JP4439754B2 - ゴルフクラブシャフト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフクラブシャフトに関し、詳しくは、繊維強化樹脂からなる軽量ゴルフクラブシャフトの打撃時における振動減衰性、及び飛距離を改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴルフクラブシャフトに、比強度、比剛性の高いカーボン繊維を使用したゴルフクラブシャフトが製造され市場に定着している。このように、カーボン繊維の比強度・比剛性が高くなるにつれ、軽量化されたゴルフクラブシャフトが製造できるようになっている。
【0003】
ゴルフクラブシャフトが軽量化されることにより、スイング時のヘッドスピードが上がり、より飛距離を出せるようになる。しかし、ゴルフクラブシャフトが軽量化されるにつれ、打撃時にプレーヤーに不快な振動及び、衝撃が生じやすくなる。これは、シャフト自体が軽くなることで、シャフトの振動の周波数が高くなるため、従来のシャフトの周波数と異なり、プレーヤーが不快に感じることにより生じている。このため、近年のゴルフプレーヤーの中には、打撃時の振動、衝撃により肘、肩などに傷害を持つプレーヤーが増加している。
【0004】
従って、打撃時に発生する振動を抑制するために、これまでに種々の提案がなされている。例えば、特開平9−216958号、特開平10−36638号では、繊維強化樹脂層の樹脂中にエチレン共重合体樹脂粒子やゴム粒子を混合し、この繊維強化樹脂を使用した制振性、耐衝撃性に優れたプリプレグが提案されている。
【0005】
また、特開平5−123428号では、振動吸収性能とソフトなフィーリングを得るために、繊維強化樹脂層に振動抑制材層を挿入し、3層構造体にしたゴルフクラブシャフトが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−216958号、特開平10−36638号のプリプレグは、材料自体は制振性を有するものの、いずれもゴルフクラブシャフトにした場合、プレーヤーが実感できる程の劇的な振動減衰性能は実現できておらず、さらには、十分な飛距離も得ることができないという問題がある。
【0007】
また、特開平5−123428号のゴルフクラブシャフトは、曲げ剛性(EI)値が、飛距離性能の向上に影響を及ぼすほどに調整するのが難しく、ゴルフクラブシャフトのしなり設計が困難であり、却って、ゴルフクラブの設計の自由度が低下する。このため、振動減衰性を維持しながら、軽量化と飛距離の増大を図ることができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、飛距離をより増大させると共に、打撃時にプレーヤーに伝わる振動、衝撃をより緩和させて、今までにないソフトなフィーリングを有する軽量なゴルフクラブシャフトを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、繊維強化プリプレグの積層体からなる繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトであって、
バイアス層の繊維強化プリプレグとストレート層の繊維強化プリプレグの間に、10℃における損失正接(tanδ)が1.0以上である双極子変換材料を、1g以上27g以下の重量範囲で積層してなり、
引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量の50重量%以上の割合で用いてなり、
シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲の曲げ剛性(EI)値が4kg・m2以上10kg・m2以下であり、
塗装前のシャフト全重量が35g以上70g以下であることを特徴とするゴルフクラブシャフトを提供している。
【0010】
上記のように、本発明のゴルフクラブシャフトは、振動減衰性能に優れた双極子変換材料を重量を規定して積層し、引張弾性率が30tonf/mm以上80tonf/mm以下のカーボン繊維を強化繊維とした高弾性の繊維強化プリプレグを多用し、シャフトのグリップ側端部からシャフト全長の30%の範囲の曲げ剛性値を規定しているため、軽量でありながら、飛距離の向上と、打撃時の振動や衝撃の低減を図ることができる。振動減衰性能に優れる双極子変換材料と高弾性材料との積層量を調整し、両者の利点をバランス良く引き出すことができる。
【0011】
