JP3705428B2 - 防汚性プリントシート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性を有するプリント膜材及びその製造方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、カラフルな絵柄、文字などの画像がプリントされていて、中大型テント、日除けテントなどの建築物部材、及び広告用シート、広告看板用シート、横断幕、タペストリーなどの屋外広告用資材として好適に用いられる膜材、或はシートに関し、特にプリント画像の変退色防止効果に優れ、それと同時に、これらテント膜材、及びシートの美感、外観を長期間汚れのない、又は少ない状態に維持することができる防汚性プリントシート、及びその製造方法に関するものである。本発明において、プリントされた画像とは、プリントにより記録された、文字、記号、図形、文様、絵柄、写真及びベタ刷りなどの、可視光線により目視可能なすべての記録画像を包含する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、タイル外壁などの無機系化合物製品の表面に光触媒物質を塗布して、これらの製品の表面に付着した排気ガス、排煙などによる油性汚れを、光触媒性物質の酸化還元作用によって分解、除去するクリーニング技術が実用化されている。また、最近では、光触媒物質を、紙、繊維、フィルム、プラスチックなどの日用品の表面に塗布することによって、これらの製品の表面に接触または、付着する悪臭や大気中に浮遊している有害物質、及び煤塵などを、光触媒物質によって分解、除去する消臭技術及びクリーニング技術が提案され、フィルターやカーテン、壁紙などの用途に応用されている。また、衛生に関連する分野では、従来の抗菌剤や、防黴剤を使わずに、光触媒物質の酸化還元作用だけによって菌類、黴類、バクテリア類などの増繁殖防止を達成する製品も提案されている。しかし、これらの光触媒物質をプラスチック素材の表面に付着させた製品においては、光触媒物質の強い酸化還元作用によって、悪臭、大気中浮遊の排気ガスや煤塵などの分野や、菌類、黴類、バクテリア類などを死滅化させる作用のみならず、下地基材であるプラスチックの分解、劣化作用も同時に進行、促進させてしまい、屋内外における使用の開始後の早い段階で光触媒物質が、プラスチックの分解物とともに脱落してしまうという問題があり、このため、プラスチック素材に対しては光触媒効果を長期にわたり持続することができないという欠点がある。
【0003】
また、光触媒物質の強い酸化還元作用は、このような下地基材のプラスチック素材の分解、劣化だけではなく、紙、繊維、フィルム、プラスチックなどに処理、添加、配合される種々の処理剤、添加剤、配合剤などの副成分も同時に分解し、さらに製品を劣化させるという問題が同時に発生している。日常身近な光劣化の例としては、プラスチック製品の着色に用いられる着色剤が日光に晒されて変退色するという現象があるが、光触媒物質との併用によっては、さらに色彩の劣化が促進され顕著となる着色剤も存在する。この変退色という現象は目視で容易に判別、認識できるため、それは製品の価値、及び信頼性などに大きく影響する。例えば、日除けテント及び中大型テントなどは、繊維基布の表面に、着色した熱可塑性樹脂で被覆加工して得られる複合シート素材であるが、これらのテント膜材は、5〜10年の長期間にわたり屋外において使用されるものである。従って、これらテント膜材の製造業者は、10年の耐久性、さらにはそれ以上の耐久性を可能とする素材設計の研究開発を続けているのである。その耐久性向上の対象として、テント膜材の美観・色彩の長期維持が挙げられる。例えば、テント膜材自体が5年以上の耐久性を有していても、テント膜材の色彩が、5年にも及ばない耐候性能では、テント構造体の見栄えを極めて悪いものとしてしまうため、テント膜材とその着色剤が、それぞれ耐久性と耐候性とに優れて設計される必要がある。特にテント用膜材は、カラフルな色合いと、豊富なカラーバリェーションが必須であり、これらに使用する着色剤の種類と配合量とは、色相、意匠性、光透過効果、コスト性、加工方法などに応じて種々様々である。
【0004】
また、これらのテント膜材には、その表面に印刷(プリント)が施されたプリントテント膜材がある。プリントテント膜材は、日除けテントや、中大型テントなどの表面の一部、または全面に、絵柄や文字を、グラビア印刷、シルク印刷などの公知の技術によって印刷(プリント)して得られる。この印刷に用いるテント用膜材としては、画用紙のごとく、白を基調とする色相基材を用いると印刷のコントラスト、及び輪郭が鮮明になり、最も好まれている。しかし、プリント技術の範疇が、特に白系を中心とするものだけに限られたものではない。一方、最近、デジタルカメラやコンピューターに取り込んだデジタル画像を、出力媒体上に直接精密カラー印刷を施すことが可能なインクジェット印刷が急速に発達している。インクジェット印刷は、種々の作動原理、例えば、静電吸引方式、圧電素子を用いてインクに機械的振動または変位を与える方式、インクを加熱して発泡させ、その圧力を利用する方式などにより、インクの微小液滴を紙面などの出力媒体に向って飛ばしてこれを付着、定着させて画像や文字などの印刷、記録を行うものであり、最近、インクジェット印刷プリンターの高画質フルカラー印刷対応化、大型印刷対応化、高速印刷対応化などの進歩に伴い、従来の紙やフィルムなどの出力媒体にだけでなく、繊維織物や、繊維基布と熱可塑性樹脂との複合シートなどの産業資材シートなどにも直接精密な印刷が容易となり、テント用膜材、広告看板用シート、ビル建築養生シート、内照式テント、ロールスクリーンなどへの印刷需要も高まっている。
【0005】
具体的に、上記の用途には、膜材強度、屋外耐久性、防炎性、及び汎用性などの理由により、繊維布帛を基材として含む軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆シート及びメッシュが、インクジェット印刷用シートに適して使用されている。この軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆シート基材及びメッシュ基材には、溶剤系インク吐出型プリンターを使用することによって、直接基材に精密なフルカラー印刷を施すことが可能であり、一方、水性インク吐出型プリンター用には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆シートと、及び繊維布帛の表面にインク受容層を形成したものが徐々に普及し始めている。これら基材の表面に印刷されたシートで、特に広告的な用途限定のものに関しては、これらが1〜3ヶ月の比較的短期間の使用を目的とするため、プリントの耐候性や、汚れに対して特別な配慮はなされていない。しかし、プリントテント膜材、プリント広告看板用シート、プリントビル建築養生シート、プリント内照式テント、及びプリントロールスクリーンなどの用途では、屋内外で1〜5年の長期間使用され、特にテント膜材に関しては、前述の通り、5〜10年の間屋外使用されるため、それに見合ったプリントの耐候性と防汚性とが必要である。しかし、これらプリント膜材の耐久性向上の技術として、その表面に防汚性のフィルム層を別途形成させる方法以外に効果的な手段がなく、この方法では、得られる複合積層シートの、プリント面とフィルム層との界面密着耐久性が不十分なものであった。
【0006】
最近、これらテント膜材の分野においても、光触媒物質の酸化還元反応を防汚機能として利用する機能性テント膜材が検討されているが、光触媒物質の酸化還元作用からシート基材を保護するための技術的措置のみが、施行され、着色基材の色彩維持に関しては、着色剤の耐候性の問題として、特別な改良がなされていなかった。さらに、着色の色彩維持に関して、プリントテント膜材でも同様に、シート基材表面に形成された印刷層の色彩維持に対しては、印刷インキの耐候性の問題として、特別な改良がなされていなかった。特に、インクジェット印刷によって得られたプリント膜材に対しては、光触媒物質の定義が困難であると同時に、プリント絵柄が光触媒物質の酸化還元反応によって、短期間のうちに画像に色褪せを生ずるため、実用には至っていない。従って中大型テント、日除けテントなど、屋外で長期間使用可能なカラフルで、しかも色彩維持性に優れた複合シートで、かつ美麗なプリント絵柄を長期間維持可能な複合シートであって、さらに光触媒物質による汚れ分解機能を有する防汚性のプリントシートは、今だ実用されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、屋外における長期間使用が可能であり、変退色防止性に優れた画像がプリントされており、同時に自己洗浄性の防汚機能を有する防汚性プリントシートを提供しようとするものである。本発明は、また、前記性能を有し、中大型テント、日除けテントなどのテント膜材などの装飾用途に適した産業資材シート、及び広告用シート、広告看板用シート、横断幕、タペストリーなどの屋外広告用資材として好適な防汚性プリントシート、及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の現状に鑑みて研究、検討を重ねた結果、基材の表面に特定のプリント層が設けられ、このプリント層と光触媒性物質含有層との中間に、特定の樹脂層を設けることによって、あるいは特定のプリント層が形成された特定の樹脂層を、基材と光触媒性物質含有層との中間に、特定の中間保護層を配置することによって、上記従来技術で困難であった課題を解決可能であることを見い出して本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の防汚性インクジェットプリントシート(1)は、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材と、このシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に形成され、かつ光触媒性物質を含む最外面防汚層とを有し、前記シート状基材の表面上に画像がインクジェットプリントされており、前記シート状基材のプリントされた表面と、前記最外面防汚層との中間において、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層が、前記シート状基材のプリントされた表面上に形成され、かつこの透明樹脂層と、前記最外面防汚層との間に、前記透明樹脂層を前記光触媒性物質の作用から保護する中間保護層が形成されている、ことを特徴とするものである。
本発明の防汚性インクジェットプリントシート(2)は、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材と、このシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に形成され、かつ光触媒性物質を含む最外面防汚層とを有し、前記シート状基材と前記最外面防汚層との中間において、前記シート状基材表面上に、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層が形成され、かつこの透明樹脂層と前記最外面防汚層との間に、前記透明樹脂層を前記光触媒性物質の作用から保護する中間保護層が形成されており、前記透明樹脂層の、前記シート状基材に接合する面上に画像がインクジェットプリントされている、ことを特徴とするものである。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記シート状基材が無色または着色されていることが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記無色の、又は着色されたシート状基材が、透明又は不透明であることが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記インクジェットプリントされた画像が、20重量%以上の無機系顔料を含むインクにより形成されたものであることが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記中間保護層が、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フォスファーゼン系樹脂から選ばれた少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記中間保護層が、ケイ素化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記中間保護層用ケイ素化合物が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、及びシリカから選ばれることが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記中間保護層が、10以下のヘイズ値(ASTM D1003)及び/又は80%以上の光線透過率を有することが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記透明樹脂層が、10以下のヘイズ値(ASTM D1003)及び/又は80%以上の光線透過率を有することが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記透明樹脂層とその上に形成された前記中間保護層とからなる複合層が、その全体として、10以下のヘイズ値(ASTM D1003)及び/又は80%以上の光線透過率を有することが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記最外面防汚層が、9〜70重量%の前記光触媒性物質と、25〜90重量%の、金属酸化物ゲル及び金属水酸化物ゲルから選ばれた少なくとも1種と、1〜20重量%のケイ素化合物とを含有することが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートにおいて、前記最外面防汚層の光触媒性物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi2 O3 )、及び酸化鉄(Fe2 O3 )、の微粒子、並びに、上記化合物の1種以上を多孔質担体中に担持する多孔質微粒子から選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートの製造方法(1)は、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち少なくともその表面上に画像をインクジェットプリントし、前記シート状基材のプリントされた面上に、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層を形成し、前記透明樹脂層上に、この透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、ことを特徴とするものである。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートの製造方法(2)は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をインクジェットプリントし、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、前記貼合された透明フィルムの、プリントされていない面上に、前記透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、ことを特徴とするものである。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートの製造方法(3)は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をインクジェットプリントし、前記、透明なフィルムの他の面に、それを光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、ことを特徴とするものである。
本発明の防汚性インクジェットプリントシートを、以下、防汚性プリントシートと記載する。
【0010】
【発明の実施の形態】
