JP4618582B2 - スリングシート - Google Patents

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Description

本発明は、主として高齢者、身障者、病人等の被介護者を載せて移動する際に、特に、入浴時の移動において使用されるスリングシートに関するものである。
スリングシートは、周縁を含む布帛35の全面に、縦横に(図4−a)、或いは、斜めに(図4−b)、帯状補強材33を縫合し、その帯状補強材33を介して布帛に吊り具を設けて構成されており、入浴時等の移動の際には、被介護者をスリングシートに載せ、吊り具をリフター(クレーン)に引っ掛けて吊り上げ、或いは、介護者数名が吊り具を掴んで持ち上げるなどして使用される(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2001−087324号公報 特開2001−104406号公報
従来のスリングシートは、シートベルト程ではないとしても伸度10%に伸長時の伸長力が1000(N/5cm)を超える強靱な帯状補強材33が張りめぐらされており、恰も、帯状補強材33に成るネット状構造物の隙間を布帛35で塞いだかの如き構造を成し、帯状補強材が布帛に被覆されているとしても、或いは、被介護者が浴衣を着けるとしても、帯状補強材が布帛に比して余りにも硬く、被介護者の体重が帯状補強材に集中し、時として帯状補強材が肌身に食い込むかの如き痛みを与え、擦過傷や褥瘡を誘発する。
その点、分厚い布帛35を使用すれば、帯状補強材33から受ける痛みが和らぐとしてもゴワゴワして肌触りが悪く擦過傷は回避されず、布帛35が分厚ければジメジメして肌触りが悪いだけではなく褥瘡を誘発することにもなり、入浴時には水切れが悪く、仮に可撓性に富む柔らかい布帛を使用するとしても、布帛35が分厚ければ洗濯し難く、洗濯時に使用の洗剤や消毒剤が残存し、それが皮腐障害を誘発することにもなる。
そして、帯状補強材にゴムベルトのように可撓なものを使用すれば、スリングシートに包み込まれるかの如き圧迫感を与え、又、帯状補強材と布帛との伸縮差によって、それらを縫合するミシン糸目が解れ易くなり、スリングシートの耐久性が損なわれる。
そこで本発明は、帯状補強材を使用することなく、経糸や緯糸が連続した一枚の織編布帛によって構成され、痛みや圧迫感を与えず、擦過傷や褥瘡を誘発せず、入浴時には水切れがよく、洗濯乾燥等のメンテナンス(維持管理)が容易であり、柔軟可撓で肌触りがよく、肌身に優しいスリングシートを得ることを目的とする。
即ち、本発明に係るスリングシートは、(イ) 一枚の連続した織編布帛11の周縁部分に吊り具12を設けて構成され、その織編布帛の肌身に触れる表面が公定水分率5%以下の疎水性繊維(短繊維・長繊維・モノフィラメント糸を含む)によって構成され、その織編布帛のJIS−L−1018による通気度が150cc/cm2 ・sec以上であり、スリングシートの幅方向Xにおいて織編布帛の伸度10%に伸長時のJIS−L−1018による伸長力F(単位:N/5cm)が100≦F≦600であり、(ロ) その織編布帛(11)の全面に、破断伸度が60%以上であり、伸度15%に伸長後の伸長歪み弾性回復率が90%以上であり、繊度D(単位:dtex)が300≦D≦3000のモノフィラメント弾性糸が、単位面積1cm2 (タテ・ヨコ各1cm)内に少なくとも1本介在する分布率をもって介在しており、(ハ) その織編布帛11が、表編地13と裏編地14を連結糸15によって連結して成るダブルラッシェル経編地であり、(ニ) 表編地13が単繊維繊度10dtex以下の繊維に成る多繊糸条によって編成されており、連結糸15が単繊維繊度10dtex以下の繊維に成る多繊糸条によって構成されており、破断伸度が60%以上であり、伸度15%に伸長後の伸長歪み弾性回復率が90%以上であり、繊度D(単位:dtex)が300≦D≦3000のモノフィラメント弾性糸が、裏編地14に編み込まれており、(ホ) 裏編地14が、裏経糸16の形成する鎖編目列間17・17を挿入糸18によって連結して編成され、それらの裏経糸16と挿入糸18にモノフィラメント弾性糸が適用されており、(ヘ) 表編地13が、表経糸のニードルループとシンカーループが組織する編組織部25と、表経糸のニードルループとシンカーループが組織することなく残された空白部19とによって模様状に編成され、(ト) その表編地13の編組織部25が裏編地14から隆起した凸部を形成し、その表編地13の空白部19が編組織部25に相対して窪んだ凹部を形成していることを第1の特徴とする。
