JP2003235583A - プロモーター活性を有するdna断片およびその利用方法 - Google Patents
プロモーター活性を有するdna断片およびその利用方法Info
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Abstract
断片からRNAの転写を引き起こすプロモーターおよびそ
の利用方法を提供する。 【解決手段】特定のDNA配列からなるポリヌクレオチ
ド、または該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条
件でハイブリダイズし、プロモーター活性を有するポリ
ヌクレオチドを、発現させたいDNAの5'-上流に、発現し
うる様式で連結し植物細胞に導入することにより、安定
的に組織特異的に発現させることを特徴とするDNAのポ
リヌクレオチドおよび植物細胞における遺伝子発現方
法。
Description
活性を有するDNA配列、すなわちプロモーターとして機
能するポリヌクレオチドおよびその利用に関する。
うに定義する。「ポリヌクレオチド」には、1本鎖DN
A、当該1本鎖DNAの相補鎖である1本鎖DNA、両
者が水素結合した2本鎖DNA、及びこれらDNAの転
写産物であるRNAも含まれる。「1若しくは複数の塩
基が欠失、置換若しくは付加されたDNA配列」とは、元
のDNA配列のうち、1個の塩基が欠失、置換若しくは付
加されたDNA配列および、複数の塩基、好ましくは数個
の塩基が欠失、置換若しくは付加されているが、実質的
に同等の機能を有するDNA配列をいう。すなわち、これ
ら1または複数の塩基の欠失、置換、付加によってプロ
モーターの機能に実質的な変化のないもの、およびプロ
モーターの機能が減少するものも含む。例えば5'−上
流から欠失変異を取った場合に、転写活性が変化しない
か、または、転写活性が減少するプロモーターを含む意
味である。なお、5'−上流から欠失変異を作成するこ
とは当業者に周知の技術である。シスエレメントとして
の機能を有しないスペーサー領域の欠失、置換、付加は
実質的にプロモーター活性を変化させない場合が多く、
かかるスペーサー領域が欠失、置換または付加されたD
NA配列も上記用語に含まれる。また、機能を有するシ
スエレメントを欠失させ、プロモーター活性を減少させ
るか、あるいは、組織特異性を減少させるものも含まれ
る。これらの条件を満たす限り、「複数の塩基」とは2
塩基から数百塩基までを含むものとする。プロモーター
活性を上昇させ、あるいは、組織特異性を変化させるよ
うな実質的に機能を変化させる欠失、置換、付加は含ま
れない。
書中では、95〜100%の相同性を有するDNAがハイブリダ
イズする条件をいう。例えば2XSSC, 65℃、16〜20時間
もしくは0.5Mチャーチリン酸バッファー、1mM EDTA、7
% SDS、65℃、16〜20時間等の条件が用いられるが、こ
れらに限られない。「プロモーター」とは、遺伝子から
RNAを転写する活性を有するDNAを言う。本発明において
は、主として植物において転写活性を有するプロモータ
ーを意味するが、これに限定されず、機能する限り動
物、細菌、酵母、カビ等で使用される場合も含まれる。
「発現ベクター」とは、プロモーターの下流にクローニ
ング用の制限酵素部位を挿入したプラスミドベクターを
いう。Tiプラスミド由来のベクターも含まれる。制限酵
素部位の下流にポリA付加信号を連結する場合が多い。
「植物細胞」とは、本発明にかかるプロモーターが転写
活性を発揮する植物細胞を意味するが、常に転写活性を
発揮する必要は無く、いずれかの組織に分化した場合に
のみ転写活性を発揮する場合の植物細胞も含まれる。
「キク」とは、本発明にかかるプロモーターがその転写
活性を発揮するキク植物細胞およびキク植物体を意味す
るが、全ての組織において転写活性を発揮するという意
味ではなく、一部の組織で転写活性を発揮するキクも含
まれる。「形質転換によらないポリヌクレオチド」と
は、その生物がもともと有しているゲノムのポリヌクレ
オチドを意味する。本発明のプロモーターをもともと有
している生物に本発明のプロモーターを連結したキメラ
遺伝子を導入した場合には、その導入したプロモーター
は「形質転換によらないポリヌクレオチド」ではない。
伝子のセンスRNA、アンチセンスRNA、2本鎖RNAあるいは
リボザイムRNAを植物細胞内で発現させ、病虫害抵抗
性、除草剤耐性、ストレス耐性、有用物質生産、新規な
花色、新規な形態等の有用形質を備えた植物新品種を分
子育種することが可能となってきた。即ち、植物で発現
可能なプロモーターの3'-側に目的の遺伝子断片をセン
ス方向もしくはアンチセンス方向にまたは2本鎖RNAを形
成できるように連結し、あるいはリボザイムRNAを転写
できるように連結してキメラ遺伝子を作成し、これらを
ベクターを用い、あるいは直接、植物細胞の染色体に導
入することにより、その目的形質の遺伝子を発現または
抑制するというものである。かかる手法を応用すること
により、例えば、Bacillus thuringensis由来の殺虫性
BT毒素遺伝子のセンスRNAを発現する虫害抵抗性植物
(D.A.Fischhoff等、Bio/Technology、vol.232:738、19
87)や、トマト果実の登熟に関するポリガラクツロナー
ゼ遺伝子のアンチセンスRNAを発現する日持ち良好なト
マト(C.J.Smith等、Nature、vol.334:724、1988)等が
作出されている。
子のプロモーターとしては、多くの場合、カリフラワー
モザイクウィルス(CaMV)の35Sプロモーター(以下単
に35Sプロモーターという)が用いられている。この35
Sプロモーターは、多くの双子葉植物で遺伝子からRNA
を強力に転写する働きを有し、多くの組織で強く発現す
ることから形質転換植物において最も広く使われてい
