JP2017133000A - ポリ塩化ビニル系樹脂組成物およびポリ塩化ビニル系樹脂シート - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な引張伸び特性を長期にわたり安定的に維持する特性を有するポリ塩化ビニル系樹脂シート、およびそれを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、シートに成形された場合に;メタルウェザー試験による促進時間X(時間)および当該促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)軸で表される両対数グラフにおける、促進時間Xが1,000時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まる線形近似式(I):log(Y)=A・log(X)+B において、促進時間Xが2400時間の場合の、引破断伸びの実測値Yex2,400と上記線形近似式(I)から求められる引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との関係が、次式(II):Yex2,400> 0.7 × Y2,400を満たし、かつ、引張破断伸びの実測値Yexが100%超である。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物およびポリ塩化ビニル系樹脂シートに関する。より具体的には、本発明は、屋外で使用されるポリ塩化ビニル系樹脂製の防水シートおよび防水役物などに用いられるポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
従来より、屋上、ベランダおよび開放廊下などに防水資材を敷設する防水施工がなされている。この防水資材は、施工時に、防水シートおよび防水役物(以下、防水シートなどと記載する場合がある。)に成形された態様で施工場所に持ち込まれ、コンクリートなどの被防水構造物を外部雰囲気から縁切りし防水機能を果たすために、施工現場で、溶剤による溶着、接着剤による接着、熱による融着などで防水シートなどを固定する作業が行われる。防水シートなどには、ポリ塩化ビニル系樹脂が好適に用いられている。
防水施工面の形状は、平面形状だけでなく、出隅入隅などの屈曲形状または角形状もある。このため、防水シートに用いられるポリ塩化ビニル系樹脂には、防水施工面への形状追従性などのために柔軟性が要求される。
さらに、防水施工対象となる構造物の多くを構成するコンクリートは、経年による温度サイクル負荷、隙間での水分凍結、または地震などの振動負荷を受けて、ひび割れが生じることがある。また、台風などによる強風での負圧負荷によって、防水シートなどが施工面からから引きはがされる応力が働く場合もある。これらの要因によって、防水シートなどが破断する場合がある。防水シートなどは施工面に密着させ一面を覆うことで防水機能を発揮するため、上述のような要因に対しても破断せず防水機能を維持するために、引張伸び特性(つまり破断伸びが大きい特性)による変形追従性も要求される。
これらの要求に対して、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に、フタル酸エステル系化合物に代表されるような可塑剤が添加された軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が用いられることが多い。このような可塑剤が配合された軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物と比較して、柔軟性および引張破断伸びが向上しており、防水シートなどに通常的に用いられている。
そして、可塑剤を含む構成を基本とするポリ塩化ビニル系樹脂防水シートは、耐久性を強化するための様々な提案がなされている。たとえば、特開2008−239732号公報(特許文献1)には、屋外で使用されるシートに特定の紫外線吸収剤と光安定剤とを併用することが提案されている。また、特開2009−270290号公報(特許文献2)および特開平11−221878号公報(特許文献3)には、屋外での耐久性(つまり耐候性)を向上させる目的で、表層に顔料と紫外線吸収剤とを含む多層構造の防水シートが提案されている。
防水シートなどの防水資材は、使用環境が屋外であると、熱、紫外線、および風雨の影響を受ける。とくに熱を受けると、防水シートなどの防水資材を構成する樹脂組成物に含まれる分子の動きが活発となり、資材表面から可塑剤が排出されるブリードアウトという現象が発生する。可塑剤の経時的な排出において、排出量が特定量を超えると、引張伸び特性の低下および資材内の欠陥により軟質樹脂の柔軟性が急激に損なわれていくという課題がある。
たとえば、特許文献1に記載のシートは、紫外線による劣化を抑制する効果はある一方、シートからの可塑剤の抜けによって物性低下が生じる問題がある。
また、特許文献2に記載のシートも、ベース層から表層への可塑剤の移行によって物性低下が生じる問題がある。
さらに、特許文献3に記載のシートも、ベース層から表層への可塑剤の移行によって物性低下が生じる問題がある。
また、特許文献2に記載のシートも、ベース層から表層への可塑剤の移行によって物性低下が生じる問題がある。
さらに、特許文献3に記載のシートも、ベース層から表層への可塑剤の移行によって物性低下が生じる問題がある。
そこで、本発明の目的は、良好な引張伸び特性を長期にわたり安定的に維持する特性を有するポリ塩化ビニル系樹脂シート、およびそれを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、メタルウェザー試験で対候劣化させたサンプルにおいて、劣化促進時間と引張破断伸びを両対数グラフにプロットした場合に、促進初期の実測値から求まる近似直線に、促進後期の実測値が大きく逸脱しないポリ塩化ビニル系樹脂組成物によって、上記本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
本発明は、以下の発明を含む。
(1)
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、シートに成形された場合に;
メタルウェザー試験による促進時間X(時間)および当該促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)軸で表される両対数グラフにおける、促進時間Xが1,000時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まる線形近似式(I):
log(Y)=A・log(X)+B (I)
において、
促進時間Xが2400時間の場合の、引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)と上記線形近似式(I)から求められる引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との関係が、下記式(II):
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
を満たし、かつ、引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)が100%超である。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、シートに成形された場合に;
メタルウェザー試験による促進時間X(時間)および当該促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)軸で表される両対数グラフにおける、促進時間Xが1,000時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まる線形近似式(I):
log(Y)=A・log(X)+B (I)
において、
促進時間Xが2400時間の場合の、引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)と上記線形近似式(I)から求められる引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との関係が、下記式(II):
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
を満たし、かつ、引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)が100%超である。
これによって、実質40年経過した時点でも引張特性の急激な低下が起こらず安定的に維持され、かつ当該時点で良好な引張特性が確保されるシートに適したポリ塩化ビニル系樹脂組成物となる。また、長期耐久性の判断指標に用いる線形近似式(I)を、従来の塩化ビニル系樹脂防水シートの耐用年数(15年以下)に相当する初期の引張破断伸びから導出しているため、長期耐久性の信頼性も高い。
なお、メタルウェザー試験の条件は、紫外線強度が75mW/cm2、サイクルモードが2時間毎2分シャワー、BPT(ブラックパネル温度計)が80℃である。
また、長期耐久性とは、少なくとも、引張破断伸びを実質40年(つまり促進時間2400時間に相当する年数)安定的に維持する特性をいう。
また、長期耐久性とは、少なくとも、引張破断伸びを実質40年(つまり促進時間2400時間に相当する年数)安定的に維持する特性をいう。
(2)
上記(1)のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、線形近似式(I)が、促進時間Xが600時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まるものであってよい。
上記(1)のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、線形近似式(I)が、促進時間Xが600時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まるものであってよい。
この場合、長期耐久性の判断指標に用いる線形近似式(I)を、従来の塩化ビニル系樹脂防水シートの耐用年数のうち、より初期(10年以下)の引張破断伸びから導出しているため、長期耐久性の信頼性がより高い。
(3)
上記(2)のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、線形近似式(I)が、少なくとも、促進時間Xが150時間,600時間の場合それぞれに対する引張破断伸びの実測値Yex 150,Yex 600を示す座標から定まるものであってよい。
上記(2)のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、線形近似式(I)が、少なくとも、促進時間Xが150時間,600時間の場合それぞれに対する引張破断伸びの実測値Yex 150,Yex 600を示す座標から定まるものであってよい。
この場合、長期耐久性の判断指標に用いる線形近似式(I)を、従来の塩化ビニル系樹脂防水シートの耐用年数のうち、10年よりもさらに初期(2.5年程度)の引張破断伸びを少なくとも用いて導出しているため、長期耐久性の信頼性がより高い。
(4)
上記(1)から(3)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系共重合体に由来する基幹ポリマーと前記基幹ポリマーにグラフトされた塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーに由来するグラフト鎖とを含む(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体に由来する基幹ポリマーと前記基幹ポリマーにグラフトされた塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーに由来するグラフト鎖とを含むエチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)からなる群から選ばれるグラフト塩化ビニル系樹脂(i)と、熱可塑性エラストマー(ii)と、を含んでよい。
上記(1)から(3)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系共重合体に由来する基幹ポリマーと前記基幹ポリマーにグラフトされた塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーに由来するグラフト鎖とを含む(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体に由来する基幹ポリマーと前記基幹ポリマーにグラフトされた塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーに由来するグラフト鎖とを含むエチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)からなる群から選ばれるグラフト塩化ビニル系樹脂(i)と、熱可塑性エラストマー(ii)と、を含んでよい。
この場合、特定のグラフト塩化ビニル系樹脂(i)を用いることでシートの柔軟性を良好とし、かつ、熱可塑性エラストマー(ii)を用いることでシートの長期耐久性をより良好とすることができる。
(5)
上記(4)に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)が(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)であり、熱可塑性エラストマー(ii)がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体であってよい。
上記(4)に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)が(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)であり、熱可塑性エラストマー(ii)がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体であってよい。
この場合、シートの柔軟性をより良好とし、長期耐久性をより良好とすることができる。
(6)
上記(1)から(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、実質的に可塑剤を含まないものであってよい。
上記(1)から(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、実質的に可塑剤を含まないものであってよい。
この場合、シートの長期耐久性をより良好とすることができる。
可塑剤(後述の高分子系可塑剤を含む)は、23℃、1atm環境下で液体状態であり、たとえば熱可塑性エラストマー(ii)のように可塑化作用のある固体高分子とは区別される。
可塑剤(後述の高分子系可塑剤を含む)は、23℃、1atm環境下で液体状態であり、たとえば熱可塑性エラストマー(ii)のように可塑化作用のある固体高分子とは区別される。
(7)
上記(1)から(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高分子系可塑剤を含んでよい。
上記(1)から(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、高分子系可塑剤を含んでよい。
この場合、シートの長期耐久性をより良好とすることができる。
(8)
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、(1)から(7)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含むものである。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、(1)から(7)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含むものである。
これによって、良好な引張伸び特性を長期にわたり安定的に維持する特性を有するポリ塩化ビニル系樹脂シートとなる。
(9)
上記(8)のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の層が紫外線遮蔽剤を含むことによって紫外線バリア層を構成してよい。この場合、紫外線バリア層の、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの総厚の20%の肉厚における300nm以上400nm以下の紫外線透過率が5%以下であってよい。
上記(8)のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の層が紫外線遮蔽剤を含むことによって紫外線バリア層を構成してよい。この場合、紫外線バリア層の、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの総厚の20%の肉厚における300nm以上400nm以下の紫外線透過率が5%以下であってよい。
これによって、紫外線に対する優れた耐久性を得ることができる。
(10)
上記(8)または(9)のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、屋外に設置して使用される施工資材であってよい。
上記(8)または(9)のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、屋外に設置して使用される施工資材であってよい。
これによって、実質40年経過した時点でも引張特性が安定的に維持され、かつ当該時点で100%超の引張破断伸びが確保されるポリ塩化ビニル系樹脂施工資材となるため、施工面に対する再施工の回数を低減することができる。したがって、特に専用金具を使用して施工する場合、長期的には、再施工の都度必要となる専用金具の打ち込み箇所の増加を抑えることができる。
(11)
上記(8)から(10)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂シートは、強化繊維を含んでよい。
上記(8)から(10)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂シートは、強化繊維を含んでよい。
これによって、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの強度が向上する。
(12)
上記(8)から(11)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂シートは、総厚が5.0mm以下であってよい。
上記(8)から(11)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂シートは、総厚が5.0mm以下であってよい。
これによって、施工性に優れたポリ塩化ビニル系樹脂シートとなる。
(13)
上記(8)から(12)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂シートは、200mm/分での引張弾性率が0.1MPa以上500MPa以下であってよい。
上記(8)から(12)のいずれかのポリ塩化ビニル系樹脂シートは、200mm/分での引張弾性率が0.1MPa以上500MPa以下であってよい。
これによって、柔軟性が良好なポリ塩化ビニル系樹脂シートとなる。
(14)
さらに本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形されたシートの長期耐久性を判定する方法を含む。
この方法は;
