JPWO2003074707A1 - 催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用dna及びベクター、それらを用いた催涙成分生成酵素遺伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遺伝子の発現が抑制された植物 - Google Patents

催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用dna及びベクター、それらを用いた催涙成分生成酵素遺伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遺伝子の発現が抑制された植物 Download PDF

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Abstract

本発明は、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制することを目的に、該催涙成分生成酵素遺伝子の配列を基に設計したDNA及びRNA、該催涙成分生成酵素の発現抑制用DNAを植物に導入するのに必要なベクター、さらに、それらを用いた催涙成分酵素遺伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遺伝子の発現が抑制された植物を提供することに関する。

Description

技術分野
本発明は、タマネギ等の植物を粉砕又は切断した時に発生する催涙成分の生成に関与する1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA(催涙成分生成酵素遺伝子)の発現抑制用DNA及びベクター、それらを用いた催涙成分生成酵素遣伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遺伝子の発現が抑制された植物に関する。
本明細書において、「催涙成分」は、Lachrymatory Factor(以下、LFと記す。)のことで、具体的にはチオプロパナール−S−オキサイドである。また、催涙成分生成酵素活性を有するとは、催涙成分生成酵素の推定基質であるtrans−1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示すこと、あるいは、酵素アリイナーゼの存在下でタマネギ等に存在するtrans−S−1−プロペニル−システインスルフォキシド(PeCSO)から催涙成分を生成する作用を有することと同義である。
背景技術
タマネギの最大の特徴は、粉砕又は切断した時に大量の催涙成分(以下、「LF」という。)が発生する事である。そのため、一般家庭での調理はもちろんの事、乾燥タマネギの製造工場などでは、このLFの発生が大きな問題になっている。そこで、このLFの化学構造や、その発生経路に関する研究が数多く行われ、LFの本体は、チオプロパナール−S−オキシドである事(Wilkins,W.F.,ph.D.thesis,Cornell University,Ithaca,NY,1961)や、タマネギ中に存在する含硫化合物であるS−1−プロペニル−システインスルフォキシド(以下、「PeCSO」という。)がアリイナーゼによって分解されると発生する事(Virtanen,A.I.らSuom.Kemistil.B,34,72,1961)や、PeCSOのアリイナーゼ分解物である1−プロペニルスルフェン酸を経由してLFが発生する事(Block,EらJ.Am.Chem.Soc.,11,2200,1979)などが報告されてきた。
この様に、従来はPeCSOがアリイナーゼで分解されれば、LFが生成すると考えられていたので、LFの発生量の少ないタマネギを作出する為には、PeCSO含量の少ないタマネギを作出するか、アリイナーゼ活性の少ないタマネギを作出する方法が考えられていた。
そこで、栽培条件を変える事でタマネギ中のPeCSOの蓄積量を変化させる研究が行われて来ており、例えば、硫黄が少ない条件で栽培すると、LFが減少する(Randle,W.M.らJ.Agr.Food Chem.42,2085,1994)事や、アリイナーゼの基質に占めるPeCSOの割合も減る(Randle,W.M.らJ.Amer.Soc Hort.Sci.120,1075,1995)事が報告されている。さらに、セレニュームを与えて栽培すると、PeCSOの含有量が減る(Kopsell,D.EらJ.Amer.Soc Hort.Sci.124,307,1999)事や、収穫後のタマネギは、貯蔵中にPeCSO含量が増加してしまう事(Kopsell,D.EらJ.Amer.Soc Hort.Sci.124,177,1999)や、硝酸アンモニウムの施肥量が多いほど、PeCSOは減る事(Randle,W.M.らJ.Amer.Soc Hort.Sci.125,254,2000)などが報告されている。
しかし、PeCSO含量を減らした条件で栽培されたタマネギは、香りの強度が弱くなり(p.41−52.In:S.J.Risch and C.Ho(eds.).Spices:Flavor Chemistry and antioxidant properties.Amer.Chem.Soc.,Wash.,D.C.)、またアリイナーゼの基質に占めるPeCSOの割合も変化してしまう事から、香りの質自体も変化してしまう問題があった。従って、この様に栽培条件を変えただけでは、根本的な解決策とはなっていない。これは、PeCSOがアリイナーゼによる分解を受けて生じる1−プロペニルスルフェン酸が、LFだけでなく、香り成分の元になるチオスルフィネート化合物にも変化するためである。
出願人は、1−プロペニルスルフェン酸をLFに変換する作用を示す催涙成分生成酵素を発見し、これについて特許出願した(特開平10−295373号)。更に、出願人は、上記催涙成分生成酵素のアイソザイム及びそのアミノ酸配列及び当該アイソザイムをコードするDNAについて解明し、これらについても特許出願した(国際特許出願PCT/JP01/07465)。
上記の先願において明らかにされた催涙成分生成酵素を利用して、該酵素の発現を抑制し、活性を阻害できれば、1−プロペニルスルフェン酸からLFは生じない一方、該酵素の作用に拘わらず生成される香り成分の元になるチオスルフィネート化合物は、従来通り、または、従来以上に生じてくると推測される。更に、催涙成分生成酵素をコードする遺伝子の遣伝子情報を利用すれば、遺伝子組換えや変異の誘導・交配などが効果的に行え、粉砕や切断しても催涙成分が発生し難いタマネギ等の植物の作出等の技術展開が可能となる。
本発明は、前記先願の催涙成分生成酵素をコードする遺伝子の配列情報を基に、効率的でしかも短期間に目的植物を作出するため、遺伝子工学的な手法を用いて、催涙成分生成酵素の発現を抑制した植物体を得ることを主眼とするものである。
すなわち、本発明は、催涙成分の前駆物質から催涙成分を生成する酵素遣伝子の発現を抑制するために、該遺伝子の配列を基に設計したDNA及びRNA、催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAを植物に導入するのに必要なベクターを提供することを目的とする。さらに、それらを用いた催涙成分生成酵素遺伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遣伝子の発現が抑制された植物を提供することを目的とする。本発明は、本質的に催涙成分の生成が抑制できるので、他の外的因子の影響を受けず、また、催涙成分の前駆物質量には影習を及ぼさないのでタマネギの品質を落とすこともないという大きな利点、ならびに、従来からある遺伝子工学技術を用いない植物育種技術と比較して短期間で該遺伝子の発現を抑制できるという利点を有する。
発明の要約
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAに基づいて、催涙成分生成酵素遣伝子の発現を抑制するための手段を構築することができた。
また、本発明は、上記配列に基づいて催涙成分生成酵素遣伝子の発現を抑制するために用い得るDNAに関するものであって、そのDNAは以下のように構成される。
(1)転写が可能になるように連結された調節配列と、
以下の配列の中から選択される一つ以上の配列とを含有するDNA:
(a)催涙成分生成酵素遺伝子又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
(b)催涙成分生成酵素遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
(c)催涙成分生成酵素遺伝子と、この遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列。
ここで、催涙成分生成酵素遺伝子とは、催涙成分生成酵素の1次構造を規定しているDNA領域(構造遺伝子)を指し、催涙成分生成酵素遣伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する調節配列とは、一般に、催涙成分生成酵素の遣伝子のコアプロモーターと調節エレメントからなる遺伝子上のDNAエレメント(調節遺伝子)を指す。催涙成分生成酵素遺伝子と、この遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する調節配列との間に存在するDNAとは、先に示した構造遣伝子と調節遺伝子に挟まれたDNA領域(中間配列)を示す(図1を参照)。これらのDNA領域は、全体またはその一部がmRNAに転写される(「わかりやすい遺伝子工学」 半田宏編著 1999 昭晃堂)。したがって、催涙成分生成酵素が生産される上で重要な遺伝子領域である。なお、本明細書において、配列の一部とは、18ヌクレオチド以上、好ましくは22ヌクレオチド以上の長さの配列で、前記の(a)、(b)、(c)のいずれかの配列の任意の部分である。
(2)転写が可能になるように連結された調節配列と、
一つ又は複数のエンドヌクレアーゼ活性を有するRNAを生産する配列と、
以下の配列の中から選択される一つ以上の配列とを含有するDNA:
(a)催涙成分生成酵素遣伝子又はその配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列;