上記双極子変換材料とは、以下のような特徴をもつ材料である。双極子変換材料中には、±の双極子が存在し、通常は電荷が引き付け合って安定した状態で存在している。この材料に振動が加わった場合、双極子が変位し双極子同士が一旦離れるが、その後、再び互いに引きつけ合おうとする復元作用が働く。その際に、双極子がベースとなる高分子鎖や双極子と接触し、摩擦熱として振動エネルギーが大量に熱エネルギーに変換される。上記作用により振動エネルギーを吸収する材料である。
【0012】
繊維強化プリプレグの積層体内に、10℃における損失正接(tanδ)が1.0以上である双極子変換材料を積層している。損失正接(tanδ)の値が大きいほど、上記双極子変換材料のエネルギー変換が大きくなるため、打球時の振動、衝撃を抑制することができ、プレーヤーに与える不快感を低減することができる。
損失正接(tanδ)を上記範囲としているのは、tanδが1.0未満であると、振動、衝撃抑制効果が十分に発現できないという問題があるためである。この観点から、tanδは1.2以上が好ましく、1.5以上がさらに好ましい。本発明においては、tanδの上限は特に規定はないが、ゴルフクラブシャフトに使用しうる材料の入手上の理由から、tanδは5.0以下、特には4.0以下、さらには2.0以下が好ましい。
【0013】
上記双極子変換材料を、1g以上27g以下、好ましくは1g以上20g以下、さらに好ましくは1g以上15g以下の重量範囲で積層している。
上記範囲としているのは、1gより小さいと、振動、衝撃抑制効果が十分に発現できないためである。また、27gより大きいと全体重量に影響を与え、繊維強化樹脂の重量設計に自由度がなくなるためである。
【0014】
引張弾性率が30tonf/mm以上80tonf/mm以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量の50重量%以上の割合で用いている。さらには、60重量%以上が良い。上限としては、100重量%でも良いが、シャフト強度を考慮すると95重量%以下が好ましい。
引張弾性率が30tonf/mm以上80tonf/mm以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグのような高弾性材料を使用しているため、シャフトの強度を高めつつ、シャフトの軽量化を図ることができる。
【0015】
シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲の曲げ剛性(EI)値が4kg・m以上10kg・m以下、好ましくは5kg・m以上10kg・m以下、さらに好ましくは6kg・m以上10kg・m以下としている。
上記範囲としているのは、シャフトの上記範囲の部分の曲げ剛性(EI)値が4kg・mより低いと、打球感が頼りなく、フィーリングが悪くなるためである。逆に、曲げ剛性(EI)値が10kg・mより高いと、打球感が硬くてフィーリングが悪くなり、また、手元付近のEI値が高すぎて振動、衝撃が伝わりやすくなり、本発明の効果が少なくなるためである。
【0016】
また、上記曲げ剛性値とするには、引張弾性率が55tonf/mm以上のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲に積層配置することが好ましい。このように高弾性率の材料を用いることにより、軽量化を図りつつ、剛性値を高めることができる。
【0017】
塗装前のシャフト全重量が35g以上70g以下、好ましくは35g以上60g以下、さらに好ましくは35g以上55g以下としている。
上記範囲としているのは、35g未満では、シャフトが軽すぎてしまい、方向性をコントロールすることが困難となる上に、シャフト強度も低下するためである。70gよりも大きくなると、ヘッドスピードが上がらず飛距離を伸ばすことができないためである。
【0018】
上記双極子変換材料を、シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の40%までの範囲の少なくとも一部に積層配置していることが好ましい。
上記双極子変換材料は、振動減衰性を考慮するとシャフト全長に挿入するのが良いが、シャフトの重量を考慮すると全長の一部が良く、特にシャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の40%、さらには全長の30%までの範囲の少なくとも一部に積層配置していることが好ましい。このように、グリップ付近(手元側)に積層することにより、打球時にプレーヤーに伝わる振動を、よりいっそう抑制することができる。
【0019】
