JP3782013B2 - 改良されたプロモーターおよびその使用 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、改良プロモーター及びその使用に関し、より詳細には、形質転換生物の作出に際して、メチル化を受けにくいよう改良したプロモーター、及びその使用に関するものである。
背景技術
所望の形質転換植物を作出する上で、重要な要素のひとつとして高発現プロモーターがある。プロモーター配列は植物細胞内での遺伝子の転写レベルを決定する主要な因子であり、一般に、転写活性の強いプロモーター配列を用いることにより目的とする外来遺伝子の発現レベルを上げることが可能である。また、マーカー遺伝子の発現レベルの上昇により、形質転換植物の取得は著しく容易になるので、高発現プロモーターは、形質転換植物を作製するための薬剤耐性遺伝子マーカーの発現にも重要である。
このような背景から、植物における高発現プロモーターの取得が、これまでに数多く報告されてきた。代表的な例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターやアグロバクテリウムのイソペンテニルトランスフェラーゼ(ipt)遺伝子やノパリン合成酵素(nos)遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。更に、形質転換宿主の対象となる植物のゲノムから高発現遺伝子のプロモーターを取得し、それを利用する例も見受けられる(Genschikら、Gene,148(1994)195−202)。
近年になり、これらのプロモーターを複数個組み合わせたキメラ型プロモーターの中から、プロモーター活性が著しく上昇したものを取得できることが示されている。一例を挙げれば、Min Niらは、アグロバクテリウム由来のオクトピン合成酵素(ocs)遺伝子とマンノピン(man)合成酵素遺伝子のプロモーターを組み合わせることによって、タバコにおいて高発現を示すプロモーターが取得できることを示している(Plant Journal,7(1995)661−676)。
しかしながら、これらの高発現プロモーターを用いても、すべての植物において、必要なレベルの外来遺伝子の発現個体が得られるわけではない。その理由の1つとして、各々の植物細胞に存在するRNAポリメラーゼの違いに基づく特異性が存在することが挙げられる。また別の理由として、植物が外来遺伝子の発現を抑制する機構を持っていることが推察されている。この遺伝子の不活化、あるいは発現抑制の機構に関与する代表的な因子として、ゲノムDNAにおけるシトシンのメチル化が考えられる(MeyerとSaedler、Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.,47(1996)23−48)。
このシトシンのメチル化は、CG及びCNG(Nは任意の塩基)という塩基配列が回文状の構造をなしている2本鎖DNA配列において顕著に起きることが知られている(MatzkeとMatzke、Plant Physiol.107(1995)679−685)が、他のDNA配列中のシトシンにおいてもメチル化が起こることが知られている(Meyerら、EMBO Journal,13(1994)2084−2088)。シトシンがメチル化を受けると、遺伝子の発現が抑制されることが多くの生物において知られており(Razin.EMBO Journal,17(1998)4905−4908)、また、植物のゲノムでは、他の生物と比べてメチル化されているシトシンの割合が高いため、メチル化が遺伝子の不活化に密接に関連しているという報告がされてきた(MeyerとSaedler、Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.,47(1996)23−48)。特に、遺伝子操作等によって導入された外来遺伝子の発現が抑制される現象、すなわち「ジーン・サイレンシング」の原因については、DNAのメチル化による不活化も関係していると推測されている。
しかしながら、これまで、プロモーターのメチル化を制御することにより遺伝子の発現を向上させたという報告はなされていなかった。僅かに、CaMVの35Sプロモーターとβ−グルクロニダーゼ(Gus)遺伝子を繋いだ遺伝子構築物を、試験管内で強制的にメチル化させることによって、遺伝子の一過的な発現が低下する旨の報告が1例あるのみである(Hohnら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93(1996)8334−8339)。但し、該報告の実験においても、生体内でどの塩基配列がメチル化を受け、その結果、発現が低下するに至ったのかは検証されていない。また、Hohnらは、プロモーターのみならず、構造遺伝子部分のシトシンのメチル化もGus遺伝子の発現低下をもたらすことを観察し、構造遺伝子部分がメチル基による修飾を受けないことも高発現のためには重要であると結論付けており、脱メチル化プロモーターの利用による高発現化にはむしろ否定的ともいえる。
従って、プロモーターのメチル化を回避することにより、遺伝子発現レベルを向上させる具体的方法は不明であった。また、メチル化を回避し、より高発現の形質転換宿主を得るために、プロモーター活性を損なわないようにプロモーター部分、又はプロモーター部分を含むDNA鎖のどこのCG及びCNG配列を具体的にどのような他の塩基に改変すればよいのかも不明であった。
発明の開示
本発明は、構造遺伝子の5’側に置いた場合、この構造遺伝子の発現を活性化するプロモーターの提供をその目的としている。また、本発明は、前記プロモーターを含んでなるDNA鎖の提供をその目的としている。さらに、本発明は、前記DNA鎖で形質転換された宿主、及び該宿主を利用した構造遺伝子を高発現させる方法の提供をその目的としている。
本発明者らは、以上の観点から、プロモーターの2本鎖DNA配列中のCG及びCNGからなるDNAの回文状の配列を、プロモーター活性を損なわないように、CG及びCNG配列が生じない他の塩基に改変してメチル化を受けにくくすることにより、高発現プロモーターを作製できると考えた。この考えに基づき、鋭意研究を重ねた結果、新規にデザインしたプロモーターを翻訳エンハンサー、構造(レポーター)遺伝子、翻訳終止コドン、ターミネーター等の構成要素等と繋ぎ、これを用いてキク植物体を形質転換することにより、該キク植物体において外来遺伝子の発現レベルを飛躍的に向上し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の(a)又は(b)に示されるDNAを提供する。
(a)配列番号1で表わされる塩基配列中の第7〜272塩基からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列番号1で表わされる塩基配列中の第7〜272塩基からなる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、及び第217〜218塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(c)又は(d)に示されるDNAを提供する。
(c)配列番号1で表わされる塩基配列を含むDNA。
(d)配列番号1で表わされる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、及び第217〜218塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(e)又は(f)に示されるDNAを提供する。
(e)配列番号2で表わされる塩基配列中の第7〜272塩基からなる塩基配列を含むDNA。
