JP7241403B2 - 産業用シート材 - Google Patents

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本発明は大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどの膜構造物を始め、建築養生シート、フレキシブルコンテナバッグなど、及びこれらに用いられる産業用シート材のターポリン、トラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなど、及びこれらに用いられる産業用シート材の帆布に関する。より詳しくは、ターポリン及び帆布に設けられた防汚層が屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を有し、防汚層に亀裂などの劣化を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく防汚性の長期持続を可能とする産業用シート材の発明に関する。
大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、スタジアム日除けテントなどの膜構造物を始め、建築養生シート、フレキシブルコンテナバッグなど、及びこれらに用いられるターポリン素材、また、トラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなど、及びこれらに用いられる帆布素材には、ポリエステル繊維などの織物の表面に軟質塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂層を被覆してなる産業用シート材(ターポリン、帆布)が使用され、これらは厚さ0.3~1.5mm、幅0.9~2.5m、長さ25~50mの規格で流通している。特に大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、スタジアム日除けテントなどの膜構造物の外観には高度の美観の持続性が求められているため、これらの素材となるターポリンに防汚性の付帯が不可欠となっている。
このような軟質塩化ビニル樹脂製を中心とする産業用シート材に付帯させる防汚層として、本出願人は特許文献1(段落〔0028〕-〔0035〕に、1)酸化チタン、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化鉄から選ばれた1種以上の光触媒物質含有層、2)アクリル系樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上による塗膜層、3)アクリル系樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上と、シリカ微粒子とを含む塗膜層、4)最外層に少なくともフッ素系樹脂層が配置されている1層以上のフィルム層、などを例示した。これらの防汚層の欠点を挙げれば、1)の光触媒物質含有層は光触媒活性に耐性を有する無機成分主体の薄膜として形成されるため概ね堅く、伸縮性の無い性状となる。この性状の薄膜がフレキシブル性に富んだ産業用シート材上に形成された場合、産業用シート材が折曲やはためきのストレスを受け産業用シート材が変形する際、伸縮性の無い光触媒物質含有層は産業用シート材の変形に追従することが出来ず、光触媒物質含有層にマイクロクラックを生じ、マイクロクラック生成によって産業用シート材の変形に追従する結果となる。このようなマイクロクラックは光触媒物質含有層の防汚性能を劣化させる傾向がある。また2)及び3)のアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂/フッ素系樹脂、による塗膜層は樹脂の硬度が高いほど耐候性、耐摩耗性に優れることを理由に、塗膜層の硬化成分として例えばイソシアネート化合物を用いることを特許文献1(段落〔0031〕)に記載している。確かに塗膜層の硬度が高いほど耐候性、耐摩耗性に優れた防汚層とすることを可能とするが、塗膜層の硬度を増すほど塗膜層の伸縮性を失い、産業用シート材が折曲やはためきのストレスを受け産業用シート材が変形する際、伸縮性の無い塗膜層は産業用シート材の変形に追従することが出来ず、塗膜層にクラックを生じ、クラック生成によって産業用シート材の変形に追従する結果となる。このようなクラックは塗膜層の防汚性能を低下させる傾向がある。また4)のフッ素系フィルム層による防汚層は、産業用シート材が折曲やはためきのストレスを受け産業用シート材が変形する際、フッ素系フィルム層は産業用シート材の変形に追従して延伸することで防汚層にクラックを生じることは少ないが、延伸フッ素系フィルム層は元の状態に復元せず弛緩状態のままとなるため、産業用シート材の表面には多数の皺痕を残して外観的問題となることがある。これらの防汚層は何れも折り曲げやはためきで産業用シート材が変形によるダメージを受け、防汚性能や外観を悪くする欠点を有しており、特に塗膜による防汚層では、長期間の使用でクラックが発生し、防汚性能が多かれ少なかれ低下する懸念があるため、折り曲げやはためきを過度に受けても防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することのない、美観を長期持続できる産業用シート材が望まれていた。
特開2005-169655号公報
本発明は、ターポリン及び帆布に設けられた防汚層が屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を有し、防汚層に亀裂などの劣化を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、また防汚性を長期持続可能な産業用シート材の提供を課題とする。この課題解決によれば防汚性及び耐摩耗性が向上し、美観を長期持続可能な、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、スタジアム日除けテントなどの膜構造物を始め、建築養生シート、フレキシブルコンテナバッグなど、及びさらにトラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなどの提供を可能とする。
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、織物の表面及び裏面に熱可塑性樹脂組成物による被覆層を設け、さらに表面の被覆層に防汚層を形成してなる産業用シート材において、防汚層にセルロース系ナノ物質を含有させることによって、得られる産業用シート材の防汚層が屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を有し、防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、防汚性の長期持続を可能とすることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の産業用シート材は、織物の表面及び裏面に熱可塑性樹脂組成物による被覆層が設けられ、さらに表面の被覆層に防汚層が形成された産業用シート材であって、前記防汚層の主構成要素が有機重合体、または有機/無機縮合体であり、かつ、セルロースナノファイバー、変性セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、及び変性セルロースナノクリスタル、から選ばれた1種以上のセルロース系物質を含有していることが好ましい。これによって得られる産業用シート材の防汚層が屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を増強し、防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じることなくなり、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなくなることで、その結果、防汚性の長期持続を可能とする。
本発明の産業用シート材は、1)前記変性セルロースナノファイバー、及び2)前記変性セルロースナノクリスタルが共に、カルボキシメチル化、酸化変性、エステル化(ホウ酸エステル化、リン酸エステル化、ケイ酸エステル化、から選ばれた1種以上)、イソシアネート化、シランカップリング剤処理(アミノシラン変性、ビニルシラン変性、エポキシシラン変性、メタクリルシラン変性、アクリルシラン変性、クロルシラン変性、メルカプトシラン変性、イソシアヌレートシラン変性、イソシアネートシラン変性、から選ばれた1種以上)、から選ばれた1種以上の変性がなされたセルロース物質であることが好ましい。特にこれらの変性体の使用によって、産業用シート材の防汚層を構成する有機重合体との親和性、複合性を強固なものに改善し、また産業用シート材の防汚層を構成する有機/無機縮合体の分子構造の一部にこれらの変性体が何らかの状態で取り込まれることによって、屈曲と摩耗の負荷に対する防汚層の抵抗耐性を向上させ、防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、防汚性の更なる長期持続を可能とする。
本発明の産業用シート材は、前記有機重合体が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、から選ばれた1種以上であることが好ましい。これらの樹脂を防汚層の主体成分によって防汚層の屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を発現させ、防汚性の長期持続を可能とする。
本発明の産業用シート材は、前記有機重合体が、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物を担持する無機系多孔質微粒子を含有することが好ましい。これらの光触媒性金属酸化物を防汚塗膜に含有することによって、光触媒活性による有機物(煤塵、タール、手垢、黴、藻など)の分解を促し、降雨によるセルフクリーニング防汚性が発現でき、特にこのような無機系多孔質微粒子(光触媒性金属酸化物を担持)を防汚層に含有することによって、光触媒性金属酸化物の光触媒効果による防汚層(有機重合体)への攻撃を無機系多孔質微粒子でブロックさせる。
