JP4611638B2 - 催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド、該蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA、該DNAを用いた催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドの製造方法及び該蛋白質又はポリペプチドについてのmRNAの翻訳を阻害する機能を有する核酸分子 - Google Patents

催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド、該蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA、該DNAを用いた催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドの製造方法及び該蛋白質又はポリペプチドについてのmRNAの翻訳を阻害する機能を有する核酸分子 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、タマネギ等の植物を粉砕又は切断した時に発生する催涙成分の生成に関与する1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチド、該蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA(催涙成分生成酵素遺伝子)に関する。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子は、例えば、催涙成分の生成を制御すること、破砕又は切断した時に発生する催涙成分の量を低減化させた植物の開発において、材料や交配物などの選別指標として使用すること、当該酵素の発現量を抑制するための情報を提供すること、当該酵素を大量に生産すること、催涙成分を大量に生産すること、等を実現化するものとして有用である。
本明細書において、「催涙成分」は、Lachrymatory Factor(以下、LFと記す。)のことで、具体的にはチオプロパナール−S−オキサイドである。また、催涙成分生成酵素活性を有するとは、催涙成分生成酵素の推定基質であるtrans−1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示すこと、あるいは、酵素アリイナーゼの存在下でタマネギ等に存在するtrans−S−1−プロペニル−システインスルフォキシド(PeCSO)から催涙成分を生成する作用を有することと同義である。
背景技術
タマネギを粉砕又は切断した時に発生する催涙成分については、これまで、多くの研究成果が報告され、タマネギ等に存在する催涙成分(Lachrymatory Factor:LF)の形成及びその分解については、S−1−プロペニル−システインスルフォキシド(PeCSO)がアリイナーゼによって分解されると催涙成分が生成されると考えられて来た。すなわち、上記前駆物質のPeCSOに酵素アリイナーゼが作用し、1−プロペニルスルフェン酸を経て非酵素的により安定な催涙成分になると考えられていた。
しかし、本発明者らの研究によって、PeCSOがアリイナーゼによって分解されただけでは催涙成分は生じず、他の酵素(催涙成分生成酵素)の関与が不可欠であることが判明した。そこで、本発明者らは、鋭意研究を積み重ね、上記スルフェン酸を異性化して催涙成分を生成すると考えられる新しい酵素(催涙成分生成酵素)の存在することを見出し、それによって、上記前駆物質は、当該酵素の作用の如何によって、催涙成分あるいはこれと別の風味成分になることが分かった。さらに、この催涙成分生成酵素(催涙性物質生成酵素)の製造方法を開発すると共に、催涙成分生成酵素の理化学的性質をも明らかにして、特許出願をした(特開平10−295373号公報)。
又、本発明者らは、酵素アリイナーゼの存在下でタマネギ等に存在するPeCSOから催涙成分を生成する作用を有する催涙成分生成酵素の構造を解明することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、催涙成分生成酵素の複数のアイソザイム、そのアミノ酸配列及びタマネギに関してそれをコードする遺伝子配列の解明に成功し、特許出願をした(国際公開第02/20808号パンフレット)。
このような催涙成分生成酵素は、一般にアリウム(Allium:ネギ属)植物にも含まれており、それをコードするDNA情報もまた、これらの植物等の品種開発において、遺伝子組換えや変異の誘導・交配などに有用であり、粉砕や切断しても催涙成分が発生し難い植物の作出などに役立てることができる。また、生理活性物質であるチオスルフィネート(thiosulfinates)乃至その反応物の生成量が増大した植物の作出などにも役立てることができる。
一方、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA情報を利用すれば、遺伝子組換え技術等によって当該酵素を大量に生産することが可能になり、例えば、涙欠乏症(ドライアイ)などの治療に役立つ催涙成分を効率的に製造する技術の開発にも役立つ。
発明の要約
本発明は、催涙成分生成酵素遺伝子、特にアリウム植物に含まれる催涙成分生成酵素遺伝子を提供することを目的とする。
また、本発明は、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド、特にアリウム植物に含まれる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、催涙成分生成酵素のアイソザイムを遺伝子組換え技術により効率的に作り出すことを実現する方法を提供することを目的とする。
また、催涙成分の前駆物質から催涙成分を生成する酵素遺伝子の発現を抑制することを実現する手段を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は以下の技術的手段から構成される。
(1)1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA。
(2)前記DNAが配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列からなるか、又は以下の(a)〜(c)のいずれかからなるDNA。
(a)配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列中の1若しくは複数の塩基が付加、欠失、若しくは置換された塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA。
(c)配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列との相同性が60%以上の塩基配列からなるDNA。
(3)配列番号25で表される、アリウムに属する植物の催涙成分生成酵素遺伝子の単離に使用するためのプライマー及び該プライマーを用いて該遺伝子を単離する方法。
(4)上記DNAを含有する組換えベクター。
(5)上記DNAを含有する組換えベクターを含む形質転換体。
(6)上記DNAを含有する組換えベクターで形質転換した宿主細胞を培養し、培地中又は細胞中に産生された催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを分離することを特徴とする、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドの製造方法。
(7)(a)配列番号2、6、8、10、14又は16で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2、6、8、10、14又は16で示されるアミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列、又は
(c)配列番号2、6、8、10、14又は16で示されるアミノ酸配列との相同性が65%以上のアミノ酸配列
のいずれかを含み、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
(8)催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドについてのmRNAの翻訳を阻害する機能を有する核酸分子。
なお、本発明には、以上の技術的手段について、DNAが配列番号11で示される塩基配列からなるDNAを除くものである場合が含まれる。
また、本発明には、以上の技術的手段について、DNAが配列番号12で示されるアミノ酸配列を含む蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAを除くものである場合が含まれる。
また、本発明には、以上の技術的手段について、蛋白質又はポリペプチドが配列番号12で示されるアミノ酸配列を含む蛋白質又はポリペプチドを除くものである場合が含まれる。
発明の開示
本発明においては、アリウム植物の全RNAを抽出し、この全RNAに含まれるmRNAを鋳型としてRT−PCR法でcDNAを合成し、国際公開第02/20808号パンフレットですでに得られているタマネギの催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA(配列番号11)の塩基配列を基にプライマーを設計して、上記cDNAを鋳型にしてPCR法によって催涙成分生成酵素遺伝子を選択的に合成した。一方、上記タマネギ由来の塩基配列を基に設計したプライマーによって催涙成分生成酵素遺伝子を選択的に合成できないアリウム植物については、その単離に有効な別のプライマーを設計して、同様に当該遺伝子を選択的に合成した。
PeCSOのアリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナール−S−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素は、植物の風味改質や加工適性の向上に関して重要な成分である。したがって、催涙成分生成酵素の生産や植物育種の分野においては、この催涙成分生成酵素遺伝子の決定は、極めて有意義である。
催涙成分生成酵素遺伝子の配列を取得する具体的な方法としては、例えば、以下の方法である。
(1)(全RNAの抽出・CDNAの合成)
各アリウム植物の全RNAからcDNAを合成する。このための方法は、当業者に知られている如何なる方法であってもよく、例えば、後述の実施例では、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN Cat.no.74903)を用いて全RNAを抽出し、Ready−To−Go T−Primed First−Strand Kit(Amercham Biosciences code no.27−9263−01)を用いてcDNAを合成する方法を採用している。
(2)(RACE法)
タマネギの催涙成分生成酵素遺伝子の3’側領域の配列を含むプライマーを一つ以上用いて該アリウム植物の催涙成分生成酵素遺伝子の3’側領域をPCR増幅し、タマネギの催涙成分生成酵素遺伝子の5’側領域の配列を含むプライマーを一つ以上用いて該アリウム植物の催涙成分生成酵素遺伝子の5’側領域をPCR増幅することにより、アリウム植物の催涙成分生成酵素遺伝子の配列を決定する。前記タマネギの催涙成分生成酵素遺伝子の3’側領域の配列を含むプライマーとしては、配列番号17で表されるオリゴヌクレオチドが挙げられ、前記タマネギの催涙成分生成酵素遺伝子の5’側領域の配列を含むプライマーとしては、配列番号19で表されるオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
(3)(TAクローニング法)
リーキ(A.ampeloprasum L.)については、タマネギ由来の催涙成分生成酵素遺伝子配列の情報だけからは、RACE産物を得ることが出来なかった。そこで、タマネギ・ラッキョウ・ナガネギの3種の催涙成分生成酵素遺伝子の全てにおいて配列が保存されている領域を求め、その配列を元に設計したプライマーE2/uni/f/298(配列番号25)をセンスプライマーに用いることによって初めて該当cDNAの3’側領域を増幅することが可能となった。上記のプライマーは、アリウムに属する植物の催涙成分生成酵素遺伝子の単離に使用するためのユニバーサルプライマーとして用いることができる(ユニバーサルプライマーの領域を図5に示す)。
さらに、タマネギの配列から設計したプライマーを用いても増幅産物が得られないという結果は5’RACEでも同様であった。したがって、上記E2/uni/f/298を用いて得られたリーキ3’RACE産物の塩基配列からプライマーE2/r/580−Le(配列番号28)を設計し、5’RACE法のアンチセンスプライマーとして用いることによって初めて該当cDNAの5’側領域を増幅することが可能となった。
なお、前記の3’側領域のプライマーE2/uni/f/298を用いることにより、リーキの催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列を決定することができた点は、新規な知見である。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子は、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAである。
催涙成分の前駆物質であるPeCSOを催涙成分へと変える反応を触媒する性能を有する蛋白質としては、アリイナーゼと催涙成分生成酵素が挙げられる。これらは、切断等の物理的損傷によって催涙成分を生成するアリウム植物のタマネギ、ナガネギ、ラッキョウ、リーキ、エシャロット、エレファントガーリック、チャイブなどに含まれている。催涙成分生成酵素遺伝子としては、配列番号1のナガネギ由来のDNA、配列番号5のラッキョウ由来のDNA、配列番号7のエシャロット由来のDNA、配列番号9、13のリーキ由来のDNA、配列番号11のタマネギ由来のDNA、配列番号15のエレファントガーリック由来のDNAが挙げられるがこれらに限定されない。上記各塩基配列において1若しくは複数の塩基が付加、欠失、もしくは置換されたDNAであってもよい。例えば、上記各DNAに対応する配列番号2、6、8、10、12、14及び16に示したアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換された蛋白質又はポリペプチドであって、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAであってもよい。
一般にアミノ酸配列には、その機能に影響を与えない相違が株間や近縁種間などで存在し得ることが知られており、それらの配列間では90%以上、若しくは95%以上のアミノ酸の一致が観察される。この値は通常は、アミノ酸100個当たり10個以下或いは5個以下のアミノ酸の変異(付加・欠失・置換)に相当する。
一方、本発明の催涙成分精製酵素蛋白質では、アリウムに属する数種の植物について、その催涙成分精製酵素遺伝子の配列を決定し、その推定アミノ酸配列結果から、アミノ酸100個当たり35個に相当する変異であっても催涙成分精製酵素活性を有することが示されており、アミノ酸配列の35%の変異まで許容できる可能性がある。
また、催涙成分生成酵素遺伝子は、例えば、上記配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNAである。なお、上記のハイブリダイズし得るDNAには、各配列番号で示される塩基配列のDNAとハイブリダイズするDNAと、これと相補的であるDNAの両方が含まれる。あるいは、上記配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列との相同性が60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上の塩基配列からなるDNAである。
(塩基配列のハイブリダイズの条件)
ここで、本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、配列番号1、5、7、9、13、15に示す塩基配列又はその一部とDNAが特異的にハイブリダイズし、且つ、非特異的なハイブリッドが形成・検出されない条件である。ストリンジェントな条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を挙げると、42℃で、30%(v/v)脱イオン化ホルムアミド、0.6MのNaCl、0.04MのNaHPO、2.5mMのEDTA、7%のSDSの組成のハイブリダイゼーションバッファーを用いたハイブリダイゼーション条件下にハイブリッドを形成し、さらに、2×SSC、0.1%のSDSを用いて洗浄しても、ハイブリッドが維持される条件である。核酸のハイブリダイゼーションについては、Molecular Clonig:A laboratory manual(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NewYork,USA等を参考にすることができる。
(塩基配列の相同性)
また、塩基配列の相同性は、以下のようにして判定する。配列間の塩基の相同性を判定する前段階に行なう塩基配列の整列(アライメント)は、日本DNAデータバンクのインターネット解析サービスであるCLUSTAL W 1.81DDBJ拡張版(アルゴリズムはGene 73,(1988)237−244による。CLUSTAL W by DDBJ)を用いる(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology.html)。解析パラメーターは、デフォルトのまま行なう(gapdist:8、maxdiv:40、gapopen:15、gapext:6.66)。得られたアライメント結果を用いて、ORF内で一致した塩基数のORFの全塩基数(アライメントによって生じたgap領域は除く)に対する百分率を計算することで、ORF内の塩基の相同性を算出する。
配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15に示した塩基配列について、それぞれの間の塩基配列の相同性を、図1に示した。その結果、塩基配列の相同性は配列番号15(エレファントガーリック)と配列番号13(リーキ)間が最も低く、78.5%であった。このように、催涙成分生成酵素遺伝子の塩基配列は相互に塩基の相同性が高く、一つのファミリーを形成している。なお、配列番号3のDNAは、配列番号1のDNAとの間で99.8%の高い相同性を示す、ナガネギ由来のDNAである。さらに、配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15に示したいずれかの催涙成分生成酵素遺伝子の塩基配列について、BLASTサーチ(アルゴリズムは、J.Mol.Biol.Vol.215,(1990)pp.403−410による。解析パラメーター:デフォルト設定のまま使用(Expect:10、Word size:11、Low complexity filter:ON))を用いて、GenBankに登録されている遺伝子配列に対する相同性検索を行なうと、上記催涙成分生成酵素遺伝子以外には、高い相同性を示す遺伝子配列は見つからない(シロイヌナズナやキイロショウジョウバエ、ヒトの遺伝子配列データの一部分に対して、4%程度の塩基の相同性がある程度である)。このことから、催涙成分生成酵素遺伝子の塩基配列は、これまでに報告されている全ての遺伝子配列と類縁関係にない全く異なる配列であることがわかる。
