など、熱可塑性樹脂組成物の溶融混練加工に対しては、ドライカラー、マスターバッチ、カラードペレットなどの形態が適している。特にポリオレフィン系樹脂の成形加工などに対しては、顔料を分散剤、ワックスと共にポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂中に高濃度で充填したカラードペレットの形態が適している。また、エマルジョンベースの水性樹脂の塗工には水性液状カラーの形態が適し、また、熱可塑性樹脂を有機溶剤に可溶化させた樹脂溶液、または表面処理剤の塗工には、フラッシュドカラー、ペーストカラー、ドライカラー、油性液状カラーなどの形態が適している。
【0037】
本発明の防汚性膜体において、上記の熱可塑性樹脂被覆層を有するシート状基材の被覆層の表面上に外面複合塗膜層が形成されている。この外面複合塗膜層には、面積0.04〜1.0cm2 の疎水性塗膜領域単位と、面積0.04〜1.0cm2 の親水性塗膜領域単位とが、互に交差する二方向(例えば上下、左右両方向)に交互に隣接して配置(以下、これを市松模様と記す)されている。
本発明の防汚性膜体の前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂面の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む疎水性塗膜が形成され、この疎水性塗膜上に前記複数個の親水性塗膜領域単位が形成され、前記疎水性塗膜の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成していてもよい。
また、前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂面の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む親水性塗膜が形成され、この親水性塗膜上に、前記複数個の疎水性塗膜領域単位が形成され、前記親水性塗膜の、前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成していてもよい。
【0038】
疎水性塗膜領域単位は、ふっ素系樹脂、またはふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含む溶液を塗布・乾燥(熱処理)して得られることが好ましく、ふっ素系樹脂としては有機溶剤に可溶であるフルオロオレフィン共重合体樹脂、またはフルオロオレフィン共重合体樹脂の水分散体が好ましい。また、フルオロオレフィン共重合体樹脂は、硬化剤との併用で架橋部位を生成可能である水酸基を分子構造内に含有するものが特に好ましい。フルオロオレフィンモノマーとしては、例えば、ふっ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)など、のように、ふっ素原子を構成単位中に1個以上含有するエチレン、プロピレン、及びα−オレフィンなどのオレフィン骨格のモノマーであれば特に限定はない。フルオロオレフィン共重合体樹脂は上記フルオロオレフィンモノマーから選ばれた2種以上を共重合して得られるものであり、これらは具体的に、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、VdF−HFP共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、TFE−HFP共重合体樹脂、CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−HFP共重合体樹脂、TFE−CTFE−HFP共重合体樹脂、VdF−CTFE−HEP共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE−HFP共重合体樹脂などである。また、これらは2種以上を併用することもできる。中でもVdFを含有するVdF系共重合体樹脂が有機溶剤への溶解性の観点で好ましく、VdF含有量が50〜90モル%である共重合体樹脂が好ましい。
【0039】
上記ふっ素系樹脂のうちで、特に有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂としては、VdF,TFE、又はCTFE成分を含有する共重合体樹脂が好ましく、これらは、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂などである。これらの共重合体樹脂には、VF,TrEE,HFPなどのフルオロオレフィンモノマーをさらに共重合して含むものであってもよい。ふっ素系樹脂を可溶とする有機溶剤に特に限定はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸メチルセロソルブなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物などが挙げられ、その他、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコールなども併用することができる。また、これらの有機溶剤は同時にアクリル系樹脂も溶解可能であるものが好ましい。また有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂は、CF2 =CFX(但し、Xは、−H,−F、又は−CF3 を表す。)で示されるフルオロオレフィンと、特定のビニルモノマーとの共重合体樹脂であることが好ましい。特定のビニルモノマーとしては、i)CH2 =CR(CH3 )(但し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す)で示されるβ−メチル−β−アルキル置換−α−オレフィン類、ii)CH2 =CHOR,CH2 =CHCH2 OR(但し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。)で示されるアルキルビニルエーテル類、またはアルキルアリルエーテル類、iii )CH2 =COOR,CH2 =OCOR,CHCOOR=COOR,CHCOOR=OCOR(但し、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜8のシクロアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルキル置換フェニル基を表す。)で示されるビニル基含有エステルなどが挙げられる。このような有機溶剤に可溶性の、ふっ素系樹脂(塗料)の市販品としては、商標:ルミフロン(旭硝子(株))、商標:セフラルコート(セントラル硝子(株))、商標:ザフロン(東亜合成(株))、商標:ゼッフル(ダイキン工業(株))、商標:フルオネート(大日本インキ工業(株))、商標:フローレン(日本合成ゴム(株))、商標:カイナー(アトケム)などが挙げられる。
【0040】
これらのフルオロオレフィン共重合体樹脂は、共重合ビニル成分中に有するヒドロキシル基、又はカルボキシル基などの反応性基を、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物など公知の硬化剤(架橋剤)をフルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分)に対して、固形分量換算で1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%用いて反応させることによって得られ、それによって塗膜の耐摩耗性、耐酸性雨性、耐候性などを改善することができる。中でも特にイソシアネート化合物がヒドロキシル基との反応性に優れ好ましく、特に脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物が耐候性の観点で好ましい。芳香族ポリイソシアネート化合物では、得られる塗膜が変色することがある。脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDI付加型イソシアヌレート・ポリイソシアネート、HDI付加型トリメチルプロパン・ポリイソシアネート、HDI付加型ビウレット・ポリイソシアネート、及びこれらのイソシアネート基ブロック体など、また、脂環式ポリイソシアネート化合物としてはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、IPDI付加型イソシアヌレート・ポリイソシアネート、IPDI付加型トリメチルプロパン・ポリイソシアネート、IPDI付加型ビウレット・ポリイソシアネート、及びこれらのイソシアネート基ブロック体などを用いることが好ましい。特にポリイソシアネート類を部分的に親水性基に置換したものは、水分散体とも併用することができる。
【0041】
また、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体とは、上記フルオロオレフィン共重合体樹脂とアクリル系樹脂との混合物、及びフルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂を意味し、これらは有機溶剤に可溶であるもの、または水分散体であることが好ましい。フルオロオレフィン共重合体樹脂とのブレンドに用いられるアクリル系樹脂とは、例えば、アルキル基の炭素原子数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリルなどの重合体が挙げられる。また、アルキル基の炭素原子数が1〜18のメタアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸i−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸ラウリルなどの重合体が挙げられ、アクリル系樹脂はこれら2種以上のモノマーからなる共重合体樹脂であってもよい。
【0042】
また、上記アクリル系樹脂には、アクリル系モノマーと反応性を有する共重合モノマーをアクリル系モノマーと置換して最大30質量%程度まで含んでいても良く、これらの共重合モノマーは例えば、マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸などのエチレン性不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアミド化合物類、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸類、アクリル酸グリシジル、メタアクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、その他、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1などのα−オレフィン類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテルなどのアルケニル類、酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類などが挙げられる。また、上記アクリル系樹脂は、フルオロオレフィン共重合体樹脂または、フルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂に対してブレンドして用いることができる。アクリル系樹脂のブレンド量(固形分量)は、フルオロオレフィン共重合体樹脂に対して5〜75質量%であることが好ましく、特に10〜65質量%が好ましく、また、フルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂に対しては5〜60質量%であることが好ましく特に10〜50質量%が好ましい。
【0043】
一方、フルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂とは、上記フルオロオレフィンモノマーとアクリル系モノマーとの共重合体樹脂、及び上記フルオロオレフィンモノマーから選ばれた2種以上とアクリル系モノマーとの共重合体樹脂を意味する。これらは有機溶剤に可溶であるもの、または水分散体であることが好ましい。アクリル系モノマーは、アルキル基の炭素原子数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリルなどが挙げられる。またアクリル系モノマーは、アルキル基の炭素原子数が1〜18のメタアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸i−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸ラウリルなどが挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。また、フルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂には、上記アクリル系モノマーと反応性を有する共重合モノマーをアクリル系モノマーと置換して最大30質量%程度まで含んでいてもよく、これらの共重合モノマーは例えば、マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸などのエチレン性不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアミド化合物類、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸類、アクリル酸グリシジル、メタアクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、その他、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1などのα−オレフィン類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテルなどのアルケニル類、酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類などが挙げられる。得られたフルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂には、フルオロオレフィン成分の合計量として35〜85モル%、特に40〜70モル%を含有することが好ましい。
【0044】
上記の有機溶剤可溶性ふっ素系樹脂、及びふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合など公知の重合方法によって製造されるが、特に有機溶剤を重合媒体とする溶液重合により、塗料原料を直接的に得られることがある。また、溶液重合において重合生成物が析出する場合には、一旦、重合生成物を水中に沈殿させ、脱溶媒と不純物除去とを施し、沈殿生成物を回収乾燥して、これを有機溶剤中に溶解したものであってもよい。また、乳化重合によって得られるエマルジョンを乾燥させて得た重合生成物なども同様に使用できる。溶液重合溶媒に用いる有機溶剤は、アルコール類、エステル類、飽和ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類などで特に限定はない。また、ふっ素系樹脂とのブレンドに用いるアクリル系樹脂は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合など公知の重合方法によって得たものを使用できる。一方、ふっ素系樹脂の水分散体、及びふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の水分散体などは乳化重合によって効率良く得ることができ、これらは水性溶媒中での重合時に、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤などを使用して重合され、水中に安定化されたエマルジョンである。特に、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の水分散体がブレンドによって構成される場合、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂とは、ともにエマルジョンであることが好ましい。ブレンドに用いるアクリル系樹脂エマルジョンは、水性溶媒中での重合時に、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤などを使用して重合され、水中に安定化されたエマルジョンである。
【0045】
