JP2005006599A - 植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’で表される塩基配列、又はそれと相同性を有し、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有する塩基配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチド単離物、それからなるシスエレメント、及びそれを含むプロモーターなどに関する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメント、及びそれを含有してなるプロモーターに関する。より詳細には、本発明は、5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’で表される塩基配列、又はそれと相同性を有し、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド単離物、それからなる高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメント、それを含有してなるプロモーター、並びにそれを用いた植物の形質転換方法、及びその植物体に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球上に広く存在する石灰質土壌においては、高いpHのために鉄をはじめとする徴量元素の溶解度が低いため、植物はクロロシス症状を起こすことが多い。これは実際の耕地において植物の成長を阻害し、収量を低下させる主要な原因となっている。このような環境に適応するために、高等植物は少なくとも2種類の鉄の獲得機構を持っている。双子葉植物およびイネ科以外の単子葉植物が持つストラテージ(Strategy)−I機構では、鉄欠乏に応答して根の吸収圏内へプロトンの放出を増加させ、根の細胞膜上の三価鉄還元酵素の活性を誘導し、生成した二価鉄を根の細胞膜上にある二価鉄トランスポーターにより吸収する。一方、イネ科植物ではストラテージ(strategy)−II機構により鉄を吸収する。イネ科植物は鉄要求性が高まると、根において独自の三価鉄キレーターであるムギネ酸類(MAs)を合成し、根の吸収圏へ分泌する。分泌されたムギネ酸類は土壌中の不溶態の鉄をキレート化し、「三価鉄‐ムギネ酸類」錯体として根の細胞膜上にあるトランスポーターにより再吸収される。現在までのところ、7種類のムギネ酸類が同定され、それらの生合成経路が解明されてきている。
近年になってストラテージ(Strategy)−I、ストラテージ(Strategy)−IIの双方において、鉄獲得機構に関与するタンパク質をコードする遺伝子の多くが単離された。
【0003】
ストラテージ(Strategy)−IIに包含される多数の遺伝子はオオムギから単離されている。例えば、S−アデノシルメチオニン合成遺伝子(HvSAMS)、ニコチアナミン合成遺伝子(HvNAS)、ニコチアナミンアミノ基転移酵素遺伝子(HvNAAT)などが次々と単離されてきた。さらに、ムギネ酸類(MAs)のC−3位及びC−2’位をそれぞれヒドロキシル化するジオキシゲナーゼ類をコードする遺伝子であるIDS2及びIDS3がディファレンシャルハイブリダイゼーション法によりそれぞれ単離された(非特許文献1及び2参照)。
これらの遺伝子はすべて、鉄の欠乏により発現が誘導され、その発現は根に特異的であることが判明している。
【0004】
さらに、近年のマイクロアレイ技術の進歩により、鉄欠乏によって誘導される多数の遺伝子を直ちに検索することが可能になった。例えば、ムギネ酸類(MAs)の合成に関与している多くの遺伝子が大麦の根において鉄欠乏で誘導されることが確認された(非特許文献3参照)。シロイヌナズナにおいて、鉄欠乏により地上部では好気的呼吸が、根では嫌気的呼吸が促進されることが示された。
(非特許文献4参照)。また、トマトの根において、シグナル系やトランスポーターの遺伝子が、リン、カリウム、及び鉄の欠乏により同様に誘導されることが示された(非特許文献5参照)。
しかし、このように多くの遺伝子が単離されているにもかかわらず、鉄欠乏に応答した遺伝子の発現制御のメカニズムについてはほとんど明らかになっていない。とりわけ、鉄欠乏誘導性遺伝子のプロモーター領域に存在する鉄欠乏応答性のエレメントについては、未だに報告例がない。
鉄欠乏で誘導される大麦の遺伝子における発現のメカニズムを解明するために、本発明者らは、これらの遺伝子を他の種の植物に導入して、その発現を解析してきた。大麦のHvNAS1、IDS3、又はHvNAAT−AとHvNAAT−Bのセットからなるゲノム遺伝子をイネに導入したところ、鉄欠乏によりコード遺伝子の発現が誘導されることが明らかになった。(非特許文献6、1及び7参照)。さらに、大麦のHvNAS1又はIDS2遺伝子のプロモーターにGUS遺伝子を結合させた遺伝子でタバコを形質転換し、形質転換されたタバコの根において鉄欠乏に応答してGUS活性が強く発現することを示してきた(非特許文献8及び9参照)。このことは、植物における2つの異なる鉄の獲得機構、即ち、ストラテージ(strategy)−II機構(大麦)及びストラテージ(strategy)−I機構(タバコ)においてこれらの遺伝子の発現の制御が保存されていることを示している。
【0005】
IDS2のプロモーターは野生型の大麦の根においてマンガン及び亜鉛の欠乏によっても発現を誘導するが、形質転換タバコにおいてはマンガン及び亜鉛の欠乏に対する応答は見られなかった。このことは、大麦とタバコでは、マンガンや亜鉛の欠乏に対する内在性のトランス活性化因子に何らかの相違があることを示唆している。また、HvNAS1及びIDS2のプロモーターの5’欠失解析により、翻訳開始点からIDS2では−272位、HvNAS1では−348位までの領域に、鉄欠乏誘導性及び根特異的な発現性を与える主要なシスエレメントが存在していることが示された(非特許文献8及び9参照)。
このように、鉄欠乏に応答するシスエレメントおよびトランス活性化因子については植物間でよく保存されており、このシスエレメントを特定することができれば、植物における鉄欠乏に対する応答性や根特異的な発現性を制御できることになる。
【0006】
また、近年の植物遺伝子工学技術の発展に伴い、病害虫抵抗性や除草剤耐性などの有用形質を備えた植物品種等を育成することが可能となってきた。目的の形質の発現に関与する構造遺伝子を、植物で発現可能なプロモーターに結合してキメラ遺伝子ベクターを構築し、それを植物に導入することにより、その目的の形質の発現を促進又は抑制するのである。現在までに、この手法を応用して、例えば、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringensis )由来の殺虫性BT毒素遺伝子を導入した病害虫抵抗性植物や、トマトの果実の過熟に関するポリガラクツロナーゼ遺伝子アンチセンスを導入した日持ちの良好なトマト等が実用化されている。
これらの植物に導入される構造遺伝子のプロモーターとしては、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35Sプロモーターが広く用いられている。このCaMV35Sプロモーターは、強力に構造遺伝子の転写を促進する働きを有する。さらに、CaMV35Sプロモーターによる転写促進は非特異的であって、植物の生長ステージ、植物の置かれた環境、発現部位を問わず、植物体の全身で、その制御下におかれた構造遺伝子の転写を恒常的に促進する。従って産業上有用である物質を効率的に生産を行う目的や、植物体の代謝系に大きな影響を与えない遺伝子の発現を行う目的で有用である。
【0007】
しかし、遺伝子の種類によっては、その過剰な発現から遺伝子導入細胞の代謝異常、植物組織や植物自体の奇形・生育障害を引き起こすことがあった。植物育種の面からは、恒常的に発現を促進させることは必ずしも好ましいことではなく、植物の置かれた環境に対応して、必要な量を、必要な部位で選択的に発現することが求められている。
したがって、遺伝子の発現を所望な条件に対応して、発現量、発現部位を制御することが可能なプロモーターは、上記の問題を回避し植物育種の面で非常に有用である。さらに、このような発現を制御することができるプロモーターを組み合わせることにより、その下流に存在する遺伝子群の発現を調節し、制御することができることになる。
しかし、ゲノム上に存在しているプロモーター領域と考えられる領域はかなりの長さを有するものであり、ゲノムのプロモーター領域をそのまま使用することは技術的にも困難な問題があった。
【0008】
【非特許文献1】
Kobayashi,T.,Nakanishi,H., et al., (2001),Planta, 212,864−871
【非特許文献2】
Nakanishi,H.,Yamaguchi,H., et al., (2000),Plant Mol. Biol., 44, 199−207
【非特許文献3】
Negishi,T.,Nakanishi,H., et al.,(2002),Plant J., 30,83−94
【非特許文献4】
Thimm,O.,Essigmann,B., et al.,(2001),Plant Physiol. 127, 1030−1043
【非特許文献5】
Wang,Y.H.,Garvin,D.F. et al.,(2002),Plant Physiol. 130, 1361−1370
【非特許文献6】
