JP4630467B2 - 光学装置および撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォーカスレンズやズームレンズ等の光学素子をいわゆるリニアアクチュエータによって光軸方向に駆動する光学装置およびこれを備えた撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラ用のズームレンズとしては、例えば被写体側から順に固定の凸、可動の凹、固定の凸、可動の凸の4つのレンズ群から構成されるものがある。
【0003】
また、デジタルスチルカメラ用のレンズとしては、上記ビデオで一般的な光学タイプにこだわらず、種々のものが知られている。特にデジタルスチルカメラ用のレンズでは、撮影を行わないときには沈胴動作により全長が短縮される構成が採られる場合もある。
【0004】
ここでは、上述のビデオカメラで一般的な光学タイプを有するズームレンズに関して説明する。図3(A),(B)には、一般的な4群レンズ構成のズームレンズの鏡筒構造を示している。なお、(B)は(A)におけるA−A線断面を示している。
【0005】
このズームレンズを構成する4つのレンズ群201a〜201dは、固定された前玉レンズ201a、光軸に沿って移動することで変倍動作を行うバリエーターレンズ群201b、固定されたアフォーカルレンズ201c、および光軸に沿って移動することで変倍時の焦点面維持と焦点合わせを行うフォーカシングレンズ群201dからなる。
【0006】
ガイドバー203,204a,204bは光軸205と平行に配置され、移動するレンズ群の案内および回り止めを行う。DCモーター206はバリエーターレンズ群201bを移動させる駆動源となる。
【0007】
前玉レンズ201aは前玉鏡筒202に保持され、バリエーターレンズ群201bはV移動環211に保持されている。また、アフォーカルレンズ201cは中間枠215に、フォーカシングレンズ群201dはRR移動環214に保持されている。
【0008】
前玉鏡筒202は、後部鏡筒216に位置決め固定されており、両鏡筒202,216によってガイドバー203が位置決め支持されているとともに、ガイドスクリュウ軸208が回転可能に支持されている。このガイドスクリュウ軸208は、DCモータ206の出力軸206aの回転がギア列207を介して伝達されることにより回転駆動される。
【0009】
バリエーターレンズ群201bを保持するV移動環211は、押圧ばね209とこの押圧ばね209の力でガイドスクリュウ軸208に形成されたスクリュー溝208aに係合するボール210とを有しており、DCモータ206によってガイドスクリュー軸208が回転駆動されることにより、ガイドバー203にガイドおよび回転規制されながら光軸方向に進退移動する。
【0010】
後部鏡筒216とこの後部鏡筒216に位置決めされた中間枠215にはガイドバー204a,204bが嵌合支持されている。RR移動環214は、これらガイドバー204a,204bによってガイドおよび回転規制されながら光軸方向に進退可能である。
【0011】
フォーカシングレンズ群201dを保持するRR移動環214には、ガイドバー204a,204bにスライド可能に嵌合するスリーブ部が形成されており、またラック213が光軸方向についてRR移動環214と一体的となるように組み付けられている。
【0012】
ステッピングモータ212は、その出力軸に一体形成されたリードスクリュー212aを回転駆動する。リードスクリュー212aにはRR移動環214に組み付けられたラック213が係合しており、リードスクリュー212aが回転することによって、RR移動環214がガイドバー204a,204bによりガイドされながら光軸方向に移動する。
【0013】
なお、バリエーターレンズ群の駆動源として、フォーカシングレンズ群の駆動源と同様にステッピングモータを用いてもよい。
【0014】
そして、前玉鏡筒202、中間枠215および後部鏡筒216により、レンズ等を略密閉収容するレンズ鏡筒本体が形成される。
【0015】
また、このようなステッピングモータを用いてレンズ群保持枠を移動させる場合には、フォトインタラプタ等を用いて保持枠が光軸方向の1つの基準位置に位置することを検出した後に、ステッピングモータに与える駆動パルスの数を連続的にカウントすることにより、保持枠の絶対位置を検出する。
【0016】
235はV移動環211と中間枠215との間に配置される絞り機構を駆動して光量調節を行う絞りユニットである。
【0017】
ところで、上述のようにレンズ群の移動にDCモータやステッピングモータを用いる以外に、リニアモータもしくVCMと呼ばれるリニアアクチュエータを用いる場合もある。
【0018】