疎水性塗膜領域単位の塗布の方法としては、特別の制限はないが、上記ふっ素系樹脂、または、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含有する塗工剤をシート状基材の被覆層表面上(または被覆層上に形成された添加剤移行防止層上)に均一塗布、及び市松模様状に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、スクリーンコート法、フローコート法、スプレーコートなどが挙げられるが、特に市松模様の形成にはグラビアコート法が好適である。上記コーティング剤による疎水性塗膜領域単位の厚さは上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって0.1〜30μmの厚さに形成させることが好ましい。疎水性塗膜領域単位の厚さが0.1μmよりも少ないと、得られる膜体の防汚性と防汚持続性が不十分となり、また、それが30μmを超えるものは市松模様状の連続塗膜の形成が困難となる。
【0046】
一方、親水性塗膜領域単位は、オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)によって形成されることが好ましい。オルガノシリケート化合物は、化学式:RO[−Si−(OR)2 −O−]n Rで表される4官能加水分解性シラン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1〜10の1価の炭化水素基、nは1以上の整数で、4官能加水分解性シラン化合物の縮合分子数を表す多量化度である。Rにより表される炭化水素基としては、アルキル基、またはアリール基であり、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−オクチル基などで、これらは直鎖状、分岐状の何れであってもよい。これら4個の加水分解性基は各々異なるものであってもよいが、通常は同一の加水分解性基であることが好ましい。中でも特に炭素原子数1〜3の低級アルキル基が加水分解反応の観点で好ましい。また、アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられるが、汎用性の観点ではフェニル基が好ましい。これらのオルガノシリケートの具体例としては、n=1の化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどがあり、また多量化度n=2以上の化合物は、4官能加水分解性シラン化合物が加水分解して生成するシラノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するけい素原子数を意味するものである。また、n=2以上の多量体においては、4官能加水分解性シラン化合物を2種以上併用することもできる。本発明に用いるオルガノシリケートはn=1以上の整数であるが、特にn=1〜10の整数が好ましい。n=11を越えると液粘度が高くなるだけでなくゲル化を起こし、また有機溶剤に対する溶解度も低いものとなることがある。本発明に用いる多量体は、多量化度nが異なる多量体の混合物であってもよい。本発明においては、多量化度2〜10のテトラメトキシシラン、またはテトラエトキシシランを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物を親水性塗膜領域単位形成用塗料に用いることが耐汚染防止効果に優れ特に好ましい。
【0047】
これらのオルガノシリケートの加水分解反応は、酸触媒下でオルガノシリケート中のSi量をSiO2 (シリカ)量に換算した100質量部に対して水を3〜70質量部、特に5〜50質量部の範囲内で添加して行うことが好ましい。SiO2 (シリカ)量への換算は、4官能加水分解性シラン化合物、及びそれらの多量体1分子に対して、その1分子から生成するシリカの割合を示すもので、SiO2 (質量%)=多量化度×(SiO2 の分子量)×100/その化合物の分子量)で算出される値である。本発明に用いる4官能加水分解性シラン化合物の多量体は、SiO2 (質量%)=35以上であるものが好ましい。上記オルガノシリケートの加水分解反応において、水の添加量が3質量部よりも少ないと、液塗工が困難であると同時に、得られる塗膜が乾燥硬化不良を生じて耐汚染性が悪いものとなる。また、水の添加量が70質量部よりも多くなると、加水分解反応は十分に進行するが、加水分解反応に付随して生成したシラノール基同士による再縮合が進行して液がゲル化することがある。このゲル化は液のポットライフを短くするだけでなく、塗膜の耐汚染性にも大きく影響するものである。また、加水分解反応は、水以外の溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール溶媒下で行うこともできる。加水分解に用いる酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸から選ばれて使用できる。得られたオルガノシリケートの加水分解生成物(シラノール基含有シラン化合物)は、化学式:RO[−Si−(OR)2 −O−]n RにおけるRの一部、もしくは全部が水素原子で置換されたものであることを前提とするが、一部に多量体を残したものであっても使用に差し支えない。上記オルガノシリケートの加水分解生成物には、必要に応じて希釈目的の水(脱イオン水)、有機溶剤、充填材、着色剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、その他公知の塗料用添加剤などを配合することができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤などから選ばれた1種以上を使用することができる。特に水との併用により、アルコール系溶剤をシラノール基含有シラン化合物と同量以上用いることにより液の安定性(ポットライフ)を向上させることができる。この希釈塗工液中(特に、水/アルコール)に含有する、オルガノシリケートの加水分解生成物の濃度は0.01〜30質量%であることが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲であることが好ましい。この濃度が0.01質量%未満であると、得られる塗膜の耐汚染防止性が十分に得られないことがあり、また、濃度が30質量%を越えて大きくなると、得られる塗膜が厚くなり過ぎて塗膜が脆くなることがある。
【0048】
また、親水性塗膜領域単位用充填材としてはコロイダルシリカ及び、シリカなどのけい素化合物を用いることが好ましく、コロイダルシリカとしてはけい酸ナトリウム溶液を陽イオン交換することによって得られる水分散媒のシリカゾル、有機系溶剤を分散媒とするBET平均粒子径10〜20nmのシリカゾルが用いられる。また、シリカ(SiO2 )としては、乾式法により合成された無水シリカ、湿式法により合成された含水シリカなどの合成シリカである。合成シリカは、特に表面にシラノール基(Si−OH基)数を多く有する湿式シリカが好ましい。合成シリカの平均凝集粒径としては、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、特に2〜10μmである。
【0049】
また、本発明において、オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)を主体とする親水性塗膜領域単位には、耐折り曲げ性、耐水性などの塗膜耐久性を改良する目的で、シランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を添加することができる。塗膜耐久性を改良するには、アルコキシシラン化合物をゾル−ゲル法により加水分解し、親水性塗膜領域単位内で重縮合させて使用される。シランカップリング剤の配合量は、オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物のSi量をSiO2 (シリカ)量に換算した100質量部に対し、1〜50質量部、特に5〜25質量部であることが好ましい。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満だと、塗膜耐久性の効果に乏しく、また50質量部を越えると、得られる塗膜の耐汚染性を悪くすることがある。具体的にアルコキシシランとしては、一般式:Yn SiX4-n (n=1〜3)で表されるけい素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解化合物などが適している。前記一般式においてYは例えば、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基またはエポキシ基であることができ、Xは例えば、ハロゲン、メトキシル基、エトキシル基、またはアセチル基であることができる。具体的には、アルキル基置換トリクロルシラン、アルキル基置換トリブロムシラン、アルキル基置換トリメトキシシラン、アルキル基置換トリエトキシシラン、アルキル基置換トリイソプロポキシシラン、アルキル基置換トリ−t−ブトキシシランなどが挙げられ、アルキル基としては、それぞれメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、n−オクタデシル基、フェニル基などである。また、具体的には、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をトリフルオロプロピル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をビニル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−メタアクリロキシプロピル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−アミノプロピル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−メルカプトプロピル基に変えたものなどが挙げられる。
【0050】
親水性塗膜領域単位の塗布の方法としては、特別の限定はないが、上記オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)を含有する塗工剤をシート状基材の被覆層上、又はその上に形成された添加剤移行防止層上に均一塗布、及び市松模様状に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、スクリーンコート法、フローコート法、スプレーコート法などが挙げられるが、特にグラビアコート法が市松模様の形成に好適である。上記コーティング剤による親水性塗膜領域単位の厚さは上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって0.1〜30μm形成させることが好ましい。親水性塗膜領域単位の厚さが0.1μmよりも少ないと、得られる膜体の防汚性と防汚持続性が不十分となることがあり、また、それが30μmを超えると、市松模様状の連続塗膜の形成が困難となる。また、以下に述べる光触媒物質を含む親水性塗膜領域単位の塗布の方法もこれに同様である。
【0051】
また、本発明において、オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)を主成分として含む親水性塗膜領域単位には、耐汚染防止効果をさらに向上させる目的で、光触媒物質を含むことが好ましい。光触媒物質としては、TiO2 ,ZnO,SrTiO3 ,CdS,GaP,InP,GaAs,BaTiO3 ,K2 NbO3 ,Fe23 ,Ta25 ,WO3 ,SnO2 ,Bi23 ,NiO,Cu2 O,SiC,SiO2 ,MoS2 ,InPb,RuO2 ,CeO2 などを例示することができ、またこれらの光触媒物質にPt,Rh,RuO2 ,Nb,Cu,Sn,NiOなどの金属及び金属酸化物を相乗化剤として添加した公知の組み合わせが全て使用できる。これらの光触媒物質のうち、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23 )、酸化鉄(Fe23 )及び、これら光触媒物質を担持する無機系多孔質微粒子から選ばれた金属酸化物を使用することが好ましい。光触媒物質を担持する無機系多孔質微粒子としては、シリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、りん酸ジルコニウム、りん酸カルシウム、りん酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、けい酸カルシウム、けい酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土などを用いることができる。これらの無機系多孔質微粒子の平均一次粒子径は、0.01〜10μmであることが好ましく、特に0.05〜5μmであるものが好ましい。光触媒物質を無機系多孔質微粒子に担持させるには、光触媒物質を含有する金属アルコラートによるゾル−ゲル薄膜製造工程を応用した表面処理が好ましい。
【0052】
本発明の親水性塗膜領域単位に用いる光触媒物質としては、これらの中でバンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で、しかも汎用性の金属酸化物である酸化チタンを使用することが好ましい。光触媒物質としての酸化チタンにおいては、硫酸チタニル、塩化チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を熱加水分解して得られる酸化チタンゾル、及び酸化チタンゾルのアルカリ中和物として得られる酸化チタンなど、また水酸化チタン及び、チタン酸化物の超微粒子を過酸化水素などの過酸化物でペルオキソ化して水中に分散したアナターゼ型ペルオキソチタン酸分散液であることが好ましい。酸化チタンはアナターゼ型とルチル型の何れも使用できるが、アナターゼ型の酸化チタンが光触媒活性の大きさの観点で好ましい。具体的には、平均結晶子径5〜20nmの塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾルなどが好ましく使用できる。光触媒物質の粒径は小さい方が光触媒活性能に優れるため、平均粒子径50nm以下、より好ましくは20nm以下の光触媒物質が適している。また、酸化チタンとしては含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンなども含まれる。親水性塗膜領域単位中の光触媒の含有量は、多くなるほど親水性となり、同時に光触媒活性能が高くなるが、下地基材層との接着性の観点から親水性塗膜領域単位を構成するオルガノシリケートの加水分解物の縮合硬化物に対して、50質量%以下、特に1〜50質量%が適している。光触媒物質の含有量が1質量%未満だと光触媒効果が十分に発揮されず、また光触媒物質の含有量が50質量%を越えると光触媒効果は高くなるが、親水性塗膜領域単位の表面摩耗強さを悪くすることで、屋外耐久性を十分に得ることができない。また、光触媒物質を含有する親水性塗膜領域単位には、光触媒物質とオルガノシリケートの加水分解物の縮合硬化物との密着性を改善するために、シランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を併用添加することが好ましく、この改善はアルコキシシラン化合物をゾルゲル法により加水分解させたものを親水性塗膜領域単位内部で重縮合させることによって可能である。これらのアルコキシシラン化合物としては、前述のシランカップリング剤として例示したものが使用できる。シランカップリング剤の使用量は親水性塗膜に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0053】
また本発明において、ふっ素系樹脂、またはふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を主体とする疎水性塗膜領域単位にも、耐汚染防止効果をさらに向上させる目的で、上記光触媒物質を含ませることができる。
【0054】