Higuchi,K.,Watanabe,S., et al.,(2001),Plant J., 25, 159−167
【非特許文献7】
Takahashi,M.,Nakanishi,H., et al.,(2001),Nature Biotech., 19, 466−469
【非特許文献8】
Higuchi,K.,Tani,M., (2001), Biosci. Biotechnol. Biochem., 65, 1692−1696
【非特許文献9】
Yoshihara,T.,Kobayashi,T., et al., (2003), Plant Biotech., 20, 33−41
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、植物体がおかれた環境に応答して、組織特異的、環境ストレスに特異的に遺伝子の発現を制御し得るシスエレメント、より詳細には高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントを提供するものである。また、本発明は、高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するための高等植物の形質転換方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オオムギIDS2遺伝子のプロモーター領域に存在する、鉄欠乏応答性・根特異的発現を付与するシスエレメントを同定した。オオムギIDS2遺伝子(Iron deficiency specific clone no.2)は、鉄欠乏応答性遺伝子としてオオムギ根から単離されたものであり、ムギネ酸類のC‐3位を水酸化するジオキシゲナーゼをコードしている。このIDS2遺伝子のプロモーター領域をβ−グルクロニダーゼ(β‐glucuronidase(以下、GUS と表記する。))遺伝子の上流に連結してタバコに導入したところ、この形質転換タバコにおいてもIDS2プロモーターがオオムギと同様に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与することが明らかになった。また、‐1696/‐47配列(翻訳開始点を+1として数えた。IDS2プロモーターについては、以下同様である。)についての 5’‐欠失解析により、‐272/‐47配列がその応答性を付与するのに十分であることを確認した。本発明は、形質転換タバコの系を用いて、IDS2プロモーターの 3’‐欠失解析およびリンカースキャン解析を行い、協同的に作用する2つのシスエレメントを同定した。本発明は、高等植物の徴量要素欠乏に応答するシスエレメントの同定についての最初のものである。
【0011】
本発明は、一般式(I)、
5’−nnnvdgcdwg yhbhhhdv−3’ (I)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、wはa又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示す。)
で表される塩基配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチド単離物に関する。また、本発明は、5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’で表される塩基配列、又はそれと相同性を有し、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド単離物に関する。
また、本発明は、前記した本発明のオリゴヌクレオチド単離物からなる高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントに関する。さらに、本発明は、前記した本発明のシスエレメントを含有してなる高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するためのプロモーター、並びにこれを用いて高等植物を形質転換する方法、及び当該方法で形質転換された植物に関する。
【0012】
本発明者らは、IDS2遺伝子のプロモーターの‐1696/‐47配列について、8種類の5’−欠失断片についての活性を解析してきた(非特許文献9参照)。このプロモーターの機能をさらに解析するために、IDS2遺伝子のプロモーターの‐1696/‐91配列について、各種の3’‐欠失断片を新規に作製した。なお、3’‐欠失の起点(‐91)は、TATAボックスと考えられる配列の3’‐側の直近である。図1に作製した8種類の3’‐欠失断片(−1696/‐91,‐1696/‐273,‐1696/492,‐1696/‐686,‐1696/‐866,‐1696/‐1129,‐1696/‐1274,‐1696/‐1541)を示す。各々の3’欠失断片をカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの、転写開始点を+1として数えて、−46/+8部位の領域(以下、35SΔ46と表記する)−GUSに連結してタバコに導入し、T1世代の形質転換体における鉄欠乏応答性をGUS活性として検出した。鉄十分条件(+Fe)または鉄欠乏条件(‐Fe)における 30日間の生育の後、GUS 活性の測定を行った。対照としてIDS2遺伝子プロモーターを有さないもの(0−46)、及び野生型(WT)を用いた。
各クローンにつき独立の10−13系統を解析し(野生型については7系統)、図1にGUS活性の平均値(棒グラフ)と標準誤差(棒線)を示した。根におけるGUS活性を図1の左側のグラフに、葉におけるGUS活性を図1の右側のグラフにそれぞれ示す。各グラフ中の白抜きは鉄十分条件(+Fe)の場合を示し、黒抜きは鉄欠乏条件(‐Fe)の場合を示す。各グラフの横軸はGUS活性を示し、単位はpmol MU/分/mgタンパク質である。各グラフの右側の数値は、鉄十分条件(+Fe)に対する鉄欠乏条件(‐Fe)でのGUS活性の相対比を示し、アスタリスク(*又は**)は有意差(**はp<0.01、*はp<0.05)があることを示す。
【0013】
IDS2プロモーター断片を持たない対照区であるクローン0‐46では、根においても葉においても非形質転換体とほぼ同等の活性しか検出されなかったが、根において弱いながらも有意な鉄欠乏誘導性が認められた。最長のプロモーター断片を持つクローン1‐46は、根において、鉄欠乏条件で鉄十分条件に対して196倍ものGUS活性を誘導した。それに対して、−91から‐272までの配列を持たない7種のクローン2‐46、3‐46、4‐46、5‐46、6‐46、7‐46、及び8‐46は、いずれも鉄欠乏により活性を全く誘導しなかったことから、‐272/‐91配列がIDS2プロモーターのタバコ根における鉄欠乏誘導性発現に必須であることが示された。葉においても、いくつかのクローンが若干の活性を示したが、3’‐欠失の明確な効果は認められなかった。
【0014】
次に、IDS2遺伝子プロモーターの‐272/‐91の配列について、さらに詳細に検討した。図2に示した4種類の3’‐欠失断片(‐272/‐91,‐272/‐136,‐272/‐181,‐272/‐227)を作製し、各々を35S△46‐GUS またはカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの、転写開始点を+1として数えて−90/+8部位の領域(以下、35SΔ90と表記する)−GUS に連結した。35S△46がTATA ボックスを含む基本転写装置のみを持つのに対し、35S△90は形質転換タバコに導入した時、主に根での発現を付与する配列を含む。図1の場合と同様にコンストラクトをタバコに導入し、T1 世代での鉄欠乏応答性を検出した。根におけるGUS活性を図2の左側のグラフに、葉におけるGUS活性を図2の右側のグラフに示す。図2の各グラフは図1のグラフの説明と同様である。
この結果、35S△46に連結した場合、‐272/‐91配列は鉄欠乏の根においてのみ強い発現を付与した(クローン11‐46)。鉄欠乏の根での正味のGUS活性値は、5’‐側が‐1696まで延びたクローン1‐46(図1参照)に対しておよそ7分の1であったが.鉄十分条件の根でのGUS活性値に対する比(誘導率)は両クローンともほぼ200倍と同等であった。クローン12‐46での鉄欠乏の根でのGUS活性はクローン11‐46での活性の約半分であったが、その差は統計的に有意ではなかった。さらに‐181までの3’‐欠失を施したクローン13‐46においては、鉄欠乏根での発現がクローン12‐46に対して劇的に低下したが、クローン0‐46に対しては有意に高いGUS活性を保持しており、弱い鉄欠乏誘導性を示した。クローン14‐46での発現はクローン13‐46とほぼ同等であったが,鉄欠乏の根でのGUS活性はクローン046に対して有意な差がみられなかった。クローン11‐46、12‐46、13‐46、14‐46とも、葉および鉄十分条件の根においては、クローン0‐46に対して有意な発現誘導はみられなかった。
【0015】
