JP4053878B2 - 催涙成分生成酵素のアイソザイム及びそれをコードする遺伝子 - Google Patents

催涙成分生成酵素のアイソザイム及びそれをコードする遺伝子 Download PDF

Info

Publication number
JP4053878B2
JP4053878B2 JP2002525815A JP2002525815A JP4053878B2 JP 4053878 B2 JP4053878 B2 JP 4053878B2 JP 2002525815 A JP2002525815 A JP 2002525815A JP 2002525815 A JP2002525815 A JP 2002525815A JP 4053878 B2 JP4053878 B2 JP 4053878B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
acid sequence
component
protein
enzyme
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2002525815A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2002020808A1 (ja
Inventor
真介 今井
信昭 柘植
宗明 朝武
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
House Foods Corp
Original Assignee
House Foods Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by House Foods Corp filed Critical House Foods Corp
Publication of JPWO2002020808A1 publication Critical patent/JPWO2002020808A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4053878B2 publication Critical patent/JP4053878B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/90Isomerases (5.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/88Lyases (4.)

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

技術分野
本発明は、タマネギ等を粉砕又は切断した時に発生する催涙成分の生成に関与する催涙成分生成酵素のアイソザイムに関するものであり、更に詳しくは、タマネギ等に存在する含硫化合物のPeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる活性を持つ催涙成分生成酵素の3種のアイソザイム、そのアミノ酸配列及び当該アイソザイムをコードするDNA等に関するものである。
本発明の催涙成分生成酵素のアイソザイム、そのアミノ酸配列及びそれをコードするDNAは、例えば、催涙成分の生成を制御すること、破砕又は切断した時に発生する催涙成分の量を低減化させたタマネギ品種の開発において、材料や交配物などの選別指標として使用すること、当該酵素の発現量を抑制するための情報を提供すること、当該酵素を大量に生産すること、催涙成分を大量に生産すること、等を実現化するものとして有用である。

背景技術
タマネギを粉砕又は切断した時に発生する催涙成分については、これまで、多くの研究成果が報告され、S−1−プロペニル−システインスルフォキシドがアリイナーゼによって分解されると催涙成分が生成されると考えられて来た。
しかし、本発明者らの研究によって、S−1−プロペニル−システインスルフォキシドがアリイナーゼによって分解されただけでは催涙成分は生じず、他の酵素(催涙成分生成酵素)の関与が不可欠であることが判明した。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を積み重ね、催涙成分生成酵素(催涙性物質生成酵素)の製造方法を開発すると共に、催涙成分生成酵素の理化学的性質をも明かにして、先に、特許出願をした(特開平10−295373号公報)。
すなわち、タマネギ等に存在する催涙成分(Lachrymatory Factor;LF)の形成及びその分解については、これまで、多くの研究成果が報告されているが、上記催涙成分の生成メカニズムについては、従来は、上記前駆物質のPeCSOに酵素アリイナーゼが作用し、スルフェン酸を経て非酵素的により安定な催涙成分になると考えられていた。しかし、本発明者らが研究したところによれば、実際に、上記成分は酵素アリイナーゼの作用だけでは生じず、他の酵素の関与が不可欠であることが判明した。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を積み重ね、上記スルフェン酸を異性化して催涙成分を生成すると考えられる新しい酵素(催涙成分生成酵素)の存在することを見出し、それによって、上記前駆物質は、当該酵素の作用の如何によって、催涙成分(香り成分)あるいはこれと別の風味成分になることが分かった。
この催涙成分生成酵素のアミノ酸配列や、それをコードするDNA情報を用いれば、例えば、タマネギの品種開発において、遺伝子組換えや変異の誘導・交配などが効果的に行え、粉砕や切断しても催涙成分が発生し難いタマネギの作出などに役立てることができる。
一方、催涙成分生成酵素のアミノ酸配列をコードするDNA情報を利用すれば、遺伝子組換え技術等によって当該酵素を大量に生産することが可能になり、例えば、涙欠乏症(ドライアイ)などの治療に役立つ催涙成分を効率的に製造する技術の開発にも役立つ。
しかしながら、催涙成分生成酵素のアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子に関しては、これまで、全く報告例がなく、情報がないため、催涙成分生成酵素に関する遺伝子レベルでの研究は困難であった。

発明の要約
本発明は、催涙成分生成酵素のアイソザイム、そのアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子等を提供することを目的とするものである。
本発明は、タマネギ等に存在する催涙成分の生成に関与する催涙成分生成酵素の3種のアイソザイム、その蛋白質又はポリペプチドである配列番号1〜3に示されるアミノ酸配列、上記蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列を含有する配列番号4〜5に示されるDNA、上記アイソザイムの製造方法、上記DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターで形質転換した形質転換体、該宿主細胞を培養して、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを製造する方法、に関する。

発明の開示
このような状況の中で、本発明者らは、酵素アリイナーゼの存在下でタマネギ等に存在するPeCSOから催涙成分を生成する作用を有する催涙成分生成酵素の構造を解明することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、催涙成分生成酵素の複数のアイソザイム、そのアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子配列の解明に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、催涙成分生成酵素の3種のアイソザイムと、そのアミノ酸配列を提供することを目的とする。
また、本発明は、催涙成分生成酵素のアイソザイム蛋白質又はポリペプチドをコードする遺伝子配列を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記催涙成分生成酵素のアイソザイムの作用を制御して、催涙成分生成酵素活性の発現を抑制したり、当該酵素活性を阻害したタマネギを作り出すことを実現化する方法等を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記遺伝子配列を有する組換えベクター、及び催涙成分生成酵素のアイソザイムを遺伝子組換え技術により効率的に作り出すことを実現化する方法を提供することを目的とする。

上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
)配列番号1で示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
)配列番号2で示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
)配列番号3で示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
)前記()、()又は()に記載の蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列を含有するDNA。
)蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列が、配列番号で示されるDNAである前記(4)に記載のDNA。
)蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAが、配列番号で示されるDNAである前記(4)に記載のDNA。
所望の遺伝子産物をコードする塩基配列とベクターとを有し、該塩基配列が前記(4)、(5)又は(6)に記載の塩基配列であることを特徴とする組換えベクター。
前記(7)に記載の組換えベクターで微生物を形質転換した形質転換体。
PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素より、その等電点の差を利用して、精製することにより配列番号1、2又3のアミノ酸配列を含むアイソザイムを分離することを特徴とする催涙成分生成酵素のアイソザイムの製造方法。
10)前記()、()又は()に記載のDNAを含有する組換えベクターで形質転換した宿主細胞を培養し、培地中又は細胞中に産生されたPeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを分離することを特徴とする、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドの製造方法。