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形されたシートを、メタルウェザー試験に供し、促進時間が1,000時間以下の複数の時点それぞれにおける引張破断伸びの実測値を得る第1測定工程と、
得られた引張破断伸びの実測値それぞれを、促進時間X(時間)および当該促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)で表される両対数グラフ上の座標とし、当該座標から定まる線形近似式(I):
log(Y)=A・log(X)+B (I)
を導出する線形近似工程と、
上記のメタルウェザー試験において促進時間が2400時間における引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)を得る第2測定工程と、
上記の実測値Yex 2,400(%)が、上記の線形近似式(I)から求められる引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との関係において、下記式(II):
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
を満たすか否かを判断し、満たす場合に、上記のポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形されたシートが長期耐久性を有すること(たとえば耐用年数を少なくとも40年と見積もること)を判定する判定工程と、を含む。
さらに本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形されたシートの長期耐久性を判定する方法を含む。
この方法は;
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形されたシートを、メタルウェザー試験に供し、促進時間が1,000時間以下の複数の時点それぞれにおける引張破断伸びの実測値を得る第1測定工程と、
得られた引張破断伸びの実測値それぞれを、促進時間X(時間)および当該促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)で表される両対数グラフ上の座標とし、当該座標から定まる線形近似式(I):
log(Y)=A・log(X)+B (I)
を導出する線形近似工程と、
上記のメタルウェザー試験において促進時間が2400時間における引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)を得る第2測定工程と、
上記の実測値Yex 2,400(%)が、上記の線形近似式(I)から求められる引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との関係において、下記式(II):
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
を満たすか否かを判断し、満たす場合に、上記のポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形されたシートが長期耐久性を有すること(たとえば耐用年数を少なくとも40年と見積もること)を判定する判定工程と、を含む。
これによって、長期耐久性を高い信頼性をもって判定することができる。
本発明によれば、良好な引張伸び特性を長期にわたり安定的に維持する特性を有するポリ塩化ビニル系樹脂シート、およびそれを与えるポリ塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
[1.長期耐久性]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、シートに成形されメタルウェザー試験に供した場合に、以下に説明する特定の条件を満たす。
以下において、メタルウェザー試験の条件は、紫外線強度が75mW/cm2、サイクルモードが2時間毎2分シャワー、BPT(ブラックパネル温度計)が80℃である。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、シートに成形されメタルウェザー試験に供した場合に、以下に説明する特定の条件を満たす。
以下において、メタルウェザー試験の条件は、紫外線強度が75mW/cm2、サイクルモードが2時間毎2分シャワー、BPT(ブラックパネル温度計)が80℃である。
メタルウェザー試験において、所定の促進時間X(時間)での引張破断伸びY(%)の実測値Yex(%)を複数測定する。引張破断伸びY(%)は、JIS K6251に準拠したダンベル8号形試験片を用い、試験室の標準温度及び標準湿度に従って、湿度を調節した環境下での状態調節を行った後、破断時伸びを測定して得られる。より具体的には、引張破断伸び(%)は、引張条件200mm/分、初期つかみ間距離30mm、23℃の条件下、初期つかみ間距離に対するつかみ間距離の増加量の割合(%)として得てよい。なお、成形後のシートが強化繊維(後述)を含む場合は、強化繊維破断時の伸びではなく、強化繊維破断後も樹脂部分が伸び続け、当該樹脂部分が破断したときの伸びを引張破断伸びとする。
引張破断伸びYの測定は、促進時間Xにして1,000時間以下の所定の複数の時点において行われる(第1測定)。促進時間Xにして1,000時間は、従来の塩化ビニル系樹脂防水シートの耐用年数である15年以下に相当する。これによって、判定される長期耐久性の信頼性が確保される。このような信頼性をより好ましく得る観点からは、促進時間Xにして600時間以下(従来の多くの塩化ビニル系樹脂防水シートの耐用年数である10年以下に相当)の所定の複数の時点、好ましくは3以上の時点、より好ましくは4以上の時点において行うとよく、さらに好ましくは、少なくとも、促進時間Xにして150時間(2.5年程度に相当)と、上述の600時間と、を含む複数の時点において第1測定を行うとよい。具体的には、150時間と600時間とそれらの間の時間(たとえば300時間)との3つの時点、好ましくは4つ以上の時点で第1測定を行うとよい。
促進時間Xにして1,000時間以下の所定の複数の時点において得られた引張破断伸びY(%)のそれぞれの実測値Yexは、促進時間X(時間)および当該促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)軸で表される両対数グラフ上の座標として用いられる。たとえば、促進時間XにしてXa,Xb,Xc(時間)の3点で測定する場合、それぞれの時点において得られた引張破断伸びの実測値Yex a,Yex b,Yex c(%)は、両対数グラフ上の座標(logXa,logYex a),(logXb,logYex b),(logXc,logYex c)として用いられる。なお、対数の基数は10である。
両対数グラフ上の複数の座標からは、下記の線形近似式(I)が導出される。この直線への近似は、たとえば、両対数グラフ上の3以上の座標に準拠した最小二乗法を用いるとよい。
[式1]
log(Y)=A・log(X)+B (I)
log(Y)=A・log(X)+B (I)
上記線形近似式(I)中、Aはたとえば−0.61以上0未満、好ましくは−0.33以上0未満、さらに好ましくは−0.20以上0未満であってよい。これによって、引張破断伸びが安定的に維持される。
上記線形近似式(I)中、Bはメタルウェザー試験における促進時間1時間後のシートの引張破断伸びに相当する。Bに相当する引張破断伸びは、たとえば1.50以上、好ましくは2.00以上、より好ましくは2.40以上であってよい。これによって、好ましい割れ耐性が具わる。引張破断伸びの範囲内の上限は特に限定されないが、変形追従性などを考慮するとたとえば10.00であってよい。
上記線形近似式(I)中、Bはメタルウェザー試験における促進時間1時間後のシートの引張破断伸びに相当する。Bに相当する引張破断伸びは、たとえば1.50以上、好ましくは2.00以上、より好ましくは2.40以上であってよい。これによって、好ましい割れ耐性が具わる。引張破断伸びの範囲内の上限は特に限定されないが、変形追従性などを考慮するとたとえば10.00であってよい。
引張破断伸びYの測定は、上記の第1測定に引き続き、促進時間Xにして2,400時間の時点において行われる(第2測定)。促進時間Xにして2,400時間は、40年に相当する。
第2測定によって得られる、促進時間Xが2,400時間の時の引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)は、100%超、好ましくは150%超である。これによって、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物から得られるシートは実質40年経過した時点でも良好な引張特性が確保される。
第2測定によって得られる促進時間Xが2,400時間の時の引っ張り破断伸びの実測値Yex 2,400(%)は、上記線形近似式(I)から求められる促進時間Xが2,400時間である場合の引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との間で、下記式(II)の関係を満たす。
[式2]
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
これによって、実質40年経過した時点でも引張特性の急激な低下が起こらず安定的に維持される。引張特性の維持性をさらに安定的に得る観点からは、促進時間Xが2,400時間の時の引っ張り破断伸びの実測値Yex 2,400(%)は、引張破断伸びの計算値Y2,400(%)の0.7倍超、好ましくは0.75倍超、さらに好ましくは0.8倍超であってよい。
[2.ポリ塩化ビニル系樹脂組成物]
上述の特定の条件を満たす本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)と熱可塑性エラストマー(ii)と、を含むことが好ましい。また、(メタ)アクリル系粒子(iii)、高分子系可塑剤(iv)、紫外線遮蔽剤(v)および無機充填剤(vi)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
上述の特定の条件を満たす本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)と熱可塑性エラストマー(ii)と、を含むことが好ましい。また、(メタ)アクリル系粒子(iii)、高分子系可塑剤(iv)、紫外線遮蔽剤(v)および無機充填剤(vi)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
グラフト塩化ビニル系樹脂(i)は、(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)およびエチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)からなる群から選ばれる。以下において、(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)をPVC−AG樹脂(i-1)、エチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)をPVC−TG樹脂(i-2)と記載する場合がある。
[2−1.(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系(PVC−AG)樹脂樹脂(i-1)]
(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)は、(メタ)アクリル系共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニルモノマーの重合体グラフト鎖とを含んで構成されるグラフト共重合体、および、(メタ)アクリル系共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマー以外のモノマーとの混合モノマーをいう)の重合体グラフト鎖とを含んで構成されるグラフト共重合体である。PVC−AG樹脂(i-1)を用いることは、常温(23℃)と低温(たとえば0℃以下)とで柔軟性の変化が小さいうえに柔軟性そのものを高めやすく、かつ優れた施工安定性が容易に得られる点で好ましい。
(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)は、(メタ)アクリル系共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニルモノマーの重合体グラフト鎖とを含んで構成されるグラフト共重合体、および、(メタ)アクリル系共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマー以外のモノマーとの混合モノマーをいう)の重合体グラフト鎖とを含んで構成されるグラフト共重合体である。PVC−AG樹脂(i-1)を用いることは、常温(23℃)と低温(たとえば0℃以下)とで柔軟性の変化が小さいうえに柔軟性そのものを高めやすく、かつ優れた施工安定性が容易に得られる点で好ましい。
PVC−AG樹脂(i-1)は、平均重合度が400以上2500以下である。平均重合度が400以上であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形体の機械的特性を確保しやすい点で好ましく、2500以下であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形性を確保しやすい点で好ましい。これらの効果をより好ましく得る観点から、平均重合度はたとえば600以上1300以下、好ましくは620以上1300以下であってよい。
なお、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
なお、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
[2−1−1.基幹ポリマー]
PVC−AG樹脂(i-1)の基幹ポリマーを与える(メタ)アクリル系共重合体の量は、PVC−AG樹脂(i-1)中、30重量%以上80重量%以下であってよい。当該量が上記下限値以上であることは、低温での優れた柔軟性を得る点で好ましく、上記上限以下であることは、優れた成形性を得る点で好ましい。これらの特性をより好ましく得る観点から、(メタ)アクリル系共重合体の量は、35重量%以上、好ましくは40重量%以上、75重量%以下、好ましくは70重量%以下であってよい。
PVC−AG樹脂(i-1)の基幹ポリマーを与える(メタ)アクリル系共重合体の量は、PVC−AG樹脂(i-1)中、30重量%以上80重量%以下であってよい。当該量が上記下限値以上であることは、低温での優れた柔軟性を得る点で好ましく、上記上限以下であることは、優れた成形性を得る点で好ましい。これらの特性をより好ましく得る観点から、(メタ)アクリル系共重合体の量は、35重量%以上、好ましくは40重量%以上、75重量%以下、好ましくは70重量%以下であってよい。
PVC−AG樹脂(i-1)の基幹ポリマーを構成する(メタ)アクリル系共重合体は、共重合性モノマー成分として(メタ)アクリル系モノマー成分と、多官能モノマー成分とを含む。
基幹ポリマーの共重合性モノマー成分である(メタ)アクリル系モノマー成分には、ガラス転移温度が−140℃以上、−20℃以下の単独重合体を与えることができるアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。このように、PVC−AG樹脂(i-1)の基幹ポリマーを構成する(メタ)アクリル系共重合体に比較的ガラス転移温度が低い成分を含むことによって、低温での柔軟性がより高くなる。
基幹ポリマーの共重合性モノマー成分である、上記(メタ)アクリル系モノマー成分には、さらに、−140℃以上、−20℃以下のガラス転移温度の単独重合体を与えることができる上記のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとは異なる第2の(メタ)アクリレートモノマーを含まなくてもよいし含んでもよい。この第2の(メタ)アクリレートモノマーは、上記の多官能モノマーとは異なるモノマーである。
ガラス転移温度が−140℃以上、−20℃以下の単独重合体を与えることができるアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、及びラウリルメタクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個有することが好ましく、単官能のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。上記アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
第2の(メタ)アクリレートモノマー(上記アルキル(メタ)アクリレートモノマーとは異なる第2の(メタ)アクリレートモノマー)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、クミルアクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メチルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−エチルヘプチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、2−メチルノニルメタクリレート、2−エチルオクチルメタクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第2の(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のガラス転移温度も、−140℃以上、−20℃以下であってよい。これによって、低温での高い柔軟性をより容易に得ることができる。しかしながら、本発明では、上記第2の(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のガラス転移温度が、−140℃未満であることも、−20℃を超えることも許容する。
上記第2の(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル基を有していなくてもよい。上記第2の(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個有することが好ましく、単官能の(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。上記第2の(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第2の(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル基を有していなくてもよい。上記第2の(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個有することが好ましく、単官能の(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。上記第2の(メタ)アクリレートモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
基幹ポリマーの別の共重合性モノマー成分である多官能モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記多官能モノマーの他の例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジアリル化合物もしくはトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられる。これら以外の多官能モノマーを用いてもよい。上記多官能モノマーは、不飽和二重結合を2個以上有することが好ましい。上記多官能モノマーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