一方、35S△90 を導入したクローン0−90は、根において鉄十分条件、鉄欠乏条件の双方において明確なGUS発現を示したほか、鉄欠乏条件の葉でも野生型に対して有意に高いGUS発現を示した。しかし、鉄欠乏による発現誘導は認められなかった。IDS2プロモーターの3’‐欠失断片を35S△90に連結したクローン11‐90、12‐90、13‐90および14‐90では、根でのGUS活性は鉄十分条件においてはクローン0‐90とほぼ同等であったのに対し、鉄欠乏条件において有意に高い活性を持ち、明確な鉄欠乏誘導性を示した。3’‐欠失による顕著な効果は認められなかったが、‐136から‐181までの3’‐欠失により、鉄欠乏根でのGUS活性および誘導率が、有意ではないながらも減少していた。また、鉄欠乏条件の葉においてもクローン11‐90、12‐90、13‐90および14‐90は基底レベルを超えるGUS活性を示し、クローン11‐90、12‐90および13‐90では、クローン0−90に対しても有意に高い GUS 活性を示した。葉においてクローン11‐90 および14‐90は鉄欠乏誘導性を示したがクローン12‐90および13‐90は鉄欠乏誘導性を示さなかった。
【0016】
以上の結果から、IDS2プロモーターの‐272/‐91配列は2つの鉄欠乏応答性領域を持つことが明らかになった。‐180/‐136領域は35S△46に連結した場合に強い鉄欠乏応答性を付与するのに必須な領域と考えられ、‐272/‐227 領域は 35S△46に連結した場合には明確な機能を持たないが35S△90に連結することにより明確な鉄欠乏応答性を付与する領域と考えられた。
【0017】
IDS2プロモーターの‐180/‐136領域内に存在が予測されたシスエレメントの部位を特定するために、リンカースキャン解析を行った。解析のために新たに構築して用いたIDS2遺伝子のプロモーター由来の配列を図3(a)に示す。各コンストラクトを35S△46に連結したプロモーター‐GUS部位を図3(b)の左側に示す。
変異を導入しない元々の‐272/‐136配列(12−46)の−182/−181の配列のみを変異させた配列(N1−46)を作製した。さらに、‐180/‐136領域内に連続した9塩基の変異を導入した5種類の配列を構築し、各々を‐272/‐181配列の下流につないだ(M1‐46、M2‐46、M3‐46、M4‐46、及びM5‐46)。変異を導入しない元々の配列の−272/−181を欠失させた‐180/‐136配列(N3‐46)、及びそれを−228/−227配列のみを変異させた‐272/‐227 配列の下流につないだもの(N2‐46)も構築した。IDS2プロモーターの‐272/‐181配列および‐272/‐227配列の3’‐端には、‐180/‐136領域と連結するために2塩基の置換と1塩基の挿入を施した。
構築した各断片を、それぞれ35SΔ46‐GUSに連結し、タバコに導入した。T1世代で7日間の鉄欠乏処理による応答性を検出した。根におけるGUS活性を図3(b)の右側のグラフに示す。クローンN1‐46での鉄欠乏応答性はクローン12‐46と同等であったことから、‐182/‐181に施した変異による影響がないことが確認された。‐180/‐154の間に施した3種の変異はいずれも鉄欠乏の応答性を変化させなかった(クローンM1‐46、M2‐46及びM3‐46)。これと対照的に、‐153/‐136の間に変異を施した2種の変異体は、鉄欠乏の根での発現が劇的に低下した(クローンM4‐46及びM5‐46)。このことから、‐180/‐136領域内の鉄欠乏応答性シスエレメントは‐153/‐136に存在することが明らかになった。‐272/‐136配列中の‐226/‐181を欠失させても鉄欠乏応答性に変化が見られなかった(クローンN2‐46)のに対し、‐272/‐181配列全体を欠失させると根での発現および鉄欠乏の応答性は完全に失われた(クローンN3‐46)。また、別の実験において−180/−136にクローンM1‐46、M2‐46、M3‐46、M4‐46、及びM5‐46の配列を持つものから‐272/‐181配列を欠失させてタバコに導入した場合にも、発現は全く誘導されなかった。
【0018】
これらのことから、少なくとも35SΔ46に連結した場合には、‐153/‐136の間のシスエレメントが機能するためには、上流の‐272/‐227の領域内に存在するシスエレメントが必須であることが示された。なお、図3に示したクローンはいずれも葉においては明確な発現を示さなかった。
【0019】
次に、−272/−227領域内に存在が予測されたシスエレメントの部位を、同様にリンカースキャン解析により特定した。解析のために新たに構築して用いたIDS2遺伝子のプロモーター由来の配列を図4(a)に示す。各コンストラクトを35SΔ46に連結したプロモーター−GUS部位を図4(b)の左側に示す。
−272/−227領域内に連続した9ないし10塩基の変異を導入した5種類の配列を構築し、各々を−180/−136配列の上流につないだ(M21−46、M22−46、M23−46、M24−46およびM25−46)。構築した各断片を35SΔ46−GUSに連結し、タバコに導入した。T1世代で7日間の鉄欠乏処理による応答性を検出し、連結部以外に変異を導入しないクローンN2−46における鉄欠乏誘導性と比較した。根におけるGUS活性を図4(b)の右側のグラフに示す。−272/−263または−235/−227に施した変異は鉄欠乏誘導性を変化させなかった(クローンM21−46、M25−46)。これと対照的に、−262/−236間に施した3種の変異により、鉄欠乏根での発現はほとんど見られなくなった(クローン M22−46、M23−46およびM24−46)。このことから、−272/227領域内の鉄欠乏誘導性シス要素は−262/−236に存在することが明らかになった。なお、図4に示したクローンはいずれも葉においては明確な発現を示さなかった。
【0020】
以上の結果から、IDS2プロモーターの−272/−91配列に存在する2つの鉄欠乏誘導性シス要素は、−153/−136および−262/−236に存在し、少なくとも35SΔ46に連結した場合には、この2つのシス要素が共存することが、強い鉄欠乏誘導性および根特異的発現を付与するために必須であることが示された。
【0021】
図1,2,3及び4に示した各クローンによる発現の組織特異性を、組織化学染色により確認した。結果を図面に代わるカラー写真で図5に示す。図5は、IDS2プロモーター断片を35S△46‐GUS(図5のa,b,c)、または35S△90‐GUS(図5のd)に連結したコンストラクトを導入した形質転換タバコの根における代表的なGUS染色のパターンを示す。T1世代の形質転換体を鉄欠乏条件で(a),(b),(c)については、6日間、(d)については20日間生育させた後、組織化学染色を行った結果を示すものである。図5の各写真のスケールバーは100μmである。図5の(a)〜(d)は、それぞれ
(a)クローン1‐46の鉄欠乏条件の根の横断切片、
(b)(a)の拡大図(Coは皮層、Enは内皮、Peは内鞘、Phは篩部、Xyは木部)、
(c)クローン1‐46の鉄欠乏条件の根の拡大像、
(d)クローン12‐90の鉄欠乏条件の根の横断切片、
のカラー写真である。
【0022】
IDS2遺伝子プロモーターの3’‐欠失/変異断片を35S△46に連結したクローンのうち、鉄欠乏応答性を持つものは、鉄欠乏根においていずれも同様の組織特異性を示した(図5のa‐c参照)。主に根の内皮細胞、内鞘細胞、および皮層細胞において、強い発現がみられた(図5のa,b参照)。表皮細胞および中心柱にも弱い発現がみられた(図5a,b参照)。発現は典型的な鉄欠乏症状を示す根端近くで特に強かったが、根端そのものでは発現していないことが多かった(図5のc参照)。これに加えて、別に行った実験結果によれば、系統によっては表皮細胞および根端において強い発現がみられた。表皮細胞と根端で強い発現がみられた系統の割合は、最長のプロモーター断片を持つクローン1‐46で際立って高かったほかは、クローン間に明確な差は認められなかった。別に行った実験結果によれば、クローン1‐46では、鉄十分条件の根の皮層細胞、および鉄欠乏条件の葉脈においても発現がみられたが、その他の3’‐欠失/変異クローンでは、葉または鉄欠乏根での発現はみられなかった。
一方、35S△90に連結した3’‐欠失断片を持つクローンでは、鉄十分条件、鉄欠乏条件のいずれにおいても発現を示したが、鉄欠乏条件における発現は鉄十分条件よりもずっと強かった。鉄欠乏条件においては、ほぼ根全体で強い発現がみられ、特に表皮細胞、内皮細胞および内鞘細胞(図5のd参照)において顕著な発現がみられたが、根端近くは発現していないこともあった。
別の実験結果によれば、鉄十分条件の根では、主に内鞘細胞、内皮細胞、皮層細胞および中心柱に発現がみられたが、表皮細胞には発現がみられなかった。
また、別の実験結果によれば、鉄十分条件、鉄欠乏条件のいずれにおいても、葉脈に弱い発現がみられることがあった。3’‐欠失断片の長さによってこれらの発現パターンに差は認められなかった。IDS2遺伝子のプロモーターをもたないクローン0−90での発現パターンは、鉄十分条件、鉄欠乏条件のいずれにおいても、35S△90に連結したIDS2遺伝子のプロモーター断片を持つクローンの鉄十分条件における発現パターンと同様であったことも別の実験により示された。
これらの結果から、IDS2遺伝子プロモーター断片が付与する鉄欠乏応答の組織特異性は、自らのTATAボックスを持つ5’‐欠失断片、35S△46に連結した3’‐欠失/変異断片、35S△90に連結した3’‐欠失断片のそれぞれで、異なっていることが示された。また、IDS2プロモーターと35SΔ90とを連結させることにより、双方に含まれるシスエレメントが協同的に作用して鉄欠乏条件下において広範囲の組織での発現を誘導するものと考えられる。
【0023】