次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明では、上記課題を達成するために、まず、従来法で精製した催涙成分生成酵素(E2)中に含まれるアイソザイムを、その等電点の差を利用して、等電点電気泳動ないしクロマトフォーカシング法によって精製し、3種類のアイソザイムを単離する。次いで、単離した3種類のアイソザイムについて、N末端アミノ酸配列を明らかにし、これから予想される遺伝子の塩基配列を基にプライマーを設計し、タマネギのmRNAから作製したcDNAを鋳型にしてPCR法によって催涙成分生成酵素の遺伝子を選択的に合成する。
本発明者らは、こうして得た遺伝子の構造解析を行った結果、一つのオープンリーディングフレームが検出され、そこから予想された成熟蛋白質の分子量は、単離したアイソザイムの分子量の実測値(MALDI−TOFMS)と一致したことから、上記遺伝子は、催涙成分生成酵素の遺伝子であることを確認した。
S−1−プロペニル−システインスルフォキシド(PeCSO)のアリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素は、タマネギの風味改質や加工適性の向上に関して重要な成分である。したがって、催涙成分生成酵素の生産や植物育種の分野においては、この催涙成分生成酵素のアミノ酸配列の決定及びそれをコードする遺伝子配列の決定は、極めて有意義である。
本発明者らは、上記催涙成分生成酵素(E2)のアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子配列を明らかにすることを主たる目標として研究をスタートした。すなわち、催涙成分生成酵素の遺伝情報を解明することができれば、例えば、タマネギの加工時に催涙成分が生成しないタマネギ品種の開発などへの応用が期待できる。そこで、E2の構造遺伝子配列を決定し、その遺伝子及びアミノ酸配列を明らかにすることを目標として研究に着手した。
しかし、研究を進めるにつれて、通常の精製方法で得たE2の精製酵素試料ではN末端アミノ酸配列の決定は困難であることが分かった。すなわち、本発明者らが検討したところ、先に、本発明者らが開発した従来の方法で得たE2には、複数のアイソザイムが含まれていること、そのために、E2のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を解明する前に、アイソザイムの単離が必要となること、が判明した。本発明者らは、これらの知見を踏まえて、更に研究を重ねて、E2の主要アイソザイム3種(E2−1、E2−2、E2−3)を単離し、そのN末端アミノ酸配列を決定した。これを基にプライマーを設計し、PCR等の手法を用いて、各E2アイソザイムをコードする遺伝子配列とアミノ酸配列を決定することに成功した。
更に、この点について詳述すると、従来の方法で精製した催涙成分生成酵素試料は、SDS−PAGEの電気泳動で1バンドとして検出されたので、単一の蛋白質であると推定し、N末端のアミノ酸分析を試みた。しかし、この部分精製試料には、複数のアイソザイムが混在していたため、N末端のアミノ酸配列を特定することはできなかった。
そこで、イオン交換樹脂の種類や溶出条件、ゲルろ過カラムのサイズやゲルの種類等について種々検討し、アイソザイムの分離を試みたが、いずれの方法でも分離できなかった。一方、ネイティブのポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動では、アイソザイムが複数のバンドとして検出できた。そこで、ゲルから切り出して精製する方法を試みた。しかし、この方法では、各アイソザイムの分離が不充分であることや、切り出すアイソザイムの位置が泳動毎に変動したため、正確な切り出しが行えず、純度の高いアイソザイムを得ることはできなかった。こうした試みを繰り返した結果、等電点の差を利用した精製方法である、等電点ゲル電気泳動ないしクロマトフォーカシングを用いれば、複数のアイソザイムを効率的に分離できることが分かった。
尚、等電点電気泳動については、例えば、pH4.0〜6.5のアンフォラインを含むポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行い、泳動後のゲルを切り出し、水やBufferで溶出してアイソザイムを単離する方法が採用できる。クロマトファーカシングについては、例えば、Mono Pカラム(ファルマシア製)を無水ピペラジン−HCl Bufferで平衡化した後、Poly Buffer74(ファルマシア製)を用いたBufferで溶出してアイソザイムを単離することができる。
部分精製試料中に含まれる、主要なアイソザイムは、3種類(E2−1、E2−2、E2−3)であったので、この3種類のアイソザイムを、等電点ゲル電気泳動やクロマトフォーカシングで精製した。しかし、この様な精製方法を採用しても、純度の高いアイソザイムを得るためには、精製操作を数回繰り返して行う必要があった。このような経過をへて、本発明者らは、主要な3種のアイソザイムの単離に成功した。
上記催涙成分生成酵素試料は、好適には、タマネギ等を原料として、抽出、精製し、製造されるが、原料として、タマネギと同様に、上記酵素含有材料であれば、タマネギ以外のものを使用することができる。この場合、上記酵素の抽出、精製工程として、例えば、以下の方法が好適なものとして例示される。
すなわち、例えば、タマネギを原料とし、これを水で加水し、ミキサー等で破砕する。得られた破砕物を遠心し、その上澄み液を塩析して蛋白質を沈澱させる。次いで、上記沈澱物をリン酸バッファー等の緩衝液に溶解し、遠心し、その上澄み液を粗酵素液として採取する。
ここで、緩衝液としては、各種のものが使用できるが、例えば、リン酸カリウムバッファー、クエン酸バッファー、酢酸バッファー、酒石酸バッファー、コハク酸バッファー、マレイン酸バッファー、Tris−HClバッファー、クエン酸−リン酸バッファー、等が例示される。
次に、上記方法によって得られた粗酵素液を、例えば、ハイドロキシアパタイト、硫安塩析、透析、陰イオン交換、ゲル濾過等の手段を適宜組合わせて、精製処理することにより、部分生成酵素液とすることができる。
粗酵素液からの上記酵素の部分精製は、上記方法に限らず、公知の分離、精製方法が適用できるが、例えば、粗酵素液から硫安塩析法、有機溶媒沈澱法などにより粗酵素蛋白を得て、更に、これをイオン交換、ゲル濾過、アフィニティー等の各種クロマトグラフィーを適宜組合わせることによって精製処理することができる。
催涙成分生成酵素のアイソザイムのcDNAを取得する具体的な方法としては、例えば、E2−1〜E2−3の各N末端アミノ酸配列をもとにcDNAプローブを作製し、タマネギのバルブから抽出したE2のmRNAを鋳型にして作製したcDNAライブラリーからハイブリダイゼーションにより、E2のcDNAを釣り上げる方法や、mRNAのポリA鎖にアンカーを付加し、これに相補するプライマーとE2−1〜E2−3の各N末端アミノ酸配列をもとに作製したプライマーを用い、mRNAから合成したcDNAを鋳型にしてPCR法で、E2の3’末端側配列を明かにした後、5’RACE法で5’末端側配列を明らかにする方法など、が例示される。
上記3種類のアイソザイムは、好適には、例えば、以下の方法によりその遺伝子配列を決定することができるが、以下の方法に制限されるものではない。
1)タマネギの鱗片からフェノール/SDS/LiCl法でトータルRNAを抽出する。
2)トータルRNAをオリゴdTカラムで処理してmRNAを精製する。
3)mRNAを逆転写酵素で処理してcDNAを合成する。
4)E2−1のN末端アミノ酸5残基を基にして作製した、デジェネレートプライマーとポリA鎖の末端に付けたアンカー部分に対応するプライマーを用いてPCRを行い、E2−1の下流側に由来する増幅産物を得る。
5)得られたPCR増幅産物を精製した後、サブクローニングして、塩基配列を明らかにする。
6)PCRで得られた増幅産物がE2−1に由来することは、E2−1のMALDI−TOFMSによる分子量測定結果とアミノ酸配列から予測される分子量が良く一致することから確認できる。
7)E2−1の内部配列から設計したプライマーと、5′末端に付加したオリゴdC鎖に付けたアンカーから設計したプライマーを用いたPCR(5′RACE)を行い、上流側に由来する増幅産物を得る。
8)得られたPCR増幅産物を精製した後、サブクローニングして、塩基配列を明らかにする。
シークエンスの分析結果を解析し、E2−1のオープンリーディングフレーム(ORF)の存在を確認した結果、E2−1は169個のアミノ酸からなる蛋白質として合成された後、プロセッシングによってN末端の16個のアミノ酸が除かれ、成熟した蛋白質になることが判明した。
すなわち、催涙成分生成酵素のアイソザイムのcDNAを取得し、解析した結果、上記E2−1、E2−2、E2−3は、同じ遺伝子を基に蛋白質に翻訳されるが、その後のプロセッシングのされ方の違いによって、E2−1、E2−2、E2−3になることが分かった。また、E2−2のN末端から2番目、並びに、E2−3のN末端から4番目のアミノ酸は、Asnが翻訳後、Aspに変化することも分かった。この様にして、E2−1、E2−2、E2−3の遺伝子配列とアミノ酸の一次配列を決定した。
E2−2とE2−3は、同一の遺伝子を基に合成され、プロセッシングの違いにより生じるアイソザイムであることが、実験の結果、明らかとなった。
E2−3のN末端アミノ酸配列を10残基まで解析した結果、E2−2のN末端アミノ酸配列5残基は、E2−3のN末端3残基目から7残基目と完全に一致することが分かった。
(E2−2のN末端アミノ酸配列)
Ala Asp Gly Ala Arg
(E2−3のN末端アミノ酸配列)
Asp Ser Ala Asp Gly Ala Arg Lys Trp Ser
この結果から、E2−3は、E2−2のN末端側にSer とAsp が付加した蛋白質であることが分かった。
以上の結果から、E2−2とE2−3は、同一の遺伝子を基に合成されていると考えられる。
次に、E2−3の遺伝子配列を解明するため、E2−3のN末端アミノ酸9残基を基にして作製したデジェネレートプライマーと、ポリA鎖の末端に付けたアンカーから設計したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を得る。
得られたPCR増幅産物を精製した後、サブクローニングして、塩基配列を明らかにする。
シークエンスの分析結果を解析した結果、E2−3の下流側配列は、E2−1で確認した配列と一致することが分かった。
ここで、E2−3の下流側配列は、E2−1で確認した配列と一致したため、5′RACE用プライマーは、E2−1の上流配列を確認するために使ったプライマーと同じになる。
5′RACEでは共通したアンカープライマーを用いるので、E2−3の上流配列がE2−1の上流配列と違うとすると、E2−1で行った5′RACEの増幅産物には、E2−3の上流配列とE2−1の上流配列の両方が含まれ得ることが考えられる。
そこで、異なる組換え体コロニーからDNAを抽出して、E2−1の5′RACE産物を更に2回シークエンスした。
解析の結果、追加して行った2個の5′RACE産物の配列は、先に解析したE2−1の上流配列と一致した。
以上の結果、E2−3の上流配列もE2−1の上流配列と同じである可能性が高いと考えられる。
そこで、種々検討を重ねた結果、E2−3はE2−1と同じ遺伝子を元に翻訳されること、並びに、成熟した蛋白質になる過程で、Asn からAsp に変化する、との結論を得た。
上記結論が正しいことは、E2−2とE2−3のMALDI−TOFMSによる分子量測定結果とアミノ酸配列から予測される分子量がよく一致することからも確認できる。
E2−2(155アミノ酸)の分子量は17689、実測値は17722。
E2−3(157アミノ酸)の分子量は17892、実測値は17909。
次に、PeCSO、アリイナーゼ、E2の混合系における至適pHと至適温度について説明する。
E2の至適pHは、いずれも4.5〜5.0で3者に大きな差はない。
E2−1〜3の至適温度についても、15℃から25℃の室温領域であり、大きな差はないことが判った。
上記3種類のアイソザイムは、いずれも分子量、至適pH及び催涙成分を生成する作用において、著しい一致をみせている。本発明においては、いずれのアイソザイムも、本発明の催涙成分生成酵素のアイソザイムに包含される。
なお、E2−1を試料にして、N末端アミノ酸分析を行ったところ、含有量が少ない他の2種類のアイソザイム(E2−1−1、E2−1−2と命名した)が検出され、これらのN末端アミノ酸配列も決定した。
すなわち、粗精製したE2試料中には、上記した3種類のアイソザイムの他、マイナーなアイソザイム(E2−1−1、E2−1−2)も存在した。
各アイソザイムのN末端アミノ酸配列と分子量測定値を以下に示す。
分子量
(アイソザイム) (N末端のアミノ酸配列) (MALDI-TOFMS)
E2-1 Gly Ala Arg Lys Trp 17465
E2-1-1 Ala Arg Lys Trp
E2-1-2 Ser Ala Asn Gly Ala
E2-2 Ala Asp Gly Ala Arg 17722
E2-3 Asp Ser Ala Asp Gly Ala Arg Lys Trp Ser
17909