本発明の産業用シート材は、前記有機/無機縮合体が、オルガノシリケート化合物、またはシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合体であることが好ましい。これらの縮合体を防汚層の主体成分によって防汚層の摩耗負荷に対する抵抗耐性を発現させ、防汚性の長期持続を可能とする。
本発明の産業用シート材は、前記有機/無機縮合体が、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物を含有することが好ましい。これらの光触媒性金属酸化物を防汚層に含有することによって、光触媒活性による有機物(煤塵、タール、手垢、黴、藻など)の分解を促し、降雨によるセルフクリーニング防汚性が発現でき、特に防汚層を形成する有機/無機縮合体の存在により、光触媒性金属酸化物の光触媒効果によるシート本体へのダメージがブロックされる。
本発明の産業用シート材は、前記織物が、1)経糸及び緯糸とする織物、または2)経糸及び左上/右上バイアス糸とする三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上/右上バイアス糸とする四軸織物、の何れかであることが好ましい。特に三軸織物、四軸織物などを使用すれば、糸条同士の交差が複雑となり、多軸方向に拡がるネットワークによって産業用シート材に加えられる屈曲、はためきなどの外力ストレスの拡散性が増し、ストレスを広域に分散して受けることで防汚層に及ぼすダメージを緩和し、同時に引裂などの外力に対する抵抗力を多方向で向上させる。
本発明の産業用シート材は、前記織物が、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上の芳香族複素環高分子繊維からなる糸条を含んでいることが好ましい。これによって得られる産業用シート材の引張破壊強度、引裂(切裂)強度、防爆耐圧、耐熱性、及び耐火性などを飛躍的に向上させることができる。
本発明により、ターポリン及び帆布に設けられた防汚層が屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を有し、防汚層に亀裂などの劣化を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、また防汚性を長期持続できる産業用シート材の提供を可能とするので、これらの産業用シート材は、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、スタジアム日除けテントなどの膜構造物を始め、建築養生シート、フレキシブルコンテナバッグなど、及びさらにトラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなど用途に広く活用できる。
本発明の産業用シート材は、織物の表面及び裏面に熱可塑性樹脂組成物による被覆層が設けられ、さらに表面の被覆層に防汚層が形成された産業用シート材であって、防汚層の主構成要素が有機重合体、または有機/無機縮合体であり、かつ、セルロースナノファイバー、変性セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、及び変性セルロースナノクリスタル、から選ばれた1種以上のセルロース系物質を含有する態様で、さらに織物が、1)経糸及び緯糸とする織物、または2)経糸及び左上/右上バイアス糸とする三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上/右上バイアス糸とする四軸織物、の何れかの態様であって、またさらにこれらの織物が芳香族複素環高分子繊維からなる糸条を含んだ態様である。
本発明の産業用シート材に用いる織物は、平織物(経/緯2軸織物、経/左上/右上バイアス3軸織物、経/緯/左上/右上バイアス4軸織物)、斜子織物(2×2、3×3、4×4などの正則斜子織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則斜子織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)、及び変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物などの織物が使用できる。なかでも特に1)経糸及び緯糸とする織物、または2)経糸及び左上/右上バイアス糸とする三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上/右上バイアス糸とする四軸織物、の何れかであることが好ましい。特に三軸織物、四軸織物などを使用すれば、糸条同士の交差が複雑となり、多方向に拡がるネットワークによってストレスの拡散性が増し、ストレスを広域に分散して受けることで更に引裂などの外力に対する抵抗力が飛躍的に優れたものとなる。産業用シート材に用いる織物の目付量は100~500g/mが適している。織物の空隙率は0~25%、産業用シート材がターポリンの場合は空隙率5~25%、帆布の場合は空隙率0~5%が好ましい。これらの織物には精練、漂白、染色、柔軟化、撥水、防黴、防炎、カレンダー、などの公知の染色整理加工を施したものを使用することもできる。
織物を構成する糸条は、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維、及びこれらの2種以上から成る混合繊維など、何れの繊維も使用できるが、汎用的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリナフタレンテレフタレート:PNTなど)繊維、ナイロン繊維、及び、これらの混用繊維(混撚・合撚)などの合成繊維による、1)マルチフィラメント糸条、2)短繊維紡績糸条、3)及びカバリング糸条、から選ばれた1種以上の糸条が使用できる。マルチフィラメント糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡原糸を3~5倍に延伸した長繊維紡糸束(50~500本のフィラメント束)のまま無撚、または1~200回/m撚りを掛けた、繊度125~2000デニール(139~2222dtex)の糸条が使用できる。これらのマルチフィラメント糸条には、タスラン糸条、ウーリー糸条などの嵩高加工糸条を包含する。短繊維紡績糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡糸束(延伸していてもよい)を3.8~5.8mm長程度に切断したステープルを開繊練条したスライバを引き伸ばしたロービング(粗糸)とし、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績したものである。撚糸は単糸または単糸2本を引き揃えてS(右)撚りもしくはZ(左)撚りしたもの、また単糸または単糸2本を引き揃えて下撚りした加撚糸を2本引き揃えて上撚りを掛けてなる双糸が挙げられる。これらの撚糸の撚り回数は200~2000回/m程度である。またカバリング糸条は、上記マルチフィラメント糸束の外周に上記短繊維を巻き付けたカバリング糸条が挙げられ、本願においては芯鞘複合糸条もカバリング糸条に包含される。
特に本発明の産業用シート材の引張破壊強度、引裂(切裂)強度、防爆耐圧、耐熱性、及び耐火性などを向上させるために、フッ素樹脂繊維、全芳香族ポリエステル繊維、全芳香族ポリアミド繊維などのマルチフィラメント糸条を主体とする織物設計、あるいは上記汎用合成繊維による糸条との併用(リップストップ構造の挿入)が適している。また国土交通大臣認定の不燃材料(テント構造物用不燃膜材)の用途向けには、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維、及び、これらの混用繊維(混撚・合撚)などの無機マルチフィラメント糸条を主体とする織物が適している。そして特に引張破壊強度、引裂(切裂)強度、防爆耐圧、耐熱性、及び耐火性などを飛躍的に向上させるために、織物が、ポリベンゾイミダゾール(PBI)系、ポリベンゾオキサゾール(PBO)系、ポリベンゾチアゾール(PBT)系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上の芳香族複素環高分子繊維からなる糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、カバリング糸条)を主体に含む織物設計、あるいは上記汎用繊維による糸条との併用(リップストップ構造の挿入)が適している。リップストップ構造とは例えば、ポリエステル繊維糸条を経糸条及び緯糸条とする平織物において、経糸条、及び緯糸条の任意の位置に芳香族複素環高分子繊維からなる糸条を規則的、またはランダムに配列したもので、外観上、格子柄(または変則格子柄)を形成する織物、三軸織物、四軸織物が適している。具体的に経糸群及び緯糸群の糸条配列1,2,3,4,5・・・n(nは整数)において、10の倍数(10,20,30・・・)本目毎に、芳香族複素環高分子繊維糸条が挿入され、格子模様を形成するような態様である。また四軸織物において、経糸、緯糸、左上バイアス糸、右上バイアス糸の何れか、または全部を全て香族複素環高分子繊維糸条とすることもでき、具体的に経糸と緯糸を香族複素環高分子繊維糸条、左上バイアス糸と右上バイアス糸を他の繊維糸条とする構成、または左上バイアス糸と右上バイアス糸を他の香族複素環高分子繊維糸条、経糸と緯糸を他の繊維糸条とする構成である。