また、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドは、例えば、配列番号2、6、8、10、14又は16で示されるアミノ酸配列との相同性が65%以上のアミノ酸配列を含むものである。
(アミノ酸配列の相同性)
アミノ酸配列の相同性は、以下のようにして判定する。配列間のアミノ酸の相同性を判定する前段階に行なうアミノ酸配列のアライメントは、日本DNAデータバンク(DNA data bank of Japan DDBJ)のインターネット解析サービスであるCLUSTAL W 1.81 DDBJ拡張版(アルゴリズムはGene 73,(1988)237−244による。CLUSTAL,W by DDBJ)を用いる(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology.html)。解析パラメーターは、デフォルトのまま行なう(gapdist:8、maxdiv:40、gapopen:10、gapext:0.2)。得られたアライメント結果を用いて、一致したアミノ酸数の全アミノ酸数(アライメントによって生じたgap領域は除く)に対する百分率を計算することで、アミノ酸の相同性を算出する。
配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16に示した推定アミノ酸配列について、それぞれの間の推定アミノ酸配列の相同性を、図2に示した。その結果、推定アミノ酸配列の相同性は配列番号16(エレファントガーリック)と配列番号10(リーキ)間が最も低く、65.9%であった。このように、催涙成分生成酵素蛋白質等のアミノ酸配列は相互に相同性が高く、一つのファミリーを形成している。なお、配列番号4のアミノ酸配列は、前記配列番号3のナガネギ由来のDNAに対応するアミノ酸配列である。
さらに、配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16に示したいずれかの催涙成分生成酵素遺伝子の推定アミノ酸配列について、BLASTサーチ(アルゴリズムは、J.Mol.Biol.Vol.215,(1990)pp.403−410による。解析パラメーター:デフォルト設定のまま使用(Expect:10、Word size:3、Low complexity filter:ON))を用いて、GenBankに登録されているアミノ酸配列に対する相同性検索を行なうと、催涙成分生成酵素遺伝子の推定アミノ酸配列同士以外には、最も高い相同性を示すアミノ酸配列でも35%以下の相同性であった(シロイヌナズナやイネの機能不明遺伝子の推定アミノ酸配列)。このことから、催涙成分生成酵素遺伝子の推定アミノ酸配列は、これまでに報告されている全てのアミノ酸配列と高い類縁関係にない、大きく異なる配列であることがわかる。
一般に特定の機能や生理活性を有する蛋白質やポリペプチドをコードするアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失、若しくは置換された場合であっても、その機能や生理活性が維持される場合があることは当業者において広く認識されているところである。本発明には、このような修飾が加えられ、且つ、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA断片も含まれる。
上記の配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15の塩基配列のアライメントデータを図3A〜3Cに、配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16のアミノ酸配列のアライメントデータを図4A、4Bに示す。図3A〜3Cは、ORFの5’末端から約50塩基の領域は塩基の保存性が低い傾向にあることを示している。特にリーキでは、そのうちの15塩基が欠失していた。また、タマネギにはアミノ酸に翻訳された後で、この領域由来のペプチドが除去されたアイソザイムの存在も知られている。なお、この領域以外に催涙成分生成酵素遺伝子のcDNAには、特に保存性の低い領域は見つからなかった。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子は、例えば、催涙成分の生成を制御する方法、これらを指標として、交配に供する植物を選抜する方法、催涙成分生成酵素活性を低減させた植物や生理活性物質の増大した植物の品種を作出する方法、催涙成分生成酵素を遺伝子組換え技術により大量に生産する方法、等を実現させるものとして有用である。
本発明では、催涙成分生成酵素遺伝子のmRNAからRT−PCRによって、cDNAを合成し、そのセンス鎖の配列を決定している。アンチセンス鎖の配列はセンス鎖の配列から一義的に決定される。したがって、本発明のDNAには、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方の配列を含む。即ち、上記の配列番号1、3、5、7、9、13及び15の塩基配列のアンチセンス配列を有するDNA又はその断片を含む。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の応用例として、例えば、以下の例が例示される。
(1)催涙成分生成酵素の生産
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子を適宜の発現ベクターに組み込んで、組換えベクターを作製することができる。
使用するベクターは、宿主細胞内で自律的に複製可能であって、上記DNA、すなわち、催涙成分生成酵素遺伝子を組み込み得る挿入部位を持ち、更に、この組み込んだDNAを宿主細胞内で発現せしめることを可能とする領域を有するものであれば、その種類は、特に制限されない。発現ベクターとしては、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)遺伝子の配列の下流にマルチクローニングサイトを持つ、pGEX−4T−3(アマシャム バイオサイエンス社製)等を用いることができる。
また、組み込む生物種での発現を促進するために、組み込む生物種に合わせてコドンを変換することがあるが、これらのコドン変換されたDNAも本発明の範囲に含まれることは云うまでもない。この様なアミノ酸配列を基にした遺伝子の合成は、例えば、DNA自動合成機を利用して合成したオリゴヌクレオチドをアニール後に連結する等の方法により、適宜実施することができる。
更に、国際公開第02/20808号パンフレットでも明らかにされているように、催涙成分生成酵素の蛋白質の1もしくは複数の一部のアミノ酸が付加、欠失しても、同じ酵素的性質が得られる可能性がある。また、一部のアミノ酸残基が置換しても、結果として同じ酵素的性質が得られる可能性がある。このような遺伝子の改変は、市販遺伝子の部位特異的変異導入キットを用いたり、合成遺伝子を挿入したりする等の方法により、容易に実現することが可能である。事実、ナガネギ、ラッキョウ、エシャロット、リーキ、エレファントガーリックでは、相互に一部のアミノ酸が異なっても、催涙成分生成酵素活性が得られることが証明された。したがって、ベクターに組み込む催涙成分生成酵素遺伝子としては、同じ酵素的性質が維持されている限り、その変異体であってもよい。次いで、上記組換え発現ベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を得る。組換え発現ベクターの宿主細胞への導入は、慣用的に用いられている方法により行うことができる。その方法として、例えば、コンピテントセル法、プロトプラスト法、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポソーム融合法等、種々のものが例示されるが、用いる宿主に応じてそれぞれ任意の方法を採用すればよい。本発明の催涙成分生成酵素を産生する宿主としては、好適には、大腸菌、枯草菌、酵母、麹菌などの微生物、カイコ培養細胞等の細胞が例示される。
上記のようにして得られた形質転換体を培養することにより、培養物中に催涙成分生成酵素を生産させることができる。これを公知の方法で単離し、あるいは精製することにより、安定に催涙成分生成酵素を得ることが可能となる。
(2)遺伝子の発現を抑制する手段
(催涙成分生成酵素蛋白質又はポリペプチドのmRNAの翻訳を阻害する機能を有する核酸分子)
催涙成分生成酵素が催涙成分を生成する上で、必須の因子であることは、本発明者らの研究によって示されている(特開平10−295373号公報)。従って、この酵素の作用を阻害すれば催涙成分が生成しなくなることは自明である。 従来から催涙成分の生成を抑える目的で種々の検討が行われてきたが、これらは、アリイナーゼの基質であるS−1−プロペニル−システインスルフォキシド(PeCSO)の蓄積量を少なくするために、硫黄分を含む肥料を少なくするなどの栽培方法を工夫したり、アリイナーゼを不活化することで目的を達成しようとしたものであるが、品質を維持した上での解決策にはなり得ない。
従って、品質が高く、催涙性を抑制したアリウム植物を作出する上で、催涙成分生成酵素をコードする遺伝子の転写から翻訳までを抑制する方法は、非常に有用であり、これは酵素の遺伝子配列が明らかになって始めて実施可能になるものである。
催涙成分生成酵素遺伝子が発現されるのを阻害する方法には、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。ここで、遺伝子の発現の抑制には、遺伝子の転写の抑制、蛋白質への翻訳の抑制が含まれる。遺伝子の発現を有効に阻害するには、アリウム植物に内在する催涙成分生成酵素のmRNAの翻訳を阻害するのが効果的である。