E2−2のN末端から2番目とE2−3のN末端から4番目のAsp は、Asn の形で合成された後、Asp に変換されると考えられるため、上記の位置のAsp がAsn であるE2−2、E2−3も存在すると推測される。配列から判明した分子量は、E2−1(153アミノ酸)は17503、E2−2(155アミノ酸)は17689、E2−3(157アミノ酸)は17892であり、MSでの測定値と近い。
本発明の催涙成分生成酵素のアイソザイムをコードするDNAは、配列番号の塩基配列で表されるDNA、及び上記蛋白質のアミノ酸配列に1もしくは複数のアミノ酸の付加、欠失、もしくは置換を行って得られる誘導体を含む蛋白質又はポリペプチドをコードするDNAを包含する。
本発明の催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドは、上記酵素活性を有し、上記蛋白質のアミノ酸配列にアミノ酸の付加、欠失、もしくは置換を行って得られる誘導体を含む蛋白質又はポリペプチド、配列番号1〜3のアミノ酸配列で表される、上記酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを包含する。
本発明の上記E2のアイソザイムをコードするDNA、上記アミノ酸配列は、例えば、催涙成分の生成を制御する方法、これらを指標として、交配に供するタマネギを選抜する方法、催涙成分生成酵素活性を低減させたタマネギの品種を作出する方法、催涙成分生成酵素を遺伝子組換え技術により大量に生産する方法、等を実現させるものとして有用である。