図5には、図3にて説明した第4群レンズ(フォーカシングレンズ群)の駆動源としてリニアモータを用いた場合の構成を光軸方向から見て示している。また、図6は、上記リニアモータの斜視図である。なお、図3中の構成要素と同様の構成要素には図3中と同一符号を付している。
【0019】
リニアモータの場合、可動側にコイルを配置する「ムービングコイルタイプ」と、可動側にマグネットを配置する「ムービングマグネットタイプ」とがあるが、ここではムービングコイルタイプを例として説明する。
【0020】
可動側であるフォーカシングレンズ群201dを保持する保持枠214には、一体的にコイル301が接着などの方法で固定されている。一方、固定側である不図示の鏡筒本体(例えば、後部鏡筒216)には、駆動マグネット302とヨーク303とが固定されている。
【0021】
そして、これらのコイル301、マグネット302およびヨーク303によってリニアモータが構成され、コイル301に電流を流すことによって保持枠214を光軸方向に駆動する推力が発生する。
【0022】
なお、図3に示したように、駆動源が例えばステッピングモータである場合には、レンズ群を所定の基準位置に位置させた後、そこからのステッピングモータの駆動パルス数をカウントすることによって、レンズ群の光軸方向の絶対位置を把握することができるが、リニアモータの場合はそのようないわゆるエンコーダ機能を有さないため、何らかの位置検出手段が必要となる。
【0023】
位置検出手段としては、上述のようなボリュームを用いることも考えられるが、ボリュームは摩擦負荷を発生するため、より大きな推力を発生するリニアモータを使用しなければならず、モータの大型化を招く。
【0024】
そこで、従来は、これらのリニアモータをレンズ駆動源として用いる場合に、MR(磁気感知式)センサなどの非接触タイプの位置検出手段を設けるのが一般的となっている。
【0025】
MRセンサの詳細はここでは説明しないが、図5において、鏡筒本体にMRセンサ305を保持させ、可動側の保持枠214にセンサマグネット304を設けることにより保持枠214の位置検出手段が構成される。センサマグネット304は光軸方向に長く延びており、保持枠214が可動範囲のどの位置にあっても、必ずMRセンサ305と対向する。センサマグネット304は光軸方向に多極着磁されており、保持枠214とともにセンサマグネット304がMRセンサ305に対して移動する際の磁気変化に応じてMRセンサ305から出力される電気信号を検出することで、インクリメンタルエンコーダが構成される。
【0026】
このため、電源を投入した段階でリニアモータに通電し、保持枠214を光軸方向前端もしくは後端に当接させ、ここを基準位置としてMRセンサ305からの出力信号を連続的にカウントすることで、フォーカシングレンズ群201dの光軸方向絶対位置を検出することができる。
【0027】
さらに、図7には、別のリニアモータの構成例を示している。このリニアモータでは、コイル301′を保持枠214′の外周を囲むように配置し、この矩形枠状のコイルのうち互いに対向する2つの辺部分にマグネット302を対向させて推力を発生させる。
【0028】
図4には、従来の撮像装置におけるカメラ本体の電気的構成を示している。この図において、図3にて説明したレンズ鏡筒の構成要素については、図3と同符号を付す。
【0029】
221はCCD等の固体撮像素子、222はバリエーターレンズ群201bの駆動源であり、モータ206(又はステッピングモータ)、ギア列207およびガイドスクリュー軸208等を含む。
【0030】
223はフォーカシングレンズ群201dの駆動源であり、ステッピングモータ212、リードスクリュー軸212aおよびラック213等を含む。
【0031】
224はバリエーターレンズ群201bとアフォーカルレンズ201cとの間に配置された絞り装置235の駆動源である。
【0032】
225はズームエンコーダー、227はフォーカスエンコーダーである。これらのエンコーダーはそれぞれ、バリエーターレンズ群201bおよびフォーカシングレンズ群201dの光軸方向の絶対位置を検出する。なお、図3に示すようにバリエーター駆動源としてDCモータを用いる場合には、ボリューム等の絶対位置エンコーダーを用いたり、磁気式のものを用いたりする。
【0033】
また、駆動源としてステッピングモータを用いる場合には、前述したような基準位置に保持枠を配置してから、ステッピングモータに入力する動作パルス数を連続してカウントする方法を用いるのが一般的である。
【0034】
226は絞りエンコーダーであり、モータ等の絞り駆動源224の内部にホール素子を配置し、ローターとステーターの回転位置関係を検出する方式のものなどが用いられる。
【0035】