以上において、オオムギIDS2遺伝子のプロモーターの鉄欠乏応答性・根特異的発現を解析してきた。一過性発現系では、植物の組織特異的発現や栄養欠乏に対する応答性を検出することは困難であるので、より正確で詳細な解析が可能である形質転換タバコを用いた系を採用した。これまでに報告されている5’‐欠失解析により、オオムギのIDS2プロモーターがタバコにおいても鉄欠乏応答性を持つこと、また、‐272/‐47配列だけでもその応答性が保持されることが確認された(非特許文献9参照)。前記してきた‐1696/‐91配列についての3’‐欠失解析により、‐272/‐91配列がタバコの根における鉄欠乏の応答性に十分なだけでなく必要であることが確認された。5’‐欠失解析で‐1696/‐47から‐272/‐47への欠失が鉄欠乏応答性を弱めたことと合わせて考えると、‐1696 から‐272 までの上流配列は‐272/‐91配列が存在する時にのみ、根での鉄欠乏応答性に寄与するものと推測される。
‐272/‐91配列についてのさらなる解析により、鉄欠乏に応答して根での発現を誘導する2つの新規なシスエレメントを同定することができた。即ち、35S△46に連結した場合、‐136から‐181への3’‐欠失により鉄欠乏応答性が顕著に低下した(図2のクローン12−46及び13−46参照)。このことから,‐180/‐136 領域内にシスエレメントの存在が強く示された。このシスエレメントを今後「IDE1」(Iron deficiency responsive element 1 の略)と呼ぶ。35S△90に連結した場合には、IDE1を欠失させても顕著な鉄欠乏の誘導性の低下はみられず、‐272/‐227領域のみでも明確な鉄欠乏応答性を付与した(図2参照)。このことから、−272/‐227領域にも別のシスエレメントが存在することが示された。このシスエレメントを今後「IDE2」(Iron geficiency responsive glement 2の略)と呼ぶ。35S△46を用いたリンカースキャン解析により、「IDE1」が‐153/‐136 に存在することが示された(図3参照)。さらに「IDE2」が−262/−236に存在することが示された(図4参照)。
【0024】
図6は、IDE1とIDE2の協同的な機能についてまとめたものである。図6の楕円はそれぞれのシスエレメントに結合すると考えられるトランス因子を表す。実線と矢印は鉄欠乏に応答した根での発現誘導の状況を模式的に示したものであり、線の太さは誘導性の強さに対応している。破線は35S△90による根での構成的発現を示す。網掛け部位は−263/−254,−253/−245,−244/−236,‐153/‐145または‐145/‐136 の変異を示す。これらの変異はいずれも、図3および図4に示したように、鉄欠乏応答性を顕著に低下させた。
【0025】
最小プロモーターとして35S△46を用いた場合には、IDE1の機能はIDE2の欠失または変異により失われた(図3のクローンN3−46、並びに図4のクローンM22−46,M23−46およびM24−46参照)。一方で、IDE2の機能はIDE1の欠失または変異によりきわめて弱くなった(図2のクローン13‐46、並びに図3のM4‐46およびM5‐46)。これらのことから、IDE1とIDE2が協同的に作用して、それぞれに結合するトランス因子が下流の基本転写装置に働きかけることにより、鉄欠乏応答性を付与しているものと推察される。この鉄欠乏応答性発現は、35S△46を用いた‐272/‐91配列の欠失/変異解析において常に根でのみ付与され、一定の組織特異性を保持していた(図5のa,b,及びc参照)。IDE1とIDE2の間の距離による効果は明瞭ではなかった。なぜなら‐226/‐181配列の内部欠失により鉄欠乏応答性に変化が見られなかったからである(図3 のクローンN2‐46参照)。35S△90に連結した場合には、IDE2を含む−272/−227領域による鉄欠乏の応答性はIDE1の存在下(図2のクローン11−90及び12‐90参照)のみならず、IDE1が欠失した配列(図2のクローン13−90及び14‐90参照)でも明確であった。IDE1が、IDE2の非存在下で35SΔ90に連結された場合にも、鉄欠乏誘導性が付与されるかもしれない。
【0026】
2つ以上のシスエレメントが協同的に作用して発現を制御する例は、他の植物プロモーターでもしばしば見出されている。例えば、ルビスコ・スモールサブユニット遺伝子の光応答性・緑色組織特異的発現、カルコンシンターゼ遺伝子の花における発現、アルファアミラーゼ遺伝子の発現の糖による抑制などである。
IDS2遺伝子のプロモーターによる発現の組織特異性が、35S△90に連結することにより弱まったことは注目に値する。‐272/‐91配列またはその3’‐欠失配列を持つクローンは、鉄欠乏に応答して、表皮細胞、内皮細胞および内鞘細胞を含む根のほぼ全体で発現を増大させた(図5のd参照)。これらのクローンは鉄欠乏条件の葉においても、発現を示し、そのうちクローン11‐90および14‐90は鉄欠乏の応答性を示した(図2参照)。これらの発現パターンはIDS2プロモーター断片のみでも35SΔ90のみでも付与されなかったものであり、両者の協同的相互作用を示唆している。
カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの(転写開始点を+1として)‐90/‐47部位の領域には、主に根での発現を付与するas−lと呼ばれるシス配列が存在し、この配列は他のシスエレメントとの組み合わせによりさまざまな協同的な相互作用を持つことが知られている。この協同的な相互作用には、光や病害応答性などの刺激に対する応答性の付与のほか、単一のシスエレメントによる発現パターンとは異なるさまざまな組織特異的な発現が含まれている。本発明の場合も、IDS2プロモーター内のIDE1、IDE2、あるいはまた他の未知のシスエレメントがas−l配列と複雑な相互作用を示したものと推測される。
【0027】
これまでに、鉄栄養状態に応答して遺伝子発現を制御するいくつかのシスエレメントが報告されている。鉄欠乏条件において発現が誘導される鉄吸収関連の遺伝子のプロモーター部位にみられるシスエレメントとしては、グラム陰性細菌のFur ボックス、酵母の AFT1 結合配列、脊椎動物のIRE などが知られており、このうちIRE は、転写後の制御によって、鉄吸収関連の遺伝子の発現を鉄欠乏条件において促進するとともに、同条件下でフェリチン遺伝子の発現を抑制する。
一方高等植物では、フェリチン遺伝子の鉄による発現制御に関わるシスエレメントが一過性発現系を用いた解析で同定された。ダイズのフェリチン遺伝子プロモーター内の FRE と呼ばれる 86塩基の領域、およびトウモロコシとシロイヌナズナのフェリチン遺伝子プロモーター内に存在するIDRS と呼ばれる 14塩基の配列が、それぞれ転写レベルにおいて鉄の投与により発現抑制を解除する。しかしながら、高等植物において鉄欠乏に応答するシスエレメントについては、これまでに同定が報告されておらず、本発明で同定した二つのシスエレメントが初めての報告例である。
【0028】
さらに、IDE1またはIDE2に相同性のある配列が、他の鉄欠乏応答性遺伝子プロモーターに存在するかどうかを調査したところ、多くの鉄欠乏応答性遺伝子プロモーターがIDE1に近い配列を持つことが明らかになった。図7にその結果を一覧表として示す。図7はIDE1とその3’−側の隣接4塩基(IDE1+)と、他の鉄欠乏誘導性プロモーターおよびIDE2との配列を比較したものである。IDE1およびIDE2のかぎ括弧で囲った部位は、前記したリンカースキャン解析で変異を導入した部位を示す。IDE1内のパリンドローム配列を四角で囲い、中心位置を黒抜きの三角で示す。IDE1+と一致する配列を黒い領域に白文字で示す。翻訳開始点からの距離を括弧内に示す。コンセンサス配列(Consensus)のうち、特に保存性が高かった塩基を大文字に下線で示す。図7のHvnaat−AおよびHvnaat−Bは、それぞれオオムギのニコチアナミンアミノ基転移酵素遺伝子、HvNAS1はオオムギのニコチアナミン合成酵素遺伝子、OsNAS1およびのOsNAS2はイネのニコチアナミン合成酵素遺伝子、HvIDS3はオオムギのムギネ酸合成酵素遺伝子、OsIRT1はイネの二価鉄トランスポーター遺伝子、AtIRT1はシロイヌナズナの二価鉄トランスポーター遺伝子、AtFRO2はシロイヌナズナの三価鉄キレート還元酵素遺伝子、AtNAS1はシロイヌナズナのニコチアナミン合成酵素遺伝子をそれぞれ示す。IDE2の配列の下の破線は、既知の植物のシスエレメントとの相同性を示したものである。TCACはタバコg10プロモーターのGTGAモチーフ。CTGTCACは病原関連の遺伝子プロモーターにみられるジャガイモサイレンシングエレメント結合因子の結合サイト(YTGTC(A/T)C)を示す。
【0029】
IDE1とその3’−側に隣接する4塩基に極めて相同性の高い配列が、Hvnaat−AおよびHvnaat−Bプロモーターに存在していた。このことから、IDE1の3’−側に隣接する配列は、3’‐欠失解析においては有意な影響はみられなかったものの(図2のクローン11‐46及び12‐46)、何らかの機能を持つ可能性が考えられる。IDE1に相同性のある配列は、HvNAS1、OsNAS1、OsNAS2、HvIDS3の各プロモーター内にも存在していた。このことは、現在までにオオムギおよびイネで同定されている全てのムギネ酸類生合成関連の鉄欠乏応答性遺伝子プロモーターがIDE1に相同性のある配列を持つことを示している。これらの鉄吸収関連の遺伝子は、同種のシスエレメントによって協同的に制御されているのかもしれない。HvNAS1プロモーターの‐190/‐207および‐309/‐297部位に見つかったIDE1との相同配列は、樋口らの文献(非特許文献8参照)に記載の5’‐欠失解析により鉄欠乏応答性のシスエレメントの存在が予測された‐348/‐171領域に含まれることから、実際に機能するシス配列である可能性が大きいと考えられる。