(b)催涙成分生成酵素遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列;
(c)催涙成分生成酵素遺伝子と、この遣伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列。
さらに、本発明は、以下の配列の中から選択される一つ以上の配列を含むDNAに対応するRNAに対してハイブリダイズし得る塩基配列を有するRNAに関する。
(a)催涙成分生成酵素遺伝子又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
(b)催涙成分生成酵素遣伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
(c)催涙成分生成酵素遺伝子と、この遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列。
ここで、DNAに対応するRNAとは、配列中の塩基がDNAではT(チミン)であるものがRNAではU(ウラシル)に変わったものを意味する。例えば、センス配向の配列(a)のDNAを用いる場合、これに対応するRNAはセンス配向の配列であり、この RNAに対してハイブリダイズし得るRNAはアンチセンス配向の配列のものとなる。即ち、上記アンチセンス配向の配列からなるRNAは、当該センス配向の配列(a)のDNAに対応するmRNAに対して相補的塩基配列を有するアンチセンスRNAに相当する。
なお、本発明には、配列番号11で示される塩基配列からなるDNAに対応するmRNAに対して相補的塩基配列を有するアンチセンスRNAを除くRNAが含まれる。
発明の開示
(植物のDNA)
催涙成分の前駆物質であるPeCSOを催涙成分へと変える反応を触媒する性能を有する蛋白質としては、アリイナーゼと催涙成分生成酵素が挙げられる。これらは、切断等の物理的損傷によって催涙成分を生成するアリウム植物のタマネギ、ナガネギ、ラッキョウ、リーキ、エシャロット、チャイブなどに含まれている。催涙成分生成酵素遺伝子としては、配列番号1及び3のナガネギ由来のDNA、配列番号5のラッキョウ由来のDNA、配列番号7のエシャロット由来のDNA、配列番号9、13のリーキ由来のDNA、配列番号11のタマネギ由来のDNA、配列番号15のエレファントガーリック由来のDNAが挙げられるがこれらに限定されない。上記各塩基配列において1若しくは複数の塩基が付加、欠失、もしくは置換されたDNA又はその配列の一部であってもよい。例えば、上記各DNAに対応する配列番号2、4、6、8、10、12、14及び16に示したアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換された蛋白質又はポリペプチドであって、1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA又はその配列の一部であってもよい。
また、催涙成分生成酵素遺伝子は、例えば、上記配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA又はその配列の一部である。なお、上記のハイブリダイズし得るDNA又は断片には、各配列番号で示される塩基配列のDNAとハイブリダイズするDNAと、これと相補的であるDNAの両方が含まれる。あるいは、上記配列番号1、5、7、9、13又は15で示される塩基配列との相同性が60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上の塩基配列からなるDNA又はその配列の一部である。
(塩基配列のハイブリダイズの条件)
ここで、本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、配列番号1、5、7、9、11、13、15に示す塩基配列又はその一部とDNAが特異的にハイブリダイズし、且つ、非特異的なハイブリッドが形成・検出されない条件である。ストリンジェントな条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を挙げると、42℃で、30%(v/v)脱イオン化ホルムアミド、0.6MのNaCl、0.04MのNaHPO、2.5mMのEDTA、7%のSDSの組成のハイブリダイゼーションバッファーを用いたハイブリダイゼーション条件下にハイブリッドを形成し、さらに、2×SSC、0.1%のSDSを用いて洗浄しても、ハイブリッドが維持される条件である。核酸のハイブリダイゼーションについては、Molecular Clonig:A laboratory manual(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NewYork,USA等を参考にすることができる。
(塩基配列の相同性)
また、塩基配列の相同性は、以下のようにして判定する。配列間の塩基の相同性を判定する前段階に行なう塩基配列の整列(アライメント)は、日本DNAデータバンクのインターネット解析サービスであるCLUSTAL W 1.81 DDBJ拡張版(アルゴリズムはGene 73,(1988)237−244による。CLUSTAL W by DDBJ)を用いる(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology.html)。解析パラメーターは、デフォルトのまま行なう(gapdist:8、maxdiv:40、gapopen:15、gapext:6.66)。得られたアライメント結果を用いて、ORF内で一致した塩基数のORFの全塩基数(アライメントによって生じたgap領域は除く)に対する百分率を計算することで、ORF内の塩基の相同性を算出する。
(遺伝子の発現を抑制する方法)
上記DNAは、アリウム植物の催涙成分生成酵素蛋白質をコードするものであり、これらDNAの発現を調節することにより、催涙成分の発生を抑制することができる。本発明において、催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制する方法としては、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。ここで、遺伝子の発現の抑制には、遺伝子の転写の抑制、mRNAから蛋白質への翻訳の抑制が含まれ、また、遺伝子発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。
近年、植物組織培養技術の向上と遺伝子導入技術の開発により形質転換植物の作出が報告されており、アリウム植物においてはアグロバクテリウムにより外来遺伝子を導入した例(C.C.Eadyら、Plant Cell Reports,19,376−381(2000)、S−J.Zhengら、Molecular Breeding,7,101−115(2001))やパーティクルガンにより外来遺伝子を導入した例(C.C.Eadyら、Plant Cell Reports,15,958−962(1996))がすでに報告されている。遺伝子導入技術を用いて、植物の遺伝子の発現を抑制する技術としては以下のようなものが知られている。
1つは、アンチセンスRNA、すなわち蛋白質合成の情報となるmRNAに対して相補的な塩基配列を有するRNAにより、そのRNAの機能を抑制する技術である。アンチセンスRNAは、遺伝子組換え技術によって人工的に作り出すことが可能である。例えば、花色色素合成に関与しているカルコン合成酵素のアンチセンスRNAを生産する野生型とは花色の異なるペチュニアが提案されている(欧州特許公開第341885号)。また、アンチセンスRNAによってトマト果実の軟質化に重要な役割を果たしているポリガラクツロナーゼ遺伝子の発現が抑制され、野生型よりも保存の効くトマトが作り出されている(欧州特許公開第891115号)。
一方、内在性の遺伝子と相同な配列をもつセンスRNAを生産するように構築したDNAを導入することにより、導入した外来遺伝子と、それに相同性のある内在遺伝子が共に発現を抑制されるという「共抑制(co−supression)」という現象も報告されている(C.Napoliら、Plant Cell,2,279(1990)、A.R.van der Krolら、Plant Cell,2,291(1990))。
これらの、2つの方法(「アンチセンス鎖を組み込む方法」、「センス鎖を組み込む方法(共抑制」)に加えて、近年、RNAi(RNA interferense)と呼ばれる、遺伝子の発現を抑制する新しい方法が知られている(J.Z.Levinら、Plant Molecular Biology,44,759−775(2000)、牛田千里、蛋白質 核酸 酵素、46(10),1381−1386(2001))。これは、標的遺伝子と相同性のある2本鎖RNA(dsRNA)を、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、パーティクルガンといった手法を用いて細胞に直接導入するか、dsRNAを発現するようなDNA配列を組み込む方法である。なお、dsRNAはセンスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖が相補的に結合したものであるので、結果的にはセンスDNA鎖とアンチセンスDNA鎖を一緒に導入することになる。センスDNA鎖とアンチセンスDNA鎖を個別に導入した場合も、組み合わせて導入した場合も、それぞれの導入遺伝子より生産される最終産物は標的遺伝子と相補的なdsRNAであり、これがエンドヌクレアーゼにより二十数ヌクレオチドの短いdsRNA(siRNA)に分解され、さらに、このsiRNAが構造遺伝子由来のmRNAの相補部分に結合すると、この結合部分が複数のサブユニットからなるRNAプロセシング複合体(RISC)のガイドとなり、標的となるmRNAはガイドRNAの中央でRISCにより切断されるという機構が提唱されている(V.Vanceら、Science,292,22 June 2277−2280(2001))。それゆえ、上記3つの方法は、組み込む遺伝子の配向と組み合わせが異なるとはいえ、転写後の遺伝子発現抑制という点で同様の作用を有するものであると言うことができる。
上記方法により用いられる本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAは、