る。しかしながら、35Sプロモーターには以下のような
問題がある。1) 単子葉植物においてはそれほど発現が
強力でない。2) 単子葉、双子葉を問わず、多くの植物
で後代を取ると、発現が見られなくなる個体が出現す
る。3) 35Sプロモーターには高頻度に組換えを引き起
こす配列が含まれており(A. KohliらPlant J 1999 Ma
r;17(6):591-601)、プロモーター配列自体の染色体上
における安定性に問題がある。したがって、これらの問
題点を解決できるプロモーターが望まれていた。
35Sプロモーターを用いて外来遺伝子の発現が試みられ
てきた。ところが、キクにおいては、35Sプロモーター
を用いた場合、外来遺伝子を発現する個体は得られにく
く、また発現が見られる個体が得られたとしてもその発
現レベルは低く、しかも成長するにつれて発現が弱くな
り、最終的には発現が見られなくなることが知られてい
る(Y. TakatsuらPlant Biotechnology, 2000, 17 (3),
241-245)。すなわち、35Sプロモーターはキクにおい
て外来遺伝子を発現させる場合の安定性に問題があり、
キクにおいて効率良く安定発現できるプロモーターが望
まれていた。また、35Sプロモーターはキクにおいて発
現が見られる場合でも非常に弱い発現しか見られないこ
とから、高発現できるプロモーターも望まれていた。
なる現象の原因については未だ解明されていないが、メ
チル化により35Sプロモーターが不活性化されることが
原因の1つではないかと推測されている。すなわち、キ
クは多くの場合、6倍体等の高い倍数性を持つため染色
体DNAの大部分がメチル化されており、35Sプロモータ
ーもメチル化されることにより不活性化される可能性が
考えられる。実際、35Sプロモーターによる遺伝子発現
が抑制(サイレンシング)されたキク形質転換体に脱メ
チル化剤であるアザシチジンを添加すると、発現が回復
する場合があることから、メチル化が関与している可能
性が高い。なお、サイレンシングには、転写の抑制と転
写後の抑制があるが、ここでは転写の抑制を意味する。
メチル化によるサイレンシングはキクに限らず他の植物
においても問題となっている。したがって、メチル化等
によるサイレンシングを受けずに植物において安定発現
可能なプロモーターも望まれていた。
伝子を発現させることができるプロモーター、特に植物
体、より好ましくはキクにおいて、いずれかの組織で安
定的に遺伝子を発現させるプロモーター、およびその利
用方法を提供することを目的とする。
述のようなサイレンシングを受けずに正常に発現するこ
とから、キクの内在性の遺伝子のプロモーターを利用し
て、キクにおける外来遺伝子を発現させることにより、
メチル化等によるサイレンシングを回避して、安定的に
高発現できる可能性がある。
いプロモーターを検索し、クローン化した。リュウノウ
ギクの葉からCTAB-Li法(島本功、佐々木卓治監修 新
版植物のPCR実験プロトコール60-62頁、秀潤社1997)を
用いて全RNAを抽出し、cDNAライブラリーを構築した。
このcDNAライブラリーについて約100クローンのプラス
ミドを調製し、EST(expressed sequence tag)解析を
行い、出現頻度の高い遺伝子(クロロフィルa/b結合蛋
白質遺伝子、以下cabという)のEST配列および多数の組
織で発現すると考えられる遺伝子(tublin)のESTを配
列を見いだした。これらのEST配列に基づき、プライマ
ーを合成し、TAIL-PCR法により、その上流域のプロモー
ターをクローン化した。既知配列との比較から、翻訳開
始コドンを推定し、この翻訳開始コドンの1塩基上流か
らプロモーターを含む上流領域までの配列をクローン化
するために、5'-上流側プライマーの5'-上流側に制限酵
素Hind III切断部位、3'-下流側プライマーの5'-上流
(プロモーターから見れば3'-下流側)にBam HI切断部
位と開始コドンのアンチセンス(CAT)とを付加するよ
うにデザインしたプライマーを用いて、プロモーター及
び5'-非翻訳領域をPCRにより増幅した。得られたプロモ
ーターと5'-非翻訳領域を含むPCR断片を制限酵素で切断
し、イントロンの入ったβ−グルクロニダーゼ(GUS)
遺伝子に連結し、キクに形質転換後8ヶ月目〜10ヶ月目
にGUS活性測定を行った。その結果、リュウノウギクよ
り単離したcabプロモーターが形質転換キク植物体の葉
において長期間(少なくとも8ヶ月間)安定的に高発現
できることを見出した。
様にレポーター遺伝子であるGUS遺伝子に連結し、キク
に形質転換して安定性、プロモーターの強度を検討し
た。その結果、tublinプロモーターについては、葉にお
ける安定発現は観察されなかったが、花弁において高頻
度に発現が観察された。一方、35Sプロモーターについ
ては、葉における安定発現は認められなかったことか
ら、キク由来のプロモーターである、cabプロモーター
およびtublinプロモーターについては、葉および花弁で
それぞれ組織特異的に安定発現することが証明された。
tublinプロモーターについては、葉由来のESTを基にプ
ライマーをデザインし、TAIL-PCR法によりクローン化し
たわけであるが、予想に反し、葉では安定発現できず、
花弁でのみ安定発現が認められた。
る遺伝子のプロモーターをクローン化して、同じ植物種
に形質転換したとしても、必ずしも予想される組織で安
定に発現するとは限らないことを意味する。つまり、そ
の植物自身のプロモーターを利用するという戦略は当業
者が容易に考えつくものであるが、その効果は必ずしも
予想通りにはならず、予測できない有利な効果を奏する
場合もある。実際、この戦略によっては、葉で安定発現
できるプロモーターが得られるものと予想されたが、か
かる特性を有するcabプロモーターのみならず、葉では