232は本カメラの制御を司るCPUである。228はカメラ信号処理回路であり、固体撮像素子221の出力に対して所定の増幅やガンマ補正などを施す。これらの所定の処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート229およびAFゲート230を通過する。即ち、露出決定およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲が全画面内のうちこのゲートで設定される。このゲートの大きさは可変であったり、複数設けられたりする場合がある。
【0036】
231はAF(オートフォーカス)のためのAF信号を処理するAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分に関する1つもしくは複数の出力を生成する。233はズームスイッチ、234はズームトラッキングメモリである。ズームトラッキングメモリ234は、変倍に際して被写体距離とバリエーターレンズ位置に応じてセットすべきフォーカシングレンズ位置の情報を記憶する。なお、ズームトラッキングメモリとしてCPU232内のメモリを使用してもよい。
【0037】
例えば、撮影者によりズームスイッチ233が操作されると、CPU232は、ズームトラッキングメモリ234の情報をもとに算出したバリエーターレンズとフォーカシングレンズの所定の位置関係が保たれるように、ズームエンコーダー225の検出結果となる現在のバリエーターレンズの光軸方向の絶対位置と算出されたバリエーターレンズのセットすべき位置、およびフォーカスエンコーダー227の検出結果となる現在のフォーカスレンズの光軸方向の絶対位置と算出されたフォーカスレンズのセットすべき位置がそれぞれ一致するように、ズーム駆動源222とフォーカスシング駆動源223を駆動制御する。
【0038】
また、オートフォーカス動作ではAF信号処理回路231の出力がピークを示すように、CPU232は、フォーカシング駆動源223を駆動制御する。
【0039】
さらに、適正露出を得るために、CPU232は、AEゲート229を通過したY信号の出力の平均値を所定値として、絞りエンコーダー226の出力がこの所定値となるように絞り駆動源224を駆動制御して、開口径をコントロールする。
【0040】
次に、ビデオカメラやデジタルスチルカメラに用いられるCCD等の固体撮像素子について説明する。民生用ビデオカメラでは、1/3インチ型、1/4インチ型と称される、対角寸法が6mmや4mm程度といったCCDが主流となってきている。この大きさの中に、例えば31万個の画素を有している。
【0041】
また、デジタルスチルカメラでは、1/2インチ型(対角8mm)程度のCCDで、200〜300万個の画素を有するものも使われている。
【0042】
このような高画素のCCDを用いたデジタルカメラによれば、よく普及している小型のプリントサイズでは、従来のフィルムカメラで撮影した写真と、条件がそろえば遜色のない画質が確保できるようになってきている。
【0043】
上記のようなビデオカメラにおいて、許容錯乱円径は12〜15μm程度、またデジタルスチルカメラでは7〜8μm程度と、従来の135フイルムフォーマットの許容錯乱円33〜35μmと比較するとはるかに小さな数字となる。
【0044】
これは画面対角寸法が、上述のように135フイルムフォーマットの43mmに比べるとはるかに小さいためである。また、この数字はCCDの画素サイズが更に小さくなると、更に小さな数字となると予想される。
【0045】
また、別の観点から考えると、同じ画角を得るための焦点距離は、135フィルムカメラとCCDを用いるカメラとで比較すると、イメージサイズが小さいことで、短くなる。
【0046】
例えば、135フイルムカメラで40mmの標準焦点距離で得られる画角は、1/4インチのCCDを用いた撮像装置では4mmとなる。このため、同じF値で撮影しているときの被写界深度は、フイルムカメラと比較すると、これらのCCDを用いた撮像装置ではきわめて深くなる。
【0047】
一方、焦点深度は、よく知られているように、片側で、許容錯乱円径×F値(絞り値)で求められるので、例えばF2のときには、135フィルムカメラの焦点深度(片側)は0.035×2=0.07mmであるのに対し、1/2インチ型のカメラでは0.007×2=0.014mmと狭くなる。
【0048】
上述のように対角寸法が同じ、例えば6mmの1/3インチ型のCCDでも、100万画素からさらに200万300万と画素数を多くして、解像感を上げる目的としたものから、一方では画素の大きさをむやみに小さくはせず、ダイナミックレンジや感度を重視したものなど、CCD撮像素子にも種々の仕様のものがある。