基幹ポリマーの共重合性モノマー成分のうち、上記(メタ)アクリル系モノマー成分中、−140℃以上、−20℃以下の単独重合体を与えることができるアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は50重量%以上、100重量%以下、第2の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は0重量%または0重量%超、50重量%以下であってよい。上記アルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量を50重量%以上とすることは、成形体の低温での柔軟性をより良好とする観点で好ましい。成形体の低温での柔軟性をより一層良好とする観点からは、上記(メタ)アクリル系モノマー成分中、−140℃以上、−20℃以下の単独重合体を与えることができるアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は60重量%以上、100重量%以下、第2の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は0重量%または0重量%超、40重量%以下であってよい。
基幹ポリマーは、上記(メタ)アクリル系モノマー成分100重量部に対し、上記多官能モノマー0.01重量部以上、30重量部以下を反応させることにより得られるものであってよい。各共重合性モノマー成分の使用量を上記の範囲内とすることによって、樹脂の製造効率が良好となる。樹脂の製造効率をより一層良好にする観点からは、上記(メタ)アクリル系共重合体は、上記(メタ)アクリル系モノマー成分100重量部と、多官能モノマー0.1重量部以上、10重量部以下とを反応させることにより得ることがより好ましい。
[2−1−2.グラフト鎖]
PVC−AG樹脂(i-1)のグラフト鎖を与える重合性モノマーは、塩化ビニルモノマーのみであってもよいし、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーとの混合モノマー)であってもよい。
PVC−AG樹脂(i-1)のグラフト鎖を与える重合性モノマーは、塩化ビニルモノマーのみであってもよいし、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーとの混合モノマー)であってもよい。
PVC−AG樹脂(i-1)のグラフト鎖を与える塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーの量は、PVC−AG樹脂(i-1)中、20重量%以上70重量%以下であってよい。当該量が上記下限値以上であることは、優れた成形性を得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、低温での優れた柔軟性を得る点で好ましい。これらの特性をより好ましく得る観点から、塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーの量は、 25重量%以上、好ましくは30重量%以上、65重量%以下、好ましくは60重量%以下であってよい。
塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーは、1種または複数種が組み合わされて用いられてよい。塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーとしては、スチレン化合物、ジエン化合物、(メタ)アクリル酸アミド、ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸ジエステル及びグリシジル化合物等が挙げられる。
上記スチレン化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tertブトキシスチレン及びクロロメチルスチレン等が挙げられる。上記ジエン化合物としては、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン及びイソプレン等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アミドとしては、(メタ)アクリル酸−アミド、N,N−ジメチルアミド及びN,N−プロピルアミド等が挙げられる。上記ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸−アニリド、(メタ)アクリロニトリル、アクロレイン、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン及び酢酸ビニル等が挙げられる。上記不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル及びイタコン酸ジエチル等が挙げられる。上記グリシジル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−n−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−n−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、及び2,4,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン等が挙げられる。
[2−1−3.PVC−AG樹脂(i-1)の構造]
PVC−AG樹脂(i-1)の形態および構造としては特に限定されないが、たとえば、粒子の形態を有しかつ、基幹ポリマーがコアを構成しグラフト鎖がシェルを構成するコアシェル構造を有する場合、樹脂粒子が安定である点、および成形体の強度性能の向上が図られる点で好ましい。
PVC−AG樹脂(i-1)の形態および構造としては特に限定されないが、たとえば、粒子の形態を有しかつ、基幹ポリマーがコアを構成しグラフト鎖がシェルを構成するコアシェル構造を有する場合、樹脂粒子が安定である点、および成形体の強度性能の向上が図られる点で好ましい。
PVC−AG樹脂(i-1)がコアシェル構造の粒子である場合、基幹ポリマーである(メタ)アクリル系共重合体によって構成されるコア自体がさらにコアシェル構造を有することによって、全体として多重コアシェル(たとえば二重コアシェル)を構成していてもよいし、コア自体がコアシェル構造を有しなくてもよい。
PVC−AG樹脂(i-1)のコア自体がさらなるコアシェル構造を有する場合、当該さらなるコアシェル構造のコア(サブコア)およびシェル(サブシェル)は、それぞれ、上述したアクリル系コアの共重合性モノマー成分から選択される成分の重合体であってよい。このうち、サブコアを構成する重合体は、サブシェルを構成する重合体よりも低温環境下で柔軟であるものが選択されることが好ましい。一例として、サブコアが2−エチルヘキシルアクリレートの重合体で構成され、サブシェルがn−ブチルアクリレートの重合体で構成されるコアシェル構造が挙げられる。
PVC−AG樹脂(i-1)のコア自体がさらなるコアシェル構造を有する場合、当該さらなるコアシェル構造のコア(サブコア)およびシェル(サブシェル)は、それぞれ、上述したアクリル系コアの共重合性モノマー成分から選択される成分の重合体であってよい。このうち、サブコアを構成する重合体は、サブシェルを構成する重合体よりも低温環境下で柔軟であるものが選択されることが好ましい。一例として、サブコアが2−エチルヘキシルアクリレートの重合体で構成され、サブシェルがn−ブチルアクリレートの重合体で構成されるコアシェル構造が挙げられる。
なお、PVC−AG樹脂(i-1)のコアシェル構造は、シェルを構成するグラフト鎖(塩化ビニルモノマーの重合体グラフト鎖または塩化ビニル混合モノマーの重合体グラフト鎖)がシェル部分のみに存在している必要はなく、グラフト鎖はシェル部分を構成しつつもPVC−AG樹脂(i-1)全体にわたって存在し、コアに相当する部分に(メタ)アクリル系共重合体が分散している態様であってよい。
PVC−AG樹脂(i-1)は、その基幹ポリマーを構成するための(メタ)アクリル系共重合体が多い程柔軟性に優れる傾向にある。特に、PVC−AG樹脂(i-1)の基幹ポリマーを構成するための(メタ)アクリル系共重合体が2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする(具体的には、コア全体を構成する(メタ)アクリル系共重合体の50重量%超、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上、たとえば70重量%を占める)場合にこの傾向が好ましく得られる。
PVC−AG樹脂(i-1)がコアシェル構造を有し、かつコア自体がさらなるコアシェル構造を有し、サブコアが2−エチルヘキシルアクリレート重合体で構成される場合も同様であり、コア全体に対して、サブコアを構成する2−エチルヘキシルアクリレート重合体が50重量%超(サブシェルが50重量%未満)、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上、たとえば70重量%を占める場合に上記の傾向が好ましく得られる。
PVC−AG樹脂(i-1)がコアシェル構造を有し、かつコア自体がさらなるコアシェル構造を有し、サブコアが2−エチルヘキシルアクリレート重合体で構成される場合も同様であり、コア全体に対して、サブコアを構成する2−エチルヘキシルアクリレート重合体が50重量%超(サブシェルが50重量%未満)、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上、たとえば70重量%を占める場合に上記の傾向が好ましく得られる。
[2−1−4.PVC−AG樹脂(i-1)の合成]
PVC−AG樹脂(i-1)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれの重合法で得られたものであってもよい。
PVC−AG樹脂(i-1)は、基幹ポリマーを構成するための(メタ)アクリル系共重合体を30重量%以上80重量%以下と、グラフト側鎖を構成するための塩化ビニルモノマーを20重量%以上70重量%以下と、を共重合させることにより得られるものである。または、上記ポリ塩化ビニル系樹脂は、基幹ポリマーを構成するための(メタ)アクリル系共重合体を30重量%以上、80重量%以下と、グラフト側鎖を構成するための塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーを合計20重量%以上、70重量%以下と、を共重合させることにより得られるものであってよい。これによって、低温でのより優れた柔軟性とより優れた成形性とを両立することができる。
PVC−AG樹脂(i-1)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれの重合法で得られたものであってもよい。
PVC−AG樹脂(i-1)は、基幹ポリマーを構成するための(メタ)アクリル系共重合体を30重量%以上80重量%以下と、グラフト側鎖を構成するための塩化ビニルモノマーを20重量%以上70重量%以下と、を共重合させることにより得られるものである。または、上記ポリ塩化ビニル系樹脂は、基幹ポリマーを構成するための(メタ)アクリル系共重合体を30重量%以上、80重量%以下と、グラフト側鎖を構成するための塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーを合計20重量%以上、70重量%以下と、を共重合させることにより得られるものであってよい。これによって、低温でのより優れた柔軟性とより優れた成形性とを両立することができる。
低温でのより一層優れた柔軟性とより一層優れた成形性とを両立する観点からは、PVC−AG樹脂(i-1)は、(メタ)アクリル系共重合体35重量%以上、75重量%以下と、塩化ビニルモノマー25重量%以上、65重量%以下とを共重合させることにより得ることが好ましく、または、(メタ)アクリル系共重合体35重量%以上、75重量%以下と、塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーを合計25重量%以上、65重量%以下とを共重合させることにより得られることが好ましい。
上記(メタ)アクリレート系重合体を得る際、並びに上記(メタ)アクリレート系重合体と上記塩化ビニルモノマー等とを重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。上記重合開始剤は特に限定されない。上記重合開始剤は、モノマー成分に可溶である油溶性のフリーラジカルを発生する化合物であることが好ましい。上記重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記重合開始剤としては、有機パーオキサイド化合物及びアゾ化合物等が挙げられる。これら以外の重合開始剤を用いてもよい。上記有機パーオキサイド化合物としては、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート及びα−クミルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート系重合体を得る際に、並びに上記(メタ)アクリレート系重合体と上記塩化ビニルモノマー等とを重合させる際に、分散剤を用いることが好ましい。該分散剤は、モノマー成分の液滴を懸濁及び分散させ、分散を安定化させる役割を有する。上記分散剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記分散剤は特に限定されない。上記分散剤の好ましい例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩/アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分けん化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、並びに無水マレイン酸/スチレン共重合体等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
重合に用いる成分(重合可能な成分)100重量部に対して、上記分散剤の使用量(含有量)は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
上記分散剤は特に限定されない。上記分散剤の好ましい例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩/アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分けん化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、並びに無水マレイン酸/スチレン共重合体等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
重合に用いる成分(重合可能な成分)100重量部に対して、上記分散剤の使用量(含有量)は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
[2−2.エチレン-酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系(PVC−TG)樹脂(ii-2)]
エチレン-酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニルモノマーの重合体グラフト鎖を含んで構成されるグラフト共重合体、および、エチレン-酢酸ビニル共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマー以外のモノマーとの混合モノマーをいう)の重合体グラフト鎖とを含んで構成されるグラフト共重合体である。PVC−TG樹脂(i-2)を用いることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性を向上させることができる点で好ましい。
エチレン-酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニルモノマーの重合体グラフト鎖を含んで構成されるグラフト共重合体、および、エチレン-酢酸ビニル共重合体の基幹ポリマーと、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマー以外のモノマーとの混合モノマーをいう)の重合体グラフト鎖とを含んで構成されるグラフト共重合体である。PVC−TG樹脂(i-2)を用いることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性を向上させることができる点で好ましい。
PVC−TG樹脂(i-2)は、平均重合度が400以上2500以下であってよい。平均重合度を上記範囲内とすることによって、良好な柔軟性を得ることができる。この効果をより好ましく得る観点から、平均重合度はたとえば640以上1300以下であってよい。
なお、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
なお、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
[2−2−1.基幹ポリマー]
PVC−TG樹脂(i-2)の基幹ポリマーを与えるエチレン-酢酸ビニル共重合体の量は、35重量部以上80重量部以下であってよい。当該量が上記下限値以上であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性を向上させる点、および低温柔軟性を維持する点などで好ましく、上記上限値以下であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層の成形性を得やすい点で好ましい。これらの特性をより好ましく得る観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体の量は、40重量部以上75重量部以下であってよい。
PVC−TG樹脂(i-2)の基幹ポリマーを与えるエチレン-酢酸ビニル共重合体の量は、35重量部以上80重量部以下であってよい。当該量が上記下限値以上であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性を向上させる点、および低温柔軟性を維持する点などで好ましく、上記上限値以下であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層の成形性を得やすい点で好ましい。これらの特性をより好ましく得る観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体の量は、40重量部以上75重量部以下であってよい。
PVC−TG樹脂(i-2)の基幹ポリマーを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体としては特に限定されない。たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対する酢酸ビニル由来の構成単位の重量比がたとえば1.5重量%以上40重量%以下であってよい。酢酸ビニルの構成単位の重量比が上記下限値以上であることは、ゴム弾性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高める点、および低温柔軟性を維持する点などで好ましく、上記上限値以下であることは、良好なハンドリング性および加工性を得る点で好ましい。これらの特性を好ましく得る観点から、酢酸ビニルの構成単位の重量比は、10重量%以上35重量%以下であることが好ましい。
なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量はJIS K 6924に準拠して測定することができる。
なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量はJIS K 6924に準拠して測定することができる。
[2−2−2.グラフト鎖]
PVC−TG樹脂(i-2)のグラフト鎖を与える重合性モノマーは、塩化ビニルモノマーのみであってもよいし、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーとの混合モノマー)であってもよい。
PVC−TG樹脂(i-2)のグラフト鎖を与える重合性モノマーは、塩化ビニルモノマーのみであってもよいし、塩化ビニル混合モノマー(塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーとの混合モノマー)であってもよい。
グラフト鎖を与える塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーの量は、基幹ポリマーを与えるエチレン-酢酸ビニル共重合体の35重量部以上80重量部以下に対し、20重量部以上65重量部以下であってよい。当該量が上記下限値以上であることは、塩化ビニル系樹脂層の成形性を得やすい点で好ましく、上記上限値以下であることは、塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性を向上させる点、および低温柔軟性を維持する点などで好ましい。これらの特性をより好ましく得る観点から、グラフト鎖を与える塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーの量は、25重量部以上60重量部以下であってよい。
塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーは、1種または複数種が組み合わされて用いられてよい。塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーとしては、スチレン化合物、ジエン化合物、(メタ)アクリル酸アミド、ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸ジエステル及びグリシジル化合物等が挙げられる。
上記スチレン化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tertブトキシスチレン及びクロロメチルスチレン等が挙げられる。上記ジエン化合物としては、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン及びイソプレン等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アミドとしては、(メタ)アクリル酸−アミド、N,N−ジメチルアミド及びN,N−プロピルアミド等が挙げられる。上記ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸−アニリド、(メタ)アクリロニトリル、アクロレイン、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン及び酢酸ビニル等が挙げられる。上記不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル及びイタコン酸ジエチル等が挙げられる。上記グリシジル化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−n−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−n−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、及び2,4,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン等が挙げられる。
[2−2−3.PVC−TG樹脂(i-2)の合成]
PVC−TG樹脂(i-2)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれの重合法で得られたものであってもよい。
PVC−TG樹脂(i-2)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれの重合法で得られたものであってもよい。
PVC−TG樹脂(i-2)は、基幹ポリマーを構成するためのエチレン−酢酸ビニル共重合体を35重量部以上、80重量部以下と、グラフト側鎖を構成するための塩化ビニルモノマーを20重量部以上、65重量部以下と、を共重合させることにより得てよい。または、上記ポリ塩化ビニル系樹脂は、基幹ポリマーを構成するためのエチレン−酢酸ビニル共重合体を35重量部以上、80重量部以下と、グラフト側鎖を構成するための塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーを合計20重量部以上、65重量部以下と、を共重合させることにより得てよい。これによって、ポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性を向上させ、低温柔軟性を維持するとともに、ポリ塩化ビニル系樹脂層の成形性を得やすくすることができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂層の柔軟性を高めてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐劣化性をより向上させ、低温柔軟性をより良好に維持するとともに、ポリ塩化ビニル系樹脂層の成形性をより得やすくする観点からは、PVC−TG樹脂(i-2)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体40重量部以上、75重量部以下と、塩化ビニルモノマー25重量部以上、60重量部以下とを共重合させることにより得ることが好ましく、または、エチレン−酢酸ビニル共重合体40重量部以上、75重量部以下と、塩化ビニルモノマー及び塩化ビニルモノマー以外の共重合性モノマーを合計25重量部以上、60重量部以下とを共重合させることにより得られることが好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を得る際、および上記エチレン−酢酸ビニル共重合体と上記塩化ビニルモノマー等とを重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。上記重合開始剤は特に限定されない。上記重合開始剤は、モノマー成分に可溶である油溶性のフリーラジカルを発生する化合物であることが好ましい。上記重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記重合開始剤としては、有機パーオキサイド化合物及びアゾ化合物等が挙げられる。これら以外の重合開始剤を用いてもよい。上記有機パーオキサイド化合物としては、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート及びα−クミルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を得る際に、および上記エチレン−酢酸ビニル共重合体と上記塩化ビニルモノマー等とを重合させる際に、分散剤を用いることが好ましい。該分散剤は、モノマー成分の液滴を懸濁及び分散させ、分散を安定化させる役割を有する。上記分散剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記分散剤は特に限定されない。上記分散剤の好ましい例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩/アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分けん化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、並びに無水マレイン酸/スチレン共重合体等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
重合に用いる成分(重合可能な成分)100重量部に対して、上記分散剤の使用量(含有量)は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
上記分散剤は特に限定されない。上記分散剤の好ましい例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩/アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分けん化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、並びに無水マレイン酸/スチレン共重合体等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
重合に用いる成分(重合可能な成分)100重量部に対して、上記分散剤の使用量(含有量)は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
[2−3.熱可塑性エラストマー(ii)]
熱可塑性エラストマー(ii)は、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの引張特性および柔軟性を良好とするため、ならびに、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シートなどの防水資材の溶剤溶着性または熱融着性を高めるために含まれる。特に、総厚が薄膜化されたポリ塩化ビニル系樹脂防水シートなどの防水資材の溶剤溶着性または熱融着性を確保する場合に有用である。熱可塑性エラストマー(ii)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性エラストマー(ii)は、後述の(メタ)アクリル系粒子(iii)とは区別される。
熱可塑性エラストマー(ii)は、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの引張特性および柔軟性を良好とするため、ならびに、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シートなどの防水資材の溶剤溶着性または熱融着性を高めるために含まれる。特に、総厚が薄膜化されたポリ塩化ビニル系樹脂防水シートなどの防水資材の溶剤溶着性または熱融着性を確保する場合に有用である。熱可塑性エラストマー(ii)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱可塑性エラストマー(ii)は、後述の(メタ)アクリル系粒子(iii)とは区別される。
熱可塑性エラストマー(ii)の持つ機械的物性の付与効果をより一層良好に発揮する観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)と相溶可能であることが好ましい。本明細書において、「相溶可能」とは、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)に対して、加熱成形時に均一分散することを意味する。
熱可塑性エラストマー(ii)としては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体、アクリルゴム(アクリル酸エステル−2−クロロエチルビニルエーテル共重合体(ACM)、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体(ANM)など)、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体など)、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマー(ii)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱融着性、柔軟性、及び引張破断伸びをより一層良好にする観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体、および塩素化ポリエチレンであることが好ましい。これらの好ましい熱可塑性エラストマーを用いる場合に、好ましい熱可塑性エラストマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
常温(23℃)での柔軟性、及び引張破断伸びをより一層良好にする観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、塩素化ポリエチレンであることが好ましい。
熱融着性、常温(23℃)での柔軟性、低温(たとえば0℃以下)での柔軟性、及び引張破断伸びをより一層良好にする観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、又は、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体であることが好ましい。中でも、熱融着性をより一層良好にする観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体であることが好ましく、エチレン−(メタ)アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体であることが好ましい。この場合、高分子系可塑剤(iv)の量を低減させても熱融着性を発揮することができる。
熱融着性、常温(23℃)での柔軟性、低温(たとえば0℃以下)での柔軟性、及び引張破断伸びをより一層良好にする観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、又は、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体であることが好ましい。中でも、熱融着性をより一層良好にする観点からは、熱可塑性エラストマー(ii)は、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体であることが好ましく、エチレン−(メタ)アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体であることが好ましい。この場合、高分子系可塑剤(iv)の量を低減させても熱融着性を発揮することができる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物において、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して、熱可塑性エラストマー(ii)の含有量は10重量部以上、200重量部以下であってよい。上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物において、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して、熱可塑性エラストマー(ii)の含有量は好ましくは20重量部以上、より好ましくは40重量部以上であり、好ましくは150重量部以下である。熱可塑性エラストマー(ii)の含有量が上記下限以上であると、熱可塑性エラストマー(ii)による柔軟性、熱融着性、溶剤溶着強度、および伸びなどの改質効果がより一層良好になる。熱可塑性エラストマー(ii)の含有量が上記上限以下であると、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)による柔軟性がより一層良好になる。
熱可塑性エラストマー(ii)は、可塑剤と異なり移行または抜けが起こらないため、可塑剤の使用量を最小限まで削減または完全排除を可能にし、機械的特性の低下をより有効に防止することができる。
ここで、引張破断伸びの低下に影響する要因は主として、可塑剤のブリードアウトと、紫外線による樹脂自体の耐候劣化と、が挙げられる。特に、可塑剤を多く含むシートの場合、含有可塑剤がある一定量排出された時点で急激な物性低下を起こすことから、引張破断伸びの低下を急激にする原因は、可塑剤のブリードアウトの方であると考えられる。本発明では、熱可塑性エラストマー(ii)を用いることで可塑剤の使用量を最小限まで削減または完全排除すると、引張破断伸びの低下を急激にする原因を排除することができる。なおその結果、引張破断伸びの低下の要因として、残る一方の要因つまり紫外線による樹脂自体の耐候劣化が支配的になるが、これは急激な物性低下を生じさせることはない。なぜなら、紫外線劣化は、短期的には樹脂表面付近の浅い局所部分で進行するが、長期的にはそれ以上の厚み方向に劣化が進行することはないからである。したがって、熱可塑性エラストマー(ii)の使用で可塑剤の使用量を最小限まで削減または完全排除することで、長期間で急激な物性低下を起こすことがなくなる。
ここで、引張破断伸びの低下に影響する要因は主として、可塑剤のブリードアウトと、紫外線による樹脂自体の耐候劣化と、が挙げられる。特に、可塑剤を多く含むシートの場合、含有可塑剤がある一定量排出された時点で急激な物性低下を起こすことから、引張破断伸びの低下を急激にする原因は、可塑剤のブリードアウトの方であると考えられる。本発明では、熱可塑性エラストマー(ii)を用いることで可塑剤の使用量を最小限まで削減または完全排除すると、引張破断伸びの低下を急激にする原因を排除することができる。なおその結果、引張破断伸びの低下の要因として、残る一方の要因つまり紫外線による樹脂自体の耐候劣化が支配的になるが、これは急激な物性低下を生じさせることはない。なぜなら、紫外線劣化は、短期的には樹脂表面付近の浅い局所部分で進行するが、長期的にはそれ以上の厚み方向に劣化が進行することはないからである。したがって、熱可塑性エラストマー(ii)の使用で可塑剤の使用量を最小限まで削減または完全排除することで、長期間で急激な物性低下を起こすことがなくなる。
[2−4.(メタ)アクリル系粒子(iii)]
(メタ)アクリル系粒子(iii)は、特に低温での柔軟性を向上させて良好な低温施工性を得るために含まれてよい。(メタ)アクリル系粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル系粒子(iii)とは、(メタ)アクリル化合物から得られる粒子であり、より具体的には(メタ)アクリルゴム粒子である。
(メタ)アクリル系粒子(iii)は、特に低温での柔軟性を向上させて良好な低温施工性を得るために含まれてよい。(メタ)アクリル系粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(メタ)アクリル系粒子(iii)とは、(メタ)アクリル化合物から得られる粒子であり、より具体的には(メタ)アクリルゴム粒子である。
(メタ)アクリル系粒子(iii)としては、カルボン酸変性(メタ)アクリルゴム、エポキシ変性(メタ)アクリルゴム、塩素化(メタ)アクリルゴム、シリコーン変性(メタ)アクリルゴムなどが挙げられる。
また、(メタ)アクリル系粒子(iii)は、架橋構造を有するコア部と、単量体成分がコア部にグラフト重合した重合体を主成分とするシェル部からなるコアシェル型グラフト共重合体であってよい。コア部は、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエンおよびスチレン−ブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体成分を含んで構成される架橋ゴムであってよく、シェル部は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体成分がコア部にグラフト重合した重合体であってよい。柔軟性をより良好に得る観点から、コアシェル型グラフト共重合体中、コア部の含有量がシェル部の含有量よりも大きいことが好ましい。