このようなことを狙った技術としては、内在性の催涙成分生成酵素のmRNAの全長や一部分にハイブリダイズさせ2本鎖RNAを形成させることで以降の翻訳が起こらないように遺伝子を導入するアンチセンス法や、あらかじめ酵素の全配列、またはその一部の配列の2本鎖RNAを生成させることで、内在性の催涙成分生成酵素のmRNAが分解されてしまう現象が起きる様に遺伝子を導入するRNAi法が良く知られている。また、催涙成分生成酵素のセンス鎖あるいは類似配列の全長やその一部を過剰発現するように遺伝子を導入することによって、それに相同性のある遺伝子が発現を抑制される共抑制を利用する方法も有効である。
即ち、これらの機構等で内在性のmRNAの機能を失わせる核酸分子であれば、その長さや1本鎖2本鎖の区別、催涙成分生成酵素遺伝子とのハイブリダイズの有無は問題にはならず、すべて有効である。なお、核酸分子の長さは、18ヌクレオチド以上、好ましくは22ヌクレオチド以上が適当である。繰り返すが、このような核酸分子が設計あるいは実施可能になったのは、催涙成分生成酵素の遺伝子配列が明らかになり、この配列を元に考えられるようになったからである。
本発明で用いられるセンス、アンチセンスヌクレオチドの配列は、形質転換する植物が持つ内在性遺伝子(若しくはその相同遺伝子)またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。例えば、本発明のDNA配列の中から選択される一つ以上を含むDNAから転写されるRNAが、催涙成分生成酵素遺伝子や、その上流の調節配列、並びにその間のDNA配列より転写されるRNAにハイブリダイズするものが好ましい。また、該RNAは、1本鎖又は2本鎖のいずれであってもよい。
(内在性のmRNAの翻訳を阻害する核酸分子の効果の検定)
ある核酸分子が、内在性の催涙成分生成酵素のmRNAの翻訳を阻害したかどうかは、その核酸分子がRNAに翻訳されるように遺伝子を導入した植物組織の催涙成分生成酵素活性や、同酵素の蛋白質量を測定することが、直接効果を確認する方法として有効である。催涙成分生成酵素活性が低下していたり、同酵素の蛋白質量が低下していれば、導入した核酸分子によって内在性のmRNAの翻訳が阻害されたことの現われであり、このことから導入した核酸分子の有効性が判定できるのである。
例えば、催涙成分生成酵素活性は、ニンニクから抽出した同酵素を含まないアリイナーゼとアリイナーゼの基質であるPeCSOの反応系に測定対象の植物組織の抽出物を加え、発生した催涙成分(LF)をHPLC等で測定すれば良い。更に、具体的には、形質転換した植物に催涙成分生成酵素活性があるかどうかは、後記の実施例に記載した国際特許出願PCT/JP01/07465に記載された方法に従って確認すればよい。
また、催涙成分生成酵素の蛋白質量が減少していることの判定は、同酵素を抗原として作成した同酵素の抗体を用いるウエスタンブロティング法を用いることができる。即ち、測定対象の植物組織から抽出した画分をSDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法)で分画した後、PVDFメンブレンにブロッティングし、催涙成分生成酵素抗体で選択的に検出する一般的に行われているウエスタンブロティング法でよい。催涙成分生成酵素の標準蛋白質は、種々のアリウム植物から抽出し精製したものを用いてもよいが、酵素のDNA配列を元に、大腸菌等で発現させて取得したリコンビナントの催涙成分生成酵素を用いることも可能である。これら、酵素活性の測定や、催涙成分生成酵素の蛋白質量の測定方法は、ここに示した一般的な方法に限られるものではなく、どのような方法を用いてもよい。
(2−1)アンチセンスRNAによる催涙成分を生成しない植物の生産
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の逆相補鎖配列を有するDNAをアリウム植物へ導入して、アンチセンスRNAを植物内で発現させることにより、催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制することができる。アンチセンスRNAは、催涙成分生成酵素遺伝子からのmRNAに対して相補的塩基配列を持っているため、このmRNAと塩基対を形成することにより、最終産物である催涙成分生成酵素の蛋白質の合成を抑制する。本発明において使用できるアンチセンスRNAは、催涙成分生成酵素に翻訳されるmRNAと特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドである。
なお、前記の塩基配列のアライメントデータにおける保存性の低い領域を除く部分の塩基配列を元にアンチセンスRNA配列を設計することができる。催涙成分生成酵素遺伝子は保存性の低い領域以外では、アリウム植物全体で塩基配列が保存されている傾向が強いことから、ナガネギの催涙成分生成酵素遺伝子配列の逆相補鎖から設計したアンチセンスRNAをタマネギ内で発現させるといった、異なる植物間での転用を行なってもよい。
アンチセンスRNAのターゲット部位は、遺伝子によって様々であり、どの部位が必ずよいと言うコンセンサスはない。しかし、一般的には、ATGスタートサイトなどが、ターゲット部位の候補になり得る。更に、最近では、ターゲット部位とアンチセンスRNAをデザインするためのコンピューター解析ソフト(HYB simulatorなど)も数種発売されているので、これらを利用してアンチセンスRNAを設計することも可能である。なお、アンチセンスRNAの長さは、18〜23mer以上、GCコンテントは50%以上が好ましい。
また、上記のアンチセンスRNA法の他に、センス鎖を組み込む方法及びRNAi(RNA interferense)法を用いることもできる。上記センス、アンチセンスヌクレオチドの配列は、形質転換する植物が持つ内在性遺伝子(若しくはその相同遺伝子)またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。
上記アンチセンスRNAを植物内で機能させる方法としては、例えば、真核生物で発現するプロモーターの下流にcDNAを逆向きに組み込んで宿主細胞に導入してアンチセンスRNAを合成させる方法が例示される。
外来遺伝子を導入する方法としては、アグロバクテリウムによる形質転換方法や、直接導入による形質転換法を用いることができる。
なお、上記のように催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制した植物では、1−プロペニルスルフェン酸が催涙成分に変換されないため、チオスルフィネートの生成量が増大する。タマネギの主要な匂い成分であるチオスルフィネートは抗喘息作用がin vivoで確認されており、in vitroではシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)と5−リポオキシゲナーゼ(5−lipooxygenase)の阻害剤でもある(Wagner,H.,Dorsch,W.,Bayer,T.,Breu,W.& Willer,F.Antiasthmatic effects of onions:inhibition of 5−liipoxygenase and cyclooxygenase in vitro by thiosulfinates and”Cepaenes”.Prost.Leuk.Essential Fatty Acids 39,59−62(1990))。更に、チオスルフィネートはジスルフィド(disulfides)、トリスルフィド(trisulfides)に変換され、これらはそれぞれ血液中の脂質低下(Adamu,I.,Joseph,P.K.& Augusti,K.T.Hypolipidemic action of onion and garlic unsaturated oils in sucrose fed rats over a two−month period.Experientia 38,899−901(1982))、血小板凝集阻害作用を有することが報告されている(Ariga,T.,Oshiba,S.& Tamada,T.Platelet aggregation inhibitor in garlic.Lancet 1,150−151(1981)及びMakheja,A.N.& Bailey,J.M.Antiplatelet constituents of garlic and onion.Agents Actions 29,360−363(1990))。したがって、上記のチオスルフィネート乃至その反応物の生成量が増大した形質転換植物を作出することも可能である。
(3)催涙成分生成酵素蛋白質の大量生産
cDNAを組み込むプラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のpBR322(ジーン(gene),2,95(1977))、pBR325(ジーン,4,121(1978)、枯草菌由来のpUB110(バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochemical and Biophysical Research Communication),112,678(1983))などが挙げられるが、その他のものであっても、宿主内で複製保持されるものであれば、いずれも用いることができる。プラスミドに組み込む方法としては、ベクターとインサートのモル比を1:1から1:10にした混合液を作製し、T4リガーゼで処理する方法が一般的である(細胞工学別冊、バイオ実験イラストレイテッド (2)遺伝子解析の基礎、p78、秀潤社)。このようにして得られたブラスミドは、適当な宿主、例えば、エシェリキア(Escherichia)属菌、バチルス(Bacillus)属菌などに導入する。