また本発明の産業用シート材を縫製パーツとするテント膜構造物が使用される際、膜構造物の接合部断面からの雨水の浸透抑止効果(吸水防止性)を得るために、織物全体にパーフルオロアルキル基含有共重合体樹脂が表面付着し、さらに含浸付着していることが好ましい。パーフルオロアルキル基含有共重合体樹脂の付着固形分量は、目付量150~250g/mの織物1m単位当たり0.1~10g/m、特に0.3~3g/mである。パーフルオロアルキル基含有共重合体樹脂としては、炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、または炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下のパーフルオロアルケニル基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いてなる撥水性共重合体である。これらは具体的に、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/ またはメタクリレートとこれらと共重合可能な他のモノマー(例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、マレイン酸アルキルエステル、フタル酸アルキルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、スチレンなど)と重合して得られる撥水性共重合体が挙げられる。これらの撥水性共重合体はエマルジョンの形態で、水で希釈可能であることが織物に対する処理の取り扱い性に優れ好ましい。これら撥水性共重合体は、共重合成分が特に織物と強固に密着し、120~180℃の熱キュアーでパーフルオロアルキル基が配向整列することで、表面エネルギーを低下させ、より撥水性が増大したものとなる。必要に応じてパーフルオロアルキル基含有共重合体樹脂の1~25質量%を、メチルクロロシラン、メチルポリシロキサン樹脂、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサンなどのシリコーン系撥水剤、または、炭素数20~48で、融点が50~70℃のn-パラフィンワックスなどのパラフィン系撥水剤と置換使用することもできる。
本発明の産業用シート材において、織物の表裏に形成される熱可塑性樹脂組成物による被覆層は、公知の熱可塑性樹脂、エラストマーなどを主体とする組成物から形成されたものであり、これらは例えば、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤配合)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂など、ショアA硬度35~85程度の熱可塑性樹脂、またはエラストマーであり、これらにはウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、SBR、EPDM、EPMなどを含み、ゴム弾性を強化させたものでもよい。エラストマーとは2種以上のモノマーからなるブロック共重合体樹脂で、個々のブロック成分がハードセグメント、及びソフトセグメントを構成する樹脂である。これらの熱可塑性樹脂、エラストマーのうち、特に高周波溶着性を有する軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素含有共重合体樹脂などを高周波溶着性付与成分として被覆層に対し50質量%以上含有することが好ましい。本発明の産業用シート材の被覆層には、安定剤、フィラー、着色剤、顔料、メタリック顔料、蓄光顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意に組み合わせ用いることができる。
本発明の産業用シート材で特にターポリンを構成する表裏の被覆層は、熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂/可塑剤など)を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延した厚さが80~800μm、特に150~300μmフィルム(シート)が使用できる。また織物に対する表裏の被覆層の形成は、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用い、ラミネーターの1回通しまたは2回通しの工程により熱溶融圧着することができる。本発明のターポリン(産業用シート材)は、カレンダー成型して得たフィルムをラミネーターにより目開き織物の両面に熱圧着する製造方法が適し、厚さ0.4~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲の織物が、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、日除けテントなどの膜構造物を始め、建築養生シート、フレキシブルコンテナバッグなどの用途に適している。
本発明の産業用シート材(帆布)を構成する表裏の被覆層は、溶液状の熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂/可塑剤などによるペースト)を織物の表裏にナイフコート、クリアランスコート、グラビアコートなどのコーティング法により塗工し、これを熱乾燥、または加熱ゲル化によって、厚さ50~300μm、特に80~200μmに形成したもの、または溶液状の熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂ペースト)を充填した液浴中に織物を浸漬し、これを引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、直後に熱乾燥、または加熱ゲル化させるディッピング法によって、厚さ50~300μm、特に80~200μmに形成したものである。本発明の帆布(産業用シート材)は、塩化ビニル樹脂/可塑剤などによるペーストによるディッピング法が適し、厚さ0.3~0.8mm、質量400~1000g/mの範囲が、トラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなどの用途に適している。
本発明の産業用シート材(ターポリン、帆布)の表面側となる被覆層には、主構成要素が有機重合体である防汚層、または有機/無機縮合体である防汚層が形成されていることが好ましく、特に塗膜形成された防汚層が好ましい。有機重合体は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、から選ばれた1種以上であり、特にこれらの有機重合体に、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物を担持する無機系多孔質微粒子を含有することで光触媒活性によるセルフクリーニング防汚性が発現できる。このような無機系多孔質微粒子(光触媒性金属酸化物を担持)は、光触媒性金属酸化物の光触媒効果による、防汚層を形成する有機重合体への分解攻撃を軽減させる。また有機/無機縮合体が、オルガノシリケート化合物、またはシラノール基含有有機シラン化合物の縮合体であり、特にこれらの有機/無機縮合体に、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物を含有することで光触媒活性によるセルフクリーニング防汚性が発現できる。セルフクリーニング防汚性とは光触媒活性で分解された汚物(煤塵、タール)、黴、藻などの有機物残滓が降雨で洗い流されることで汚物などが付着する以前の物品外観を取り戻す効果で、人の手を借りない洗浄システムである。このような防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、などの膜構造物に適用することで膜構造物の美観持続性を向上させることができる。
防汚層を構成する有機重合体(アクリル系樹脂)は、アルキル基の炭素数1~18のアクリル酸アルキルエステル類、及びアルキル基の炭素数1~18のメタアクリル酸アルキルエステル類から選ばれた1種以上のモノマーによる重合体、及び共重合体樹脂である。またアクリル系樹脂として、エチレン性不飽和カルボン酸類、アミド化合物類、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、α-オレフィン類、ビニルエーテル類、アルケニル類、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物類などを上記アクリル系モノマーと共重合させたものを使用することもでき、特にオルガノシロキサン類と共重合したアクリル/シリコン系共重合体樹脂が好ましい。防汚層を構成する有機重合体(ウレタン系樹脂)は、芳香族ポリウレタン(エステル系、エーテル系、ポリカーボネート系)、脂肪族ポリウレタン(エステル系、エーテル系、ポリカーボネート系)、脂環式ポリウレタン(エステル系、エーテル系、ポリカーボネート系)などが挙げられ、耐光堅牢性において脂肪族ポリウレタン、脂環式ポリウレタンが好ましく、耐候堅牢性(耐加水分解性)においてエーテル系、ポリカーボネート系のウレタン系樹脂が特に好ましい。ウレタン系共重合樹脂として、上記ウレタン系樹脂を主鎖としてオルガノシロキサン類をグラフトしたウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、また上記ウレタン系樹脂を主鎖としてフルオロオレフィン類をグラフトしたウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂が挙げられる。防汚層を構成する有機重合体(フッ素系共重合体樹脂)は、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素原子含有モノマーから選ばれた2種以上を共重合して得られる共重合体、上記フッ素原子含有モノマーとビニルモノマー(β-メチル-β-アルキル置換-α-オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、アルキルアリルエーテル類、ビニル基含有エステルなど)との共重合によって得られるフルオロオレフィン共重合体などを単独種、または複数種で使用することができる。これらはイソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの反応性化合物との併用で架橋部位を生成する水酸基、カルボキシ基を分子構造内に含有する共重合体が好ましい。特にイソシアネート化合物は脂肪族化合物、または脂環式化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらの三量体(イソシアヌレート型、トリメチルプロパン型、ビウレット型)など、及びこれらのブロックイソシアネート体などが使用できる。またオキサゾリン化合物は、アクリル系樹脂(アクリル共重合体樹脂、アクリル/スチレン共重合体樹脂)の側鎖にオキサゾリン基を有するポリマー型架橋剤(エマルジョン型)を使用することもできる。防汚層を構成する有機重合体は、上記アクリル系樹脂と上記フッ素系共重合体樹脂のブレンドを使用することもできる。また防汚層を構成する有機重合体には、防汚層の耐摩耗性、及び耐久性をより増強するため、さらにシランカップリング剤処理されたセルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルやエステル化(ホウ酸エステル化、リン酸エステル化、ケイ酸エステル化)されたセルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルを有機重合体内で強固に安定させるためにシランカップリング剤(アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、アクリルシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、イソシアヌレートシラン、イソシアネートシランなどのアルコキシシラン化合物)を、有機重合体に対して0.1~5質量%併用することができる。
