JP4630503B2 - ゴルフクラブシャフト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフクラブシャフトに関し、詳しくは、繊維強化樹脂からなる軽量ゴルフクラブシャフトの打撃時における振動減衰性、及びフィーリングを改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、比強度、比剛性の高いカーボン繊維等の強化繊維を使用したゴルフクラブシャフトが製造され市場に定着している。このように、カーボン繊維の比強度・比剛性が高くなるにつれ、軽量化されたゴルフクラブシャフトが製造できるようになっている。
【0003】
ゴルフクラブシャフトが軽量化されることにより、スイング時のヘッドスピードが上がり、より飛距離を出せるようになる。しかし、ゴルフクラブシャフトが軽量化されるにつれ、打撃時にプレーヤーに不快な振動及び、衝撃が生じやすくなる。これは、シャフト自体が軽くなることで、シャフトの振動の周波数が高くなるため、従来のシャフトの周波数と異なり、プレーヤーが不快に感じることにより生じている。このため、近年のゴルフプレーヤーの中には、打撃時の振動、衝撃により肘、肩などに傷害を持つプレーヤーが増加している。
【0004】
従って、打撃時に発生する振動を抑制するために、これまでに種々の提案がなされている。例えば、特開平9−216958号、特開平10−36638号では、繊維強化樹脂層の樹脂中にエチレン共重合体樹脂粒子やゴム粒子を混合し、この繊維強化樹脂を使用した制振性、耐衝撃性に優れたプリプレグが提案されている。
【0005】
また、特開平5−123428号では、振動吸収性能とソフトなフィーリングを得るために、繊維強化樹脂層に振動抑制材層を挿入し、3層構造体にしたゴルフクラブシャフトが提案されている。さらに、特開平10−71222号では、シャフトのグリップ部に重りを弾性体(発泡体)で被覆した振動吸収部材を装着したゴルフクラブシャフトが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−216958号、特開平10−36638号のプリプレグは、材料自体は制振性を有するものの、いずれもゴルフクラブシャフトにした場合、プレーヤーが実感できる程の劇的な振動減衰性能は実現できておらず、さらには、十分な飛距離も得ることができないという問題がある。
【0007】
また、特開平5−123428号のゴルフクラブシャフトは、ゴルフクラブシャフトのしなり設計が困難であり、ゴルフクラブの設計の自由度が低下するため、振動減衰性を維持しながら、軽量化と飛距離の増大を図ることができない上に、成形が難しいため、ロット間のばらつきが大きく安定した振動抑制機能を得られないという問題がある。さらに、特開平10−71222号のゴルフクラブシャフトは、重りに比重の大きい金属を用いているため重量が重くなり振りにくい上に、シャフト設計時の重量設計や振動吸収部材の作製が煩雑であった。ゴルフクラブシャフトと直接接する部材を弾性体よりも固い部材で固定しているが、より軽量で振動吸収性を高めるには限界があった。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、軽量性と飛距離の増大を維持しながら、打撃時にプレーヤーに伝わる振動、衝撃をより緩和させて、今までにないソフトなフィーリングを有するゴルフクラブシャフトを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、繊維強化プリプレグの積層体からなる中空パイプ状の繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトであって、
シャフトのグリップ側端部からシャフト全長30%までの範囲の中空部に、10℃でのtanδが0.7以上である弾性材料の双極子変換材料からなる射出成形品の振動吸収部材を内蔵しており、該振動吸収部材は、筒状の本体と、該本体の内面と周方向に間隔をあけて配置した2個以上4個以下の連結部を介して本体の中空部の中央に配置する柱状の中央部と、該本体の外周に周方向に間隔をあけて突設する複数の突起部を備えた形状とし、該振動吸収部材の突起部を上記シャフトの内周面と接触させていることを特徴とするゴルフクラブシャフトを提供している。
【0010】
このように、tanδ(損失正接)を規定することにより振動減衰性能に優れる弾性材料からなる振動吸収部材を中空パイプ内部に介在させているため、軽量でありながら十分な飛距離が得られると共に、打撃時の振動や衝撃の低減を図ることができ、打球フィーリングも良いゴルフクラブシャフトを得ることができる。また、上記のような振動吸収部材をシャフトの中空パイプ内の所要位置に挿入して固定するだけで良いため、容易に振動減衰性能を向上することができる。
