JP4627876B2 - 誘電体磁器および積層型電子部品 - Google Patents

誘電体磁器および積層型電子部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体磁器および積層型電子部品に関するものであり、例えば誘電体層に印加される直流電圧が2V/μm以上であるような高電圧用の積層セラミックコンデンサ等に用いられる誘電体磁器および積層型電子部品に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化の要求が高まってきている。このような要求に応えるために、積層セラミックコンデンサ(MLC)においては、誘電体層を薄層化することにより静電容量を高めると共に、積層数を大きくする事により、小型・高容量化を図っている。
【0003】
誘電体材料には、小型・高容量化の為に、高い比誘電率が要求されることはもちろんのこと、誘電損失が小さく、温度特性が良好であり、直流電圧に対する誘電特性の依存性が小さい等の種々の特性が要求される。
【0004】
また、薄層化に伴い、積層セラミックコンデンサに印加する電界の増大による信頼性低下を抑制する為に、粒子の微小化が行われる。
【0005】
従来の誘電体材料であるチタン酸バリウム(BaTiO3、以下BTということもある)系材料では、比誘電率が粒子径に依存する事は公知であり、約1μmで比誘電率は最大値を示し、さらに粒径を小さくすると、比誘電率は単調に減少する。現在、小型・高容量で温度特性に優れた積層セラミックコンデンサ(MLC)材料は、BT系材料であり、大きな比誘電率を示すサブミクロン粒径の焼結体を使用している。
【0006】
また、温度特性が良好な誘電体磁器としては、ジルコニアなどを微量添加したコアシェル構造(中心部と周辺部において組成が異なる)と呼ばれる粒子のBT系材料が知られており、添加物による粒成長抑制効果とコアシェル構造により、温度特性のよい誘電体磁器が作製されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、BT系材料は、直流電圧印加による比誘電率の減少が大きく、小型化の為に薄層化を推し進めると、BT系材料に印加される電界が増大する為、静電容量の減少が大きく、実効的静電容量が小さくなるという問題があった。この為、BTを用いたMLCにおいては薄層化に限界があった。
【0008】
また、BTは、粒径をサブミクロンよりさらに小さくしていくと、DCバイアス依存性を改善できるが、比誘電率も減少してしまう為、小型・高容量・DCバイアス依存性を同時に満足する事はできなかった。
【0009】
DCバイアス依存性を向上することを目的として、従来、特開平9−241075号公報に開示されるような誘電体磁器が知られている。この公報では、誘電体磁器を構成する粒子の平均粒径を0.1〜0.3μmと微小化する事と、誘電体磁器を温度特性の異なる2種類以上の微粒子結晶により構成する事により、平坦な温度特性と、優れたDCバイアス特性を実現できることが記載されている。
【0010】
また、この公報によれば、1μm以下の粒子サイズでは、平坦な温度特性と優れたDCバイアス特性を実現するコアシェル構造の形成が困難であるため、1μm以下の粒子サイズで、同様な効果を得る為に、さらなる微粒子化を行い、誘電体磁器の誘電的活性を小さくすることにより、平坦な温度特性と優れたDCバイアス特性を得ている。
【0011】
しかしながら、上述した様に、比誘電率は粒子サイズとともに単調に減少する為、0.1〜0.3μmの様な粒子サイズにおいては最大でも2100程度の比誘電率しか得られず、高容量化に限界があった。
【0012】
また、原料の粒子サイズが0.3μm以下になると、焼結時に容易に固溶体を形成し粒成長してしまうため、原料粒子サイズを維持したまま緻密な焼結体を作製するには種々の条件が必要であり、作製が困難であった。
【0013】
従って、本発明は、結晶粒子を微粒子化した場合でも比誘電率が大きく、かつ比誘電率の温度特性が良好な誘電体磁器を提供し、それにより高電圧が印加されても静電容量の低下率が小さい誘電体磁器および積層型電子部品を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点に対して検討を重ねた結果、大きな比誘電率を示しかつ温度特性に優れたBT材料と、微小粒径においても大きな比誘電率を示し、比誘電率の温度特性が平坦で、かつ優れたDCバイアス特性を示すBa(Ti1-xZrx)O3(以下、BTZということもある)が、サブミクロンサイズで共存構造を構成し、かつ各々の粒子においてコアシェル構造を形成する事により、大きな比誘電率を示し、その温度特性が平坦で、かつDCバイアス特性に優れた誘電体磁器を実現できる事を見出し、本発明に至った。