防汚層を構成する有機/無機縮合体は、オルガノシリケート化合物、またはシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合体である。オルガノシリケート化合物は、化学式:Sin-1(OR)2(n+1)で表される4官能加水分解性シラン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)、nは4官能加水分解性シラン化合物の縮合分子数を表す多量化度(所謂n量体)で、1以上の整数、nが1の化合物として、テトラメトキシシラン(Si(OCH):別名テトラメチルシリケート)、テトラエトキシシラン(Si(OC):別名テトラエチルシリケート)、テトラプロポキシシラン(Si(OC):別名テトラプロピルシリケート)、テトラブトキシシラン(Si(OC):別名テトラブチルシリケート)、テトラフェノキシシラン(Si(OC):別名テトラフェニルシリケート)、ジメトキシジエトキシシラン(Si(OCH)(OC):別名ジメチルヒエチルシリケート)など、nが2以上の化合物は、4官能加水分解性シラン化合物が加水分解して生成するシラノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するSi原子数を意味する。本発明においては多量化度2~10、好ましくは4~6のテトラメトキシシラン、またはテトラエトキシシランを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物を用いることがゾルゲル縮合体の構造が細密化され好ましい。防汚層を形成する塗工液(水/アルコール)に含有する、オルガノシリケートの加水分解生成物の濃度は0.01~30質量%、特に0.1~5質量%の範囲が好ましい。またこの塗工液中には防汚層の耐摩耗性、及び耐久性をより増強するために無機コロイド(シリカゾル、アンチモンゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなど)をオルガノシリケートの加水分解生成物の濃度に対して0.1~25質量%含むことができる。また防汚層を構成する有機/無機縮合体には、防汚層の耐摩耗性、及び耐久性をより増強するため、さらにシランカップリング剤処理されたセルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルやエステル化(ホウ酸エステル化、リン酸エステル化、ケイ酸エステル化)されたセルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルを有機/無機縮合体構造内に何らかの状態で取り込ませるためにシランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を、オルガノシリケートの加水分解生成物の濃度に対して0.1~25質量%併用することができる。オルガノシリケートの加水分解生成物、またはシラノール基含有有機シラン化合物とシランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)がゾル-ゲル重縮合して屈曲に強い塗膜を形成することができる。シランカップリング剤、すなわちアルコキシシラン化合物は、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、アクリルシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、イソシアヌレートシラン、イソシアネートシランなどが挙げられ、これらは複数種組み合わせ併用することもできる。
そして上記防汚層は、有機重合体、または有機/無機縮合体を主構成要素として、セルロースナノファイバー、変性セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、及び変性セルロースナノクリスタル、から選ばれた1種以上のセルロース系物質を防汚層に対して0.01~3質量%含有していることが好ましい。これによって屈曲と摩耗の負荷に対する防汚層の抵抗耐性を増強し、防汚層に亀裂などの劣化を容易に生じることがなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することがなくなって、その結果防汚性の長期持続を可能とする。セルロースナノファイバーは、セルロース原料(化学処理パルプ・機械破砕パルプ・古紙パルプなど)を機械的に解繊(粗解繊・微解繊)し、繊維径をナノサイズ化して得られた、粉体、スラリー、または分散液状のものが使用できる。またセルロースナノクリスタルは、セルロース原料(木材・竹・植物パルプ、古紙パルプなど)を硫酸等の酸によって非結晶部分を除去した後、機械的解繊処理して得られる、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)50以下、平均繊維径10nm~50nm、平均繊維長300nm~500nmの短繊維で、粉体、スラリー、または分散液状のものが使用できる。また変性セルロースナノファイバー、及び変性セルロースナノクリスタルは共に、カルボキシメチル化、酸化変性、エステル化(ホウ酸エステル化、リン酸エステル化、ケイ酸エステル化、から選ばれた1種以上)、イソシアネート化、シランカップリング剤処理(アミノシラン変性、ビニルシラン変性、エポキシシラン変性、メタクリルシラン変性、アクリルシラン変性、クロルシラン変性、メルカプトシラン変性、イソシアヌレートシラン変性、イソシアネートシラン変性、から選ばれた1種以上)、から選ばれた1種以上の変性がなされたセルロース物質である。特にカルボキシメチル化はセルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)を任意にカルボキシメチル化し、機械的に解繊したもので、また酸化変性はTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)触媒を含む酸化触媒液により、セルロース分子中の1級水酸基(6位)のみを選択的にカルボキシ基に変換してCOOH基量1.3~1.6mmol/gとし、機械的解繊したものである。これら(変性)セルロースナノファイバーの平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は50~10000、平均繊維径は3nm~100nm、平均繊維長は2μm~100μmの繊維であることが、防汚層形成用組成物中における分散性に優れ、かつ防汚層内で安定化する。
特にシランカップリング剤処理(アミノシラン変性、ビニルシラン変性、エポキシシラン変性、メタクリルシラン変性、アクリルシラン変性、クロルシラン変性、メルカプトシラン変性、イソシアヌレートシラン変性、イソシアネートシラン変性、から選ばれた1種以上)変性は、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルなどを1種以上のシランカップリング剤を含む水溶液で処理し、シランカップリング剤の加水分解物:XR-Si(OH)(X、Yは下記に示す)がセルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルの水酸基、カルボキシ基などに結合した1種以上の反応物で、2種のシランカップリング剤の併用による、ビニルシラン/メタクリルシラン変性、アミノシラン/メルカプトシラン変性などであってもよく、さらに3種以上のシランカップリング剤を併用による変性であってもよい。シランカップリング剤は一般式:XR-Si(Y)で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有するアルコキシシラン化合物で、例えば、X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、クロル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、イソシアネート基、など(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、エトキシ基などである。このようなシランカップリング剤処理による変性体を使用することによって、産業用シート材の防汚層を構成する有機重合体との親和性、複合性をより強固なものに改善し、また産業用シート材の防汚層を構成する有機/無機縮合体のゾルゲル構造の一部にこれらのシランカップリング剤処理変性体が何らかの状態で取り込まれることによって、屈曲と摩耗の負荷に対する防汚層の抵抗耐性を向上させ、防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、防汚性の更なる長期持続を可能とする。