【0049】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、撮像素子の画素数が増え、焦点深度が狭くなると、フォーカスレンズやズームレンズをステッピングモータで動かす場合の1パルス当たりのレンズ駆動量を数ミクロンに設定しなければならない。
【0050】
このためには、ステッピングモータの1パルス当たりの回転角度を小さくするか、出力軸のネジのリードを小さくするなどの方法がある。
【0051】
しかしながら、これらの方法によると、ステッピングモータが大型化したり、モータ出力軸のネジ山が低くなって衝撃によって保持枠の位置がずれ易くなったりするなどの問題が生ずる。
【0052】
そこで、上述したリニアモータを移動レンズ群の駆動源として採用する場合が増えてきている。
【0053】
しかしながら、リニアモータで保持枠を駆動する場合において、図5に示すように、保持枠等の可動部の重心位置306とリニアモータの推力の作用点とが大きく異なっていると、保持枠およびこれに一体となったレンズ、コイル、センサマグネット等からなる可動部の重量がある程度重い場合に、保持枠に重心位置回りのモーメントが発生し、これによりガイドバーとスリーブ部との間に発生する摩擦力が変動してしまう。
【0054】
そして、この摩擦力の変動により、レンズ群を駆動する際の目標位置と現在位置との偏差の量などによって摩擦成分が可変となってしまい、安定に制御を行うことが困難となる。また、スリーブ部とガイドバーとのガタ成分の片寄せ状況が駆動方向などによって異なり、MRセンサの出力が同じでもレンズ群としての実際位置がばらつくことなどが懸念される。
【0055】
また、従来、これらの対策として、カウンターウェイトを用いて重心位置を調整する方法があるが、保持枠の重量が増加してしまうとともにモータの大型化を伴う。
【0056】
また、図7に示すように、保持枠214′の外周に設けたコイル301′の複数の位置にマグネット302を設けることにより、重心位置306と推力の合力作用点とをほぼ光軸Lの位置に一致させることもできるが、この構成だと、コイル301′のうち推力発生に寄与しない長さが長く無駄となっている。また、重心位置が、ガイドバーから離れており、安定した駆動に不利となっている。
【0057】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本願第1の発明では、光学素子を保持する保持部材に一体的に設けられたコイルと、前記コイルに対向して装置本体に固定されたマグネットと、をそれぞれ有し、前記コイルへの通電により前記保持部材を光軸方向に駆動するための推力を発生する第1のリニア推力発生部及び第2のリニア推力発生部と、前記保持部材を光軸方向にガイドするガイド部材と、を備えた光学装置であって、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の大きさが略等しく、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、光軸に対して互いに直交する方向に配置され、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、前記ガイド部材を間に挟む位置に配置され、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の合力の作用点が、前記保持部材、前記光学素子および複数のコイルを含む可動部の重心位置に一致する位置となるように配置され、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにおける推力作用点と前記光軸との距離をR1とし、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにおける推力作用点と前記ガイド部材との距離をR2としたときに、R1>R2の関係を満足することを特徴とする。
【0058】
また、本願第2の発明では、光学素子を保持する保持部材に一体的に設けられたマグネットと、前記マグネットに対向して装置本体に固定されたコイルと、をそれぞれ有し、前記コイルへの通電により前記保持部材を光軸方向に駆動するための推力を発生する第1のリニア推力発生部及び第2のリニア推力発生部と、前記保持部材を光軸方向にガイドするガイド部材と、を備えた光学装置であって、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の大きさが略等しく、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、光軸に対して互いに直交する方向に配置され、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、前記ガイド部材を間に挟む位置に配置され、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の合力の作用点が、前記保持部材、前記光学素子および複数のマグネットを含む可動部の重心位置に一致する位置となるように配置され、且つ、光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにおける推力作用点と前記光軸との距離をR1とし、前記推力作用点と前記ガイド部材との距離をR2としたときに、R1>R2の関係を満足することを特徴とする。