【0030】
IDE1に相同性のある配列は、シロイヌナズナで知られている鉄欠乏応答性遺伝子プロモーターの多くにも存在していた。そのうちシロイヌナズナのストラテージ−Iによる鉄獲得機構における主要な遺伝子であるAtIRT1およびAtFRO2プロモーターには、IDE1のパリンドローム配列(AAGCATGCTT)の大部分が保存された配列が存在した(図7参照)。このようにストラテージ−Iまたはストラテージ−IIの鉄獲得機構に関与する遺伝子が互いに相同性のあるシス配列を持つ可能性が見出され、そのうえオオムギ(Strategy−II)のIDS2とHvNAS1の各プロモーターがタバコ(Strategy−I)で機能することから、鉄欠乏応答性の遺伝子発現に関わるシス/トランス系のメカニズムの少なくとも一部分が、鉄獲得機構の異なる植物種の間で広く保存されていることが推察される。
これらのことから、本発明において同定したIDE1は、植物における鉄欠乏応答性の普遍的なシスエレメントとしての性質を備えている可能性が考えられる。
また、シロイヌナズナのニコチアナミン合成酵素遺伝子の一つであるAtNAS1のプロモーターもIDE1に相同性のある配列を持っていた。
【0031】
IDS2プロモーター自身の上流領域にも、IDE1と相同性のある配列が存在した(−772/−789)。さらに興味深いことに、IDE2もIDE1とその3’−側の隣接4塩基に相同性を持っていた(図7)。IDE2と他の鉄欠乏応答性遺伝子プロモーターとの相同配列を検索したところ、IDE1とIDE2との相同性配列以外の部位では、明確な相同性は見出されなかった。したがって、IDE2 の実際に機能する配列はIDE1と相同性を持つ可能性が考えられる。IDE1とIDE2の組み合わせばかりでなく、IDE1のみ、またはIDE2 のみを重複させた配列も機能を持つかもしれない。
【0032】
本発明者らは、IDE1またはIDE2が、既知のシス配列に相同性を持つかどうかについても調査を行った。IDE1と,それに相同性のある IDE2 の部分配列は、酵母のメタロチオネイン遺伝子の銅応答性トランス因子(ACE1)結合配列(TCY(4−6)GCTG)と相同性を持つ。IDE1またはIDE2は、その他の金属ホメオスタシスや根特異的発現に関与する既知のシスエレメントとの相同性は確認されなかった。また、トマトの鉄シグナル伝達系の異常な変異体であるT3238ferの原因遺伝子(fer)がbHLHの転写因子をコードすることが報告されているが、IDE1またはIDE2は、bHLHのコンセンサス結合配列(CANNTG)も持たない。既知の植物のシスエレメントとの相同性をPLACEデータベース(http://www.dna.affrc.go.jp/htdocs/PLACE)で検索したところ、IDE2は2種のシスエレメント配列を持つことが示された(図7参照)。それらは、タバコのg10プロモーターのGTGAモチーフ(GTGA;花粉での発現に関わると考えられる)、および病原関連の遺伝子プロモーターにみられるジャガイモサイレンシングエレメント結合因子の結合サイト(YTGTC(A/T)C)である。しかしながら、これらの既知のシスエレメント配列が鉄欠乏応答性に関与する可能性を示唆する現象は見つかっていない。
【0033】
高等植物での鉄の代謝制御に関わるメカニズムは、これまでのところほとんどが生理学的知見に限られており、分子機構についてはほとんど未解明のままである。本発明で示された鉄欠乏応答性・根特異的発現を付与するシスエレメントの同定は、鉄欠乏応答性遺伝子を制御する分子メカニズム、さらにはその根底にある鉄の代謝制御メカニズムの解明に向けた強力な手段を提供するものである。同定されたシスエレメントに結合するトランス因子を単離することができれば、鉄欠乏耐性植物の創製に向けての新たなアプローチが可能となる。トランス因子の発現を改変した植物、またはシスエレメントを改変して有用遺伝子を発現させた植物、あるいはその組み合わせにより、これまでに創製された鉄欠乏耐性植物よりもさらに耐性の強まった、あるいはより望ましい特性を持つ植物の創製が可能となるであろう。
このような観点からも、本発明は、高等植物での鉄の代謝制御の分子機構、また鉄欠乏応答性遺伝子を制御する分子メカニズムなどを解明し、鉄欠乏耐性が改善され鉄の代謝が制御された新たな有用な植物を構築して上での基本的な技術課題を解決するものである。
【0034】
前記してきた方法により得られたIDE1の塩基配列及びIDE2の塩基はそれぞれ以下のとおりである。
IDE1 : 5’−atcaagcatg cttcttgc−3’
IDE2 : 5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’
これらの塩基配列を配列表の配列番号1及び2にそれぞれ示す。
本発明は、これら塩基配列又はこれらの配列と相同性を有する、例えば50%以上、好ましくは60%以上、70%以上、80%以上、又は85%〜95%以上の相同性を有する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを提供するものである。
図7に示されているように各種の植物のシスエレメントの塩基配列を考慮して本発明のオリゴヌクレオチドの塩基配列を一般式で表すと次の一般式(I)として表すことができる。
【0035】
5’−nnnvdgcdwg yhbhhhdv−3’ (I)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、
vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、wはa又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示す。)
また、同様にして本発明のオリゴヌクレオチドのより詳細な塩基配列を一般式で表すと次の一般式(II)として表すことができる。
【0036】
5’−nnnvdgcdwg yhbhwhdv−3’ (II)
(式中の記号は前記と同じである。)
さらに、同様にして本発明のオリゴヌクレオチドのさらに詳細な塩基配列を一般式で表すと次の一般式(III)として表すことができる。
【0037】
5’−nnnmwgcrwg ywyywyrv−3’ (III)
(式中の記号は前記と同じであり、rはa又はgを示す。)
本発明のオリゴヌクレオチドは、前記してきた一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列を有するものに限定されるものではなく、鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの活性を有するものであって、前記してきた一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列と相同性を有するものを包含している。前記した一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列は、図7に示される各種の植物における鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの配列の相同性から導入されたものであり、植物が高度に保存している鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントを初めて見出した本発明のシスエレメントの塩基配列をより具体的に塩基配列に示すための指標として創製されたものであり、本発明のシスエレメントの塩基配列が前記一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列のみに限定されるものでないことは当業者には自明のことである。
【0038】
したがって、本発明は、IDS2プロモーターから同定したIDE1又はIDE2である、5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’で表される塩基配列、又はそれと相同性を有し、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド単離物を提供するものである。本発明における「単離物」とは、天然にそのままの状態で存在するオリゴヌクレオチドと区別されるためのものであり、本発明の「単離物」は、天然に存在している遺伝子から単離されてきたもの、及び人工的に合成されたものなどを包含している。
本発明のオリゴヌクレオチド単離物を塩基配列の一般式を用いて示すならば、本発明は、一般式(I)、
5’−nnnvdgcdwg yhbhhhdv−3’ (I)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、wはa又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示す。)
で表される塩基配列、又はそれと80%以上、好ましくは90%以上の相同性を有する塩基配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチド単離物ということであり、より詳細には、本発明は、一般式(I)で表される塩基配列が、次の一般式(II)、
5’−nnnvdgcdwg yhbhwhdv−3’ (II)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、wはa又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示す。)