ここに、伸度10%に伸長時のJIS−L−1018による伸長力Fは、JIS−L−1018に規定される試験方法において、試験片(織編布帛)の幅を5cmとし、試験片の掴み間隔を15cmとし、引張速度を5cm/minとして測定される。
本発明に係るスリングシートの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、空白部19と編組織部25が、織編布帛11の縦横各2cmとなる矩形単位面積内(4cm 2 )に共存し所要の間隔をもって織編布帛の全面に分布しており、空白部19と空白部19の間に挟まれる編組織部内25の表面積sが織編布帛11の表面積(片面)Sに占める開口面積比率ρ(単位:%)が10≦ρ≦60である点にある。
本発明に係るスリングシートの第3の特徴は、上記第2の特徴に加えて、表編地の空白部19の大きさが、その空白部19を間に挟む編組織部25と編組織部25の各周縁に直径1〜7mmの内接円が内接する大きさである点にある。
本発明に係るスリングシートの第4の特徴は、上記第3の特徴に加えて、スリングシートの長さ方向Yにおいて向き合う端縁20・20と幅方向Xにおいて向き合う側縁21・21との何れかの周縁に沿って吊り紐22が取り付けられており、その吊り紐22の端末によって吊り具12が構成されている点にある。
本発明に係るスリングシートの第5の特徴は、上記第4の特徴に加えて、吊り紐22が、帯状を成し、織編布帛の周縁(21・21)に沿って縫合されており、吊り具12が、吊り紐22の端末を折り返して形成した輪奈によって構成されている点にある。
本発明に係るスリングシートの第6の特徴は、上記第5の特徴に加えて、吊り具12は、帯状吊り紐22・22の端末に構成されており、その帯状吊り紐22・22を織編布帛11の互いに向き合う各側縁に沿って縫合することで、織編布帛11の周縁部分に設けられている点にある。
本発明に係るスリングシートの第7の特徴は、上記第5の特徴に加えて、織編布帛11には、その互いに向き合う各側縁を折り返して筒状トンネル30が形成されており、端末が吊り具12を構成している吊り紐22が、当該筒状トンネル30内に挿通されて織編布帛11の周縁部分に設けられている点にある。
本発明のスリングシート23は、帯状補強材によって補強されない一枚の連続した織編布帛11によって構成されており、体重が局部的に集中することなく織編布帛11の全面に分散し、体重に対する反力が身体の一部に集中作用することがなく、痛みを感じさせない。そして、幅方向Xにおける織編布帛の10%伸長時の伸長力を100(N/5cm)以上としたので、帯状補強材による織編布帛の補強を必要とせず、又、織編布帛が伸びて身体が包み込まれたかの如き圧迫感や窮屈感を与えない。
又、幅方向Xにおける織編布帛の10%伸長時の伸長力を600(N/5cm)以下としたので、スリングシート23が姿勢に追随して曲折変形し、織編布帛が肌身に馴染み易く、織編布帛に硬い折れ皺が発生して擦過傷を与えるようなことはない。
そして、帯状補強材による補強がなく、織編布帛の通気度が150cc/cm2 ・sec以上であり、疎水性繊維によって構成されているので、入浴時の使用においては水切れがよく、蒸れ感を与えず、褥瘡を誘発せず、洗濯時には洗剤や消毒剤が吸着せず、水洗後に残存する洗剤や消毒剤が皮腐障害を誘発することもなく、乾燥し易く、スリングシートのメンテナンスが容易になる。
本発明のスリングシートは、モノフィラメント弾性糸が、細かく均等に織編布帛11の全面に分布しているので、被介護者の姿勢に応じて変形し易く、使用や洗濯後に歪みが残ることはなく、糸条が連続した織編布帛11の原形が弾性的に保たれ、メンテナンスが容易になる。そして、モノフィラメント弾性糸の単糸繊度が300dtex以上なので織編組織構造としての布目(糸条間隙間)24も大きく、それが透水孔や通気孔として効用を発揮するので通気性が高まり、糸条間の隙間(24)に湿気が溜まり難く、又、モノフィラメント弾性糸それ自体が可撓性に富み、その単糸繊度が3000dtex以下なので肌身に馴染み易くなる。