上記双極子変換材料を、バイアス層の繊維強化プリプレグとストレート層の繊維強化プリプレグの間に積層配置している。バイアス層とストレート層は、それぞれ違った挙動をするため、両者の層間では変位、ズレが生じており、振動が生じやすい。従って、上記ように、両者の層間に、上記双極子変換材料を積層することにより、振動減衰効果をさらに高めることができる。
【0020】
バイアス層の繊維強化プリプレグとは、強化繊維の繊維角度がシャフトの軸線方向に対して0゜でない繊維強化プリプレグであり、シャフトの軸線方向に対して±22°〜±45°の繊維角度のプリプレグが特に好ましい。バイアス層を設けることにより、シャフトの剛性を上げることができる。特に、シャフトの捻り剛性を上げることができ、飛球方向のばらつきを抑えることができる。
【0021】
ストレート層の繊維強化プリプレグとは、強化繊維の繊維角度がシャフトの軸線方向に対して0°である繊維強化プリプレグである。ストレート層を設けることにより、曲げ剛性を高くすることができ、シャフトの変形量を抑え、スイング時に、しっかり感を生じさせることができる。
【0022】
双極子変換材料を繊維強化プリプレグの積層体内に積層するにあたり、双極子変換材料は、1層または、複数層として積層してもよく、繊維強化プリプレグの積層体の最外層、中間層、及び最内層のいずれに配置してもよい。また、双極子変換材料は、シャフト断面において全周を巻回すように積層することが好ましいが、シャフトの断面周を部分的あるいは断続的に巻回するように積層してもよい。
【0023】
上記双極子変換材料の厚みは0.05mm以上0.5mm以下、好ましくは0.08mm以上0.3mm以下が良い。上記範囲としているのは、上記厚みが0.05mmより薄いと、振動減衰効果が少ないためであり、上記厚みが0.5mmより厚いと、シャフトが重くなる上に、さらにはシャフト強度が低下するためである。
【0024】
上記双極子変換材料は、極性高分子に、双極子のモーメントを増加させる活性成分を配合したものが好ましく、特にシート状として積層することが好ましい。
【0025】
上記極性高分子としては、塩素化ポリエチレン、EVA、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム(ACR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等から選択される1種または複数種の極性高分子を好適に用いることができ、繊維強化プリプレグとの接着性の点からは、塩素化ポリエチレン、EVAが特に好ましい。
【0026】
上記活性成分としては、メルカプトベンゾチアジル基を含む化合物、ベンゾトリアゾール基を持つ化合物、ジフェニルアクリレート基を含む化合物から選択される1種または複数種の化合物を用いることができる。
【0027】
双極子変換材料の表面には、繊維強化プリプレグになじみやすいタック性樹脂を塗布していることが好ましい。これにより、双極子変換材料と繊維強化プリプレグの密着性を高めることができる。タック性樹脂としては、種々の樹脂を用いることができるが、具体的な商品名としては、MRS−3D(三菱レイヨン社製)、TC27(東レ社製)等が挙げられる。
【0028】
上記引張弾性率が30tonf/mm以上80tonf/mm以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグ以外の繊維強化プリプレグの強化繊維としては、同様にカーボン繊維が好ましいが、その他、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、超高分子ポリエチレン繊維等も用いることができる。
【0029】
本発明のゴルフクラブシャフトは繊維強化樹脂製であり、繊維強化プリプレグの積層体により形成しているため、シャフトを部分的に補強することが容易であり、シャフトの剛性変化が行いやすい。また、シャフトの全長よりも短い繊維強化プリプレグ、あるいはシャフトの全長よりも短い双極子変換材料を用いるときは、上記プリプレグあるいは双極子変換材料の端部をカットし、巻き付け積層する際に自然に段差ができるようにすると、剛性分布を滑らかにすることができる。
【0030】
繊維強化樹脂に用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ系樹脂が好ましい。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に関わるゴルフクラブシャフトを示し、シャフト1は、繊維強化プリプレグの積層体からなり、小径側先端にヘッド2が取り付けられ、大径端側にグリップ3が取り付けられている。シャフト1は、全長が46インチ、塗装前のシャフト全重量が50gであり、テーパー状としている。