本発明の催涙成分生成酵素のアイソザイムの応用例として、例えば、以下の例が例示される。
(1)催涙成分生成酵素の生産
前記のようにして得た催涙成分生成酵素のアイソザイムのcDNAを適宜の発現ベクターに組み込んで、組換えベクターを作製することができる。
使用するベクターは、宿主細胞内で自律的に複製可能であって、上記DNA、すなわち、E2アイソザイム遺伝子を組み込み得る挿入部位を持ち、更に、この組み込んだDNAを宿主細胞内で発現せしめることを可能とする領域を有するものであれば、その種類は、特に制限されない。
また、ベクターに組み込むE2アイソザイム遺伝子としては、本発明の催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドをコードするように設計して合成されたDNAを用いることができる。また、組み込む生物種での発現を促進するために、組み込む生物種に合わせてコドンを変換することがあるが、これらのコドン変換されたDNAも本発明の範囲に含まれることは云うまでもない。この様なアミノ酸配列を基にした遺伝子の合成は、例えば、DNA自動合成機を利用して合成したオリゴヌクレオチドをアニール後に連結する等の方法により、適宜実施することができる。
更に、E2−1、E2−2、E2−3では、N末端のアミノ酸配列が異なるにも拘わらず、酵素的性質は、著しく一致していることからも明白なように、1もしくは複数の一部のアミノ酸が付加、欠失しても、天然のE2と同じ酵素的性質が得られる可能性がある。また、一部のアミノ酸残基が置換しても、結果として天然のE2と同じ酵素的性質が得られる可能性がある。このような遺伝子の改変は、市販遺伝子の部位特異的変異導入キットを用いたり、合成遺伝子を挿入する等の方法により、容易に実現することが可能である。したがって、ベクターに組み込むE2アイソザイム遺伝子としては、天然のE2と同じ酵素的性質が維持されている限り、その変異体であってもよい。次いで、上記組換え発現ベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体を得る。組換え発現ベクターの宿主細胞への導入は、慣用的に用いられている方法により行うことができる。その方法として、例えば、コンピテントセル法、プロトプラスト法、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポソーム融合法等、種々のものが例示されるが、用いる宿主に応じてそれぞれ任意の方法を採用すればよい。本発明のE2のアイソザイムを産生する宿主としては、好適には、大腸菌、枯草菌、酵母、麹菌などの微生物、カイコ培養細胞等の細胞が例示される。
上記のようにして得られた形質転換体を培養することにより、培養物中にE2のアイソザイムを生産させることができる。これを公知の方法で単離し、あるいは精製することにより、安定に催涙成分生成酵素のアイソザイムを得ることが可能となる。
(2)アンチセンスRNAによる催涙成分を生成しない植物の生産
本発明のE2のアイソザイムをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、アンチセンスRNAを植物内で発現させることにより、上記遺伝情報の発現を抑制することができる。アンチセンスRNAは、mRNAに対して相補的塩基配列を持ち、mRNAと塩基対を形成することにより、遺伝情報を遮断し、最終産物であるE2のアイソザイムの蛋白質合成を抑制する。本発明において使用できるアンチセンスRNAは、配列番号に示す塩基配列を元に合成されるmRNAと特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドである。
アンチセンスヌクレオチドのターゲット部位は、遺伝子によって様々であり、どの部位が必ずよいと言うコンセンサスはない。しかし、一般的には、ATGスタートサイトなどが、ターゲット部位の候補になり得る。更に、最近では、ターゲット部位とアンチセンスヌクレオチドをデザインするためのコンピューター解析ソフト(HYB simulatorなど)も数種発売されているので、これらを利用してアンチセンスヌクレオチドを設計することも可能である。なお、アンチセンスヌクレオチドの長さは、18〜23mer、GCコンテントは50%以上が好ましい。
上記アンチセンスRNAを植物内で機能させる方法としては、例えば、発現ベクターのプロモーターの下流にcDNAを逆向きに組み込んで宿主細胞に導入してアンチセンスRNAを合成させる方法が例示される。
外来遺伝子を導入する方法としては、アグロバクテリウムによる形質転換方法や、直接導入による形質転換法を用いることができるが、タマネギなどの単子葉植物については、特に直接導入による形質転換方法で良好な結果が得られている(Klein, T. M. et al. Nature 327, 70-73, 1987 参照)ので、直接導入する方法が好ましい。
(3)E2蛋白質の大量生産
本発明におけるE2蛋白質のポリペプチドをコードする塩基配列を有するDNAを含有する発現型べクターは、例えば、(イ)E2をコードするRNAを単離し、(ロ)該RNAから単鎖のcDNAを、次いで二重鎖DNAを合成し、(ハ) 該cDNAをプラスミドに組み込み、(ニ)得られたプラスミドで宿主を形質転換し、(ホ) 得られた形質転換体を培養後、適当な方法により、目的とするプラスミドを単離し、(ヘ)そのプラスミドからクローン化DNAを切り出し、(ト)該クローン化DNAを発現型べクターのプロモーターの下流に連結することにより製造することできる。
E2をコードするRNAは、E2を含有する材料であれば、タマネギ以外のものも使用することができる。E2含有材料からRNAを調製する方法としては、フェノール/SDSとLiCl法(細胞工学別冊、細胞工学シリーズ2、植物のPCR実験プロトコールp51 秀潤社) などが挙げられる。このようにして得られたRNAを鋳型とし、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、得られたcDNAをプラスミドに組み込む。
cDNAを組み込むプラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のpBR322(ジーン(gene), 2,95(1977)),pBR325(ジーン,4,121(1978),枯草菌由来のpUB110(バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochemical and Biophysical Research Communication),112,678(1983))などが挙げられるが、その他のものであっても、宿主内で複製保持されるものであれば、いずれも用いることができる。プラスミドに組み込む方法としては、ベクターとインサートのモル比を1:1から1:10にした混合液を作製し、T4リガーゼで処理する方法が一般的である(細胞工学別冊、バイオ実験イラストレイテッド (2)遺伝子解析の基礎、p78、秀潤社)。このようにして得られたブラスミドは、適当な宿主、例えば、エシェリキア(Eschechia)属菌、バチルス(Bacillus)属菌などに導入する。
上記エシェリキア(Eschechia)属菌の例としては、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A)60,160(1968))などが挙げられる。上記バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114(ジーン,24,255(1983))などが挙げられる。形質転換する方法としては、カルシウムクロライド法(バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション、49、1568(1972))などが挙げられる。このようにして得られた形質転換体中から、公知の方法、例えば、コロニー・ハイブリダイゼーション法(ジーン、10、63(1980)及びDNA塩基配列決定法(プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス、74、560(1977))などを用い、求めるクローンを選出する。このようにして、クローン化されたE2をコードする塩基配列を含有するDNAを有するべクターを保持する微生物が得られる。
次に、該微生物からプラスミドを単離する。単離法としては、アルカリ法(ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),1513(1979))などが挙げられる。上記クローン化されたE2をコードする塩基配列を含有するプラスミドは、そのまま、又は所望により制限酵素で切り出す。クローン化された遺伝子は、発現に適したべクター中のプロモーターの下流に連結して発現型べクターを得ることができる。
べクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110)、酵母由来プラスミド(例えば、pSH19)あるいはλファージなどのバクテリオファージ及びレトロウィルス、ワクシニアウィルスなどの動物ウィルスなどが挙げられる。該遺伝子はその5’末端に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA、又はTAGを有しても良い。また、既知の蛋白質をコードする遺伝子の3’末端に該遺伝子の5’末端を結合させ、融合蛋白質として発現させる場合は、翻訳開始コドンは必ずしも必要としない。更に、該遺伝子を発現させるためにはその上流にプロモーターを接続する。本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでも良い。また、形質転換する際の宿主がエシェリキア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーターなどが好ましい。とりわけ宿主がエシェリキア属菌でプロモーターがlacプロモーターであることが好ましい。宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウィルスのプロモーターなどが挙げられ、とりわけSV40由来のプロモーターが好ましい。
このようにして構築されたDNAを含有するべクターを用いて、形質転換体を製造する。宿主としては、エシェリキア属菌、バチルス属菌、酵母、動物細胞などが挙げられる。上記エシェリキア属菌、バチルス属菌の具体例としては、前記したものと同様のものが挙げられる。上記酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシアエ(Saccaromyces cerevisiae)AH22Rなどが挙げられる。動物細胞としては、例えば、去る細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHOなどが挙げられる。この様にして、DNAを含有するべクターで形質転換された形質転換体が得られる。
その一例としては、例えば、後述の実施例(11)で得られたEscherichia coli BL21/pGEX−4T−3−E2−3−1が挙げられ、該微生物は、ブタペスト条約基づき、2001年7月25日に独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−7675として寄託され、同研究所に保管されている。宿主がエシェリキア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。
エシェリキア属菌を培養する際の培地としては、例えば、LB培地やSOC培地(細胞工学別冊 バイオイラストレイテッド、1.分子生物学実験の基礎、p98−99、秀潤社) が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率良く働かせるために、例えば、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)のような薬剤を加えることができる。宿主がエシェリキア属菌の場合、培養は通常15〜43℃で3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。宿主がバチルス菌属の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行い、必要により通気や撹拌を加えることもできる。宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホルダー最小培地(プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス77,4505(1980))が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて、通気や撹拌を加える。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEN培地(サイエンス(Science)122,501(1952)DMEM培地(ヴィロロジー(Viro−logy)、8、396(1959))などが挙げられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃から40℃で約15時間から60時間行い、必要に応じて、二酸化炭素濃度を高めることができる。
上記培養物からE2蛋白を分離精製するには、例えば、下記の方法により行うことができる。E2蛋白を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体又は細胞を集め、これを塩酸グアニジンなどの蛋白変性剤を含む緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び(又は凍結融解) によって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離によりE2蛋白を得る方法などが適宜用いられる。上記上澄液からE2蛋白を精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製方法としては、塩析や溶媒沈殿法などの溶解性を利用する方法、透析法、ゲルろ過法などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法などが挙げられる。