転写が可能になるように連結された調節配列と、
以下の配列の中から選択される一つ以上の配列とを含有するDNAである。
(a)催涙成分生成酵素遺伝子のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列、センス及びアンチセンスの両方の配向を含む配列、該DNAの配列の一部のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列、センス及びアンチセンスの両方の配向を含む配列、
(b)催涙成分生成酵素遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列、センス及びアンチセンスの両方の配向を含む配列、該調節配列の一部のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列、センス及びアンチセンスの両方の配向を含む配列、
(c)催涙成分生成酵素遺伝子と、この遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNAのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列、センス及びアンチセンスの両方の配向を含む配列、該間に存在するDNAの配列の一部のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列、センス及びアンチセンスの両方の配向を含む配列。
ここで、センス、アンチセンスという遺伝子の配向については図1に示す。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAとしては、前記の(a)、(b)、(c)いずれの配列を用いてもよいが、好ましくはmRNAとして転写される部分を用いるのがよく、さらに好ましくは構造遺伝子の(a)の部分を用いるのがよい。
上記の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAで用いられる配列(a)は、催涙成分生成酵素遺伝子全体であってもよく、又その一部の配列であってもよく、さらに上記蛋白質のアミノ酸配列に1もしくは複数のアミノ酸の付加、欠失、もしくは置換がおこった蛋白質をコードするDNA全体又はその一部の配列であってもよい。
上記の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAで用いられる配列(b)は、催涙成分生成酵素遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列全体であってもよく、又その一部の配列であってもよく、さらに該調節配列の塩基配列に1もしくは複数の塩基の付加、欠失、もしくは置換が起こって得られる配列全体又はその一部の配列であってもよい。
上記の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAで用いられる配列(c)は、催涙成分生成酵素遺伝子と、この遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA全体であってもよく、又その一部の配列であってもよく、さらに該DNA配列の塩基配列に1もしくは複数の塩基の付加、欠失、もしくは置換が起こって得られる配列全体又はその一部の配列であってもよい。
本発明には、植物ゲノムDNA中に存在する調節配列及び催涙成分生成酵素遺伝子とその調節配列との間に存在するDNAが含まれ(配列(b)又は(c))、これらの配列は、前記の催涙成分生成酵素遺伝子の塩基配列をもとに決定することができる。つまり、上記遺伝子の塩基配列より適宜クローニングすればよく、例えば、上記配列の完全長cDNAの5’端側の適当な部分をプローブにして、ゲノムライブラリーからスクリーニングするか、アミノ酸配列のN末端に対する合成オリゴヌクレオチドを作製し、ゲノムライブラリーよりプロモーター領域を含む遺伝子断片をクローニングすることができる。上記DNAを基にPCRを行って未知領域をクローニングするRACE法で、ゲノムライブラリーの作製を経ずに、全長のDNAをクローニングすることもできる。
また、本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用RNAは、上記発現抑制用DNAから転写されたRNAを指し、同じ塩基配列のものを人工的に合成し、直接抑制に用いられるものを含む。
また、本発明で用いられるセンス、アンチセンスヌクレオチドの配列は、形質転換する植物が持つ内在性遺伝子(若しくはその相同遺伝子)またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。例えば、本発明のDNA配列の中から選択される一つ以上を含むDNAから転写されるRNAが、催涙成分生成酵素遺伝子や、その上流の調節配列、並びにその間のDNA配列より転写されるRNAにハイブリダイズするものが好ましい。また、該RNAは、1本鎖又は2本鎖のいずれであってもよい。
(催涙成分生成酵素蛋白質又はポリペプチドのmRNAの翻訳を阻害する機能を有する核酸分子)
催涙成分生成酵素が催涙成分を生成する上で、必須の因子であることは、本発明者らの研究によって示されている(特開平10−295373号公報)。従って、この酵素の作用を阻害すれば催涙成分が生成しなくなることは自明である。
従来から催涙成分の生成を抑える目的で種々の検討が行われてきたが、これらは、アリイナーゼの基質であるS−1−プロペニル−システインスルフォキシド(PeCSO)の蓄積量を少なくするために、硫黄分を含む肥料を少なくするなどの栽培方法を工夫したり、アリイナーゼを不活化することで目的を達成しようとしたものであるが、品質を維持した上での解決策にはなり得ない。
従って、品質が高く、催涙性を抑制したアリウム植物を作出する上で、催涙成分生成酵素をコードする遺伝子の転写から翻訳までを抑制する方法は、非常に有用であり、これは酵素の遺伝子配列が明らかになって始めて実施可能になるものである。
催涙成分生成酵素遺伝子が発現されるのを阻害する方法には、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。ここで、遺伝子の発現の抑制には、遺伝子の転写の抑制、蛋白質への翻訳の抑制が含まれる。遺伝子の発現を有効に阻害するには、アリウム植物に内在する催涙成分生成酵素のmRNAの翻訳を阻害するのが効果的である。
このようなことを狙った技術としては、内在性の催涙成分生成酵素のmRNAの全長や一部分にハイブリダイズさせ2本鎖RNAを形成させることで以降の翻訳が起こらないように遺伝子を導入するアンチセンス法や、あらかじめ酵素の全配列、またはその一部の配列の二本鎖RNAを生成させることで、内在性の催涙成分生成酵素のmRNAが分解されてしまう現象が起きる様に遺伝子を導入するRNAi法が良く知られている。また、催涙成分生成酵素のセンス鎖あるいは類似配列の全長やその一部を過剰発現するように遺伝子を導入することによって、それに相同性のある遺伝子が発現を抑制される共抑制を利用する方法も有効である。
即ち、これらの機構等で内在性のmRNAの機能を失わせる核酸分子であれば、その長さや一本鎖二本鎖の区別、催涙成分生成酵素遺伝子とのハイブリダイズの有無は問題にはならず、すべて有効である。なお、核酸分子の長さは、18ヌクレオチド以上、好ましくは22ヌクレオチド以上が適当である。繰り返すが、このような核酸分子が設計あるいは実施可能になったのは、催涙成分生成酵素の遺伝子配列が明らかになり、この配列を元に考えられるようになったからである。
(mRNAの翻訳を阻害する核酸分子の効果の検定)
ある核酸分子が、内在性の催涙成分生成酵素のmRNAの翻訳を阻害したかどうかは、その核酸分子がRNAに翻訳されるように遺伝子を導入した植物組織の催涙成分生成酵素活性や、同酵素の蛋白質量を測定することが、直接効果を確認する方法として有効である。催涙成分生成酵素活性が低下していたり、同酵素の蛋白質量が低下していれば、導入した核酸分子によって内在性のmRNAの翻訳が阻害されたことの現われであり、このことから導入した核酸分子の有効性が判定できるのである。
例えば、催涙成分生成酵素活性は、ニンニクから抽出した同酵素を含まないアリイナーゼとアリイナーゼの基質であるPeCSOの反応系に測定対象の植物組織の抽出物を加え、発生した催涙成分(LF)をHPLC等で測定すれば良い。更に、具体的には、形質転換した植物に催涙成分生成酵素活性があるかどうかは、後記の実施例に記載した国際特許出願PCT/JP01/07465に記載された方法に従って確認すればよい。
また、催涙成分生成酵素の蛋白質量が減少していることの判定は、同酵素を抗原として作成した同酵素の抗体を用いるウエスタンブロティング法を用いることができる。即ち、測定対象の植物組織から抽出した画分をSDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法)で分画した後、PVDFメンブレンにブロッティングし、催涙成分生成酵素抗体で選択的に検出する一般的に行われているウエスタンブロティング法でよい。催涙成分生成酵素の標準蛋白質は、種々のアリウム植物から抽出し精製したものを用いてもよいが、酵素のDNA配列を元に、大腸菌等で発現させて取得したリコンビナントの催涙成分生成酵素を用いることも可能である。これら、酵素活性の測定や、催涙成分生成酵素の蛋白質量の測定方法は、ここに示した一般的な方法に限られるものではなく、どのような方法を用いてもよい。
また、アンチセンスRNAの応用的な方法として、リボザイムをコードするDNAを利用する方法がある。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことをいう。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠及び大塚栄子,蛋白質核酸酵素,35:2191,1990)。