また、本発明の防汚性プリントシート(1)は、シート状基材と、このシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に形成され、かつ光触媒性物質を含む最外面防汚層とを有し、前記シート状基材の表面上に画像がプリントされており、前記シート状基材のプリントされた表面と、前記最外面防汚層との中間において、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層が、前記シート状基材のプリントされた表面上に形成され、かつこの透明樹脂層と、前記最外面防汚層との間に、前記透明樹脂層を前記光触媒性物質の作用から保護する中間保護層が形成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明の防汚性プリントシート(2)は、シート状基材と、このシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に形成され、かつ光触媒性物質を含む最外面防汚層とを有し、前記シート状基材と前記最外面防汚層との中間において、前記シート状基材表面上に、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層が形成され、かつこの透明樹脂層と前記最外面防汚層との間に、前記透明樹脂層を前記光触媒性物質の作用から保護する中間保護層が形成されており、前記透明樹脂層の、前記シート状基材に接合する面上に画像がプリントされていることを特徴とするものである。
前記シート状基材は、繊維布帛、プラスチックフィルム及び合成紙から選ばれてもよく、或は基体シートと、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されてもよい。
【0011】
本発明の防汚性プリントシート(1)は、シート状基材の表裏両面のうち少なくともその表面上に画像をインクジェットプリントし、
前記シート状基材のプリントされた面上に、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層を形成し、
前記透明樹脂層上に、この透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、
前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する本発明方法(1)により製造される。
本発明の防汚性プリントシート(2)は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明なフィルムの一面上に画像をインクジェットプリントし、
シート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、
前記貼合された透明フィルムの、プリントされていない面上に、前記透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、
前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する本発明方法(2)により製造される。
本発明の防汚性プリントシート(2)は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をインクジェットプリントし、
前記、透明なフィルムの他の面に、それを光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、
繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、
前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、本発明方法(3)により製造される。
【0012】
本願発明の、防汚性プリントシートの各種態様の積層構造を示す断面説明図が図1及び2に示されている。
図1に示された防汚性プリントシートにおいて、シート状基材1の表面上にインク画像2がプリントされており、インク画像2がプリントされているシート状基体1の表面上に透明樹脂層5が形成されており、この透明樹脂層5上に中間保護層3が形成されており、この中間保護層3の全面上に最外面防汚層4(光触媒性物質含有)が形成されている。
【0013】
図2に示された防汚性プリントシートは、図1に示されたものと類似の積層構造を有しているが、シート状基材1が、基体シート1aと、その表裏両面上を被覆している樹脂被覆層1b,1cから構成されるものであり、また、インク画像は、透明樹脂層5の1面上にプリントされており、この透明樹脂層5の、インク画像2がプリントされている面が、シート状基材1の表面樹脂被覆層1bに接合されている。
【0014】
本発明に使用されるシート状基材としては、無色の、又は着色された不透明プラスチックフィルム、無色の又は着色された透明プラスチックフィルム、繊維布帛、合成紙からなるものであってもよく、或は、基体シートとその少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む樹脂被覆層からなるものであってもよく、基体シートは、繊維布帛、プラスチックフィルム及び合成紙から選ぶことができる。特に、繊維布帛からなる基体シートが熱可塑性樹脂によって被覆されているものであることが好ましい。
【0015】
着色不透明フィルム、透明(着色)フィルムとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、非結晶ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂から成型されたフィルム、及びシートが挙げられ、これらのフィルム及びシートは上記2種以上の熱可塑性樹脂層から構成された多層構造のフィルムまたはシートであってもよい。これらのフィルム・シートは、公知のフィルム・シート製造方法、例えばT−ダイ押出法、T−ダイ共押出法、カレンダー法、インフレーション法、キャスティング法などによって製造することができる。
また、合成紙としては、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂に発泡剤を添加して微細気泡を含ませたフィルム、又は前記熱可塑性樹脂に白色顔料フィラーを30〜40重量%添加したフィルム、又は白色顔料フィラーを30〜40重量%添加したフィルムを延伸してミクロボイドを生成させるなどの内部紙化法によって製造されたシート、または上記フィルムの表面に接着剤を用いて白色顔料を塗布したシート、あるいはフィルム表面をサンドブラストにより粗面化するなどの表面紙化法により製造されたシートなどが使用できる。これらの合成紙の目付量に制限はないが、50〜450g/m2 のものが本発明に適している。
【0016】
これらの着色不透明フィルム、透明(着色)フィルム、及び合成紙の製造時、原料の熱可塑性樹脂中に有機系顔料、無機系顔料、金属粉顔料などの顔料を添加して着色することもできる。特に顔料は無機系顔料だけから選ばれて着色がなされているものが好ましい。あるいは使用される顔料の合計量100重量部に対し、無機系顔料の合計含有率が70重量%以上であることが好ましい。プラスチックフィルム又はシートの着色に使用される顔料の合計量100重量部に対し、有機系顔料の合計含有率が30重量%を超えると光触媒物質に対する耐分解性が不十分となり、フィルム又はシートが変退色を起こすことがある。また、透明(無色又は着色)フィルムとは、無機系顔料、及び有機系顔料の何れによっても着色されていないもの、あるいは、上記無機系顔料のみ、又は前記配合比範囲内における無機系顔料と有機系顔料との混合物の少量により着色されたものであって、そのヘイズ値(ASTM D1003)が10以下、または光線透過率が80%以上の透明性を有するものである。これらのフィルム又はシートの厚さには、格別の制限はないが一般に100〜1000μmであることが好ましく、特に200〜500μmであることがより好ましい。
【0017】
繊維布帛としては、織布、編布、不織布のいずれも使用できる。織布としては、平織物(経糸と緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、綾織物(経糸と緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文、8枚斜文など)、朱子織物(経糸と緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)などを好適に使用できる。織物は、前記の他に、拡大法、交換法、配列法、配置法、添糸法、及び/又は削糸法などによって得られるこれらの変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、及びさらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物などが挙げられる。これらの中でも特に平織織物は縦緯方向における織物物性バランスに優れているので好適に用いられる。編布としてはラッセル編が好ましく、不織布としては長繊維を用いた特にスパンボンド不織布などが使用できる。
【0018】
また、繊維布帛の縦糸・緯糸は合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混合繊維のいずれによって製織されたものでもよいが、繊維布帛に直接プリントを施す場合には、天然繊維、例えば、綿、麻、絹など、再生繊維、例えば、レーヨン、及び合成繊維、例えばポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維及びポリエステル繊維などからなる繊維布帛が好ましい。また、繊維布帛が基体シートとして用いられ、それが熱可塑性樹脂によって表面被覆されている場合には、基体シート用の繊維として、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、または、これらの混合繊維などを使用できる。シート状基材又は基体シートに用いられる。繊維糸条としては、モノフィラメント糸条、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績(スパン)糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれであってもよい。また、基体シート用無機繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などのマルチフィラメント糸条が使用できる。本発明においては、これらの繊維糸条のうち、汎用性が高く、引張強力、引裂強力、耐熱クリープ特性などの物性バランスに優れているポリエステル繊維、ナイロン繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ガラス繊維、及びこれらの混合繊維や、混用繊維などから製織されたマルチフィラメント平織繊維織布、または、スパン平織繊維布帛を用いることが好ましい。これらの織布の製織は、シャットル織機、シャットルレス織機(レピア方式、グリッパ方式、ウオータージェット方式、エアジェット方式)などの従来公知の織機を用いて製織することができる。上記の繊維布帛には公知の繊維処理加工、例えば、精練処理、漂白処理、染色処理、柔軟化処理、撥水処理、防水処理、防カビ処理、防炎処理、毛焼き処理、カレンダー処理、及びバインダー樹脂処理などの処理加工を施して使用することが好ましい。
【0019】
本発明に使用される繊維布帛としては、短繊維紡績布(スパン)、またはマルチフィラメント糸条からなる織布であることが好ましく、短繊維紡績糸条の番手としては591dtex(10番手(英式))〜97dtex(60番手)の範囲のもの、特に591dtex(10番手)、422dtex(14番手)、370dtex(16番手)、295dtex(20番手)、246dtex(24番手)、197dtex(30番手)などの短繊維紡績糸条を用いることが好ましい。短繊維紡績糸条の太さが370dtex(60番手)よりも小さいと、得られるシートの引裂強力が不十分になることがあり、またそれが591dtex(10番手)よりも大きいと、得られるシートの破断強力及び引裂強力は向上するが、糸径が太くなり、織交点の凹凸を増すためプリントに好ましい平滑性が不十分になることがある。これらの短繊維紡績糸条は、単糸及び、双糸、さらには単糸3本以上の撚糸、またはこれらの2本合糸、あるいは2本合撚糸などの糸条を経糸及び緯糸として25.4mm(1インチ)間30〜160本打込んで得られる短繊維紡績布が好ましく、特に591〜295dtex(10〜20番手)の単糸、または591〜295dtex(10〜20番手)の双糸を用いて25.4mm(1インチ)間に経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で糸を打込んで得られる短繊維紡績布が最も適して用いることができる。また、糸の撚りは、単糸または2本以上の単糸を引き揃えてS撚り(右)、もしくはZ撚り(左)によって加撚された片撚糸、単糸または2本以上の単糸を引き揃えて下撚りされた加撚糸を2本以上引き揃えて上撚りを掛けた諸撚糸、その他強撚糸など、何れの撚糸であってもよい。これらの撚糸の撚り回数は片撚糸、諸撚糸の普通撚糸で500〜2000回/m、強撚糸で2000回以上/mであることが好ましい。また、糸の番手と撚数との関係を表す比例定数の撚係数の範囲として、撚係数1.3〜3.0程度の甘撚り、撚係数3.0〜4.5程度の普通撚り、撚係数4.5〜5.5程度の強撚糸が挙げられ、特に撚り係数3.0〜4.5の範囲の普通撚り糸であることが好ましい。また、短繊維紡績布の空隙率(目抜け率)は、0〜8%のものが好ましく適している。空隙率が8%を越えると、経緯方向の繊維糸条の含有量が少なくなりすぎて得られるシートの寸法安定性が不十分になることがあり、さらに、シートの引裂き強度と突起物に対する耐貫通性が不十分になり、このため実用的に不満足なものとなることがある。空隙率は繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率の測定には経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として用いることが好ましい。シート状基材又は基体シート用短繊維紡績布の目付量は、100〜600g/m2 であることが好ましい。
【0020】
また、本発明に使用される繊維布帛としては、マルチフィラメント糸条からなる織布も好適に用いることができる。マルチフィラメント糸条としては、111〜2222dtex(100〜2000デニール)の範囲のもの、特に138〜1111dtex(125〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条が好ましい。フィラメント糸条が111dtex(100デニール)よりも細いと、得られるシートの引裂強力が不十分になることがあり、またそれが2222dtex(2000デニール)よりも太いと、得られるシートの破断強力及び引裂強力は向上するが、糸径が太くなり、織交点の凹凸を増すため、プリントに好適な平滑性が得られないことがある。これらマルチフィラメント糸条からなる織布の経糸及び緯糸の打込み密度に特に限定はないが、111〜2222dtex(100〜2000デニール)の糸条を経糸及び緯糸として25.4mm(1インチ)間10〜80本打込んで得られる織布が使用できる。例えば278dtex(250デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間18〜44本、555.6〜1111.1dtex(500〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間14〜38本、1666.7dtex(1500デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間10〜28本程度の打込み組織で得られる目抜け平織織布、または非目抜け平織織布が適している。これらのマルチフィラメント糸条は無撚であっても、撚りが掛けられたものであってもよい。これらの織布の目付量は、50〜400g/m2 のものが適している。また、マルチフィラメント織布の空隙率(目抜け)は、0〜30%のものが好ましく適している。空隙率が30%を越えると、経緯方向の繊維糸条の含有量が少なくなりすぎて得られるシートの寸法安定性が不十分になることがあり、さらにシートの引裂き強度と突起物に対する耐貫通性が不十分になることがあるため実用的に問題となり好ましくない。空隙率は繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率の測定には経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として用いることが好ましい。