また、これらの光触媒物質には、光触媒物質に対し、50〜200質量%、特に60〜150質量%の金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを併用することが好ましい。この金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルは、光触媒物質を固着すると同時に、これらの有する多孔質性によって光触媒物質の分散面積を大きくし、これにより光触媒活性能が効率化される。この金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルの乾燥物の比表面積は100m2 /g以上の多孔質性を有することが光触媒活性能の効率化の観点で好ましい。金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルとしては、けい素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫の金属から選ばれた1種または2種以上の金属の酸化物ゲル、もしくは水酸化物ゲルであることが好ましく、具体的にはシリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、酸化ニオブゾルなどが例示できる。また、これらの混合ゲルとして、共沈法で得られる複合酸化物ゲルなども使用できる。これらの金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルと光触媒物質との混合には、これらのゲルとなる前のゾルの状態で混合するか、もしくはゾルを調整する前の原料の段階で混合するのが好ましい。金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを調整する方法には、金属塩を加水分解する方法、中和分解する方法、イオン交換する方法などがあるが、ゲルの中に光触媒物質が均一に分散可能であれば何れの方法でも構わない。本発明に用いる金属酸化物ゾルとしては、特にジルコニウム及び、アルミニウムなどの酸化物ゾルが耐久性の観点で好ましい。
【0055】
また本発明に用いられる光触媒物質は、親水性塗膜領域単位中に含有させる以外、親水性塗膜領域単位の表面に塗布したものであってもよい。表面塗布の場合、光触媒塗布層には、光触媒物質を10〜70質量%と、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを25〜90質量%、またけい素化合物を1〜20質量%含有させることが好ましい。
また本発明において光触媒物質は、疎水性塗膜領域単位中に含有させることの他に、疎水性塗膜領域単位の表面に塗布されてもよい。表面塗布の場合、光触媒塗布層には、光触媒物質を10〜70質量%と、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを25〜90質量%、またけい素化合物を1〜20質量%含有させることが好ましい。
【0056】
光触媒物質の塗布の方法としては、特別に限定される物ではないが、上記光触媒物質を含有する塗工剤を親水性塗膜領域単位の表面上に均一塗布、及び市松模様状に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、スクリーンコート法、フローコート法、スプレーコート法などが挙げられるが、市松模様の形成には特にグラビアコート法が好適である。上記コーティング剤による光触媒塗布層の厚さは上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって0.1〜30μmの厚さに形成させることが好ましい。光触媒塗布層の厚さが0.1μmよりも少ないと、得られる膜体の防汚性と防汚持続性が不十分となることがあり、また、それが30μmを超えるものは屈曲や折り曲げに対して脆いものとなることがある。また必要に応じて、光触媒塗布層は親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の両方上に形成することもできる。
【0057】
本発明の防汚性膜体において、シート状基材の被覆層の表面に設けられる外面複合塗膜層は、例えば、ふっ素系樹脂、または、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の塗布による、面積0.04〜1.0cm2 の疎水性塗膜領域単位と、例えばオルガノシリケート化合物、またはその低縮合物の加水分解物の塗布による、面積0.04〜1.0cm2 の親水性塗膜領域単位とが互に交差する二方向(上下左右)に交互隣接した市松状に連続して形成される。この疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位との分布率は、面積比で35:65〜65:35であることが好ましく、特に50:50であることが好ましい。疎水性塗膜領域単位または親水性塗膜領域単位の占める面積比が35よりも少なくなると、得られる表面塗膜の雨筋汚れ防止効果が不十分となることがある。また、親水性塗膜領域単位の占める面積比が65よりも多くなると、得られる膜体のラップ接合、すなわち融着縫製(高周波、超音波、熱)が困難となることがある。また、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位の1個当たりの面積は、それぞれ0.04〜1.0cm2 、特に0.1〜0.5cm2 、理想的には雨粒(水滴の撥水粒)の大きさである。1個当たりの面積が0.04cm2 よりも小さいと、本発明の表面塗膜を構成する市松状連続塗膜の形成が困難となる。また、1個当たりの面積が1.0cm2 よりも大きいと、雨粒の大きさよりも広面積となることで、得られる膜体の雨筋汚れ防止効果が不十分となる。一方、親水性塗膜領域単位の水との静止接触角θは、0〜40°好ましくは0〜30°である。静止接触角θが40°を越えると親水性塗膜領域単位の濡れ性が不十分となり、雨筋汚れ防止効果が得られない。また、疎水性塗膜領域単位の水との静止接触角θは80〜135°、好ましくは95〜135°の範囲である。静止接触角θが80°よりも小さいと疎水性塗膜領域単位の撥水性が不十分となり、十分な雨筋汚れ防止効果が得られない。また、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位との静止接触角差(θ1 −θ2 )は40〜135°、特に80〜135°であることが好ましい。
【0058】
疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位との表面塗膜の形成は、1).疎水性塗膜領域単位を形成する塗布液の部分塗工と、親水性塗膜領域単位を形成する塗布液の部分塗工とに工程を分割して行う方法、2).疎水性塗膜領域単位を形成する塗布液による全面塗工を施し、その上から、親水性塗膜領域単位を形成する塗布液を部分塗工する方法、3).親水性塗膜領域単位を形成する塗布液による全面塗工を施し、その上から、疎水性塗膜領域単位を形成する塗布液を部分塗工する方法などの、何れの方法によっても可能で、上記1)〜3)の方法は、本発明の主対象とする防汚性膜体以外の物品、及び建築物、建造物、車両などの外面塗装にも応用可能なものである。これらの疎水性塗膜領域単位、及び親水性塗膜領域単位の形状は、正方形、長方形、三角形、矢がすり模様、六角形と蝶形六角形との組み合わせ、八角形と蝶形八角形との組み合わせ、及びこれらの変形体(部分的、または全体的に形状を歪ませたもの)から選ばれた1種以上であり、これらの形状からなる疎水性塗膜領域単位、及び親水性塗膜領域単位を交互に隣接して組み合わせた市松状連続塗膜に形成されていることが好ましい。また、これらの市松状交互隣接による連続塗膜は、複数タイプを部分併用することもできる。疎水性塗膜単位、及び親水性塗膜単位の交互隣接による市松状連続塗膜の形成は、グラビアコートによる塗工方法が最も適し、場合によっては、それぞれの市松模様のスクリーン版を用いるスクリーンコート法、または、それぞれの市松模様のマスキング版を用いるスプレーコート法なども適用可能である。市松状連続塗膜の形成は、疎水性塗膜単位の形状が彫刻されたグラビアロールと、親水性塗膜単位の形状が彫刻されたグラビアロールの最低2本のロールがあれば可能である。またグラビアロールのスクリーン(メッシュ)線数、彫刻様式(ピラミッド、ハニカム、斜線など)、彫刻深度などには特に限定はないが、スクリーン線数40〜200/2.54cm、彫刻深度10μm〜1000μmが適している。
【0059】
本発明の防汚性膜体の外面複合被膜層における疎水性塗膜領域単位と、親水性塗膜領域単位との配置を図1〜8により例示する。
図1に示された外面複合塗膜層1において、正方形の親水性塗膜領域単位2と疎水性塗膜領域単位3とが、縦横両方向に、互に隣接して交互に配置され、市松模様を形成している。各領域単位2及び3は、矩形であってもよく、台形であってもよい。
図2の外面複合塗膜層1において、三角形の親水性塗膜領域単位2と、疎水性塗膜領域単位3とが、縦横両方向に、互に隣接して交互に配列されている。
図3の外面複合塗膜層1において、六角形の上2辺が内側に凹んだ図形すなわち矢がすり模様の親水性塗膜領域単位2と、疎水性塗膜領域単位3とが、縦横両方向に、互に隣接して交互に配列されている。
【0060】
図4の外面複合塗膜層1において、図3の矢絣模様の上下2辺が連続した曲線に変化している図形の親水性塗膜領域単位2と、疎水性塗膜領域単位3とが、縦横両方向に、互に隣接して交互に配列されている。
図5の外面複合塗膜層1において、六角形及び六角形の上下各2辺がともに内側に凹んだ図形、すなわち蝶形六角形の親水性塗膜領域単位2及び疎水性塗膜領域単位3が、縦横両方向に、互に隣接して交互に配列されている。
図6の外面複合塗膜層1において、八角形及び八角形の上下各3辺が内側に凹んだ八角形の親水性塗膜領域単位2及び疎水性塗膜領域単位3が、縦横両方向に、互に隣接して交互に配列されている。
【0061】
図1〜6の外面複合塗膜層1において、親水性塗膜領域単位2と、疎水性塗膜領域単位3との面積比(2)/(3)はいずれも1:1である。
図7の外面複合塗膜層1において、三角形状の親水性塗膜領域単位2の2辺が内側に凹の曲線をなしていて、疎水性塗膜領域単位3の2辺が外側に凸の曲線をなしている。この曲線の凹凸方向及び形状を変更することにより両領域単位の面積比(2)/(3)を、35:65〜65:35の範囲内に設定することができる。
また図8の外面複合塗膜層1において、図3の矢絣形六角形状が親水性塗膜領域単位2においては、その上下各2辺を、内側に凹の曲線とし、疎水性塗膜領域単位3においては、その上下各2辺を外側に凸の曲線形状に変化している。この変形図形の凹凸方向及び曲線形状を変化させることによって、両領域単位の面積比を35:65〜65:35の範囲内に設定することができる。
【0062】
本発明の防汚性膜体は、その表面に、雨粒(水滴の撥水粒)サイズ程度の面積の疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを市松状に交互隣接して有することによって、この表面を濡らす雨水は、疎水性塗膜領域単位を通過する時には撥水粒化し、次に親水性塗膜領域単位を通過する時には濡れ性によって表面張力を失う挙動を繰り返しながら重力方向に滴り落ちる特殊な効果をもたらすのである。この雨水が膜体表面を通過する際に発生する「撥水と濡れ」の相反する繰り返し現象を雨粒サイズのレベルで発現させることによって、雨筋汚れの発生を効果的に防止することを可能とするのである。この雨粒(水滴の撥水粒)サイズ程度の面積の疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを市松状に交互隣接する連続塗膜は、本発明において主目的とする防汚性膜体以外の用途、例えば、物品(タイル、看板)、建築物(屋根、外壁)、建造物(プラント設備、モニュメント)、車両(バス、電車)などの外面塗装に対しても応用可能な技術である。
【0063】
本発明の防汚性膜体において、シート基材の裏面に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の何れか1種による裏面塗膜層を形成することが膜体の熱融着接合の観点において好ましい。この裏面塗膜層を有することによって、熱可塑性樹脂シートの表面に形成された、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを市松状に交互隣接する連続塗膜のうち、特に疎水性塗膜領域単位を構成する、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体成分の何れか1種と、裏面塗膜層に含まれるアクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体などの何れか1種とが互いに融着(高周波、超音波、熱)可能となる。また、この裏面塗膜層は、膜体の巻き取り保管時に、シート状基材の被覆層に含まれる疎水性(油性)成分の膜材表面への転写を防止する効果も兼ね備えるものである。疎水性(油性)成分が膜材表面の親水性塗膜領域単位部分に転写されると、膜体の耐汚染防止効果が不十分となることがある。疎水性(油性)成分とは、具体的に、可塑剤、オイル、ワックスなどを意味する。
【0064】
裏面塗膜層に用いるアクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素原子数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類、これらは例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリルなどの1種以上の重合体が挙げられる。また、アルキル基の炭素原子数が1〜18のメタアクリル酸アルキルエステル類は、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸i−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸ラウリルなどの1種以上の重合体を包含する、上記モノマーを2種以上併用して得られる共重合体樹脂なども使用することができる。またアクリル樹脂は、アクリルモノマーと共重合可能である他のモノマーとを共重合して得られる共重合体樹脂などであってもよく、これらの他のモノマーとして、例えば、マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸などのエチレン性不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアミド化合物類、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシエチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸類、アクリル酸グリシジル、メタアクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、その他、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1などのα−オレフィン類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテルなどのアルケニル類、酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類などが挙げられる。ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体としては、本発明の疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを市松状に交互隣接する連続塗膜の疎水性塗膜領域単位を形成するのに用いる樹脂と同一のものが使用できる。これらは疎水性塗膜領域単位の形成に関する項目で説明したものである。
【0065】
本発明の防汚性膜体において、外面複合塗膜層とシート状基材の被覆層との間に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の何れか1種を含む添加物移行防止層を必要に応じて1層、または2層以上形成することが好ましい。この添加物移行防止層には、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカから選ばれた1種以上のけい素化合物を含有することが好ましい。添加物移行防止層を設けることにより、さらにシート状基材の被覆層に含まれる疎水性(油性)成分のブルーム、ブリードなどの表面移行を防止し、かつ疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが市松状に交互隣接している外面複合塗膜層のうち、特に親水性塗膜領域単位を構成する、オルガノシリケート化合物、及びその低縮合物の加水分解物と、シート基材の被覆層との密着性を向上する効果が得られ、膜体の耐汚染防止性を持続させることができる。疎水性(油性)成分が膜材表面の親水性塗膜領域単位部分に移行すると、膜体の耐汚染防止効果が不十分となることがある。疎水性(油性)成分としては具体的に、可塑剤、オイル、ワックスなどである。添加剤移行防止層用アクリル系樹脂としては、上述の裏面塗膜層で説明した樹脂と同一のもの、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体としては、疎水性塗膜領域単位を形成するのに用いる樹脂と同一のものが使用できる。これらは疎水性塗膜領域単位の形成に関する項目で説明したものである。また、ポリシロキサンとしては、前述のシランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)、及びこれらの加水分解物が挙げられる。コロイダルシリカとしてはけい酸ナトリウム溶液を陽イオン交換することによって得られる水分散媒のシリカゾル、有機系溶剤を分散媒とするBET平均粒子径10〜20nmのシリカゾルが挙げられ、シリカ(SiO2 )としては、乾式法により合成された無水シリカ、湿式法により合成された含水シリカなどの合成シリカが挙げられる。合成シリカは、特に表面にシラノール基(Si−OH基)数を多く有する湿式シリカが好ましい。合成シリカの平均凝集粒径としては、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、特に2〜10μmである。これらのけい素化合物は、添加物移行防止層に対して1〜50質量%、特に3〜30質量%含有することが好ましい。けい素化合物の含有量が1質量%未満であると、得られる外面複合塗膜層の、特に親水性塗膜領域単位を構成する、オルガノシリケート化合物、及びその低縮合物の加水分解物と、熱可塑性樹脂シート基材との密着性が不十分となることがある。また、けい素化合物の含有量が50質量%を超えると、添加物移行防止層が脆くなり外面複合塗膜層の耐久性が不十分となることがある。