【0011】
上記中空パイプ内部の少なくとも一部に介在させている振動吸収部材を構成する弾性材料の10℃における損失正接(tanδ)が0.7以上としている。損失正接(tanδ)の値が大きいほど、上記振動吸収部材のエネルギー変換が大きくなるため、打球時の振動、衝撃を抑制することができ、プレーヤーに与える不快感を低減することができる。
損失正接(tanδ)を上記範囲としているのは、tanδが0.7未満であると、振動、衝撃抑制効果が十分に発現できないという問題があるためである。この観点から、tanδは1.0以上が好ましく、1.5以上がさらに好ましい。本発明においては、tanδの上限は特に規定はないが、ゴルフクラブシャフトに使用しうる材料の入手上の理由から、tanδは5.0以下、特には4.0以下、さらには2.0以下が好ましい。
【0012】
上記のように振動吸収部材の重量は1g以上10g以下であり、上記中央部の重量は振動吸収部材の全重量の10重量%以上60重量%以下であることが好ましい。振動吸収部材を上記構成とすることにより、中央部がシャフトの振動に対して共振することができるため、より振動減衰効果を高めることができる。
【0013】
上記振動吸収部材の重量は、1g以上10g以下、好ましくは3g以上8g以下であるのが良い。
上記範囲としているのは、1gより小さいと、振動、衝撃抑制効果が十分に発現できないためである。また、10gより大きいとゴルフクラブ全体重量に影響を与え、繊維強化樹脂の重量設計に自由度がなくなると共に、クラブのバランスが悪くなりやすいためである。
【0014】
上記連結部の個数は2個以上4個以下、最適個数は2個である。
これは、連結部が1つであると、中央部が固定できず、シャフトが振動した際、振動吸収部材の内壁にあたってしまい、十分に振動吸収機能を果たさないためである。また、連結部が4個より多いと中央部が固定されすぎてシャフトの振動に対して共振できなくなり振動吸収性能を果たすことができないためである。なお、連結部はシャフトの周方向において、均等に配置されていることが好ましい。
【0015】
また、連結部の厚みは0.1mm以上0.6mm以下が好ましい。これは、0.1mmより薄いと強度が不足しやすいためであり、0.6mmより厚いとシャフトの振動減衰性が低下しやすいためである。
【0016】
上記中央部の重量は、振動吸収部材の全重量の10重量%以上60重量%以下、好ましくは12重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは15重量%以上30重量%以下であるのが良い。
上記範囲としているのは、10重量%より小さいと中央部が十分に共振せず、振動、衝撃を吸収しにくくなるためである。一方、60重量%より大きいと振動吸収部材において、中央部以外の部分の重量が減少することになり他の部分の強度が低下しやすいためである。
また、上記中央部は、振動吸収部材のほぼ中央に位置することが好ましく、円柱状、四角柱状、球状、その他角柱状等、種々の形状とすることができ、複数個としても良い。
【0017】
上記振動吸収部材において、上記突起部の外周面と、ゴルフクラブシャフトの中空パイプ内周面とが直接接することにより、振動吸収部材をゴルフクラブシャフト内に配置している。突起部の個数は2個以上6個以下であるのが良く、最適個数は4個である。これは、突起部が1つであると、振動吸収部材をシャフト内に固定しにくいためである。一方、突起部が6個より多いと逆にシャフト内に固定しにくくなるためである。なお、突起部はシャフトの周方向において均等に配置されていることが好ましく、シャフト軸方向に平行に配置されるのが好ましく、軸方向に不連続に配置されても良い。
【0018】
また、振動吸収部材のシャフト軸方向において、突起部の長さと振動吸収部材の長さは同じであることが好ましいが、突起部の長さが振動吸収部材の長さの1/3以上であれば十分にシャフトの中空内部に振動吸収部材を固定することができる。さらに、シャフトとの固定の確実性と容易性の点より、突起部の幅は1mm以上3mm以下が好ましい。さらには、突起部の高さを調整することにより、ゴルフクラブシャフト内部のテーパーに沿った形状とすることができ、シャフトの中空部内での固定をより簡便にすることができる。これにより、振動吸収部材をシャフトの所定位置に固定することができる。
【0019】