【0021】
本発明に使用する短繊維紡績糸条、またはマルチフィラメント糸条は、その汎用性を考慮するとポリエステル繊維であることが好ましい。このポリエステル繊維としては、具体的に、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET)、及びテレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート樹脂から紡糸されるポリエステル繊維が繊維強力及び、溶融紡糸性の観点で好ましく使用できる。本発明に使用する繊維布帛のうち、空隙率(目抜け率)0〜8%の短繊維紡績布、特に空隙率5%以下の短繊維紡績布に、後述の熱可塑性樹脂被覆を施すには、有機溶剤に溶解して調製された熱可塑性樹脂溶液、または水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などを用いるデッピィング加工(繊維布帛への両面加工)、又はコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)を利用することが好ましい。また、空隙率(目抜け率)0〜30%のマルチフィラメント織布、特に空隙率5%以下のマルチフィラメント織布に、後述の熱可塑性樹脂被覆を施すには、有機溶剤に溶解して調製された熱可塑性樹脂溶液、または水中で乳化重合して調製された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などを用いてデッピィング加工(繊維布帛への両面加工)、又はコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)を施すことが好ましい。空隙率5〜30%のマルチフィラメント織布は、後述の熱可塑性樹脂から得られたフィルム成型物を、織布の片面または両面に、接着剤を用いて、あるいは熱圧着によって積層して熱可塑性樹脂被覆層を形成するのに適している。
【0022】
上記繊維布帛は、その少なくとも1面が熱可塑性樹脂によって表面被覆されていることが好ましく、本発明においては特に繊維布帛の両面が熱可塑性樹脂によって表面被覆されていることが、防水性と熱融着接合性が優れているという点において好ましい。被覆用熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッソ系樹脂、及びこれらの樹脂の共重合体樹脂(熱可塑性エラストマー)などが挙げられ、これらの熱可塑性樹脂の単独使用もしくは、2種以上をブレンドして使用、あるいは2層以上を積層して使用することができる。本発明においては、繊維布帛を被覆する熱可塑性樹脂としては、特にポリ塩化ビニル系樹脂が、樹脂特性、樹脂耐久性、成形加工性、汎用性などに優れているという理由から最も好ましく使用できる。また、特に環境問題に配慮して、焼却廃棄時にハロゲン化水素ガスを排出しない、ハロゲン非含有産業資材シートが所望される場合においては、特にポリオレフィン系樹脂及びポリウレタン系樹脂などが最も好適に使用される。
【0023】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単一重合体及び塩化ビニル系共重合体樹脂を包含し、具体的に、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル−ウレタン共重合体樹脂などが挙げられ、これらの樹脂は単一種でもよく、或は2種以上を併用することができる。本発明において、熱可塑性樹脂による表面被覆層の厚さに特に制限はないが、表面被覆層(固形分付着量)が、50〜500g/m2 、特に100〜350g/m2 に形成されることが好ましい。表面被覆層の被覆量が50g/m2 未満であると、被覆層の摩耗耐久性が十分に得られないことがあり、また、それが500g/m2 を超えるとシートの質量が重くなりすぎることがある。
【0024】
上記ポリ塩化ビニル樹脂は、乳化重合によって得られた数平均分子量、P=700〜3800、好ましくは1000〜2000のペースト塩化ビニル樹脂、または懸濁重合によって得られ、数平均分子量、P=700〜3800、好ましくは1000〜2000のストレート塩化ビニル樹脂、から選ばれることが好ましい。また、上記塩化ビニル系共重合体樹脂(数平均分子量、P=700〜3800)中に含まれる共重合成分は、2〜30重量%であることが好ましい。本発明において、繊維布帛を被覆する熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂を用いる場合、その配合物として公知の軟質配合物を用いることができるが、特に軟質配合物に使用される可塑剤としては、平均分子量が380〜560のフタル酸エステル系可塑剤のほか、可塑剤揮散防止効果の観点から平均分子量が900〜6000、特に1000〜3200のポリエステル系可塑剤を含むことが好ましく、さらに可塑剤揮散防止効果の観点から、平均分子量が10000以上、特に20000以上のエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素3元共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素3元共重合体樹脂などの高分子可塑剤を用いることが好ましい。ポリエステル系可塑剤は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどから任意に合成されたものが使用できる。これらの可塑剤の好ましい使用例としては、1).ペースト塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤の合計量として40〜100重量部を含む配合物があり、可塑剤の10〜50重量%がポリエステル系可塑剤であることが好ましい。この組成物はそれに有機溶剤を添加して、コーティング加工、及びデッピング加工に適した液粘度に調整することができる。2).ストレート塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤をその合計量として50〜100重量部を配合したものであり、可塑剤の30〜100重量%がポリエステル系可塑剤であることが好ましく、このコンパウンド組成物をカレンダー成型、T−ダイ押出成型などに供してフィルムに成型される。3).ストレート塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤の合計量として60〜140重量部を配合したものであり、この可塑剤の30〜100重量%が高分子可塑剤であることが好ましく、このコンパウンド組成物をカレンダー成型、又はT−ダイ押出成型などに供してフィルムに成型する。
〔註〕2)と3)において、ストレート塩化ビニル樹脂の代わりにペースト塩化ビニル樹脂を使用することもできる
前記塩化ビニル樹脂配合物において、安定剤は公知のものから適宜選定して使用すればよく、必要に応じて、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など公知の添加剤を使用できる。
【0025】
上記のポリオレフィン樹脂としては、オレフィン系単一樹脂及びオレフィン系共重合体樹脂を包含し、具体的に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂とエチレン−プロピレン共重合体樹脂とのリアクター重合樹脂、ポリプロピレン樹脂とエチレン−プロピレン−共役ジエン系共重合体樹脂とのリアクター重合樹脂などが挙げられ、これらの樹脂は単一種で用いられてもよく、或は2種以上を併用することができる。これらのポリオレフィン系樹脂の中で、特にエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂としては、チーグラー・ナッタ系触媒、あるいはメタロセン系触媒の存在下、気相法、スラリー液相法、または高圧法によってエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるものが好ましく、この共重合体は、密度:0.880〜0.920g/cm3 、メルトインデックス:0.3〜10g/10min のものが好ましく用いられ、α−オレフィンモノマーとしては、例えばプロピレン、ブテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1などが用いられる。これらの樹脂は、カレンダー成型、T−ダイ押出成型などによってフィルムに成型される。
【0026】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとをラジカル共重合して製造され、かつ、酢酸ビニル成分含有量が6〜35重量%、好ましくは15〜30重量%のエチレン系共重合体樹脂であることが好ましく、また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと(メタ)アクリル酸モノマーとのラジカル共重合によって製造され、かつ、(メタ)アクリル酸成分の含有量が6〜35重量%、好ましくは15〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂が好ましく、また、エチレンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーとのラジカル共重合によって製造され、かつ、(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が6〜35重量%、好ましくは15〜30重量%であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂などが好ましく、これらは単一種で用いられてもよく、或は、その2種類以上の混合物として用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルとは、具体的に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどである。これらのエチレン系共重合体樹脂の密度は0.925〜0.960g/cm3 であることが好ましく、またそのメルトインデックスは、0.3〜10g/10min であることが好ましい。これらの樹脂は、カレンダー成型、T−ダイ押出成型などによってフィルム成型される。
【0027】
上記ポリオレフィン系樹脂には、その柔軟性、及び加工性を改良する目的で、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−共役ジエン系ゴムなどのソフト成分、及び、上記ポリオレフィン系樹脂との架橋、加硫アロイ体であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などを含有させてもよい。特に、上記ポリオレフィン系樹脂の柔軟化と樹脂改質との目的から、ポリオレフィン系樹脂に、スチレン系共重合体樹脂をブレンドして使用することが好ましい。このスチレン系共重合体樹脂としては、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(Aはスチレン重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックである。)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(AとBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合樹脂及び、これらのスチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂(二重結合を水素置換したもの)などである。これらの市販品としては、例えば、シェル.ケミカル社のスチレン系共重合体樹脂(商標:クレイトンG)、旭化成工業(株)のスチレン系共重合体樹脂(商標:タフテック)、(株)クラレのスチレン系共重合体樹脂(商標:ハイブラー、商標:セプトン)、日本合成ゴム(株)のスチレン系共重合体樹脂(商標:ダイナロン)などが挙げられる。これらのスチレン系共重合体樹脂は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、10〜50重量部をブレンドして使用することが好ましい。これらの配合には、必要に応じて、安定剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、架橋剤、硬化剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など、公知の添加剤を使用することができる。これらの樹脂は、カレンダー成型、T−ダイ押出成型などによってフィルム成型される。
【0028】
また、繊維布帛の表面被覆用熱可塑性樹脂には、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂、酢酸ビニル−マレイン酸ジブチル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂、アクリル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー樹脂など、及び、これらの混合物樹脂が用いられ、更に、これらの樹脂の重合体分子中に水酸基、カルボン酸基、4級アンモニウム塩基などを導入した変性体などのエマルジョン樹脂、またはディスパージョン樹脂が挙げられる。また、熱可塑性樹脂エマルジョンは、コア−シェル型異相構造のハイブリッドエマルジョンも使用できる。また、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシル変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、及び2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体などの熱可塑性ゴムのラテックスなども使用できる。本発明のシートの樹脂被覆層の形成には、これらの熱可塑性樹脂を、有機溶剤中に可溶化、または分散された樹脂含有溶液を用いることによって、または上記熱可塑性樹脂を乳化重合して水中に分散安定化したエマルジョン樹脂、または上記熱可塑性樹脂を水中に強制分散したディスパージョン樹脂などを用い、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、ナイフコート法、キスコート法、フローコート法など公知のコーティング法、またはデッピング法などによって基材の表面に樹脂溶液を均一に塗布し、これを乾燥して樹脂被覆層を形成することができる。本発明において、熱可塑性樹脂による表面被覆層の厚さに特に制限はないが、上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせなどによって、表面被覆層(固形分付着量)が、50〜500g/m2 、特に100〜350g/m2 に形成されることが好ましい。表面被覆層が50g/m2 よりも少ないと、被覆層の摩耗耐久性が十分に得られないことがあり、また、それが500g/m2 を超えるとコーティング処理の回数が増大するだけでなく、本発明のシートの質量が過度に重くなることがある。