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNA中のGUCという配列のCの3’側を切断する。また、標的mRNA中の配列がGUCの他にGUA、GUUといった配列の場合でも、ハンマーヘッド型リボザイムにより切断されることが示されている(M.Koizumiら,FEBSLett.228:225,1988)。リボザイムの基質結合部を標的部位近傍のRNA配列と相補的になるように設計すれば、標的RNA中のGUC、GUUまたはGUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することが可能である(M.Koizumiら、FEBS Lett.239:285,1988、小泉誠及び大塚栄子、蛋白質核酸酵素,35:2191,1990、M.Koizumiら、Nucleic Acids Res.17:7059,1989)。さらには、RNA鎖を特異的に切断する作用のあるリボザイムを生産するDNA配列を、標的遺伝子のmRNAに対して相補的なアンチセンスRNAを生産するDNA配列に加えて植物に導入する方法も報告されている(A.O.Merloら、Plant Cell,10,1603−1622(1998))。この導入遺伝子から生産されたRNAは、アンチセンスRNA部分が標的遺伝子由来のRNAに相補的に結合し、リボザイム部分のエンドヌクレアーゼ活性により、標的遺伝子由来のRNAを切断するという性質があり、これにより、標的遺伝子の発現を抑制する。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子中にはリボザイムの標的となりうる部位が多数存在する。
また、ヘアピン型リボザイムも、本発明の目的のために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(J.M.Buzayan、Nature 323:349,1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている(Y.Kikuchi及びN.Sasaki、Nucleic Acids Res.19:6751,1992、菊池洋、化学と生物30:112,1992)。
標的を切断できるよう設計されたリボザイムは、植物細胞中で転写されるようにカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。しかし、その際、転写されたRNAの5’末端や3’末端に余分な配列が付加されているとリボザイムの活性が失われてしまうことがある。このようなとき、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5’側や3’側に、トリミングを行うためのシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である(K.Tairaら、Protein Eng.3:733,1990、A.M.Dzianott及びJ.J.Bujarski、Ppoc.Natl.Acad.Sci.USA.86:4823,1989、C.A.Grosshans及びR.T.Cech、Nucleic Acids Res.19:3875,1991、K.Tairaら、Nucleic Acids Res.19:5125,1991)。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(N.Yuyamaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.186:1271,1992)。このようなリボザイムを用いて本発明で標的となる遺伝子の転写産物を特異的に切断し、該遺伝子の発現を抑制することができる。以上リボザイムを用いる技術についての説明は、特開2001−238686号公報に記載の通りである。
上記方法により用いられる本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAは、
転写が可能になるように連結された調節配列と、
一つ又は複数のエンドヌクレアーゼ活性を有するRNAを生産する配列と、
以下の配列の中から選択される一つ以上の配列とを含有するDNAである。
(a)催涙成分生成酵素遺伝子又はその配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列;
(b)催涙成分生成酵素遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列;
(c)催涙成分生成酵素遺伝子と、この遺伝子をもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列。
上記催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAで用いられる配列(a)〜(c)に関しては上述の通りである。
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAを利用して、植物の催涙成分の発生を抑制するためには、該DNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させればよい。用いられるベクターは、次の条件を満たす限り制限はない。
・挿入遺伝子を植物ゲノムDNAに組み込むことができる。
・導入するDNAを挿入するためのクローニングサイトを少なくとも3つ以上有しているもの。
また、導入する遺伝子を発現させるためにつなぐプロモーターも、植物細胞内で恒常的な遺伝子発現を行うことができるものであれば制限はなく、このようなプロモーターとしては、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、トウモロコシのユビキチン−1プロモーター、ノパリンシンテースプロモーター等が挙げられる。
遺伝子を導入する植物器官、組織としては、植物体への再分化能を保持する器官、組織であれば制限はない。再分化能を有するカルス組織等が好ましく、培養細胞、プロトプラスト、その他の植物器官、組織など、再分化能を有するものであればよい。
遺伝子を導入する方法としては、導入遺伝子を挿入したベクタープラスミドをもつアグロバクテリウムを植物に感染させる方法、導入遺伝子を挿入したベクターをエレクトロポレーション法により植物プロトプラストに導入する方法及びパーティクルガン法により植物細胞に導入する方法等を用いることができる(島本功ら監修、モデル植物の実験プロトコール,p82−98(1996))。
以上、催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制する方法として、センス、アンチセンス、RNAi及びリボザイムの技術を中心に述べたが、他の何れの方法を用いてもよい。その一つとして、植物ゲノムDNA中の構造遺伝子の一部を直接組み換える方法が挙げられる。例えば、RNAとDNAとが相補的に結合したキメラオリゴヌクレオチドを導入して植物ゲノム中の構造遺伝子の一部に相補的組み換えを起こす方法を適用することができる。導入するキメラオリゴヌクレオチドの配列の内1〜2塩基を構造遺伝子と異なる塩基に予め置換しておくことにより、組み換え後の構造遺伝子から転写されるmRNAは1〜2塩基置換されたものとなる。置換される塩基を適切に選択することで、mRNAから翻訳されるアミノ酸の種類を変えることが可能となる。蛋白質の生理活性(酵素蛋白質の活性)に重要な役割を担う活性中心部分のアミノ酸を改変することで、当該構造遺伝子の発現を抑制することができる。植物では、組み換え頻度が1/1000〜1/10000と低く、組み換えが1〜2塩基に限られる(T.Zhuら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,8768−8773(1999))が、標的遺伝子の発現を抑制する方法として利用可能である。以上のキメリックオリゴヌクレオチド法の他に、植物ゲノムDNAを直接破壊するT−DNAタッギング、トランスポゾンタッギング等のジーンターゲティングの手法も利用可能である。
なお、催涙成分生成酵素の働きを抑えるためには、阻害剤を添加する方法や、阻害剤をタマネギに作らせる事も考えられる。阻害剤により催涙成分生成酵素以外の酵素への影響も考えられるので、催涙成分生成酵素自体の発現を抑制する方法の方が好ましい。また、催涙成分生成酵素の発現を抑制する方法としては、γ線照射や変異誘発性化学物質、たとえばEMS(エチルメタンスルフォネート)等により、目的の変異植物を得る方法や、交配により目的の変異植物を得る方法などがあるが、突然変異を誘導した植物には、催涙成分生成酵素の発現抑制以外にも変異が起きている可能性があるため、その後の選抜も必要になる事など、一般に長い期間が必要になる場合がある。
(実施の態様)
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAの植物への導入及び発現が抑制された植物の選抜と確認方法の概要は、以下の通りである。
(1) ベクターの作製
ベクターの作製は、調節領域(プロモーター)の下流に、催涙成分生成酵素遺伝子の全長、又はその一部(好ましくは、18bp以上、更に好ましくは22bp以上)の配列のセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列のいずれかをつなげ、その下流にターミネーターをつないだ上で、プラスミドに組み込むことによって作製される。以下の操作は、一般的な遺伝子クローニング技術を用いて行い得る。
▲1▼ 催涙成分生成酵素遺伝子をサブクローニングしたプラスミドを大腸菌(例えば、XL1−Blue)に導入して増殖させ、このプラスミドを鋳型として、PCRを行い催涙成分生成酵素遺伝子の全長、又はその一部の配列を増幅させる。増幅させた配列は、目的の配向となるようにプロモーターにつなげ、ターミネーターを付加してプラスミドに組み込む。
プロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを使用することができるが、植物細胞で発現するものであれば、他のプロモーターを使用してもよい。また、ターミネーターとしては、例えば、ノパリンシンテースのターミネーターを使用できるが、他のターミネーターを使用してもよい。
遺伝子を組み込むプラスミドとしては、pBI101などの一般的なプラスミドが使用できるが、特にこれに限定されるものではない。なお、遺伝子を組み込むプラスミドとしては、適当な選抜マーカー(ハイグロマイシンやカナマイシンなどの抗生物質耐性マーカー)の入ったものを使用することにより、形質転換個体の選抜が容易となる。