【0059】
これら第1および第2の発明により、コンパクトかつ軽量の構成でありながら保持部材の安定した駆動を行えるとともに、各コイルの長さを必要最小限に抑えて無駄をなくすることが可能となる。
【0060】
なお、保持部材を光軸方向にガイドするガイド部材を有する場合に、複数のリニア推力発生部を、ガイド部材の近傍に配置することによって、保持部材(つまりは光学素子)の倒れや偏心が生じにくくなり、保持部材のより安定した駆動と良好な光学性能とを得ることが可能となる。
【0061】
具体的には、例えば、複数のリニア推力発生部を、その推力作用点と光軸との距離が略等距離R1 となり、かつ推力作用点とガイド部材との距離が略等距離R2 (特に、R2 <R1 とするとよい)となる位置に配置するとともに、複数の推力発生部にて発生する推力の大きさを略等しくするのが理想的である。
【0062】
但し、このような理想的配置ができず、複数の推力発生部を、光軸およびガイド部材のうち少なくとも一方から互いに異なる距離の位置に配置した場合でも、複数のリニア推力発生部にて発生する推力の大きさを互いに異ならせるようにすれば、推力の合力の作用点を可動部の重心位置に略一致させたり又は近傍配置したりすることが可能となる。
【0063】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態であるズームレンズ鏡筒(光学装置)内におけるフォーカスレンズ保持枠の周辺構造を示している。なお、本実施形態のズームレンズ鏡筒は、フォーカスレンズ保持枠をリニアモータで駆動すること以外は図3に示したズームレンズ鏡筒と同様の構成を有しており、同様の機能を有する構成要素には図3中と同符号を付す。
【0064】
214はフォーカスレンズ群を保持する保持枠であり、この保持枠214の左上部分に設けられたスリーブ部214aは、ガイドバー204bに光軸方向に移動可能に嵌合している。なお、スリーブ部214aはガイドバー204bと最小のガタを持ってスムースに移動可能に嵌合している。
【0065】
また、保持枠214における光軸Lを挟んでスリーブ部214aとは反対側にはU溝部が形成されており、このU溝部は他のガイドバー204aに係合している。これにより、保持枠214がガイドバー204b回りで回転することが防止され、フォーカスレンズ群の光軸Lの位置が確保される。
【0066】
この保持枠214上における上端部と左側部(光軸直交面内にて互いに直交する2方向(第1の方向および第2の方向)の端部)には、接着などの方法で2つのコイル101,101′が一体的に固定されている。
【0067】
また、装置本体としての鏡筒本体(例えば、図3中の後部鏡筒216)におけるコイル101,101′に対向する位置には、駆動マグネット102,102′とヨーク103,103′とが固定されている。これらマグネット102およびヨーク103は、保持枠214の可動範囲に対応して光軸方向に延びている。
【0068】
そして、コイル101、マグネット102およびヨーク103によって1つのリニア推力発生部が構成され、コイル101′、マグネット102′およびヨーク103′によってもう1つのリニア推力発生部が構成される。これらリニア推力発生部は、コイル101,101′に電流を流すことによってそれぞれ保持枠214を光軸方向に駆動するための光軸方向推力を発生する。
【0069】
すなわち、本実施形態では、保持枠214を駆動するリニアモータとして、個々にコイルとマグネット(およびヨーク)とを備えた2つの推力発生部を有するものが用いられている。なお、2つのコイル101,101′は直列又は並列に接続されて互いに電気的に連結されており、制御系上、1つのリニアモータとして扱われる。
【0070】
また、2つの推力発生部はガイドバー204bおよびスリーブ部214aの近傍に、これらガイドバー204bおよびスリーブ部214aを間に挟むようこれらの両側に配置されている。
【0071】