発明を実施するための最良の形態
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例
(1)催涙成分精生成酵素のアイソザイムの単離
催涙成分生成酵素試料は、タマネギを原料として、本発明者らが開発した従来の方法(特開平10−295373号公報)を用いて作製した。
1)クロマトフォーカシングによる精製
クロマトフォーカシング用カラムであるMono P HR5/20(5φ×200mm)(ファルマシア製)をStart buffer(0.025M無水ピペラジンをHClでpH5.7に調整したもの)で平衡化した後、500μlの試料をアプライした。アプライ後は、Eluent buffer(ファルマシア製10% Poly bufferをHClでpH4.0に調整したもの)にて溶出し、溶出液を分画して回収した。溶出液の流速は0.5ml/min、分析温度は4℃とし、280nmの吸収と催涙成分生成酵素活性を測定した。
2)活性の測定方法
活性の測定方法は、試料を希釈用Buffer(50mMリン酸カリウムBuffer pH6.5)で希釈し、希釈試料10μlに、ニンニクアリイナーゼ(50units/ml)40μlとPeCSO溶液(20mg/ml)20μlを加え、室温で3分間反応させた後、反応液1μlをHPLCにアプライし、催涙成分の生成量を定量した。なお、分析にはOSDカラム(4.6φ×250mm)(センシュウ科学社製)、又はDOCOSILカラム(4.6φ×250mm)(センシュウ科学社製)を用いた。その他、移動相には30%(v/v)の酸性MeOHを、流速は、0.6ml/min、カラム温度は35℃、検出は254nmとした。
3)結果
Mono Pカラムでの精製の結果、E2には複数のアイソザイムが存在すること、並びに含有量が高いアイソザイムはそのうちの、3種類であることが分かった。そこで、この3種類のアイソザイム(E2−1、E2−2、E2−3)を単離した。
Mono Pカラムからの代表的な溶出パターンを図1に示す。E2−1はフラクションNo.4、E2−2はフラクションNo.6、E2−3はフラクションNo.10、11である。また、E2−1には微量成分としてE2−1−1及びE2−1−2が含まれていた。
N末端のアミノ酸配列を確定できたE2のアイソザイムは、含有量が多い3種類と、含有量が少ない2種類の全5種類であった。