振動吸収部材は、シャフト軸に垂直な断面において、シャフトの重心バランスを損なわないような形状とすることが好ましい。また、1つのゴルフクラブシャフトにつき、複数個の振動吸収部材を介在させても良い。なお、本体は円筒状であるのが好ましいが、その他中空部を有する角筒状等種々の形状とすることができる。振動吸収部材は、従来公知の種々の方法により成形することができるが、成形性の点より、射出成形、プレス成形が好ましい。
【0020】
振動吸収部材のシャフトへの固定方法としては、接着剤、両面テープ等の種々の固定方法を挙げることができる。これらの方法と、上記突起部のテーパーとを組み合わせて固定するのが好ましく、特に突起部にテーパーを付けると共に接着剤を用いる固定方法が良い。これにより、仮に、接着剤の接着力が低下し、外れたとしても突起物のテーパにより弾性体がシャフト中空部でヘッド側に動くことがない。なお、接着剤としては、加熱硬化型の接着剤が好ましく、シャフト内に振動吸収部材を挿入後、接着剤を加熱硬化して接着するのが良い。
【0021】
塗装前、部材装着前のシャフト全重量が35g以上70g以下、好ましくは35g以上60g以下、さらに好ましくは35g以上55g以下であるのが良い。
このように軽量化されたシャフトほど、振動、衝撃の吸収効果が大きくなる。
上記範囲としているのは、35g未満では、シャフトが軽すぎてしまい、方向性をコントロールすることが困難となる上に、シャフト強度も低下するためである。70gよりも大きくなると、ヘッドスピードが上がらず飛距離を伸ばすことができないためである。
【0022】
引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量の50重量%以上の割合で用いているのが好ましい。さらには、60重量%以上が良い。上限としては、100重量%でも良いが、シャフト強度を考慮すると95重量%以下が好ましい。
引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグのような高弾性材料を使用しているため、シャフトの強度を高めつつ、シャフトの軽量化を図ることができる。繊維の伸びが少ない高弾性材料を使用しても、振動吸収部材を介在させているため、不快な振動や衝撃を効果的に低減することができる。振動吸収部材の形状、重量等の配置と上記のような高弾性材料の積層量を調整することで、両者の利点をバランス良く引き出すことができ、振動減衰性をさらに高めることができる。
【0023】
上記振動吸収部材は、振動減衰性を考慮するとシャフト全長に渡って介在させるのが良いが、シャフトの重量を考慮すると全長の一部が良く、よって、前記のように、シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%までの範囲の中空部に配置している。このように、グリップ付近(手元側)に配置することにより、打球時にプレーヤーに伝わる振動を、よりいっそう抑制することができる。
【0024】
少なくともシャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲における曲げ剛性(EI)値は、4kg・m2以上10kg・m2以下、好ましくは5kg・m2以上10kg・m2以下、さらに好ましくは6kg・m2以上10kg・m2以下であるのが良い。
上記範囲としているのは、シャフトの上記範囲の部分の曲げ剛性(EI)値が4kg・m2より低いと、打球感が頼りなく、フィーリングが悪くなるためである。逆に、曲げ剛性(EI)値が10kg・m2より高いと、打球感が硬くてフィーリングが悪くなり、また、手元付近のEI値が高すぎて振動、衝撃が伝わりやすくなり、本発明の効果が少なくなるためである。
【0025】
また、上記曲げ剛性値とするには、引張弾性率が55tonf/mm2以上のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、少なくともシャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲に積層配置することが好ましい。このように高弾性率の材料を用いることにより、軽量化を図りつつ、剛性値を高めることができる。
【0026】
上記のように、弾性材料としては、双極子変換材料を用いている。
【0027】
上記双極子変換材料とは、振動が加わった場合、±の双極子が一旦離れるが再び引き付け合おうとする。その際にベースとなる高分子鎖と接触し摩擦熱として振動エネルギーが大量に熱エネルギーに変換する特徴を持つ材料である。
上記双極子変換材料とは、以下のような特徴をもつ材料である。双極子変換材料中には、±の双極子が存在し、通常は電荷が引き付け合って安定した状態で存在している。この材料に振動が加わった場合、双極子が変位し双極子同士が一旦離れるが、その後、再び互いに引きつけ合おうとする復元作用が働く。その際に、双極子がベースとなる高分子鎖や双極子と接触し、摩擦熱として振動エネルギーが大量に熱エネルギーに変換される。上記作用により振動エネルギーを吸収する材料である。