【0015】
即ち、本発明の誘電体磁器は、金属元素としてBa、TiおよびZrを含み、組成式[Ba(Ti 1−X Zr )O (X=0.05〜0.3)]で表される第1結晶粒子と、金属元素としてBaおよびTiを含み、組成式BaTiO で表される第2結晶粒子をそれぞれ等モル有しており、前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子は、Mgと、Y、ErおよびYbのうち少なくとも1種とを前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子のそれぞれの外周部に含み、前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子のそれぞれの結晶粒子の中心部と外周部における組成が異なるコアシェル構造を有しているとともに前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子の平均粒径が0.3〜1.0μmであることを特徴とする。以下、第1結晶粒子をBTZ結晶粒子とし、第2結晶粒子をBT結晶粒子とする。
【0016】
一般に、BTは、逐次相転移に伴う原子の揺らぎの増大に起因して4000を越す大きな比誘電率を示すが、逐次相転移に起因した高比誘電率の為、DCバイアス等外場の印加による比誘電率の減少が大きい。
【0017】
一方、BTZは、BTに見られる逐次相転移のピークが一点に収束しており、ブロード(平坦)でかつ大きな比誘電率を示す。BTZの粒径が1μm以下になると相転移に伴う原子の揺らぎが小さくなり、比誘電率は全体的に大きな値を維持したまま、ピークの値のみ減少し、平坦な温度特性を示す。
【0018】
これは、相転移に伴う誘電的活性が低下し、原子の分極特性が常誘電体に近い誘電的基底状態にある為、比誘電率のピークが減少し、よりブロードな温度特性となるためである。これによりDCバイアスのような外場に対しての依存性が小さくなる。また、BTZ微粒子は、同じ粒径で比較した場合、BTに比べ高誘電率であり、かつDCバイアス依存性が小さい。
【0019】
即ち、本発明の誘電体磁器では、高比誘電率を示し、温度特性に優れたBT結晶粒子と、比較的高誘電率で、DCバイアス特性に優れたBTZ結晶粒子の共存構造を実現する事により、高誘電率で、温度特性が平坦で、かつDCバイアス特性に優れた誘電体材料を実現できる。
【0020】
また、BT結晶粒子、BTZ結晶粒子がコアシェル構造を呈することにより、比誘電率のピークがよりブロードになり、さらに温度特性とDCバイアス特性を向上できる。
【0021】
さらに、本発明の誘電体磁器のBTZ結晶粒子では、Bサイトの一部がZrで5〜30モル%置換されている。この範囲内であれば、BTZ結晶粒子の比誘電率のブロードなピークが室温近傍にあり、BT結晶粒子とコンポジット構造を形成した場合に、コンデンサとして使用する温度範囲において大きな容量を確保できる。
【0022】
また、本発明の誘電体磁器は、金属元素としてCaおよび/またはMnを、CaCO3、MnCO3換算でそれぞれ0.4重量%以下含有することが望ましい。これら金属元素は、焼結の際、BT、BTZ結晶の粒成長を抑制したまま磁器の高密度化を可能にし、加圧を伴わない通常焼成においても微細結晶からなる組織を有したBT、BTZ焼結体を容易に作製できる。また、これらの元素は一部粒子内に拡散し、コアシェル構造を形成する。
【0023】
本発明の積層型電子部品は、誘電体層と卑金属からなる内部電極とを交互に積層してなる積層型電子部品であって、前記誘電体層が、上記誘電体磁器からなるものである。比誘電率が大きく誘電率の温度特性も良好で、DCバイアス特性にも優れた上記本発明のBT−BTZコンポジット誘電体磁器を誘電体層に用いることにより、薄層化して積層数を増やすことなく、大容量の積層コンデンサが得られる。
【0024】