特にエステル化による変性のうち、ホウ酸エステル化は、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルをオルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸(HBO)などのホウ酸、及び四ホウ酸ナトリウム水和物(Na・10HO)、五ホウ酸ナトリウム(NaB)などのホウ酸塩水溶液で処理し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルのカルボキシ基、カルボキシメチル基などにホウ酸成分を反応させた変性であり、またリン酸エステル化は、ナノセルロースやナノクリスタルをオルトリン酸(HPO)、ピロリン酸、ポリリン酸(HPO)n、亜リン酸、亜フォスフィン酸などのリン酸類、およびこれらリン酸から誘導される金属塩、アンモニウム塩などのリン酸塩水溶液で処理し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルのカルボキシ基にリン酸成分を反応させた変性であり、またケイ酸エステル化は、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルをケイ酸、及びケイ酸ナトリウム(水ガラス)、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸塩水溶液で処理し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルのカルボキシ基にケイ酸成分を反応させた変性である。これらの変性は、ホウ酸塩水溶液とリン酸塩水溶液との併用処理によるホウ酸/リン酸エステル化、ホウ酸塩水溶液とケイ酸塩水溶液との併用処理によるホウ酸/ケイ酸エステル化、リン酸塩水溶液とケイ酸塩水溶液との併用処理によるリン酸/ケイ酸エステル化、などであってもよい。このようなエステル化処理による変性体を使用することによって、産業用シート材の防汚層を構成する有機重合体との親和性、複合性をより強固なものに改善し、また産業用シート材の防汚層を構成する有機/無機縮合体の分子構造の一部にこれらのエステル化変性体が何らかの状態で取り込まれることによって、屈曲と摩耗の負荷に対する防汚層の抵抗耐性を向上させ、防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、防汚性の更なる長期持続を可能とする。またこれらの変性によってセルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルに対して防腐性を付与することができる。
これらの防汚層に、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の、平均粒子径50nm以下、特に20nm以下の光触媒性金属酸化物、防汚層形成時においてはゾル状態の光触媒性金属酸化物を用い、防汚層に対して10~50質量%含有することで光触媒活性によるセルフクリーニング防汚性が発現できる。これらの光触媒性金属酸化物には、Pt,Rh,RuO2 ,Nb,Cu,Sn,NiOなどの金属及び金属酸化物を相乗化剤として添加することが出来る。特に有機重合体による防汚層に対して用いる光触媒性金属酸化物は、無機系多孔質微粒子に担持された状態であることが好ましい。有機重合体による防汚層に対して光触媒性金属酸化物をそのまま配合すると、光触媒活性によって防汚層を形成する有機重合体を経時的に分解し、防汚層が風化劣化することがある。無機系多孔質微粒子は光触媒性金属酸化物の光触媒活性による防汚層の風化劣化を抑止するバリヤー物質として作用する。光触媒性金属酸化物を担持させる無機系多孔質微粒子としては、シリカ、ポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土などを用いることができる。これらの無機系多孔質微粒子の平均一次粒子径は、0.01~3μm程度が好ましい。光触媒性金属酸化物を無機系多孔質微粒子に担持させるには、光触媒性金属酸化物を含有する金属アルコラートによるゾル-ゲル薄膜製造工程を応用した表面処理が好ましい。
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明の態様はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
耐屈曲揉み性:JIS L1096 8.19.2 B法)スコット形法
シート材から採取した2.5cm(タテ)×12cm(ヨコ)、及び2.5cm(ヨコ)×12cm(タテ)を試験片として、スコット形試験機に装着(ストローク4cm)し、1kgfg荷重×100回の屈曲揉みを施した後、デジタルマイクロスコープ(VHX-1000:株式会社キーエンス)を使用して防汚層の500倍の拡大画像観察を行い、防汚層に亀裂の有無、及び剥離や脱落の有無を判定した。
1:防汚層に亀裂、剥離、脱落の何れも認めない
2:防汚層に亀裂を認めるが、剥離、脱落は認めない
3:防汚層に亀裂、剥離、脱落を認める
耐摩耗性:JIS L1096 8.19.3 C法)テーバ形法
シート材から採取した直径13cmの円盤を試験片として、テーバ形摩耗試験機に装着(摩耗輪CS-10)し、荷重2.45Nで50回転、及び100回転の摩耗を施した後、埼玉県草加市内、2019年7月~9月の3ケ月間の屋外曝露を行い防汚層(摩耗試験部分)の汚れ度合いを色差ΔE(JIS Z8730)で判定(清拭、洗浄なしの状態で測定)した。
1:ΔE=0~2.9 初期状態を維持する好成績(問題なし)
2:ΔE=3~4.9 やや薄黒いが気にならない(問題なし)
3:ΔE=5~7.9 薄黒く、気になる
4:ΔE=8~9.9 黒ずみ、汚らしい
5:ΔE=10~ かなり黒ずんで、汚い
[実施例1]
〈織物(1)〉
1000デニール(1111dtex)のポリエチレンテレタレート(PET)繊維(フィラメント数192本)からなり、S撚50T/mを施したPETマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間16本の織組織とし、また緯糸群は1インチ間16本の織組織とする平織物を用いた。この織物(1)の質量は150g/m、空隙率(目抜け部総和)は14%であった。
〈ターポリン基材〉
この織物(1)を基材として、その両面に下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の被覆層として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施して、厚さ0.7mm、質量830g/mのターポリン基材を得た。
〔配合1〕:軟質塩化ビニル樹脂組成物(コンパウンド)
塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤)
55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
〈産業用シート材(1):ターポリン〉
ターポリン基材の片表面上に、下記〔配合2〕のフッ素系樹脂塗料を100メッシユのグラビアロールによりターポリン基材の片面(表面)にグラビア塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、〔配合2〕のフッ素系樹脂塗料が硬化(フッ素樹脂が含有する水酸基と硬化剤のオキサゾリン基との反応)した有機重合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合2による〕/被覆層/織物(1)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量835g/mの産業用シート材(1)を得た。
〔配合2〕防汚層形成用塗料
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体 100質量部
※フッ素系樹脂エマルジョン(固形分50質量%)
オキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤 10質量部
※エマルジョン(固形分40質量%):オキサゾリン基量1.8mmol/g(固形分)
エポキシ系シランカップリング剤 2質量部
※3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 100質量部
※3-アミノプロピルトリメトキシシラン(アミノ系シランカップリング剤)の加水分
解物をセルロースナノファイバーの水酸基に反応させたシランカップリング処理変性体
:繊維幅3~10nm:繊維長30~100μm
[実施例2]
〈織物(2)〉
1000デニール(1111dtex)のポリエチレンテレタレート(PET)繊維(フィラメント数192本)からなり、S撚50T/mを施したマルチフィラメント糸条を経糸群、及び緯糸群に用い、経糸群及び緯糸群は1インチ間16本の織組織とし、但し経糸群及び緯糸群の糸条配列1,2,3,4,5・・・n(nは整数)において、10の倍数(10,20,30・・・)本目毎に、4,6-ジアミノレゾルシノールとテレフタル酸との重縮合物から乾式紡糸されたポリベンゾオキサゾール(PBO)の延伸マルチフィラメント糸条(1100dtex:フィラメント本数664、S撚50T/m)が格子状に置換挿入し、ポリベンゾオキサゾール(PBO)の延伸マルチフィラメント糸条の糸本数による含有率を10%本とするリップストップ織物(2)を用いた。この織物(2)の質量は165g/m、空隙率(目抜け部総和)は14%であった。織物(2)を基材として、その両面に〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の被覆層として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施し、厚さ0.70mm、質量845g/mのターポリン基材を得た。このターポリン基材の片表面上に、下記〔配合3〕のフッ素系樹脂塗料を100メッシユのグラビアロールによりターポリン基材の片面(表面)にグラビア塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、〔配合3〕のフッ素系樹脂塗料が硬化(フッ素樹脂が含有する水酸基と硬化剤のオキサゾリン基との反応)した有機重合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合3による〕/被覆層/織物(2)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量850g/mの産業用シート材(2)を得た。
〔配合3〕防汚層形成用塗料