(f)配列番号2で表わされる塩基配列中の第7〜272塩基からなる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第183〜188塩基、第195〜200塩基、及び第217〜218塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず(但し、第185〜186塩基及び第197〜198塩基はそれぞれCGである)、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(g)又は(h)に示されるDNAを提供する。
(g)配列番号2で表わされる塩基配列を含むDNA。
(h)配列番号2で表わされる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第183〜188塩基、第195〜200塩基、及び第217〜218塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず(但し、第185〜186塩基及び第197〜198塩基はそれぞれCGである)、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(i)又は(j)に示されるDNAを提供する。
(i)配列番号3で表わされる塩基配列中の第7〜322塩基からなる塩基配列を含むDNA。
(j)配列番号3で表わされる塩基配列中の第7〜322塩基からなる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、第217〜218塩基、第231〜233塩基、第235〜236塩基、第247〜248塩基、及び第267〜268塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(k)又は(l)に示されるDNAを提供する。
(k)配列番号3で表わされる塩基配列を含むDNA。
(l)配列番号3で表わされる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、第217〜218塩基、第231〜233塩基、第235〜236塩基、第247〜248塩基、及び第267〜268塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(m)又は(n)に示されるDNAを提供する。
(m)配列番号4で表わされる塩基配列中の第7〜422塩基からなる塩基配列を含むDNA。
(n)配列番号4で表わされる塩基配列中の第7〜422塩基からなる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、第217〜218塩基、第231〜233塩基、第235〜236塩基、第247〜248塩基、第267〜268塩基、第281〜283塩基、第285〜286塩基、第297〜298塩基、第317〜318塩基、第331〜333塩基、第335〜336塩基、第347〜348塩基、及び第367〜368塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
さらに、本発明は、以下の(o)又は(p)に示されるDNAを提供する。
(o)配列番号4で表わされる塩基配列を含むDNA。
(p)配列番号4で表わされる塩基配列において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、第217〜218塩基、第231〜233塩基、第235〜236塩基、第247〜248塩基、第267〜268塩基、第281〜283塩基、第285〜286塩基、第297〜298塩基、第317〜318塩基、第331〜333塩基、第335〜336塩基、第347〜348塩基、及び第367〜368塩基を除く部位にて1個〜数個の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、該欠失、付加又は挿入された塩基配列中にCG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まず、かつ、プロモーター活性を有するDNA。
また、本発明は、上記のいずれかのDNAを含んでなるDNA鎖を提供する。このようなDNA鎖は、構造遺伝子DNAと、該構造遺伝子が発現するような様式で該構造遺伝子DNAの5’部位に組み込まれた上記のいずれかのDNAとを含んでなることが好ましい。これらのDNA鎖は、さらに翻訳エンハンサー、翻訳終止コドン、ターミネーター、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される構成要素を含んでもよい。さらにまた、本発明は、上記DNA鎖で形質転換された宿主を提供する。該宿主は、好ましくは植物細胞である。
さらにまた、本発明は、上記DNA鎖で形質転換された植物細胞を構造遺伝子が発現可能なように培養又は栽培することを特徴とする、植物で構造遺伝子を発現させる方法を提供する。この方法において、構造遺伝子は外来遺伝子であってもよい。さらに、本発明は、上記DNA鎖で形質転換された宿主を用いて、該プロモーター活性を有するDNAにより転写が活性化される又は発現が促進される構造遺伝子の発現産物である蛋白質を製造する方法を提供する。
さらに、本発明は、上記DNA鎖で形質転換された植物細胞から再生により得られる形質転換植物を提供する。
さらに、本発明は、選択マーカー遺伝子DNAと、該選択マーカー遺伝子が発現するような様式で該選択マーカー遺伝子DNAの5’部位に組み込まれた上記のいずれかのDNAとを含んでなるDNA鎖を提供する。さらに、本発明は、該DNA鎖で宿主を形質転換処理し、得られた宿主を、前記選択マーカー遺伝子が発現可能であり、かつ、該選択マーカー遺伝子を発現する宿主とこれを発現しない宿主とを識別し得る条件下で培養することを特徴とする、形質転換宿主を選択する方法を提供する。該宿主は、好ましくは植物細胞である。
本明細書は、本願において主張する優先権の基礎である日本国特許出願第2000−59276号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
配列表の説明
配列番号1〜4:プロモーター配列を含む合成DNA。
配列番号5〜24:プライマー。
発明を実施するための最良の形態
(1)プロモーター
本発明のDNAは、配列番号1〜4で表わされる塩基配列を含むDNA又はこれらのプロモーター活性を有する部分であり、これらのDNAは、CaMVの35Sプロモーターをもとにその塩基配列中の一部の塩基を改変したものである。
CaMVの35Sプロモーターの転写開始点より上流250bp中には13個のCG又はCNGが存在し、これらの塩基配列は、植物体中でそれぞれCGメチル化酵素及びCNGメチル化酵素によりメチル化を受けていることが推察される。そこで、これらの配列を、メチル化を受けないような配列に置換したのが、配列番号1で表わされる塩基配列を含むDNAである。配列番号1中において、プロモーター活性を有する部分は、第7〜272塩基の部分である。
さらに、配列番号1で表わされる塩基配列を含むDNA(プロモーター)のメチル化フリーという特徴を生かしつつ、特に有効と思われるさらなる改変として、プロモーターのocs領域又はas−1領域と呼ばれる約20塩基からなる領域(Ellisら、Plant J.,4(1993)433−443;Lamら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86(1989)7890−7894)の改変が考えられる。そこで、該ocs領域の中のCG配列を残しつつ、6塩基の回文状構造(GACGTC)を形成するように改変したものが、配列番号2で表わされる塩基配列を含むDNAである。配列番号2中において、プロモーター活性を有する部分は、第7〜272塩基の部分である。