また、結晶粒径が小さいため誘電体層の薄層化が容易で、さらなる静電容量の向上、さらなる小型化が実現できる。さらに卑金属を内部電極として用いることにより、安価な積層型電子部品が得られる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体磁器は、金属元素としてBa、TiおよびZrを含み、組成式[Ba(Ti 1−X Zr )O (X=0.05〜0.3)]で表される第1結晶粒子としてのBTZ結晶粒子と、金属元素としてBaおよびTiを含み、組成式BaTiO で表される第2結晶粒子としてのBT結晶粒子とをそれぞれ等モル有しており、BTZ結晶粒子およびBT結晶粒子は、Mgと、Y、ErおよびYbのうち少なくとも1種とを、BTZ結晶粒子およびBT結晶粒子のそれぞれの外周部に含み、BTZ結晶粒子およびBT結晶粒子のそれぞれの結晶粒子の中心部と外周部における組成が異なるコアシェル構造を有しているとともにBTZ結晶粒子およびBT結晶粒子の平均粒径が0.3〜1.0μmであることを特徴とする。
【0026】
BTZ結晶粒子およびBT結晶粒子の平均粒径を0.3〜1.0μmとしたのは、平均粒径が0.3μmよりも小さい場合には、BT及びBTZともに比誘電率が小さいからである。また、両者の間で容易に固溶が起こり、共存構造の実現が困難となるからである。また平均粒径が1.0μmよりも大きい場合には、BT結晶粒子においては粒子サイズとともに比誘電率が単調に減少してしまうためであり、またBTZ結晶粒子においては、比誘電率は粒子サイズに比例して大きくなるが、1μmを越えると比誘電率の温度特性が大きく劣化するためである。BTZ結晶粒子およびBT結晶粒子の平均粒径は、比誘電率の向上と温度特性の安定性という点から0.4〜0.8μmであることが望ましい。
【0028】
本発明で、BTZ結晶粒子およびBT結晶粒子がコアシェル構造を呈する理由は以下の通りである。
【0029】
BTZ粒子は、焼結時に原子拡散による粒成長を起こしやすく、微小粒径の緻密焼結体を得にくい。また、BTとBTZの混合体の焼結体においては、BTZに比べ、BTの焼結温度が低いため、BTが両者間の固溶を促進し、固溶体を容易に形成する。粒子サイズがサブミクロンより小さい場合、粒子体積に対し、表面積が大きな割合を占め、表面エネルギーが大きいため、エネルギー的に不安定な状態になり、原子拡散による粒成長により表面積を小さくし表面エネルギーの低下により安定化する。
【0030】
この為、粒成長が起こりやすく、微小サイズの粒子からなる緻密焼結体は得にくい。特に0.3μmより小さい微小粒子サイズのBTとBTZの焼結体は、容易に固溶・粒成長を生じ、粒子間の原子の移動を抑制するものを粒子間に導入しなければ1μmを越える大きな粒子サイズからなる焼結体が形成され、サブミクロン以下の微小粒子サイズからなる緻密な焼結体を得るのは困難である。
【0031】
これに対し、微小結晶原料とともにMgとYの様な希土類元素を添加剤として導入し、さらに焼成条件を調整する事により、原料結晶粒子のサイズを反映した微小粒子焼結体を得る事ができる。これらの添加物は、粒子表面に拡散し液相を形成する事によりMn、ガラスとともに焼結を促進するとともに、粒界近傍及び粒界にあって母相であるBT及びBTZ間のBa、Ti、Zr原子の移動を抑制し、粒成長を抑制する。この結果粒子表面に添加物の拡散固溶した結晶相が形成される。
【0032】
以上の様に、BT、BTZの粒子サイズをサブミクロン、具体的には0.3μm以上と大きくし、さらに固溶を抑制する添加物を導入し、焼結条件を調整することにより、固溶し易く粒成長し易いBTZとBTからなる複合材料を作製できる。
【0033】
また、本発明の誘電体磁器では、BTZ結晶粒子のBサイトの一部がZrで5〜30モル%置換されている。この範囲内であれば、BTZ結晶粒子の比誘電率のブロードなピークが室温近傍にあり、BT結晶粒子とコンポジット構造を形成した場合に、コンデンサとして使用する温度範囲において大きな容量を確保できる。
【0034】
BサイトのZrによる置換量が5モル%に満たない場合は、BTZの誘電特性がBTと大きな差異がなく、BTZとBTのコンポジット構造を形成する有効性が小さい。一方、30モル%より大きい場合は、比誘電率のピークの温度が低温すぎる為、コンデンサとしての使用温度範囲において十分な比誘電率を得る事ができない。また、Zr量が多い場合、比誘電率の値が小さくなり、十分な比誘電率が得られないからである。BTZ結晶粒子のZrによるBサイトの置換量は、比誘電率の大きさとピーク温度及びピークのブロードさの点から、5〜20モル%であることが望ましい。
【0035】