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体 100質量部
※フッ素系樹脂エマルジョン(固形分50質量%)
オキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤 10質量部
※エマルジョン(固形分40質量%):オキサゾリン基量1.8mmol/g(固形分)
メタクリル系シランカップリング剤 2質量部
※3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
変性セルロースナノクリスタル(2質量%水溶液) 100質量部
※3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(イソシアネート系シランカップリ
ング剤)の加水分解物をセルロースナノクリスタルの水酸基に反応させたシランカップ
リング処理変性体:平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)50以下、平均繊維
径10nm~50nm、平均繊維長300nm~500nmの短繊維
[実施例3]
実施例1の〔配合2〕に用いたシランカップリング剤処理された変性セルロースナノファイバーを、ホウ酸エステル化された変性セルロースナノファイバーに変更した〔配合4〕とした以外は実施例1と同様として「防汚層〔配合4による〕/被覆層/織物(1)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量835g/mの産業用シート材(3)を得た。
〔配合4〕防汚層形成用塗料
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体 100質量部
※フッ素系樹脂エマルジョン(固形分50質量%)
オキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤 10質量部
※エマルジョン(固形分40質量%):オキサゾリン基量1.8mmol/g(固形分)
エポキシ系シランカップリング剤 2質量部
※3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ホウ酸エステル化変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 100質量部
※3質量%ホウ酸+78質量%エチルセロソルブの水溶液をカルボキシメチル化セルロ
ースナノファイバー(セルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)をカルボキシメチ
ル化)のカルボキシメチル基に反応させた変性体:繊維幅3~10nm:繊維長30~100μm
[実施例4]
〈織物(3)〉
1000デニール(1111dtex)のポリエチレンテレタレート(PET)繊維(フィラメント数192本)からなり、S撚50T/mを施したマルチフィラメント糸条を経糸群及び左上バイアス糸群/右上バイアス糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織とし、また左上バイアス糸群/右上バイアス糸群は各々1インチ間13本の織組織とする三軸平織物を織物(3)に用いた。この織物(3)の質量は180g/m、空隙率(目抜け部総和)は11%であった。織物(3)を基材として、その両面に〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の被覆層として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施し、厚さ0.7mm、質量860g/mのターポリン基材を得た。このターポリン基材の表面に有機重合体による防汚層を形成した。防汚層は実施例1の〔配合2〕に用いたシランカップリング剤処理された変性セルロースナノファイバーを、リン酸エステル化された変性セルロースナノファイバーに変更した〔配合5〕とした以外は実施例1と同様として、「防汚層〔配合5による〕/被覆層/織物(3)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量865g/mの産業用シート材(4)を得た。
〔配合5〕防汚層形成用塗料
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体 100質量部
※フッ素系樹脂エマルジョン(固形分50質量%)
オキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤 10質量部
※エマルジョン(固形分40質量%):オキサゾリン基量1.8mmol/g(固形分)
エポキシ系シランカップリング剤 2質量部
※3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
リン酸エステル化変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 100質量部
※3質量%リン酸+78質量%エチルセロソルブの水溶液をカルボキシメチル化セルロ
ースナノファイバー(セルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)をカルボキシメチ
ル化)のカルボキシメチル基に反応させた変性体:繊維幅3~10nm:繊維長30~100μm
[実施例5]
〈織物(4)〉
750デニール(833dtex)のポリエチレンテレタレート(PET)繊維(フィラメント数145本)からなり、S撚50T/mを施したマルチフィラメント糸条を経糸群、緯糸群、及び4,6-ジアミノレゾルシノールとテレフタル酸との重縮合物から乾式紡糸されたポリベンゾオキサゾール(PBO)の延伸マルチフィラメント糸条(555dtex:フィラメント本数332、S撚50T/m)を左上バイアス糸群/右上バイアス糸群に用い、経糸群及び緯糸群は1インチ間14本の織組織とし、また左上バイアス糸群/右上バイアス糸群は各々1インチ間15本の織組織とする四軸平織物を織物(4)に用いた。この織物(4)の質量は202g/m、空隙率(目抜け部総和)は9%であった。織物(4)を基材として、その両面に〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の被覆層として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施し、厚さ0.68mm、質量882g/mのターポリン基材を得た。このターポリン基材の表面に有機重合体による防汚層を形成した。防汚層は実施例1の〔配合2〕に用いたシランカップリング剤処理された変性セルロースナノファイバーを、ケイ酸エステル化された変性セルロースナノクリスタルに変更した〔配合6〕とした以外は実施例1と同様として、「防汚層〔配合6による〕/被覆層/織物(4)/被覆層」断面構造の厚さが0.69mm、質量887g/mの産業用シート材(5)を得た。
〔配合6〕防汚層形成用塗料
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体 100質量部
※フッ素系樹脂エマルジョン(固形分50質量%)
オキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤 10質量部
※エマルジョン(固形分40質量%):オキサゾリン基量1.8mmol/g(固形分)
エポキシ系シランカップリング剤 2質量部
※3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ケイ酸エステル化変性セルロースナノクリスタル(2質量%水溶液) 100質量部
※3質量%ケイ酸+78質量%エチルセロソルブの水溶液をカルボキシメチル化セルロ
ースナノクリスタル(セルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)をカルボキシメチ
ル化)のカルボキシメチル基に反応させた変性体:平均アスペクト比(平均繊維長/平均
繊維径)50以下、平均繊維径10nm~50nm、平均繊維長300nm~500nmの短繊維
[実施例6]
実施例1の防汚層〔配合2による〕を下記の〔配合7〕による防汚層(有機/無機縮合体)に変更した以外は実施例1と同様として、〔配合7〕のエチルシリケートを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤、光触媒性酸化チタンゾル、シリカゾル、及びシランカップリング処理セルロースナノファイバーとのゾルゲル構成要素で得た有機/無機縮合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合7による〕/被覆層/織物(1)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量835g/mの産業用シート材(6)を得た。
〔配合7〕防汚層形成用塗料
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)
※[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体 100質量部
加水分解触媒:2%塩酸 5質量部
光触媒性酸化チタンゾル 50質量部
硝酸酸性:粒子径10nm:固形分30質量%エタノール溶液
ビニル系シランカップリング剤 5質量部
※ビニルトリメトキシシラン
シリカゾル(粒子径12nm:固形分30質量%エタノール溶液) 50質量部
変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 500質量部
※3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(メルカプト系シランカップリング剤)
の加水分解物をセルロースナノファイバーの水酸基に反応させたシランカップリング
処理変性体:繊維幅3~10nm:繊維長30~100μm
[実施例7]