安定発現できないプロモーター(tublinプロモーター)
も同様に得られた。そして、どのプロモーターがどの組
織で安定発現できるかは当業者は必ずしも予測できな
い。何故なら、tublin遺伝子はノザン解析のコントロー
ルとしても使われるもので、多くの組織で普遍的に発現
すると考えられている。このように多くの組織で発現す
ると言うことは、組織特異的なサイレンシングを受け
ず、安定的に発現できる機構が備わっているものと考え
られる。しかし、このtublinプロモーターを用いた場合
には、キクの葉における安定発現は難しかった。また、
cabプロモーターは高発現するプロモーターとして知ら
れているが、かかる高発現プロモーターはある閾値を超
える発現量を示した場合、サイレンシング(転写後のサ
イレンシング)を受けやすいと考えられているため、安
定発現は通常期待し難いと考えられる。しかし、予想に
反し、かかる高発現プロモーターが安定発現を示した。
これらは発明者らの予想外のことであった。したがっ
て、このことから、宿主植物自身のプロモーターを用い
る場合でも組織によっては安定発現できる場合とできな
い場合があり、その判断は当業者の予測できる範囲を超
えていると考えられる。以上より、本発明にかかるcab
プロモーターおよびtublinプロモーターは当業者の予想
できない有利な効果を奏するものである。
ーターおよびtublinプロモーター、具体的には、配列番
号1および配列番号2に示すDNA配列を有するポリヌク
レオチドにより解決される。
1または2で表されるDNA配列を有するポリヌクレオチ
ドであれば制限なく使用できる。また、このDNA断片と
ストリンジェントな条件(例えば、2XSSC, 65℃、16時
間〜20時間)でハイブリダイズするDNA断片でプロモー
ター活性を有するものも、本発明において使用できる。
本発明で得られたcabプロモーター、tublinプロモータ
ーについてGenBank DatabaseにおいてBlast検索したと
ころでは、類似する配列は認められなかった。cab EST
については類似性が認められ、アミノ酸レベルでは、La
ctuca Sativaのcabタンパク質と局所的には74%の相同性
を示した。したがって、このESTをcabのESTと同定し
た。tublin ESTのアミノ酸部分についてはチコリのtubl
inのアミノ酸配列とN末端50アミノ酸が完全に一致した
ことからtublinと同定した。
モーターとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、そ
の由来を問わない。他の植物、例えばキク科の他の植物
より定法(CTAB法等)を用いて単離したDNAを用いるこ
ともできるが、これらに限られず、いかなる生物種のDN
Aでもよい。また化学合成したDNAを用いることもでき
る。
で表されるDNA配列からなるポリヌクレオチド、(2)
配列番号1で表されるDNA配列において、1若しくは
複数の塩基が欠失、置換若しくは付加されたDNA配列か
らなり、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオチ
ド、(3) 配列番号1で表されるDNA配列からなるポ
リヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズし、かつプロモーター活性を有するポリヌクレオ
チド、(4) 配列番号1のDNA配列からなるポリヌク
レオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズ
し、かつキクの1以上の組織において安定発現可能なプ
ロモーター活性を有するポリヌクレオチド、に関する。
ポリヌクレオチドのうち、いずれかを有する発現ベクタ
ー、(6) 前記(1)ないし(4)に記載のポリヌク
レオチドのうち、いずれかのポリヌクレオチドと構造遺
伝子とからなるキメラ遺伝子、(7) 前記(1)ない
し(4)に記載のポリヌクレオチドのうち、いずれかの
ポリヌクレオチド、または前記(6のキメラ遺伝子を有
する植物細胞、ただし、形質転換によらないポリヌクレ
オチドを有する植物細胞は除く、(8) 前記(1)な
いし(4)に記載のポリヌクレオチドのうち、いずれか
のポリヌクレオチド、または前記(6)に記載のキメラ
遺伝子を有する植物個体、ただし、形質転換によらない
ポリヌクレオチドを有する植物個体は除く、(9) 前
記(1)ないし(4)に記載のポリヌクレオチドのう
ち、いずれかのポリヌクレオチド、または前記(6)に
記載のキメラ遺伝子を有するキク植物細胞またはキク植
物体、ただし、形質転換によらないポリヌクレオチドを
有するキク植物細胞またはキク植物体は除く、に関す
る。
からなるポリヌクレオチド、(11) 配列番号2で表
されるDNA配列において、1若しくは複数の塩基が欠
失、置換若しくは付加されたDNA配列からなり、かつプ
ロモーター活性を有するポリヌクレオチド、(12)
配列番号2で表されるDNA配列からなるポリヌクレオチ
ドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、か
つプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、(1
3) 配列番号2のDNA配列からなるポリヌクレオチド
とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ
キクの1以上の組織において安定発現可能なプロモータ
ー活性を有するポリヌクレオチド、に関する。
ないし(13)に記載のポリヌクレオチドのうち、いず
れかのポリヌクレオチドを有する発現ベクター、(1
5) 前記(10)ないし(13)に記載のポリヌクレ
オチドのうち、いずれかのポリヌクレオチドと構造遺伝
子からなるキメラ遺伝子、(16) 前記(10)ない