本発明の防汚性膜体の製造方法において、前記シート状基材の前記被覆層用熱可塑性樹脂が添加剤を含むとき、この被覆層上に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、又はふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含む添加剤移行防止層を形成する工程をさらに含み、この添加剤移行防止層上に前記外面複合塗膜を形成することが好ましい。
前記外面複合塗膜の形成に当り、前記添加剤移行防止層上に、前記複数個の親水性塗膜領域単位を形成し、前記添加剤移行防止層の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、疎水性塗膜領域単位としてもよい。
【0066】
上記裏面塗膜層、及び添加物移行防止層に用いる塗工剤は、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の何れか1種を有機溶剤中に溶解して含む形態、または、これらの水分散体(エマルジョン)形態にある。これらの塗工剤中に含有する樹脂固形分には特に限定はなく、有機溶剤、または水などで任意の樹脂濃度、溶液粘度に調整することができる。有機溶剤には、特に制限はないが、例えば、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、及び酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、その他テトラヒドロフランなどの1種以上から選ばれて適宜使用することができる。また、上記裏面塗膜層、及び添加物移行防止層の形成は、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法、スプレーコート法などが挙げられ、裏面塗膜層、及び添加物移行防止層の厚さは1〜80μmであることが好ましく、特に5〜50μmがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0067】
図9−(A)〜(C)の各々には、本発明の防汚性膜体の積層構造の3種の実施態様が例示されておりそれぞれの外面複合塗膜層1は親水性塗膜領域単位2及び疎水性塗膜領域単位3が、交互に配列されており、図9−(A)の態様においては外面複合塗膜層1の下に熱可塑性樹脂被覆層、基布(繊維布帛)及び熱可塑性樹脂被覆層が順次に積層されてシート状基材4が形成されている。この図9−(A)の積層構造に対し、図9−(B)の態様においては、図示されているようにシート状基材4の裏面側に裏面塗膜層が追加されており、図9−(C)の態様においては、図示されているように、シート状基材4の表面上に添加物移行防止層が形成され、シート状基材4の裏面側に裏面塗膜層が追加されている。
図10−(A)に示された本発明の防汚性膜体の積層構造の実施態様において、シート状基材4の表面上に疎水性塗膜3aが塗布されており、その上に、親水性塗膜領域単位2が所定の配置をもって形成され、疎水性塗膜3aの、親水性塗膜領域単位2により被覆されていない領域面が、疎水性塗膜領域単位3を形成し、上記疎水性塗膜3aと親水性塗膜領域単位2とにより外面複合塗膜層1を形成している。
図10−(B)及び(C)においては、図10−(A)と同様の積層構造を有しているが、図10−(B)においてはシート状基材4の裏面側に裏面塗膜層が形成されており、また図10−(C)においては、シート状基材4の裏面側に裏面塗膜層が形成されており、シート状基材4の表面側に添加物移行防止層が形成されている。
図11−(A)に示された本発明の防汚性膜体の積層構造の実施態様において、シート状基材4の表面上に親水性塗膜2aが塗布されており、その上に、疎水性塗膜領域単位3が所定の配置をもって形成され、親水性塗膜2aの、疎水性塗膜領域単位3により被覆されていない領域面が、親水性塗膜領域単位2を形成し、この親水性塗膜2aと疎水性塗膜領域単位3によって外面複合塗膜層1を形成している。
図11−(B)及び(C)においては、図11−(A)と同様の積層構造を有しているが、図11−(B)においてはシート状基材4の裏面側に裏面塗膜層が形成されており、また図11−(C)においては、シート状基材4の裏面側に裏面塗膜層が形成されており、かつシート状基材4の表面側に添加物移行防止層が形成されている。
図12−(A)及び(B)には、それぞれ図11−(A)及び(B)と同様の積層構造を有する防汚性膜体が示されている。但し、図12−(A)及び(B)において、シート状基材4の表面上に形成された疎水性塗膜3bは、添加物移行防止層の機能を有するものである。
【0068】
本発明の防汚性膜体を、互に接合(ラップ接合)するには、高周波融着、超音波融着、熱融着などの接着方法を用いることができる。高周波融着は、高周波ウエルダー機を用いて2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバーである)間に膜体を重ね置き、ウエルドバーで加圧しながら電極に高周波(1〜200MHz )で発振する電位差を印加することで膜体の熱可塑性樹脂層を分子摩擦熱で溶融させて接着するものである。高周波ウエルダー融着機としては、例えば、山本ビニター(株)のYC−7000FT,YF−7000など、精電舎電子工業(株)のKM−5000TA,KA−7000TEなど、クインライト電子精工(株)のLW−4000W,LW−4060Sなどが使用できる。また、超音波融着法は、超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16〜30KHz )の振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して融着するものであって、その超音波発熱は、被着物の境界面だけで発生するために、製品の変形や、外観変化に影響を与えずに融着加工できるというメリットがある。超音波融着機としては、例えば、超音波工業(株)のUSWP−1200Z21S,USWP−2410Z15Sなど、精電舎電子工業(株)のSONOPET455B/P35A,SONOPET450B/RL210などが使用できる。熱融着法は、ヒーターの電気制御によって20〜700℃に無段階設定された熱風を、ノズルを通じて膜体間に吹き込み膜体の表面を瞬時に溶融させて、直後に膜体同士を圧着して接着する方法である。この熱融着法は、連続融着が可能であるため、大型シート、大型膜体などの縫製に適している。熱風融着機としては、例えば、ライスター社の熱風融着機として、バリアント型、ユニバーサル型などの自走式タイプ、クインライト電子精工(株)のLHA−Z2,LHA−Z3W,LHA−100ACなどの被着体送りタイプが使用できる。また、ヒーター内蔵加熱された金型(こて)を用いて、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で膜体を圧着し接着する熱板融着法などによっても接合が可能である。熱板融着機としては、例えば、PFAFF社のPfaff8351,Pfaff8363,Pfaff8362などの自走式ハンディタイプ、クインライト電子精工(株)のLHP−W603,LHP−1W1.43などの被着体送りタイプなどを用いることができる。
【0069】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、テント膜体の防汚性、高周波融着性などの評価は下記の試験方法により判定した。
【0070】
(I)屋外展張試験による雨筋汚れ防止性の評価
幅20cm×長さ2mのテント膜体を、光触媒含有層形成面を表側にして、陽当たりの良い南向きに設置した曝露台の傾斜30°方向と垂直方向にそれぞれ1mずつ連続して展張(テントハウスの部分模倣)し、屋外曝露試験を12ヶ月間行った。展張3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後に膜体の外観を目視観察し、雨筋汚れの発生を調べた。また雨筋汚れの汚れ度合いを色差ΔE(JIS−Z−8729)で数値化し、下記の判定基準により防汚性の評価を行った。
※屋外展張は、埼玉県草加市内において6月より開始した。
ΔE=0〜2.9 : ◎=汚れがなく良好。初期の状態を維持している。
ΔE=3〜4.9 : ○=多少汚れているが、雨筋の発生がない。
ΔE=5〜7.9 : ×=雨筋が発生し、美観的に問題がある。
ΔE=8〜 : ××=雨筋が酷く、美観的にかなり問題がある。
【0071】
(II)高周波ウエルダー融着性の評価
2枚のテント膜体の側端部を4cm幅に重ね合わせ、4cm×30cmのウエルドバー(押面凹凸歯形:凸部賦型9本/25.4mm、凸部と凹部との高低差1.0mm)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用いてテント膜体の高周波融着接合を行った。
<高周波融着性>
○:融着が容易である。
※融着条件:融着5秒、冷却5秒、陽極電流0.8A、ウエルドバー温度40〜50℃
△:融着条件を強く、かつ長くすることで融着可能である。
※融着条件:融着10秒、冷却5秒、陽極電流1.0A、ウエルドバー温度40〜60℃
×:融着条件を強く、かつ長く設定しても融着しない。
※融着条件:融着10秒、冷却5秒、陽極電流1.3A、ウエルドバー温度40〜60℃
【0072】
(III )耐熱クリープ性の評価
(II)の高周波融着接合体から接合部幅4cmを含む3cm幅×30cm長の試験片を採取し、これを耐熱クリープ試験片として、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して60℃×25kgf 荷重×24時間の耐熱クリープ性試験を評価した。
○:24時間経過後、接合部の破壊はなかった。
×:24時間以内に接合部が破壊した。
【0073】
実施例1
−(i)基布(繊維布帛)(A)の塩化ビニル樹脂組成物による被覆処理−
繊維布帛(A):5号ポリエステル繊維平織スパン織物(ポリエステル短繊維紡績糸条:糸密度経糸20番手・双糸51本/2.54cm×緯糸20番手・双糸48本/2.54cm:質量250g/m2)を基布として用い、これを、下記ペースト塩化ビニル樹脂組成物:PVC(1)を溶剤で希釈したオルガノゾル浴中にディップ(浸漬)し、基布(繊維布帛)(A)を浴中から引き上げると同時にマングルロールでニップ(圧搾)して、基布(繊維布帛)(A)に対し145g/m2 のPVC(1)を基布(繊維布帛)(A)両面全面に均等に含浸付着させた。次に、これを140℃の熱風炉中で1分間、半ゲル化乾燥させた後、175℃の熱風炉中で1分間の熱処理を行い、樹脂をゲル化させ、その直後に180℃の鏡面ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基材表面に熱プレスを施し、PVC(1)によって表面被覆された、厚さ0.42mm、質量440g/m2 の下地基材を得た。
<塩化ビニル樹脂組成物:PVC(1)>
ペースト塩化ビニル樹脂(P=1600) 100質量部
DOP(可塑剤) 40質量部
アジピン酸ポリエステル 30質量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4質量部
炭酸カルシウム 10質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ルチル型酸化チタン 5質量部
有機系防カビ剤(TBZ) 0.2質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化防止剤 0.2質量部
溶剤(トルエン) 20質量部
〔註〕
塩化ビニル樹脂:商標:ZEST−P21(新第一塩ビ(株))
DOP:商標:サンソサイザーDOP(新日本理化(株))
アジピン酸ポリエステル:商標:アデカサイザーPN−446(旭電化工業(株))
エポキシ化大豆油:商標:アデカサイザーO−130P(旭電化工業(株))
炭酸カルシウム:商標:ライトンBS(備北粉化工業(株))
Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
ルチル型酸化チタン:商標:酸化チタンCR−95:(石原産業(株))
有機系防カビ剤:商標:サンアイゾール100(イミダゾール系:三愛石油(株))
紫外線吸収剤:商標:バイオソーブ510(ベンゾトリアゾール系:共同薬品(株))
酸化防止剤:商標:イルガノックスE201(ビタミンE系:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))
【0074】
−(ii)塩化ビニル樹脂組成物被覆による外層の形成−
この樹脂被覆下地基材の片面に、下記ストレート塩化ビニル樹脂組成物:PVC(2)のコンパウンドを165℃の熱条件でロール混練し、これをカレンダー圧延成型して得られた厚さ0.14mmのPVC(2)フィルムを、160℃に設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネーターを用いて、熱圧着法で積層し、厚さ0.56mm、質量620g/m2 のPVC(2)/PVC(1)被覆シート状基材を得た。
<塩化ビニル樹脂組成物:PVC(2)>
ストレート塩化ビニル樹脂(P=1050) 100質量部
DOP(可塑剤) 40質量部
アジピン酸ポリエステル 30質量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
ルチル型酸化チタン 5質量部
有機系防カビ剤(TBZ) 0.2質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化防止剤 0.2質量部
〔註〕
塩化ビニル樹脂:商標:ZEST1000S(新第一塩ビ(株))
DOP:商標:サンソサイザーDOP(新日本理化(株))
アジピン酸ポリエステル:商標:アデカサイザーPN−446(旭電化工業(株))
エポキシ化大豆油:商標:アデカサイザーO−130P(旭電化工業(株))
Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
ルチル型酸化チタン:商標:酸化チタンCR−95:(石原産業(株))
有機系防カビ剤:商標:サンアイゾール100(イミダゾール系:三愛石油(株))
紫外線吸収剤:商標:バイオソーブ510(共同薬品(株))
酸化防止剤:商標:イルガノックスE201(ビタミンE系:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))
【0075】
−(iii)添加剤移行防止層の形成−
次に、PVC(2)/PVC(1)被覆基材の(ii)のPVC(2)外層全面に、下記けい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて、固形分付着量5g/m2 の添加剤移行防止層を形成した。
Figure 0003709929
【0076】
−(iv)裏面塗膜層(可塑剤転写防止層)の形成−
次に、PVC(2)/PVC(1)被覆基材の(iii)のPVC(1)裏面全面に、下記アクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて、固形分付着量6g/m2 の裏面塗膜層を形成した。
Figure 0003709929
【0077】
−(v)親水性塗膜領域単位の形成−