配列番号1及び2で表わされる塩基配列(転写開始点より上流)と、植物の遺伝子操作で通常最もよく用いられるベクターpBI121(クロンテック社製)に含まれる35Sプロモーターの配列との比較を、それぞれ図1A及び図1Bに示す。
また、上記ocs領域に関する改変として、プロモーター中のocs領域を重複させるように合成することが考えられ、これによりプロモーター活性が増強されると考えられる。そこで、上記配列番号1において、2つのocs領域を反復させたのが、配列番号3で表わされる塩基配列を含むDNAである。配列番号3中において、プロモーター活性を有する部分は、第7〜322塩基の部分である。さらに、上記配列番号1において、4つのocs領域を反復させたのが、配列番号4で表わされる塩基配列を含むDNAである。配列番号4中において、プロモーター活性を有する部分は、第7〜422塩基の部分である。
上記のような本発明のDNAは、核酸合成の方法に従って化学合成することにより得ることができる。
また、本発明のDNAには、上記のDNAの塩基配列において1以上の塩基が欠失、付加又は挿入された塩基配列を含み、かつプロモーター活性を有するDNA(変異体)も含まれる。ここで、欠失、付加又は挿入されてもよい塩基の数は特に限定されないが、好ましくは1個〜数個、より好ましくは1個〜3個、最も好ましくは1個である。さらに、本発明のDNAには、上記のDNAの塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは94%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含み、かつプロモーター活性を有するDNA(変異体)も含まれる。ここで、このような相同性の数値は、塩基配列比較用プログラム:DNASIS−Mac v3.7を用いて、デフォルト(初期設定)のパラメーターにより算出されるものである。
このように、上記変異体は、配列番号1〜4で表わされる塩基配列とは部分的に異なる塩基配列を含むが、この場合において、上述のCaMV35Sプロモーターからの改変部位はそのまま保存されている必要がある。すなわち、配列番号1において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、及び第217〜218塩基では変異しない。同様に、配列番号2において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第183〜188塩基、第195〜200塩基、及び第217〜218塩基では変異しない。また、配列番号3において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、第217〜218塩基、第231〜233塩基、第235〜236塩基、第247〜248塩基、及び第267〜268塩基では変異しない。さらに、配列番号4において、第41〜42塩基、第59〜60塩基、第73〜75塩基、第77〜78塩基、第80〜82塩基、第109〜110塩基、第119〜120塩基、第134〜135塩基、第145〜146塩基、第181〜183塩基、第185〜186塩基、第197〜198塩基、第217〜218塩基、第231〜233塩基、第235〜236塩基、第247〜248塩基、第267〜268塩基、第281〜283塩基、第285〜286塩基、第297〜298塩基、第317〜318塩基、第331〜333塩基、第335〜336塩基、第347〜348塩基、及び第367〜368塩基では変異しない。
また、上記変異体の塩基配列は、CG、CAG、CTG、CCG及びCGGで表わされる連続配列を含まないことが必要である。但し、配列番号2における第185〜186塩基及び第197〜198塩基は、例外的に、それぞれCGである。
このような配列番号1〜4で表わされる塩基配列を含むDNA又はその部分の変異体は、プロモーター活性を有していればよく、その活性の高さは特に限定されないが、それぞれ、配列番号1〜4で表わされる塩基配列を含むDNA又はその部分のプロモーター活性を実質的に保持することが好ましい。ここで、これらのDNA又はその部分の「プロモーター活性を実質的に保持する」とは、プロモーター活性を利用した実際の使用態様において、これらのDNA又はその部分と、同一の条件でほぼ同様の利用が可能な程度の活性が維持されていることをいう。また、ここでいうプロモーター活性は、好ましくは植物細胞における活性、より好ましくはキク植物体における活性、最も好ましくはキク栽培品種レーガン(Chrysanthemum morifolium cv.Reagan又はDendranthema grandiflorum cv.Reagan)における活性をいう。
このような変異体は、配列番号1〜4で表わされる塩基配列を参照すれば、Molecular Cloning(Sambrookら編集(1989)Cold Spring Harbor Lab.Press,New York)等の文献の記載に従って、当業者であれば格別の困難性なしに選択し、製造することができることは明らかである。さらに当業者であれば、上述した配列番号1〜4で表わされる塩基配列を基にして、当該塩基配列から1以上の塩基の置換、欠失、挿入又は付加を人為的に行う技術(部位特異的突然変異誘発)については、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)5662−5666、WO85/00817、Nature 316(1985)601−605、Gene 34(1985)315−323、Nucleic Acids Res.13(1985)4431−4442、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79(1982)6409−6413、Science 224(1984)1431−1433等に記載の技術に従って変異体を取得し、これを利用することができる。
上記のように取得した変異体がプロモーターとしての活性を有するか否か、さらには、配列番号1〜4で表わされる塩基配列を含むDNA又はその部分のプロモーター活性を実質的に保持するか否かは、以下のようなプロモーター活性測定のための手法により確認することができる。
上記変異体のプロモーター活性は、好ましくは種々のレポーター遺伝子、例えばベータグルクロニダーゼ(Gus)、ルシフェラーゼ(Luc)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Cat)、ベータガラクトシダーゼ(Gal)、ノパリン合成酵素(nos)、オクトピン合成酵素(ocs)等の遺伝子(”Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual”、Draper,J.et.al.編,Blackwell Scientific Publication,1988)を新規プロモーターの下流域に連結したベクターを作製し、当該ベクターを用いて従来から周知慣用されている種々の形質転換法(後述)により植物細胞のゲノムに挿入した後、当該レポーター遺伝子の発現量を測定することにより算出することができるが、この方法に何等限定されることはない。その中の一例として、レポーター遺伝子がGusの場合には、宿主細胞内でのプロモーター活性は、(i)ヒストケミカルなGus染色による方法、及び/又は(ii)蛍光基質を用いる方法(いずれの方法も、Plant Molecular Biology Manual,C2(1994)1−32(Ed.)GelvinとSchilperoort,Kluwer Academic Publishers)に従ってGus活性を測定し、さらに、例えばBradfordの方法(Anal.Biochem.72(1976)248−254)に従ってタンパク質量を測定して、Gus活性をタンパク量当たりに換算する(例えば、pmoleMU/min/mg proteinとして算出する)ことにより、それぞれ測定することができる。