さらに、本実施形態では、2つのリニア推力発生部において推力が発生する位置(推力作用点)は、磁界中に電流が流れている部位であるので、点107,108となるが、これら2つの推力作用点は、光軸Lから略等距離R1 であって、かつガイドバー204bから略等距離R2 となる位置に配置されている。
【0072】
なお、R1 ,R2 は、R1 >R2の関係を満足しており、2つの推力発生部は、光軸Lよりもガイドバー204bに近い位置に配置されている。
【0073】
そして、各リニア推力発生部を構成するコイル、マグネットおよびヨークはいずれも同一部品が用いられており、両リニア推力発生部が発生する推力の大きさは互いに略等しい。
【0074】
ここで、保持枠214とこれに固定されているフォーカスレンズ群およびコイル101,101′等を含めた可動部全体としての重心位置は、保持枠214の形状や材質にもよるが、例えば、図1中に106で示した位置となる。
【0075】
そして、2つのリニア推力発生部で発生する推力の合力の作用点は、重心位置106に一致している。
【0076】
このように、2つのリニア推力発生部にて発生される推力の合力の作用点と可動部全体の重心位置106とが一致することにより、保持枠214(もしくは可動部)には重心位置回りのモーメントがほとんど発生せず、ガイドバー204bとスリーブ部214aとの間に発生する摩擦力が変動することを防止することができる。したがって、保持枠214(つまりはフォーカスレンズ群)の光軸方向駆動および駆動制御を安定して行うことができる。
【0077】
さらに、2つのリニア推力発生部をガイドバー204bおよびスリーブ部214aに接近させることによって、移動に伴う保持枠214(フォーカスレンズ群)の倒れや偏心を発生しにくくすることができるとともに、レンズ鏡筒の光学性能を良好に維持することができる。
【0078】
また、本実施形態の保持枠214のスリーブ部214aには光軸方向に延びるセンサマグネット104が固定保持されており、鏡筒本体には、MRセンサ105がセンサマグネット104に対向するように配置されているが、本実施形態では、上述した2つのリニア推力発生部とガイドバー204bの配置を採用することによってガイドバー204bとスリーブ部214aとのガタ成分の片寄せ状況が駆動方向などによって異なることが少なく、MRセンサ105を通じて正確なフォーカスレンズ群の位置を検出することができる。
【0079】
ところで、本実施形態では、保持枠214のスリーブ部214cとガイドバー204bとのガタは最小設定されている。但し、このガタの範囲で、フォーカスレンズ群の光軸保持精度が変化し、フォーカスレンズ群の光軸偏心や倒れが起きると、いわゆる片ボケや解像力不足などの問題の発生が懸念される。
【0080】
このため、ガイドバー204bとスリーブ部214cとの間隙はグリスで埋めるなどの方法により、このガタに対する対策をとるのが望ましい。
【0081】
なお、本実施形態では、2つのリニア推力発生部を、その推力作用点が光軸Lから等距離であってガイドバーからも等距離となる位置に配置した場合について説明したが、実際の設計においては他の制約からこの理想的な配置を行えない場合もある。この場合には、できるだけ上記の理想的配置に近づけることによっても、上記効果を十分に達成することができる。
【0082】
また、本実施形態では、2つのリニア推力発生部にて発生する推力の合力の作用点が可動部の重心位置106に一致する場合について説明したが、これら2つの点は必ずしも一致しなくともよく、互いに近接させることによって、図5に示した従来のものに比べて大幅な改善が図られる。
【0083】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、リニアモータにおける2つのリニア推力発生部を構成するコイル、マグネットおよびヨークに同一部品を用い、2つのリニア推力発生部が発生する推力を略等しく設定した場合について説明したが、上述したように、他の制約から第1実施形態にて説明したような配置をとることができない場合を想定したものが本実施形態である。
【0084】
図2には、本実施形態での本発明の第1実施形態であるズームレンズ鏡筒(光学装置)内におけるフォーカスレンズ保持枠の周辺構造を示している。なお、本実施形態のズームレンズ鏡筒は、第1実施形態と基本構造が同じものであり、同様の機能を有する構成要素には第1実施形態と同符号を付す。
【0085】
図2において、リニアモータの2つのリニア推力発生部は光軸Lおよびガイドバー204bから略等距離の位置には配置されていない。ここでは、左側部の推力発生部が図1の場合よりも下方向に配置されている。
【0086】