【0029】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンには、エチレンと酢酸ビニルとの乳化重合によって得られる60〜90重量%の酢酸ビニル成分を含有するものが包含される。また酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンは、エチレンと酢酸ビニル及び、バーサチック酸ビニルとの乳化重合によって得られる60〜90重量%の酢酸ビニル及び、バーサチック酸ビニル成分を含有するものを包含する。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂エマルジョンとしては、エチレンと(メタ)アクリル酸との乳化重合によって得られるもの、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの乳化重合によって得られるもので、(メタ)アクリル酸(エステル)成分含有量が60〜90重量%のエマルジョン樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとは、具体的に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどである。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂の変性体樹脂としては、オレフィン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体をベース樹脂として、そのカルボキシル基の5〜90%を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂ディスパージョンなども使用でき、アイオノマー樹脂を中和する金属イオンとしては、Zn++,Na+ の金属イオンである。またディスパージョン樹脂としては、酢酸ビニル成分含有量が10〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及び、(メタ)アクリル酸(エステル)成分含有量が10〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂などの共重合体を水中に強制分散させたものも使用できる。これらのエマルジョン及び、ディスパージョン樹脂の樹脂固形分含有量に限定はないが、樹脂固形分含有率20〜70重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0030】
有機溶剤に溶解または分散させて使用できるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂としては、エチレンと共重合成分とのラジカル重合法により製造され、かつ共重合体成分の含有率が18〜38重量%、メルトインデックスが1.0〜10g/10min の共重合体樹脂が好ましく使用できる。共重合体成分含有率が18未満であり、或はメルトインデックスが1.0未満であると、有機系溶剤に溶解することが困難となることがあり、また共重合体成分含有率が38を越え、或はまたメルトインデックスが10を越えると、有機系溶剤に可溶ではあるが、被覆形成された樹脂層の樹脂強度が低下することがあり、また、樹脂被覆層にベタつきを生じてシートの巻き取り時にブロッキングを起こし易くなることがある。これらの熱可塑性樹脂の有機溶剤に対する固形分含有率としては特に制限はないが、上記熱可塑性樹脂の1種以上を10〜50重量%含有することが好ましい。
【0031】
また上記スチレン−アクリル酸共重合体樹脂としては、スチレンと(メタ)アクリル酸(エステル)とのラジカル重合によって得られるスチレン樹脂が挙げられる。例えばスチレンとアルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタアクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルアクリレートの他、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル、これらは単独、あるいは2種以上を併用してスチレンと共重合されるものが挙げられる。このスチレン−アクリル酸共重合体樹脂を、有機溶剤中に10〜40重量%の固形分濃度で溶解させたものが使用できる。またスチレンモノマーと(メタ)アクリル酸(エステル)との乳化重合によって得られるスチレン−アクリル酸共重合体樹脂エマルジョンまたはディスパージョン樹脂を使用することもできる。これらの樹脂固形分含有率は20〜60重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0032】
また上記ポリウレタン系樹脂としては、ジイソシアネート化合物とヒドロキシル基を分子構造内に2個以上有するポリオール化合物の中から選ばれた1種以上とイソシアネート基と反応する官能基を含有する化合物との付加重合反応によって得られるものが使用できる。ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)のジイソシアネート化合物が用いられ、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール化合物としては、分子量300〜10000、好ましくは、500〜5000であり、ジイソシアネート化合物と反応する量を含有するものが用いられる。ポリウレタン系樹脂は、用いるポリオールの種類に応じてポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂が使用できる。またこれらは有機溶剤中に10〜40重量%の固形分濃度で溶解されていることが好ましい。またこれらには必要に応じてジイソシアネートまたは、イソシアネート基を分子内に3個以上含有するポリイソシアネート化合物を添加して、その被膜強度及び、耐熱性などを向上、改善させることができる。本発明に用いられるポリウレタン樹脂としては、上記ジイソシアネート化合物の中から特に脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)ジイソシアネートとポリオール化合物から得られるポリウレタン系樹脂が好ましく、これらは耐光性に優れている。またポリウレタン系樹脂エマルジョンとしては、上記ジイソシアネートと上記ポリオール化合物との乳化重合によって得られるポリウレタン系樹脂エマルジョンが使用できる。これらのエマルジョン中の樹脂固形分含有率は20〜60重量%、特に30〜50重量%であることが好ましい。
【0033】
本発明において、繊維布帛を被覆する上記熱可塑性樹脂には、ハロゲン非含有難燃性化合物を配合することによって防炎性を付与したものが産業資材としての用途上好ましく、さらに、本発明の防汚性プリントシートは、消防法に定められる防炎試験に適合することが好ましい。ハロゲン非含有難燃性化合物としては、リン含有化合物、窒素含有化合物、無機系化合物のいずれか1種以上であることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、ハロゲン非含有難燃性化合物を好ましくは10〜100重量部、より好ましくは30〜80重量部配合する。具体的にリン含有化合物としては、赤リン、(金属)リン酸塩、(金属)有機リン酸塩、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられ、また、窒素含有化合物としては、(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物及びこれらの誘導体化合物であり、無機系化合物としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属複合酸化物、金属複合水酸化物などである。これらのハロゲン非含有難燃性化合物は2種以上を併用して配合することが好ましい。ハロゲン非含有難燃性化合物の配合量が10重量部未満では、防炎性が不十分になることがあり、また、それが100重量部を超えると、加工性と樹脂被膜の摩耗耐久性とを不十分にすることがある。
【0034】
本発明の防汚性プリントシートの、繊維布帛を表面被覆する熱可塑性樹脂は、無色であってもよいが、顔料着色されていることが好ましく、特に白、パステル色などに着色されていることにより、プリントが鮮明に観察されるので好ましい。顔料着色に使用する顔料としては、特に無機系顔料のみを用いて着色がなされていることが特に好ましいが、有機系顔料を併用してもよい。無機系顔料と有機系顔料とを併用する場合、使用する顔料の合計量に対し、無機系顔料合計の含有率が70重量%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の着色に使用する顔料の合計量に対し、有機系顔料合計の含有率が30重量%を超えると、有機系顔料の化学構造が光触媒物質の酸化還元作用によって変質し、熱可塑性樹脂被覆層の変退色が際だって目立ち、見栄えを悪くすることがある。本発明の熱可塑性樹脂を着色するに好ましい無機系顔料の具体例は、金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、クロム酸金属塩、カーボンブラック、スピネル型構造酸化物、ルチル型構造酸化物などである。
【0035】
金属酸化物としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、三酸化アンチモン、酸化鉄(鉄黒、べんがら)、黄色酸化鉄、フエロシアン化鉄(紺青)、紺青と黄鉛との混合物(ジンクグリーン)、酸化鉛(鉛丹)、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化コバルトと酸化アルミニウムの複合物(コバルトブルー)、酸化コバルトと酸化錫と酸化マグネシウムとの複合物(セルリアンブルー)、酸化コバルトと酸化リチウムと五酸化リンの複合物(コバルトバイオレット)、酸化コバルトと酸化亜鉛と酸化マグネシウムとの複合物(コバルトグリーン)、リン酸コバルト(コバルトバイオレット)、リン酸マンガン(マンガン紫)などが挙げられる。また、金属硫化物としては、硫化亜鉛と硫酸バリウムの複合物(リトポン)、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カドミウム(カドミウムイエロー)、硫化カドミウムと硫化水銀との複合物(カドミウムマーキュリーレッド)、硫化水銀(銀朱)、硫化カドミウムとセレニウム−カドミウムの複合物(カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、カドミウムイエロー)、硫化アンチモンと三酸化アンチモンの複合物(アンチモン朱)などが挙げられる。金属硫酸塩としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、塩基性硫酸鉛、モリブデン酸鉛と硫酸鉛の複合物(モリブデンレッド)などが挙げられる。また、金属炭酸塩としては、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸鉛と水酸化鉛の複合物(鉛白)などが挙げられる。また、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム(アルミナホワイト)、水酸化アルミニウムと硫酸カルシウムの複合物(サチン白)、水酸化アルミニウムと硫酸バリウムの複合物(グロスホワイト)、クロム酸水和物(ビリジアン)などが挙げられる。また、クロム酸金属塩としては、クロム酸鉛(黄鉛)、クロム酸亜鉛(亜鉛黄)、クロム酸バリウム、クロム酸鉛と酸化鉛の複合物(赤口黄鉛)、クロム酸鉛とモリブデン酸鉛と硫酸鉛との複合物(クロムバーミリオン)などが挙げられる。また、スピネル型構造酸化物としては、「XY2 O4 」の構造式で表される酸化物において、XY成分が、Co−Al,Co−Al−Cr,Co−Mg−Sn,Co−Ni−Ti,Co−Zn−Ni−Ti,Co−Zn−Cr−Ti,Zn−Cr−Ti,Zn−Cr−Fe,Co−Zn−Cr−Fe,Co−Ni−Cr−FE−Si,Co−Mn−Cr−Fe,Cu−Mn−Cr,Mn−Feなどの金属複合酸化物が挙げられる。また、ルチル型構造酸化物としては、「〔Ti(XY)O2 〕」の構造式で表される酸化物において、XY成分が、Pb−Sb,Ni−Sb(チタンイエロー)、Ni−W,Fe−Mo,Cr−Sbなどの金属複合酸化物が挙げられる。その他カーボンブラック、チタンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、シリカ、ホワイトカーボン、ケイ藻土、タルク、クレー、アルミニウム粉顔料、ブロンズ粉、ニッケル粉、ステンレス粉、パール顔料などを目的に応じて、これらの無機系顔料の1種または、2種以上を組み合わせて着色使用する事ができる。
【0036】
本発明においては、プリントを施すシート状基材の樹脂被覆層に隠蔽性を与えるために、特に無機系顔料として、その一部に酸化チタン(TiO2 )を使用して着色することが、プリントの鮮明性の観点で好ましい。酸化チタンとしては、チタン鉱石を硫酸と反応させて硫酸チタニルとし、これを加水分解して得た含水酸化チタンを焼成して得られるルチル型酸化チタン、及びアナタース型酸化チタン、またはチタン鉱石を還元剤と共に塩素を反応させ、得られた四塩化チタンを酸素と反応させて得られるルチル型酸化チタンなどが挙げられる。本発明に使用する酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンを使用することが耐候性の観点で好ましく、粒子径としては0.05〜0.5μm、好ましくは平均粒子径が0.2〜0.35μmの酸化チタンが隠蔽性に優れ適している。また、本発明においては、これらの無機系顔料は、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂によって表面被覆処理された熱硬化性樹脂被覆顔料を使用しても良い。
【0037】
本発明のシート状基材において、繊維布帛からなる基体シートを被覆する熱可塑性樹脂の着色には上記無機系顔料以外に、有機系顔料を含む着色料を用いてもよく、この場合顔料の合計量に対し、有機系顔料合計の含有率が30重量%未満であることが好ましい。具体的に、有機系顔料としては、アゾ系顔料、(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料)、縮合多環系顔料(アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料)、その他ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、金属錯塩アゾメチン顔料、アニリン系顔料などが挙げられ、これらの有機系顔料は、その1種または、2種以上を前記無機系顔料と組み合わせて使用する事ができる。また、これらの有機系顔料をメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂中に配合充填したものを微紛化、粉砕した熱硬化性樹脂被覆顔料を使用してもよい。
【0038】
これらの無機系顔料による着色剤、または無機系顔料と有機系顔料との併用着色剤の添加量に関しては、目的とする色相に応じて適宜に設定することができるため、制限はないが、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは、1〜30重量部である。着色剤の添加量が、0.1重量部以下では、熱可塑性樹脂被覆の着色効果が十分になり、かつ隠蔽性が不十分になることがあり、また、それが50重量部を超えると、熱可塑性樹脂被覆の成形性を不良にするだけでなく、熱可塑性樹脂被覆層の被膜強度と被膜摩耗強力が著しく不十分になることがある。これらの着色剤の製品としては、着色時の発色安定性を得るために、分散剤で表面処理された加工顔料を使用することが好ましい。分散剤としては、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、マルセルセッケン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、スチレン−マレイン酸樹脂、ポリアクリル酸誘導体などの水性分散剤が挙げられ、また、油分散剤としては、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアクリル酸の部分脂肪酸エステル、アルキルアミン脂肪酸塩、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、ナフテン酸金属セッケンなどが挙げられる。これらの分散剤処理された着色顔料は、取り扱い性を向上させるために、その他、ビヒクル、プレスケーキ、樹脂、ワックス、可塑剤、水などを添加して、それぞれ、フラッシュドカラー、水性液状カラー、油性液状カラー、ペーストカラー(ビニルトーナーカラー)、ドライカラー、潤性カラー、マスターバッチ、カラードペレットなどの形態に調整された加工顔料を使用することが好ましい。本発明においてシート状基材の繊維布帛からなる基体シートを被覆する熱可塑性樹脂の着色剤として、熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である場合には、ペースト塩化ビニル樹脂には、潤性カラーまたはペーストカラー(ビニルトーナーカラー)の形態が好適に用いられ、またストレート塩化ビニル樹脂には、ドライカラーまたは、マスターバッチの形態が好適に用いられる。また、カレンダー加工、T−ダイ押出し加工、インフレーション加工などの熱可塑性樹脂の溶融混練加工に対しては、ドライカラー、マスターバッチ、カラードペレットの形態が好適に用いられる。特にポリオレフィン系樹脂の成形加工などに対しては、無機系顔料を分散剤、ワックスと共にポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂中に高濃度で充填したカラードペレットの形態が好適に使用できる。また、熱可塑性樹脂が、水性エマルジョンの場合には、水性液状カラーの形態が好適に使用でき、また、溶剤系塗料、印刷インクの場合には、フラッシュドカラー、ペーストカラー、ドライカラー、油性液状カラーなどの形態が好適に使用できる。