本発明のDNAが好ましく利用される宿主細胞は、様々な植物の細胞、例えば、イネ、ムギ、トウモロコシ、ネギ、ユリ、ラン等の単子葉植物、ダイズ、ナタネ、トマト、バレイショ、キク、バラ、カーネーション、ペチュニア、カスミソウ、シクラメン等の双子葉植物などの細胞である。特に好ましい具体例としては、染色体の倍数性が高いキク等の植物細胞などが挙げられる。その理由は、植物は相同遺伝子の不活化のために遺伝子をメチル化すると考えられており、倍数性の高い植物は、多数の相同遺伝子を持つために、強力なメチル化の機構により遺伝子の不活化を行っていると推察されるからである(LeitchとBennett、Trends in Plant Sci.,2(1997)470−476)。また、ゲノムのGC含量(ThomasとSherratt,Biochem.J.,62(1956)1−4)が高いためにメチル化反応の標的配列に富む等の植物細胞なども好ましい候補に挙げられる。
(2)DNA鎖
本発明によれば、本発明のDNAを含んでなるDNA鎖が提供される。このようなDNA鎖は任意の遺伝子を転写するために用いることができ、使用にあたっては、所望の遺伝子が、発現し得る形で該DNA鎖中に組み込まれる。そのような遺伝子は、典型的には構造遺伝子である。従って、本発明はさらに、構造遺伝子DNAと、該構造遺伝子が発現するような様式で該構造遺伝子DNAの5’部位に組み込まれた本発明のDNAとを含んでなるDNA鎖を提供する。
本発明によるDNA鎖の具体的形態は、例えばプラスミド又はファージDNA中の構成要素の一部として、本発明のDNAが挿入された形態であってよい。
このようなDNA鎖中に構造遺伝子DNAを組み込む場合には、その構造遺伝子が発現し得るように、本発明のDNA及び該構造遺伝子DNAを配置することができる。構造遺伝子DNAとしては、β−グルカンエリシター受容体(Umemotoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)1029−1034)、pacl(Sanoら、Natl.Biotechnol.15(1997)1290−1294)、及び2−5AaseやRNaseL(Ogawaら、Natl.Biotechnol.14(1996)1566−1569)をコードするDNA等を挙げることができるが、何等これらに限定されることはない。
本発明のDNA鎖はさらに、翻訳エンハンサー、翻訳終止コドン、ターミネーター等の構成要素を含むことができる。翻訳エンハンサー、翻訳終止コドン及びターミネーターとしては、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。ウイルス起源の翻訳エンハンサーとしては、例えば、タバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルスRNA4、ブロモモザイクウイルスRNA3、ポテトウイルスX、タバコエッチウイルスなどの配列が挙げられる(Gallieら、Nuc.Acids Res.,15(1987)8693−8711)。また、植物起源の翻訳エンハンサーとして、ダイズのβ−1,3グルカナーゼ(Glu)由来の配列(石田功、三沢典彦著、講談社サイエンティフィク編、細胞工学実験操作入門、講談社、p.119、1992)やタバコのフェレドキシン結合性サブユニット(PsaDb)由来の配列(Yamamotoら、J.Biol.Chem.,270(1995)12466−12470)などが挙げられる。ターミネーターとしては、例えば、nos遺伝子のターミネーター、ocs遺伝子のターミネーターなどが挙げられる(Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.,44(1993)985−994、”Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual”前出)。また、プロモーター中の転写エンハンサーとして、35Sのエンハンサー部分が同定され、それらを複数個並べて繋げることにより、活性を高めることが報告されており(Plant Cell,1(1989)141−150)、この部分をDNA鎖の一部として用いることも可能である。これらの各種構成要素は、その性質に応じて、それぞれが機能し得る形でDNA鎖中に組み込まれることが好ましい。そのような操作は、当業者であれば適切に行うことができる。
本発明のDNA(プロモーター)は、転写開始点以降にダイズのGlu遺伝子由来の翻訳エンハンサーを含んでいる(該配列番号1又は2の279番目以降、或いは該配列番号3の329番目以降、或いは該配列番号4の429番目以降で示される)。この配列はメチル化フリーによる転写促進には直接関与していないが、目的とする遺伝子の発現をさらに促進することができる。この翻訳エンハンサーに関しては、本発明で使用したダイズのGlu遺伝子由来のものに限らず、これまで報告されているような上記のような他の翻訳エンハンサーに置き換えても同様な効果が期待できる。さらに、本発明のように、この翻訳エンハンサーのCG配列につき、他の塩基に置換することも可能である。また他の翻訳エンハンサーに関して、CG配列以外にCNG配列がある場合には、該配列についてもCG配列と同様に他の塩基に置換することも可能である。当業者であれば、そのような改変は適切に行うことができる。
上記DNA鎖は、遺伝子工学の分野で慣用されている手法を用いることにより、当業者であれば容易に製造することができる。また、本発明のDNA鎖は、人工的な構築物に限定されるものではなく、上記のような構造を有するものであれば、天然の供給源から単離されたものであってもよい。該DNA鎖は、周知慣用されている核酸合成の方法に従って合成する事により、得ることができる。
(3)形質転換
本発明のプロモーター活性を有するDNAを含むDNA鎖によって宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養又は栽培することにより、構造遺伝子の発現を誘導することができ、又は該構造遺伝子を高い効率で発現させることができる。前記構造遺伝子は外来遺伝子であってもよい。
形質転換後の本発明の鎖は、プラスミド、ファージ又はゲノムDNAの中に挿入された形で、微生物(特に細菌)、ファージ粒子又は植物の中に存在することができる。ここで、細菌としては、典型的には、大腸菌、アグロバクテリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の好ましい実施形態では、本発明のDNA鎖は、タンパク質を発現させようとしている構造遺伝子が、植物体中で安定に発現し得るように、本発明のDNA(プロモーター)、翻訳エンハンサー、構造遺伝子DNA、翻訳終止コドン、及びターミネーター等とが一体に結合して、これがゲノムに挿入された形態で植物中に存在する。
宿主の好ましい例としては、イネ、ムギ、トウモロコシ、ネギ、ユリ、ラン等の単子葉植物、ダイズ、ナタネ、トマト、バレイショ、キク、バラ、カーネーション、ペチュニア、カスミソウ、シクラメン等の双子葉植物などの細胞が挙げられ、特に好ましい具体例としては、染色体の倍数性が高いキク等の植物細胞などが挙げられる。また、具体的な植物材料としては、例えば、生長点、苗条原基、分裂組織、葉片、茎片、根片、塊茎片、葉柄片、プロトプラスト、カルス、葯、花粉、花粉管、花柄片、花茎片、花弁、がく片等が挙げられる。