し(13)に記載のポリヌクレオチドのうち、いずれか
のポリヌクレオチド、または前記(15)に記載のキメ
ラ遺伝子を有する植物細胞、ただし、形質転換によらな
いポリヌクレオチドを有する植物細胞は除く、(17)
前記(10)ないし(13)に記載のポリヌクレオチ
ドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、または前記
(15)に記載のキメラ遺伝子を有する植物個体、ただ
し、形質転換によらないポリヌクレオチドを有する植物
個体は除く、(18) 前記(10)ないし(13)に
記載のポリヌクレオチドのうち、いずれかのポリヌクレ
オチド、または前記(15)に記載のキメラ遺伝子を有
するキク植物細胞またはキク植物体、ただし、形質転換
によらないポリヌクレオチドを有するキク植物細胞また
はキク植物体は除く、に関する。
すべき遺伝子は、プロモーターの3'-側の下流領域に連
結する。そのため、プロモーターの3'-下流側に適当な
制限酵素切断部位を挿入した発現ベクターを構築する。
望ましくは、制限酵素切断部位の下流にポリA付加信号
を含む、転写終結領域を連結する。所望により、適当な
選択マーカー遺伝子を連結する。例えば、実施例1およ
び図1に示す、pIGcab1, pIGtub13においては、BamHIとS
acIにより、イントロン付GUS遺伝子を切り出すことがで
き、代わりに任意の遺伝子が挿入可能になっている。植
物における選択マーカーとしては、特に限定されない
が、カナマイシン、ハイグロマイシン等が利用可能とな
っている。必要な場合には、適当なエンハンサーをプロ
モーターの上流域に連結、またはイントロン内に挿入す
ることによりプロモーター活性を上昇させることができ
る。発現を安定させたい場合、インシュレーターやMatr
ix Attatchment Region等が利用できる。また、プロモ
ーターと翻訳開始コドンの間に翻訳のエンハンサーを挿
入することにより、翻訳効率を上昇させることも可能で
ある。さらに、ATG翻訳開始コドンの下流の、このコ
ドンと制御すべき構造遺伝子との間に、構造遺伝子の第
一イントロンを含む一部を連結することで、発現効率を
さらに向上させることができる場合もある。
は、上記のようにしてプロモーターとこれによりその転
写を制御すべき遺伝子とを連結してベクターを作成し、
このベクターを用い、定法により行うことができる。即
ち、ベクターとしてTiプラスミド由来のベクターを用い
る場合には、植物に感染する細菌アグロバクテリウム・
ツメファシエンス(以下、A.ツメファシエンスと略
す。)、アグロバクテリウム・リゾジェネシス等を媒介
として植物細胞への遺伝子導入を行うことができる。ま
た、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーシ
ョン法、ポリエチレングリコール法、リポソーム融合
法、遺伝子銃、カルシウムカーバイドウィスカー法等の
物理的・化学的手法により、直接的に植物細胞への遺伝
子導入を行うこともできる(K. Lindsey: Transgenic P
lant Research, Harwood academic publishers: p.1-33
(1998))がこれらの方法に限られない。
された植物細胞からは、その植物の種類等に応じた適当
な条件下で培養することにより、植物体を再分化させる
こともできる。また、茎頂に導入することにより、ある
いはInPlanta形質転換法を用いることにより、再分化技
術を用いることなく、形質転換植物を得ることもでき
る。このようにして得られた植物細胞・植物体は、本発
明のプロモーターによりその転写が制御された遺伝子が
導入されている植物細胞であり、植物体である。
ロモーターは、下記の実施例で用いたβ−グルクロニダ
ーゼ遺伝子のみならず、他の様々なタンパク質をコード
する遺伝子、アンチセンス遺伝子、2本鎖RNA又はリボ
ザイムRNA等の発現を制御することができる。従って、
本発明においては、プロモーターの下流に連結させる遺
伝子としては、目的に応じて、以下のものが考えられる
がこれらに限られない。農業的に優れた形質を付与する
遺伝子としては、例えば、耐病性、耐虫性、耐ウイルス
性、除草剤抵抗性、抗生物質抵抗性、細菌抵抗性、カビ
抵抗性、ストレス耐性、花色関連遺伝子、形態形成に関
与する遺伝子、生理活性物質の生合成系遺伝子、有用物
質生産遺伝子等がある。医薬品や農薬産業等において有
用な物質の生産に関与する遺伝子としては、ワクチン遺
伝子、抗体遺伝子、医薬原料生産遺伝子、除虫菊成分等
の殺虫物質生合成系遺伝子等が挙げられる。化学工業等
において有用な物質の生産に関与する遺伝子としては、
例えば、油脂の生合成系遺伝子、工業用酵素遺伝子等が
考えられる。研究目的に使用される遺伝子として、遺伝
子発現機構の研究に必要とされる遺伝子(転写因子遺伝
子等)、レポーター遺伝子等が考えられる。これらは自
然界の生物からクローン化した遺伝子、化学合成遺伝
子、あるいはそれらの組み合わせやそれらの改変遺伝子
でも良い。また、導入する遺伝子の数も1個に限らず複
数でもよい。
とのできる植物の種類も特に限定されない。前記植物と
しては、キクが好ましいが、キク以外でも、例えば、タ
バコを始め、イネ、トウモロコシ、シロイヌナズナ、ペ
チュニア、ダイズ、サツマイモ等の草本植物、あるい
は、ヤマナラシ、ポプラ、アカシア、スギ、マツ、ユー
カリ、ゴム等の木本植物にも本発明のプロモーターを使
用することができるが、これらの植物に限られない。
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。 [実施例1]プロモーター活性測定用ベクターの構築 プロモーター活性の測定に用いたpIG101HmBは以下のよ
うにして構築した。まず、pBI101Hm(Akama, K. et al.