(2)アイソザイムの至適pH及び至適温度の比較
精製したE2−1、E2−2、E2−3の各試料を350mMのリン酸カリウムBuffer(pH2.4〜8.0)で希釈し、上記(1)と同じ方法で活性を測定した。反応液のpHは反応終了後に実測した。活性の強さは、最大活性を示した点を100%とし、相対値で評価した。
実験の結果、E2の各アイソザイムの至適pHはいずれも4.5〜5.0で類似していることが判明した。至適pHの測定結果を図2に示す。
上記(1)で示した方法で反応液を作製し、反応温度を0℃から60℃まで変化させた。活性の強さは、最大活性を示した点を100%とし、相対値で評価した。実験の結果、E2の各アイソザイムの至適温度はいずれも15℃〜25℃で類似していることが判明した。至適温度の測定結果を図3に示す。

(3)催涙成分生成酵素のアイソザイムのN末端アミノ酸配列の決定
等電点電気泳動及びクロマトフォーカシングで精製した催涙成分生成酵素のアイソザイムを、フェニルイソチオシアナート法で分析することによって、N末端アミノ酸配列を決定した。この場合、プロテインシークエンサーとしては、G100A(HEWLETT PACKARD)を、また、PTHアナライザーとしては、1090(HEWLETT PACKARD)を使用した。
得られたN末端アミノ酸配列は、以下の通りであった。
試料名 含有量 配 列
E2-3 多い Asp Ser Ala Asp Gly Ala Arg Lys Trp Ser
E2-1-2 少ない Ser Ala Asn Gly Ala
E2-2 多い Ala Asp Gly Ala Arg
E2-1 多い Gly Ala Arg Lys Trp
E2-1-1 少ない Ala Arg Lys Trp

(4)タマネギ由来のcDNAの合成
タマネギの燐片2.4gから、フェノール/SDS/LiCl法によって全RNAを調製した。更に、オリゴdTセルロースカラムクロマトグラフィーによって、mRNAを含むポリA−RNA1.5μgを単離し、これを鋳型としてオリゴdTプライマーと逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。全RNAからmRNAの調製には、mRNA Purificationキット(ファルマシア製)を、また、mRNAを鋳型とするcDNAの合成には、RTG−T−Primed First−Strandキット(ファルマシア製)を用いた。

(5)E2−1をコードするcDNAの3’末端側塩基配列の決定
E2−1のN−末端アミノ酸配列からDNAの塩基配列を推定し、合成プライマー、5’−GGIGCI(A/C)GIAA(A/G)TGG−3’を作製した。また、オリゴdTプライマーに付けたアンカー部分に相補するリバースプライマー、5’−TGGAGGAATTCGCGGCCGCAG−3’も作製した。作製した2つのプライマーを用いて、タマネギ由来のcDNAを鋳型として、サーマル サイクラー(PEバイオシステムズ社製)を用いて、以下の温度条件下でPCR反応を行った。
すなわち、95℃、9分間の熱変性の後、94℃、1分間の熱変性、続いて43℃、1分間のアニーリング、72℃、1分間の伸長反応を40サイクル繰り返し、その後、72℃、2分間の伸長反応を行って反応を停止した。その結果、約660bpの単一な産物を得た。尚、プライマーの塩基配列において、「/」は「又は」を、「I」はイノシンを示す。

(6)PCRで増幅されたE2−1をコードするcDNAの3’末端側の塩基配列の解析
PCRで増幅された約660bpの塩基配列を決定するために、増幅産物をアガロースゲルから切り出して精製し、pGEM−T Easy Vectorにサブクローニングした。これを大腸菌(XL1−Blue)に導入し、増幅させた後、組換え大腸菌からプラスミドを採取し、精製した。このプラスミドを試料とし、ダイデオキシ法によって3’末端側の塩基配列を決定した。