▲2▼ ▲1▼のプラスミドを大腸菌(例えば、HB101)に入れて増殖させ、この大腸菌とヘルパープラスミドを持つ大腸菌(例えば、HB101(pRK2013))と、ヘルパーTiプラスミド(例えば、pAL4404)を持つアグロバクテリウム(例えば、アグロバクテリウム ツメファシエンスLBA4404が好ましいが、その他にEHA105やEHA101等のどのような系統のアグロバクテリウムを使用してもよい)とをトリペアレンタルメイティングすることにより、▲1▼のプラスミドがアグロバクテリウム内に組み込まれる。但し、ヘルパープラスミドを持つ大腸菌を介したトリペアレンタルメイティングによらなくても、エレクトロポレーション法により導入遺伝子配列を組み込んだプラスミドを直接アグロバクテリウムに導入することも可能である。
(2)組換に使用するタマネギ等の植物材料の作製。
▲1▼ 植物材料は、再分化能(植物体を再生する能力)を有するものであれば、どのようなものを使用してもよい。タマネギ等のアナウム植物の場合、再分化能を有するカルスを植物体から誘導して用いるのが好ましい。タマネギ等のアリウム植物の場合、カルスを誘導する植物器官としては、種子由来の成熟または未熟胚、種子由来発芽初生根、鱗葉の生長点、盤茎部などを用いることができる。
▲2▼ カルスを誘導する培地の組成は、好ましくは植物の培養に通常使用できるMS培地の組成を用いるが、他の培地の組成を用いてもよい。カルスを誘導する培地に必須の成分は、植物ホルモンのオーキシンである。オーキシンの濃度は、好ましくは1−100μMである。オーキシンとしては4−FPA(4−フルオロフェノキシ酢酸)、Picrolam(4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸)、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)などがカルスを誘導するのに好ましいが、他のオーキシンを使用してもよい。
▲3▼ カルスの培養は、培養に適した条件のもとで行うが、好ましくは25℃、1000−3000lux程度の蛍光灯照射下で行う。誘導したカルスは継代培養により維持することが可能である。但し、再分化能を保持したカルスを使用するためには、カルス誘導のための培養期間を短くし、継代培養の回数を減らすのが好ましい。具体的には、カルス誘導のための培養期間は3〜4ヶ月程度とし、継代培養の回数は3回以下にするとよい。
▲4▼ タマネギ等の場合、品種によりカルスの再分化能に大きな開きがあり、再分化能の大きい品種を使う方が好ましい。例えば、泉州中甲高黄、くれない、もみじ、天寿等が挙げられる。
(3)遺伝子導入ベクターのカルスへの感染
▲1▼ (1)で得た遺伝子導入ベクターをもつアグロバクテリウムの菌体を増殖させ、その菌液にカルスを浸す。この際、単子葉植物にアグロバクテリウムを感染させるために必要となる化合物のアセトシリンゴンを添加することが重要である。アセトシリンゴンの濃度は、好ましくは100−200μMである。
▲2▼ 3日以上、好ましくは4〜6日間程度、菌とカルスを共存培養した後、セフォタキシム(クラフォラン)あるいはカルベニシリンといった抗生物質を用いて、アグロバクテリウムを除菌する。
(4)感染させたカルスからの形質転換個体の選抜
ベクターにあらかじめ入れておいた、ハイグロマイシンやカナマイシンなどの抗生物質耐性マーカーに対応する抗生物質を含む培地上でカルスを培養し、生育させた後、再分化させる。生存するものが形質転換に成功した個体である。カルスからの再分化に用いる培地の組成は、植物の培養に通常使用できるMS培地の組成を用いることができるが、その他の組成の培地を用いてもよい。重要なのは、再分化培地よりオーキシンを除くことである。
(5)形質転換個体の確認
再分化植物に目的遺伝子が導入されているかどうかは、植物体よりDNAを抽出し、サザンハイブリダイゼーション法(中山広樹ら著、バイオ実験イラストレイテッド ▲2▼遺伝子解析の基礎,p137−151(1995))等を用いて確認することができる。再分化植物に催涙成分生成酵素活性があるかどうかは、国際特許出願PCT/JP01/07465に記載された以下の方法に従って確認する。
(催涙成分生成酵素活性の測定方法)
形質転換個体より抽出した粗酵素液を希釈用バッファー(50mMリン酸カリウムバッファー、pH6.5)で希釈し、希釈試料10μlに、ニンニクアリイナーゼ(50units/ml)40μlとPeCSO溶液(20mg/ml)20μlを加え、室温で3分間反応させた後、反応液1μlをHPLCにアプライし、催涙成分の生成量を定量する。なお、分析にはODSカラム(4.6φ×250mm)(センシュウ科学社製)、又はDOCOSILカラム(4.6φ×250mm)(センシュウ科学社製)を用いる。その他、移動相には30%(v/v)の酸性MeOHを、流速は、0.6ml/min、カラム温度は35℃、検出は254nmとする。
(参考例)
催涙成分生成酵素の発現が抑制された植物においては、1−プロペニルスルフェン酸から催涙成分は生じない一方、該酵素の作用に拘わらず生成される香りの成分の元になり、抗喘息作用等を有するチオスルフィネート化合物は従来通り、または従来以上に生じてくることが期待される。このことは、以下の実験によっても裏付けられる。
(1)催涙成分生成酵素を含まない粗ニンニクアリイナーゼの調製
110gの中国産生ニンニクに蒸留水を110ml加え、ミキサーで粉砕した。次いで、遠心分離して不溶物を除去した。得られた上清に塩酸を撹拌しながら加え、pH4とした。さらに30分撹拌を継続し、次いで遠心分離して沈殿を回収した。沈殿を50mlの10%グリセリンと20μMピリドキサールリン酸を含む50mMリン酸カリウムバッファー、pH6.5に溶解し、アリイナーゼ活性を測定した。さらに50mMリン酸カリウムバッファー、pH6.5で希釈して、6units/mlの濃度にした。なお、以上の操作はすべて低温下で行った。
(2)催涙成分生成酵素を含む粗タマネギアリイナーゼの調製
250gの札幌黄系タマネギに、2.5mg/Lのピリドキサールリン酸を含む20mMリン酸カリウムバッファー、pH7.5を250ml加え、ミキサーで粉砕した。次いで、ろ過と遠心分離を行って不溶物を除去した。得られた上清に硫酸アンモニウムを撹拌しながら加え、65%の濃度にした。さらに1時間撹拌を継続し、次いで遠心分離して沈殿を回収した。沈殿に10%グリセリンと0.05%メルカプトエタノール、5mMのEDTAを含む50mMリン酸カリウムバッファー、pH7.5を50ml加えて溶解した。これを10%グリセリンと0.05%メルカプトエタノール、5mMのEDTAを含む50mMリン駿カリウムバッファー、pH7.5で3時間透析した。遠心分離を行って、不溶物を除去し、アリイナーゼ活性を測定した。さらに50mMリン酸カリウムバッファー、pH6.5で希釈して、6units/mlの濃度にした。なお、以上の操作はすべて低温下で行った。
(3)N−エチルマレイミド法によるチオスルフィネートの定量
5mg/mlのPeCSO溶液50μlに、リン酸カリウムバッファー、pH6.5を350μl加え、さらに6units/mlの粗タマネギアリイナーゼ、または、粗ニンニクアリイナーゼを600μl加えて室温で1分間反応させた。反応後直ちにジエチルエーテルを500μl加えて混合した。遠心分離した後、ジエチルエーテル層から100μlをサンプリングした。これに、2−プロパノールに溶解させた0.05MのN−エチルマレイミドを300μlと、2−プロパノールに溶解させた0.25Mの水酸化カリウム300μlと、蒸留水100ml当たり1g溶解させたアスコルビン酸溶液を450μl加えて混合し、515nmの発色量からチオスルフィネートを定量した。
測定は、催涙成分を含む粗タマネギアリイナーゼ、催涙成分を含まない粗ニンニクアリイナーゼについて各5回実施した。また、PeCSO溶液50μlの代わりに、リン酸カリウムバッファー、pH6.5を50μl添加したものを、それぞれの酵素のブランクとした。
(4)測定結果
チオスルフィネートの定量結果を図2に示す。図2から、催涙成分を含む粗タマネギアリイナーゼでPeCSOを分解するより、催涙成分を含まない粗ニンニクアリイナーゼでPeCSOを分解する方が有意にチオスルフィネートの量が増大する事がわかった(t検定危険率1%)。一方、それぞれの酵素のブランクについては、危険率5%でも有意な差はなかった。この様に、タマネギ中に存在する催涙成分生成酵素を抑制する事で、発生するチオスルフィネートの量を増大させられる事が期待できる。
発明を実施するための最良の形態
実施例
本発明の催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAの植物への導入及び発現が抑制された植物の選抜と確認は、具体的には、以下の方法により行われるが、これに限定されるものではない。
(実施例1)
(1) 供試培養カルスの調製
(i) タマネギの品種
日本産タマネギ品種、泉州中甲高黄を選定して供試した。
(ii) タマネギカルスの誘導
タマネギの完熟種子を70%エタノールに10分間、有効塩素濃度3.3%の次亜塩素酸ナトリウム溶液に20分間浸漬することによって表面殺菌した後、カルス誘導培地(MSの無機塩類及びビタミン類(Murashige,T.& Skoog,F.,1962;Physiol.Plant.,15:473−497)、50μM 4−フルオロフェノキシ酢酸、1μM 2−イソペンテニルアデニン、0.1M ショ糖、1g/l カゼイン加水分解物、10mM N−モルフォリノエタンスルフォン酸、2g/l ゲランガム、pH5.8)に置床した。25℃、1,000ルクスの蛍光灯照射下で2〜3ヶ月培養後、発芽初生根由来のカルスを得た。なお、カルス誘導培地に添加したN−モルフォリノエタンスルフォン酸は、培地のpHを一定に保つ働きがある試薬で、これを添加することにより、カルス誘導の起こった個体数が多くなり、カルスの大きさも大きくなるという効果が見られた。
(iii) タマネギカルスの増殖