【0028】
上記双極子変換材料は、極性高分子に、双極子のモーメントを増加させる活性成分を配合したものが好ましい。
上記極性高分子としては、塩素化ポリエチレン、EVA、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム(ACR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等から選択される1種または複数種の極性高分子を好適に用いることができ、繊維強化プリプレグとの接着性の点からは、塩素化ポリエチレン、EVAが特に好ましい。
【0029】
上記活性成分としては、メルカプトベンゾチアジル基を含む化合物、ベンゾトリアゾール基を持つ化合物、ジフェニルアクリレート基を含む化合物から選択される1種または複数種の化合物を用いることができる。
【0032】
繊維強化樹脂に用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ系樹脂が好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明のゴルフクラブシャフトは、ウッド型のヘッドを取り付けてドライバーとして使用してもよいし、アイアン型のヘッドを取り付けてもよいし、パター等に使用してもよく、すべての種類のゴルフクラブに適応可能である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は、本発明の第1実施形態に関わるゴルフクラブシャフトを示し、シャフト1は、繊維強化プリプレグの積層体からなり、小径側先端にヘッド2が取り付けられ、大径端側にグリップ3が取り付けられている。シャフト1は、全長が46インチ、塗装前部材装着前のシャフト全重量が50gであり、テーパー状としている。中空パイプ状のシャフト1の内部には、シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%までの範囲に振動吸収部材10が固定されている。
【0037】
振動吸収部材10は、中空部Hを有する円筒状の本体11と、2個の連結部12を介して本体11と連結され中空部H内に配置される円柱状の中央部13と、本体11の外周に設けられ繊維強化樹脂からなる中空パイプ内周面と接する4個の突起部14とを備えている。
【0038】
具体的には、中央部13は、その軸方向中心位置で、厚みtが1mmの2つの連結部12により上下両方向から固定されており、振動吸収部材10の中心に位置している。
【0039】
4個の突起部14はシャフトの周方向において均等に配置されており、シャフト軸方向にそれぞれ平行に配置され、シャフト軸方向において突起部14の長さLと本体10の長さは同じにし、突起部14の幅wは2mmとしている。
【0040】
また、突起部14の高さhは、シャフト内部のテーパーに沿った形状となるように調整しており、突起部14の外周面14aと、シャフト1の中空パイプ内周面1aとが直接接するような構成とし、両者の接触面に接着剤を塗布することにより振動吸収部材10をシャフトの中空パイプ内に固定している。
【0041】
振動吸収部材10の重量は5.0gとし、中央部13の重量は振動吸収部材10の全重量の20重量%としている。振動吸収部材10は、10℃における損失正接(tanδ)が1.2である双極子変換材料から成形されている。双極子変換材料は、極性高分子である塩素化ポリエチレンに、活性成分としてメルカプトベンゾチアジル基を含む化合物であるN,Nジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミドを配合してなる材料を用いている。
【0042】
上記シャフト1は、図4に示す繊維強化プリプレグ41〜47を、芯金(図示せず)に内周側から巻き付けて積層している。これら繊維強化プリプレグ41〜47の強化繊維F41〜F47はいずれもカーボン繊維を用い、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量に対して、50重量%以上の割合で用いている。
【0043】
以下、繊維強化プリプレグ41〜47の積層構成を示す。
繊維強化プリプレグ41、42は、強化繊維F41、F42(引張弾性率40tonf/mm2)がシャフト軸線に対してなす配向角をそれぞれ−45°、+45゜として、互いに貼り合わせて積層している。
繊維強化プリプレグ43は、強化繊維F43(引張弾性率30tonf/mm2)がシャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