【0034】
上記シャフト1は、図2に示す繊維強化プリプレグ11〜22、及び双極子変換材料からなるシート10を、芯金(図示せず)に内周側から巻き付けて積層している。これら繊維強化プリプレグ11〜22の強化繊維F11〜F22はいずれもカーボン繊維を用い、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。
【0035】
双極子変換材料からなるシート10の厚みは0.2mm、重量は15.0gとし、シャフトの断面周を1回巻するように、1層で中間層に積層している。双極子変換材料からなるシート10の形状は四角形であり、シャフト1の軸線方向の長辺の長さが350mm、短辺の長さが250mmであり、シートの幅は、長辺が50.5mmであり、短片側の端部は斜めにカットされている。また、双極子変換材料からなるシート10の10℃における損失正接(tanδ)は1.2としている。
【0036】
双極子変換材料からなるシート10は、シャフト1のグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の約30%の範囲に、バイアス層の繊維強化プリプレグ15とストレート層の繊維強化プリプレグ16の間に積層配置している。また、双極子変換材料からなるシート10の表面には、繊維強化プリプレグになじみやすいタック性のある樹脂をまんべんなく塗布している。
【0037】
双極子変換材料は、極性高分子である塩素化ポリエチレンに、活性成分としてメルカプトベンゾチアジル基を含む化合物であるN,Nジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミドを配合してなる材料を用いている。
【0038】
引張弾性率が30tonf/mm以上80tonf/mm以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグは、塗装前のシャフト全重量に対して、50重量%の割合で用いている。
【0039】
シャフト1のグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲において、曲げ剛性(EI)値の最小値が4.5kg・mであり、曲げ剛性(EI)値の最大値が7kg・mである。
【0040】
以下、繊維強化プリプレグ11〜22の積層構成を示す。
プリプレグの形状、長さ、幅は図に示す通りである(図中の単位はmmとする)。
【0041】
繊維強化プリプレグ11、12は、長さを210mm、厚みを0.104mmとし、強化繊維F11、F12がシャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ヘッド側に配置している。
繊維強化プリプレグ13、15は、長さを1195mm、強化繊維F13、F15がシャフト軸線に対してなす配向角をそれぞれ−45°、+45゜としている。
繊維強化プリプレグ14は、長さを1195mm、厚みを0.033mmとし、強化繊維F14がシャフト軸線に対してなす配向角を90°としている。
繊維強化プリプレグ16は、長さを1195mm、厚みを0.105mmとし、強化繊維F16がシャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
繊維強化プリプレグ17は、長さを400mm、厚みを0.084mmとし、強化繊維F17がシャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、グリップ側に配置している。
繊維強化プリプレグ18は、長さを175mm、厚みを0.085mmとし、強化繊維F18がシャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、グリップ側に配置している。
繊維強化プリプレグ19、20は、長さを1195mm、厚みを0.105mmとし、強化繊維F19がシャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
繊維強化プリプレグ21、22は、長さを235mm、厚みを0.102mmとし、強化繊維F21、F22がシャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ヘッド側先端部の補強のための三角形の補強層として、ヘッド側に配置している。