(7)E2−1をコードするcDNA5’末端側塩基配列の決定
E2−1の5’末端側cDNAの解析には、5’RACE法を用いた。具体的には、5’RACEシステムキット(LIFE TECHNOLOGIES社)を用い、mRNAから合成したcDNAの5’末端にオリゴdCをtailingして、これを鋳型として用いた。プライマーには、キット付属のAnchor primer、5’−GGCCACGCGTCGACTAGTACGGGIIGGGIIGGGIIG−3’とE2−1の3’末端側cDNAの解析で判明した配列を基に作製したリバースプライマー、5’−TCCTCGTACCCTGTAAAACACTCAG−3’を用い、サーマル サイクラー(PEバイオシステムズ社製)を用いて以下の温度条件下でPCR反応を行った。
すなわち、95℃、9分間の熱変性の後、94℃、1分間の熱変性、続いて55℃、1分間のアニーリング、72℃、1分間の伸長反応を40サイクル繰り返し、その後、72℃、7分間の伸長反応を行って反応を停止した。その結果、約430bpの単一な産物を得た。

(8)E2−1由来cDNAの5’末端側の塩基配列の解析
PCRで増幅された約430bpの塩基配列を決定するため、増幅産物をアガロースゲルから切り出して精製し、前記3’末端側の塩基配列の場合と同じ手順で配列を決定した。3’側及び5’側の解析により得られた全長の塩基配列を配列番号に示す。また、配列番号に検出されたオープンリーディングフレーム部分の配列を配列番号に示す。

(9)塩基配列から得られたアミノ酸配列
配列番号に示した塩基配列からアミノ酸配列を推測し、これを、E2−1のN末端アミノ酸配列と比較したところ、該当する配列が見出されたため、単離されたcDNAは催涙性物質生成酵素のアイソザイムE2−1のcDNAであることが確認された。更に、MALDI−TOFMSで測定したE2−1の分子量は、塩基配列から得られたアミノ酸配列から推測される分子量と良く合致することも確認した。
E2−1分子量:測定値17465、計算値17503
更に、単離されたcDNAがコードする蛋白質のアミノ酸配列と成熟蛋白質のアミノ酸配列を比較検討した結果、cDNAがコードする蛋白質のN末端側に、成熟蛋白質には含まれないペプチドが存在することが見出された。その結果、E2−1は蛋白質への翻訳後、N末端側16個のアミノ酸が切断され成熟蛋白質になることが確認された。この成熟したE2−1のアミノ酸配列を配列番号1に示した。

(10)E2−2、E2−3のアミノ酸配列の決定
上記(2)〜(9)の方法と同様の方法により、E2−2、E2−3のアミノ酸配列を決定した。
前述のアイソザイムのN末端アミノ酸配列の分析結果から、E2−2は、E2−1よりN末端側のアミノ酸が2残基分長い産物、E2−3は4残基分長い産物であろうと予測されたが、実際には、E2−1をコードする遺伝子から推定されるアミノ酸をE2−2,E2−3のN末端アミノ酸と比較すると1箇所だけ合致しないことが判明した。
合致しなかったアミノ酸は、E2−2のN末端から2残基目、E2−3のN末端から4残基目のアスパラギン酸で、E2−1をコードする遺伝子では、アスパラギンがコードされていた。したがって、E2−1をコードする遺伝子とE2−2やE2−3をコードする遺伝子が異なる可能性が考えられたため、前記E2−1の場合と同様の方法で、E2−2及びE2−3をコードする遺伝子を解析した。
先ず、3’末端側塩基配列の決定用に、E2−3のN−末端アミノ酸9残基の配列から、次のE2−3−N9−1とE2−3−N9−2並びにE2−3−Aspの3種類の合成プライマーを作製した。
E2−3−N9−1・・5’−GA(C/T)AG(C/T)GCI(A/G)A(C/T)GGIGCICGIAA(A/G)TGG−3’

E2−3−N9−2・・5’−GA(C/T)TCIGCI(A/G)A(C/T)GGIGCICGIAA(A/G)TGG−3’
E2−3−Asp・・5’−GATAGTGCTGA(C/T)GGAGCTCGAAAATGG−3’

E2−3−N9−1のプライマーと前記(5)で合成したリバースプライマーとの組み合わせ、及びE2−3−N9−2のプライマーとリバースプライマーとの組み合わせ、E2−3−Aspのプライマーとリバースプライマーとの組み合わせで、タマネギ由来のcDNAを鋳型として、サーマル サイクラー(PEバイオシステムズ社製)を用いてPCR反応を行った。なお、PCR条件は、アニーリング温度を53℃に変更した以外、前記(5)の場合と同様にした。
PCRの結果、いずれのプライマーの組み合わせでも約660bpの単一な産物が得られた。また、得られた3種類の産物の塩基配列は、プライマー部分を除き、E2−1の配列と一致した。この結果は、E2−2及びE2−3をコードする遺伝子の3’末端側塩基配列はE2−1をコードする遺伝子の配列と同じであることを示す。
次に、5’末端側塩基配列の決定を行った。前記(7)の場合と同様の手順で増幅させた産物について、更に、シークエンスを2度行った結果、増幅産物の塩基配列は、いずれもE2−1の5’末端側配列と一致した。
以上の結果より、E2−2及びE2−3をコードする遺伝子は、E2−1をコードする遺伝子と同一であることが示唆された。
E2のアイソザイムをコードする遺伝子が同一であることから、E2−2のN末端から2残基目、及びE2−3のN末端から4残基目のアスパラギン酸は、アスパラギンとして翻訳された後、アスパラギン酸に変換されることが判明した。
アスパラギンがアスパラギン酸に変化する反応については、Journal of Liqid Chromatography,15(6&7),1115−1128(1992)などに紹介されており、アスパラギンのC末端側にグリシンが結合すると、アスパラギン酸への変化が起き易いことが報告されている。
なお、塩基配列から推定されるE2−2の分子量(17689)は、E2−2分子量測定値(17722)と、E2−3の分子量(17892)は、E2−2分子量測定値(17909)とほぼ合致したことからも、E2−2やE2−3をコードする塩基配列はE2−1をコードするcDNA配列と同一であることを確認した。
以上の結果より、E2−2は、蛋白質への翻訳後、N末端側14個のアミノ酸の切断と、N末端から2残基目のアスパラギンがアスパラギン酸への変換を受けて、成熟蛋白質になること、E2−3は、蛋白質への翻訳後、N末端側12個のアミノ酸の切断と、N末端から4残基目のアスパラギンがアスパラギン酸への変換を受けて、成熟蛋白質になることが判明した。
その結果を、配列番号2、配列番号3に各々示す。更に、上記E2−1、E2−2、E2−3をコードする遺伝子領域を含む507塩基から成る構造遺伝子(ORF)の塩基配列を配列番号に、また、737塩基から成る全長の塩基配列を配列番号に、更に当該全長の塩基配列及びE2のアミノ酸配列を図4に示す。