織編布帛11を二重構造にしたものでは、入浴時に吸着する水分が表裏二層に分散し、肌身に触れる水分が半減することになるが、特に、表裏13・14を連結糸15によって連結し、表裏間に連結糸だけで構成される空隙層を形成したものでは、その表編地13に含まれる水分が肌身によって押し出され、それが連結糸15を伝って裏編地14へと移行するので、スリングシートの水切れがよくなる。
特に、表編地13を繊度10dtex以下の繊維によって構成し、裏編地14を繊度Dが300≦D≦3000(dtex)のモノフィラメント弾性糸によって構成し、それら表編地13と裏編地14を結ぶ連結糸15を繊度10dtex以下の繊維によって構成したものでは、水分が連結糸15を介して裏編地14へと毛細管現象によって移行し易く、その移行して水分を保持することになる裏編地14が保水能力のない繊度Dが300≦D≦3000(dtex)のモノフィラメント弾性糸に成るため、その移行した水分が裏編地14から垂れ落ち易く、スリングシートの水切れが更によくなる。その表編地13や連結糸15の繊維に比して著しく太いモノフィラメント弾性糸は、肌身に触れない裏編地14に使用されているので、スリングシートの肌触りを阻害せず、肌身に触れる表編地13が繊度10dtex以下の繊維に成り、而も、表編地13が連結糸15に弾性的に支えられているので、ソフトタッチで肌触りのよいスリングシートが得られる。
更に、表編地13に空白部19が細かく分布しており、その空白部19の全面に占める面積比率ρ(%)を10≦ρ≦60としたものでは、その空白部19の容積分だけ表編地13の保水容量が少なくなり、表編地13に水分が溜まり難く、蒸れ感を与えず、爽快感のあるスリングシートが得られる。
その表編地13の空白部19の大きさを直径1〜7mmの内接円が内接する大きさにしたものでは、編組織部の凸部25が肌身を押圧して痛く感じられるようなことがなく、スリングシートの使用による褥瘡その他の皮腐障害が回避される。
裏経糸16の形成する鎖編目列間17・17を挿入糸18で連結して構成される裏編地14において、挿入糸18は、裏経糸16の形成する鎖編目列17のニードルループ26とシンカーループ27が係合する連鎖箇所28でコース方向Cに折り返されるが、本発明のスリングシートのように、繊度300dtex以上のモノフィラメント弾性糸を裏経糸16に使用したものでは、その連鎖箇所28に連結糸15が絡み付いていることもあって、その連鎖箇所が硬く太い結び目のようになる。このため、その連鎖箇所28で折り返されてコース方向Cに平行に続く折返前後の挿入糸18と挿入糸18の間に、その連鎖箇所の結び目の大きさに応じた大きい隙間24が出来、又、挿入糸18が嵩張らないモノフィラメント弾性糸なので、この隙間が挿入糸18が膨らんで塞ぐことがなく隙間24の状態が維持されるので、裏編地14は、メッシュ(網)状になり、表編地13が空白部19を有することと相俟って、スリングシートの透水・通気性が高まり、水切れがよくなる。
本発明のスリングシートの周縁には吊り紐22が取り付けられるが、スリングシートの周縁は肌身を直接押圧することない部分であり、その吊り紐22が肌身を押圧して痛みを感じさせることはない。
吊り具12は、その吊り紐22の端末によって構成され、使用時にリフター29から吊り具12に作用する外力は、その吊り具12から吊り紐22に伝わり、織編布帛全体11に分散するので、そのリフターからの外力によって織編布帛11が破れることはない。
吊り紐22は、織編布帛11の周縁20を折り返して筒状トンネル30を形成し、そのトンネル内に挿通して織編布帛に装着することが出来る(図3−a)。帯状を成す吊り紐22では、それを織編布帛の周縁21に縫合することも出来る(図3−b)。
吊り紐22を取り付けない周縁21は、折り返して二重に縫合した折返縁32とし、或いは、解れ止めテープ31によって縁取ることも出来る。このように周縁に設けられる折返縁32や解れ止めテープ31は、吊り紐22とは異なり、肌身に強く直接触れることがなく、本発明の効果を損なわない。
表編地13は、図1と図2に図示するように、編組織部25が、空白部19を囲んで縁取り、表編地13の縦横に連続し、空白部19が編組織部25に仕切られて、網目模様状を成すように編成することが出来る。