【0042】
シャフト1は、シートワインディング製法により作成されており、双極子変換材料からなるシート10(繊維強化プリプレグ15と繊維強化プリプレグ16の間に)、及びカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグ11〜22を芯金(図示せず)に、順次(繊維強化プリプレグ11→12→…22)巻き付けて積層した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂製等のテープでラッピングしてオーブン中で加熱加圧して樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、芯金を引き抜いて、シャフト1を形成している。
【0043】
これにより、飛距離を増大させると共に、打撃時にゴルファーの手に伝わる振動、衝撃を抑制することができ、ソフトなフィーリングを有する軽量なゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0044】
上記第一実施形態では、双極子変換材料からなるシート10は1枚のみ用いられているが、同一層、あるいは複数層に、複数枚積層してもよい。シャフト断面において全周、あるいは一部を断続的に巻回すように積層してもよい。また、シャフトの軸線方向において、シャフト全長に渡って、あるいは一部に積層してもよく、シート状に限定されるものではない。
【0045】
上記第一実施形態のゴルフクラブシャフトはウッド型のヘッド2を備えているが、アイアン型のヘッドを取り付けてもよいし、パター等であってもよい。
【0046】
以下、本発明のゴルフクラブシャフトの実施例1〜4及び比較例1〜7について詳述する。各々、下記の構成からなる繊維強化プリプレグを用い、ゴルフクラブシャフトを作製した。各実施例及び比較例で用いた双極子変換材料及び繊維強化プリプレグの積層条件を下記の表1及び表2に示す。なお、シャフト長さは、いずれも46インチとした。
【0047】
【表1】
Figure 0004439754
【0048】
【表2】
Figure 0004439754
【0049】
双極子変換材料としては、CCI社製、ダイポールギーフィルムDP201(ベースとなる樹脂は塩素化ポリエチレン、活性成分はN,Nジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド)を使用した。
【0050】
双極子変換材料のtanδは、粘弾性測定装置(島津製作所社製の粘弾性スペクトロメーター「DVA200改良型」)によって測定した。測定条件は、周波数を10Hzとし、治具を引っ張りとし、昇温速度を2℃/minとし、初期ひずみを2mmとし、変位振幅幅を±12.5μmとした。試験片(ダンベル)の寸法は、幅を4.0mmとし、厚みを1.66mmとし、長さを30.0mmとした。この試験片の変位部分の長さを20.0mmとした。10℃における測定値を表1及び表2に記載する。
【0051】
双極子変換材料をシャフト内に挿入する方法としては、次のような方法で行った。
繊維強化プリプレグ11〜15を順次芯金(鉄芯)に巻回した後、まず、双極子変換材料からなるシートの表面(表裏両面)に、繊維強化プリプレグになじみやすいタック性樹脂をまんべんなく塗布し、双極子変換材料からなるシートの片面に繊維角度が0゜の繊維強化プリプレグ16を貼り付けた。次に、上記繊維強化プリプレグ16を貼り付けた双極子変換材料からなるシートの他面を、芯金に巻回した繊維角度が45゜の繊維強化プリプレグ15の外層に、巻回して積層した。
【0052】
上記繊維強化プリプレグのカーボン繊維としては、引張弾性率が30tonf/mmでは、三菱レイヨン社製のMRシリーズ(MR40)、東レ社製T800H、M30、引張弾性率が40tonf/mmでは三菱レイヨン社製HRXシリーズ(HR40)、東レ社製M40Jを使用した。引張弾性率が80tonf/mmでは日本グラファイト社製のYS−80を使用した。
【0053】
(実施例1)
上記した図2に示す第一実施形態に記載の積層構成とし、繊維強化プリプレグ11〜22、及び双極子変換材料からなるシート10(CCI社製の商品名「ダイポールギーフィルム(DP201)」)を巻き付けて積層した。