【0039】
本発明の防汚性プリントシートにおいて、基材(繊維布帛、フィルム)の表面に直接画像やプリントされてもよく、また、あるいは上記繊維布帛からなる基体シートの表面に形成された熱可塑性樹脂被覆層の表面上画像がプリントされていてもよい。また、さらに、このプリントを施した基材面上に、光触媒性物質含有最外面防汚層が形成され、プリントを施した基材面と光触媒性物質含有最外面防汚層との中間には、シート状基材及びプリントされた画像を保護するための中間保護層が形成されていることが好ましい。また、本発明の防汚性プリントシートは、基材(繊維布帛、フィルム)の表面に直接プリントが施されてもよく、また、あるいは上記繊維布帛からなる基材シートの表面に形成された熱可塑性樹脂被覆層の面上にプリントが施されていてもよい。また、さらに、このプリントを施した基材面上に、光触媒性物質含有最外面防汚層が形成され、プリントを施した基材面と光触媒性物質含有最外面防汚層との中間には、中間保護層と透明な熱可塑性樹脂層とが形成されていることが好ましい。また、本発明の防汚性プリントシートは、基材(繊維布帛、熱可塑性樹脂被覆された繊維布帛基材、フィルム)と光触媒性物質含有最外面防汚層との中間に、中間保護層と透明樹脂層とを形成して含む構成において、透明樹脂層面に画像がプリントされ、この画像プリント面がシート状基材に対向して接合されていることが好ましい。
【0040】
基材(繊維布帛、熱可塑性樹脂被覆された繊維布帛基材、フィルム又は合成紙)面へのプリント、もしくは透明樹脂層面に対するプリントは、グラビア(彫刻凹版)印刷、スクリーン(画線孔版)印刷、オフセット印刷、及び転写印刷など何れかの公知の方法によって施すことができ、プリントされる画像は柄、絵柄、写真、図案、文字などの何れでもよく、特に限定はない。これらの画像をプリントするためのインキの成分組成としては、有機系顔料、無機系顔料の着色剤成分と、バインダー成分と、可塑剤、軟化剤などの被膜柔軟化剤、その他、耐摩擦性向上剤、顔料分散剤、色分れ防止剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、レベリング剤、ツヤ消し剤、希釈剤などの成分から構成されたものが使用できる。このうち有機系顔料としては従来公知の顔料、例えば、不溶性アゾ系、溶性アゾ系、銅フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、ベンチジン系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、ポリアゾ系など、無機系顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロームイエロー、クロームバーミリオン、紺青、群青、黄色酸化鉄、べんがら、鉄黒、カーボンブラックなどが挙げられる。本発明において、基材(繊維布帛、フィルム)の表面に直接プリントが施されるか、あるいは繊維布帛などの基体シート表面に形成された熱可塑性樹脂被覆層面にプリントが施され、プリントを施した基材面と光触媒性物質含有最外面防汚層との中間に、中間保護層を含む構成において、特にプリント層に含有される着色顔料のうちに、無機系顔料成分が20重量%以上含有されていることが耐候性の観点上好ましい。それ以外の場合で、プリントを施した基材面と光触媒性物質含有最外面防汚層との中間に、中間保護層/透明樹脂層を含む構成においては、プリント層に含有される無機系顔料成分の含有率に制限はない。また、インクのバインダー成分としては、インキの種類によって異なるが、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(ダイマー酸とジアミンの縮合物)、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂(塩素化度25〜65重量%)、ニトロセルロース、セルロースエステル類、セルロースエーテル類、硬化ロジン(アビチエン酸との金属塩)、二量化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、環化ゴム、塩化ゴムなどから適宜選ばれて調製され、それぞれグラビア印刷用インキ、スクリーン印刷用インキ、オフセット印刷用インキ、及び転写印刷用インキとして使用できる。
【0041】
また、本発明の防汚性プリントシートにおいて、画像のプリントはインクジェット印刷によって施されることが好ましい。インクジェット印刷においては、デジタルカメラ又はコンピューターに取り込まれたデジタル画像が、出力媒体に直接カラー印刷されるため、従来の印刷方式で不可欠であったグラビア彫刻ロールの作製、スクリーン製版などが一切不要で、容易に高精度の写真画像のプリントが得られる。インクジェット印刷は、溶剤インキ、油性インキなどでプリントする方法と、水性インキでプリントする方法があり、本発明のシートにおいては、何れの方法でもプリント可能であるが、特に油性インキでプリントを施すことが、耐候性の観点で好ましい。
水性インキは、顔料、染料の分散溶媒として水と水溶性有機溶剤を主成分とするものである。水溶性有機溶剤のうち、多価アルコール類、ピロリドン類は湿潤剤として使用され、また、グリコールエーテル類は浸透剤として使用される。顔料の含有量としては、水性インキ全重量に対し、50〜90重量%の範囲であり、その他、水性インキ中にはpH調整剤、界面活性剤、水性高分子分散剤、キレート化剤、消泡剤、防腐防黴剤などの添加剤が使用される。また油性インキは、顔料の分散溶媒として、ガス油、ナフサ、あるいは150℃以上の沸点をもつ有機溶剤を主体とするインキである。溶剤系インキは、顔料の分散溶媒として、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどの150℃以下の沸点をもつ有機溶剤を主体とするインキである。溶剤系インキ及び、油性インキの組成において、有機系顔料、染料などの着色剤と有機溶剤の他、バインダー樹脂として、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂などの熱可塑性樹脂が含まれ、その他添加剤として、界面活性剤、キレート化剤、防腐防黴剤などの添加剤が含まれる。水性インキに使用できる染料としては、天然染料、合成染料など従来公知の染料、例えばニトロソ系、ニトロ系、アゾ系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、キノリン系、メチン系、ポリメチン系、チアゾール系、インダミン系、インドフェノール系、アジン系、オキサジン系、チアジン系、アミノケトン系、オキシケトン系、アントラキノン系、インジゴイド系、フタロシアニン系の染料が使用できる。また、水性インキ、溶剤系インキ、油性インキに使用できる顔料としては、有機系顔料、無機系顔料など従来公知のもの、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジコ系、ベンチジン系、チオインジコ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、酸化チタン、カドミウム系、酸化鉄系、カーボンブラック系の顔料が挙げられる。
【0042】
また、本発明の防汚性プリントシートは、インクジェット印刷によるプリント性を向上させるために、繊維布帛、フィルムなどの基体シートの表面に熱可塑性樹脂被覆層を形成することが好ましく、この熱可塑性樹脂被覆層には、インキの定着性と発色性とを向上させる目的で、定着剤及び/又は、白色微粒子を含有することが好ましい。特に水性インキでプリントを行うに際しては、これらの熱可塑性樹脂中に、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリエチレンポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ジシアンジアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体樹脂などの親水性樹脂を、熱可塑性樹脂100重量部に対し、5〜30重量%の含有量で併用することにより、水性インキの濡れ性が改善されプリント画像が鮮明となる。また、樹脂被覆層の耐摩耗性向上及び、耐水性の向上を目的として、硬化剤や架橋剤を含有させることもでき、例えば、エポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などを、使用する樹脂配合系の官能基の種類及び、量に応じて適量使用することができる。
【0043】
また、特にインクジェット印刷を施す熱可塑性樹脂被覆層又は透明樹脂層には、水性インキの定着を向上させることを目的に、定着剤(耐水化剤)を含むことが好ましい。定着剤としては、インクの分子構造に含まれるスルホン酸基、カルボン酸基とイオン結合して水に不溶性の錯体を形成することができるカチオン性化合物を使用するのが好ましく、カチオン性化合物としては発色性、溶出性を考慮してカチオン系樹脂から選択することができる。カチオン系樹脂の例としては、ポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、(メタ)アクリル酸アルキル4級アンモニウム塩、(メタ)アクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリスチレン4級アンモニウム塩、ポリビニールピリジウムハライド、ポリビニールベンジルトリメチルアンモニウム塩などであり、熱可塑性樹脂100重量部に対し、5〜30重量%併用することが好ましい。
【0044】
また、特にインクジェット印刷を施す熱可塑性樹脂被覆層、及びグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などを施す熱可塑性樹脂被覆層には、プリントインキの定着を向上させることを目的として、白色微粒子を含むことが好ましい。白色微粒子としては、シリカ、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイト、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ケイ藻土、酸化チタンなどの無機系化合物微粒子及び、ナイロン系樹脂微粒子、尿素系樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などの有機系化合物微粒子、その他の微粒子として、セルロース微粒子、ケラチン微粒子、キトサン微粒子、アルギン酸重合物微粒子、アミノ酸重合物微粒子(プロテイン)、コラーゲン変性化合物微粒子などの天然物由来の有機系化合物微粒子が挙げられ、なかでもシリカが特に好ましく使用されている。シリカ(二酸化珪素)としては、珪酸ソーダと鉱酸(硫酸)及び塩類を、水溶液中で反応させる湿式法によって得られる合成非晶質シリカを使用することが好ましい。この湿式法によって合成された非晶質シリカは、シリカ表面のシラノール基(Si−OH基)に水素結合で結合する水分と、シラノール基自体が含有する水酸基として存在する水分を結合水分として有する含水シリカである。このシリカの平均凝集粒径としては、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、特に2〜10μmの非晶質含水シリカを用いることが好ましい。非晶質含水シリカの含水率としては、3〜15重量%、特に5〜10重量%の非晶質含水シリカを、熱可塑性樹脂100重量部に対し、10〜80重量%配合して用いることが好ましい。シリカの配合量が10重量%より少ないと、得られるシートのインキ吸着性及び、発色性が不十分となることがあり、また、シリカの配合量が80重量%を超えると、熱可塑性樹脂被覆層の耐磨耗性が不十分になることがある。
【0045】
上記熱可塑性樹脂被覆層の厚さは、被覆層の重量(固形分付着量)が、好ましくは50〜500g/m2 、より好ましくは100〜350g/m2 になるように形成される。被覆層の重量が50g/m2 よりも少ないと、得られる被覆層の摩耗耐久性が十分に得られないことがあり、また、それが500g/m2 を超えるとシートの質量が重くなりすぎることがある。また、このなかで、特にインクジェット印刷を施す熱可塑性樹脂被覆層の形成は、その最外層だけを、上記インクジェット印刷に適合した構成としてもよく、前記熱可塑性樹脂被覆層上に、上記定着剤、及び/又は白色微粒子を含有する熱可塑性樹脂プリント適合層を、固形分付着量で好ましくは5〜60g/m2 、より好ましくは10〜35g/m2 で形成することができる。この熱可塑性樹脂プリント適合層の形成が、固形分付着量が5g/m2 よりも少ないと、本発明のシートの印刷性、及び発色性が十分に得られないことがある。本発明のシートに対するインクジェット印刷方法としては、公知の印刷方法、及び市販のインクジェットプリンターを用いて行うことができる。
【0046】
本発明の防汚性プリントシートにおいて、中間保護層に使用できる樹脂としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フォスファーゼン系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は粘性を有する塗工剤であり、熱または光によって塗膜形成性を有するものが好ましい。このうちシリコーン系樹脂としては、クロロシラン、或はアルキル基、アルケニル基、又はアリル基、を有するアルコキシシランを単独ないし、複数種を無溶剤または有機系溶剤中で加水分解して重合した直鎖シリコーン樹脂、共重合シリコーン樹脂、シリコーンゴムなど、が用いられ特に共重合シリコーン樹脂としてSi−OH基、及び/又はSi−OMe基を有する2官能以上の変性シリコーン(例えば、シラノール基あるいはアルコキシ基を有するメチルフェニルシリコーン樹脂)とアルコール性水酸基含有樹脂とを、アルキルチタネート触媒の存在下で反応させて得られるシリコーン変性体類、例えばアクリル変性シリコーン樹脂、アクリル−ウレタン変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン−フッ素共重合体樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、フェノール変性シリコーン樹脂などを用いることができる。また、シロキサン架橋可能なシリコーン変性共重合体、シロキサン架橋可能なシリコーン変性オリゴマー、イソシアネート架橋可能なシリコーン変性共重合体、イソシアネート架橋可能なシリコーン変性オリゴマーなどを使用することもできる。これらのシリコーン樹脂中のシリコーン変性成分の含有率は、中間保護層に占める固形分で20〜75重量%であることが好ましい。
【0047】