また、(メタ)アクリル系粒子(iii)は、架橋構造を有するコア部と、単量体成分がコア部にグラフト重合した重合体を主成分とするシェル部からなるコアシェル型グラフト共重合体であってよい。コア部は、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエンおよびスチレン−ブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体成分を含んで構成される架橋ゴムであってよく、シェル部は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体成分がコア部にグラフト重合した重合体であってよい。柔軟性をより良好に得る観点から、コアシェル型グラフト共重合体中、コア部の含有量がシェル部の含有量よりも大きいことが好ましい。
コアシェル型グラフト共重合体のより具体的な例としては、ブチルアクリレートの架橋ゴム粒子に、メチルメタクリレートをグラフト共重合させて得られるアクリル系グラフト共重合体;ブタジエンまたはスチレン−ブタジエンの架橋ゴム粒子に、メチルメタクリレートおよび必要に応じてスチレンをグラフト共重合させて得られるメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MCS樹脂);ブチルアクリレートの架橋ゴム粒子にアクリロニトリルおよびスチレンをグラフト共重合させて得られるASAなどが挙げられる。
(メタ)アクリル系粒子(iii)の含有量は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して、たとえば0重量部以上超80重量部以下であってよい。上記下限値超であることは、低温柔軟性および伸びの向上効果を良好に得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、成形性を良好に得る点で好ましい。これらの特性をより良好に得る観点から、(メタ)アクリル系粒子(iii)の含有量は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して、20重量部以上60重量部以下であることがより好ましい。
[2−5.高分子系可塑剤(iv)]
高分子系可塑剤(iv)は、長期耐久性を損なわずに可塑化による柔軟性を得るため、または当該柔軟性と熱融着性とを得るために含まれる。高分子系可塑剤(iv)としては、重量平均分子量500以上、より好ましくは500以上10,000以下の可塑剤であることが好ましい。分子量と粘度との間には相関があり、後述の粘度となる分子量であることがより好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であることは、可塑剤の保留性が良好で抜けまたは移行が起こりにくい点で好ましく、上記上限値以下であることは、可塑化能を発揮し易い点で好ましい。なお、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法(標準物質:ポリスチレン)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を指すものとする。
高分子系可塑剤(iv)は、長期耐久性を損なわずに可塑化による柔軟性を得るため、または当該柔軟性と熱融着性とを得るために含まれる。高分子系可塑剤(iv)としては、重量平均分子量500以上、より好ましくは500以上10,000以下の可塑剤であることが好ましい。分子量と粘度との間には相関があり、後述の粘度となる分子量であることがより好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であることは、可塑剤の保留性が良好で抜けまたは移行が起こりにくい点で好ましく、上記上限値以下であることは、可塑化能を発揮し易い点で好ましい。なお、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法(標準物質:ポリスチレン)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を指すものとする。
具体的には、高分子系可塑剤(iv)としてポリエステル系可塑剤などが挙げられる。ポリエステル系可塑剤は、多価アルコールおよび多価カルボン酸、ならびに、一価アルコールおよび/または一塩基酸から得られるポリエステルである。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族二塩基酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和脂肪族二塩基酸、またはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸などの二塩基酸などが挙げられる。一価アルコールとしては、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール(2EH)、ノニルアルコール、イソノニルアルコール(INA)、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール(UA)、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。一塩基酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪族一塩基酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪族一塩基酸、安息香酸、トルイル酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸等の芳香族一塩基酸などが挙げられる。より好ましくは、一般式 A−D−[−G−D−]n −A (ただし、Aは封鎖剤(一価アルコールまたは一価カルボン酸)、Dは二塩基酸、Gはグリコール、nは1以上の整数を表す)で表されるポリエステル系可塑剤が挙げられる。
これら高分子系可塑剤(iv)は単独または複数のブレンドで用いることができる。
これら高分子系可塑剤(iv)は単独または複数のブレンドで用いることができる。
高分子系可塑剤(iv)の含有量は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下であってよい。可塑剤の含有量が上記下限値以上であることは、可塑化能を発揮させやすい点で好ましい。可塑剤の含有量が上記上限値以下であることは、常温(23℃)での破断強度が良好でありシート全体としての強度に優れる点で好ましい。
さらに、高分子系可塑剤(iv)の含有量は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して8重量部以上、好ましくは10重量部以上であってもよい。これによって、熱可塑性エラストマー(ii)固有の熱融着性能の大小によらず、ポリ塩化ビニル系樹脂シートが良好な熱融着性を得ることができる。
さらに、高分子系可塑剤(iv)の含有量は、グラフト塩化ビニル系樹脂(i)100重量部に対して8重量部以上、好ましくは10重量部以上であってもよい。これによって、熱可塑性エラストマー(ii)固有の熱融着性能の大小によらず、ポリ塩化ビニル系樹脂シートが良好な熱融着性を得ることができる。
高分子系可塑剤(iv)の粘度は、200mPa・s/25℃以上であってよい。好ましくは、高分子系可塑剤(iv)の粘度は、200mPa・s/25℃以上10000mPa・s/25℃以下であってよい。当該粘度が上記下限値以上であることは、抜けまたは移行を抑制する点で好ましく、上記上限値以下であることは、可塑化能を発揮し易い点で好ましい。上記の特性をより良好に得る観点から、高分子系可塑剤(iv)の粘度は、さらに1000mPa・s/25℃以上10000mPa・s/25℃以下であることが好ましい。
なお粘度とは、JIS Z8803に準拠して得られる粘度である。
なお粘度とは、JIS Z8803に準拠して得られる粘度である。
[2−6.紫外線遮蔽剤(v)]
紫外線遮蔽剤(v)は、顔料、紫外線吸収剤、および無機系紫外線遮蔽剤を含む。紫外線遮蔽剤(v)を用いる場合は顔料を必須とし、紫外線吸収剤および無機系紫外線遮蔽剤は顔料と併用して用いられることが好ましい。紫外線遮蔽剤(v)を含ませることによって、ポリ塩化ビニル系樹脂層自体を紫外線バリア層として機能させることができる。以下、紫外線遮蔽剤(v)を含む場合のポリ塩化ビニル系樹脂層を紫外線バリア層と記載する場合がある。
紫外線遮蔽剤(v)は、顔料、紫外線吸収剤、および無機系紫外線遮蔽剤を含む。紫外線遮蔽剤(v)を用いる場合は顔料を必須とし、紫外線吸収剤および無機系紫外線遮蔽剤は顔料と併用して用いられることが好ましい。紫外線遮蔽剤(v)を含ませることによって、ポリ塩化ビニル系樹脂層自体を紫外線バリア層として機能させることができる。以下、紫外線遮蔽剤(v)を含む場合のポリ塩化ビニル系樹脂層を紫外線バリア層と記載する場合がある。
顔料としては、カーボンブラック、ホワイトカーボン;フタロシアニン系、イソインドリノン系、ペリレン系、アゾ系、縮合アゾ系、キナクリドン系、アンスラキノン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系、ジオキサジン系、酸化チタン系、酸化鉄系、酸化クロム系、クロム酸鉛系、スピネル型焼成系、ジケトピロロピロール系、酸化マンガン−酸化ビスマス複合塩系、酸化マンガン−イットリウム複合塩系、酸化鉄−酸化クロム複合塩系などの顔料が挙げられる。顔料は、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。
顔料の含量は、所望の紫外線透過性能を得られるよう、紫外線バリア層の厚みに応じて適宜調整されるが、紫外線バリア層を構成する樹脂組成物(100重量%)中、たとえば1重量%以上10重量%以下、好ましくは2重量%以上5重量%以下であってよい。顔料の含量が上記下限値以上であることは、所望の紫外線透過率を達成するために必要な層厚寸法の肥大化を抑制する効果、ならびに、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの機械的特性の低下を抑制する効果を良好に得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、使用量に対する当該効果を効率的に得る点および加工性の点で好ましい。
紫外線吸収剤としては、フェニルサレシレ−ト、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレ−トなどのサリチル酸系;2,4−ギヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾ−ル系;2−エチルへキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−ト、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−トなどのシアノアクリレ−ト系の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。
紫外線吸収剤の含量は、所望の紫外線透過性能を得られるよう、紫外線バリア層の厚みに応じて適宜調整されるが、紫外線バリア層を構成する樹脂組成物(100重量%)に対してたとえば0.05重量%以上0.6重量%以下、好ましくは0.1重量%以上0.6重量%以下であってよい。紫外線吸収剤の含量が上記下限値以上であることは、所望の紫外線透過率を達成するために必要な層厚寸法の肥大化を抑制する効果、ならびに、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの機械的特性の低下を抑制する効果を良好に得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、使用量に対する当該効果を効率的に得る点、およびブリードまたはブルームの発生を防止する点で好ましい。
無機系紫外線遮蔽剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化セリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ゼオライト、グラファイトなどが挙げられる。無機充填剤としては、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。
特に、熱可塑性エラストマー(ii)としてエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体を用いた場合は、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体の脱酢酸による分解を防止し引張伸びを良好に保つ観点から、紫外線遮蔽剤を用いることが特に有用である。
[2−7.無機充填剤(vi)]
無機充填剤(vi)としては、上述した無機系紫外線遮蔽剤と、紫外線遮蔽効果のない無機物との両方を含む。たとえば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物または金属水酸化物;アルミナけい酸ナトリウム、ハイドロカルマイト、けい酸アルミニウム、けい酸マグネシウム、けい酸カルシウム、ゼオライト等のけい酸金属塩;活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、アスベスト、ウオラストナイト、チタン酸カリウム、PMF、石膏繊維、ゾノライト、MOS、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。無機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
無機充填剤(vi)としては、上述した無機系紫外線遮蔽剤と、紫外線遮蔽効果のない無機物との両方を含む。たとえば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物または金属水酸化物;アルミナけい酸ナトリウム、ハイドロカルマイト、けい酸アルミニウム、けい酸マグネシウム、けい酸カルシウム、ゼオライト等のけい酸金属塩;活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、アスベスト、ウオラストナイト、チタン酸カリウム、PMF、石膏繊維、ゾノライト、MOS、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。無機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
無機充填剤(vi)の含有量(上述の無機系紫外線遮蔽剤と、紫外線遮蔽効果のない無機物との合計量)は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(100重量%)中、たとえば2重量%以上80重量%以下、好ましくは5重量%以上50重量%以下、より好ましくは8重量%以上30重量%以下であってよい。無機充填剤(vi)の含有量が上記下限値以上であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの強度向上の点で好ましく、さらに、無機充填剤(vi)が上述の無機系紫外線遮蔽剤(v)にも該当する場合は、紫外線バリア性を向上させてポリ塩化ビニル系樹脂シートの耐候性をより良好に得る点で好ましい。また、無機充填剤(vi)の含有量が上記上限値以下であることは、強度および伸びを良好に得る点で好ましい。
[2−8.その他]
なお、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には上述した成分の他、滑剤、加工助剤、安定剤、安定化助剤、光安定剤、および酸化防止剤などが含まれてもよい。
なお、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には上述した成分の他、滑剤、加工助剤、安定剤、安定化助剤、光安定剤、および酸化防止剤などが含まれてもよい。
滑剤としては、たとえば、ステアリン酸等の脂肪酸類;脂肪酸エステル類;オレフィンワックス類等が挙げられる。これらの滑剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
加工助剤としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマーの単独重合体もしくは共重合体;上記(メタ)アクリレート系モノマーとスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等のビニル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの加工助剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
安定剤としては、たとえば、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫ラウレート等の有機錫系安定剤;鉛白、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、シリカゲル共沈硅酸鉛、ステアリン酸鉛、安息香酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系安定剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤などが挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
安定化助剤としては、たとえば、リン酸エステル等が挙げられる。これらの安定化助剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
光安定剤としては、たとえば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、長期耐性を良好に確保する観点から、上述した高分子可塑剤(iv)以外の可塑剤を実質的に含まないことが好ましい。含まないことが好ましい可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤などが挙げられるが、このうち、特に、分子量500以上の可塑剤(トリメリット酸系可塑剤およびエポキシ化植物油系可塑剤など)を除く低分子可塑剤は、抜けまたは移行が起こりやすいため、実質的に含まないことがより好ましい。実質的に含まないとは、完全に排除されることつまり全く含まない(含量が0重量%)ことが好ましいが、上述の本発明の長期耐久性を損なわない程度の極微量(たとえば、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物100重量%中、0重量%超4量%以下、好ましくは3重量%以下)が混入している態様も許容する。
[3.ポリ塩化ビニル系樹脂シート]
本発明のポリ塩化ビニル樹脂シートは、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形することができる。ポリ塩化ビニル系樹脂シートは、柔軟性が求められるとともに、使用時または保存時に自然環境(光、温度、水分などによる負荷)に晒されうるシートであればよい。たとえば、施工シートおよび役物などの施工資材(好ましくは防水シートおよび防水などの防水資材);合皮生地、エナメル生地、化粧シートなどの生地材が挙げられる。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂シートは、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物から成形することができる。ポリ塩化ビニル系樹脂シートは、柔軟性が求められるとともに、使用時または保存時に自然環境(光、温度、水分などによる負荷)に晒されうるシートであればよい。たとえば、施工シートおよび役物などの施工資材(好ましくは防水シートおよび防水などの防水資材);合皮生地、エナメル生地、化粧シートなどの生地材が挙げられる。