表編地13は、又、空白部19と編組織部25が平行に連続し、編組織部25が裏編地14から隆起した凸畝を形成し、空白部19か編組織部25と編組織部25に挟まれた凹溝を形成したストライプ模様状を成すように編成することも出来る。
表編地13は、更に、空白部19を海とし、編組織部25が裏編地14から隆起して空白部19の海に囲まれた島を形成した水玉模様状や市松模様状を成すように編成することも出来る。
織編布帛の柔軟・可撓性を高めるためには、織編布帛の10%に伸長時の伸長力Fを100≦F≦300(N/5cm)にし、又、織編布帛に使用するモノフィラメント弾性糸の繊度Dを300≦D≦1000(dtex)にするとよい。
特に、裏経糸16の形成する鎖編目列間17・17を挿入糸18によって連結して裏編地14を編成し、裏経糸16と挿入糸18にモノフィラメント弾性糸を適用し、表編地13にコースゲージGの4倍以上の長さLにわたってウェール方向Wに続く空白部19を形成する場合、コースとコースの間の挿入糸18と挿入糸18の間に隙間24が確実に形成されるようにするには、裏経糸16としてのモノフィラメント弾性糸の繊度Dを400≦D(dtex)とし、挿入糸18としてのモノフィラメント弾性糸の繊度DをD≦1000(dtex)とすることが望ましい。又、織編布帛の柔軟・可撓性を高めるためには、それを織構造(織物)とせず、糸条がニードルループやシンカーループを形成して曲折する編構造(編物)とするとよい。
織編布帛の厚みは、スリングシートの縫製を容易にする上では10mm以下にすることが望ましいが格別限定されず、特に、表地(13)と裏地(14)を連結糸15によって連結した二重構造にするときは厚みを10mm以上とすることが出来る。しかし、表編地13にコースゲージGの4倍以上の長さLにわたってウェール方向Wに続く空白部19を形成する場合、連結糸15に押し上げられて凸部を構成することになる表編地13の編組織部の部分からの肌身への刺激を避けるために、表編地13と裏編地14を含む織編布帛全体の厚みを10mm以上にし、又、連結糸15には、単繊維繊度が10dtex以下であり、総繊度が400dtex以下の細手の多繊糸条を用い、表編地13と裏編地14の間に介在する連結糸15の介在密度を粗くし、表編地13と裏編地14の間に直立状態に編み込まれる連結糸15が押し潰され、凸部25の高さが実質的に3mm以下になるようにするとよい。
織編布帛の肌触りをよくするためには、単繊維繊度が10dtex以下の多繊糸条を使用することが望まれるが、単繊維繊度が余り細くなると、糸条に占める繊維の表面積が大きく、糸条内の繊維間隙間も細かく緻密になって糸条の保水性が高まり、スリングシートの水切れ性が損なわれる。この点を考慮して、多繊糸条を構成する繊維の繊度は1dtex以上に、好ましくは、2〜7dtexにする。
尚、本発明において、「多繊糸条」とは、多数の繊維によって構成されている糸条を意味し、それには紡績糸とマルチフィラメント糸の他に、モール糸のように多数のパイル毛羽を有する糸条も含まれる。
織編布帛には、速乾性を高めるための撥水剤や、清潔性を保つための抗菌剤、その他の機能性を高める処理が適宜施されるが、そのことは本発明の範囲を何ら縮限するものではない。
織編布帛は、長方形(図3−a、図3−b)や台形(図3−c)を成すものであってもよく、その裁断される形状、或いは、吊り具の取付位置や取付個数は、本発明の範囲を何ら縮限するものではない。
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
六枚筬を装備した11ゲージ、釜間2.4mmのダブルラッセル経編機を用い、第1筬L1 と第2筬L2 には表経糸としてポリエステルウーリー糸(167dtex,48f×2)を通し、第3筬L3 には連結糸としてポリエステルウーリー糸(167dtex,48f×2)を通し、第4筬L4 には裏経糸としてポリエステルモノフィラメント弾性糸(東洋紡績株式会社製品名ダイヤフローラ,500dtex・1f)を通し、第5筬L5 と第6筬L6 には裏編地挿入糸としてポリエステルモノフィラメント弾性糸(東洋紡績株式会社製品名ダイヤフローラ,500dtex・1f)を通し、下記に編組織により、コース密度を20コース/25.4mm、ウェール密度を11ウェール/25.4mmとし、機上幅が163cmのダブルラッセル経編生地を編成し、185℃にて10分間の乾熱処理を行い、仕上幅が156cm幅、コース密度が23コース/25.4mm、ウェール密度が12ウェール/25.4mmのダブルラッシェル経編地を得た。