Plant Cell Rep., 12: 7-11. (1992))をBamHIで部分
分解し、クレノウ酵素で末端をfill inし、そのまま連
結し、形質転換した。出現したコロニーを培養し、プラ
スミドを調製して、制限酵素の切断パターンを調べるこ
とにより、pBI101Hmのハイグロマイシン遺伝子の下流の
BamHIサイトが欠失したプラスミドを得、これをpBI101H
mBと名付けた。次にpBI101HmBをSacIで切断後、フェノ
ール/クロロフォルム抽出を行い、エタノール沈殿後、
BamHIで切断し、ゲル電気泳動により分画してベクター
側の長いDNA断片をゲルから回収した。ゲル回収にはPre
pA Gene DNA Purification Kit (BioRad社製)を用い
た。次に、pIG121Hm(Y. Hiei et al. Plant J. 6, 27
1-282 (1994))をSacIとBamHIで同様にして切断し、イ
ントロン-GUS遺伝子を含むBamHI-SacI断片をアガロース
ゲルから回収した。この、pBI101HmBのBamHI-SacIの長
い断片と、イントロン-GUS遺伝子を含むBamHI-SacI断片
を連結し、pBI101HmBのGUS遺伝子部分をpIG121Hmのイン
トロン-GUS遺伝子と置き換えたプラスミドを構築し、pI
G101HmBと名付けた。
佐々木卓治監修 新版植物のPCR実験プロトコール60-62
頁、秀潤社1997)。圃場で栽培したリュウノウギクの葉
1グラムを乳鉢、乳棒を用いて液体窒素中で細かくなる
まで粉砕し、2XCTAB溶液(80℃)10mlと混合し、65℃
で10分間保温した。等量のクロロフォルム/イソアミル
アルコール(24:1)を加え、5分間攪拌し、遠心分離
(3500回転、室温)後、水層(上層)を回収した。クロ
ロフォルム/イソアミルアルコール抽出を中間層が出な
くなるまで繰り返し行い、水層を回収し、1/4倍量の10M
塩化リチウム液を加え、少なくとも2時間-20℃に放置し
た。15000回転、10分間、4℃で遠心し、上清を捨て、沈
殿を回収した。沈殿を1mlのTE緩衝液に溶解し、15000回
転、10分間、4℃で遠心し、上清を回収した。上清に等
量のTE飽和フェノール(pH9.0)を加えて攪拌し、15000
回転、10分間、4℃で遠心し、水層を回収した。水層に
等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコ
ール(25:24:1)を加え攪拌し、15000回転、10分間、
4℃で遠心し、水層を回収した。この操作を2回繰り返し
た。水層に等量のクロロフォルム/イソアミルアルコー
ル(24:1)を加え攪拌し、15000回転、10分間、4℃で
遠心し、水層を回収した。水層に1/4倍量の10M塩化リチ
ウム液を加え、少なくとも2時間-20℃に放置した。1500
0回転、10分間、4℃で遠心し、沈殿を回収した。沈殿を
70%エタノールで洗浄し、乾燥後、RNaseフリーの滅菌水
30μlに溶解した。
ion Kit(InVitrogen社製)を用いて行った。方法はキ
ットに添付のマニュアルに従って行った。このmRNAを用
いて、Gibco BRL社製のSuperScriptcDNA合成キットを用
いてcDNAを合成し、pBluescript II KS (-)(StrataGen
e社製)のEcoRV部位にクローン化した。得られたコロニ
ー105クローンについてそれぞれアンピシリン50μg/ml
を含むLB培地で終夜培養し、クラボウ社のプラスミド抽
出装置PI-100Σを用いてプラスミドを抽出した。これら
のプラスミドについてBigDye cycle sequencing Kit(A
pplied BioSystems社製)を用いて反応させ、ABI PRISM
310シーケンサーを用いてDNA配列を決定した。
たcabとノザン解析のポジティブコントロールに使用さ
れるβ-tublinの2遺伝子を選択し、これらのDNA配列を
元にTAIL-PCRのプライマーを合成した。
定法により行った。
木卓治監修、新版植物のPCR実験プロトコール、秀潤社
刊、1997年、p83〜p89にしたがって行った。任意プライ
マーについては、同p85の図2のB:任意プライマー、1:
5'-NGTCGA(G/C)(A/T)GANA(A/T)GAA-3'、2:5'-GTNCGA(G
/C)(A/T)CANA(A/T)GTT-3'、3:5'-(A/T)GTGNAG(A/T)ANC
ANAGA-3'を用いた。遺伝子特異的プライマーとしては、
cab遺伝子については、配列番号3: 5'-CCGTACCATGGGCTT
CCTGAT-3'、配列番号4: 5'-AACTCTTCCATTTCCGAGAAGCT-
3'、配列番号5: 5'-GAGCCATGGTTGAAGAAGCCARR-3'を用い
た。TAIL-PCRの結果、任意プライマー1、2、3の全ての
区で約3kbの明瞭なバンドが増幅された。そこで、TAIL-
PCR産物をpBluescript II KS (-)のEcoRV部位にクロー
ン化し、得られた組換えプラスミドのDNA配列を決定し
た。その結果、任意プライマー3を用いて得られたクロ
ーンNo.19が遺伝子特異的プライマーである配列番号5の
配列を含み、かつ、その上流のcabのDNA配列と一致し、
さらに、上流の末端側に任意プライマー3の配列が存在
した。そこで、このクローンNo.19をcabのプロモーター
を含む上流領域と同定した。
ドン(ATG)のすぐ上流からプロモーターを含む領域を
増幅させ、レポーター遺伝子(β-グルクロニダーゼ遺
伝子:GUS遺伝子)に連結するために、以下のプライマ
ーを合成した。配列番号6: 5'-AAAGCTTTATATCTTCATCTCT
CATGGCTA-3'、配列番号7: 5'-AGGATCCATTTGTTGAAATTGGT
TGGAAGA-3' これらのプライマーを用いて以下の条件で
TAIL-PCRを行った。94℃2分→(94℃30秒→50℃±10℃1
分→72℃2分)X5サイクル→(94℃30秒→55℃±10℃1
分→72℃3分)X30サイクル→72℃7分30秒→4℃。このP
CR反応により得られた約1.8kbの断片をInVitrogen社のT
OPO TA cloning Kitを用いてクローン化し、出現したコ