[3−1.物性]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、上述の長期耐久性を有する。つまり、上述の線形近似式(I)において上述の関係式(II)を満たす。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、上述の長期耐久性を有する。つまり、上述の線形近似式(I)において上述の関係式(II)を満たす。
なお、劣化条件に供される前の引張破断伸び(200mm/分)は、たとえば150%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上であってよい。これによって、好ましい割れ耐性が具わる。引張破断伸びの範囲内の上限は特に限定されないが、変形追従性などを考慮するとたとえば1000%であってよい。
さらに、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、低温施工性、熱融、剛性および強度、ならびに耐衝撃性などを奏する各種物性を有していることが好ましい。
低温施工性の観点からは、5℃での貯蔵弾性率が2×107Pa以上5×108Pa以下、好ましくは2×107Pa以上4×108Pa以下、より好ましくは2×107Pa以上3×108Pa以下であってもよい。貯蔵弾性率が上記下限値以上であることは、適度なコシによって施工性に優れる点で好ましく、上記上限値以下であることは、低温環境下でも適度な柔軟性によって施工性に優れる点で好ましい。
なお、貯蔵弾性率は、JIS K7244−4に準拠して得られる測定値である
なお、貯蔵弾性率は、JIS K7244−4に準拠して得られる測定値である
熱融着性の観点からは、熱融着(押し付け荷重2kg)後に常温に冷却した試験片を速度200mm/分で剥離した場合の剥離荷重(mN)を当該試験片の幅(mm)で除して得られる剥離強度(mN/mm)が、2000mN/mm以上、好ましくは3000mN/mm以上であってよい。これによって、良好な接着性(熱融着強度)が得られる。
耐風圧の観点からは、熱劣化試験で促進劣化された場合の240時間における引張強度が、1MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上であってよい。これによって、台風などによる強風での負圧負荷による破断を防ぐことができる。
なお、引張強度は、JIS K6251に準拠したダンベル8号形試験片を用い、試験室の標準温度及び標準湿度に従って、湿度を調節した環境下での状態調節を行った後、破断時強度を測定して得られる。なお、成形後のシートが強化繊維(後述)を含む場合は、強化繊維破断時の伸びではなく、強化繊維破断後も樹脂部分が伸び続け、当該樹脂部分が破断したときの強度を引張強度とする。
なお、引張強度は、JIS K6251に準拠したダンベル8号形試験片を用い、試験室の標準温度及び標準湿度に従って、湿度を調節した環境下での状態調節を行った後、破断時強度を測定して得られる。なお、成形後のシートが強化繊維(後述)を含む場合は、強化繊維破断時の伸びではなく、強化繊維破断後も樹脂部分が伸び続け、当該樹脂部分が破断したときの強度を引張強度とする。
剛性および強度ならびに耐衝撃性の観点から、常温(23℃)での引張弾性率が、0.1MPa以上500MPa以下、好ましくは200MPa以下、より好ましくは100MPa以下であってよい。また、温度変動に対する施工安定性の観点から、23℃における引張弾性率と−20℃における引張弾性率との差が100倍以下であることが好ましい。
なお、引張弾性率は、JIS K6251に準拠したダンベル8号形試験片を用い、試験室の標準温度及び標準湿度に従って、湿度を調節した環境下での状態調節を行った後、弾性率を測定して得られる。より具体的には、引張速度200mm/分、初期つかみ間距離30mm、23℃の条件下で、引張を行い、変位0.025mmおよび0.125mmの値を用いて引張弾性率を測定して得てよい。
なお、引張弾性率は、JIS K6251に準拠したダンベル8号形試験片を用い、試験室の標準温度及び標準湿度に従って、湿度を調節した環境下での状態調節を行った後、弾性率を測定して得られる。より具体的には、引張速度200mm/分、初期つかみ間距離30mm、23℃の条件下で、引張を行い、変位0.025mmおよび0.125mmの値を用いて引張弾性率を測定して得てよい。
さらにポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、紫外線遮蔽剤を含むことによって、300nm以上400nm以下の紫外線透過率が5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下の紫外線バリア性を有することが好ましい。この紫外線バリア性は、紫外線バリア層において、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの総厚に対して20%の肉厚で上述の紫外線透過率を達成するものであってよい。これによって、紫外線による劣化が紫外線バリア層の表面(つまり紫外線が入射する面)付近のみにとどまりポリ塩化ビニル系樹脂シートの大部分で劣化を免れるため、当該シート全体として紫外線劣化を抑制し良好な割れ耐性を得ることができる。したがって、ポリ塩化ビニル系樹脂シート全体としての機械的特性が良好に維持され、優れた耐久性が備わる。
なお、上述のようにポリ塩化ビニル系樹脂層に紫外線遮蔽剤を含ませることで当該ポリ塩化ビニル系樹脂層自体を紫外線バリア層として機能させてもよいし、ポリ塩化ビニル系樹脂層の被覆層(後述)に紫外線遮蔽剤を含ませることで当該被覆層を紫外線バリア層として機能させてもよい。さらに、紫外線遮蔽剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂層と被覆層とのいずれか一方のみに含まれてもよいし、両方に含まれてもよい。
なお、上述のようにポリ塩化ビニル系樹脂層に紫外線遮蔽剤を含ませることで当該ポリ塩化ビニル系樹脂層自体を紫外線バリア層として機能させてもよいし、ポリ塩化ビニル系樹脂層の被覆層(後述)に紫外線遮蔽剤を含ませることで当該被覆層を紫外線バリア層として機能させてもよい。さらに、紫外線遮蔽剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂層と被覆層とのいずれか一方のみに含まれてもよいし、両方に含まれてもよい。
[3−2.層構成]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形層(後述図1から図6におけるポリ塩化ビニル系樹脂層200,200a)を少なくとも含む。ポリ塩化ビニル系樹脂シートが施工資材である場合、施工時において溶剤溶着または熱溶着によって施工面に接着することができる。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形層(後述図1から図6におけるポリ塩化ビニル系樹脂層200,200a)を少なくとも含む。ポリ塩化ビニル系樹脂シートが施工資材である場合、施工時において溶剤溶着または熱溶着によって施工面に接着することができる。
図1から図6に、便宜上、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートが施工シートの一例の防水シートである場合を挙げ、その模式的断面図を示す。以下、図面に基づいて説明するが、以下の説明は、ポリ塩化ビニル系樹脂シートが防水シート以外のシートである場合にも同様に適用される。
図1に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100は、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で構成されるポリ塩化ビニル系樹脂層200のみで構成されている。
図2に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100aは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に強化繊維(後述)を含むポリ塩化ビニル系樹脂層200aのみで構成されている。ポリ塩化ビニル系樹脂層200aは、強化繊維を含む補強層210の少なくも一方の面に本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が積層された態様で構成されている。したがって、補強層210の一方の面に本発明の本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が積層され、他方の面に本発明の本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220(図2の態様)または他の層(後述図6の態様)が積層されてよい。図2に示された態様では、補強層210の両方に本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が設けられている。この場合、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220の一方と他方とは、異なる組成のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で構成されることで、それぞれ異なる機能を付してよい。一方のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220は、たとえば熱可塑性エラストマーを他方よりも多く含ませるなどにより、施工時において、施工面に溶剤溶着または熱溶着による接着層としてより適するように機能させることができる。さらにこの場合において、他方のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220は、紫外線遮蔽剤を含ませることにより、バリア層として機能させることができる。
図2に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100aは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に強化繊維(後述)を含むポリ塩化ビニル系樹脂層200aのみで構成されている。ポリ塩化ビニル系樹脂層200aは、強化繊維を含む補強層210の少なくも一方の面に本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が積層された態様で構成されている。したがって、補強層210の一方の面に本発明の本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が積層され、他方の面に本発明の本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220(図2の態様)または他の層(後述図6の態様)が積層されてよい。図2に示された態様では、補強層210の両方に本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が設けられている。この場合、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220の一方と他方とは、異なる組成のポリ塩化ビニル系樹脂組成物で構成されることで、それぞれ異なる機能を付してよい。一方のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220は、たとえば熱可塑性エラストマーを他方よりも多く含ませるなどにより、施工時において、施工面に溶剤溶着または熱溶着による接着層としてより適するように機能させることができる。さらにこの場合において、他方のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220は、紫外線遮蔽剤を含ませることにより、バリア層として機能させることができる。
図3に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100bは、ポリ塩化ビニル系樹脂層200に、他の樹脂で構成される被覆層310が積層されている。被覆層310は、施工時における表側に位置する。図4に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100cは、ポリ塩化ビニル系樹脂層200に、被覆層310に加え、被覆層310とは反対側に、他の層として他の樹脂で構成される裏層320とが積層されている。裏層320は、施工面に接着させられるための、接着性樹脂組成物で構成された接着層であってもよいし、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物ではないポリ塩化ビニル系樹脂組成物(上述の可塑剤を含んでもよい)で構成された層であってもよいし、それらの積層であってもよい。図5に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100dは、ポリ塩化ビニル系樹脂層200aに被覆層310が積層されている。図6に示すポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100eは、ポリ塩化ビニル系樹脂層200aに、他の層として他の樹脂で構成される裏層320が積層されている。図示された態様では、補強層210の一方の面に本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220が設けられ、他方の面に裏層320が積層されている。
これらの態様において、被覆層310および裏層320は、上述の物性を損なわないように積層される。
これらの態様において、被覆層310および裏層320は、上述の物性を損なわないように積層される。
なお、図示された態様の他、ポリ塩化ビニル系樹脂層200に他の樹脂で構成される内部層が内在していてもよい。また、被覆層310、裏層320および内部層は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100におけるポリ塩化ビニル系樹脂層200、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100aにおける他方のポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層220、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100b,100c,100dにおける被覆層310は、紫外線遮蔽剤を含有することで、紫外線バリア層として機能させることもできる。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100eのように、上述のポリ塩化ビニル系樹脂層200,200aと他の層(上述の例では、被覆層310、裏層320、および内部層)との積層体として構成される場合、当該他の層が占める厚みの合計は、上記の物性(特に引張破断伸び)を損なわないようにする観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100e全体の厚みのたとえば20%以下であることが好ましい。他の層によって付加されうる特性(たとえば紫外線バリア性など)を確保しやすくする観点から、当該他の層が占める厚みの合計は、1%以上であることが好ましい。
[3−3.ポリ塩化ビニル系樹脂層]
ポリ塩化ビニル系樹脂層200,200aは、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形物を含んで構成される。
ポリ塩化ビニル系樹脂層200,200aは、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形物を含んで構成される。
[3−3−1.強化繊維]
ポリ塩化ビニル系樹脂層は、強化繊維を含んでよい。強化繊維を含むポリ塩化ビニル系樹脂層200aでは、ポリ塩化ビニル系樹脂層が強化繊維で強化されている。強化繊維を含む層である補強層210では、強化繊維にポリ塩化ビニル系樹脂組成物が含浸されていてもよいし、含浸されていなくてもよい。強化繊維を含むことによって、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの強度および寸法安定性の向上効果が得られる。特に、総厚が薄膜化されたポリ塩化ビニル系樹脂シートの強度を確保する場合に有用である。
ポリ塩化ビニル系樹脂層は、強化繊維を含んでよい。強化繊維を含むポリ塩化ビニル系樹脂層200aでは、ポリ塩化ビニル系樹脂層が強化繊維で強化されている。強化繊維を含む層である補強層210では、強化繊維にポリ塩化ビニル系樹脂組成物が含浸されていてもよいし、含浸されていなくてもよい。強化繊維を含むことによって、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの強度および寸法安定性の向上効果が得られる。特に、総厚が薄膜化されたポリ塩化ビニル系樹脂シートの強度を確保する場合に有用である。
強化繊維の形態としては特に限定されず、たとえば、トウ、クロス、チョップドファイバー、連続繊維などの繊維の方向を一方向に引き揃えた形態;連続繊維を経緯にして織物とした形態;トウの方向を一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態;繊維の方向を一方向に引き揃えた複数の繊維シートを、それぞれ繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態;および、繊維の不織布の形態などが挙げられる。
繊維は、PAN (ポリアクリロニトリル) 系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;スチール繊維などの金属繊維;ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維などの無機繊維;ならびに、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維;ケナフ、麻などの天然繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独または複数種の組み合わせで使用されてよい。
上述の繊維の中でも、伸びが良好で繰り返し荷重に対して強いことから、ポリエステルクロスが特に好ましい。
[3−3−2.厚み]
ポリ塩化ビニル系樹脂層200,200aの厚みは、低温柔軟性を確保しやすくする観点、または、当該観点とともに、良好な溶剤溶着性または熱融着性を得やすくする観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの総厚の80%以上であることが好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂層200,200aの厚みは、低温柔軟性を確保しやすくする観点、または、当該観点とともに、良好な溶剤溶着性または熱融着性を得やすくする観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの総厚の80%以上であることが好ましい。
[3−4.被覆層]