繊維強化プリプレグ44は、強化繊維F44(引張弾性率80tonf/mm2)がシャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、グリップ(BUTT)側の補強のためグリップ側に配置している。
繊維強化プリプレグ45、46は、強化繊維F45、F46(引張弾性率30tonf/mm2)がシャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
繊維強化プリプレグ47は、強化繊維F47(引張弾性率30tonf/mm2)がシャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ヘッド(TIP)側先端部の補強のためヘッド側に配置している。
【0044】
シャフト1は、シートワインディング製法により作成されており、繊維強化プリプレグ41〜47を芯金(図示せず)に、順次(繊維強化プリプレグ41→42→…47)巻き付けて積層した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂製等のテープでラッピングしてオーブン中で加熱加圧して樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、芯金を引き抜いて、シャフト1を形成している。
【0045】
このように、繊維強化プリプレグ41〜47の積層体からなるシャフト1の中空パイプ内に、弾性材料からなる振動吸収部材10を固定しているため、シャフト1の軽量性を維持しながら、十分な飛距離が得られる上に、打撃時にゴルファーの手に伝わる振動、衝撃を抑制することができ、ソフトなフィーリングを有する軽量なゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0046】
特に、振動吸収部材10の本体11の中空部内に、連結部12を介して中央部13を配置しているため、打撃時のシャフト1の振動に対して中央部13が共振することができ、優れた振動減衰効果を得ることができる。
【0047】
また、図5(A)に示すように、振動吸収部材20において、突起部24の長さを振動吸収部材の長さより少し短くしても良いし、図5(B)に示すように、振動吸収部材20’において、突起部24’をシャフト軸方向において断続的に設けても良い。さらに、図6(A)に示すように、厚みが変化する連結部32と平板状の中央部33を備えた振動吸収部材30のような構成としても良いし、図6(B)に示すように、角筒状の本体31’と角柱状の中央部33’を備えた振動吸収部材30’のような構成としても良い。その他、振動吸収部材において、本体、連結部、中央部、突起部は、各々種々の形状、個数とすることができ、多種多様な組み合わせとすることができる。また、振動吸収部材の配置位置は、シャフトの中空パイプ内において特に限定されるものではない。
【0048】
(EI(曲げ剛性)値の測定)
なお、上述したEI値は、図7に示すように、万能材料試験機60を用い、3点曲げにより、シャフト1を撓ませて測定を行うのが良い。EI値の算出は下記の式より行っている。シャフト1のTIP(ヘッド)側端1bから130mmの点から、100mmピッチで測定点を決めている。上記測定点が万能試験機60の圧子61の下にくるようにシャフト1を治具62A、62Bの上に配置している。治具62A、62Bの間隔は200mmとし、圧子61の先端の曲率は75R、治具62A、62Bの先端の曲率は2Rとしている。圧子61をテストスピード5mm/minで降下させ、シャフト1を撓ませている。負荷荷重が20kgfに達した時点で圧子61の移動が終了し、その時のシャフト1の撓み量を測定している。
EI(kg・mm2)=(負荷荷重×(支点間距離)3)/(48×撓み量)
なお、測定値をkg・m2に換算すると良い。
【0049】
以下、本発明のゴルフクラブシャフトの実施例1〜8及び比較例1〜4について詳述する。各々、下記の構成からなる繊維強化プリプレグを用い、ゴルフクラブシャフトを作製した。各実施例及び比較例で用いた振動吸収部材等の条件を下記の表1及び表2に示す。なお、シャフト長さは、いずれも46インチとした。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