ロニーを培養後、プラスミドを調製してEcoRI切断によ
り1.9kbの断片が挿入されていることを確認した。この
プラスミドをHindIII, BamHIで切断したところ、0.9kb,
1.0kbの2本のバンドが観察された。この2本のバンドを
まとめてゲルから回収し、pIG101HmBのHindIII、BamHI
間に連結した。このプラスミドをpIGcab1と名付けた
(図1)。
のプライマーを合成し、TAIL-PCRによりクローン化し
た。すなわち、1st PCR primer配列番号8: 5'-CTCCACTC
GCTTCGTTGTAGTAGACATTGA-3'、 2nd PCR primer配列番号
9: 5'-GATGCGTTCTAGCTGGAGTTCTGAGTCT-3'、 3rd PCR pr
imer配列番号10: 5'-GGAAGTGAAGGATTTCTCTCATTTTTGGTT-
3'をこの順にTAIL-PCRを行った。TAIL-PCRの方法は、上
述の方法のままではバンドが多数出現したので、3rd PC
R以外は上記と同様であるが、3rd PCRについては、2nd
PCR産物を10倍希釈したものを1μl用い、全体で100μl
の容量で(94℃2分→44℃1分→72℃3分)X20サイクル→
72℃5分→4℃のサイクルで通常のPCRを行った。得られ
たPCR産物をフェノール/クロロフォルム抽出し、プラ
スミドpBluescript KS(-)のEcoRV切断物と連結し大腸菌
に形質転換した。得られたクローンについて、DNA配列
を両鎖について確認後、上記と同様に上流側にHindIII
部位、翻訳開始コドン直前にBamHI部位の付加されたプ
ライマー配列番号11: 5'-AAAGCTTCGAGAGAGAAGAACAAACAA
A-3'配列番号12: 5'-AGGATCCATTTTTGGTTTTGGTTAGTGTGT-
3'を合成して再度PCRを行い、TAクローニングを行っ
た。制限酵素によるスクリーニングで得られたクローン
のプラスミドをHindIII、BamHIで切断後、プロモーター
を含む断片をゲルより回収し、pIG121HmBのHindIII, Ba
mHI間に挿入することにより、pIGtub13を作成した。プ
ロモーター領域のDNA配列はこのTAクローニングのクロ
ーンを用い、両鎖についてABI3100シーケンサーを用い
て、BigDye Cycle Sequence法によって決定し、DNASIS
により連結した。Cabプロモーターについても同様にし
てDNA配列を決定した。cabプロモーターについては翻訳
開始コドンから上流300塩基のAT含有率が約80%と非常
に高い価を示した。このことからCpG配列のメチル化に
よるサイレンシングを回避できる可能性がある。tublin
プロモーターについては翻訳開始コドンから上流300塩
基のAT含有率は約60%であった。
テリウム法により、キク(Dendranthema grandiflorum
(Ramat.) Kitamura, 品種 セイマリン)に導入した。即
ち、pIGcab1, pIGtub13をエレクトロポレーション法に
よりA.ツメファシエンスEHA105に導入した(1
0%グリセロール中、電気パルスとして2500V、2
5μFを付与。バイオラッド社製 GENE PULSERII を使
用。)後、このA.ツメファシエンスをカナマイシン5
0mg/lを含むLB寒天培地(トリプトン1%、食塩
0.5%、酵母エキス0.5%)で28℃、2日間培養
することにより選抜し、これをカナマイシン50mg/
lを含むLB培地で終夜液体培養したものを無菌培養した
キクの葉に感染させた。
ク品種‘セイマリン’の無菌植物の葉を5mm角程度に切
り外植片とした。この外植片(葉切片)をアグロバクテ
リウム懸濁液に約30分つけた後、余分な菌液をろ紙で
除いて共存培養培地(ムラシゲ・スクーグ基本培地(以
下、MSと略す。)、3%しょ糖、0.8%寒天、2mg
/lナフタレン酢酸、1mg/lベンジルアデニン、1g/l カ
ザミノ酸、100μM/l アセトシリンゴン)に葉の裏側を
上向きにして置き、22℃・暗黒下で2日間共存培養し
た。共存培養終了時には、外植片をカルベニシリン 300
mg/l、Tween 20 1%を含む10mM硫酸マグネシウム溶液
中で、25℃1時間振とうして除菌した。次に、外植片
を、選抜培地A(MS、3%しょ糖、0.8%寒天、2
mg/lナフタレン酢酸、1mg/lベンジルアデニン、300mg/
l カルベニシリン、25mg/l パロモマイシン)に移し、
20℃、低照度(7μmol/s/m2)で培養した。2週間後、
新しい選抜培地Aに移し、さらに2週間後、選抜培地B
(MS、3%しょ糖、0.8%寒天、0.02mg/lナフタレ
ン酢酸、1mg/lベンジルアデニン、10.0mg/l ジベレリ
ン酸、300mg/l カルベニシリン、25mg/lパロモマイシ
ン)に移した。次いで、2週間ごとに新しい選抜培地B
に移し、シュートが2-3mm長になった時点でシュートを
かきとり伸長培地(無機塩濃度が1/2のMS、300mg/lカル
ベニシリン)に移した。さらに、伸長培地上で伸長した
シュートの葉を5mm角に切り選抜培地Aで培養して抗生
物質抵抗性を確認した。
ク植物、即ちキクcabプロモーター-GUS融合遺伝子ある
いはキクtublinプロモーター-GUS融合遺伝子を有するキ
クについて、Jefferson et al. (EMBO J. 1987, 6, 39
01 - 3907)の方法に基づき、GUS遺伝子の発現試験を行
った。定量的分析には、培養器内で育成した再分化から
約8ヶ月経過した形質転換体の展開葉から打ち抜いた直
径約7 mmの葉片を材料とし、4-methylumbelliferyl-β-
D-glucuronide (MUG) を基質として用いた。葉片をすり
つぶして得た抽出液を、50 mM リン酸ナトリウム(pH
7.0)、10 mMメルカプトエタノール、10 mM EDTA、0.1
% N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、0.1 % Triton
X-100、20 % メタノール、1 mM MUGの反応液中で37
℃、30分間処理した。処理後、反応液中に存在する4-me
thylumbelliferone (4-MU)の量を分光蛍光光度計によっ