(ii)の方法で得たカルスを目開き1mmのステンレスメッシュに通して細片化し、その0.2〜0.4gを100mlの三角フラスコに入れた30mlのカルス増殖培地1(MSの無機塩類及びビタミン類、50μM 4−フルオロフェノキシ酢酸、1μM 2−イソペンテニルアデニン、0.1M ショ糖、1g/l カゼイン加水分解物、10mM N−モルフォリノエタンスルフォン酸、pH5.8)に移し、25℃、1,000ルクスの蛍光灯照射下、100rpmで振とう培養した。3週間後、増殖したカルスを、200mlの三角フラスコに入れた80mlのカルス増殖培地2(MSの無機塩類及びビタミン類、50μM4−フルオロフェノキシ酢酸、1μM 2−イソペンテニルアデニン、0.2M ショ糖、1g/l カゼイン加水分解物、10mM N−モルフォリノエタンスルフォン酸、pH5.8)に移し、25℃、1,000ルクスの蛍光灯照射下、100rpmで、さらに3〜4週間振とう培養し、タマネギ増殖カルスを得た。
(2) プラスミド(ベクター)の作製
ハイグロマイシン抵抗性遺伝子(hph)及びタマネギの催涙成分生成酵素(LFS)遺伝子(LFS遺伝子)の一部(配列番号11の塩基配列の第102番目から第559番目に相当する部分)のセンス鎖またはアンチセンス鎖もしくはその両者及びシロイヌナズナのfatty acid desaturase 2(FAD2)遺伝子の第1イントロンをT−DNA領域に組み込んだ、以下のプラスミドを作製した。このうち、イントロンは必ず挿入しなければならないわけではないが、イントロンをスペーサーとしてセンス鎖とアンチセンス鎖の間に挿入することにより、センス鎖とアンチセンス鎖からなるinverted−repeatのDNA配列が安定するという効果が知られている(Smith,N.A.et al,2000;Nature,407:319−320)。また、センス鎖またはアンチセンス鎖単独の場合においても、近傍にイントロンを挿入することにより、遺伝子発現の抑制効果が増大することが知られている(Wesley,S.V.et al,2001;The Plant Journal,27(6):581−590)。なお、LFS遺伝子のセンス鎖とアンチセンス鎖ならびにイントロンは、制限酵素のアンカーをつけたプライマーで遺伝子をPCR増幅する方法(Levin,J.Z.et al,2000;Plant Molecular Biology,44:759−775)を参考にして、それぞれタマネギのゲノムDNAならびにシロイヌナズナのゲノムDNAからPCR増幅した。
(i) スーパーバイナリープラスミド
1.中間ベクターの作製
スーパーバイナリーの中間ベクターpSB11(Komari,T.et al,1996;The Plant Journal,10(1):165−174)のT−DNA領域に、pPCV91(図3)のハイグロマイシン抵抗性発現カセット(ノパリン合成酵素のプロモーター(pnos)とハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(hph)とアグロバクテリウムのTiプラスミドのジーン4のポリAシグナル(pAg4)を連結した断片)及びpBI121(インビトロジェンより購入)内のカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターとノパリン合成酵素のターミネーターを、ライトボーダー側からこの順に挿入した。挿入後のベクターの35Sプロモーターとノパリン合成酵素のターミネーターとの間にタマネギのLFS遺伝子のセンス鎖とFAD2のイントロンをこの順に挿入し、sense中間ベクターを得た。また、FAD2のイントロンとタマネギのLFS遺伝子のアンチセンス鎖をこの順に挿入し、antisense中間ベクターを得た。また、タマネギのLFS遺伝子のセンス鎖とFAD2のイントロンとタマネギのLFS遺伝子のアンチセンス鎖をこの順に挿入し、RNAi中間ベクターを得た。
2.スーパーバイナリーベクターの作製
1.で作製した3種類の中間ベクター中の目的遺伝子のスーパーバイナリー・アクセプターベクターpSB1(Komari,T.et al,1996;The Plant Journal,10(1):165−174)への導入は相同組換えによって行った。すなわち、中間ベクターとpSB1はいずれも2.7kbの相同配列を有しており、この領域で相同組換えが起こり、中間ベクターとpSB1が連結した新たなスーパーバイナリーベクターができることになる。この相同組換えは、あらかじめpSB1を導入しておいたアグロバクテリウムに、(3)項で述べる細菌の三系交雑手法(Ditta,G.et al,1980;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:7347−7351)によって、大腸菌に導入しておいた中間ベクターを導入する際に起こる。sense中間ベクターとpSB1の相同組換えにより、スーパーバイナリーベクターpSBsenseを得た。また、antisense中間ベクターとpSB1の相同組換えにより、スーパーバイナリーベクターpSBantisenseを得た。また、RNAi中間ベクターとpSB1の相同組換えにより、スーパーバイナリーベクターpSBRNAiを得た。
(ii)バイナリープラスミド
pBI121のT−DNA領域のノパリン合成酵素のターミネーターとカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターの間にpPCV91のハイグロマイシン抵抗性発現カセット(ノパリン合成酵素のプロモーター(pnos)とハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(hph)とアグロバクテリウムのTiプラスミドのジーン4のポリAシグナル(pAg4)を連結した断片)を挿入し、その後、β−D−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を制限酵素処理で取り除いた。GUS遺伝子を除いた部分に、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター側から、タマネギのLFS遺伝子のセンス鎖とFAD2のイントロンをこの順に挿入し、バイナリーベクターpBIsenseを得た。また、FAD2のイントロンとタマネギのLFS遺伝子のアンチセンス鎖をこの順に挿入し、バイナリーベクターpBIantisenseを得た。また、タマネギのLFS遺伝子のセンス鎖とFAD2のイントロンとタマネギのLFS遺伝子のアンチセンス鎖をこの順に挿入し、バイナリーベクターpBIRNAiを得た。
(3)寄主アグロバクテリウム
TiプラスミドのT−DNA領域を削除したアグロバクテリウム菌系、LBA4404(インビトロジェンより購入)を寄主バクテリアとして使用した。LBA4404は、ヴィルレンス領域を完全な形で持つヘルパープラスミドpAL4404を有する菌系である。
(2)項で作製した種々のベクターを、細菌の三系交雑手法を用いてLBA4404に導入し、これを、タマネギカルスへの遺伝子導入用アグロバクテリウムとして用いた。スーパーバイナリーの中間ベクターを導入する場合には、あらかじめスーパーバイナリーのアクセプターベクターpSB1を導入しておいたアグロバクテリウム菌系、LBA4404を使用し、中間ベクターとアクセプターベクターの相同組換えによりスーパーバイナリーベクターができるようにした。なお、三系交雑手法において、目的のプラスミドが導入されたアグロバクテリウムを選抜する際の培地としては、スーパーバイナリーベクターの場合にはスペクチノマイシン(50μg/ml)を添加したAB培地(Chiltonら.,1974;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,71:3672−3676)を、バイナリーベクターの場合にはカナマイシン(400μg/ml)を添加したMinA培地(Miller,J.H.,1972;Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を使用した。以下、プラスミド(ベクター)を導入したアグロバクテリウムは、例えばLBA4404(pSBsense)のように、菌系名とこれに続く括弧内のプラスミド名によって記載することとする。タマネギカルスへの遺伝子導入には以下の菌系を使用した。
LBA4404(pSBsense)、LBA4404(pSBantisense)、LBA4404(pSBRNAi)、LBA4404(pBIsense)、LBA4404(pBIantisense)、LBA4404(pBIRNAi)
(4)アグロバクテリウム懸濁液の調製
LBA4404(pSBsense)、LBA4404(pSBantisense)、LBA4404(pSBRNAi)の菌系の場合は、スペクチノマイシン(50μg/ml)を添加したAB培地に、LBA4404(pBIsense)、LBA4404(pBIantisense)、LBA4404(pBIRNAi)の菌系の場合は、カナマイシン(400μg/ml)を添加したMinA培地に接種し、28℃で3〜4日間培養した。培養した菌体をスパテラでかきとり、アグロバクテリウム懸濁培地(MSの無機塩類及びビタミン類、1μM 2−イソペンテニルアデニン、0.1M ショ糖、1g/l カゼイン加水分解物、10mM N−モルフォリノエタンスルフォン酸、10mg/l アセトシリンゴン、pH5.8)に懸濁し、濁度(OD600)が0.15〜0.20になるように調整し、感染に用いた。
(5)タマネギカルスへのアグロバクテリウムの感染
(1)項で作製したタマネギ増殖カルスを上述のアグロバクテリウム懸濁液に1.5〜2分間浸漬した。浸漬処理後、タマネギカルスから余分な菌液をペーパータオルで除き、MSCO培地(MSの無機塩類及びビタミン類、1μM 2−イソペンテニルアデニン、0.1M ショ糖、10g/l ブドウ糖、1g/l カゼイン加水分解物、10mM N−モルフォリノエタンスルフォン酸、10mg/l アセトシリンゴン、2g/l ゲランガム、pH5.8)に置床し、25〜28℃、暗黒下で3〜4日間培養した。
(6)形質転換個体の選抜