図3から図5に示したようにポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100b,100c,100dが被覆層310を有する場合において、被覆層310が紫外線遮蔽剤を含む場合、被覆層310を構成する樹脂組成物中に含ませることができる紫外線遮蔽剤の具体例としては、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含んでよい紫外線遮蔽剤として述べたものが挙げられる。被覆層310を構成する樹脂組成物中の紫外線遮蔽剤の含量は、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含んでよい量と同様である。
図3から図5に示したようにポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100b,100c,100dが被覆層310を有する場合において、被覆層310が紫外線遮蔽剤を含む場合、被覆層310を構成する樹脂組成物中に含ませることができる紫外線遮蔽剤の具体例としては、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含んでよい紫外線遮蔽剤として述べたものが挙げられる。被覆層310を構成する樹脂組成物中の紫外線遮蔽剤の含量は、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含んでよい量と同様である。
また、被覆層310には上述した無機充填材を含ませることもできる。無機充填材の具体例としては、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含んでよい無機充填材として述べたものが挙げられる。被覆層310を構成する樹脂組成物中の無機充填材の含量は、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物中に含んでよい量と同様である。
被覆層310を構成する樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含んでよい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる(メタ)アクリル酸系モノマー成分で構成される単独重合体または共重合体であってよい。あるいは、(メタ)アクリル系樹脂は、上記の(メタ)アクリル酸系モノマーの単独重合体または共重合体を主鎖として、(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマー(以下、その他のモノマーと記載する。)の重合体側鎖が導入されているグラフト共重合体であってもよい。その他のモノマーとしては、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系樹脂は、1種または複数種のブレンドで用いられてよい。その他のモノマーの重合体側鎖は、柔軟性等を考慮して、(メタ)アクリル酸系モノマーの単独重合体または共重合体(主鎖)100重量部に対してたとえば60重量部以下であってよい。
被覆層310の柔軟性をより好ましく得る観点からは、(メタ)アクリル系樹脂は、塩素を含むモノマー(たとえば塩化ビニルモノマー)成分を共重合成分として実質的に含んでいないことが好ましい。塩素を含むモノマー成分を共重合成分として実質的に含んでいないとは、塩素を含むモノマー成分を全く含まない(含量が0重量部)態様に加え、柔軟性を損なわない程度に微量(たとえば、(メタ)アクリル酸系モノマーの単独重合体または共重合体100重量部に対して0重量部超、1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下)共重合している態様も許容する。したがって、(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸系モノマー成分で構成される単独重合体および共重合体、ならびに、当該単独重合体および共重合体を主鎖として、スチレン、アクリロニトリルおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる他のモノマーの重合体がグラフト側鎖として導入されているグラフト共重合体である。この場合も、(メタ)アクリル系樹脂は、1種または複数種のブレンドで用いられてよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などが挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれの重合法で得られたものであってもよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体の態様としては限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、およびグラフト共重合を問わない。
上記のポリ塩化ビニル系樹脂は、1種または複数種のブレンドで用いられてよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体の態様としては限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、およびグラフト共重合を問わない。
上記のポリ塩化ビニル系樹脂は、1種または複数種のブレンドで用いられてよい。
とくにポリ塩化ビニル系樹脂がグラフト共重合の態様である場合、ポリ塩化ビニル系樹脂は、上述のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成分として記載したグラフト塩化ビニル系樹脂(i)と同様のものが挙げられる。
また、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物層と同様に、被覆層310には可塑剤を実質的に含まないことが好ましい。これによって、可塑剤の抜けによる機械的特性の低下を抑制することができる。
[3−5.総厚]
ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100e全体の厚みは、たとえば1.0mm以上5.0mm以下であってよい。上記下限値以上であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層による柔軟性を確保しやすくし且つ強度を確保する観点、または当該観点とともに良好な溶剤溶着性または熱融着性を得やすくする観点で好ましく、上記上限値以下であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100eの重量を最小限にして良好な施工性を得る観点から好ましい。これらの特性をより良好に得る観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100eの厚みは、好ましくは1.0mm以上3.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上2.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上1.5mm以下であってよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100e全体の厚みは、たとえば1.0mm以上5.0mm以下であってよい。上記下限値以上であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂層による柔軟性を確保しやすくし且つ強度を確保する観点、または当該観点とともに良好な溶剤溶着性または熱融着性を得やすくする観点で好ましく、上記上限値以下であることは、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100eの重量を最小限にして良好な施工性を得る観点から好ましい。これらの特性をより良好に得る観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,〜,100eの厚みは、好ましくは1.0mm以上3.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上2.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上1.5mm以下であってよい。
[3−6.製造]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートへの成形法は、当業者が容易に選択することができる。たとえばポリ塩化ビニル系樹脂防水シートは、カレンダー法または押出法などによってシート成形することで得ることができる。ポリ塩化ビニル系樹脂防水シートが複層構造である場合、それぞれの層を構成する樹脂組成物を調製した後、たとえば、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー法、押出法などによってシート成形し、他の層を構成する樹脂組成物をカレンダー法により積層して一体化してもよいし、それぞれの樹脂組成物を予め個別にカレンダー法または押出法によりシート成形し、その後、ラミネート法などの積層方法で積層一体化してもよい。また、それぞれの樹脂組成物を共押出によって多層化してもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂防水役物は、プレス成形などによって、出隅入隅などの屈曲形状または角形状に合わせて成形されてよい。屈曲形状または角形状に対応する部分は、防水シートと接合部分よりも厚肉に形成されてよい。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートへの成形法は、当業者が容易に選択することができる。たとえばポリ塩化ビニル系樹脂防水シートは、カレンダー法または押出法などによってシート成形することで得ることができる。ポリ塩化ビニル系樹脂防水シートが複層構造である場合、それぞれの層を構成する樹脂組成物を調製した後、たとえば、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー法、押出法などによってシート成形し、他の層を構成する樹脂組成物をカレンダー法により積層して一体化してもよいし、それぞれの樹脂組成物を予め個別にカレンダー法または押出法によりシート成形し、その後、ラミネート法などの積層方法で積層一体化してもよい。また、それぞれの樹脂組成物を共押出によって多層化してもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂防水役物は、プレス成形などによって、出隅入隅などの屈曲形状または角形状に合わせて成形されてよい。屈曲形状または角形状に対応する部分は、防水シートと接合部分よりも厚肉に形成されてよい。
[3−7.使用]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、長期使用(具体的には耐用年数40年程度)に付される用途で用いられる。
たとえば、屋外のように熱および/または紫外線に曝露される環境で用いられる施工資材である場合に有用である。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートが施工シートである場合、その施工においては、熱融着または溶剤溶着が行われる。具体的には、施工面の被覆において、接着剤を裏面に塗布して施工面に貼り付けてもよいし、溶剤で裏面を溶解させて溶剤溶着により施工面に貼り付けてもよいし、専用金具および電磁誘導加熱機の組み合わせまたは温風溶接機を用いて熱融着により施工面に固定してもよい。シート同士の接合においては、溶剤溶着または熱融着を行うことができる。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、長期耐候性によって、施工面に対する再施工の回数を低減することができる。したがって、特に専用金具を使用して施工する場合、長期的には、再施工の都度必要となる専用金具の打ち込み箇所の増加を抑えることができる。
また、本発明の塩化ビニル系樹脂シートが生地材である場合は、たとえば基布の表面に積層された態様で、鞄、靴、服、家具などに加工されてよい。
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートは、長期使用(具体的には耐用年数40年程度)に付される用途で用いられる。
たとえば、屋外のように熱および/または紫外線に曝露される環境で用いられる施工資材である場合に有用である。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂シートが施工シートである場合、その施工においては、熱融着または溶剤溶着が行われる。具体的には、施工面の被覆において、接着剤を裏面に塗布して施工面に貼り付けてもよいし、溶剤で裏面を溶解させて溶剤溶着により施工面に貼り付けてもよいし、専用金具および電磁誘導加熱機の組み合わせまたは温風溶接機を用いて熱融着により施工面に固定してもよい。シート同士の接合においては、溶剤溶着または熱融着を行うことができる。本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、長期耐候性によって、施工面に対する再施工の回数を低減することができる。したがって、特に専用金具を使用して施工する場合、長期的には、再施工の都度必要となる専用金具の打ち込み箇所の増加を抑えることができる。
また、本発明の塩化ビニル系樹脂シートが生地材である場合は、たとえば基布の表面に積層された態様で、鞄、靴、服、家具などに加工されてよい。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の発明に限定されるものではない。
実施例1から実施例9、および比較例1において、以下のようにポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)およびポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を製造した。ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の配合を表1および表3に示し、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の長期耐性試験結果を表2および表4に示し、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)のメタルウェザー促進時間に対する引張伸びの関係を表す両対数グラフを図7から図11に示す。
実施例1から実施例9、および比較例1において、以下のようにポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)およびポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を製造した。ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の配合を表1および表3に示し、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の長期耐性試験結果を表2および表4に示し、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)のメタルウェザー促進時間に対する引張伸びの関係を表す両対数グラフを図7から図11に示す。
[実施例1]
<ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造>
(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)として、アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(PVC−AG40、積水化学社製、40重量%のアクリル系共重合体と、60重量%の塩化ビニルモノマーとのグラフト重合体、平均重合度640)と、熱可塑性エラストマー(ii)としてエチレン−アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体(エルバロイHP441、デュポン社製)および塩素化ポリエチレン(タイリン6000、ダウ・ケミカル社製)と、(メタ)アクリル系粒子(iii)としてアクリルゴム(KM357P、ダウ・ケミカル社製)と、高分子系可塑剤(iv)として(PN−446、ADEKA社製、粘度5000mPa・s/25℃)と、紫外線遮蔽剤(v)として、紫外線吸収剤2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(Viosorb550、共同薬品社製)および顔料(カーボンブラックと酸化チタンとを含む混合物)と、無機充填剤(vi)として炭酸カルシウムと、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤 (Sonnox1010)と、スズ安定剤(TVS#KK6476、日東化成社製)と、滑剤(wax−OP、クラリアントケミカルズ社製)とを、下記の表1に示す配合量で混合して、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)を得た。
<ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造>
(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)として、アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(PVC−AG40、積水化学社製、40重量%のアクリル系共重合体と、60重量%の塩化ビニルモノマーとのグラフト重合体、平均重合度640)と、熱可塑性エラストマー(ii)としてエチレン−アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体(エルバロイHP441、デュポン社製)および塩素化ポリエチレン(タイリン6000、ダウ・ケミカル社製)と、(メタ)アクリル系粒子(iii)としてアクリルゴム(KM357P、ダウ・ケミカル社製)と、高分子系可塑剤(iv)として(PN−446、ADEKA社製、粘度5000mPa・s/25℃)と、紫外線遮蔽剤(v)として、紫外線吸収剤2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(Viosorb550、共同薬品社製)および顔料(カーボンブラックと酸化チタンとを含む混合物)と、無機充填剤(vi)として炭酸カルシウムと、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤 (Sonnox1010)と、スズ安定剤(TVS#KK6476、日東化成社製)と、滑剤(wax−OP、クラリアントケミカルズ社製)とを、下記の表1に示す配合量で混合して、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)を得た。
<ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造>
得られたポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)を、異方向2軸コニカル押出機を用いて押出成形し、図1に相当する層構成の総厚1.5mmのポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得た。
得られたポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)を、異方向2軸コニカル押出機を用いて押出成形し、図1に相当する層構成の総厚1.5mmのポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得た。
<長期耐性試験>
得られたポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)をカットし、メタルウェザー試験用サンプル(縦100mm、横100mm)として用いた。
ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を、メタルウェザー試験(紫外線強度:75mW/cm2、サイクルモード:2時間毎2分シャワー、BPT:80℃)に供し、促進時間150時間(X150)、300時間(X300)、600時間(X600)、および2400時間(X2,400)における引張破断伸び(万能試験機:島津製作所社製AGS−H)引張条件:200mm/分、初期つかみ間距離:30mm)の実測値Yex 150,Yex 300,Yex 600,Yex 2,400を得た。
得られたポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)をカットし、メタルウェザー試験用サンプル(縦100mm、横100mm)として用いた。
ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を、メタルウェザー試験(紫外線強度:75mW/cm2、サイクルモード:2時間毎2分シャワー、BPT:80℃)に供し、促進時間150時間(X150)、300時間(X300)、600時間(X600)、および2400時間(X2,400)における引張破断伸び(万能試験機:島津製作所社製AGS−H)引張条件:200mm/分、初期つかみ間距離:30mm)の実測値Yex 150,Yex 300,Yex 600,Yex 2,400を得た。
得られた実測値をlog(X)軸およびlog(Y)で表される両対数グラフにプロットし、3座標(logX150,logYex 150),(logX300,logYex 300),(logX600,logYex 600)から線形近似式を求めた。線形近似式は、y=−0.0766x+2.7517であった。求められた線形近似式上の促進時間2400時間(X2,400)に対する引張破断伸びの計算値Y2,400を導出し、実測値Yex 2,400との比Yex 2,400/Y2,400を求めた。
測定の結果などを表2に示す。表2では、Yex 2,400/Y2,400が0.7超である場合を○、0.7以下である場合を×と判定し、Yex 2,400が100%超である場合を○、100%以下である場合を×と判定した(後述の表4においても同様)。
[実施例2]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、熱可塑性エラストマー(ii)のエチレン−アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体の添加量を表1のとおりに変更し、高分子系可塑剤(iv)を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.053x+2.7579であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、熱可塑性エラストマー(ii)のエチレン−アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体の添加量を表1のとおりに変更し、高分子系可塑剤(iv)を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.053x+2.7579であった。
[実施例3]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)の代わりにエチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)としてPVC−TG樹脂(積水化学社製PVC TG−40、エチレン−酢酸40重量%、ポリ塩化ビニル60重量%、平均重合度650)を用い、(メタ)アクリル系粒子(iii)を添加しなかったことを除き、実施例2と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.2163x+3.243であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)の代わりにエチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)としてPVC−TG樹脂(積水化学社製PVC TG−40、エチレン−酢酸40重量%、ポリ塩化ビニル60重量%、平均重合度650)を用い、(メタ)アクリル系粒子(iii)を添加しなかったことを除き、実施例2と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.2163x+3.243であった。
[実施例4]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、熱可塑性エラストマー(ii)のうちエチレン−アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体の代わりにエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体を用い、高分子系可塑剤(iv)、紫外線吸収剤(v)および酸化防止剤を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0508x+2.5967であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、熱可塑性エラストマー(ii)のうちエチレン−アクリル酸n−ブチル−一酸化炭素共重合体の代わりにエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体を用い、高分子系可塑剤(iv)、紫外線吸収剤(v)および酸化防止剤を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0508x+2.5967であった。
[実施例5]
ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造において、強化繊維としてポリエステルクロス(ESW33130、倉敷紡績社製)を用いたことを除き、実施例4と同様にして、アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂組成物(a)、および図2に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.1048x+2.4814であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造において、強化繊維としてポリエステルクロス(ESW33130、倉敷紡績社製)を用いたことを除き、実施例4と同様にして、アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂組成物(a)、および図2に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.1048x+2.4814であった。
[実施例6]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムおよび熱可塑性エラストマー(ii)としての塩素化ポリエチレンの添加量を表3のとおりに変更し、高分子可塑剤(iv)、紫外線吸収剤(v)およびアクリル系粒子(iii)を使用しなかったことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0443x+2.5582であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムおよび熱可塑性エラストマー(ii)としての塩素化ポリエチレンの添加量を表3のとおりに変更し、高分子可塑剤(iv)、紫外線吸収剤(v)およびアクリル系粒子(iii)を使用しなかったことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0443x+2.5582であった。
[実施例7]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムの添加量を表3のとおりに変更したことを除き、実施例6と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0379x+2.6616であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムの添加量を表3のとおりに変更したことを除き、実施例6と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0379x+2.6616であった。
[実施例8]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムの添加量を表3のとおりに変更し、アクリル系粒子(iii)を表3に記載した量で添加したことを除き、実施例6と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0268x+2.5212であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムの添加量を表3のとおりに変更し、アクリル系粒子(iii)を表3に記載した量で添加したことを除き、実施例6と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図1に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0268x+2.5212であった。
[実施例9]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムの添加量を表3のとおりに変更し、かつ、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造において、強化繊維としてポリエステルクロス(ESW33130、倉敷紡績社製)を用いたことを除き、実施例6と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図2に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0362x+2.4549であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、無機充填剤(vi)としての炭酸カルシウムの添加量を表3のとおりに変更し、かつ、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造において、強化繊維としてポリエステルクロス(ESW33130、倉敷紡績社製)を用いたことを除き、実施例6と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図2に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.0362x+2.4549であった。
[比較例1]
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、アクリルグラフト共重合体(i-1)の代わりに(非グラフト)ストレート塩化ビニル系樹脂TS1300S(積水化学工業社製)を用い、熱可塑性エラストマー(ii)および(メタ)アクリル系粒子(iii)を添加せず、高分子系可塑剤(iv)の代わりに表3に示す量の低分子可塑剤DOP(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))を添加したことを除き、かつ、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造において、強化繊維としてポリエステルクロス(ESW33130、倉敷紡績社製)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図2に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.1393x+2.628であった。
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)の製造において、アクリルグラフト共重合体(i-1)の代わりに(非グラフト)ストレート塩化ビニル系樹脂TS1300S(積水化学工業社製)を用い、熱可塑性エラストマー(ii)および(メタ)アクリル系粒子(iii)を添加せず、高分子系可塑剤(iv)の代わりに表3に示す量の低分子可塑剤DOP(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))を添加したことを除き、かつ、ポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)の製造において、強化繊維としてポリエステルクロス(ESW33130、倉敷紡績社製)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(a)および図2に相当する層構成のポリ塩化ビニル系樹脂シート(b)を得て、長期耐性試験を行った。線形近似式は、y=−0.1393x+2.628であった。
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。
本明細書におけるポリ塩化ビニル系樹脂防水シート100,100a,100b,100c,100d,100eは請求項中の「ポリ塩化ビニル系樹脂シート」に相当し、ポリ塩化ビニル系樹脂層200,200aは「ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の層」に相当する。
本発明は、屋内および屋外を問わず使用時または保存時に自然環境(光、温度、水分などによる負荷)に晒されうるシートに利用される。たとえば、施工シートおよび役物などの施工資材(好ましくは防水シートおよび防水役物などの防水資材);合皮生地、エナメル生地、化粧シートなどの生地材に利用されてよい。
100,100a,100b,100c,100d,100e…ポリ塩化ビニル系樹脂防水シート(ポリ塩化ビニル系樹脂シート)
200,200a…ポリ塩化ビニル系樹脂層(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の層)
210…補強層
220…ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層
310…被覆層
320…裏層
200,200a…ポリ塩化ビニル系樹脂層(ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の層)
210…補強層
220…ポリ塩化ビニル系樹脂組成物(強化繊維なし)の層
310…被覆層
320…裏層
Claims (13)
- シートに成形された場合に、
メタルウェザー試験による促進時間X(時間)および前記促進時間Xの時の引張破断伸びY(%)についてのlog(X)軸およびlog(Y)軸で表される両対数グラフにおける、前記促進時間Xが1,000時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まる線形近似式(I):
log(Y)=A・log(X)+B (I)
において、
前記促進時間Xが2400時間の場合の、引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)と前記線形近似式(I)から求められる引張破断伸びの計算値Y2,400(%)との関係が、下記式(II):
Yex 2,400 > 0.7・Y2,400 (II)
を満たし、かつ、前記引張破断伸びの実測値Yex 2,400(%)が100%超である、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物。 - 前記線形近似式(I)が、前記促進時間Xが600時間以下の場合に対する引張破断伸びの実測値を示す複数の座標から定まるものである、請求項1に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記線形近似式(I)が、少なくとも、前記促進時間Xが150時間,600時間の場合それぞれに対する引張破断伸びの実測値Yex 150,Yex 600を示す座標から定まるものである、請求項2に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
- (メタ)アクリル系共重合体に由来する基幹ポリマーと前記基幹ポリマーにグラフトされた塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーに由来するグラフト鎖とを含む(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体に由来する基幹ポリマーと前記基幹ポリマーにグラフトされた塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニル混合モノマーに由来するグラフト鎖とを含むエチレン−酢酸ビニルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-2)からなる群から選ばれるグラフト塩化ビニル系樹脂(i)と、
熱可塑性エラストマー(ii)と、
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。 - 前記グラフト塩化ビニル系樹脂(i)が前記(メタ)アクリルグラフト塩化ビニル系樹脂(i-1)であり、前記熱可塑性エラストマー(ii)がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体である、請求項4に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
- 可塑剤を実質的に含まない、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
- 高分子系可塑剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含むポリ塩化ビニル系樹脂シート。
- 前記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の層が、紫外線遮蔽剤を含むことによって紫外線バリア層を構成し、前記紫外線バリア層が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂シートの総厚の20%の肉厚における300nm以上400nm以下の紫外線透過率が5%以下である、請求項8に記載のポリ塩化ビニル系樹脂シート。
- 屋外に設置して用いられる施工資材である、請求項8または9に記載のポリ塩化ビニル系樹脂シート。
- 強化繊維を含む、請求項8から10のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂シート。
- 総厚が5.0mm以下である、請求項8から11のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂シート。
- 200mm/分での引張弾性率が0.1MPa以上500MPa以下である、請求項8から12のいずれか1項に記載のポリ塩化ビニル系樹脂シート。
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- 2017-01-20 JP JP2017008813A patent/JP2017133000A/ja active Pending
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