宿主に外来遺伝子を導入する方法としては、既に報告され、確立されている種々の方法を適宜利用することができる。その好ましい例として、例えば、生物学的方法としては、ウィルス、アグロバクテリウムのTiプラスミド、Riプラスミド等をベクターとして用いる方法が挙げられ、物理学的方法としては、エレクトロポレーション、ポリエチレングリコール、パーティクルガン、マイクロインジェクション(”Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual”前出)、シリコンニトリドウイスカー、シリコンカーバイドウイスカー(Euphytica 85(1995)75−80、In Vitro Cell.Dev.Biol.31(1995)101−104、Plant Science 132(1998)31−43)によって遺伝子を導入する方法等が挙げられる。該導入方法については、当業者であれば適宜選択し、使用することができる。
さらに、本発明のDNA鎖で形質転換された植物細胞を再生させることにより、導入された遺伝子がその細胞内で発現する形質転換植物を作製することができる。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、「植物細胞培養マニュアル」(山田康之編著、講談社サイエンティフィク、1984)等の文献を参照されたい。
発現誘導又は高発現された遺伝子の発現産物は、それ自体を単離して利用したい場合には、培養物からその発現産物に適した方法によって単離精製することができる。さらに、発現産物の存在により宿主細胞の成長又は生育、さらにはその細胞の性質が改質される場合には、そのような宿主を培養し、若しくは該宿主が脱分化した植物体である場合には、その植物体を栽培することで、目的とする構造遺伝子の発現産物を高発現させることができる。
また、本発明により開示された高発現のプロモーターによって、例えばカナマイシン耐性(例えば、NPTII)遺伝子の選択マーカーを発現させたDNA鎖を用いることにより、植物体の形質転換効率を著しく高めることができる。これは、選択マーカー遺伝子DNAと、該選択マーカー遺伝子が発現するような様式で該選択マーカー遺伝子DNAの5’部位に組み込まれた上記のいずれかのDNAとを含んでなるDNA鎖を用いることにより行うことができる。その具体的手順は特に限定されないが、例えば、該DNA鎖で宿主を形質転換処理し、得られた宿主を、前記選択マーカー遺伝子が発現可能であり、かつ、該選択マーカー遺伝子を発現する宿主とこれを発現しない宿主とを識別し得る条件下で培養することにより行うことができる。該宿主は植物細胞以外のものであってもよく、特に限定されないが、好ましくは植物細胞である。ここで使用し得る選択マーカー遺伝子はいかなるものであってもよく、特に限定されないが、好ましくは薬剤耐性遺伝子、例えば、NPTII遺伝子(カナマイシン耐性遺伝子)、Hyg遺伝子(ハイグロマイシン耐性遺伝子)等を用いることができる。この場合には、選択マーカー遺伝子を発現する宿主とこれを発現しない宿主とを識別し得る条件は、その遺伝子が耐性を有する薬剤を含有する培地を用いて培養を行うことにより達成することができる。選択マーカー遺伝子としてNPTII遺伝子を使用する場合に用いる薬剤としては、カナマイシン(Km)が挙げられるが、これに何等限定されることはなく、G418やパロモマイシンも適宜選択して使用することができる。また、例えばハイグロマイシン耐性(例えば、Hyg)遺伝子の選択マーカーを発現させたDNA鎖を用いた場合にも同様の効果が期待できる。この場合に用いる薬剤としては、ハイグロマイシンを挙げることができる。
この場合においても、該DNA鎖を宿主細胞に導入して形質転換された植物体を得る方法としては、上記のような任意の方法を用いることができ、該植物体の発現確認には、例えばレポーター遺伝子がGusの場合には、上記の(i)ヒストケミカルなGus染色による方法により、及び/又は(ii)蛍光基質を用いる方法(Plant Molecular Biology Manual,C2(1994)1−32、前出)等によって確認することができる。
一般に、細胞の分化に伴って、メチル化による遺伝子の不活化が起こることが知られており、本発明によって開示されたプロモーターは、形質転換時のカルス等の未分化な植物細胞のみならず、植物体においても目的遺伝子を高発現させることが期待される。
産業上の利用可能性
本発明によれば、従来から植物用の高発現プロモーターとされてきたカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターによる構造遺伝子の発現が弱い植物、例えばキクにおいても、該発現効率を向上させることができる。
実施例
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕メチル化フリープロモーターの作製
CaMVの35SプロモーターのmRNA(転写)開始点より上流250bp中には13個のCG若しくはCNGが存在し、これらの塩基配列は植物体中で、それぞれCGメチル化酵素及びCNGメチル化酵素によりメチル化を受けていることが推察される。そこで、これらの配列をメチル化を受けないような配列に置換したDNAを全合成した(MF−48:配列番号1)。また、転写活性に特に大きな影響を持つと思われるocs領域については、その中のCG配列を残しつつ、6塩基の回文状構造(GACGTC)になるように改変したものを作製した(MF−18:配列番号2)。MF−48及びMF−18の配列(転写開始点より上流)と、植物の遺伝子操作で通常最もよく用いられるベクターpBI121に含まれる35Sプロモーターの配列との比較を、それぞれ図1A及び図1Bに示した。図1A及び図1Bにおいて、下線部はメチル化の標的と言われるCG及びCNG配列を表す。
上記のものとは別に、Friedrich Miescher−Institut(スイス国)のホーン博士より、35Sプロモーターのメチル化標的部位を改変した遺伝子(プラスミド名はpSan9:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93(1996)8334−8339、前出)の譲渡を受けた。この遺伝子は、mRNAの転写開始点の上流約250塩基対のプロモーター部分と、その下流にCaMVの35S遺伝子の約50塩基対の5’非翻訳配列(該プロモーター部分及び該5’非翻訳配列を併せて、以下「MF−28」という)、さらに下流にGusの構造(レポーター)遺伝子と35Sのターミネーターを含むGus遺伝子発現カセットから構成されている。
〔実施例2〕メチル化フリープロモーターを有するベクターの作製
このようにして作製したMF−48、MF−18及びMF−28の効果を形質転換された植物体で検証するため、発現ベクターを構築した。以下の発現ベクターはすべて、ボーダー配列に挟まれた領域内にGus遺伝子及びNPTII遺伝子の発現ユニットが、転写方向が反対になるように構成されている。これらの発現カセットを、アグロバクテリアと大腸菌で増幅可能なバイナリー型ベクター、pKT11を基本ベクターとして、Gus遺伝子及びNPTII遺伝子のプロモーターを置き換えることにより、pKT81、pKT83及びpMF−28を構築した。