上記エシェリキア(Escherichia)属菌の例としては、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A)60,160(1968))などが挙げられる。上記バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114(ジーン,24,255(1983))などが挙げられる。形質転換する方法としては、カルシウムクロライド法(バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション、49、1568(1972))などが挙げられる。このようにして得られた形質転換体中から、公知の方法、例えば、コロニー・ハイブリダイゼーション法(ジーン、10、63(1980))及びDNA塩基配列決定法(プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス、74、560(1977))などを用い、求めるクローンを選出する。このようにして、クローン化された催涙成分生成酵素をコードする塩基配列を含有するDNAを有するベクターを保持する微生物が得られる。
次に、該微生物からプラスミドを単離する。単離法としては、アルカリ法(ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),1513(1979))などが挙げられる。上記クローン化された催涙成分生成酵素をコードする塩基配列を含有するプラスミドは、そのまま、又は所望により制限酵素で切り出す。クローン化された遺伝子は、発現に適したベクター中のプロモーターの下流に連結して発現型ベクターを得ることができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110)、酵母由来プラスミド(例えば、pSH19)あるいはλファージなどのバクテリオファージ及びレトロウィルス、ワクシニアウィルスなどの動物ウィルスなどが挙げられる。該遺伝子はその5’末端に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA、又はTAGを有しても良い。また、既知の蛋白質をコードする遺伝子の3’末端に該遺伝子の5’末端を結合させ、融合蛋白質として発現させる場合は、翻訳開始コドンは必ずしも必要としない。更に、該遺伝子を発現させるためにはその上流にプロモーターを接続する。本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでも良い。また、形質転換する際の宿主がエシェリキア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーターなどが好ましい。とりわけ宿主がエシェリキア属菌でプロモーターがlacプロモーターであることが好ましい。宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウィルスのプロモーターなどが挙げられ、とりわけSV40由来のプロモーターが好ましい。
このようにして構築されたDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造する。宿主としては、エシェリキア属菌、バチルス属菌、酵母、動物細胞などが挙げられる。上記エシェリキア属菌、バチルス属菌の具体例としては、前記したものと同様のものが挙げられる。上記酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシアエ(Saccaromyces cerevisiae)AH22Rなどが挙げられる。動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHOなどが挙げられる。この様にして、DNAを含有するベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
その一例としては、宿主がエシェリキア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。
エシェリキア属菌を培養する際の培地としては、例えば、LB培地やSOC培地(細胞工学別冊 バイオイラストレイテッド、1.分子生物学実験の基礎、p98−99、秀潤社)が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率良く働かせるために、例えば、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)のような薬剤を加えることができる。宿主がエシェリキア属菌の場合、培養は通常15〜43℃で3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。宿主がバチルス菌属の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行い、必要により通気や撹拌を加えることもできる。宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホルダー最小培地(プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス 77,4505(1980))が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて、通気や撹拌を加える。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEN培地(サイエンス(Science)122,501(1952)DMEM培地(ヴィロロジー(Viro−logy)、8、396(1959))などが挙げられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃から40℃で約15時間から60時間行い、必要に応じて、二酸化炭素濃度を高めることができる。
上記培養物から催涙成分生成酵素蛋白を分離精製するには、例えば、下記の方法により行うことができる。催涙成分生成酵素蛋白を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体又は細胞を集め、これを塩酸グアニジンなどの蛋白変性剤を含む緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び(又は凍結融解)によって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離により催涙成分生成酵素蛋白を得る方法などが適宜用いられる。上記上澄み液から催涙成分生成酵素蛋白を精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製方法としては、塩析や溶媒沈殿法などの溶解性を利用する方法、透析法、ゲルろ過法などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法などが挙げられる。
以上のように、本発明の催涙成分生成酵素遺伝子は、スクリーニング、酵素や蛋白質の生産、形質転換植物の生産等における遺伝子工学的なツールとして広範に用いることが可能である。この場合に、本発明の催涙成分生成酵素遺伝子は、アリウム植物の間で相互に塩基配列の類似性が高い。したがって、例えばナガネギ由来のDNAはナガネギに係わる技術にしか応用できないといったようなことはなく、遺伝子を植物間で相互に転用することが可能である。
発明を実施するための最良の形態
実施例1(ナガネギ由来催涙成分生成酵素遺伝子)
(1)全RNAの抽出
新鮮なナガネギ(A.fistulosum L.)を、液体窒素を用いて瞬間凍結後、木づちで破砕した。破砕した凍結材料を乾熱滅菌した乳鉢に入れ、乳棒を用いて粉状になるまで細かくした。100mgの粉状となった凍結材料を、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN Cat.no.74903)のプロトコールに従って処理して、全RNAを得た。
得られた全RNAの収量は13μgであった。
(2)cDNAの合成
得られた全RNAを材料として、Ready−To−Go T−Primed First−Strand Kit(Amercham Biosciences code no.27−9263−01)を用い、キット付属のプロトコールに従って5’末端にアダプター配列のついたオリゴ(dT)(配列番号30)をプライマーとした逆転写を行い、1st strand cDNAを合成した。
(3)3’RACE法による該当cDNAの3’側領域の増幅
目的遺伝子(cDNA)の3’領域の塩基配列を解析するために、表1の組成で3’RACE実験を行った。(2)によって得られた1st strand cDNAはアダプター配列が5’末端に付いた構造をしている。そこで、1st strand cDNAから目的とするcDNAだけをPCRによって増幅させるのに、タマネギの催涙成分生成酵素遺伝子(配列番号11)の3’側領域の配列から設計したACE02fプライマーとアダプター配列に相補的なNotIプライマーを用いてPCRを行った。
Figure 0004611638
Figure 0004611638
PCR条件は、以下の通りである。
▲1▼94℃、9分 → ▲2▼94℃、1分 → ▲3▼54℃、1分 → ▲4▼72℃、1分 → ▲5▼72℃、5分 → ▲6▼4℃、保持
▲2▼〜▲4▼を45回繰り返した。
PCR後の反応液を2%アガロースゲル電気泳動(エチジウムブロマイド検出)に供し、目的サイズのPCR産物の有無を判定した。
(4)5’RACE法による該当cDNAの5’側領域の増幅
目的遺伝子(cDNA)の5領域の塩基配列を解析するために、表2の組成で5’RACE実験を行った。5’RACE実験は、5’RACE System for Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(Invirtogen life technologies Cat.no.18374−058)を用いて実施した。