また中間保護層用フッ素系樹脂としては、ビニルエーテル−フルオロオレフィン共重合体樹脂、ビニルエステル−フルオロオレフィン共重合体樹脂及び、これらのフッ素系樹脂とイソシアネート化合物の併用組成物などが挙げられる。また、中間保護層用メラミン系樹脂としては、シアヌルアミド、シアヌル酸トリアミド、シアヌル酸アミド、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン及びこれらの誘導体から選ばれた1種以上のメラミン化合物とホルマリンを反応させ、メチロール化メラミンの初期縮合物をブタノールで変性しブチル化メチロールメラミンとして有機系溶剤に可溶化させたもの、さらにブチル化メチロールメラミンをアルキッド樹脂とともに有機系溶剤に可溶化させたものなどが挙げられる。
【0048】
中間保護層用エポキシ系樹脂としては、エピクロルヒドリンと多価フェノール類との開環付加反応によって得られるもの、汎用的にはエピクロルヒドリンとビスフェノールA、またはレゾールとの反応によって得られる重縮合物が使用でき、有機系溶剤中にアミン類、有機酸、酸無水物及びポリイソシアネート化合物などの硬化剤と共に用いて使用でき、さらにアルキッド樹脂、メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂などと併用したものが挙げられる。
また中間保護層用フォスファーゼン系樹脂としては、(PNCl2 )n (n=1,2,3,4)などの塩化ホスファーゼン及び、直鎖状塩化ホスファーゼンオリゴマー、または(PNCl2 )n (n=2,3,4)の4員環、6員環、8員環の環状塩化ホスファーゼンを原料として塩素をアクリル酸化合物に置換した反応性ホスファーゼン化合物の紫外線硬化物が挙げられる。ホスファーゼン化合物に付加して置換されるアクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0049】
上記中間保護層の形成に用いる塗工液には、有機系溶剤を添加して濃度を調整することができ、それによって中間保護層の塗膜厚さを適宜に設定することができる。このような有機系溶剤としては、例えば、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、及び酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、その他テトラヒドロフランなどから選ばれた1種以上を適宜使用することができる。
【0050】
本発明において、上記中間保護層にはケイ素系化合物が含まれることが好ましく、このケイ素化合物としては、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカが挙げられる。ポリシロキサンとしては、ゾルゲル法によりアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合して得られるものが好ましく、例えばアルコキシシランとして、一般式:Yn SiX4-n (n=1〜3)で表されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解化合物が適している。前記一般式においてYは例えば、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基またはエポキシ基であることができ、Xは例えば、ハロゲン、メトキシル基、エトキシル基、またはアセチル基であることができる。具体的には、アルキル基置換トリクロルシラン、アルキル基置換トリブロムシラン、アルキル基置換トリメトキシシラン、アルキル基置換トリエトキシシラン、アルキル基置換トリイソプロポキシシラン、アルキル基置換トリ−t−ブトキシシランなどが挙げられ、アルキル基としては、それぞれメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、n−オクタデシル基、フェニル基である。また、具体的には、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をトリフルオロプロピル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をビニル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−メタアクリロキシプロピル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−アミノプロピル基に変えたもの、上記アルキル置換シラン化合物のアルキル基をγ−メルカプトプロピル基に変えたものなどが挙げられる。
【0051】
中間保護層用コロイダルシリカとしては、ケイ酸ナトリウム溶液を陽イオン交換することによって得られる水分散媒のシリカゾル(SiO2 )が挙げられる。中間保護層に使用するコロイダルシリカは、その有機系溶剤としてメタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、及び酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、その他テトラヒドロフランなどの1種以上から選ばれた有機系溶剤の何れか1種以上を分散媒として含み、コロイダルシリカのBET平均粒子径は10〜20nmであることが好ましい。また、シリカ(SiO2 )としては、ケイ酸ナトリウムと鉱酸(硫酸)及び塩類を水溶液中で反応させる湿式法によって得られる合成非晶質シリカが挙げられる。合成非晶質シリカは、表面のシラノール基(Si−OH基)に水素結合で結合する水分と、シラノール基自体が含有する水酸基として存在する水分を結合水分として有する含水シリカである。非晶質含水シリカの平均凝集粒径としては、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、特に2〜10μmの非晶質含水シリカを用いることが好ましく、含水率としては3〜15重量%、特に5〜10重量%の含水シリカを用いることが好ましい。これらのシリカはシランカップリング剤で表面処理して用いることもできる。
【0052】
上記中間保護層に含まれるケイ素化合物の含有量として、上記ポリシロキサン、上記コロイダルシリカ及び、上記シリカから選ばれた1種以上の重量が、前記中間保護層の全重量に対して5〜35重量%であることが好ましい。中間保護層のケイ素化合物含有量が5重量%未満であると中間保護層と光触媒性物質含有最外面防汚層との密着性が不十分になることがあり、またそれが35重量%を越えると、中間保護層と光触媒性物質含有最外面防汚層との密着性は向上するが、今度はケイ素化合物含有樹脂層とプリント形成面との密着性が不十分になることがあり、中間保護層の摩耗強度が不十分になることがある。
【0053】
中間保護層を形成する塗工剤の塗布の方法としては、特別に限定はないが、これらの塗工剤をシート状基材のプリント画像形成面、プリント画像形成面上にさらに形成された透明樹脂層上、あるいは透明樹脂層を形成する透明樹脂フィルム表面、またあるいは、裏面にプリント画像が形成された透明樹脂フィルムの反対表面に均一、かつ均質に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法などが好適である。上記塗工剤による中間保護層の厚さに特に制限はないが、上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって、固形分付着量で2〜20g/m2 、特に3〜10g/m2 に形成する。固形分付着量が2g/m2 よりも少ないと、本発明の防汚性プリントシートの防汚性、及び耐久性が十分に得られないことがあり、また、それが20g/m2 を超えると中間保護層の屈曲強さを悪くし、プリント絵柄と色彩を隠蔽してプリント画像をぼやけさせることがある。2〜5g/m2 に塗布付着量を設定するには上記塗工剤中に含有される有機系溶剤量を多く設定することによってコントロールできる。中間保護層は、上記コーティング法の何れかによって、0.5μm以上の厚さで形成され、ヘイズ値(ASTM D1003)10以下、または光線透過率が80%以上の透明性を有することが好ましい。
【0054】
本発明の防汚性プリントシートにおいて、光触媒性物質含有最外面防汚層と、シート状基材との中間に、中間保護層及び熱可塑性透明樹脂層を含むことができる。すなわちシート状基材面上に設けられた熱可塑性透明樹脂層上に中間保護層を設けることもできる。また、本発明において、光触媒性物質含有最外面防汚層とシート状基材との中間に、中間保護層と熱可塑性透明樹脂層とを配置し、この熱可塑性透明樹脂層上に画像をプリントを施し、このプリント形成面を基材表面側に接するように設けられてもよい。この熱可塑性透明樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、非結晶ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂から成型された透明フィルムを用いることができ、これらの透明フィルムは上記2種以上の熱可塑性樹脂層から構成された多層構造のフィルムであってもよい。これらの透明フィルムに用いる熱可塑性樹脂は、繊維布帛の表面を被覆するのに用いた熱可塑性樹脂と同一であることが、基材との密着性の観点上好ましく、さらに、ヘイズ値(ASTM D1003)10以下、または光線透過率が80%以上の透明性を有することが好ましい。例えば、着色軟質ポリ塩化ビニル樹脂で繊維布帛を表面被覆し、その樹脂被覆層の表面にプリントを施したシート状基材に、透明軟質ポリ塩化ビニル樹脂層を形成し、その上に中間保護層を形成し、その上に、光触媒性物質含有最外面防汚層、を形成する組み合わせ、あるいは、着色エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂で繊維布帛を表面被覆し、この樹脂被覆層の表面にプリントを施した基材に、透明エチレン−酢酸ビニル共重合体層を形成し、その上に中間保護層と、光触媒性物質含有最外面防汚層とを形成する組み合わせ、あるいは、着色ポリウレタン樹脂で繊維布帛を表面被覆し、その樹脂被覆層の表面にプリントを施した基材に、透明ポリウレタン樹脂層を形成し、その上に中間保護層と、光触媒性物質含有最外面防汚層とを形成する組み合わせなどである。これらにおいて、プリントは基材面側でなく、透明軟質ポリ塩化ビニル樹脂層、透明エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層、透明ポリウレタン樹脂層側に施されていてもよい。これらのフィルムは、公知のフィルム製造方法、例えばT−ダイ押出法、T−ダイ共押出法、カレンダー法、インフレーション法によって成型され、基材のプリント面に熱ラミネートによって、あるいは接着剤の塗布によって積層することができ、またキャスティング法によって、基材のプリント面に直接透明熱可塑性樹脂層を形成させることもできる。また、透明熱可塑性樹脂層は、着色されていない透明性を有するもの、あるいは少量の有機系顔料によって微着色されて得られたものであってもよい。中間保護層が設けられた透明熱可塑性樹脂層のヘイズ値(ASTM D1003)は10以下であり、または光線透過率が80%以上の透明性を有することが好ましい。これら透明樹脂層用フィルムの厚さは、好ましくは20〜300μmであり、より好ましくは特に50〜200μmである。フィルムの厚みが300μmを越えると、得られるシートの厚さが過度に厚くなり、取り扱い性が不良になることがある。
【0055】
光触媒性物質含有最外面防汚層は、光触媒性物質10〜70重量%を含むことが好ましく、さらに金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲル25〜90重量%、及びケイ素化合物を1〜20重量%含有することが好ましい。光触媒性物質含有最外面防汚層はこれらの光触媒性物質、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲル、ケイ素化合物を含有する塗工剤を上記ケイ素化合物含有樹脂層の表面に塗布、乾燥して形成される。光触媒性物質含有最外面防汚層中に含まれる金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルは、光触媒性物質を固着し、また最外面防汚層を中間保護層面に強固に密着させ、さらにこれらの金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルが多孔質であることから大きな表面積を有し、このため光触媒活性を有効に発揮させることができる。光触媒性物質含有最外面防汚層中に含まれる金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルの含有量は25〜90重量%であることが好ましい。この含有量が25重量%未満では中間保護層との密着性が不十分となることがあり、また90重量%を越えると光触媒性物質の含有量が少なくなり光触媒活性が十分に発揮させることができないことがある。さらに金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルの乾燥物の比表面積は100m2 /g以上であることが、最外面防汚層の中間保護層に対す密着性と、光触媒活性発揮効率の観点において好ましい。
【0056】
前記金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルとしては、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫の金属から選ばれた1種または2種以上の金属の酸化物ゲル、もしくは水酸化物ゲルであることが好ましく、具体的にはシリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、酸化ニオブゾルなどが例示できる。また、これらの混合ゲルとして、共沈法で得られる複合酸化物ゲルとしても使用できる。これらの金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルと光触媒性物質との混合には、これらのゲルとなる前のゾルの状態で混合するか、もしくはゾルを調整する前の原料の段階で混合するのが好ましい。金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを調製する方法には、金属塩を加水分解する方法、中和分解する方法、イオン交換する方法などがあるが、ゲルの中に光触媒性物質が均一に分散可能であれば何れの方法でも使用できる。本発明の防汚性プリントシートの光触媒性物質含有最外面防汚層に用いられる酸化物ゾルとしては、特にジルコニウム及び、アルミニウムの酸化物ゾルが耐久性の面で好ましく使用できる。
【0057】