さらに、本発明の誘電体磁器は、金属元素としてCa、Mnの少なくとも1種を、CaCO3、MnCO3換算でそれぞれ0.4重量%以下の比率で含有していることが望ましい。これら金属成分は、誘電体磁器の電気的絶縁性を高めるとともに、高温負荷寿命を大きくし、信頼性を高める。0.4重量%より多く導入すると絶縁性が低下する。
【0036】
本発明の誘電体磁器は、BT結晶粒子とBTZ結晶粒子からなるもので、Mgと、Y、Er、Ybのうちの一種はBT結晶粒子とBTZ結晶粒子内に殆どが固溶するが、一部粒界に存在する場合がある。粒界に存在する場合は主として非晶質として存在する。
【0037】
また、BT結晶粒子、BTZ結晶粒子ではBa、Ti、Zrが均質に存在するとともに、Mgと、Y、Er、Ybのうちの一種は主にBT結晶粒子、BTZ結晶粒子の外周部に存在し、結晶粒子の中心部と周辺部において組成が異なるコアシェル構造を呈している。
【0038】
さらに、添加されるCa、Mnは、BT結晶粒子やBTZ結晶粒子内に固溶したり、粒界に主として非晶質として存在する。
【0039】
本発明の誘電体磁器を製造するには、例えばゾルゲル法、蓚酸法、水熱合成法により生成された、所定の組成を有する、平均粒径が0.1〜1μmのBTZ粉末及びBT粉末を用いる。
【0040】
また、前記BTZ及びBT粉末に対し、所定量のMg、Ca、Mn、Y、Er、Yb等金属元素の酸化物あるいは炭酸塩を加えて回転ミルなどで20〜48時間湿式混合し、乾燥後、PVA等の有機バインダを所定量添加して造粒し、これを所定形状に成形し、これを所望により大気中、真空中または窒素中で脱脂した後、大気中または還元雰囲気中で焼成する。
【0041】
この時、焼成温度は、1050〜1150℃、特に1075〜1125℃で1〜10時間焼成することにより、本発明の誘電体磁器を作製することができる。
【0042】
特にコアシェル構造を呈するには、この焼成温度が重要である。焼成温度は1050〜1150℃が望ましい。これは、1050℃より低い場合、焼結が十分に進まない為、緻密な焼結体が得られない。また、1150℃より高い温度では、BTにZrを含有しない為、ZrがBTに拡散し易くなり、結果としてBTとBTZの固溶体が形成されてしまう。焼成温度を1050〜1150℃とする事で、Zrの拡散を抑制し、かつ添加元素とBT、BTZとのコアシェル構造を形成し、これにより焼結が促進され緻密なコンポジット構造を形成できる。
【0043】
以上のような誘電体磁器では、BTZ結晶粒子とBT結晶粒子からなり、これらの粒子がコアシェル構造を有し、かつ平均粒径が0.3〜1.0μmであるため、高比誘電率を示し、温度特性に優れたBT結晶粒子と、比較的高誘電率で、DCバイアス特性に優れたBTZ結晶粒子の共存構造を実現する事により、高誘電率で、温度特性が平坦で、かつDCバイアス特性に優れた誘電体材料を実現できる。
【0044】
また、BT結晶粒子、BTZ結晶粒子がコアシェル構造を呈することにより、さらに温度特性とDCバイアス特性を向上できる。
【0045】
本発明の積層セラミックコンデンサからなる積層型電子部品は、上記誘電体磁器からなる誘電体層と卑金属からなる内部電極とを交互に積層して構成されている。卑金属としては、Ni、Cu等があるが、特に安価という点からNiであることが望ましい。
【0046】
本発明の積層型電子部品の製造方法について説明する。まず、前記BT及びBTZ粉末に、所定量のMg、Ca、Mn、Y、Er、Ybの酸化物あるいは炭酸塩を加えて混合した原料粉末を用いて、引き上げ法、ドクターブレード法、リバースロールコータ法、グラビアコータ法、スクリーン印刷法、グラビア印刷等の周知の成形法により誘電体シートを作製する。
【0047】
また、この誘電体シートの厚みは、小型、大容量化という理由から1〜10μm、特には1〜5μmであることが望ましい。
【0048】
次に、この誘電体シートの表面に、例えばNiを含有する導電性ペーストを、スクリーン印刷法、グラビア印刷、オフセット印刷法等の周知の印刷方法により塗布し内部電極パターンを形成する。内部電極パターンの厚みは、コンデンサの小型、高信頼性化という点から2μm以下、特には1μm以下であることが望ましい。
【0049】
そして、導電性ペーストが塗布された誘電体シートを複数枚積層圧着し、この積層成形体を大気中250〜300℃または酸素分圧0.1〜1Paの低酸素雰囲気中500〜800℃で脱脂した後、非酸化性雰囲気で1050〜1150℃で2〜3時間焼成する。さらに、所望により、酸素分圧が0.1〜10-4Pa程度の低酸素分圧下、900〜1100℃で5〜15時間再酸化処理を施すことにより、還元された誘電体層が酸化されることにより、良好な絶縁特性を有する誘電体層となる。