繊維強化プリプレグ11、12としてTR350C−125S(三菱レイヨン社製、引張弾性率24tonf/mm)を、繊維強化プリプレグ13、15としてHRX350C−075S(三菱レイヨン社製、引張弾性率40tonf/mm)を、繊維強化プリプレグ14として805−3(東レ社製、引張弾性率30tonf/mm)を、繊維強化プリプレグ16、19、20としてMR350C−125S(三菱レイヨン社製、引張弾性率30tonf/mm)を、繊維強化プリプレグ17としてMR350C−100S(三菱レイヨン社製、引張弾性率30tonf/mm)を、繊維強化プリプレグ18としてE8026C−10S(NGF(日本グラファイト)社製、引張弾性率80tonf/mm)を、繊維強化プリプレグ21、22としてE1026A−09N(NGF(日本グラファイト)社製、引張弾性率10tonf/mm)を用いた。
繊維強化プリプレグの長さ、繊維角度は、それぞれ、図2に示す通りとし、上記の方法によりシャフトを作製した。
【0054】
(実施例2)
実施例1の繊維強化プリプレグ13及び繊維強化プリプレグ15のカーボン繊維の引張弾性率を80tonf/mm(E8026C−10S、NGF(日本グラファイト)社製)に変更した。その他は実施例1と同一とした。
【0055】
(実施例3)
実施例1の繊維強化プリプレグ13及び繊維強化プリプレグ15のカーボン繊維の引張弾性率を46tonf/mm(HSX350C−110S、三菱レイヨン社製)に変更し、双極子変換材料からなるシートの重量を実施例1と異なり12.0gとした。その他は実施例1と同一とした。
【0056】
(実施例4)
双極子変換材料からなるシートの重量を実施例1と異なり18.0gとした。その他は実施例1と同一とした。
【0057】
(比較例1)
実施例1の双極子変換材料からなるシートを、tanδが0.1であるアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1652」)のシートに変更した。その他は実施例1と同一とした。
【0058】
(比較例2)
実施例1の繊維強化プリプレグ13及び繊維強化プリプレグ15のカーボン繊維の引張弾性率を24tonf/mm(TR350C−125S、三菱レイヨン社製)に変更した。その他は実施例1と同一とした。
【0059】
(比較例3)
双極子変換材料からなるシートの重量を実施例1と異なり0.5gとした。その他は実施例1と同一とした。
【0060】
(比較例4)
双極子変換材料からなるシートの重量を実施例1と異なり25.0gとし、シャフトの重量を80gとなるように繊維強化プリプレグを積層した。
【0061】
(比較例5)
シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の50%〜80%の位置に双極子変換材料からなるシートを積層し、シャフトの曲げ剛性(EI)値を規定範囲外とした。その他は実施例1と同一とした。
【0062】
(比較例6)
引張弾性率が30tonf/mm以上80tonf/mm以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量の20重量%となるように積層した。双極子変換材料からなるシートは実施例1と同一とした。
【0063】
(比較例7)
双極子変換材料からなるシートの厚みを0.03mmとし、重量を0.5gとし、繊維強化プリプレグを積層した。
【0064】
上記実施例1〜4、比較例1〜7の各ゴルフクラブシャフトについて、後述する方法により、振動減衰性、EI値、飛距離、フィーリングテストの測定、評価を行った。各評価結果を上記表1及び表2の下欄に記載する。
【0065】
(振動減衰性の測定方法)
図3に示すように、シャフト1のグリップ端1aを紐50で吊り下げ、グリップ端1aから370mmの部分に加速度ピックアップ計51を取り付け、加速度ピックアップ計51を取り付けた反対側をインパクトハンマー52で加振した。インパクトハンマー52に取り付けられたフォースピックアップ計53で計測した入力振動Fと加速度ピックアップ計51で計測した応答振動αとから振動減衰率(振動減衰性)を算出した。
【0066】
(EI(曲げ剛性)値の測定)
図4に示すように、万能材料試験機60を用い、3点曲げにより、シャフト1を撓ませて測定を行った。EI値の算出は下記の式より行った。シャフト1のTIP(ヘッド)側端1bから130mmの点から、100mmピッチで測定点を決めた。上記測定点が万能試験機60の圧子61の下にくるようにシャフト1を治具62A、62Bの上に配置した。治具62A、62Bの間隔は200mmとした。圧子61の先端の曲率は75R、治具62A、62Bの先端の曲率は2Rとした。圧子61をテストスピード5mm/minで降下させ、シャフト1を撓ませた。負荷荷重が20kgfに達した時点で圧子61の移動が終了し、その時のシャフト1の撓み量を測定した。