上記表中、ダイポールギーとは、CCI社製、ダイポールギーフィルムDP201(双極子変換材料:ベースとなる樹脂は塩素化ポリエチレン、活性成分はN,Nジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド)を弾性材料として使用した。HYとは、ハイブラー(クラレ(株))を指し、PPとはポリプロピレンを指し、表中の混合比にて混合した。ハイブラーとPPの混合材料は、それぞれペレット状態で欲する混合比率に調整し、一旦120℃〜150℃で溶融混合し、その後、押出機で棒状にし、同時にペレット状にした。
これらの材料を射出成形し、振動吸収部材を作製した。
振動吸収部材は、上記実施形態と同様の方法(主剤と硬化剤を混合した接着剤を使用し、温度30℃に入れておき硬化させて接着すると共に、テーパー形状により固定)にて、各々シャフトの中空パイプ内の所要位置にて固定した。
【0053】
上記実施形態と同様の繊維強化プリプレグの積層構成としたが、各実施例、比較例において、高弾性率の繊維強化プリプレグの強化繊維の引張弾性率の値を表に示すように変更した。
【0054】
振動吸収部材のtanδは、粘弾性測定装置(島津製作所社製の粘弾性スペクトロメーター「DVA200改良型」)によって測定した。測定条件は、周波数を10Hzとし、治具を引っ張りとし、昇温速度を2℃/minとし、初期ひずみを2mmとし、変位振幅幅を±12.5μmとした。試験片(ダンベル)の寸法は、幅を4.0mmとし、厚みを1.66mmとし、長さを30.0mmとした。この試験片の変位部分の長さを20.0mmとした。10℃における測定値を表1及び表2に記載する。
【0055】
上記繊維強化プリプレグのカーボン繊維としては、引張弾性率が30tonf/mm2では、三菱レイヨン社製のMRシリーズ(MR40)、東レ社製T800H、M30、引張弾性率が40tonf/mm2では三菱レイヨン社製HRXシリーズ(HR40)、東レ社製M40Jを使用した。引張弾性率が80tonf/mm2では日本グラファイト社製のYS−80を使用した。なお、実施例及び比較例はいずれも引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量に対して、50重量%以上の割合で用いた。各実施例及び比較例のゴルフクラブシャフトにおいて、内層の2枚のアングル層のプリプレグの強化繊維の引張弾性率を表のように設定した。
【0056】
(実施例1)
上記表に記載のように、第1実施形態と同様の構成とした。
【0057】
(実施例2〜4)
上記表に記載のように材質、繊維強化プリプレグ等の各項目値を設定し、ゴルフクラブシャフトを作製した。振動吸収部材の形状は実施例1と同様とした。
【0058】
(参考実施例5)
図8(A)に示すように、振動吸収部材10’において連結部12’を8個に変更した。その他、上記表に記載のように各項目値を設定した。
(実施例6)
図8(B)に示すように、振動吸収部材10”において連結部12”を4個に変更した。その他、上記表に記載のように各項目値を設定した。
【0059】
(実施例7、8)
振動吸収部材において各々中央部の重量を変更した。その他、上記表に記載のように各項目値を設定した。
【0060】
(比較例1)
振動吸収部材をアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社、ハイミラン1652)を用いて作製した。その他、上記表に記載のように各項目値を設定した。
【0061】
(比較例2)
振動吸収部材を配置しなかった。その他、上記表に記載のように各項目値を設定した。
【0062】
(比較例3、4)
振動吸収部材のtanδの値を各々、0.4、0.1とした。その他、上記表に記載のように各項目値を設定した。比較例3は、シャフト重量を80gとなるように調整した。
【0063】
上記実施例1〜8、比較例1〜4の各ゴルフクラブシャフトについて、後述する方法により、振動減衰性、飛距離、フィーリングテストの測定、評価を行った。
各評価結果を上記表1及び表2の下欄に記載する。
【0064】
(振動減衰性の測定方法)
図9に示すように、シャフト1のグリップ端1aを紐50で吊り下げ、グリップ端1aから370mmの部分に加速度ピックアップ計51を取り付け、加速度ピックアップ計51を取り付けた反対側をインパクトハンマー52で加振した。
インパクトハンマー52に取り付けられたフォースピックアップ計53で計測した入力振動Fと加速度ピックアップ計51で計測した応答振動αとから振動減衰率(振動減衰性)を算出した。
【0065】
(飛距離の測定)
上記実施例及び比較例のシャフトにヘッド(ヘッド体積300cc)を取り付け、H(ハンディーキャップ)5〜20のゴルファー10名が各3球ずつ打球し、その飛距離の平均値を記載した。
【0066】
(フィーリングテスト)
上記飛距離の測定と同じゴルファー10名によりテストを行った。最もフィーリングの良いものを「◎」、フィーリングの良いものを「○」、フィーリングがあまり良くないものを「△」、フィーリングが悪いものを「×」として、上記4段階で評価し、最も多い評価を採用した。