【0050】
最後に、得られた積層焼結体に対し、各端面にCuペーストを塗布して焼き付け、Ni/Snメッキを施し、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成して積層セラミックコンデンサを作製できる。
【0051】
このような積層セラミックコンデンサからなる積層型電子部品では、高誘電率で、優れたDCバイアス特性を有する誘電体磁器を用いることにより、高容量化・小型化をさらに推し進めることができる。また、平均粒径の小さい誘電体磁器を用いることにより、誘電体厚みを容易に薄層化することができ、静電容量の向上、小型化が可能になると共に、Ni、Cu等の卑金属を導体として用いることにより、安価な積層セラミックコンデンサが得られる。
【0052】
【実施例】
実施例1
水熱合成法により生成された、BaTiO3(平均粒径0.2、0.4μm)粉末と、Ba(Ti1-xZrx)O3(xは表1に示す値、平均粒径0.2、0.3、0.5μm)粉末と、MgCO3、Y23、Er23、Yb23、MnCO3、CaCO3を表1に記載する量だけ添加し、Si、Li、Ba、Caからなるガラスフィラーを全量中1.2重量%添加し、IPAを溶媒として3mmφのZrO2ボールを用いて回転ミルで24時間湿式混合した。
【0053】
スラリーを排出、乾燥した後、有機バインダを約2重量%添加して造粒し、これを厚さ約1mm、直径16mmに成形した。この成形体を脱脂した後、大気中にて表1に示す温度で2時間焼成した。
【0054】
得られた焼結体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、インターセプト法により磁器の平均粒径を求めた。
【0055】
さらに、上記試料を厚さ400μmに研磨加工し、試料上下面にIn−Gaを塗布して電極を形成した。
【0056】
電気特性は、LCRメータを用いて−25℃〜85℃の温度範囲で、AC1V、測定周波数 1kHzの条件で静電容量を測定し、比誘電率を算出した。比誘電率の温度変化率TCCを、TCC={ε(T)−ε(20℃)}/ε(20℃)の式により求めた。20℃を基準温度としている。
【0057】
比誘電率のDCバイアス依存性△ε/εは、分極ー電界ヒステレシス特性測定装置を用いて、DCオフセット電圧(800V)を30秒印加後、DCオフセット電圧を印加したままで、微小電圧(100V)によるヒステレシス曲線を測定し、その傾きからDCバイアス印加時の比誘電率ε(800V)を算出した。DCバイアス依存性△ε/εは、{ε(800V)−ε(0V)}/ε(0V)の式により求めた。結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
Figure 0004627876
【0059】
この表1から、BTZを含まない試料No.1は、比誘電率は約3400と大きいが、DCバイアス依存性が大きい。一方、BTとBTZの共存構造の実現した本発明の試料では、比誘電率2000以上、特には2500以上、比誘電率の変化率も±10%以内であり、かつDCバイアス依存性も−20%以内と優れている。
【0060】
また、本発明の試料では、透過型電子顕微鏡により誘電体磁器の粒子の結晶構造、組成を分析したところ、BT、BTZ結晶粒子が存在しており、各BT、BTZ結晶粒子内において、中心部と周辺部において組成の相違が確認でき、Ba、Ti、Zrは均一に存在し、周辺部においてはMgと、Y、Er、Ybが検出されたが、中心部においては検出されず、いわゆるコアシェル構造を呈していた。一方、1300℃焼成のNo.2とNo.7においては、BTとBTZが完全固溶し、所望の構造が得られなかった。また、1000℃焼成のNo.6についても良好な焼結性が得られなかった。
【0061】
また、希土類元素が1.7重量%以上であるNo.10、No.14、No.17、No.25においては焼結性が悪く、電気的測定ができなかった。
実施例2
まず、PETフィルム上に、BaTiO3、Ba(Ti1-xZrx)O3、MgCO3、MnCO3およびY23粉末、ブチラール樹脂、およびトルエンからなるセラミックスラリーを作製し、これをドクターブレード法により塗布し、乾燥機内で60℃で15秒間乾燥後、これを剥離して厚み9μmのセラミックグリーンシートを形成し、これを10枚積層して端面セラミックグリーンシート層を形成した。そして、これらの端面セラミックグリーンシート層を、90℃で30分の条件で乾燥させた。