で表される塩基配列、又はそれと70%以上、好ましくは80以上、より好ましくは90%以上の相同性を有する塩基配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチド単離物であり、さらに詳細には、本発明は、一般式(I)で表される塩基配列が、次の一般式(III)、
5’−nnnmwgcrwg ywyywrv−3’ (III)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示し、rはa又はgを示し、wはa又はtを示す。)
で表される塩基配列、又はそれと60%以上、好ましくは70以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有する塩基配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチド単離物を提供するものである。
本発明のオリゴヌクレオチド単離物としては、IDS2プロモーターから同定されたIDE1やIDE2である、5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’が挙げられるが、これに限定されるものではなく、図7に示されるような各種の植物のプロモーター中に存在しているシスエレメント相当の塩基配列が挙げられる。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチド単離物は、前記した一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で示される18塩基のものに限定されるものではなく、高等植物における鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有するものであって、前記した一般式の部分配列と一致又は相同性を有するものであれば、18塩基より短くてもよいし、またそれ以上の長さを有するものであってもよい。
また、本発明のオリゴヌクレオチド単離物は、その一部に前記した一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で示される塩基配列を有する部分が存在していればよく、したがって、本発明のオリゴヌクレオチド単離物は、シスエレメントの機能を有する塩基配列部分のほかに他の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド部分を有してもよい。さらに、本発明のオリゴヌクレオチド単離物は、前記した一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列の部分を少なくとも2箇所有するものが好ましいが、3箇所以上有するものであってもよい。
本発明のオリゴヌクレオチド単離物は、一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される18塩基のオリゴヌクレオチドのほかに、さらに他の塩基配列を含む50〜1500塩基、50〜1000塩基、50〜800塩基、100〜1000塩基程度のものであってもよい。
【0040】
本発明のシスエレメントは、高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントである。
本発明のシスエレメントは、IDS2プロモーターから同定したIDE1又はIDE2である、5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’で表される塩基配列、又はそれと相同性を有し、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを少なくとも1箇所、好ましくは2箇所以上を含有するものである。また、本発明のシスエレメントは前記した一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列、又はこれらと相同性を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド部分からなるものである。本発明のシスエレメントは少なくとも前記した塩基配列を有していればよく、また、植物によっては、高等植物における鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有するものであって、前記した一般式の部分配列と一致又は相同性を有するものであれば、18塩基より短くてもよいし、またそれ以上の長さを有するものであってもよい。本発明のシスエレメントは、オリゴヌクレオチド中に前記した一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)で表される塩基配列、又はこれらと相同性を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチド部分を少なくとも1箇所、好ましくは2個、又は2個よりも多く有するものである。これらが存在する位置は、遺伝子が発現する植物によっても異なるが、翻訳開始点を+1として−5〜−1000、−50〜−900、好ましくは−100〜−300の間のあたりであるが、特に限定されるものではなく本発明のシスエレメントが導入される植物において当該シスエレメントが十分に機能できる位置であればよい。第2番目のシスエレメントは、第1番目のシスエレメントから上流側に30塩基以上、50塩基以上、好ましくは80塩基以上はなれた位置の導入するのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明のプロモーターは、前記してきた本発明のシスエレメントを含有してなるものであり、高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するためのものである。本発明のプロモーターは、前記してきた本発明のシスエレメント部分を2箇所以上有するものが好ましいが、これに限定されるものではなく高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与又は促進することができる機能を有するものであればよい。
本発明のプロモーターの下流側に発現可能な遺伝子を結合させることができる。このような遺伝子としては、ニコチアナミン合成酵素をコードする遺伝子などの鉄吸収に関連する遺伝子に限定されるものではなく、GFPなどのレポーター遺伝子や有用なタンパク質をコードしている遺伝子などが挙げられる。本発明のプロモーターの下流側に結合されたこれらの遺伝子は、植物が鉄を十分に吸収できる状態であるときは発現せずに、植物が鉄欠乏の環境になったときに特異的に発現し、特に根において発現するものであり、植物の環境を設定することによりその発現を制御することができる。
【0042】
また、本発明は、前記してきた本発明のプロモーターの下流側に発現可能な遺伝子を結合させた遺伝子を用いて、高等植物を形質転換する方法を提供するものである。本発明の方法は、高等植物を鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与又は促進させるための方法であり、本発明のプロモーターの下流に結合された遺伝子を、植物が鉄を十分に吸収できる状態であるときは発現せずに、植物が鉄欠乏の環境になったときに特異的に発現し、特に根において発現させることができ、植物の環境を設定することによりその発現を制御することができる。
本発明の形質転換方法としては、公知の遺伝子の導入技術、例えばバキュロウイルスを用いる方法などにより行うことができる。形質転換された植物を生育させて、目的の形質を有する植物を選別することにより、形質転換植物を得ることができる。
植物としては、高等植物であれば特に制限はないが、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシなどの穀物植物が好ましいが、これに限定されるものではない。本発明のシスエレメントは、鉄吸収におけるストラテージ−Iの植物にも、ストラテージ−IIの植物にも適用することができる。
また、本発明は、このような方法により形質転換された植物、好ましくは高等植物を提供するものでもある。
【0043】
【実施例】
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1 (コンストラクトの構築)
タバコに導入するために構築したコンストラクトの、融合プロモーターの下流にGUS遺伝子を連結した部分の構造を図1、図2、図3、及び図4に示す。これらのコンストラクトの基本骨格は、GUS遺伝子の下流にノパリン合成酵素の転写終止配列を連結した構造および、カナマイシン耐性遺伝子カセットをT−DNA領域内に持つバイナリーベクターである。pLP19(Szabados,L.,Ratet,P.,et al., (1990), Plant Cell, 2, 973−986)またはpBI101(Clontech社)に由来している。pLP19はGUS遺伝子の上流に、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの、転写開始点を+1として数えて‐90/+8部位の領域(以下、35SΔ90と表記する)をもつ。一方、pBI101のGUS遺伝子の上流に、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの、転写開始点を+1として数えて‐46/+8部位の領域(以下、35S△46と表記する)を挿入したコンストラクトを以下のようにして作製した。