次に、PVC(2)/PVC(1)被覆基材の(iii)の添加剤移行防止層面に、親水性塗膜領域単位を形成するための下記オルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様で、下記vi市松連続模様と補対称:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。親水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 、全面塗布換算付着量1g/m2 、静止接触角θ2 は26°であった。※静止接触角θは協和界面化学(株)の接触角測定器:CA−X150を使用し、マイクロシリンジから滴下した水滴の30秒後の静止接触角を測定した。(以下の実施例、比較例においても同様)
Figure 0003709929
※エチルシリケート40に2%塩酸を添加し、60℃で60分間加水分解を進行させ、シラノール基を有するシラン化合物溶液を調製し、後から希釈剤を添加した。
【0078】
−(vi)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記(v)の市松状親水性塗膜領域単位を形成したPVC(2)/PVC(1)被覆基材の中間層面に、疎水性塗膜領域単位を形成する下記ふっ素系樹脂の塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様で、vの市松連続模様と補対称:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。疎水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 、全面塗布換算付着量2.5g/m2 、静止接触角θ1 は105°であった。※静止接触角θは協和界面化学(株)の接触角測定器:CA−X150を使用し、マイクロシリンジから滴下した水滴の30秒後の静止接触角を測定した。(以下の実施例、比較例においても同様)
Figure 0003709929
【0079】
上記(i)〜(vi)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面塗膜層が形成された、厚さ0.58mm、質量632g/m2 の軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。
〔註〕このポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合する防炎性膜体であった。
【0080】
実施例2
実施例1と同様の工程(i)及び(ii)を行った。
−(iii)添加剤移行防止層の形成−
実施例1の(i),(ii)と同一工程で得たPVC(2)/PVC(1)被覆基材のPVC(1)外層全面に、添加剤移行防止層を形成する下記けい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。(固形分付着量5g/m2)また、裏面塗膜層を実施例1−(iv)と同一の処理により形成した。
Figure 0003709929
【0081】
−(v)親水性塗膜領域単位の形成−
次に、PVC(2)/PVC(1)被覆基材(iii)の添加剤移行防止層面に、親水性塗膜領域単位を形成するために下記オルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターで中間層全面にwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。その付着量は1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は18°であった。
Figure 0003709929
エチルシリケート40に2%塩酸を添加し、60℃で60分間加水分解を進行させ、シラノール基を有するシラン化合物溶液を調製し、後から光触媒物質分散溶液と希釈剤を添加した。
このエチルシリケート加水分解物塗工剤の固形分に含有される光触媒物質量は33質量%であった。
Figure 0003709929
この光触媒物質分散溶液の固形分に含有される光触媒物質量は45質量%であった。
【0082】
−(vi)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記親水性塗膜単位を全面に形成したPVC(2)/PVC(1)被覆基材(v)の添加剤移行防止層面に、実施例1−(vi)と同一の疎水性塗膜領域単位を形成するふっ素系樹脂塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布して、100℃の熱風炉中で1分間乾燥し、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量2.5g/m2 、静止接触角θ1 は105°、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位1個の面積は各々約0.25cm2 であった。
【0083】
実施例1と同一のPVC(2)/PVC(1)被覆基材に対して施した(iii)〜(vi)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する表面塗膜が形成された、厚さ0.58mm、質量633g/m2 の軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。このポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合する防炎性膜体であった。
【0084】
実施例3
−(i)基布(繊維布帛)(A)のポリウレタン樹脂による被覆処理−
実施例1と同一の繊維布帛からなる基布(A):5号ポリエステル繊維平織スパン布帛を、下記ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物:PU(1)浴中にディップ(浸漬)し、樹脂含浸した基布(繊維布帛)(A)の引き上げと同時にマングルロールでニップ(圧搾)し、基布(繊維布帛)(A)に対して、70g/m2 のPU(1)を基布(繊維布帛)(A)両面全面に均等に含浸付着させ、次いで100℃の熱風炉で2分間乾燥し、直後180℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基布に熱プレスを施した。次に、この樹脂被覆基布を再びPU(1)浴中にディップし、さらに樹脂を付着させた後、今度はドクターナイフで樹脂コーティングを行った。この基布を100℃の熱風炉で2分間乾燥し、直後180℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基布に熱プレスを施して、PU(1)により表面被覆された、厚さ0.40mm、質量386g/m2 の下地基材を得た。
Figure 0003709929
【0085】
−(ii)ポリウレタン樹脂組成物被覆による外層の形成−
前記樹脂下地被覆基材の片面に、下記ポリウレタン樹脂組成物:PU(2)のコンパウンドを165℃の熱条件でロール混練し、これをカレンダー圧延成型して得られた厚さ0.14mmのPU(2)フィルムを、160℃に設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネーターを用いて熱圧着法で積層し、厚さ0.54mm、質量546g/m2 のPU(2)/PU(1)被覆基材を得た。
Figure 0003709929
【0086】
−(iii)添加剤移行防止層の形成−
前記PU(2)/PU(1)被覆基材のPU(2)外層全面上に、実施例1−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を、80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet18g/m2 に塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して添加剤移行防止層を形成した。(固形分付着量5g/m2)
−(iv)裏面塗膜層の形成−
前記PU(2)/PU(1)被覆基材(iii)のPU(1)被覆裏面全面に、実施例1−(iv)と同一のアクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して裏面塗膜層を形成した。(固形分付着量6g/m2)
【0087】
−(v)親水性塗膜領域単位の形成−
次に、PU(2)/PU(1)被覆基材(iii)の添加剤移行防止層面上に、実施例1−(v)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて親水性塗膜を前記添加物移行防止層全面に形成した。その付着量は1g/m2 であり、静止接触角θ2 は26°であった。
−(vi)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、PU(2)/PU(1)被覆基材(iii)の添加剤移行防止層面上に、実施例1−(vi)と同一の、ふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて疎水性塗膜領域単位と前記親水性塗膜の非被覆部分からなる親水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 であり、静止接触角θ1 は105°であった。また疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位の各々の面積は約0.250cm2 であった。
【0088】
PU(2)/PU(1)被覆基材に対して施した(iii)〜(vi)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.55mm、質量469g/m2 のポリウレタン樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。
このポリウレタン系樹脂被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性膜体であった。
【0089】
実施例4
−(i)繊維布帛からなる基布(A)のポリエステル系樹脂による被覆処理−
実施例1と同一の繊維布帛(A):5号ポリエステル繊維平織スパン布帛を基布として、これを下記ポリエステル樹脂エマルジョン組成物:PEE(1)浴中にディップ(浸漬)し、樹脂含浸した基布(繊維布帛)(A)の引き上げと同時にマングルロールでニップ(圧搾)し、基布(繊維布帛)(A)に対して、70g/m2 のPEE(1)を基布(繊維布帛)(A)両面全面に均等に含浸付着させ、次いで100℃の熱風炉で2分間乾燥し、直後180℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基材に熱プレスを施した。次に、この樹脂被覆基布を再びPEE(1)浴中にディップし、さらに樹脂を付着させた後、今度はドクターナイフで樹脂コーティングを行った。この基材を100℃の熱風炉で2分間乾燥し、直後180℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基材に熱プレスを施して、PEE(1)により表面被覆された、厚さ0.40mm、質量366g/m2 の下地被覆基材を得た。
Figure 0003709929
【0090】
−(ii)ポリエステル系エラストマー組成物被覆による外層の形成−
前記樹脂下地被覆基材の片面に、下記ポリエステル系エラストマー:PEE(2)のコンパウンドをシリンダー温度200〜230℃の熱条件でスクリュー混練し、これをT−ダイ押出成型して得られた厚さ0.14mmのPEE(2)フィルムを直接PEE(1)基材に熱圧着して積層し、厚さ0.54mm、質量546g/m2 のPEE(2)/PEE(1)被覆基材を得た。
Figure 0003709929
【0091】
−(iii)添加剤移行防止層の形成−
次に、PEE(2)/PEE(1)被覆基材のPEE(2)外層全面に、実施例2−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して添加剤移行防止層を形成した。(固形分付着量5g/m2)
−(iv)裏面塗膜層の形成−
次に、PEE(2)/PEE(1)被覆基材(iii)のPEE(1)被覆裏面全面に、実施例1−(iv)と同一のアクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して裏面塗膜層を形成した。(固形分付着量6g/m2)
【0092】
−(v)親水性塗膜領域単位の形成−
次に、PEE(2)/PEE(1)被覆基材(iii)の添加剤移行防止層面上に、実施例2−(v)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて親水性塗膜を前記添加剤移行防止層全面に形成した。その付着量1g/m2 であり、静止接触角θ2 は18°であった。
−(vi)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、PEE(2)/PEE(1)被覆基材(iii)の添加剤移行防止層面に、実施例1−(vi)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺6mmの正三形からなる市松連続模様:図2)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 であり、静止接触角θ1 は105°であった。また疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位の各々の面積は約0.156cm2 であった。
【0093】
PEE(2)/PEE(1)被覆基材に対して施した(iii)〜(vi)の工程により、親水性塗膜領域単位と前記親水性被膜の非被覆部分からなる親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.55mm、質量560g/m2 のポリエステル系樹脂被覆繊維複合膜体を得た。
このポリエステル系エラストマー被覆繊維複合防汚性膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性膜体であった。
【0094】
実施例5
−(i)繊維布帛からなる基布(B)の塩化ビニル樹脂による被覆−
基布(B):ポリエステル繊維平織織物(555dtexポリエステルマルチフィラメント糸状:糸密度経糸23本/2.54cm×緯糸23本/2.54cm:質量100g/m2)を基布(B)として用い、下記塩化ビニル樹脂配合組成物:PVC(3)を、165℃の熱条件でロール混練し、カレンダー圧延成型により、厚さ0.20mmのフィルムを得た。次に160℃に設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネーターを用いて、基布(繊維布帛)(B)の両面にPVC(3)フィルムを熱圧着法で積層し、厚さ0.50mm、質量644g/m2 のPVC(3)/PVC(3)被覆基材を得た。
Figure 0003709929
〔註〕
塩化ビニル樹脂:商標:ZEST1000S(新第一塩ビ(株))
高分子可塑剤:商標:エルバロイ742:エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合体:MW25000(三井デュポン・ポリケミカル(株))
アジピン酸ポリエステル:商標:アデカサイザーPN−446(旭電化工業(株))
エポキシ化大豆油:商標:アデカサイザーO−130P(旭電化工業(株))
炭酸カルシウム:商標:ライトンBS(備北粉化工業(株))
Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
ルチル型酸化チタン:商標:酸化チタンCR−95:(石原産業(株))
有機系防カビ剤:商標:サンアイゾール100(イミダゾール系:三愛石油(株))
紫外線吸収剤:商標:バイオソーブ510(ベンゾトリアゾール系:共同薬品(株))
酸化防止剤:商標:イルガノックスE201(ビタミンE系:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))
【0095】
−(ii)添加剤移行防止層の形成−
前記PVC(3)/PVC(3)被覆基材の片面全面に、実施例2−(iii)と同一の、けい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥し添加剤移行防止層を形成した。(固形分付着量5g/m2)
−(iii)裏面塗膜層(可塑剤転写防止層)の形成−
PVC(3)/PVC(3)被覆基材(ii)の裏面(非中間層形成面)全面に、実施例1−(iv)と同一のアクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して裏面塗膜層を形成した。(固形分付着量6g/m2)
【0096】
−(iv)親水性塗膜の形成−