て定量的に測定した。GUS活性は、葉片抽出液中のタン
パク質1 mg当りに生成された4-MUの量(pmol 4-MU/min/
mg protein)で表した。なお、タンパク質の濃度は、P
rotein assay kit(Bio-Rad Laboratories, Californi
a, USA)を用いて定量した。花弁については再分化から
12ないし18ヶ月後の温室植物体の舌状花の花弁部分
を用いて上記と同様の方法でGUS活性を測定した。ま
た、組織化学的分析には、培養器内で育成した再分化か
ら約8ヶ月経過した形質転換体の全体を材料とし、5-bro
mo-4-chloro-3-indolyl-β-D- glucuronic acid (X-GLU
C)を基質として用いた。植物材料を、100 mM リン酸ナ
トリウム(pH 7.0)、0.5 mM フェロシアン化カリウ
ム、0.5 mM フェリシアン化カリウム、10 mM EDTA、0.1
% Triton X-100、20 % メタノール、1 mM X-GLUCの反
応液に浸漬し、37℃条件下に16時間置いた。反応処理
後、70%エタノール溶液に浸して葉緑素を脱色しGUS
活性を示す濃青色の部分の分布を調査した。定量的分析
の結果、キク形質転換体の葉において、キクcabプロモ
ーターは35Sプロモーター及びキクtublinプロモーター
に比べて強いGUS発現の個体が多く、形質転換体中に占
めるGUS活性を有する個体の割合も高いことが示された
(表1)。すなわち、その機能は、これが本来プロモー
ターとして作用する構造遺伝子とは全く異なるGUS構造
遺伝子のプロモーターとして用いた場合でも、発揮され
ることが示された。
学的分析を行った結果、35Sプロモーター/GUS(表1の
≧100の個体)は葉の葉脈のみ薄く染色され、tublinプ
ロモーター/GUS(表1の≧100の個体)は葉の葉脈のみ
が濃く染色され、cabプロモーター/GUS(表1の≧1000
の個体)は葉の全体が濃く染色された。このことからca
bプロモーターは葉の全体で強く発現するが、tublinプ
ロモーターは葉脈でのみ強く発現し、35Sプロモーター
は葉脈で弱く発現し、他の組織ではほとんど発現しない
と考えられた。
oteinで示した。
oteinで示した。
即ち、キクcabプロモーターとして単離された配列番号
1に示すDNA配列を有するポリヌクレオチドは、キク形
質転換体の葉において、これが本来プロモーターとして
作用する構造遺伝子とは全く異なる構造遺伝子に対して
も、発現を促進できることが明らかとなった。また、tu
blinプロモーターについても、キク形質転換体の葉にお
いては活性がほとんど検出されなかったが(表1)、花
弁においては中程度の活性が認められた(表2)。この
ことはtublinプロモーターについても、本来の構造遺伝
子以外の遺伝子についても活性を有することを意味して
いる。
番号1に示すDNA配列を有するポリヌクレオチドは、キ
ク形質転換体において、その制御下に置かれた構造遺伝
子を少なくとも8ヶ月間以上、葉において安定的かつ強
力に発現させる能力を有する。つまり、このプロモータ
ーを使用することにより、キクにおいてサイレンシング
を回避して外来遺伝子を長期間安定に高発現させること
が可能となる。しかも、このプロモーターは、使用でき
る構造遺伝子の種類を問わない。
択し、これを本発明のプロモーターの制御下に置いてベ
クターを作成し、このベクターを用いてキクの形質転換
を行えば、キクにおいてそのDNA配列由来のRNAを安定的
かつ強力に発現させることができるので、目的とする形
質を付与することが可能である。
ク植物体において35Sプロモーターに比べ、約10倍程度
強い発現を示す。タバコ、ペチュニアにおいては、35S
プロモーターがcabプロモーターよりも3〜10倍程度高い
活性を示すが、キクにおいては、キクcabプロモーター
は逆に35Sプロモーターよりも10倍程度高い活性を示し
た。このことは発明者らが全く予想できなかった有利な
効果である。
は、幼植物においては発現が見られる場合があるもの
の、成長するにつれて発現が弱くなり、最終的に発現が
見られなくなる。これに対し、cabプロモーターはキク
形質転換体が成長後も約8ヶ月にわたって、安定的に強
い発現を維持していた。tublinプロモーターについても
長期間栽培後の花弁において高頻度に発現が見られた。
発現することは容易推考とも考えられる。しかし、本発
明時と同時期にクローン化したキク由来のtublinプロモ
ーターについては、葉においては安定発現は認められな
かった。tublinプロモーターは多くの組織で普遍的に発
現するプロモーターであることから、ノザン解析におい
てコントロールとして使われるものである。かかる多く
の組織で安定的に発現しているプロモーターはその近傍
に発現を抑制する配列を持たず、ほとんどの組織で安定
発現するものと期待される。しかしながら、tublinプロ
モーターについては葉における安定発現は見られず、花
弁においてのみ発現が観察された。
の組織特異的な高発現プロモーターであることから、安
定的に発現するとは必ずしも予想できないものである。
高発現プロモーターはサイレンシングが起きやすいから
である。しかしながら、cabプロモーターについては葉
において安定発現が認められた。このことは、当業者の
予想できる範囲を超えており、予想外の効果と言える。
・チミン含量(AT含量)を有していたが、これは非常に
高いAT含量であり、このような高いAT含量のプロモータ
ーが存在することは当業者の予想外であると考えられ
る。AT含量が高いということは、メチル化を受けるシト
シンおよびグアニンが少ないことを意味し、そのために
メチル化の影響を受けにくいのではないか、とも考えら
れる。したがって、かかるAT含量の高い配列が安定高発
現に寄与している可能性があるが、もしそうであれば、
この点についても当業者の予想外の効果と考えられる。
tublinプロモーターについてはかかる高いAT含量は認め
られなかったが、それにもかかわらず、花弁においては
長期間栽培後も発現を示した。この点についても予想外
の効果であった。
s:ノパリン合成酵素遺伝子プロモーター、tnos:ノパリ
ン合成酵素遺伝子ターミネーター、BR:右境界配列、B