光触媒性物質としては、TiO2 ,ZnO,SrTiO3 ,CdS,GaP,InP,GaAs,BaTiO3 ,K2 NbO3 ,Fe2 O3 ,Ta2 O5 ,WO3 ,SnO2 ,Bi2 O3 ,NiO,Cu2 O,SiC,SiO2 ,MoS2 ,InPb,RuO2 ,CeO2 などを例示することができ、またこれらの光触媒性物質にPt,Rh,RuO2 ,Nb,Cu,Sn,NiOなどの金属及び金属酸化物を添加した公知のものが全て使用できる。これらの光触媒性物質のうち、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、(酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi2 O3 )、酸化鉄(Fe2 O3 )及び、これら光触媒性物質を担持する多孔質微粒子から選ばれた金属酸化物を使用することが好ましい。特に酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で、汎用性の金属酸化物であることから、酸化チタンを使用することが好ましい。光触媒性物質としての酸化チタンにおいては、硫酸チタニル、塩化チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を熱加水分解して得られる酸化チタンゾル、及び酸化チタンゾルのアルカリ中和物として得られる酸化チタンなど、また水酸化チタン及び、チタン酸化物の超微粒子を過酸化水素などの過酸化物でペルオキソ化して水中に分散したアナターゼ型ペルオキソチタン酸分散液であることが好ましい。酸化チタンはアナターゼ型とルチル型の何れも使用できるが、アナターゼ型の酸化チタンが光触媒活性の大きさの観点で好ましい。具体的には、平均結晶子径5〜20nmの塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾルなどが好ましく使用できる。光触媒性物質の粒径は小さい方が光触媒活性に優れるため、平均粒子径50nm以下、より好ましくは20nm以下の光触媒性物質が適している。また、酸化チタンとしては含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンなども含まれる。光触媒性物質含有最外面防汚層中の光触媒の含有量は、多くなるほど光触媒活性が高くなるが、中間保護層との接着性の観点から70重量%以下であることが好ましく、10〜70重量%であることがさらに好ましい。光触媒性物質の配合量が10重量%未満であると光触媒活性が不十分となることがあり、また光触媒性物質の配合量が70重量%を越えると光触媒活性は高くなるが中間保護層との密着性が不十分になり、さらに光触媒性物質含有最外面防汚層の表面摩耗強さが不十分になることがあるため、屋外耐久性が十分に得られないことがある。光触媒性物質含有最外面防汚層に使用するケイ素化合物としてはポリシロキサンが使用でき、ゾルゲル法によりアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合して得られるものが好ましく使用できる。これらのアルコキシシラン化合物としては、本発明の防汚性プリントシートの中間保護層に使用できるアルコキシシラン化合物として例示したものが使用できる。これらのケイ素化合物は光触媒性物質含有最外面防汚層に対して1〜20重量%使用することが好ましい。光触媒性物質を含有する塗工剤の塗布の方法には、特別の限定はないが、これらの光触媒性物質を含有する塗工剤を中間保護層の表面上に均一、かつ均質に塗布できる様なコーティング方式が望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法などが好適である。上記コーティング剤による光触媒性物質含有最外面防汚層の厚みは上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって0.1〜10μmの厚さに形成させる事が望ましい。光触媒性物質含有最外面防汚層の厚さが0.1μmよりも少ないと、本発明の防汚性プリントシートの防汚性、及び耐久性が十分に得られないことがあり、また、それが10μmを超えるとプリント絵柄や色彩が隠蔽され、見栄えを悪くすることがある。
本発明の防汚性プリントシート(1)を製造するには、例えばシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に画像をプリントし、前記シート状基材のプリントされた面上に、前記シート状基材及びプリントされた画像を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する。
本発明の防汚性プリントシート(2)を製造するには、例えばシート状基材の表裏両面のうち少なくともその表面上に画像をプリントし、前記シート状基材のプリントされた面上に、熱可塑性樹脂を含み、かつ透明な透明樹脂層を形成し、前記透明樹脂層上に、この透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する。
この場合、予じめ、透明樹脂層と中間保護層とからなる積層フィルムを作製しておいてもよい。
本発明の防汚性プリントシート(3)を製造する1方法においては、熱可塑性樹脂を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をプリントし、シート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、前記貼合された透明フィルムの、プリントされていない面上に、前記透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する。
本発明の防汚性プリントシート(3)を製造するための他の方法においては、熱可塑性樹脂を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をプリントし、前記透明なフィルムの他の面に、それを光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、シート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する。
【0058】
本発明の防汚性プリントシートの接合(重ね合わせ接着)は、その光触媒性物質含有最外面防汚層及び、中間保護層が形成されていない部分において、高周波ウエルダー機を用いて高周波融着によって容易に行うことができる。高周波融着法としては、2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバーである)間にシート置き、ウエルドバーで加圧しながら高周波(1〜200MHz )で発振する電位差を印加することでシートの樹脂層を分子摩擦熱で溶融させて接着するものである。また、別の接合方法として、シートの光触媒性物質含有層が形成されていない部分において、超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16〜30KHz )の振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して融着を行う超音波ウエルダー融着法、またはヒーターの電気制御によって、20〜700℃に無段階設定された熱風を、ノズルを通じて膜材間に吹き込み、膜材の表面を瞬時に溶融させ、直後膜材を圧着して接着を行う熱風融着法、あるいは熱可塑性樹脂の溶融温度以上にヒーター内蔵加熱された金型(こて)を用いて被着体を圧着し接着する熱板融着法などによっても接合が可能である。
【0059】
【実施例】
本発明を実施例、比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、プリントシートの変退色防止、防汚性などの性能の試験評価は下記方法による。
【0060】
(I)屋外曝露試験による防汚性の評価
幅20cm×長さ2mのプリントシートを、光触媒性物質含有最外面防汚層の表面を表側にして、南向きに設置された曝露台の傾斜30°方向、及び垂直方向に、それぞれ1mずつ連続して展張し、屋外曝露試験を18ヶ月間行った。屋外曝露6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後にサンプルを採取し、サンプル表面を脱脂綿でメタノール清拭し、清拭前後の色差ΔE(JIS−Z−8729)で数値化し、汚れ度合いを下記の判定基準にて防汚性の評価を行った。
※屋外曝露は、埼玉県草加市内において4月より開始した。
ΔE=0〜2.9:◎=汚れがなく良好。初期の状態を維持している。
ΔE=3〜4.9:○=多少汚れているが、問題ない。
ΔE=5〜9.9:△=汚れと、雨筋が、目立つ。
ΔE=10〜 :×=汚れと、雨筋が酷く、実用的に問題がある。
【0061】
(II)屋外曝露試験によるプリント部の変退色防止性の評価
(I)と同一の曝露試験から採取した、屋外曝露6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後のサンプル表面を脱脂綿でメタノール清拭し、初期を基準として、それぞれを色差ΔE(JIS−Z−8729)により数値化し、変退色の度合いを下記の判定基準にて評価した。
ΔE=0〜2.9:◎=変色がなく良好。初期の状態を維持している。
ΔE=3〜4.9:○=多少変色があるが、問題ない。
ΔE=5〜9.9:△=変色が、目立つ。
ΔE=10〜 :×=変色が酷く、実用的に問題がある。
【0062】
(III)耐光促進試験
プリントシートの光触媒性物質含有層形成面を照射面として、サンシャインカーボンウエザーメーターによる耐光促進試験(JIS−L−0842)を240時間、600時間、1000時間行い、促進前のサンプルを基準とし、プリント部の変退色度合いを、色差ΔE(JIS−Z−8729)で数値化し、以下の判定基準にて評価を行った。
ΔE=0〜2.9:◎=変色がなく良好。初期の状態を維持している。
ΔE=3〜4.9:○=多少変色があるが、問題ない。
ΔE=5〜9.9:△=変色が、目立つ。
ΔE=10〜 :×=変色が酷く、実用的に問題がある。
【0063】
〔実施例1〕
−(i)繊維布帛(A)の熱可塑性樹脂による被覆処理−
繊維布帛(A):5号ポリエステル繊維平織スパン基布(ポリエステル短繊維紡績糸状:糸密度経糸295dtex(20番手)・双糸51本/2.54cm×緯糸295dtex(20番手)・双糸48本/2.54cm:質量250g/m2 )を基材用基体シートとして用い、これを下記組成からなるペースト塩化ビニル樹脂配合組成物:PVC(1)を溶剤で希釈したオルガノゾル浴中にディップ(浸漬)し、繊維布帛(A)にPVC(1)を含浸させた後、樹脂含浸した繊維布帛(A)の引き上げと同時にマングルローラーでニップ(圧搾)し、繊維布帛(A)に対して、145g/m2 のPVC(1)を繊維布帛(A)両面全面に均等に含浸付着させ、次いで140℃の熱風乾燥炉で1分間乾燥させた後、175℃の熱風乾燥炉で1分間熱処理を行い、樹脂をゲル化させ、直後180℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させてこれに熱プレスを施した。次に、この樹脂被覆布帛を再びPVC(1)浴中にディップし、さらに樹脂を付着させた後、今度はドクターナイフで樹脂コーティングを行った。この基材を140℃の熱風乾燥炉で1分間乾燥させた後、175℃の熱風乾燥炉で1分間熱処理を行い、樹脂をゲル化させ、直後180℃の熱ロール(押圧0.2Mpa)を通過させ、樹脂被覆基材に熱プレスを施し、PVC(1)により表面被覆された、厚さ0.46mm、質量490g/m2 のシート状基材を得た。
<塩化ビニル樹脂配合組成:PVC(1)>
ペースト塩化ビニル樹脂(P=1600) 100重量部
DOP(可塑剤) 40重量部
アジピン酸ポリエステル 30重量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4重量部
炭酸カルシウム 10重量部
Ba−Zn系安定剤 2重量部
ルチル型酸化チタン 5重量部
紫外線吸収剤 0.3重量部
酸化防止剤 0.2重量部
溶剤(トルエン) 20重量部
【0067】
−(ii)インクジェット印刷層の形成−
前記樹脂被覆布帛の片面上に下記組成のアクリル系樹脂からなる表面処理剤を80メッシュのグラビアコーターを用いて4g/m2 の固形分付着量で塗布し、80℃の熱風乾燥炉を2分間通過させ溶剤の乾燥を施して、インクジェット印刷層を形成して、厚さ0.46mm、質量494g/m2 のシート状基材を得た。
<アクリル系表面処理剤>
商標:ソニーボンドSC−474:ソニーケミカル(株)アクリル系共重合樹脂
(固形分30wt%:溶剤キシレン、メチルセロソルブ、MEK)
100重量部
商標:E−170:日本シリカ工業(株):含水シリカ(含水率6wt%)
15重量部
商標:ULS−933LP:ベンゾトリアゾール系高分子紫外線吸収剤
:一方社油脂工業(株) 2重量部
希釈剤:MEK(メチルエチルケトン) 50重量部
〔註〕この表面処理層に含有されるシリカの含有率は、50重量%であった。
【0068】
−(iii)樹脂被覆シート状基材に対するプリント(インクジェット印刷)−
(ii)で得られたPVC(1)被覆シート状基材のインクジェット印刷層面上に、武藤工業(株)製の溶剤インク描画型インクジェットプリンター(ラミレスPJ−1304NX(オンデマンド方式)を用いて、音楽CDのジャケット絵柄(アーティスト名:YNGWIE JOHANN MALMSTEEN/タイトル:協奏組曲 変ホ短調「新世紀」/規格番号:PCCY−01211/(株)ポニーキャニオン)を、1200mm×1200mm大にフルカラー拡大出力(インクジェット印刷)した。印刷は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを用いて出力384dpi で行った。
【0069】
−(iv)熱可塑性透明樹脂層の形成−
次に、(iii)で得られたPVC(1)被覆基材の印刷絵柄を有する印刷面に、下記PVC(2)組成物を165℃の熱条件で混練し、カレンダー圧延成型して得られた厚さ0.1mm、ヘイズ値が0.6である熱可塑性樹脂透明フィルムを、160℃に設定した熱ロールを備えたラミネーターを用いて、熱圧着法で積層し、厚さ0.55mm、質量612g/m2 の積層体を得た。
<塩化ビニル樹脂配合組成:PVC(2)>
ストレート塩化ビニル樹脂(P=1050) 100重量部
DOP(可塑剤) 40重量部
アジピン酸ポリエステル 30重量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4重量部
Ba−Zn系安定剤 2重量部
紫外線吸収剤 0.3重量部
酸化防止剤 0.2重量部
〔註〕塩化ビニル樹脂:商標:ZEST1000S(新第一塩ビ(株))
DOP:商標:サンソサイザーDOP(新日本理化(株))
アジピン酸ポリエステル:商標:アデカサイザーPN−446
(旭電化工業(株))
エポキシ化大豆油:商標:アデカサイザーO−130P
(旭電化工業(株))
Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
紫外線吸収剤:商標:バイオソーブ510(共同薬品(株))
酸化防止剤:商標:イルガノックスE201
(ビタミンE系:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))
【0070】
−(v)中間保護層の形成−
次に、樹脂被覆基材のプリント形成面全面に、中間保護層を形成するための下記処理液を80メッシュのグラビアロールコーターで15g/m2 塗布(wet)し、100℃の熱風乾燥炉中で1分間乾燥させた。(固形分付着量3g/m2 )
<中間保護層形成用処理液>
1).シリコーン含有量3mol %のアクリル−シリコーン樹脂を8重量%
(固形分)含有するエタノール−酢酸エチル(50/50重量比)溶液
100重量部
2).ポリシロキサンとしてメチルシリケートMS51(コルコート(株))の
20重量%エタノール溶液 8重量部
3).γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)
1重量部
−(vi)光触媒性物質含有最外面防汚層の形成−
次に、中間保護層の表面全面に、光触媒性物質含有最外面防汚層を形成する下記処理液を100メッシュのグラビアロールコーターにて12g/m2 塗布(wet)し、100℃の熱風乾燥炉中で1分間乾燥させ、厚さ0.56mm、質量615g/m2 の塩化ビニル樹脂被覆プリントシートを作製した。
<光触媒性物質含有最外面防汚層形成処理液>
1).酸化チタン含有量10重量%に相当する硝酸酸性酸化チタンゾルを
分散させた水−エタノール(50/50重量比)溶液 100重量部
2).酸化ケイ素含有量10重量%に相当する硝酸酸性シリカゾルを
分散させた水−エタノール(50/50重量比)溶液 100重量部
【0080】
〔実施例2〕
−(i)繊維布帛(B)の熱可塑性樹脂による被覆処理−
繊維布帛(B):ポリエステル繊維平織基布(555dtexポリエステルマルチフィラメント糸条:糸密度経糸23本/2.54cm×緯糸23本/2.54cm:質量100g/m2 )を基体シートとして用いた。別に下記組成からなる塩化ビニル樹脂配合組成物:PVC(3)を165℃の熱条件で混練し、カレンダー圧延成型により、厚さ0.18mmのフィルムを得た。次に160℃に設定した熱ロールを備えたラミネーターを用いて、前記繊維布帛(B)の両面に、PVC(3)フィルムを熱圧着法で積層し、厚さ0.44mm、質量528g/m2 のシート状基材を得た。
<塩化ビニル樹脂配合組成:PVC(3)>
ストレート塩化ビニル樹脂(P=1050) 100重量部
DOP(可塑剤) 40重量部
アジピン酸ポリエステル 30重量部
エポキシ化大豆油(ESBO) 4重量部
炭酸カルシウム 10重量部
Ba−Zn系安定剤 2重量部
ルチル型酸化チタン 5重量部
紫外線吸収剤 0.3重量部
酸化防止剤 0.2重量部
〔註〕塩化ビニル樹脂:商標:ZEST1000S(新第一塩ビ(株))