【0067】
表1及び表2に示すように、実施例1〜8のゴルフクラブシャフトは、軽量性を維持しながら飛距離が240yard〜260yardの範囲であり、かつ振動減衰性も0.8〜1.5であり振動減衰性にも優れている上に、フィーリングテストの結果も非常に良好であった。これにより、本発明のゴルフクラブシャフトは、シャフトの軽量性と飛距離を維持しながら、優れた振動減衰性と打球フィーリングを有していることが確認できた。
【0068】
一方、比較例1は振動吸収部材のtanδが0.1と非常に小さい値であったため振動減衰性が低い上にフィーリングが非常に悪かった。比較例2は振動吸収部材を配置しなかったため比較例1よりもさらに振動減衰性に劣っていた。比較例3は、振動減衰性には優れていたが、フィーリングが悪く、シャフトが80gと重いため飛距離が出なかった。比較例4は振動吸収部材のtanδが0.1と非常に小さい値であったため振動減衰性が低い上にフィーリングが非常に悪かった。また、参考実施例5は連結部の個数が4個を越える8個としたため振動減衰性は0.8と実施例1〜4、6〜8の最低値の実施例7よりも低く、振動減衰性が劣っていた。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、tanδ(損失正接)を規定した振動減衰性能に優れる弾性材料からなる振動吸収部材を、中空パイプ内部に介在させているため、軽量性と十分な飛距離が得られると共に、打撃時の振動や衝撃の低減を図ることができ、打球フィーリングも良いゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0070】
また、振動吸収部材の本体の中空部内に、連結部を介して中央部を配置することにより、打撃時のシャフトの振動に対して中央部が共振することができ、特に優れた振動減衰効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明のゴルフクラブシャフトの概略図であり、(B)は振動吸収部材のシャフトの中空パイプ内の配置状況を示す図である。
【図2】 (A)は振動吸収部材の正面図、(B)は側面図である。
【図3】 (A)(B)は、振動吸収部材の挿入方法を示す図である。
【図4】 繊維強化プリプレグの積層構成を示す図である。
【図5】 (A)(B)は突起部の他の形態を示す図である。
【図6】 (A)(B)は振動吸収部材の他の形態を示す図である。
【図7】 シャフトのEI値の測定方法を示す図である。
【図8】 (A)(B)は実施例5、6の振動吸収部材の正面図である。
【図9】 シャフトの振動減衰性の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
1 シャフト
2 ヘッド
3 グリップ
10 振動吸収部材
11 本体
12 連結部
13 中央部
14 突起部
41〜47 繊維強化プリプレグ
F41〜F47 強化繊維
Claims (3)
- 繊維強化プリプレグの積層体からなる中空パイプ状の繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトであって、
シャフトのグリップ側端部からシャフト全長30%までの範囲の中空部に、10℃でのtanδが0.7以上である弾性材料の双極子変換材料からなる射出成形品の振動吸収部材を内蔵しており、該振動吸収部材は、筒状の本体と、該本体の内面と周方向に間隔をあけて配置した2個以上4個以下の連結部を介して本体の中空部の中央に配置する柱状の中央部と、該本体の外周に周方向に間隔をあけて突設する複数の突起部を備えた形状とし、該振動吸収部材の突起部を上記シャフトの内周面と接触させていることを特徴とするゴルフクラブシャフト。 - 前記振動吸収部材の突起部は2個以上6個以下、該振動吸収部材の重量は1g以上10g以下、上記中央部の重量は振動吸収部材の全重量の10重量%以上60重量%以下である請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
- 塗装前のシャフト全重量が35g以上70g以下であり、
引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量の50重量%以上の割合で用いて成形している請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブシャフト。
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