3〜4日間アグロバクテリウムと共存培養したタマネギカルスを500mg/lセフォタキシムを含む滅菌水で洗浄し、500mg/lセフォタキシムを含むMSSE培地(MSの無機塩類及びビタミン類、1μM 2−イソペンテニルアデニン、0.1M ショ糖、1g/l カゼイン加水分解物、10mM N−モルフォリノエタンスルフォン酸、2g/l ゲランガム、pH5.8)に植え替え、25℃、3,000〜4,000ルクスの蛍光灯照射下で1週間培養した後、250mg/lセフォタキシムと50mg/lハイグロマイシンを含むMSSE培地に移し、25℃、3,000〜4,000ルクスの蛍光灯照射下で培養を続け、形質転換再分化個体の選抜を行った。得られた再分化個体は、5g/lの寒天を添加して固化度を上げた250mg/lセフォタキシムと50mg/lハイグロマイシンを含むMSSE培地に移し、同条件で培養を続け、成育させた。寒天を添加して培地の固化度を上げることで、再分化植物体のヴィトリフィケーション(植物組織がガラスのように透明化し正常に成育できなくなる状態で、試験管内での組織培養の際にしばしば起こる現象)が抑えられ、正常な植物体として成育する個体数が多くなった。
(7)ベクターの違いによるハイグロマイシン抵抗性再分化個体の出現効率
種々のベクターを導入したアグロバクテリウムを感染させたタマネギカルスから、ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体が出現した(表1)。
Figure 2003074707
ベクターとして、植物への感染性の強いスーパーバイナリーベクター(pSB)を使用した場合のハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体の出現率は2〜15%、一般的なバイナリーベクター(pBI)を使用した場合のハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体の出現率は7〜10%であり、ベクターの違いによるハイグロマイシン抵抗性再分化植物体の出現効率には大きな違いは見られず、いずれのベクターを使用してもハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体が得られた。
(実施例2)
LBA4404(pBIsense)と共存培養処理したタマネギカルスから得られた、ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体SならびにLBA4404(pBIantisense)と共存培養処理したタマネギカルスから得られた、ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体Aについて、以下の分析を実施した。
(1)形質転換再分化植物体内の導入遺伝子の解析
ハイグロマイシンによる選抜で得られた再分化植物体に目的遺伝子が導入されているかどうかについて、PCR法により確認した。
(i)ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体からのDNA抽出
ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体の葉を材料とし、DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)を用い、同キット添付のDNeasy Plant Mini Kit Handbookに従ってDNAを抽出した。
(ii)検出用プライマー
下記の5種類のプライマーを組み合わせて使用してPCRを行い、導入遺伝子の存在を確認した。
Figure 2003074707
Figure 2003074707
プライマーAは導入遺伝子中のノパリン合成酵素のプロモーターとアニールするもので、プライマーBは導入遺伝子中のハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子とアニールするものである。プライマーAとプライマーBを組み合わせてPCRを行うことで、導入した遺伝子中のハイグロマイシン抵抗性遺伝子の存在が確認できる。ハイグロマイシン抵抗性遺伝子が導入された植物体のDNAからは、344bpの増幅産物が得られる。
また、プライマーCは導入遺伝子中のFAD2のイントロンとアニールするもので、プライマーDはLFS遺伝子とアニールするものである。プライマーCとプライマーDを組み合わせてPCRを行うことで、導入した遺伝子中のタマネギのLFS遺伝子のアンチセンス鎖の存在が確認できる。タマネギのLFS遺伝子のアンチセンス鎖が導入された植物体(LBA4404(pBIantisense)を用いて形質転換された植物体)のDNAからは、326bpの増幅産物が得られる。
また、プライマーEは導入遺伝子中のノパリン合成酵素のターミネーターとアニールするものである。プライマーCとプライマーEを組み合わせてPCRを行うことで、アンチセンス鎖を含まないコンストラクト、すなわち、センス鎖とイントロンからなるコンストラクトを導入したタマネギDNA中にLFS遺伝子のアンチセンス鎖が存在しないことが確認できる。アンチセンス鎖を含まないコンストラクトを導入したタマネギ植物体(LBA4404(pBIsense))を用いて形質転換された植物体)のDNAからは、360bpの増幅産物が得られる。
(iii)PCR
PCRは、Applied Biosystems社製のAmpliTaq Gold(R)& 10×PCR BufferII & MgCl Solution with dNTPを用い、以下の方法で行った。
2.5μlの10×PCR Buffer IIに、0.125μlのAmpliTaq Gold(5U/μl)、2.5μlのdNTPs Mix(2mM each)、1.5μlのMgCl Solution(25mM)を加え、さらに1組のプライマーのそれぞれを終濃度で0.5μM、及び鋳型DNAを加え、最終的に滅菌超純水で25μlとした反応用溶液を0.2ml容マイクロチューブに入れ、サーマルサイクラーGeneAmp PCR System 2400(Applied Biosystems社製)により、酵素活性化(94℃,10分)後、変性(94℃,1分)−アニーリング(58℃,1分)−伸長(72℃,1分)の反応を40回繰り返し、最終伸長(72℃,7分)で反応させた。得られたPCR反応液をエチジウムブロマイド含有の2%アガロースゲル電気泳動に供して、アマシャムバイオサイエンス社製の蛍光イメージアナライザーFluorImager 595により解析した。
(iv)ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体中の導入遺伝子の確認結果
ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体Sについて、導入遺伝子の存在を確認した結果、表2に示すように、プライマーAとBの組み合わせで344bpの、プライマーCとEの組み合わせで360bpの増幅産物が確認でき、導入コンストラクトの両端のDNAが再分化植物体SのDNA中に確認でき、再分化植物体Sは形質転換植物体であることがわかった。
Figure 2003074707
また、ハイグロマイシンに抵抗性を示す再分化植物体Aについて、導入遺伝子の存在を確認した結果、表3に示すように、プライマーAとBの組み合わせで344bpの、プライマーCとDの組み合わせで326bpの増幅産物が確認でき、導入コンストラクトの両端のDNAが再分化植物体AのDNA中に確認でき、再分化植物体Aは形質転換植物体であることがわかった。
Figure 2003074707
(2)形質転換再分化植物体のLFS活性量の測定
測定個体の部位による測定値のバラツキを抑えるため、形質転換再分化植物体SおよびA、それぞれの全シュート(葉と茎)を切り取り分析に供した。また、アグロバクテリウムとの共存培養処理を行わなかったタマネギカルスから再生させた植物体(6個体)をコントロールとして分析に供した。切り取ったシュートにPBS(137mM NaCl,8.10mM NaHPO・12HO,2.68mM KCl,1.47mM KHPO)を加えて、ホモジナイズ後、6,000xg、5分間の遠心分離を行い、その上清を酵素抽出液とした。この酵素抽出液10μlに、ニンニクアリイナーゼ(50units/ml)40μlとPeCSO(trans−(+)−S−(1−propenyl)−L−cysteine sulfoxide)溶液(20mg/ml)20μlを加え、密栓をして室温で3分間反応させた後、反応液1μlをHPLCに注入し、催涙成分のピーク面積を測定した。なお、分析にはODSカラム(4.6φX250mm)(センシュウ科学社製)を用いた。移動相には30%(v/v)の酸性メタノールを使用し、流速0.6ml/min.、カラム温度35℃、検出波長254nmで測定を行った。得られた測定値は酵素抽出液の総タンパク質1mg当たりの催涙成分のピーク面積量に換算し、これをLFS活性量とした。
酵素抽出液の総タンパク質量は、BSA(Bovine Serum Albumin)を標準として用い、ブラッドフォード法(Bradford,M.M.,1976;Anal.Biochem,,72,248−254)により測定した。
アグロバクテリウムとの共存培養処理を行わなかったタマネギカルスから再生させたコントロールの植物体(6個体)のLFS活性量と、形質転換再分化植物体SおよびAのLFS活性量とを比較した結果を図4に示した。なお、6個体のコントロールの植物体のLFS活性量は平均値で示し、その標準誤差を表示した。
LBA4404(pBIsense)との共存培養で得られた形質転換再分化植物SのLFS活性量は、コントロールの約5%と低く、LFS活性量が20分の1程度に大きく抑制されていた。また、LBA4404(pBIantisense)との共存培養で得られた形質転換再分化植物AのLFS活性量は、コントロールの約47%であり、LFS活性量が約半分に抑制されていた。LFS活性量の抑制の程度には差が見られたが、いずれの形質転換再分化植物の場合でもLFS活性量は抑制されていた。
(iv)形質転換再生植物のLFSタンパク質量の測定
形質転換再生植物のLFSタンパク質量の測定は、ウェスタンブロッティング法により行った。
免疫染色に用いた一次抗体は、大腸菌に発現させたリコンビナントLFSを抗原として、兎に免疫して調製した。免疫は2週間おきに計6回行い、1回の免疫には約0.2mgのリコンビナントLFSを使用した。免疫開始から11週目に全採血を行い、抗LFS抗血清を調製した。得られた抗LFS抗血清は、50%飽和の硫酸アンモニウムで沈殿させ、沈殿物を20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)で溶解・透析を行った。最終的に、LFS結合カラムによりアフィニティ精製を行った抗LFS抗体を一次抗体として用いた。他のブロッキング試薬・二次抗体・三次抗体・蛍光基質は、ECF Western Blotting Kit(アマシャムバイオサイエンス社)付属のものを用いた。