まず、35SΔ46配列を以下のプライマー対を用いたPCRによって増幅した。
35S‐46F : TCTAGAGGATCCAGCCCCGCAAGACCCTT
35S−46R : CCCGGGTGTAATTGTAATTGTAAATAG
【0045】
増幅断片を pCR2.1TOPO(lnvitrogen)へサプクローニングし、配列をDNAシーケンサー(ABI PRISM 310)で確認した。この35S△46配列を、35S−46Fおよび35S‐46Rプライマーの5’端にあらかじめ設計しておいた、BamHIおよびSmaIのサイトにおいて制限酵素で切り出し、pBI101の同サイトに挿入した。こうして完成したコンストラクトを、以下pBI101d46と表記する。
IDS2遺伝子のプロモーター領域は、オクムラらにより、オオムギ(Hordeum vulgare L. cv.NK 1558)から単離された(Okumura,N.,Nishizawa,N.K., et al., (1994), Plant Mol. Biol., 25, 705−719)。これをもとに、図1、及び図2に示した3’‐欠失断片(‐1696/‐91,‐1696/‐273,‐1696/492,‐1696/‐686,‐1696/‐66,‐1696/‐1129,−1696/‐1274,‐1696/‐1541,‐272/−91,‐272/‐136,‐272/‐181,および‐272/−227の配列)を以下のプライマー対を用いたPCRによって増幅した。
【0046】
‐1696F: AAGCTTGGATTGGGGATAAACACCTC
−272F : AAGCTTCGAGGACGATTTGAACGGC
‐91R : GGATCCATCCTCCGGCCAGCCGTG
‐273R : GGATCCTCGTCTAGTATGGATTGTTA
−492R : GGATCCTAGTCCAAGTTATTTATTCA
‐686R : GGATCCACTACTTCTATATGTATGCG
‐866R : GGATCCAGGGAATCACAAGCCTGT
−1129R: GGATCCATGTTGAATGAGTATTTAGA
‐1274R: GGATCCTACATGAAAATTCAGATTGA
‐1541R: GGATCCAAGATGGTCTTAGCCTCC
−136R : GGATCCGCAAGAAGCATGCTTGATGA
‐181R : GGATCCTGTCTGATCAAATCATGCGT
‐227R : GGATCCGAGAGTGGGAGTGACAGC
【0047】
なお、各プライマー名における数字はプロモーター断片端の翻訳開始点からの位置を示し、FおよびRはそれぞれフォワードプライマーおよびリバースプライマーを意味している。増幅断片をpCR2.1TOPOへサブクローニングし、配列をDNAシーケンサーで確認した。これらのプロモーター配列を、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの5’端にあらかじめ設計しておいた、HindIIIおよびBamHIサイトにおいて制限酵素で切り出し、pBI101d46またはpLPI9の同サイトに挿入した。
図3および図4に示した変異断片は、3’端がお互いに相補配列である合成オリゴマー対をアニーリングし、フィリング−イン(filling−in)することにより作製した。
IDS2遺伝子プロモーターの‐180/‐136領域をもとに、連続した9塩基について、A→C、C→A、G→T、T→Gの変異を導入し、各々の5’端には、BglIIまたはXhoIサイトを、3’端にはBamHIサイトを付加した断片を作製した(図3a参照)。これらの断片に連結する上流配列として、IDS2遺伝子プロモーターの‐272/‐181配列または‐272/‐227配列をもとに、3’端近傍の‐185/‐181(AGACA)または‐231/‐227(CTCTC)配列をそれぞれAGATCTまたはCTCGAG配列に置換して、BglIIまたはXhoIサイトとしたものを作製した(図3aおよび図4a参照)。また、−272/−227領域をもとに、連続した9ないし10塩基対について、A→C,C→A,G→T,T→Gの変異を導入し、各々の5’端にはHindIIIサイトを、3’端にはXhoIまたはHindIIIサイトを付加した断片を作成した(図4a参照)。以上の合成オリゴマー対を各々アニーリングし、クレノウ(Klenow)酵素を用いてフィリング−イン(filling−in)した後、ゲル精製して制限酵素処理を行った。これらの断片をpB1uescript SK(Stratagene社)またはpCR2.1TOPOへサブクローニングして適切な順序に連結し、配列をDNAシーケンサーで確認した。これらの構築断片を、pBI101d46のHindIIIおよびBamHIサイトに挿入した。
【0048】
実施例2 (形質転換タバコの作製)
実施例1で構築したコンストラクトを、エレクトロポレーション法により、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のC58株に導入し、常法(リーフディスク法)により、タバコ(Nacotiana tabacum L.cv.Petit‐Havana SRI)を形質転換した。再分化したカナマイシン耐性体(T0世代)は鉢上げして土に植え、閉鎖系温室で栽培して種子(T1世代)を収穫した。温室の条件は30±3℃、12時間明−12時間暗サイクルとした。葉片からDNAを抽出し、PCR法により導入遺伝子の存在を確認した。
【0049】
実施例3 (GUS活性測定のための栽培条件)
T1世代の形質転換体を用いて、鉄十分条件(+Fe)および鉄欠乏条件(‐Fe)におけるGUS活性の測定を行った。栽培条件は28±1℃、16時間明−8時間暗サイクルとした。まず、T1種子を3%シュークロース、0.2% ゲランガム、100mg/Lのカナマイシンを含むムラシゲ・スクーグ培地に無菌的に播種し、およそ20日間生育させた。次いで、マジェンダボックスの中に通常の(+Fe)、または鉄を除いた(‐Fe)ムラシゲ・スクーグ液体培地を入れ、メンブレン培養システムのラフト(Life raft、ポアサイズ 25μm、Life Technologies)を浮かべた上に、各ラインにつき5個体の形質転換体を移植し、6日間、7日間、20日間、30日間のいずれかの生育の後、植物体をサンプリングし、GUSアッセイに供した。
【0050】
実施例4 (GUS活性の測定)
GUS酵素活性の定量的検出のためには、サンプリングした植物体の根または葉を、GUS抽出バッファー(50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、10mM2−メルカプトエタノール、10mMNa2−EDTA、0.1%ラウリルサルコシンナトリウム、0.1%(v/v)トリトンx−100)を用いて破砕した。10分間の遠心の後に上清を回収し、GUS抽出液とした。この抽出液について、4−メチルウムベリフェリル−β−D−グルクロニド(4‐methylumbelliferyl‐β‐D‐glucuronide)(MUG)を基質とした酵素活性測定を行い、生成した4−メチルウムベリフェロン(4‐methylumbelliferone)(MU)を分光蛍光光度計(F2500、日立)で定量した。抽出液のタンパク質濃度をバイオ−ラッドプロテインアッセイキット(Bio−Rad protein assay kit)により定量し、GUSの比活性をpmol MU min−1 mg protein−1の単位で表した。実験区ごとの比活性の有意差検定は、ノンパラメトリック法のマン−フイットニー検定(Mann‐Whitney test)により行った。
組織化学染色のためには、サンプリングした植物体の根を、染色液(1mM5−ブロモ−4−クロロ−3−インドニル−β−D−グルクロニド(5‐bromo‐4‐chloro‐3‐indolyl‐β‐D‐glucuronide)(X‐gluc)、100mMリン酸バッファー(pH7.0)、10mMNa2‐EDTA、1mMフェリシアン化カリウム、1mMフェロシアン化カリウム、0.1%(v/v)トリトンX‐100)に浸潰して約40分間の脱気の後、37℃で一晩静置した。染色した根を固定液(4%パラホルムアルデヒド、5% グルタルアルデヒド、0.1MCaCl2、0.1 Mカコジル酸バッファー(pH 7.0))に浸漬して氷上で3時間固定した。次いで、試料をエタノール、アセトン順に脱水し、スパー樹脂に包埋した。5μmの横断切片を制作し、トルイジンブルーと塩基性フクシン(epoxy tissue stain; Electron Microscopy Sciences)で緩く染色して光学顕微鏡で観察した。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントを提供するものである。本発明のシスエレメントは、鉄吸収におけるストラテージ−Iの植物にも、ストラテージ−IIの植物にも適用することができ、植物の種類にかかわりなく、広く高等植物に適用可能なものである。また、本発明のシスエレメントを使用することにより、下流に導入した遺伝子が鉄欠乏の環境により選択的に発現するように制御することができる。また、根に特異的に発現させることもできるようになる。このように本発明によれば、植物の組織特異的に発現する、また環境に応じて発現することができるように、発現を制御することができる新規なシスエレメントを提供するものである。