(2)によって得られた1st strand cDNAをRNaseH処理し、1本鎖のCDNAにした後で、その3’末端にターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(以下:TdT)を用いてヌクレオチドホモポリマー(dCのポリマー)を付加した。PolyCを付加したcDNAを鋳型として、polyC配列に相補的配列を3’末端に持つアダプタープライマー(AAP)とタマネギの催涙成分生成酵素遺伝子の5’側領域の配列から設計したプライマー(ACE02r)を用いてPCRを行い、5’末端にdCのポリマーを付加した1st strand cDNAから目的とするcDNAだけを増幅させた。
Figure 0004611638
Figure 0004611638
PCR条件は、以下の通りである。
▲1▼95℃、10分 → ▲2▼94℃、1分 → ▲3▼55℃、1分 → ▲4▼72℃、1分 → ▲5▼72℃、7分 → ▲6▼4℃、保持
▲2▼〜▲4▼を40回繰り返した。
PCR後の反応液を2%アガロースゲル電気泳動(エチジウムブロマイド検出)に供し、目的サイズのPCR産物の有無を判定した。
(5)3’RACE法、5’RACE法によって得られた増幅産物の塩基配列解析と全長配列の決定とアミノ酸配列の推定
得られた3’RACE産物、5’RACE産物をダイレクトシークエンスし、塩基配列解析を行った。3’RACE産物の塩基配列と5’RACE産物の塩基配列をアッセンブルし、試料中の催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列を決定した(配列番号1に示す)。cDNA全長配列からオープンリーディングフレーム(ORF)を決定し、それぞれのコドンに対応するアミノ酸配列を推定した(配列番号2に示す)。
(6)ORF領域のPCR増幅とその産物のTAクローニングによるナガネギ催涙成分生成酵素遺伝子の塩基配列の決定
上記(5)の塩基配列解析結果からは、配列番号1に示したcDNAの244番目のアデニン(A)がグアニン(G)となっているcDNAの存在が予想された(アデニン(A)が高いピークで、グアニン(G)が低いピークで検出された)。
ORF配列の推定に基づき、その開始コドン(ATG)からのフォワードプライマーE2−AF−F(ATGGAGCTAAATCCTGGTGCGC(配列番号21))を作成した。
作成したプライマーE2−AF−FとNotIプライマーを用い、ナガネギcDNAを鋳型としてPCRを行い、得られた増幅産物をpGEM−T Easy Vector(Promegu社製)に挿入後、大腸菌(XL1−Blue MRF’)に導入し、塩基配列を解析した。その結果、配列番号1の244番目がグアニン(G)となっているcDNAの存在が確認された。決定した配列を配列番号3に示した。配列から、それぞれのコドンに対応するアミノ酸配列を推定した(配列番号4に示す)。
実施例2(ラッキョウ由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列)
新鮮なラッキョウ(A.chinense L.)を抽出材料とした。全RNAの抽出方法やcDNAの合成、3’RACE法による該当cDNAの3’側領域の増幅、5’RACE法による該当cDNAの5’側領域の増幅、塩基配列の解析とアミノ酸配列の推定は、実施例1と同じ方法で行った。解析した、ラッキョウ由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列を配列番号5に示し、そのコドンに対応するアミノ酸配列を配列番号6に示す。
実施例3(エシャロット由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列)
新鮮なエシャロット(A.cepa L.)を抽出材料とした。全RNAの抽出方法やcDNAの合成、5’RACE法による該当cDNAの5’側領域の増幅、塩基配列の解析とアミノ酸配列の推定は、実施例1と同じ方法で行った。
ただし、3’RACE法による該当cDNAの3’側領域の増幅においては、nested PCR法を用い2回のPCRを実施した。1回目のPCRにおいては、実施例1のセンスプライマーをACE02fから、E2−1−N(GGIGCI(A/C)GIAA(A/G)TGG(配列番号23))へ変更し、PCR条件▲3▼の54℃、1分も43℃、1分へ変更した。これにより得られた増幅産物を鋳型として、2回目のPCRを行ったが、この2回目のPCR条件や使用したプライマーは、実施例1に示した3’RACE法による該当cDNAの3’側領域の増幅と同じである。
解析したエシャロット由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列を配列番号7に示し、そのコドンに対応するアミノ酸配列を配列番号8に示す。
実施例4(リーキ由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA配列)
新鮮なリーキ(A.ampeloprasum L.)を抽出材料とした。全RNAの抽出方法やcDNAの合成、塩基配列の解析とアミノ酸配列の決定は実施例1と同じ方法で行った。
ただし、3’RACE法による該当cDNAの3’側領域の増幅においては、実施例1のセンスプライマーであるACE02fだけでなく、タマネギ催涙成分生成酵素遺伝子の配列だけを元に設計した他のセンスプライマーでは増幅産物を得ることが出来なかった。そこで、タマネギ・ラッキョウ・ナガネギの3種の催涙成分生成酵素遺伝子の全てで配列が保存されている領域を見つけ(図5)、その配列から設計したE2/uni/f/298(GAATTTTGGGCCAAGGAGAAGCTGG(配列番号25))をセンスプライマーに用いることで初めて該当cDNAの3’側領域を増幅できた。
タマネギの配列から設計したプライマーを用いても増幅産物が得られないという結果は5’RACEでも同じだった。そこで、センスプライマーとしてE2/uni/f/298を用いて得られたリーキ3’RACE産物の塩基配列からE2/r/580−Le(CACACAGCATCACAAATTGAC(配列番号28))を設計し、5’RACE法のアンチセンスプライマーとして用いることで初めて該当cDNAの5’側領域を増幅することができた。
得られた3’RACE産物、5’RACE産物についてダイレクトシークエンスに供し、塩基配列解析を行った。3’RACE産物の塩基配列と5’RACE産物の塩基配列をアッセンブルし、リーキの催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列を推定した。しかし、塩基配列解析結果から、リーキでは、塩基配列の異なる複数の催涙成分生成酵素遺伝子cDNAが存在することが判り、リーキのcDNA配列はRACE法だけからは決定できなかった。
したがって、RACE結果から推定したcDNA全長配列の5’末端に一番近いATGからのフォワードプライマーE2−AP−F2(ATGGCGCAAAATCCTGGTGTGC(配列番号29))を作成した。
作成したプライマーE2−AP−F2とNotIプライマーを用い、リーキcDNAを鋳型としてPCRを行い、得られた増幅産物をpGEM−T Easy Vectorに挿入後、大腸菌(XL1−Blue MRF’)に導入し、塩基配列を解析した。その結果、2種類のcDNA配列が決定された。決定したリーキの2種類の配列を配列番号9、13に示した。それぞれの配列について、それぞれのコドンに対応するアミノ酸配列を推定した(配列番号10、14に示す)。
実施例5(エレファントガーリック由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列)
新鮮なエレファントガーリック(A.ampeloprasum L.)を抽出材料とした。全RNAの抽出方法やcDNAの合成、塩基配列の解析とアミノ酸配列の推定は、実施例1と同じ方法で行った。
ただし、3’RACE法による該当cDNAの3’側領域の増幅においては、実施例1のセンスプライマーをACE02fから、他のアリウム植物(タマネギ、ラッキョウ、ナガネギ)の催涙成分生成酵素遺伝子の3’側領域から、それらすべての植物に共通な配列を見つけて設計したE2/uni/f/298(GAATTTTGGGCCAAGGAGAAGCTGG(配列番号25))へ変更した。
また、5’RACE法による該当cDNAの5’側領域の増幅においては、実施例1のアンチセンスプライマーをACE02fから、タマネギの塩基配列から設計したプライマー(E2−1−5R−1)(TCCTCGTACCCTGTAAAACACTCAG(配列番号26))へ変更した。
解析したエレファントガーリック由来催涙成分生成酵素遺伝子のcDNA全長配列を配列番号15に示し、そのコドンに対応するアミノ酸配列を配列番号16に示す。
実施例6(蛋白質の製造方法)
(1)発現プラスミドの構築
(ラッキョウ、エシャロット、エレファントガーリック)
配列番号5、7及び15で示される催涙成分生成酵素の遺伝子配列のオープンリーディングフレームの5’末端から設計したフォワードプライマーとオリゴdTプライマーに付けたアンカー部分に相補するリバースプライマーを使い、それぞれのアリウム植物由来のcDNAを鋳型として、PCR反応を行って、約700bpの産物を得た。アリウム植物としては、ラッキョウ、エシャロット、エレファントガーリックを用い、フォワードプライマーとして、ラッキョウについてはE2−AC−F(ATGGAGCAAAATTCTGGTACGC(配列番号22))を、エシャロットについてはE2−AA−F(ATGGAGCTAAATCCTGGTGCAC(配列番号24))を使用し、エレファントガーリックについては、E2−APEG−F(ATGATGACATATCCTGGAAATCG(配列番号27))を使用し、リバースプライマーには、すべての場合でオリゴdTプライマーに付けたアンカー部分に相補するプライマーを用いた。