(2)項で作製した酵素抽出液を、タンパク質濃度が40μg/mlになるように調製し、その15μlをSDSポリアクリルアミドゲルのウェルにアプライした。電気泳動後、PVDFメンブレンにセミドライ法にてブロッティングした。ブロッティング後のメンブレンを、ブロッキング液に浸して4℃で一晩又は室温で1時間振とうした。ブロッキング液は、5%(w/v)になるようにPBS−T(137mM NaCl,8.10mM NaHPO・12HO,2.68mM KCl,1.47mM KHPO,0.1%(w/v)Tween20)にMembrane blocking agent(ブロッキング試薬)を溶かして調製した。ブロッキング後、メンブレンをPBS−Tで洗浄して、PBS−Tで250倍希釈した抗LFS抗体(一次抗体)液に浸して室温で1時間振とうした。反応後、メンブレンをPBS−Tで洗浄して、PBS−Tで600倍希釈したAnti−rabbit Ig,fluorescein−linked whole antibody(二次抗体)液に浸して室温で1時間振とうした。反応後、メンブレンをPBS−Tで洗浄してPBS−Tで2500倍希釈したAnti−fluorescein alkaline phosphatase conjugate(三次抗体)液に浸して室温で1時間振とうした。反応後、PBS−Tで洗浄して、メンブレン上に蛍光基質液をかけて室温で20分間静置して反応させた。蛍光基質液は、36mgのECF substrate(蛍光基質)を60mlのECF substrate dilution bufferに溶かして調製した。反応後、メンブレン上の蛍光基質液を完全に乾かし、FluorImager595(アマシャムバイオサイエンス社)で蛍光シグナルの検出を行った。得られたデジタルイメージから、ImageQuaNTソフトウェア(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて、LFS特異的バンドの蛍光シグナル(Volume)測定を行った。得られた測定値は酵素抽出液の総タンパク質1mg当たりのLFS特異的バンドの蛍光シグナル量に換算し、これをLFSタンパク質量とした。
アグロバクテリウムとの共存培養処理を行わなかったタマネギカルスから再生させたコントロールの植物体のLFSタンパク質量と、形質転換再分化植物体SおよびAのLFSタンパク質量とを比較した結果を図5に示した。
LBA4404(pBIsense)との共存培養で得られた形質転換再分化植物SのLFSタンパク質量は、コントロールの約10%と低く、発現量が大きく抑制されていた。また、LBA4404(pBIantisense)との共存培養で得られた形質転換再分化植物AのLFSタンパク質量は、コントロールの約43%であり、LFSタンパク質の発現が半分程度に抑制されていた。LFSタンパク質量の抑制の程度には差が見られたが、いずれの形質転換再分化植物の場合でもLFSタンパク質の発現は抑制されていた。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、催涙成分の前駆物質から催涙成分を生成する酵素遺伝子の配列を基に設計したDNAおよびRNA、催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用DNAを植物に導入するのに必要なベクター、さらに、それらを用いた催涙成分生成酵素遺伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遺伝子の発現が抑制された植物を提供することができる。したがって、これらによって上記遺伝子の発現を抑制することができ、さらに、本質的に催涙成分の生成が抑制でき、他の外的因子の影響を受けず、また、催涙成分の前駆物質量には影響を及ぼさないのでタマネギの品質を落とすことがないという利点、ならびに、従来からある遺伝子工学技術を用いない植物育種技術と比較して短期間で該遺伝子の発現を抑制できるという利点を有する。
本発明によれば、催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制でき、これによって、同酵素のタンパク質量を抑制し、同酵素の活性を低下させた植物体を得ることが可能となる。また、生成される香り成分の元になり、抗喘息作用等を有するチオスルフィネート化合物の生成量が増大した、食味品質が高く、生理活性が期待される成分量が多い植物体を得ることが可能となる。
また、本発明によれば、非形質転換の対照植物より催涙成分生成酵素の活性量が約50%以下あるいは約10%以下に抑制された植物を作出することが可能となる。また、非形質転換の対照植物より催涙成分生成酵素のタンパク質量が約50%以下あるいは約15%以下に抑制された植物を作出することが可能となる。さらに、催涙成分生成酵素遺伝子の発現を抑制するレベルを変えて、好ましい催涙成分生成酵素の活性量をもつ植物を作出することが可能となる。また、上記の各性能を有するアリウム植物を供することが可能となる。
【配列表】
Figure 2003074707
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【図面の簡単な説明】
図1は、催涙成分生成酵素遺伝子とその調節領域、ならびにその中間のDNA配列の配向の説明である。
図2は、参考例のチオスルフィネートの定量の結果を示す。
図3は、pPCV91のマップである。
図4は、形質転換再分化植物のLFS活性量を示す。
図5は、形質転換再分化植物のLFSタンパク質量を示す。

Claims (8)

  1. 転写が可能になるように連結された調節配列と、
    以下の配列の中から選択される一つ以上の配列とを含有するDNA:
    (a)1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
    (b)該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAをもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
    (c)該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAと、該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAをもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列。
  2. 転写が可能になるように連結された調節配列と、
    一つ又は複数のエンドヌクレアーゼ活性を有するRNAを生産する配列と、
    以下の配列の中から選択される一つ以上の配列とを含有するDNA:
    (a)1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA又はその配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列;
    (b)該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAをもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列;
    (c)該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAと、該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAをもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのアンチセンス配向の配列。
  3. 以下の配列の中から選択される一つ以上の配列を含むDNAに対応するRNAに対してハイブリダイズし得る塩基配列を有するRNA:
    (a)1−プロペニルスルフェン酸を催涙成分に変換する作用を示す催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNA又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
    (b)該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAをもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列又はその調節配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列;
    (c)該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAと、該催涙成分生成酵素の蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAをもとに決定した植物ゲノムDNA中に存在する該DNAの調節配列との間に存在するDNA又はその配列の一部のいずれかのセンス配向の配列、アンチセンス配向の配列又はその両方の配向を含む配列。
  4. 請求の範囲第1項又は第2項に記載のDNAを含有するベクター。
  5. 請求の範囲第1項又は第2項に記載のDNAを植物に導入し形質転換する方法。
  6. 請求の範囲第1項又は第2項に記載のDNA又は請求の範囲第4項に記載のベクターにより形質転換された植物。
  7. 非形質転換の対照植物より催涙成分量が少ない請求の範囲第6項に記載の植物。
  8. 植物がアリウムに属する植物である請求の範囲第6項又は第7項に記載の植物。
JP2003573156A 2002-03-01 2003-02-28 催涙成分生成酵素遺伝子の発現抑制用dna及びベクター、それらを用いた催涙成分生成酵素遺伝子の発現の抑制方法及び催涙成分生成酵素遺伝子の発現が抑制された植物 Pending JPWO2003074707A1 (ja)

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