実施例2の防汚層〔配合3による〕を下記の〔配合8〕による防汚層(有機/無機縮合体)に変更した以外は実施例2と同様として、〔配合8〕のエチルシリケートを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤、光触媒性酸化チタンゾル、シリカゾル、及びシランカップリング処理セルロースナノクリスタルとのゾルゲル構成要素で得た有機/無機縮合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合8による〕/被覆層/織物(2)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量850g/mの産業用シート材(7)を得た。
〔配合8〕防汚層形成用塗料
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)
※[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体 100質量部
加水分解触媒:2%塩酸 5質量部
光触媒性酸化チタンゾル 50質量部
硝酸酸性:粒子径10nm:固形分30質量%エタノール溶液
メタクリル系シランカップリング剤 5質量部
※3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
シリカゾル(粒子径12nm:固形分30質量%エタノール溶液) 50質量部
変性セルロースナノクリスタル(2質量%水溶液) 500質量部
※ビニルトリエトキシシラン(ビニル系シランカップリング剤)の加水分解物をセルロ
ースナノクリスタルの水酸基に反応させたシランカップリング処理変性体:平均アスペ
クト比(平均繊維長/平均繊維径)50以下、平均繊維径10nm~50nm、平均繊維長300nm
~500nmの短繊維
[実施例8]
実施例3の防汚層〔配合4による〕を下記の〔配合9〕による防汚層(有機/無機縮合体)に変更した以外は実施例3と同様として、〔配合9〕のエチルシリケートを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤、光触媒性酸化チタンゾル、シリカゾル、及びシランカップリング処理セルロースナノファイバーとのゾルゲル構成要素で得た有機/無機縮合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合9による〕/被覆層/織物(1)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量835g/mの産業用シート材(8)を得た。
〔配合9〕防汚層形成用塗料
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)
※[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体 100質量部
加水分解触媒:2%塩酸 5質量部
光触媒性酸化チタンゾル 50質量部
硝酸酸性:粒子径10nm:固形分30質量%エタノール溶液
ビニル系シランカップリング剤 5質量部
※ビニルトリメトキシシラン
シリカゾル(粒子径12nm:固形分30質量%エタノール溶液) 50質量部
ホウ酸エステル化変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 500質量部
※3質量%ホウ酸+78質量%エチルセロソルブの水溶液をカルボキシメチル化セルロ
ースナノファイバー(セルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)をカルボキシメチ
ル化)のカルボキシメチル基に反応させた変性体:繊維幅3~10nm:繊維長30~100μm
[実施例9]
実施例4の防汚層〔配合5による〕を下記の〔配合10〕による防汚層(有機/無機縮合体)に変更した以外は実施例4と同様として、〔配合10〕のエチルシリケートを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤、光触媒性酸化チタンゾル、シリカゾル、及びシランカップリング処理セルロースナノファイバーとのゾルゲル構成要素で得た有機/無機縮合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合10による〕/被覆層/織物(3)/被覆層」断面構造の厚さが0.71mm、質量865g/mの産業用シート材(9)を得た。
〔配合10〕防汚層形成用塗料
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)
※[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体 100質量部
加水分解触媒:2%塩酸 5質量部
光触媒性酸化チタンゾル 50質量部
硝酸酸性:粒子径10nm:固形分30質量%エタノール溶液
ビニル系シランカップリング剤 5質量部
※ビニルトリメトキシシラン
シリカゾル(粒子径12nm:固形分30質量%エタノール溶液) 50質量部
リン酸エステル化変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 500質量部
※3質量%リン酸+78質量%エチルセロソルブの水溶液をカルボキシメチル化セルロ
ースナノファイバー(セルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)をカルボキシメチ
ル化)のカルボキシメチル基に反応させた変性体:繊維幅3~10nm:繊維長30~100μm
[実施例10]
実施例5の防汚層〔配合6による〕を下記の〔配合11〕による防汚層(有機/無機縮合体)に変更した以外は実施例5と同様として、〔配合11〕のエチルシリケートを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤、光触媒性酸化チタンゾル、シリカゾル、及びシランカップリング処理セルロースナノクリスタルとのゾルゲル構成要素で得た有機/無機縮合体による防汚層を付帯する「防汚層〔配合11による〕/被覆層/織物(4)/被覆層」断面構造の厚さが0.69mm、質量877g/mの産業用シート材(10)を得た。
〔配合11〕防汚層形成用塗料
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)
※[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体 100質量部
加水分解触媒:2%塩酸 5質量部
光触媒性酸化チタンゾル 50質量部
硝酸酸性:粒子径10nm:固形分30質量%エタノール溶液
ビニル系シランカップリング剤 5質量部
※ビニルトリメトキシシラン
シリカゾル(粒子径12nm:固形分30質量%エタノール溶液) 50質量部
ケイ酸エステル化変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液) 500質量部
※3質量%ケイ酸+78質量%エチルセロソルブの水溶液をカルボキシメチル化セルロ
ースナノクリスタル(セルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)をカルボキシメチ
ル化)のカルボキシメチル基に反応させた変性体:平均アスペクト比(平均繊維長/平均
繊維径)50以下、平均繊維径10nm~50nm、平均繊維長300nm~500nmの短繊維
[実施例11-16]
実施例1~5において、防汚層([配合2-6])に各々光触媒性酸化チタンを担持する無機系多孔質微粒子(〔配合17〕)を5質量部追加配合し、[配合12-16]として用いた以外は、各々実施例1~5と同様として産業用シート材(11)~(16)を得た。(実施例11~16)
〈光触媒性酸化チタンを担持する無機系多孔質微粒子〉
〔配合17〕
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)
※[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体 25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
光触媒性酸化チタンゾル 25質量部
硝酸酸性:粒子径10nm:固形分30質量%エタノール溶液
ビニル系シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン) 1質量部
多孔質シリカ球状粒子(3μmφ) 100質量部
水/エタノール 300質量部
※多孔質シリカ球状粒子にエチルシリケート、光触媒性酸化チタンゾル、及びシランカ
ップリング剤を吸着させ、120℃で1時間加熱処理することで、エチルシリケートを
加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤、光触
媒性酸化チタンゾルとのゾルゲル薄膜を多孔質シリカ球状粒子の表面、及び微細孔内に
形成した。
Figure 0007241403000001
Figure 0007241403000002
Figure 0007241403000003