【0062】
この端面セラミックグリーンシート層を台板上に配置し、プレス機により圧着して台板上にはりつけた。
【0063】
一方、PETフィルム上に、上記と同一のセラミックスラリーをドクターブレード法により塗布し、60℃で15秒間乾燥後、厚み5.5μmのセラミックグリーンシートを多数作製した。
【0064】
次に、平均粒径0.2μmのNi粉末の合量45重量%に対して、エチルセルロース5.5重量%とオクチルアルコール94.5重量%からなるビヒクル55重量%を3本ロールで混練して内部電極ペーストを作製した。
【0065】
この後、得られたセラミックグリーンシートの一方主面に、スクリーン印刷装置を用いて、上記した内部電極ペーストを内部電極パターン状に印刷し、グリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成し、乾燥後、剥離した。
【0066】
この後、端面セラミックグリーンシート層の上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを300枚積層し、この後、端面セラミックグリーンシートを積層し、コンデンサ本体成形体を作製した。
【0067】
次に、コンデンサ本体成形体を金型上に載置し、積層方向からプレス機の加圧板により圧力を段階的に増加して圧着し、この後さらにコンデンサ本体成形体の上部にゴム型を配置し、静水圧成形した。
【0068】
この後、このコンデンサ本体成形体を所定のチップ形状にカットし、大気中300℃または0.1Paの酸素/窒素雰囲気中500℃に加熱し、脱バイを行った。さらに、10-7Paの酸素/窒素雰囲気中、1100℃で2時間焼成し、さらに、10-2Paの酸素/窒素雰囲気中にて1000℃で再酸化処理を行い、電子部品本体を得た。焼成後、電子部品本体の端面にCuペーストを900℃で焼き付け、さらにNi/Snメッキを施し、内部電極と接続する外部端子を形成した。
【0069】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの内部電極間に介在する誘電体層の厚みは4μmであった。また誘電体層の有効積層数は300層であった。
【0070】
試料No.26とNo.27に測定結果を示す。尚、DCバイアス依存性△ε/εは、{ε(8V)−ε(0V)}/ε(0V)の式により求め、その他の特性は上記実施例1と同様にして求めた。結果を表1に示した。この結果から、比誘電率は3000以上を示し、温度変化率、DCバイアスとも優れた特性を示した。
【0071】
【発明の効果】
本発明の誘電体磁器では、比誘電率が2000以上で、比誘電率の温度特性が±10%以内で、かつ2V/μmのDCバイアス印加による比誘電率の変化率が20%以内の特性を有し、それにより高電圧が印加されても静電容量の低下率が小さい小型・高容量の積層セラミックコンデンサを実現することが可能となる。

Claims (3)

  1. 金属元素としてBa、TiおよびZrを含み、組成式[Ba(Ti 1−X Zr )O (X=0.05〜0.3)]で表される第1結晶粒子と、金属元素としてBaおよびTiを含み、組成式BaTiO で表される第2結晶粒子をそれぞれ等モル有しており、前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子は、Mgと、Y、ErおよびYbのうち少なくとも1種とを前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子のそれぞれの外周部に含み、前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子のそれぞれの結晶粒子の中心部と外周部における組成が異なるコアシェル構造を有しているとともに前記第1結晶粒子および前記第2結晶粒子の平均粒径が0.3〜1.0μmであることを特徴とする誘電体磁器。
  2. 金属元素としてCaおよび/またはMnを、CaCO、MnCO換算で0.4重量%以下含有することを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器。
  3. 誘電体層と卑金属からなる内部電極とを交互に積層してなる積層型電子部品であって、前記誘電体層が、請求項1または2に記載の誘電体磁器からなることを特徴とする積層型電子部品。
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