このため、可動部の重心位置106′は、第1実施形態の場合よりも、光軸L寄りの下方向に位置する。この重心位置106′に、2つのリニア推力発生部で発生する推力の合力の作用点をできるだけ近づける又は一致させるために、本実施形態では、左側部のリニア推力発生部のマグネット102′およびヨーク103′の形状を、上端部のリニア推力発生部のマグネット102およびヨーク103の形状と異ならせて、両リニア推力発生部で発生する推力を互いに異ならせている。そしてこれにより、推力の合力の作用点の位置を調整し、重心位置106′に対して推力の合力の作用点を近接又は一致させている。
【0087】
本実施形態では、左側部のリニア推力発生部のマグネット102′およびヨーク103′の幅を、上端部のリニア推力発生部のマグネット102およびヨーク103の幅よりも小さくし、左側部のリニア推力発生部から得られる推力を、上端部のリニア推力発生部から得られる推力より小さくしている。
【0088】
ここで、左側部のコイル101′の位置が第1実施形態の場合よりも下がっている場合、上述のように可動部の重心位置106′は、図1よりやや下方向にずれ、このとき2つのリニア推力発生部の推力が同じであれば、推力の合力の作用点は191で示す位置となる。
【0089】
これに対し、上述したように左側部のリニア推力発生部から得られる推力を上端部のリニア推力発生部から得られる推力より小さくして、両推力をアンバランス化することで、推力の合力の作用点を192で示す位置まで移動させ、重心位置103′と推力の合力の作用点192とを近接又は一致させることができる。
【0090】
なお、保持枠の形状などによって重心位置が上述した位置にくるとは限らないが、例えば本実施形態のように、2つのリニア推力発生部から得られる推力を互いに異ならせることによって、トータルの推力の合力作用点を重心位置に接近又は一致させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、コイル101,101′は同一部品を用い、マグネット102,102′およびヨーク103,103′の形状(幅)を変更した場合について説明したが、その他に、コイル−マグネット間のギャップを異ならせたり、マグネット材質を異ならせたり、コイル仕様を異ならせたりするなど、様々な方法を採ることができる。
【0092】
(第3実施形態)
上述した第1および第2実施形態では、2つのリニア推力発生部を有する場合について説明したが、さらにリニア推力発生部の数を増やして、推力の作用点を増し、その合力の位置を重心位置に一致させ易く構成してもよい。
【0093】
なお、上記各実施形態では、全てムービングコイルタイプのリニアモータを用いた場合について説明したが、保持枠にマグネットを一体的に設け、鏡筒本体にコイルを固定したムービングマグネットタイプのリニアモータを用いてもよい。
【0094】
また、上記各実施形態では、フォーカスレンズ群の保持枠をリニアモータによる駆動対象とした場合について説明したが、本発明はフォーカスレンズ群の保持枠に限らず、移動するレンズ群の保持枠であれば、どの保持枠を駆動対象とする場合でも適用することができる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本願第1および第2の発明によれば、それぞれコイルとマグネットとを有して構成される複数のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の合力の作用点が、保持部材、光学素子および複数のコイルを含む可動部の重心位置に一致する位置、又は近接する位置となるので、コンパクトかつ軽量の構成でありながら保持部材の安定した駆動を行うことができるとともに、各コイルの長さを必要最小限に抑えて無駄をなくすることができる。
【0096】
なお、保持部材を光軸方向にガイドするガイド部材を有する場合に、複数のリニア推力発生部を、ガイド部材の近傍に配置すれば、保持部材(つまりは光学素子)の倒れや偏心が生じにくくなり、保持部材のより安定した駆動と良好な光学性能とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるズームレンズ鏡筒におけるフォーカスレンズ群の周辺構造を示す正面図である。
【図2】本発明の第2実施形態であるズームレンズ鏡筒におけるフォーカスレンズ群の周辺構造を示す正面図である。
【図3】従来のズームレンズ鏡筒の構成を示す断面図である。
【図4】従来のズームレンズ鏡筒の制御回路を示すブロック図である。
【図5】従来のズームレンズ鏡筒におけるフォーカスレンズ群の周辺構造を示す正面図である。
【図6】リニアモータの斜視図である。
【図7】従来のズームレンズ鏡筒におけるフォーカスレンズ群の周辺構造を示す正面図である。
【符号の説明】
101,101′,301,301′ コイル
102,102′,302 マグネット