本発明の産業用シート材において、主構成要素を有機重合体、または有機/無機縮合体とする防汚層に、特に変性セルロースナノファイバー、変性セルロースナノクリスタルを含有させたことによって、有機重合体(実施例1~5)との親和性、複合性を強固なものに改善し、また有機/無機縮合体(実施例6~10)の分子構造の一部にこれらの変性体を何らかの状態で取り込む効果によって、屈曲と摩耗の負荷に対する防汚層の抵抗耐性が向上し、防汚層に亀裂などの損傷を容易に生じるようなことが無いことをJIS L1096 8.19.2 B法:スコット形法による耐屈曲揉み試験にて確認した。また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、防汚性の維持が可能であることをJIS L1096 8.19.3 C法:テーバ形法による耐摩耗性試験後の試料での屋外曝露(夏季3ケ月間)で確認した。これらの効果は、実施例1~5の防汚層では、シランカップリング剤の加水分解物で処理した変性セルロースナノファイバー(実施例1,3,4)、及び変性セルロースナノクリスタル(実施例2,5)がアルコキシシラン加水分解物を付帯することによって、水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体とオキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤との反応によるフッ素系樹脂重合体との親和性を向上させる効果、またオキサゾリン基を有するアクリル/スチレンポリマー硬化剤との副反応によって尚更フッ素系樹脂重合体との親和性を向上させる効果、更にはシランカップリング剤との副反応による親和性向上の効果とが、複雑に交差して防汚層の耐屈曲性及び耐摩耗性が向上したものと考察する。また実施例6~10の防汚層では、シランカップリング剤の加水分解物で処理した変性セルロースナノファイバー(実施例6,8,9)、及び変性セルロースナノクリスタル(実施例7,10)がアルコキシシラン加水分解物を付帯することによって、主にエチルシリケートを加水分解して得られるシラノール基含有シラン化合物と、シランカップリング剤とが関与するゾルゲル薄膜構造中に、光触媒性酸化チタンゾル、シリカゾルなどと共に変性セルロースナノファイバーまたは変性セルロースナノクリスタルがゾルゲル薄膜構造中に何らかの状態で取り込まれることで防汚層の耐屈曲性及び耐摩耗性が格段に向上したものと考察する。また実施例11~16は各々実施例1~5の防汚層の構成(配合2~6)に、光触媒性酸化チタンを担持する多孔質シリカ球状粒子を5質量部追加したことで、実施例1~5の防汚層よりも夏季3ケ月の屋外曝露評価による防汚性(ΔE)が1ランク優れていた。また、織物に三軸織物を用いた実施例4,9の産業用シート材、及び四軸織物を用いた実施例5,10の産業用シート材は、汎用の平織物を用いた実施例1,6の産業用シート材よりも多方向に対するテンション歪の緩和性に優れているためシート材自体の寸法安定性に優れ、またシート材面に物体を衝突させた場合も、三軸または四軸に絡み合ったネットワークの分散効果で、衝撃力の多方向に逃がす効果を有するので、実施例1,6の産業用シート材よりも裂けたり、穴あき破壊を生じ難いという耐久性を有している。また実施例2,7の産業用シート材は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維糸条を格子状に含むリップストップ織物を使用しているため、実施例1,6の産業用シート材よりも寸法安定性、引張破壊強度、耐引裂性に優れ、実施例5,10の産業用シート材は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維糸条を右上バイアス糸条、左上バイアス糸条に含む四軸織物なので、四軸織物特有の耐衝撃強度の優位に加え、寸法安定性、引張破壊強度、耐引裂性に優れたものとなっている。また実施例1~15の産業用シート材に、市販の油性ペン(赤)でABCDEの文字を描き、室温60秒乾燥後にDRYティッシュペーパー拭取除去(擦り取り往復10回)を行い、これらシート材の防汚性を評価した。この結果、明らかに有機重合体(フッ素系樹脂)を主体とする防汚層を有する産業用シート材1~5、11~15の赤インク文字の除去性に優れていたのに対し、有機/無機縮合体(ゾルゲル縮合膜)を主体とする防汚層を有する産業用シート材6~10では、やや赤インク痕が残るものであったが、次いでWETティッシュペーパー拭取除去性(擦り取り往復10回)を追加した結果、赤インク痕は完全に除去された。これとは別にABCDEを市販の油性ペン(赤)で描いたシート片をキセノンウエザーメーターで120時間の耐候性促進試験(JIS K5600-7-7)を実施したところ、光触媒性酸化チタンを防汚層に含有する産業用シート材6~15は赤インク文字が消失していたのに対し、光触媒性酸化チタンを防汚層に含有しない産業用シート材1~5は赤インク文字が薄い色で残っていた。従って、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)などの膜構造物などの屋外恒久用途には、実施例6~15の産業用シート材が好適である。
[比較例1]
実施例1の防汚層[配合2]から、変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液)100質量部を省略し、水100質量部と置き換えた以外は実施例1と同様として、厚さ0.71mm、質量835g/mの産業用シート材を得た。変性セルロースナノファイバーの省略があってもスコット式耐屈曲揉み試験での防汚層(フッ素系樹脂)への影響は確認されなかったが、テーバ摩耗試験(50回転、100回転)での摩耗ダメージが実施例1の防汚層[配合2]よりも劣るものとなったことで、屋外曝露での汚れ付着量が顕著に増して黒く汚れてしまい、シート材の表面に摩耗を受ける用途では、長期使用には適さないものと判断した。
[比較例2]
実施例6の防汚層[配合7]から、変性セルロースナノファイバー(2質量%水溶液)500質量部を省略し、水500質量部と置き換えた以外は実施例6と同様として、厚さ0.71mm、質量835g/mの産業用シート材を得た。変性セルロースナノファイバーの省略があったことでスコット式耐屈曲揉み試験での防汚層(ゾルゲル薄膜)に微細な亀裂の発生が認められた。またテーバ摩耗試験(50回転、100回転)での摩耗ダメージが実施例1の防汚層[配合2]よりも劣るものとなったことで、屋外曝露での汚れ付着量が顕著に増し、比較例1のシート材よりも酷く黒く汚れてしまい、シート材の表面に摩耗を受ける用途では、長期使用には適さないものと判断した。
[実施例16]
実施例1の防汚層[配合2]で用いた変性セルロースナノファイバーから、3-アミノプロピルトリメトキシシランによるシランカップリング処理を省略した以外は実施例1と同様として、厚さ0.71mm、質量835g/mの産業用シート材を得た。シランカップリング処理を省略したことで、テーバ摩耗試験(100回転)での摩耗ダメージが実施例1の防汚層[配合2]よりも若干劣るものとなったことで、屋外曝露での汚れ付着量が増してやや薄黒さを増したが、特に問題はないレベルと判断した。
[実施例17]
実施例6の防汚層[配合7]で用いた変性セルロースナノファイバーから、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランによるシランカップリング処理を省略した以外は実施例1と同様として、厚さ0.71mm、質量835g/mの産業用シート材を得た。シランカップリング処理を省略したことで、テーバ摩耗試験(100回転)での摩耗ダメージが実施例1の防汚層[配合2]よりも若干劣るものとなったことで、屋外曝露での汚れ付着量が増してやや薄黒さを増したが、特に問題はないレベルと判断した。
Figure 0007241403000004
本発明により、ターポリン及び帆布に設けられた防汚層が屈曲と摩耗の負荷に対する抵抗耐性を有し、防汚層に亀裂などの劣化を容易に生じることなく、また防汚層が容易に摩滅、脱落することなく、また防汚性を長期持続できる産業用シート材の提供を可能とするので、これらの産業用シート材は、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、スタジアム日除けテントなどの膜構造物を始め、建築養生シート、フレキシブルコンテナバッグなど、及びさらにトラック幌、トラック荷台シート、屋形テント、シートハウスなど用途に広く活用できる。

Claims (8)

  1. 織物の表面及び裏面に熱可塑性樹脂組成物による被覆層が設けられ、さらに表面の被覆層に防汚層が形成された産業用シート材であって、前記防汚層の主構成要素が有機重合体、または有機/無機縮合体であり、かつ、セルロースナノファイバー、変性セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、及び変性セルロースナノクリスタル、から選ばれた1種以上のセルロース系物質を含有していることを特徴とする産業用シート材。
  2. 1)前記変性セルロースナノファイバー、及び2)前記変性セルロースナノクリスタルが共に、カルボキシメチル化、酸化変性、エステル化(ホウ酸エステル化、リン酸エステル化、ケイ酸エステル化、から選ばれた1種以上)、イソシアネート化、シランカップリング剤処理(アミノシラン変性、ビニルシラン変性、エポキシシラン変性、メタクリルシラン変性、アクリルシラン変性、クロルシラン変性、メルカプトシラン変性、イソシアヌレートシラン変性、イソシアネートシラン変性、から選ばれた1種以上)、から選ばれた1種以上の変性がなされたセルロース物質である請求項1に記載の産業用シート材。
  3. 前記有機重合体が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、から選ばれた1種以上である請求項1または2に記載の産業用シート材。
  4. 前記有機重合体が、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物を担持する無機系多孔質微粒子を含有する請求項3に記載の産業用シート材。
  5. 前記有機/無機縮合体が、オルガノシリケート化合物、またはシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合体である請求項1または2に記載の産業用シート材。
  6. 前記有機/無機縮合体が、光触媒性酸化チタン、光触媒性過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、光触媒性酸化亜鉛、光触媒性酸化錫、光触媒性チタン酸ストロンチウム、光触媒性酸化タングステン、光触媒性酸化ビスマス、及び光触媒性酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物を含有する請求項5に記載の産業用シート材。
  7. 前記織物が、1)経糸及び緯糸とする織物、または2)経糸及び左上/右上バイアス糸とする三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上/右上バイアス糸とする四軸織物、の何れかである請求項1~6の何れかに記載の産業用シート材。
  8. 前記織物が、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上の芳香族複素環高分子繊維からなる糸条を含んでいる請求項7に記載の産業用シート材。
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