次に、PVC(3)/PVC(3)被覆基材(iii)の添加剤移行防止層面に、親水性塗膜領域単位を形成する下記オルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターで添加剤移行防止層全面にwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。その付着量1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は13°であった。
Figure 0003709929
メチルシリケートMS51に2%塩酸を添加し、60℃で60分間攪拌して加水分解を進行させ、シラノール基を有するシラン化合物溶液を調製し、後からシランカップリング剤を添加して60分間攪拌し、これに光触媒物質分散溶液を添加し、さらに攪拌した。
このメチルシリケート加水分解物塗工剤の固形分に含有される光触媒物質量は44質量%であった。
Figure 0003709929
この光触媒物質分散溶液の固形分に含有される光触媒物質量は45質量%であった。
【0097】
−(v)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記親水性塗膜を全面に形成したPVC(3)/PVC(3)被覆基材(iv)の添加剤移行防止層面に、下記疎水性塗膜領域単位を形成するふっ素系樹脂塗工剤を120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布して、100℃の熱風炉中で1分間乾燥し、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜の疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分からなる親水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 、静止接触角θ1 は105°であり、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位1個の面積は各々約0.25cm2 であった。
Figure 0003709929
【0098】
PVC(3)/PVC(3)被覆基材に対して施した前記(ii)〜(v)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.51mm、質量656g/m2 の軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。
この塩化ビニル樹脂被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合する防炎性膜体であった。
【0099】
実施例6
−(i)基布(繊維布帛)(B)のオレフィン系エラストマーによる被覆−
実施例5と同一の繊維布帛からなる基布(B):ポリエステル繊維平織織物を用いた。別に、下記オレフィン系エラストマー配合組成物:TPO(1)を165℃の熱条件でロール混練し、カレンダー圧延成型により、厚さ0.20mmのTPO(1)フィルムを得た。160℃に設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネータ−を用いて、基布(繊維布帛)(B)の両面に前記TPO(1)フィルムを熱圧着法で積層し、厚さ0.50mm、質量505g/m2 のTPO(1)/TPO(1)被覆基材を得た。
Figure 0003709929
【0100】
−(ii)中間層の形成−
次に、TPO(1)/TPO(1)被覆基材の片面全面に、実施例1−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を、80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して添加剤移行防止層を形成した。(固形分付着量5g/m2)
−(iii)裏面塗膜層の形成−
次に、TPO(1)/TPO(1)被覆基材(ii)の裏面(非中間層形成面)全面に、実施例1−(iv)と同一のアクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して裏面塗膜層を形成した。(固形分付着量6g/m2)
【0101】
−(iv)親水性塗膜の形成−
次に、TPO(1)/TPO(1)被覆基材(iii)上の添加剤移行防止層面に、親水性塗膜領域単位を形成するための下記オルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターで中間層全面にwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。その付着量1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は22°であった。
Figure 0003709929
メチルシリケートMS51に2%塩酸を添加し、60℃で60分間攪拌して加水分解を進行させ、シラノール基を有するシラン化合物溶液を調製し、後からシランカップリング剤と希釈剤を添加して60分間攪拌した。
【0102】
−(v)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、TPO(1)/TPO(1)被覆基材(ii)上の添加剤移行防止層面に、実施例5−(v)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺6mmの正三形からなる市松連続模様:図2)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて疎水性塗膜領域単位と前記親水性塗膜の非被覆部分からなる親水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 、静止接触角θ1 は105°であり、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜単位1個の面積は各々約0.156cm2 であった。
【0103】
TPO(1)/TPO(1)被覆基材に対して施した前記(ii)〜(v)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.51mm、質量518g/m2 のポリオレフィン系エラストマー被覆繊維複合防汚性膜体を得た。
このポリオレフィン系エラストマー被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性膜体であった。
【0104】
実施例7
−(i)基布(繊維布帛)(B)のポリウレタン樹脂による被覆−
実施例5と同一の繊維布帛:ポリエステル繊維平織織物からなる基布(B)を用いた。別に、実施例3と同一のポリウレタン系樹脂配合組成物:PU(2)を165℃の熱条件でロール混練し、これをカレンダー圧延成型して得られた厚さ0.20mmのPU(2)フィルムを作製した。前記基布(B)の両面上に、前記PU(2)フィルムを160℃に設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネータ−を用いて熱圧着法で積層し、厚さ0.50mm、質量560g/m2 のPU(2)/PU(2)基材を得た。
【0105】
−(ii)添加剤移行防止層の形成−
次に、PU(2)/PU(2)被覆基材の片面全面に、実施例1−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して添加剤移行防止層を形成した。(固形分付着量5g/m2)
−(iii)裏面塗膜層の形成−
次に、PU(2)/PU(2)被覆基材(ii)の裏面(非中間層形成面)全面に、実施例1−(iv)と同一のアクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して裏面塗膜層を形成した。(固形分付着量6g/m2)
【0106】
−(iv)親水性塗膜の形成−
次に、PU(2)/PU(2)被覆基材(iii)上の添加剤移行防止層面に、親水性塗膜領域単位を形成するための実施例5−(iv)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターで添加剤移行防止層全面にwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。その付着量は1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は13°であった。
−(v)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、PU(2)/PU(2)被覆基材(ii)の添加剤移行防止層面に、実施例5−(v)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺6mmの正三形からなる市松連続模様:図2)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜の非被覆部分からなる親水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 、静止接触角θ1 は105°であり、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位1個の面積は各々約0.156cm2 であった。
【0107】
PU(2)/PU(2)被覆基材に対して施した前記(ii)〜(v)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.51mm、質量573g/m2 のポリウレタン系樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。
このポリウレタン系樹脂被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性防汚性膜体であった。
【0108】
実施例8
−(i)基布(繊維布帛)(B)のポリエステル系樹脂による被覆−
実施例5と同一の繊維布帛:ポリエステル繊維平織織物からなる基布(B)を用いた。別に、実施例4と同一のポリエステル系エラストマー配合組成物:PEE(2)を200〜230℃のシリンダー条件でスクリュー混練し、これをT−ダイ押出成型して得られた厚さ0.20mmのPEE(2)フィルムを作製し、このフィルムを前記基布(B)の両面に熱圧着して積層し、厚さ0.50mm、質量650g/m2 のPEE(2)/PEE(2)基材を得た。
【0109】
−(ii)添加剤移行防止層の形成−
次に、PEE(2)/PEE(2)被覆基材の片面全面に、実施例2−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を、80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet18g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して添加剤移行防止層を形成した。(固形分付着量5g/m2)
−(iii)裏面塗膜層の形成−
次に、PEE(2)/PEE(2)被覆基材(ii)の裏面(非中間層形成面)全面に、実施例1−(iv)と同一のアクリル系樹脂の塗工液を80メッシュのグラビアロールを有するコーターを用いてwet20g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥して裏面塗膜層を形成した。(固形分付着量6g/m2)
【0110】
−(iv)親水性塗膜領域単位の形成−
次に、PEE(2)/PEE(2)被覆基材(iii)上の添加剤移行防止層面に、親水性塗膜領域単位を形成するための実施例6−(iv)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様で、vの市松連続模様と補対称:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。形成された親水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 であり、全面塗布換算付着量は1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は24°であった。
−(v)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、PEE(2)/PEE(2)被覆基材(ii)の添加剤移行防止層の非被覆部分上に、実施例5−(v)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様で、ivの市松連続模様と補対称:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。得られた疎水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 であり、全面塗布換算付着量は2.5g/m2 であり、その静止接触角θ1 は105°であった。
【0111】
PEE(2)/PEE(2)被覆基材に対して施した前記(ii)〜(v)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.51mm、質量663g/m2 のポリエステル系エラストマー被覆繊維複合防汚性膜体を得た。
このポリエステル系エラストマー被覆繊維複合防汚性膜体は、JIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性膜体であった。
【0112】
【表1】
Figure 0003709929
【0113】
実施例9
−(v)親水性(光触媒)塗膜単位の形成−
実施例1の(i)〜(iv)と同一工程で得たPVC(2)/PVC(1)被覆基材のPVC(2)面に形成した添加剤移行防止層全面に、a)下塗剤として、下記けい素化合物含有樹脂層塗工液を120メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた(付着量1g/m2)。次に親水性塗膜領域単位形成用下記光触媒物質含有塗工剤を120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様で、工程(vi)の市松連続模様と補対称:図1)を施したグラビアロールを有するコーターを用いwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。この親水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 であり、全面塗布換算付着量は1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は10°であった。
Figure 0003709929
※この光触媒物質含有塗工液の固形分に含有される光触媒物質量は45質量%である。
【0114】
−(vi)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記親水性塗膜領域単位を形成したPVC(2)/PVC(1)被覆基材(v)の添加剤移行防止層面に、実施例1−(vi)と同一の疎水性塗膜領域単位形成用ふっ素系樹脂塗工剤を120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布して100℃の熱風炉中で1分間乾燥し、工程(v)の親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の連続外面複合塗膜層を形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 であり、その静止接触角θ1 は105°であり、疎水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 であった。
【0115】
実施例1と同一のPVC(2)/PVC(1)被覆基材に対して施した(iii)〜(vi)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性(光触媒物質)塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.58mm、質量634g/m2 の軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。このポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合する防炎性膜体であった。
【0116】
実施例10
−(v)親水性(光触媒)塗膜単位の形成−