L:左境界配列、NPTII:ネオマイシン・フォスフォトラ
ンスフェラーゼII、cab:クロロフィルa/b結合タンパク
質遺伝子プロモーター、tub:tublin遺伝子プロモータ
ー、GUS:β-グルクロニダーゼ遺伝子、35S:カリフラ
ワーモザイクウイルス35Sプロモーター、HPT:ハイグロ
マイシン・フォスフォトランスフェラーゼ
Claims (18)
- 【請求項1】 配列番号1で表されるDNA配列からなる
ポリヌクレオチド。 - 【請求項2】 配列番号1で表されるDNA配列におい
て、1若しくは複数の塩基が欠失、置換若しくは付加さ
れたDNA配列からなり、かつプロモーター活性を有する
ポリヌクレオチド。 - 【請求項3】 配列番号1で表されるDNA配列からなる
ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズし、かつプロモーター活性を有するポリヌクレ
オチド。 - 【請求項4】 配列番号1のDNA配列からなるポリヌク
レオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズ
し、かつキクの1以上の組織において安定発現可能なプ
ロモーター活性を有するポリヌクレオチド。 - 【請求項5】 請求項1ないし4に記載のポリヌクレオ
チドのうち、いずれかを有する発現ベクター。 - 【請求項6】 請求項1ないし4に記載のポリヌクレオ
チドのうち、いずれかのポリヌクレオチドと構造遺伝子
とからなるキメラ遺伝子。 - 【請求項7】 請求項1ないし4に記載のポリヌクレオ
チドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、または請求
項6のキメラ遺伝子を有する植物細胞。ただし、形質転
換によらないポリヌクレオチドを有する植物細胞は除
く。 - 【請求項8】 請求項1ないし4に記載のポリヌクレオ
チドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、または請求
項6に記載のキメラ遺伝子を有する植物個体。ただし、
形質転換によらないポリヌクレオチドを有する植物個体
は除く。 - 【請求項9】 請求項1ないし4に記載のポリヌクレオ
チドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、または請求
項6に記載のキメラ遺伝子を有するキク植物細胞または
キク植物体。ただし、形質転換によらないポリヌクレオ
チドを有するキク植物細胞またはキク植物体は除く。 - 【請求項10】 配列番号2で表されるDNA配列からな
るポリヌクレオチド。 - 【請求項11】 配列番号2で表されるDNA配列におい
て、1若しくは複数の塩基が欠失、置換若しくは付加さ
れたDNA配列からなり、かつプロモーター活性を有する
ポリヌクレオチド。 - 【請求項12】 配列番号2で表されるDNA配列からな
るポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイ
ブリダイズし、かつプロモーター活性を有するポリヌク
レオチド。 - 【請求項13】 配列番号2のDNA配列からなるポリヌ
クレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイ
ズし、かつキクの1以上の組織において安定発現可能な
プロモーター活性を有するポリヌクレオチド。 - 【請求項14】 請求項10ないし13に記載のポリヌ
クレオチドのうち、いずれかのポリヌクレオチドを有す
る発現ベクター。 - 【請求項15】 請求項10ないし13に記載のポリヌ
クレオチドのうち、いずれかのポリヌクレオチドと構造
遺伝子からなるキメラ遺伝子。 - 【請求項16】 請求項10ないし13に記載のポリヌ
クレオチドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、また
は請求項15に記載のキメラ遺伝子を有する植物細胞。
ただし、形質転換によらないポリヌクレオチドを有する
植物細胞は除く。 - 【請求項17】 請求項10ないし13に記載のポリヌ
クレオチドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、また
は請求項15に記載のキメラ遺伝子を有する植物個体。
ただし、形質転換によらないポリヌクレオチドを有する
植物個体は除く。 - 【請求項18】 請求項10ないし13に記載のポリヌ
クレオチドのうち、いずれかのポリヌクレオチド、また
は請求項15に記載のキメラ遺伝子を有するキク植物細
胞またはキク植物体。ただし、形質転換によらないポリ
ヌクレオチドを有するキク植物細胞またはキク植物体は
除く。
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JP2002044999A JP4092110B2 (ja) | 2002-02-21 | 2002-02-21 | プロモーター活性を有するdna断片およびその利用方法 |
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WO2010122848A1 (ja) * | 2009-04-24 | 2010-10-28 | インターナショナル フラワー ディベロプメンツ プロプライアタリー リミティド | 花弁で機能するシソ由来のプロモーター |
KR101200898B1 (ko) | 2010-07-30 | 2012-11-13 | 동아대학교 산학협력단 | 국화 형질전환체 및 이의 제조방법 |
-
2002
- 2002-02-21 JP JP2002044999A patent/JP4092110B2/ja not_active Expired - Lifetime
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US8658779B2 (en) | 2009-04-24 | 2014-02-25 | Suntory Holdings Limited | Perilla-derived promoter functioning in petals |
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