DOP:商標:サンソサイザーDOP(新日本理化(株))
アジピン酸ポリエステル:商標:アデカサイザーPN−446
(旭電化工業(株))
エポキシ化大豆油:商標:アデカサイザーO−130P
(旭電化工業(株))
炭酸カルシウム:商標:ライトンBS(備北粉化工業(株))
Ba−Zn系安定剤:商標:KV−400B(共同薬品(株))
ルチル型酸化チタン:商標:酸化チタンCR:(石原産業(株))
紫外線吸収剤:商標:バイオソーブ510
(ベンゾトリアゾール系:共同薬品(株))
酸化防止剤:商標:イルガノックスE201
(ビタミンE系:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))
【0083】
−(ii)インクジェット印刷層の形成−
前記PVC(3)被覆された繊維布帛(B)の片面に、実施例1と同一組成のアクリル系樹脂からなる表面処理剤を実施例1と同様にして80メッシュのグラビアコーターを用いて4g/m2 の固形分付着量で塗布してインクジェット印刷層を形成し、厚さ0.44mm、質量494g/m2 のシート状基材を得た。
−(iii)樹脂被覆シート状基材に対するプリント(インクジェット印刷)−
前記(ii)で得たPVC(3)被覆基材のインクジェット印刷層面に、武藤工業(株)製の溶剤インク描画型インクジェットプリンター(ラミレスPJ−1304NX(オンデマンド方式)を用いて、音楽CDのジャケット絵柄(アーティスト名:CRADLE OF FILTH/タイトル:Cruelty And The Beast/規格番号:PCCY−01244/(株)ポニーキャニオン)を1200mm×1200mm大にフルカラー拡大出力(インクジェット印刷)した。印刷は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを用いて出力384dpi で行った。
【0084】
−(iv)熱可塑性樹脂透明層の形成−
次に、(iii)で得られた印刷絵柄を有するPVC(3)被覆基材の印刷面に、実施例1と同一の厚さ0.1mm、ヘイズ値が0.6であるPVC(2)熱可塑性透明樹脂フィルムを熱圧着法で積層し、厚さ0.54mm、質量629g/m2 の透明樹脂層被覆体を得た。
−(v)中間保護層の形成−
上記PVC(2)熱可塑性透明樹脂層の全面上に、実施例1と同一の中間保護層を形成した。(固形分付着量3g/m2 )
−(vi)光触媒性物質含有最外面防汚層の形成−
中間保護層の全面上に、実施例1と同一の光触媒性物質含有最外面防汚層を形成し、厚さ0.54mm、質量633g/m2 の塩化ビニル樹脂被覆防汚性プリントシートを作製した。
【0092】
実施例1〜2の各々の防汚性プリントシートの構成及び性能試験評価結果を表1に示す。
【表1】
【0093】
〔実施例1〜2の防汚性プリントシートの性能〕
実施例1〜2で得られた防汚性プリントシートを屋外で展張(試験I)し、その汚れ度合いを、6ヶ月ごとに1年半観察した結果、プリントシート表面の煤塵汚れ(環境汚れ)は、極めて少なく、従ってプリント絵柄が鮮明であり、シートの美観を保持できるものであった。また、1ヶ月ごとの詳細な観察によると、プリントシート表面に付着した煤塵汚れは、特に降雨によって、付着汚れの大半が洗い流されるなど、これらのシートにおいては蓄積した煤塵汚れが、光触媒性物質によって逐次分解され、常時、シートの表面から脱離し易い状態に置かれていることが確認された。この自己洗浄機能は、屋外展張シートから採取した小片サンプルを、水道水に10分間浸し、これを水道水の流水に晒しながら指の腹で表面を軽く擦るだけで、付着した煤塵汚れが容易に除去できたことからも明らかであった。これらのインクジェット方式でプリントを施したシートの1000時間照射後での色差ΔE値は、5.0以内であった。また、これら実施例1〜3のシートの、実際の屋外使用におけるプリント画像の美観維持性(試験II)は、屋外展張試験で汚れの観察と同時に行った結果、何れのシートにおいてもシート表面のひび割れ、色褪せ、極端な変色が認められず、1年半を経過しても色差ΔE値が全て5.0以内であり、促進試験(III)と同傾向の結果(良好な色彩保持性)を得た。また、実施例1〜2で得られたシート状基材の樹脂被覆層の着色顔料及び、印刷インキ組成物用着色顔料成分として、特に無機系顔料を特定量以上併用することによって、またさらに、樹脂被覆層、熱可塑性透明樹脂層、及び印刷インキ組成物中に、酸化防止剤を添加することによって、特に酸化防止剤としてビタミンE化合物を選んで添加することによって、樹脂被覆層、熱可塑性透明樹脂層の耐久性を向上させると共に、印刷の色彩性を美麗に保つことが可能となった。従って本発明の防汚性プリントシートは上記(I)〜(III)の試験結果より、カラフルなプリント絵柄の色彩性を長期間維持可能で、しかもプリント絵柄とシート膜材自体にダメージを与えずに、光触媒性物質によるセルフクリーニング機能を有するものであるため、屋外装飾用シート、特にテント膜材として適したものである。
【0095】
〔比較例1〕
実施例1のシートから、中間保護層と、熱可塑性透明樹脂層:PVC(2)とを省略し、また、基材を被覆する熱可塑性樹脂:PVC(1)の配合組成から、酸化防止剤(商標:イルガノックスE201:ビタミンE系:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))0.2重量部を省いたこと以外は、全て実施例1と同様にしてプリントシートを作製した。
【0098】
比較例1のプリントシートの構成及びその性能を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
〔比較例1のプリントシートの性能〕
比較例1で得られたプリントシートを屋外で展張(試験I)し、その汚れ度合いを、6ヶ月ごとに1年半観察した結果、比較例1のシートは、中間保護層を省略したことによって、展張して6ヶ月後には、光触媒性物質含有最外面層がシートから80%以上脱落し、この影響で防汚性が不十分となった。比較例1の可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂:PVC(1)においては、可塑剤がシートの表面に滲み出て、これに煤塵が多量付着することで1年半後には煤塵汚染が著しい状態となり、画像プリントを施した絵柄が汚れていた。また、同時に、これら比較例1のシートのプリント画像の美観維持性(試験II)は、何れのシートにおいても色褪せ、変色が顕著に認められ、特に光触媒性物質含有最外層がシートの表面に固定されていた初期約6ヶ月の間に、プリントに用いたインキの顔料成分が光触媒性物質の酸化作用によって分解劣化されたことが、色褪せ、変色の原因であった。この光触媒性物質による顔料成分の分解劣化は、光触媒性物質含有最外層の80%以上が脱落した6ヶ月経過以降は、初期の6ヶ月ほど極端な色褪せ、変色は進行しなかった。また、プリント絵柄の耐光促進試験(試験III)240〜1000時間の結果は、特に、色褪せ及び変色が著しいものとなった。特に、比較例1のインクジェット印刷したシートでは、屋外展張時にシートが汚れ、プリント絵柄の色褪せ、変色がそれ程目立たない状態であったが、耐光促進試験1000時間後には色差ΔE値が17.4となった。また比較例1のポリ塩化ビニル樹脂:PVC(1)シートでの屋外展張試験(II)と耐光促進試験(III)との相関性が、可塑剤の滲み出しによる煤塵汚染の影響によって得られなかった。また、比較例1以外の比較として、シートの樹脂被覆層の着色顔料と、印刷インキ組成の着色顔料成分として、特に有機系顔料を特定量以上使用したシートを屋外展張したところ、中間保護層を持たないことが大きな要因となり、光触媒性物質の酸化作用によって、これらの有機系顔料がたちまち分解し、極端な色褪せと変色を発生することが判明した。またさらに、樹脂被覆層、熱可塑性透明樹脂層、及び印刷インキ組成物中に、酸化防止剤(特にビタミンE化合物)を添加しなかったことにより、樹脂被覆層、熱可塑性透明樹脂層の表面に微細なクラックを発生したり、またはプリントの色彩性を美麗に保つことができなくなるものがあった。従って比較例のシートでは、防汚性が不十分で、しかも光触媒効果によって、プリント絵柄の美観とシート膜材自体にダメージを及ぼすため、実用に適さないものであることが明らかとなった。
【0101】
【発明の効果】
上記、実施例、及び比較例から明らかな様に、本発明の防汚性プリントシートは、光触媒性物質の酸化作用を利用して、煤塵付着汚れ(環境汚れ)を長期にわたって防止する自己洗浄効果を有し、それと同時に、プリント絵柄の鮮やかな色彩と美観とを長期間持続させることが可能である。また、本発明の技術が応用可能な基材には、フィルム、繊維布帛、熱可塑性樹脂で被覆した繊維布帛など適用範囲が広く、また、繊維布帛を被覆する熱可塑性樹脂として、軟質ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂も適用が可能であるため、極めて、その応用範囲が広く、有用性の高いものである。従って本発明の防汚性プリントシートは、産業資材用シートとして、とりわけ、色相のカラフルさと、プリント絵柄の印刷が要求される、日除けテント、中大型テントなどの用途に適して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の防汚性プリントシートの積層構造の一例を示す断面説明図。
【図2】 本発明の防汚性プリントシートの積層構造の他の一例を示す断面説明図。
【符号の説明】
1…シート状基材
1a…基体シート(繊維布帛、フィルムなど)
1b,1c…樹脂被覆層
2…プリントされた画像
3…中間保護層
4…最外面防汚層
5…透明樹脂層
Claims (16)
- 繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材と、このシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に形成され、かつ光触媒性物質を含む最外面防汚層とを有し、前記シート状基材の表面上に画像がインクジェットプリントされており、前記シート状基材のプリントされた表面と、前記最外面防汚層との中間において、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層が、前記シート状基材のプリントされた表面上に形成され、かつこの透明樹脂層と、前記最外面防汚層との間に、前記透明樹脂層を前記光触媒性物質の作用から保護する中間保護層が形成されている、ことを特徴とする防汚性インクジェットプリントシート。
- 繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材と、このシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に形成され、かつ光触媒性物質を含む最外面防汚層とを有し、前記シート状基材と前記最外面防汚層との中間において、前記シート状基材表面上に、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層が形成され、かつこの透明樹脂層と前記最外面防汚層との間に、前記透明樹脂層を前記光触媒性物質の作用から保護する中間保護層が形成されており、前記透明樹脂層の、前記シート状基材に接合する面上に画像がインクジェットプリントされている、ことを特徴とする防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記シート状基材が無色または着色されている、請求項1又は2に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記無色の、又は着色されたシート状基材が、透明又は不透明である、請求項3に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記インクジェットプリントされた画像が、20重量%以上の無機系顔料を含むインクにより形成されたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記中間保護層が、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フォスファーゼン系樹脂から選ばれた少なくとも1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記中間保護層が、ケイ素化合物をさらに含有する、請求項6に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記中間保護層用ケイ素化合物が、ポリシロキサン、コロイダルシリカ、及びシリカから選ばれる、請求項7に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記中間保護層が、10以下のヘイズ値(ASTM D1003)及び/又は80%以上の光線透過率を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記透明樹脂層が、10以下のヘイズ値(ASTM D1003)及び/又は80%以上の光線透過率を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記透明樹脂層とその上に形成された前記中間保護層とからなる複合層が、その全体として、10以下のヘイズ値(ASTM D1003)及び/又は80%以上の光線透過率を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記最外面防汚層が、9〜70重量%の前記光触媒性物質と、25〜90重量%の、金属酸化物ゲル及び金属水酸化物ゲルから選ばれた少なくとも1種と、1〜20重量%のケイ素化合物とを含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 前記最外面防汚層の光触媒性物質が、酸化チタン(TiO2 )、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化ビスマス(Bi2 O3 )、及び酸化鉄(Fe2 O3 )、の微粒子、並びに、上記化合物の1種以上を多孔質担体中に担持する多孔質微粒子から選ばれた少なくとも1種からなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の防汚性インクジェットプリントシート。
- 繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち少なくともその表面上に画像をインクジェットプリントし、前記シート状基材のプリントされた面上に、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含み、かつ透明な透明樹脂層を形成し、前記透明樹脂層上に、この透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、ことを特徴とする防汚性インクジェットプリントシートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をインクジェットプリントし、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、前記貼合された透明フィルムの、プリントされていない面上に、前記透明樹脂層を光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、ことを特徴とする防汚性インクジェットプリントシートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含みかつ透明なフィルムの一面上に画像をインクジェットプリントし、前記、透明なフィルムの他の面に、それを光触媒性物質の作用から保護するための中間保護層を形成し、繊維布帛と、その少なくとも1面上に形成され、かつ熱可塑性樹脂を含む、少なくとも1層の樹脂被覆層とから構成されたシート状基材の表裏両面のうち、少なくともその表面上に、前記透明フィルムのプリントされた面を貼合し、前記中間保護層上に、光触媒性物質を含む最外面防汚層を形成する、ことを特徴とする防汚性インクジェットプリントシートの製造方法。
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