実施例1の(i)〜(iv)と同一工程で得たPVC(2)/PVC(1)被覆基材のPVC(2)面に形成した添加剤移行防止層面に、a)下塗剤として、実施例9−(v)と同一のけい素化合物含有樹脂層塗工液を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet14g/m2 で全面塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた(付着量1g/m2)。次に親水性塗膜領域単位を形成するための実施例9−(v)と同一の光触媒物質含有塗工剤を120メッシュのグラビアロールを有するコーターを用い下塗剤層の全面にwet14g/m2 で塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。この親水性塗膜領域単位1個の面積は約0.25cm2 であり、全面塗布換算付着量は1g/m2 であり、その静止接触角θ2 は11°であった。
【0117】
−(vi)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記親水性塗膜領域単位を形成したPVC(2)/PVC(1)被覆基材(v)の添加剤移行防止層面に、実施例1−(vi)と同一の疎水性塗膜領域単位を形成するためのふっ素系樹脂塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布して100℃の熱風炉中で1分間乾燥し、(v)の親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の連続外面複合塗膜層を形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量は2.5g/m2 であり、その静止接触角θ1 は105°であり、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位1個の面積は各々約0.25cm2 であった。
【0118】
実施例1と同一のPVC(2)/PVC(1)被覆基材に対して施した(iii)〜(vi)の工程により、親水性塗膜領域単位と親水性(光触媒物質)塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.58mm、質量634g/m2 の軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。このポリ塩化ビニル樹脂被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合する防炎性膜体であった。
【0119】
実施例11
実施例3の親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の形成工程順序を入れ替えて外面複合塗膜層を形成した。
−疎水性塗膜領域単位の形成−
実施例3(i)〜(iv)で得たPU(2)/PU(1)被覆基材(iv)の添加剤移行防止層面に、実施例1−(vi)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 全面塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて疎水性塗膜を形成した。(付着量2.5g/m2 、静止接触角θ1 105°)
【0120】
−親水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記疎水性塗膜上に、実施例1−(v)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様:図1)を施したグラビアロールを有するコーターでwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて親水性塗膜領域単位を形成した。(付着量1g/m2 、静止接触角θ2 26°)
これにより、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜の非被覆部分からなる疎水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.55mm、質量469g/m2 のポリウレタン樹脂被覆繊維複合防汚性膜体を得た。このポリウレタン系樹脂被覆繊維複合膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性膜体であった。
【0121】
実施例12
実施例4の親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の形成工程の順序を入れ替えて外面複合塗膜層を形成した。
−疎水性塗膜の形成−
実施例4(i)〜(iv)で得たPEE(2)/PE(1)被覆基材(iv)の添加剤移行防止層面に、実施例1−(vi)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 全面塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて疎水性塗膜を形成した。(付着量2.5g/m2 、静止接触角θ1 105°)
【0122】
−親水性塗膜領域単位の形成−
次に、上記疎水性塗膜上に、実施例2−(v)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺6mmの正三形からなる連続模様:図2)を施したグラビアロールを有するコーターでwet14g/m2 塗布し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させて親水性塗膜領域単位を形成した。(付着量1g/m2 、静止接触角θ2 18°)
これにより、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜の非被覆部分からなる疎水性塗膜領域単位とが面積比1:1で市松状に連続する外面複合塗膜層が形成された、厚さ0.55mm、質量560g/m2 のポリエステル系エラストマー被覆繊維複合防汚性膜体を得た。※このポリエステル系エラストマー被覆繊維複合防汚性膜体はJIS L−1091に規定の防炎試験に適合するハロゲン非含有防炎性膜体であった。
【0123】
実施例13
−(i)化粧鋼板−
i)サンドブラスト処理、ii)無機ジンクプライマー処理、iii)エポキシ樹脂下塗り(酸化チタン着色塗膜120μm)、iv)ポリウレタン樹脂中塗り(酸化チタン着色塗膜30μm)、v)ポリウレタン樹脂上塗り(酸化チタン着色塗膜30μm)が順次施された平滑な化粧鋼板(1mm厚×50cm幅×120cm長)を2枚使用した。(1枚は比較用として使用)
−(ii)化粧鋼板の下処理−
1枚の化粧鋼板の上塗り面に、実施例1−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液をスプレーコートして常温で1日間乾燥させた。(固形分付着量8g/m2)
【0124】
−(iii)親水性塗膜の形成−
次に、(ii)の塗工面に、実施例1−(v)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を全面にスプレーコートして常温で3日間乾燥させた。(固形分付着量1.5g/m2 :静止接触角θ2 26°)
−(iv)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、(iii)の塗工面に、実施例1−(vi)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、1辺5mmの正方形の穴開きを市松状に形成したマスキング板を用いて、市松模様にスプレーコートして常温で3日間乾燥させた。(固形分付着量3g/m2 :静止接触角θ2 105°)これにより、化粧鋼板の表面には、5mm角の疎水性塗膜領域単位と、親水性塗膜の非被覆部分からなる5mm角の親水性塗膜領域単位がそれぞれ上下左右方向に互に隣接する連続塗膜が形成された。この連続塗膜における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の面積比は50:50であった。試験結果を表2に示す。
【0125】
実施例14
−(i)マーキングフィルム−
i)着色半硬質塩化ビニル樹脂フィルム層/粘着剤層/離型紙の3層構造からなる市販のマーキングフィルム(1m×30m)を用いた。(商標:スコッチカル:赤:3M(株))
−(ii)マーキングフィルムの下処理−
マーキングフィルムの上塗り面に、実施例2−(iii)と同一のけい素化合物含有アクリル系樹脂の塗工液を、80メッシュのグラビアロールを有するコーターでwet18g/m2 塗布し、80℃の熱風炉中で1分間乾燥させた。(固形分付着量5g/m2)
【0126】
−(iii)親水性塗膜の形成−
次に、(ii)の塗工面に、実施例2−(v)と同一のオルガノシリケートの加水分解物からなる塗工剤を120メッシュのグラビアロールを有するコーターで全面にwet18g/m2 塗布し、80℃の熱風炉中で1分間乾燥させて親水性塗膜(固形分付着量1g/m2 、静止接触角θ2 18°)を形成した。
【0127】
−(iv)疎水性塗膜領域単位の形成−
次に、(iii)の塗工面に、実施例1−(vi)と同一のふっ素系樹脂からなる塗工剤を、120メッシュの市松彫刻(一辺5mmの正方形からなる市松連続模様)を施したグラビアロールを有するコーターでwet7g/m2 塗布して、80℃の熱風炉中で1分間乾燥し、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜の非被覆部分からなる親水性塗膜領域単位とを同時に形成した。疎水性塗膜領域単位の全面塗布換算付着量2.5g/m2 、静止接触角θ1 は105°、疎水性塗膜単位と親水性塗膜単位1個の面積は各々約0.25cm2 であった。これによりマーキングフィルムの表面には、5mm角の親水性塗膜領域単位と5mm角の疎水性塗膜領域単位がそれぞれ上下左右方向に隣接する連続外面複合塗膜層が形成された。この連続外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の面積比は50:50であった。試験結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
Figure 0003709929
【0129】
実施例1〜12の効果
実施例1〜12において、熱可塑性樹脂被覆繊維複合膜体の表面部分に、面積0.04〜1.0cm2 の疎水性塗膜領域単位と、面積0.04〜1.0cm2 の親水性塗膜領域単位とが上下左右方向に交互隣接した連続外面複合塗膜層が形成された。実施例1〜12の膜体を屋外展張(試験I)して雨筋汚れの発生状況を12ヶ月間観察した。その結果、全ての膜体表面において雨筋汚れは発生していなかった。また同時に煤塵付着汚れも極めて少ない状態であり、膜体の外観は展張初期の美観状態を良好に保持していたことから、これらの膜体は全て防汚性機能に優れているものと判断できる。本発明の防汚性膜体は、従来のテント膜体に発生する汚れの精緻な観察の結果、膜体表面に、雨粒(水滴の撥水粒)サイズ程度の面積の疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを市松状に交互隣接して設けることによって雨筋汚れの問題が解決されたのである。すなわち雨水が疎水性塗膜領域単位を通過する時には撥水粒化し、次に親水性塗膜領域単位を通過する時には濡れ(親水性)により水滴粒が表面張力を失う現象を雨粒サイズの観点で雨の流滴に応用したもので、この時、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位との静止接触角差(水との接触角)を40〜135°の範囲とすることにより達成された。而して雨水が膜体表面を通過する際に「撥水と濡れ」の相反する繰り返し現象を雨粒サイズレベルで発現させることによって、雨筋汚れの発生を効果的に防止することを可能としたのである。また、特に親水性塗膜領域単位中に光触媒物質を含有する実施例2,4,5,7,12、及び親水性塗膜領域単位が光触媒物質で形成された実施例9,10では、更に親水性が高められると同時に、光触媒物質の分解作用によって煤塵汚れと雨筋汚れに対する抑制効果が実施例中最高レベルの膜体となった。
【0130】
また、本発明の防汚性膜体のもうひとつの特長として、実施例1〜12の膜体は全て熱融着による縫製(ラップ接合)を可能とし、特にテント膜体の縫製に汎用的である高周波融着(試験II)に対しても有効であった。従来の光触媒物質塗工膜体やオルガノシリケート塗工膜体では、その防汚効果自体には優れるが、膜体表面に無機質塗膜を形成することによって膜体界面が不融化し、このため熱融着縫製が不能であるという問題を生じていた。このため、これらの膜体では縫製部の重ね合わせ部に存在する無機質塗膜を削り取って除去する面倒な作業を余儀なくされていたのである。これら従来の防汚性膜体に対して本発明の防汚性膜体は、面積0.04〜1.0cm2 の疎水性塗膜領域単位と、面積0.04〜1.0cm2 の親水性塗膜領域単位とが上下左右に交互隣接した市松状連続塗膜からなる特別な表面処理を有することによって熱融着性を改善可能としたのである。これは特に疎水性塗膜領域単位部分を構成する、ふっ素系樹脂と、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の存在が、熱融着性の改善に大きく関与しているのである。また、実施例1〜8の膜体では、膜体裏面にアクリル系樹脂、ふっ素系樹脂と、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体などから選ばれた1種以上からなる裏面塗膜層を設けることによって、ラップ接合において膜体表面の疎水性塗膜領域単位部分との良好な熱融着性を改善し、その結果、膜体接合部に良好な接着性と耐熱クリープ性とを得ることを可能とした。この熱融着性は、疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位との面積比が35:65〜65:35であり、特に50:50近傍において、雨筋汚れ防止効果と熱融着性とが最もバランス良く両立可能であった。
【0131】
また、実施例3,4,6,7,8,11,12の非塩ビ系樹脂被覆膜体において、特に窒素含有化合物(メラミン・シアヌレート化合物)と、りん系化合物(ポリリン酸アンモニウム化合物)を配合したことによって、テント膜材用途に必要な防炎性(JIS L−1091:A−2法区分3)を付与することを可能とした。また、実施例1〜12の膜体を構成する熱可塑性樹脂層中には、特に防カビ剤とビタミンE化合物を含有することによって、酸化劣化とカビの発生とを効果的に抑制することができ、これらの効果により膜体の耐久性を高めると同時に、美麗外観の保持にも非常に効果的であった。従って本発明の膜体は上記(I)〜(III)の試験結果より、テント膜体に必要不可欠な縫製性を有すると同時に、テント膜体に求められている高度の汚れ防止効果を同時に得ることが明らかである。従って、この雨粒(水滴の撥水粒)サイズ程度の面積の疎水性塗膜領域単位と親水性塗膜領域単位とを市松状に交互隣接する連続塗膜の技術は、本発明において主目的とするテント膜体以外の用途、例えば、物品(タイル、看板)、建築物(屋根、外壁)、建造物(プラント設備、モニュメント)、車両(バス、電車)などの外面塗装に対しても応用可能な極めて有用な技術である。
【0132】
実施例13,14の効果
本発明の表面塗膜層を設けた化粧鋼板(実施例13)と、本発明の表面塗膜層を有していない化粧鋼板1枚を用いて家型を作製し、これを1年間屋外曝露した。家型は化粧鋼板の長さ方向30cmの部分を幅方向と平行にして135°に折り曲げたものを2枚(うち1枚は未処理)つき合わせて固定し、屋根部30cmの傾斜が45°、壁部90cmが90°となるようにし、表面塗膜面を外側に向けたものである。また、本発明の表面塗膜層を設けたマーキングフィルム(実施例14)を大型トラックのアルミボディ側面に1m×2.5mサイズで貼り付け、その上に本発明の表面塗膜層を有していない白のマーキングフィルムから切り抜いた「HIRAOKA」のゴシック文字(アルファベット1文字25cm×25cm)を貼り付けて1年間実装した。これら実施例13,14の応用例の3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の観察結果は、何れも雨筋汚れの発生は認められず、良好な防汚性を示していた。これに対して、後に比較例5,6において示すように、本発明の表面塗膜層を有していない化粧鋼板(比較例5)と白のマーキングフィルム(比較例6)から切り抜いた「HIRAOKA」のゴシック文字においては、3ヶ月後の観察時点で既に雨筋汚れを発生していた。
【0133】
比較例1