上記バイナリー型ベクターpKT11は、アグロバクテリアA281のRB領域である、XhoI−EcoRI約250bp、Gus遺伝子の発現ユニット部分である、HindIII−EcoRI約3.5kbpの部分(5’側から順に、CaMVの35Sプロモーター、タバコのPsaDbの翻訳エンハンサー、トウゴマのカタラーゼ遺伝子のイントロンを含むGus遺伝子、nos遺伝子のターミネーターを連結)、NPTII遺伝子の発現ユニット部分である、HindIII−KpnI約1.7kbpの部分(nos遺伝子のプロモーターで駆動される植物体で働くNPTII遺伝子、nos遺伝子のターミネーター)、及びpBI121由来のレフトボーダー領域とアグロバクテリアと大腸菌で増幅可能な複製起点を持つ部分のKpnI−XhoI約5.5kbpから構成されているベクターであり、さらに、ダイズ由来のGlu遺伝子の翻訳エンハンサーを接続したプロモーターにより、Gus遺伝子を発現させたベクターである(図2D)。
実施例1で作製したDNA断片(プロモーター)をアガロースゲルにより精製し、プラスミドpKT11の35Sプロモーター領(HindIII−XbaI)と置換し、プラスミドpKT81、及びpKT83を作製した(図2)。
pKT81及びpKT83はそれぞれ、MF−48及びMF−18の下流に、翻訳効率を高める目的で、ダイズ由来のGlu遺伝子の翻訳エンハンサーを接続し、更に下流に、レポーター遺伝子であるGus遺伝子、nos遺伝子のターミネーターを繋げた発現ユニットを持つ。同時に、ipt遺伝子のプロモーター、ダイズ由来のGlu遺伝子の翻訳エンハンサー、NPTII遺伝子、及びnos遺伝子のターミネーターを接続した発現ユニットを含んでいる。
pMF−28は、pSan9のGus遺伝子発現カセット全体を、pKT11のGus発現カセットと交換したものである。
MF−48とMF−18のプロモーター、及びMF−28によりGus遺伝子をそれぞれ発現するベクターpKT81、pKT83及びpMF−28の制限酵素地図を、それぞれ図2A、B及びCに、ベースとなるpKT11を図2Dに示す。
また、ocs領域を増加させたプロモーターを作製するため、MF−48プロモーターのocsを含む領域である、制限酵素BamHIとBglIIの切断地点までの間の配列を、本プロモーターをBamHIで切断した断片へ挿入し、この配列が同じ向きで2コピー直列に並んだプロモーター(MF−48−2:配列番号3)、並びにこの配列が同じ向きで4コピー直列に並んだプロモーター(MF−48−4:配列番号4)をそれぞれ作製した(図3)。
〔実施例3〕Gus遺伝子を発現するキクカルスの作製
MF−48及びMF−18のプロモーターによりGus遺伝子を発現するベクターpKT81及びpKT83、並びに対照としてpKT11をエレクトロポレーション法により、アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株に導入し、これを下記のYEB−Km培地3mlに接種し、28℃で16時間、暗所で培養した後、遠心により集菌し、下記の感染培地10mlに懸濁して、これを感染液とした。YEB−Km培地及び感染培地の培地組成は、以下の通りである。
YEB−Km培地;5g/lビ−フエキス、1g/l酵母エキス、5g/lペプトン、5g/lスクロ−ス、2mM硫酸マグネシウム(pH7.2)、50mg/lカナマイシン。
感染培地;1/2濃度のMS(Murashige & Skoog,Physiol.Plant.,15(1962)473−497)培地の無機塩及びビタミン類、15g/lスクロ−ス、10g/lグルコ−ス、10mM MES(pH5.4)。
キクの栽培品種である、レ−ガン(Chrysanthemum morifolium cv.Reagan又はDendranthema grandiflorum cv.Reagan)の無菌個体の葉を5−7mm角に切断し、それぞれ各種ベクター:pKT11、pKT81及びpKT83を導入したアグロバクテリウム感染液に10分間浸し、過剰な感染液を濾紙上で拭き取った後、下記の共存培地に移植して25℃の暗所で培養した。3日間培養した後、下記の選択培地に移植して3週間培養することにより、Km耐性のカルスを得た。選択培地での培養は25℃、16時間照明(光密度32μE/ms)/8時間無照明の条件下で行った。得られたKm耐性のカルスを含む葉片各4枚ずつ、計12枚を、Gus遺伝子の発現確認のため、Gus活性測定に用いた。
共存培地;MS培地の無機塩及びビタミン類、30g/lスクロ−ス、1mg/lナフタレン酢酸、2mg/lベンジルアデニン、8g/l寒天、5mM MES(pH5.8)、200μMアセトシリンゴン。
選択培地;MS培地の無機塩及びビタミン類、30g/lスクロ−ス、1mg/lナフタレン酢酸、2mg/lベンジルアデニン、8g/l寒天、5mM MES(pH5.8)、25mg/lカナマイシン、300mg/lセフォタキシム。
該測定の反応溶液(100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1mM EDTA、0.1% Triton X−100、ジチオスレイトール(DTT)1mM)200μl中に該葉片を移し、氷冷しながら十分に破砕した。懸濁液を遠心して上清を回収し、これを粗酵素液とした。Gus活性の測定は、既報(Plant Molecular Biology Manual,C2(1994)1−32、前出)に基づいて行った。即ち、反応溶液145μlに粗酵素液5μl及び基質として2.8mg/mlの4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニド50μlを添加し、発生する蛍光を測定して行った。タンパク質量の測定はバイオラッド社のプロテインアッセイキットIIを用いて行い、タンパク質量あたりのGus活性を求めた。下記の表1にpKT11、pKT81及びpKT83によりそれぞれ形質転換されたカルスのGus活性を示す。pKT81及びpKT83により形質転換されたカルスは、pKT11により形質転換されたカルスよりも約4〜5倍高いGus活性を示したことから、メチル化フリープロモーター:MF−48及びMF−18が高発現性であることが確認された。
Figure 0003782013
MF−48−2及びMF−48−4についても、pBI121の35Sプロモーターと置き換えたベクターを作製し、上記同様、キク葉片を材料にした形質転換を行い、Km耐性のカルスを得た。それらのカルスを用いて、Plant Molecular Biology Manual,C2(1994)1−32(前出)に記載の方法に従って、Gus活性による組織染色を行ったところ、pBI121では、発色が観察されなかったのに比べ、MF−48−2及びMF−48−4では、著しく強い青色の発色が観察された。即ち、定性的な発現強度は、pBI121では−であったのに比べ、MF−48−2とMF−48−4では、+から++であった。
〔実施例4〕 Gus遺伝子を発現するキク植物体の作製
植物の形質転換において、しばしばカルスのような未分化な細胞中で高発現するプロモーターが、生長した植物体においては、ごく一部の細胞でしか高発現しない現象が見受けられる。この現象の1つの原因として、植物細胞が分化する際に、不要な遺伝子の発現を抑制するため遺伝子のメチル化が促進されることが考えられる。以上の観点から、本発明によって開示されたメチル化フリープロモーターは生長した植物体においても高発現するのではないかと考え、これを検証した。
pKT81、pKT83及びpMF−28を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株を、実施例3の方法に従って形質転換して得られたKm耐性のカルスからKmを含むMS培地(再生培地;実施例3の選択培地と同じ組成)で、植物体を再生させた。さらに、発根を促進するために、再生培地から植物生長調節物質(ナフタレン酢酸、ベンジルアデニン)を除いた発根促進培地で生長させた。