得られた産物を、先に述べた塩基配列の決定方法に従って、pGEM−T Easy Vectorにサブクローニングした後、大腸菌(XL1−Blue)に導入し、塩基配列を解析した。図6に、サブクローニングの手順を示す。
産物が組み込まれたpGEM−T−Easy Vectorを持つ大腸菌の中から、配列番号5、7、15で示される各ポリペプチドをコードする塩基配列を持つ大腸菌(XL−1 Blue MRF’/pGEM−T−E2−AC(ラッキョウ)、XL−1 Blue MRF’/pGEM−T−E2−AA(エシャロット)、XL−1 Blue MRF’/pGEM−T−E2−APEG(エレファントガーリック))を得た。
(ナガネギ、リーキ)
ナガネギ、リーキについては、実施例1、4で作製した配列番号3、9、13で示される各ポリペプチドをコードする塩基配列を持つ大腸菌(XL−1 Blue MRF’/pGEM−T−E2−AF(ナガネギ)、XL−1 Blue MRF’/pGEM−T−E2−LK29A(リーキ29A)、XL−1 Blue MRF’/pGEM−T−E2−LK58E(リーキ58E))を用いた。
蛋白質の発現用ベクターとして、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)遺伝子の配列の下流にプロテアーゼ認識部位とマルチクローニングサイトを持つ、pGEX−4T(アマシャムファルマシア製)を用いた(図7)。
pGEX−4TをEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−AF(ナガネギ)をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−E2−AF(ナガネギ)を構築した。
pGEX−4TをEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−AC(ラッキョウ)をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−E2−AC(ラッキョウ)を構築した。
pGEX−4TをEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−AA(エシャロット)をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−E2−AA(エシャロット)を構築した。
pGEX−4TをEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−APEG(エレファントガーリック)をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−E2−APEG(エレファントガーリック)を構築した。
pGEX−4TをEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−LK29A(リーキ:配列番号9)をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−E2−LK29A(リーキ:配列番号9)を構築した。
pGEX−4TをEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−LK58EA(リーキ:配列番号13)をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−E2−LK58E(リーキ:配列番号13)を構築した。
(2)発現プラスミドを用いた大腸菌の形質転換体の作製と培養
コンピテントセル法により、上記のpGEX−4T−E2−AF(ナガネギ)を大腸菌BL21−Gold(STRATAGENE社製)に導入し、形質転換体BL21−Gold/pGEX−4T−E2−AF(ナガネギ)を得た(図7)。
また、同様に、上記のpGEX−4T−E2−AC(ラッキョウ)を大腸菌BL21−Gold(STRATAGENE社製)に導入し、形質転換体BL21−Gold/pGEX−4T−E2−AC(ラッキョウ)を得た(図7)。
また、同様に、上記のpGEX−4T−E2−AA(エシャロット))を大腸菌BL21−Gold(STRATAGENE社製)に導入し、形質転換体BL21−Gold/pGEX−4T−E2−AA(エシャロット)を得た(図7)。
また、同様に、上記のpGEX−4T−E2−APEG(エレファントガーリック)を大腸菌(BL21−GOLD(STRATAGENE社製))に導入し、形質転換体BL21−GOLD/pGEX−4T−E2−APEG(エレファントガーリック)を得た。
また、同様に、上記のpGEX−4T−E2−LK29A(リーキ:配列番号9)を大腸菌(BL21−GOLD(STRATAGENE社製))に導入し、形質転換体BL21−GOLD/pGEX−4T−E2−LK29A(リーキ:配列番号9)を得た。
また、同様に、上記のpGEX−4T−E2−LK58E(リーキ:配列番号13)を大腸菌(BL21−GOLD(STRATAGENE社製))に導入し、形質転換体BL21−GOLD/pGEX−4T−E2−LK58E(リーキ:配列番号13)を得た。
得られた形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で37℃で振とう培養した。培地にイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して生産誘導するとGSTと各催涙成分生成酵素蛋白質の融合蛋白質(以下、ナガネギのものについてGST−E2−AF、ラッキョウのものについてGST−E2−AC、エシャロットのものについてGST−E2−AA、エレファントガーリックのものについてGST−E2−APEG、リーキ(配列番号9)のものについてGST−E2−LK29A、リーキ(配列番号13)のものについてGST−E2−LK58Eという)が菌体内に蓄積した。
(3)蛋白質の単離(精製)
上記のようにして、全ての植物について形質転換体を培養し、菌体を遠心分離によって集めた後、超音波破砕した。ナガネギ、ラッキョウ、エシャロットについては、遠心によって回収した上澄みをグルタチオンセファロース4 Fast Flowカラム(アマシャムファルマシア製)に流し、GST融合蛋白質をカラムに吸着させた。カラムを洗浄後、還元型グルタチオンを含む溶出Bufferで、融合蛋白質を溶出し、3種の各融合蛋白質試料(GST−E2−AF、GST−E2−AC、GST−E2−AA)の精製物を得た。
融合蛋白質試料2種をHiTrap Desaltingカラム(アマシャムファルマシア製)に流し、還元型グルタチオンを除去し、再度グルタチオンセファロース4 Fast Flowカラムに吸着させた。カラムを洗浄後、トロンビンを含むバッファーでカラムを満たし、室温で2時間プロテアーゼ処理を行って、GSTタグを融合蛋白質から切り離した。GSTタグを除いた組換えGST−E2−AF、GST−E2−AC及びGST−E2−AAをカラムから溶出させ、更に、この溶出液にBenzamidine Sepharose6Bを加え混合し、遠心分離することによって、溶出液中のトロンビンを除き、3種の組換え試料(RC−E2−AF(ナガネギ)、RC−E2−AC(ラッキョウ)、RC−E2−AA(エシャロット))を得た。
(4)組換え蛋白質の催涙成分生成酵素活性
融合蛋白質試料であるGST−E2−AF、GST−E2−AC、GST−E2−AA並びに、GSTタグを取り除いた組換え試料である、RC−E2−AF、RC−E2−AC、RC−E2−AAの6試料について催涙成分生成酵素活性を測定した。エレファントガーリックとリーキについては、前記の(3)において菌体を超音波破砕した後の遠心上清(GST−E2−APEG/sup(エレファントガーリック)、GST−E2−LK29A/sup(リーキ:配列番号9)、GST−E2−LK58E/sup(リーキ:配列番号13))について、催涙成分酵素活性を測定した。
測定は、国際特許出願PCT/JP01/07465に記載された以下の方法に従って行った。
即ち、上記の組換蛋白質試料を希釈用バッファー(50mMリン酸カリウムバッファーpH6.5)で希釈し、希釈試料10μlに、ニンニクアリイナーゼ(50units/ml)40μlとPeCSO溶液(20mg/ml)20μlを加え、室温で3分間反応させた後、反応液1μlをHPLCに注入し、催涙成分の生成量を測定した。なお、分析にはODSカラム(4.6φ×250mm)(センシュウ科学社製)を用いた。その他、移動相には30%(v/v)の酸性MeOHを、流速は、0.6ml/min、カラム温度は35℃、検出は254nmとした。
その結果、全ての融合蛋白質試料で催涙成分生成酵素活性が検出された。一方、催涙成分生成酵素遺伝子を導入しなかった発現プラスミドpGEX−4Tで作製した形質転換体(BL21−Gold/pGEX−4T−GST)を培養し、グルタチオンセファロースカラム処理をしても催涙成分生成酵素活性は検出されなかった。また、試料の代わりにリン酸Bufferを使ったBlankでも、催涙成分生成酵素活性が無かった。
以上の結果から、催涙成分生成酵素遺伝子のN末端に、GST(分子量約27000)のような大きな蛋白質が結合した融合蛋白質でも、催涙成分生成酵素活性を有することが確認できた。
また、RC−E2−AF、RC−E2−AC及びRC−E2−AAにも催涙成分生成酵素活性が検出された。
実施例7(形質転換植物の作成)
(1)ベクターの作製