103,103′,303 ヨーク
214 保持枠
214a スリーブ部
204b ガイドバー
104,304 センサマグネット
105,305 MRセンサ
107,108 推力作用点
106,106′,306 可動部の重心位置
Claims (6)
- 光学素子を保持する保持部材に一体的に設けられたコイルと、前記コイルに対向して装置本体に固定されたマグネットと、をそれぞれ有し、前記コイルへの通電により前記保持部材を光軸方向に駆動するための推力を発生する第1のリニア推力発生部及び第2のリニア推力発生部と、前記保持部材を光軸方向にガイドするガイド部材と、を備えた光学装置であって、
前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の大きさが略等しく、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、光軸に対して互いに直交する方向に配置され、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、前記ガイド部材を間に挟む位置に配置され、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の合力の作用点が、前記保持部材、前記光学素子および複数のコイルを含む可動部の重心位置に一致する位置となるように配置され、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにおける推力作用点と前記光軸との距離をR1とし、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにおける推力作用点と前記ガイド部材との距離をR2としたときに、
R1>R2
の関係を満足することを特徴とする光学装置。 - 光学素子を保持する保持部材に一体的に設けられたマグネットと、前記マグネットに対向して装置本体に固定されたコイルと、をそれぞれ有し、前記コイルへの通電により前記保持部材を光軸方向に駆動するための推力を発生する第1のリニア推力発生部及び第2のリニア推力発生部と、前記保持部材を光軸方向にガイドするガイド部材と、を備えた光学装置であって、
前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の大きさが略等しく、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、光軸に対して互いに直交する方向に配置され、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部は、前記ガイド部材を間に挟む位置に配置され、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の合力の作用点が、前記保持部材、前記光学素子および複数のマグネットを含む可動部の重心位置に一致する位置となるように配置され、且つ、
光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにおける推力作用点と前記光軸との距離をR1とし、前記推力作用点と前記ガイド部材との距離をR2としたときに、
R1>R2
の関係を満足することを特徴とする光学装置。 - 光軸直交面内において、前記重心位置と前記ガイド部材との距離が前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれの推力作用点と前記光軸との距離より短いことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学装置。
- 光軸直交面内において、前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれの推力作用点と前記光軸との距離が等距離となり、かつ前記推力作用点と前記ガイド部材との距離が等距離となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学装置。
- 光軸直交面内において、前記重心位置と前記ガイド部材との距離が前記第1のリニア推力発生部及び前記第2のリニア推力発生部のそれぞれにて発生する推力の合力の作用点と前記光軸との距離より短いことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
- 請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学装置を備えたことを特徴とする撮影装置。
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