本発明は、このように発現を制御可能にするシスエレメントを初めて同定することに成功したものであり、植物の遺伝子の発現の制御の機構などの解明に極めて有用なだけでなく、アルカリ土壌などの鉄分や微量金属成分の不足している土地を利用して作物を生産することができる形質転換された新種の植物の創製に極めて重要な遺伝子制御の手法を提供するものである。
【0052】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、IDS2遺伝子のプロモーターの‐1696/‐91配列について、各種の3’‐欠失断片を構築し(図1の左側)、それぞれのGUS活性を調べた結果を示す。図1の右側のグラフは、GUS活性の平均値(棒グラフ)と標準誤差(棒線)を示した。根におけるGUS活性を図1の左側のグラフに、葉におけるGUS活性を図1の右側のグラフにそれぞれ示す。各グラフ中の白抜きは鉄十分条件(+Fe)の場合を示し、黒抜きは鉄欠乏条件(‐Fe)の場合を示す。各グラフの横軸はGUS活性を示し、単位はpmol MU/分/mgタンパク質である。各グラフの右側の数値は、鉄十分条件(+Fe)に対する鉄欠乏条件(‐Fe)でのGUS活性の相対比を示し、アスタリスク(*又は**)は有意差(**はp<0.01、*はp<0.05)があることを示す。
【図2】図2は、IDS2遺伝子のプロモーターの‐272/‐91の配列について、各種の3’‐欠失断片を構築し(図2の左側)、それぞれのGUS活性を調べた結果を示す。図2の右側のグラフは、図1におけるグラフの説明と同様である。
【図3】図3の(a)は、IDS2遺伝子のプロモーターの‐180/‐136の配列について、構築した各種の変異体の塩基配列を示し、図3の(b)はこれらの変異体の各構築物を35S△46に連結したプロモーター‐GUS部位(図3(b)の左側)、及びそれらの根におけるGUS活性の測定結果を示す(図3(b)の右側のグラフ)。図3の(b)の右側のグラフは、図1におけるグラフの説明と同様である。
【図4】図4の(a)は、IDS2遺伝子のプロモーターの−272/−227の配列について、構築した各種の変異体の塩基配列を示し、図4の(b)はこれらの変異体の各構築物を35S△46に連結したプロモーター‐GUS部位(図4(b)の左側)、及びそれらの根におけるGUS活性の測定結果を示す(図4(b)の右側のグラフ)。図4の(b)の右側のグラフは、図3の(b)におけるグラフの説明と同様である。
【図5】図5は、、IDS2のプロモーターの断片をGUSに連結したコンストラクトを導入した形質転換タバコのT1世代の形質転換体を鉄欠乏条件で生育させた後の根におけるGUS染色のパターンを示す図面に代わるカラー写真である。図5の各写真のスケールバーは100μmである。図5の(a)はクローン1‐46の鉄欠乏条件の根の横断切片、図5の(b)は(a)の拡大図(Coは皮層、Enは内皮、Peは内鞘、Phは篩部、Xyは木部)、図5の(c)はクローン1‐46の鉄欠乏条件の根の拡大像、図5の(d)はクローン12‐90の鉄欠乏条件の根の横断切片、をそれぞれ示す。
【図6】図6は、本発明のIDE1とIDE2の協同的な機能についてまとめたものである。図6の楕円はそれぞれのシスエレメントに結合すると考えられるトランス因子を表す。実線と矢印は鉄欠乏に応答した根での発現誘導の状況を模式的に示したものであり、線の太さは誘導性の強さに対応している。破線は35S△90による根での構成的発現を示す。網掛け部位は−263/−254,−253/−245,−244/−236,‐153/‐145または‐145/‐136の変異を示す。
【図7】図7は、本発明のIDE1またはIDE2に相同性がある各種の植物の鉄欠乏応答性遺伝子プロモーターの塩基配列を比較した一覧表である。図7の最上段はIDE1とその3’−側の隣接4塩基(IDE1+)を示し、最下段はこれらの比較から想定されるコンセンサス配列の例を示し、最下段のひとつ上の段はIDE2を示す。IDE1およびIDE2のかぎ括弧で囲った部位は変異を導入した部位を示し、IDE1内のパリンドローム配列を四角で囲い、中心位置を黒抜きの三角で示す。IDE1+と一致する配列を黒い領域に白文字で示す。翻訳開始点からの距離を括弧内に示す。コンセンサス配列(Consensus)のうち、特に保存性が高かった塩基を大文字に下線で示す。図7のHvnaat−AおよびHvnaat−Bは、それぞれオオムギのニコチアナミンアミノ基転移酵素遺伝子、HvNAS1はオオムギのニコチアナミン合成酵素遺伝子、OsNAS1およびOsNAS2はイネのニコチアナミン合成酵素遺伝子、HvIDS3はオオムギのムギネ酸合成酵素遺伝子、OsIRT1はイネの二価鉄トランスポーター遺伝子、AtIRT1はシロイヌナズナの二価鉄トランスポーター遺伝子、AtFRO2はシロイヌナズナの三価鉄キレート還元酵素遺伝子、AtNAS1はシロイヌナズナのニコチアナミン合成酵素遺伝子をそれぞれ示す。IDE2の配列の下の破線は、既知の植物のシスエレメントとの相同性を示したものである。TCACはタバコg10プロモーターのGTGA モチーフ。CTGTCACは病原関連の遺伝子プロモーターにみられるジャガイモサイレンシングエレメント結合因子の結合サイト(YTGTC(A/T)C)を示す。
Claims (15)
- 一般式(I)、
5’−nnnvdgcdwg yhbhhhdv−3’ (I)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、wはa又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示す。)
で表される塩基配列を少なくとも有するオリゴヌクレオチド単離物。 - オリゴヌクレオチド単離物が、前記一般式(I)で表される塩基配列部分を少なくとも2箇所有するものである請求項1に記載のオリゴヌクレオチド単離物。
- 一般式(I)で表される塩基配列が、次の一般式(II)、
5’−nnnvdgcdwg yhbhwhdv−3’ (II)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、wはa又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示す。)
で表される塩基配列を有するものである請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオチド単離物。 - 一般式(I)で表される塩基配列が、次の一般式(III)、
5’−nnnmwgcrwg ywyywyrv−3’ (III)
(式中の塩基の記号は配列表における塩基の表現についての記号の規則に従うものであり、即ち、nは任意の塩基を示し、aはアデニンを示し、cはシトシンを示し、gはグアニンを示し、tはチミンを示し、vはa、g又はcを示し、dはa、g又はtを示し、hはa、c又はtを示し、bはg、c又はtを示し、yはt又はcを示し、mはa又はcを示し、kはg又はtを示し、rはa又はgを示し、wはa又はtを示す。)
で表される塩基配列を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド単離物。 - 一般式(I)で表される塩基配列が、次の、
5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、
5’−gaacggcaag tttcacgc−3’
で表される塩基配列を有するものである、請求項1〜4のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド単離物。 - 5’−atcaagcatg cttcttgc−3’、又は、5’−ttgaacggca agtttcacgc tgtcact−3’で表される塩基配列、又はそれと相同性を有し、高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメントの機能を有する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド単離物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド単離物からなる高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメント。
- 請求項7に記載のシスエレメントを含有してなる高等植物に鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するためのプロモーター。
- 請求項7に記載のシスエレメント部分を2箇所以上有する請求項8に記載のプロモーター。
- 2箇所以上のシスエレメント部分の各々のシスエレメント部分が、少なくとも50塩基以上離れている請求項9に記載のプロモーター。
- 請求項8〜10のいずれかに記載されたプロモーターの下流側に発現可能な遺伝子が結合されている請求項8〜10のいずれかに記載されたプロモーター。
- 請求項8〜9のいずれかに記載のプロモーターの下流側に発現可能な遺伝子を結合させた遺伝子を用いて、高等植物を形質転換する方法。
- 高等植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与又は促進させるための方法である請求項12に記載の形質転換方法。
- 高等植物が、穀物植物である請求項12又は13に記載の方法。
- 請求項12〜14に記載の方法で形質転換された植物。
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