実施例1の膜体から親水性塗膜領域単位を省き、表面塗膜層を疎水性塗膜のみで形成した。これ以外は実施例1と同一とした。この膜体は、ふっ素系樹脂塗料被覆による従来の防汚性膜体であり、初期的に良好な防汚性を示すものであったが、6〜12ヶ月経過後には膜体表面に雨筋汚れを発生した。試験結果を表3に示す。
【0134】
比較例2
実施例2の膜体から疎水性塗膜領域単位を省き、表面塗膜層を親水性塗膜のみで形成した。これ以外は実施例2と同一とした。この膜体はオルガノシリケート塗料被覆による従来の防汚性膜体であり、長期的に良好な防汚性を示すものであったが、テント膜体などに不可欠な熱融着縫製が全く不能であるため、縫製部の表面塗膜を削り取るなど除去作業の必要があった。試験結果を表3に示す。
【0135】
比較例3
実施例5の膜体において、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の面積をそれぞれ4cm2 の正方形とした。これ以外は実施例5と同一とした。これにより、疎水性塗膜領域単位では比較例1で観察された傾向がそのまま観られ、また、親水性塗膜領域単位においては比較例2で観察された傾向がそのまま観られた。すなわち疎水性塗膜領域単位に集中して雨筋汚れが発生し、親水性塗膜領域単位では比較的防汚性を保持していた。しかし比較例3の膜体では、熱融着縫製時、熱融着縫製が全く不能である4cm2 の大きい単位が市松状に配列することによって縫製部が不安定なものとなり、また、接合部分の耐熱クリープ性にも劣るものであり、従って実用性に欠けるものであった。試験結果を表3に示す。
【0136】
比較例4
実施例7の膜体において、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の形状をそれぞれ5mm幅のタテ帯とし、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位とを交互に配置した。これ以外は実施例7と同一とした。比較例4も膜体は熱融着縫製が可能で、耐熱クリープ性も十分なものであったが、親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位の形状をそれぞれ5mm幅のタテ帯状としたことによって、雨粒の流滴が特に親水性塗膜単位のタテ帯側に集中することによって、返って汚れ度合いを増し、その結果、5mm幅のタテ帯がそのまま雨筋汚れとなった。試験結果を表3に示す。
【0137】
比較例5
実施例9の防汚性化粧鋼板において、その外面複合塗膜層を形成しなかったもの。試験結果を表3に示す。
【0138】
比較例6
実施例10の防汚性マーキングフィルムにおいて、その外面複合塗膜層を形成しなかったもの。試験結果を表3に示す。
【0139】
【表3】
Figure 0003709929
【0140】
【発明の効果】
上記、実施例、及び比較例から明らかな様に、本発明で得られる防汚性膜体は、熱可塑性樹脂被覆シート状基材の表面に、特定の疎水性塗膜領域単位と、特定の親水性塗膜領域単位とが上下左右方向に交互隣接した連続複合塗膜層からなる特別な表面処理層を設けることによって、長期に渡り膜体表面の雨筋汚れの発生を防ぐことができ、極めて美観持続性の高い膜体である。また、同時に縫製時の熱融着性も有することで、とりわけカラフルさと美的外観が要求されるテント膜体、テントハウス、日除けテントなどに好適に用いることができる。また、基布を被覆する熱可塑性樹脂には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂のみならず、他の熱可塑性樹脂においても適用が可能であるため、その利用範囲が広いものである。さらに本発明の塗膜形成技術は、これらテント膜体のみならず、物品、建築物、建造物、車両などの外面塗装に対しても応用可能な極めて有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置の一例を示す説明図。
【図2】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置の他の一例を示す説明図。
【図3】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置のさらに他の一例を示す説明図。
【図4】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置のさらに他の一例を示す説明図。
【図5】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置のさらに他の一例を示す説明図。
【図6】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置のさらに他の一例を示す説明図。
【図7】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置のさらに他の一例を示す説明図。
【図8】本発明の防汚性膜体の外面複合塗膜層における親水性塗膜領域単位と疎水性塗膜領域単位との配置のさらに他の一例を示す説明図。
【図9】図9−(A)〜(C)の各々は、本発明の防汚性膜体の積層構造の一例を示す断面説明図。
【図10】図10−(A)〜(C)の各々は、本発明の防汚性膜体の積層構造の他の例を示す断面説明図。
【図11】図11−(A)〜(C)の各々は、本発明の防汚性膜体の積層構造の別の例を示す断面説明図。
【図12】図12−(A)及び(B)の各々は、本発明の防汚性膜体の積層構造の更に他の例を示す断面説明図。
【符号の説明】
1…外面複合塗膜層
2…親水性塗膜領域単位
2a…親水性塗膜
3…疎水性塗膜領域単位
3a…疎水性塗膜
3b…添加物移行防止性を有する疎水性塗膜
4…シート状基材

Claims (26)

  1. 1層以上の繊維布帛からなる基布と、この基布の少なくとも一面の全面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂からなる被覆層とを含むシート状基材と、このシート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層上に形成された外面複合塗膜層とを有し、
    前記外面複合塗膜層が、(1)疎水性高分子材料を主成分として含み、外面に露出している複数個の疎水性塗膜領域単位と、(2)親水性高分子材料を主成分として含み、外面に露出している複数個の親水性塗膜領域単位とを有し、
    前記疎水性塗膜領域単位(1)と前記親水性塗膜領域単位(2)とが、それぞれ0.04〜1.0cm2 の面積を有し、かつ、これら2種の単位(1)及び(2)が、互に交差する二方向に、互に隣接して交互に配置されている、
    ことを特徴とする、防汚性膜体。
  2. 前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む疎水性塗膜が形成され、この疎水性塗膜上に前記複数個の親水性塗膜領域単位が形成され、前記疎水性塗膜の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成している、請求項1に記載の防汚性膜体。
  3. 前記外面複合塗膜において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む親水性塗膜が形成され、この親水性塗膜上に、前記複数個の疎水性塗膜領域単位が形成され、前記親水性塗膜の、前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成している、請求項1に記載の防汚性膜体。
  4. 前記疎水性塗膜領域単位の水に対する静止接触角θ1 と、前記親水性塗膜領域単位の水に対する静止接触角θ2 との差(Δθ=θ1 −θ2 )が、40〜135度である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  5. 前記外面複合塗膜層に占める前記疎水性塗膜領域単位と前記親水性塗膜領域単位との面積比が35:65〜65:35である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  6. 前記疎水性塗膜領域単位を形成する疎水性高分子材料が、ふっ素系樹脂、またはふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  7. 前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、オルガノシリケート化合物、又はその低縮合物の加水分解物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  8. 前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、光触媒物質を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  9. 前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、オルガノシリケート化合物又はその低縮合物と、光触媒物質とを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  10. 前記親水性塗膜領域単位を形成する親水性高分子材料が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、及びシリカから選ばれた少なくとも1種のけい素化合物をさらに含有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  11. 前記光触媒物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi23 )、酸化鉄(Fe23 )、から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  12. 前記光触媒物質が、無機系多孔質微粒子に担持されている、請求項8〜11のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  13. 前記被覆層用熱可塑性樹脂が、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系共重合体樹脂、エチレン系共重合体樹脂[エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂]、プロピレン系樹脂から選ばれた少なくとも1種以上を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  14. 前記シート状基材において、前記被覆層が、単層構造体、又は複層構造体をなしている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  15. 前記シート状基材の他の面(裏面)上に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、ふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体の何れか1種による裏面塗膜層が形成されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  16. 前記シート状基材の被覆層が前記熱可塑性樹脂に混合された添加剤を含み、この被覆層と、前記外面複合塗膜層との間に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、又はふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体による添加剤移行防止層が形成されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  17. 前記添加剤移行防止層上に、前記複数個の親水性塗膜領域単位が形成され、前記添加剤移行防止層の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分が、前記複数値の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成する、請求項16に記載の防汚性膜体。
  18. 前記添加剤移行防止層が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカから選ばれた少なくとも1種のけい素化合物をさらに含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  19. 前記シート状基材の熱可塑性樹脂が、高周波融着、超音波、及び熱融着によって接合可能である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  20. 前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位、及び親水性塗膜領域単位の形状が、それぞれ正方形、長方形、三角形、矢がすり模様状、六角形と蝶形六角形との組み合わせ、八角形と蝶形八角形との組み合わせ、及びこれらの歪形状から選ばれる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の防汚性膜体。
  21. 1層以上の繊維布帛を含むシート状基布の少なくとも一面の全面上に熱可塑性樹脂を含む被覆層が形成されているシート状基材を製造し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層上に、外面複合塗膜層を形成する工程を含み、
    前記外面複合塗膜層形成工程において、疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液により、外面に露出している複数個の疎水性塗膜領域単位を形成し、また親水性高分子材料を主成分として含む塗布液により外面に露出している複数個の親水性塗膜領域単位を形成し、このとき、前記疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位のそれぞれの面積を0.04〜1.0cm2 とし、かつ、これら2種の単位が互に交差する二方向に、互に隣接して交互に配置されるように形成する、ことを特徴とする防汚性膜体の製造方法。
  22. 前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位の形成に際し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液を塗布して、疎水性塗膜を形成し、この疎水性塗膜上に、前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成し、前記疎水性塗膜の前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成する、請求項21に記載の防汚性膜体の製造方法。
  23. 前記外面複合塗膜層の疎水性塗膜領域単位及び親水性塗膜領域単位の形成に際し、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層の全面上に、親水性高分子材料を主成分として含む塗布液を塗布して、親水性塗膜を形成し、この親水性塗膜上に、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位を形成し、前記親水性塗膜の前記疎水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、前記複数個の外面露出親水性塗膜領域単位を形成する、請求項21に記載の防汚性膜体の製造方法。
  24. 前記外面複合塗膜層の形成工程において、前記シート状基材の前記熱可塑性樹脂被覆層面上に、前記疎水性高分子材料を主成分として含む塗布液と、前記親水性高分子材料を主成分として含む塗布液とを、前記複数個の外面露出疎水性塗膜領域単位と外面露出親水性塗膜領域単位とを形成するように、同時に、または任意の順序に塗布する、請求項21に記載の防汚性膜体の製造方法。
  25. 前記シート状基材の前記被覆層用熱可塑性樹脂が添加剤を含み、この被覆層上に、アクリル系樹脂、ふっ素系樹脂、又はふっ素系樹脂とアクリル系樹脂との混成体を含む添加剤移行防止層を形成する工程をさらに含み、この添加剤移行防止層上に前記外面複合塗膜を形成する、請求項21〜24のいずれか1項に記載の防汚性膜体の製造方法。
  26. 前記外面複合塗膜層の形成に当り、前記添加剤移行防止層上に、前記複数個の親水性塗膜領域単位を形成し、前記添加剤移行防止層の、前記親水性塗膜領域単位により被覆されていない部分をもって、疎水性塗膜領域単位とする、請求項25に記載の防汚性膜体の製造方法。
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