そのダブルラッシェル経編地のコース方向Cにおける10%に伸長時の伸長力(F)は168(N/5cm)であり、厚みは2.2mm、通気度は258cc/cm2 ・sec 、表編地の空白部19の全面に占める面積比率ρ(%)は18.5%であった。
(編組織)
1 :4566/8966/5444/4555/5433/1033/4555/5444/………………
2 :5433/1033/4555/5444/4566/8966/5444/4555/………………
3 :0101/1010/………………
4 :0001/1110/………………
5 :5555/0000/………………
6 :0000/5555/………………
このダブルラッシェル経編地をタテ1080mm、ヨコ720mmの長方形に裁断し、長さ方向(ウエール方向W)において向き合う端縁20・20を15mm幅で裏編地同士が向き合うように折り畳み、重なり代(幅)が15mmの折返縁(32)とする。同様に、幅方向(コース方向C)において向き合う側縁21・21を15mm幅で裏編地同士が向き合うように折り畳み、重なり代(幅)が15mmの折返縁(32)とする。次いで、幅165mm、長さ2060mmのベルト地織物の両端をそれぞれ200mm折り返して縫合し、長さ1660mmの解れ止めテープ(31)を2本調製し、それぞれダブルラッシェル経編布帛の折返側縁21・21に沿って15mm幅で重ね合わせて縫合する。次いで、ダブルラッシェル経編布帛の折返側縁21から150mm食み出た解れ止めテープ(31)の食出代をダブルラッシェル経編布帛の幅方向(コース方向C)に三重巻きに折り返し、解れ止めテープ(31)が三重になった幅50mmの帯状吊り紐(22)を折返側縁21・21に沿って縫合する。次いで、ダブルラッシェル経編布帛の四隅からそれぞれ305mm食み出た帯状吊り紐(22)の食出代を折り返し、その折返代の先端部分を帯状吊り紐本体部分に縫合し、折返代が輪奈状に重なった輪奈状吊り具12を縫製し、図1に示すスリングシート23を調製した。
このスリングシート23は、適度な伸縮性を有し、姿勢に応じて程よく変形し、ソフトで肌触りがよく、それに載せて吊り上げる時、被介護者に局部的刺激や痛みを与えず、又、包み込まれるかの如き圧迫感や窮屈感を与えることもなく、入浴時には水切れがよく、擦過傷や褥瘡を誘発せず、速乾性に優れ、洗濯時等において使用される洗剤や消毒剤が吸着して残存することがなく、使用後に折り皺その他の歪みが残ることなく、拡布された形態を保ち、洗濯乾燥等のメンテナンス(維持管理)も容易であった。
本発明のスリングシートは、肌触りの点で、単繊維繊度10dtex以下の繊維に成る多繊糸条によって編成された表編地13を肌身に触れる表面に向けて使用されるが、繊度D(単位:dtex)が300≦D≦3000のモノフィラメント弾性糸が編み込まれている裏編地14を肌身に触れる表面に向けて使用する場合には、モノフィラメント弾性糸自体が保水能力を持たず、水分が裏編地14から吐き出され、多繊糸条によって編成されていて保水能力のある表編地13へと毛細管現象によって移行する。つまり、表編地13が水分を吸い取る吸取紙のように裏編地14に作用するので、裏編地14の水切れがよく、蒸れ感を与えず、その表面が平坦であって局部的に肌身を強く押圧することはない。
従って、本発明の範囲は、表編地13と裏編地14の何れを肌身に触れる表面に向けてスリングシートを使用するか、その使用の仕方によっては縮限されない。
本発明に係るスリングシートの使用状態での斜視図であり、一部を縁で囲んで拡大して図示している。 本発明に係るスリングシートの要部拡大斜視図である。 本発明に係るスリングシートの平面図である。 従来技術に係るスリングシートの平面図である。
符号の説明
11:織編布帛
12:吊り具
13:表編地
14:裏編地
15:連結糸
16:裏経糸
17:鎖編目列
18:挿入糸
19:空白部(凹部)
20:端縁
21:側縁
22:吊り紐
23:スリングシート
24:布目(隙間)
25:編組織部(凸部)
26:ニードルループ
27:シンカーループ
28:連鎖箇所
29:リフター
30:トンネル
31:帯状補強材