生長した植物体の中から外来遺伝子としてNPTII遺伝子を含有する個体を、PCRを行うことによって検出し、該再分化植物体が形質転換体であることを確認した。ここで、NPTII遺伝子特有の配列を特異的に増幅するプライマーとして、TAAAGCACGAGGAAGCGGT(配列番号5)、及びGCACAACAGACAATCGGCT(配列番号6)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で5分間の加熱後、94℃(30秒)−55℃(1分)−72℃(1分)のサイクルを30回行い、最後に72℃で10分間反応させた。この反応では、酵素としてExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いた。
それら植物体の葉各3枚、各遺伝子あたり10個体ずつについて、Km耐性のカルスと同様に活性を測定した平均値を、図4に示す。対照として、実施例3の形質転換法に従って、pBI121をキク及びタバコ(品種:キサンチ(Xanthi))に導入する実験も実施した。また、pKT81(MF−48)、pKT83(MF−18)、及びpMF−28(MF−28)を導入したキク形質転換体の葉でのGus遺伝子の発現量を、個体別に測定したヒストグラムを図5に示す。
結果は、pKT81(MF−48)、pKT83(MF−18)及びpMF−28(MF−28)を導入したキクでは、pBI121に比べて、より高いGus遺伝子の発現が観察された。とは言え、pMF−28の発現量は、高発現プロモーターの例としてよく知られているタバコでの発現量には及ばなかった。ところが、驚くべきことに、pKT81とpKT83ではタバコにおけるpBI121(35S)の発現量を、はるかに凌駕していた。その中でpKT81(MF−48)とpKT83(MF−18)を比較すると、pKT83(MF−18)の個体の方が、Gus遺伝子の発現が、より高い傾向があった(図4)。また、キクでの発現量を個体別に見てみると、例えばGus遺伝子の発現量は、3倍以上を示す個体は、MF−48及びMF−18に限定されていた。全体的にはMF−18の方が、MF−48に比べ、高発現個体数がより多い傾向にあった(図5)。
〔実施例5〕形質転換されたキクでの外来遺伝子のメチル化の解析
導入した遺伝子が生体内でどのようにメチル化をされているかを知るために、導入遺伝子の配列中のメチル化されているシトシンの位置を測定した。分析法は、Meyerらのシトシン・デアミネーションーPCR法(EMBO Journal,13(1994)2084−2088)に従った。その方法の概略は、まず、実施例4で得られた形質転換キクよりCTAB法によってDNAを抽出し、制限酵素EcoRIで切断後、変換バッファー(3M Na−bissulfate,0.5mMヒドロキノン,pH5.3)に懸濁し、窒素気相中、50℃で20時間反応させた。透析による脱塩後、DNAを0.3NのNaOHでアルカリ変性した後、エタノールによってDNAを沈殿させて回収した。次に、塩基配列を決定する部位を挟み込むように設定したDNAプライマーを用いてPCR反応を行った。ここで用いたPCRプライマーを以下に示す。
<35S領域メチル化解析用primer>
1回目のPCR
Figure 0003782013
2回目のPCR
Figure 0003782013
<35S相補鎖のメチル化解析用primer>
1回目のPCR
Figure 0003782013
2回目のPCR
Figure 0003782013
<GUS geneメチル化解析用primer>
1回目のPCR
Figure 0003782013
2回目のPCR
Figure 0003782013
<Pacl geneメチル化解析用primer>
1回目のPCR
Figure 0003782013
2回目のPCR
Figure 0003782013
<MFメチル化解析用primer>
1回目のPCR
Figure 0003782013
2回目のPCR
Figure 0003782013
Figure 0003782013
上記PCRの反応条件はすべて、1回目は94℃で5分間の加熱後、94℃(30秒)−65℃(1分)−72℃(1分)のサイクルを30回行い、最後に72℃で10分間反応させた。2回目は、1回目のPCR産物からの1μlを用いて、94℃で5分間の加熱の後、94℃(30秒)−60℃(1分)−72℃(1分)のサイクルを30回行い、最後に72℃で10分間反応させた。
この反応で、酵素はExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)を用い、PCRの合成産物をpT7blueにクローニングして、元のDNAについて、それぞれ約5クローンのDNA配列を決定した。これらの一連の変換反応によって、シトシンはウリジンに変換され、メチル化シトシンはそのままシトシンとして読まれるため、メチル基の有無が区別できる。塩基配列の差異は、DNASIS−Mac v3.7により解析した。
実施例4により得られたキク形質転換体を約10個体分析した結果、Gus遺伝子が高発現しているキク形質転換体では、35Sプロモーター中で、メチル化されたシトシンは比較的少なく、かつ約5クローン中でのメチル化されている割合も低かった。一方、Gus遺伝子の発現が検出できない個体では、35Sプロモーター中で、CGとCNGを含む、ほぼ全てのシトシンが高い割合でメチル化されていた。ここで、対照実験として、同じ遺伝子を導入したタバコ(品種:キサンチ(Xanthi))についても、Gus遺伝子の高発現個体を調査したところ、シトシンのメチル化は全く検出されなかった。なお、キクで35SプロモーターのDNAの相補鎖についてもシトシンのメチル化程度を調査したところ、メチル化シトシンが散在していたが、特定のシトシンが修飾されることはなく、またGus遺伝子の発現との相関もなかった。一方、構造遺伝子のメチル化についても調査したが、少なくとも翻訳開始点(ATG)から約600塩基までにはシトシンの修飾は、発現の強弱に関わらず、ほとんど見られなかった。以上のようなシトシンのメチル化と発現量の関係は、Gus遺伝子ばかりでなく、2本鎖RNA特異的RNase遺伝子(Nature Biotechnology,15,1290−1297、前出)を35Sプロモーターの下流に繋いだ構造をキクに導入した場合にも観察された。
次に、pKT81を導入し、Gus遺伝子を高発現しているキクについても、同様にメチル化の調査を行った。その結果、形質転換体によって、全くメチル化を受けない個体と、回文状構造以外の部位のシトシンが、プロモーターからGus遺伝子にかけて、強くメチル化を受けている個体があった。しかし、いずれの群の個体もGus遺伝子を強く発現していた事から、回文状構造(CG及びCNG)以外のシトシン残基のメチル化については、遺伝子発現への影響は少ないと考えられた。
従って、構造遺伝子の発現を上げる方法の一つとして、導入遺伝子のプロモーター部位の、CG及びCNGの回文状構造をなす塩基配列を変換することが重要と考えられた。なお、回文状構造の中でも、pKT83では、所謂ocs配列と呼ばれる短い配列中のCG配列(配列番号2の185及び197番目にあるシトシン塩基)については、変換しない配列になっているが、この部位の効果に関しては、実施例3(図4及び図5)の結果ではpKT81よりも活性が高い傾向にあるので、高発現プロモーターの作製に当たっては、このocs配列の回文状構造を変換しない方が、生体内でのより高い発現が達成できることが示された。
〔実施例6〕カーネーションの形質転換