ベクターの作製は、調節領域(プロモーター)の下流に、催涙成分生成酵素遺伝子の全長、又はその一部(好ましくは、18bp以上)の配列のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列のいずれかをつなげ、その下流にターミネーターをつないだ上で、プラスミドに組み込むことによって作製される。催涙成分生成酵素遺伝子配列のセンス配向とアンチセンス配向の両方の配列をつなげ、その下流にターミネーターをつないで、プラスミドに組み込む場合には、センスとアンチセンスの配列の間に「スペーサー」(別の塩基配列)を挿入するのが好ましい。これにより、大腸菌内での安定性が向上する。さらに、上記のスペーサーには、「イントロン」(非翻訳領域の塩基配列)を含むものが好ましい。これにより、個体における発現抑制の程度が高くなり、また、発現抑制された個体の回収率が上がる。以下の操作は、一般的な遺伝子クローニング技術を用いて行い得る。
▲1▼ 催涙成分生成酵素遺伝子をサブクローニングしたプラスミドを大腸菌(例えば、XL1−Blue)に導入して増殖させ、このプラスミドを鋳型として、PCRを行い催涙成分生成酵素遺伝子の全長、又はその一部の配列を増幅させる。増幅させた配列は、目的の配向となるようにプロモーターにつなげ、ターミネーターを付加してプラスミドに組み込む。センス配向及びアンチセンス配向の両方の配列を含む場合には、両者の間にイントロンを含むスペーサーを挿入する。
プロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを使用することができるが、植物細胞で発現するものであれば、他のプロモーターを使用してもよい。また、ターミネーターとしては、例えば、ノパリンシンテースのターミネーターを使用できるが、他のターミネーターを使用してもよい。
遺伝子を組み込む中間ベクタープラスミドとしては、pBI101などの一般的なプラスミドが使用できるが、特にこれに限定されるものではない。なお、遺伝子を組み込むプラスミドとしては、適当な選抜マーカー(ハイグロマイシンやカナマイシンなどの抗生物質耐性マーカー)の入ったものを使用することにより、形質転換個体の選抜が容易となる。
▲2▼ ▲1▼のプラスミドを大腸菌(例えば、HB101、SURE2)に入れて増殖させ、この大腸菌とヘルパープラスミドを持つ大腸菌(例えば、HB101(pRK2013))と、ヘルパーTiプラスミド(例えば、pAL4404)を持つアグロバクテリウム(例えば、アグロバクテリウム ツメファシエンスLBA4404が好ましいが、その他にEHA105やEHA101等のどのような系統のアグロバクテリウムを使用してもよい)とをトリペアレンタルメイティングすることにより、▲1▼のプラスミド内の挿入遺伝子がアグロバクテリウム内のプラスミドに組換えられる。但し、ヘルパープラスミドを介したトリペアレンタルメイティングによらなくても、エレクトロポーション法により導入遺伝子配列を組み込んだプラスミドを直接アグロバクテリウムに導入することも可能である。
(2)組換に使用するタマネギ等の植物材料の作製。
▲1▼ 植物材料は、再分化能(植物体を再生する能力)を有するものであれば、どのようなものを使用してもよい。タマネギ等のアリウム植物の場合、再分化能を有するカルスを植物体から誘導して用いるのが好ましい。タマネギ等のアリウム植物の場合、カルスを誘導する植物器官としては、種子由来の成熟または未熟胚、種子由来発芽初生根、鱗葉の生長点、盤茎部などを用いることができる。
▲2▼ カルスを誘導する培地の組成は、好ましくは植物の培養に通常使用できるMS培地の組成を用いるが、他の培地の組成を用いてもよい。カルスを誘導する培地に必須の成分は、植物ホルモンのオーキシンである。オーキシンの濃度は、好ましくは1−100μMである。オーキシンとしては4−FPA(4−fluorophenoxyacetic acid)、Picrolam(4−amino−3,5,6−trichloro−2−pyridinecarboxylic acid)、2,4−D(2,4−dichlorophenoxyacetic acid)などがカルスを誘導するのに好ましいが、他のオーキシンを使用してもよい。
▲3▼ カルスの培養は、培養に適した条件のもとで行うが、好ましくは25℃、1000−3000lux程度の蛍光灯照射下で行う。誘導したカルスは継代培養により維持することが可能である。但し、再分化能を保持したカルスを使用するためには、カルス誘導のための培養期間を短くし、継代培養の回数を減らすのが好ましい。具体的には、カルス誘導のための培養期間は3〜4ヶ月程度とし、継代培養の回数は3回以下にするとよい。
▲4▼ タマネギ等の場合、品種によりカルスの再分化能に大きな開きがあり、再分化能の大きい品種を使う方が好ましい。例えば、泉州中甲高黄、くれない、もみじ、天寿等が挙げられる。
(3)遺伝子導入ベクターのカルスへの感染
▲1▼ (1)で得た遺伝子導入ベクターをもつアグロバクテリウムの菌体を増殖させ、その菌液にカルスを浸す。この際、単子葉植物にアグロバクテリウムを感染させるために必要となる化合物のアセトシリンゴンを添加することが重要である。アセトシリンゴンの濃度は、好ましくは100−200μMである。
▲2▼ 3日以上、好ましくは4〜6日間程度、菌とカルスを共存培養した後、クラフォランあるいはカルベニシリンといった抗生物質を用いて、アグロバクテリウムを除菌する。
(4)感染させたカルスからの形質転換個体の選抜
ベクターにあらかじめ入れておいた、ハイグロマイシンやカナマイシンなどの抗生物質耐性マーカーに対応する培地上でカルスを培養し、生育させた後、再分化させる。生存するものが形質転換に成功した個体である。カルスからの再分化に用いる培地の組成は、植物の培養に通常使用できるMS培地の組成を用いることができるが、その他の組成の培地を用いてもよい。重要なのは、再分化培地よりオーキシンを除くことである。
(5)形質転換個体の確認
再分化植物に目的遺伝子が導入されているかどうかは、植物体よりDNAを抽出し、サザンハイブリダイゼーション法(中山広樹ら著、バイオ実験イラストレイテッド ▲2▼遺伝子解析の基礎,p137−151(1995))を用いて確認する。
(6)形質転換個体の特性の評価
再分化植物に含まれるチオスルフィネート及びその反応物の量を確認することができる。
産業上の利用の可能性
本発明の催涙成分生成遺伝子は、催涙成分生成酵素の発現量を抑制し、抗喘息作用等を有するチオスルフィネート及びその反応物の生成量を増大するために必要なアンチセンスヌクレオチドの設計等に有用であり、催涙成分生成酵素を遺伝子組換え技術により効率的に作り出すことも可能であり、涙欠乏症(ドライアイ)などの治療に役立つ催涙成分を効率的に生産することを実現化できる、という格別の効果を奏する。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15に示した塩基配列について、それぞれの間の塩基配列の相同性を示す。
図2は、配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16に示した推定アミノ酸配列について、それぞれの間の推定アミノ酸配列の相同性を示す。
図3Aは、配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15の塩基配列のアライメントデータを示す。
図3Bは、配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15の塩基配列のアライメントデータを示す(図3Aの続き)。
図3Cは、配列番号1、3、5、7、9、11、13及び15の塩基配列のアライメントデータを示す(図3Bの続き)。
図4Aは、配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16のアミノ酸配列のアライメントデータを示す。
図4Bは、配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16のアミノ酸配列のアライメントデータを示す(図4Aの続き)。
図5は、ユニバーサルプライマーE2/uni/f/298配列に対応する配列一覧をE2/uni/f/298領域とその前後10塩基の領域について示す。
図6は、E2−AF、E3−AC及びE2−AAのcDNAの作成及びサブクローニングの手順を示す。
図7は、発現プラスミドの構築と形質転換体の作製手順を示す。

Claims (7)

  1. 1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAであって、
    配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列からなる前記DNA
  2. 配列番号25で表される、アリウムに属する植物の1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素の遺伝子の単離に使用するためのプライマー。
  3. 配列番号25で表されるプライマーを用いて、アリウムに属する植物の1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素の遺伝子を単離する方法。
  4. 請求項1に記載のDNAを含有する組換えベクター。
  5. 請求項1に記載のDNAを含有する組換えベクターを含む形質転換体。
  6. 請求項1に記載のDNAを含有する組換えベクターで形質転換した宿主細胞を培養し、培地中又は細胞中に産生された、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを分離することを特徴とする、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドの製造方法。
  7. 列番号2、6、8、10、14又は16で示されるアミノ酸配列を含み、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
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