EI(kg・mm)=(負荷荷重×(支点間距離))/(48×撓み量)
なお、測定値をkg・mに換算して表1及び表2に記載した。
【0067】
(飛距離の測定)
H(ハンディーキャップ)5〜20のゴルファー10名が各3球ずつ打球し、その飛距離の平均値を記載した。
【0068】
(フィーリングテスト)
上記飛距離の測定と同じゴルファー10名によりテストを行った。最もフィーリングの良いものを「◎」、フィーリングの良いものを「○」、フィーリングがあまり良くないものを「△」、フィーリングが悪いものを「×」として、上記4段階で評価し、最も多い評価を採用した。
【0069】
表1及び表2に示すように、実施例1〜4のゴルフクラブシャフトは、振動減衰性が1.2〜1.5であり、比較例1〜7の0.2〜1.2に比べ非常に大きな値であり、振動減衰性能に優れていることが確認できた。実施例1〜4は、飛距離も240〜260yardであり、比較例1〜7の225〜250に比べ大きな値である上に、フィーリングテストの結果も非常に良好であることが確認できた。
【0070】
比較例1は、振動減衰性が悪く、打球フィーリングも悪かった。比較例2は引張弾性率が低く、シャフトのしなりが大きいため、パワーロスし、飛距離が伸びなかった。比較例3は双極子変換材料の重量が小さいため、振動減衰性が非常に悪く、打球フィーリングも悪かった。比較例4は、重量が重く振り抜きが悪いため、飛距離がでなかった。
【0071】
比較例5は振動減衰性が悪く、打球フィーリングも悪かった。比較例6は引張弾性率が低いプリプレグの重量が大きいため、飛距離が伸びなかった。比較例7は双極子変換材料の重量が小さいため、振動減衰性が非常に悪く、打球フィーリングも悪かった。
【0072】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、シャフトを双極子変換材料と、引張弾性率の高い高弾性カーボンを強化繊維に用いた繊維強化プリプレグとを積層して成形することにより、シャフトの軽量化が図れ、スイング時のヘッドスピードが上がり飛距離が向上する上に、振動減衰性にも優れるため打球フィーリングも良いゴルフクラブシャフトを設計することができる。
【0073】
このように、従来、打撃時に振動、衝撃が生じやすかった軽量ゴルフクラブシャフトにおいても、振動、衝撃を抑制することが可能となり、プレーヤーが打撃時に不快感を感じることがなくなるため、プレーヤーの肘、肩等への負担も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施形態のゴルフクラブシャフトの概略図である。
【図2】 本発明の第一実施形態のゴルフクラブシャフトに用いる繊維強化プリプレグを示す図である。
【図3】 シャフトの振動減衰性の測定方法を示す図である。
【図4】 シャフトのEI値の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
1 シャフト
2 ヘッド
3 グリップ
10 双極子変換材からなるシート
11〜22 繊維強化プリプレグ
F11〜F22 強化繊維

Claims (2)

  1. 繊維強化プリプレグの積層体からなる繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトであって、
    バイアス層の繊維強化プリプレグとストレート層の繊維強化プリプレグの間に、10℃における損失正接(tanδ)が1.0以上である双極子変換材料を、1g以上27g以下の重量範囲で積層してなり、
    引張弾性率が30tonf/mm2以上80tonf/mm2以下のカーボン繊維を強化繊維とした繊維強化プリプレグを、塗装前のシャフト全重量の50重量%以上の割合で用いてなり、
    シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の30%の範囲の曲げ剛性(EI)値が4kg・m2以上10kg・m2以下であり、
    塗装前のシャフト全重量が35g以上70g以下であることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
  2. 上記双極子変換材料を、シャフトのグリップ(BUTT)側端部からシャフト全長の40%までの範囲の少なくとも一部に積層配置してなる請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
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