32:折返縁
33:解れ止めテープ
34:吊り具
35:布帛
C:コース方向
G:コースゲージ
L:開口の長さ
W:ウェール方向
X:幅方向
Y:長さ方向

Claims (7)

  1. (イ) 一枚の連続した織編布帛(11)の周縁部分に吊り具(12)を設けて構成され、その織編布帛の肌身に触れる表面が公定水分率5%以下の疎水性繊維によって構成され、その織編布帛のJIS−L−1018による通気度が150cc/cm2 ・sec以上であり、スリングシートの幅方向(X)において織編布帛の伸度10%に伸長時のJIS−L−1018による伸長力F(単位:N/5cm)が100≦F≦600であり、
    (ロ) その織編布帛(11)の全面に、破断伸度が60%以上であり、伸度15%に伸長後の伸長歪み弾性回復率が90%以上であり、繊度D(単位:dtex)が300≦D≦3000のモノフィラメント弾性糸が、単位面積1cm2 (タテ・ヨコ各1cm)内に少なくとも1本介在する分布率をもって介在しており、
    (ハ) 織編布帛(11)が、表編地(13)と裏編地(14)を連結糸(15)によって連結して成るダブルラッシェル経編地であり、
    (ニ) 表編地(13)が単繊維繊度10dtex以下の繊維に成る多繊糸条によって編成されており、連結糸(15)が単繊維繊度10dtex以下の繊維に成る多繊糸条によって構成されており、破断伸度が60%以上であり、伸度15%に伸長後の伸長歪み弾性回復率が90%以上であり、繊度D(単位:dtex)が300≦D≦3000のモノフィラメント弾性糸が、裏編地(14)に編み込まれており、
    (ホ) 裏編地(14)が、裏経糸(16)の形成する鎖編目列間(17・17)を挿入糸(18)によって連結して編成され、それらの裏経糸(16)と挿入糸(18)にモノフィラメント弾性糸が適用されており、
    (へ) 表編地(13)が、表経糸のニードルループとシンカーループが組織する編組織部(25)と、表経糸のニードルループとシンカーループが組織することなく残された空白部(19)とによって模様状に編成され、
    (ト) その表編地(13)の編組織部(25)が裏編地(14)から隆起した凸部を形成し、その表編地(13)の空白部(19)が編組織部(25)に相対して窪んだ凹部を形成しているスリングシート。
  2. (チ) 空白部(19)と編組織部(25)が、織編布帛(11)の縦横各2cmとなる矩形単位面積内(4cm 2 )に共存し所要の間隔をもって織編布帛の全面に分布しており、
    (リ) 空白部(19)と空白部(19)の間に挟まれる編組織部内(25)の表面積sが織編布帛(11)の表面積(片面)Sに占める開口面積比率ρ(単位:%)が10≦ρ≦60である前掲請求項1に記載のスリングシート。
  3. 表編地の空白部(19)の大きさが、その空白部(19)を間に挟む編組織部(25)と編組織部(25)の各周縁に直径1〜7mmの内接円が内接する大きさである前掲請求項2に記載のスリングシート。
  4. スリングシートの長さ方向(Y)において向き合う端縁(20・20)と幅方向Xにおいて向き合う側縁(21・21)との何れかの周縁に沿って吊り紐(22)が取り付けられており、その吊り紐(22)の端末によって吊り具(12)が構成されている前掲請求項1〜3の何れかに記載のスリングシート。
  5. 吊り紐(22)が、帯状を成し、織編布帛の周縁(21・21)に沿って縫合されており、吊り具(12)が、吊り紐(22)の端末を折り返して形成した輪奈によって構成されている前掲請求項4に記載のスリングシート。
  6. 吊り具(12)は、帯状吊り紐(22・22)の端末に構成されており、前記帯状吊り紐(22・22)を前記織編布帛(11)の互いに向き合う各側縁に沿って縫合することで、前記織編布帛(11)の周縁部分に設けられている前掲請求項5に記載のスリングシート。
  7. 織編布帛(11)には、その互いに向き合う各側縁を折り返して筒状トンネル(30)が形成されており、
    端末が吊り具(12)を構成している吊り紐(22)が、当該筒状トンネル(30)内に挿通されて織編布帛(11)の周縁部分に設けられている前掲請求項5に記載のスリングシート。
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