メチル化フリープロモーターでNPTII遺伝子の発現量を増加させ、マーカーでの選抜効率を向上させることを目的に、NPTIIの発現カセットのNosプロモーターをメチル化フリープロモーターに変更した。簡単に説明すると、カセット中のNosプロモーターとMF−48プロモーターを、HindIIIからXbaIのDNA断片で置換し、MF−48プロモーター・NPTII・Nosターミネーターのカセットを作製した。これとpKT−11中のNPTII発現カセット(HindIIIからKpnI)と置換することにより、Gusの発現カセットと連結されたバイナリーベクターとして、pKT74を作製した。
このpKT74、及び対照としてpKT11をエレクトロポレーション法により、アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株に導入し、これを下記のYEB−Km培地3mlに接種し、28℃で16時間、暗所で培養した後、遠心により集菌し、下記の感染培地10mlに懸濁して、これを感染液とした。YEB−Km培地及び感染培地の培地組成は、以下の通りである。
YEB−Km培地;5g/lビ−フエキス、1g/l酵母エキス、5g/lペプトン、5g/lスクロ−ス、2mM硫酸マグネシウム(pH7.2)、50mg/lカナマイシン。
感染培地;1/2濃度のMS(Murashige & SKoog,Physiol.Plant.,15(1962)473−497)培地の無機塩及びビタミン類、15g/lスクロ−ス、10g/lグルコ−ス、10mM MES(pH5.4)。
カーネーションの栽培品種であるスケニア(Dianthus caryophyllus L)の無菌個体から葉の基部を切断し、それぞれpKT11及びpKT74を導入したアグロバクテリウム感染液に10分間浸し、過剰な感染液を濾紙上で拭き取った後、下記の共存培地に移植して25℃の暗所で培養した。3日間培養した後、下記の選択培地に移植して3週間培養することにより、G418耐性のカルスを得た。選択培地での培養は25℃、16時間照明(光密度32μE/ms)/8時間無照明の条件下で行った。
共存培地;MS培地の無機塩及びビタミン類、30g/lスクロ−ス、0.5mg/lインドール酪酸、0.22mg/lチジアズロン、8g/l寒天、5mM MES(pH5.8)、100mg/lアセトシリンゴン。
選択培地;MS培地の無機塩及びビタミン類、30g/lスクロ−ス0.5mg/lインドール酪酸、0.22mg/lチジアズロン、8g/l寒天、5mM MES(pH5.8)、25mg/l G418、300mg/lセフォタキシム。
〔実施例7〕 カーネーション形質転換体の選抜
pKT11及びpKT74を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株を、実施例6の方法に従って形質転換して得られたG418耐性の幼植物から、G418を含み、植物生長調節物質(インドール酪酸、チジアズロン)を含まないMS培地で、植物体を再生させた。
生長した植物体の中から外来遺伝子としてNPTII遺伝子を含有する個体を、PCRを行うことによって検出し、該再分化植物体が形質転換体であることを確認した。ここで、NPTII遺伝子特有の配列を特異的に増幅するプライマーとして、TAAAGCACGAGGAAGCGGT(配列番号5)、及びGCACAACAGACAATCGGCT(配列番号6)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で5分間の加熱後、94℃(30秒)−55℃(1分)−72℃(1分)のサイクルを30回行い、最後に72℃で10分間反応させた。この反応では、酵素としてExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)を用いた。
PCRによりNPTII遺伝子が検出された個体を形質転換体とした。pKT11及びpKT74のそれぞれについて、使用した葉片あたりの形質転換体の数として形質転換効率を算出したところ、pKT11では5%以下であったのに対し、pKT74では25%以上の効率を示した。なお、Gus活性については、実施例3と同様に測定し、組換え体がすべてGus遺伝子を発現していることを確認した。
以上の結果から、選択マーカー遺伝子を発現させる上でも、MF−48プロモーターは極めて有効に機能するものと考えられた。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1A及び図1Bは、本発明によるプロモーター:MF−48のDNA配列(図1A)及びMF−18のDNA配列(図1B)(上段)と、pBI121に含まれる35SプロモーターのDNA配列(下段)との比較を示す図である。
図2は、プラスミドpKT81(A)、pKT83(B)、pMF−28(C)及びpKT11(D)の構造の一部を示す図である。
図3は、プラスミドpMF−48−Gus、並びにその誘導体pMF−48−2及びpMF−48−4の概略を示す図である。
図4は、4種類のベクターで形質転換したキクの葉における、Gus遺伝子の発現量の平均値(10個体以上)を、対照としてのpBI121で形質転換した組換えタバコでのGus遺伝子の発現量への相対値で表した図である。
図5は、それぞれ3種類のベクターで形質転換したキクの葉における、Gus遺伝子の発現量の相対値(対照はpBI121で形質転換した組換えタバコ)の個体別の分布を示した図である。

Claims (13)

  1. 以下の( i )又は( ii )に示されるDNA。
    i)配列番号1で表わされる塩基配列を含むDNA。
    ii)配列番号1で表わされる塩基配列中の第7〜272塩基からなる塩基配列を含むDNA。
  2. 以下の( iii )〜( viii )のいずれかに示されるDNA。
    iii)配列番号2で表わされる塩基配列を含むDNA。
    iv)配列番号2で表わされる塩基配列中の第7〜272塩基からなる塩基配列を含むDNA。
    v)配列番号3で表わされる塩基配列を含むDNA。
    vi)配列番号3で表わされる塩基配列中の第7〜322塩基からなる塩基配列を含むDNA。
    vii)配列番号4で表わされる塩基配列を含むDNA。
    viii)配列番号4で表わされる塩基配列中の第7〜422塩基からなる塩基配列を含むDNA。
  3. 請求項1または2に記載のDNAを含んでなるDNA鎖。
  4. 構造遺伝子DNAと、該構造遺伝子が発現するような様式で該構造遺伝子DNAの5’部位に組み込まれた請求項1又は2に記載のDNAとを含んでなる請求項記載のDNA鎖。
  5. 請求項又は記載のDNA鎖で形質転換された宿主。
  6. 宿主が植物細胞である、請求項記載の宿主。
  7. 請求項記載の宿主を前記構造遺伝子が発現可能なように培養又は栽培することを特徴とする、植物で構造遺伝子を発現させる方法。
  8. 構造遺伝子が外来遺伝子である請求項記載の方法。
  9. 請求項記載の宿主を用いて、該プロモーター活性を有するDNAにより転写が活性化される又は発現が促進される構造遺伝子の発現産物である蛋白質を製造する方法。
  10. 請求項記載の宿主から再生により得られる形質転換植物。
  11. 選択マーカー遺伝子DNAと、該選択マーカー遺伝子が発現するような様式で該選択マーカー遺伝子DNAの5’部位に組み込まれた請求項1又は2に記載のDNAとを含んでなる請求項記載のDNA鎖。
  12. 請求項11記載のDNA鎖で宿主を形質転換処理し、得られた宿主を、前記選択マーカー遺伝子が発現可能であり、かつ、該選択マーカー遺伝子を発現する宿主とこれを発現しない宿主とを識別し得る条件下で培養することを特徴とする、形質転換宿主を選択する方法。
  13. 宿主が植物細胞である、請求項12記載の方法。
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