(11)発現プラスミドの構築
本実施例のE2−2、E2−3のアミノ酸配列の決定で述べた方法に従い、E2−3−N9−1のフォワードプライマーとオリゴdTプライマーに付けたアンカー部分に相補するリバースプライマー(前記(5)で合成したリバースプライマー)を使い、タマネギ由来のcDNAを鋳型として、PCR反応を行って、約660bpの産物(産物A)を得た。
また、E2−3−N9−1のフォワードプライマーの代わりに、E2−3−N9−2をフォワードプライマーとして用いたPCRを行い、同様に約660bpの産物(産物B)を得た。
得られた産物A及びBを、先に述べた塩基配列の決定方法に従って、pGEM−T Easy Vectorにサブクローニングした後、大腸菌(XL1−Blue)に導入し、塩基配列を解析した。図7に、サブクローニングの手順を示す。
産物Aが組み込まれたpGEM−T Easy Vectorを持つ大腸菌の中から、配列番号3で示されるポリペプチドをコードする塩基配列を持つ大腸菌(XL1−Blue/pGEM−T−E2−3−1)を得た。XL1−Blue/pGEM−T−E2−3−1に導入された産物Aの塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号6及び配列番号7、及び図5に示す。
同様に、産物Bが組み込まれたpGEM−T Easy Vectorを持つ大腸菌の中から、配列番号3のアミノ酸配列番号4位のAspだけが、Asnに置き代わったポリペプチドをコードする塩基配列を持つ大腸菌(XL1−Blue/pGEM−T−E2−3−2)を得た。XL1−Blue/pGEM−T−E2−3−2に導入された産物Bの塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列番号8及び配列番号9、及び図6に示す。
蛋白質の発現用ベクターとして、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)遺伝子の配列の下流にプロテアーゼ認識部位とマルチクローニングサイトを持つ、pGEX−4T−3(アマシャムファルマシア製)を用いた(図8)。
pGEX−4T−3をEcoRI(Takara社製)とNotI(Takara社製)で切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−3−1をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−3−E2−3−1を構築した。
同様に、pGEX−4T−3をEcoRIとNotIで切断して得られる大断片と上記pGEM−T−E2−3−2をEcoRIとNotIで切断して得た約700bpの断片を連結し、発現プラスミドpGEX−4T−3−E2−3−2も構築した。

(12)発現プラスミドを用いた大腸菌の形質転換体の作製と培養
コンピテントセル法により、上記のpGEX−4T−3−E2−3−1を大腸菌BL21−Gold(STRATAGENE社製)に導入し、形質転換体BL21−Gold/pGEX−4T−3−E2−3−1(FERM BP−7675)を得た(図8)。
また、同様に、pGEX−4T−3−E2−3−2を大腸菌BL21−Gold(STRATAGENE社製)に導入し、形質転換体BL21−Gold/pGEX−4T−3−E2−3−2を得た。
得られた形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で37℃で振とう培養した。培地にイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して生産誘導するとGSTとE2−3−1の融合蛋白質(以下、当該融合蛋白質をGST−E2−3−Aspという)、並びにGSTとE2−3−2の融合蛋白質(以下、当該蛋白質をGST−E2−3−Asnという)が菌体内に蓄積した。

(13)蛋白質の単離(精製)
上記のようにして形質転換体を培養し、菌体を遠心分離によって集めた後、超音波破砕した。遠心によって回収した上澄をグルタチオンセファロース4 Fast Flowカラム(アマシャムファルマシア製)に流し、GST融合蛋白質をカラムに吸着させた。カラムを洗浄後、還元型グルタチオンを含む溶出Bufferで、融合蛋白質を溶出し、2種のE2−3融合蛋白質試料(GST−E2−3−Asp、GST−E2−3−Asn)の精製物を得た。
融合蛋白質試料2種をHiTrap Desaltingカラム(アマシャムファルマシア製)に流し、還元型グルタチオンを除去し、再度グルタチオンセファロース4 Fast Flowカラムに吸着させた。カラムを洗浄後、トロンビンを含むBufferでカラムを満たし、室温で2時間プロテアーゼ処理を行って、GSTタグを融合蛋白質から切り離した。GSTタグを除いた組換えE2−3−Asp及びE2−3−Asnをカラムから溶出させ、更に、この溶出液にBenzamidine Sepharose 6 Bを加え混合し、遠心分離することによって、溶出液中のトロンビンを除き、2種の組換えE2−3試料(RC−E2−3−Asp、RC−E2−3−Asn)を得た。

(14)組換え蛋白質の催涙成分生成酵素活性
融合蛋白質試料であるGST−E2−3−Asp、GST−E2−3−Asn並びに、GSTタグを取り除いた組換えE2−3試料である、RC−E2−3−Asp、RC−E2−3−Asnの4試料について催涙成分生成酵素活性を測定した。
その結果、融合蛋白質試料であるGST−E2−3−Asp及びGST−E2−3−Asnでは、催涙成分生成酵素活性が検出された。一方、E2−3遺伝子を導入しなかった発現プラスミドpGEX−4Tで作製した形質転換体(BL21−Gold/pGEX−4T−GST)を培養し、グルタチオンセファロースカラム処理をしても催涙成分生成酵素活性は検出されなかった。また、試料の代わりにリン酸Bufferを使ったBlankでも、催涙成分生成酵素活性が無かった。図9にグルタチオンセファロース4 Fast Flowカラムからの溶出液を5000倍に希釈した試料で行った活性測定結果を示す。
以上の結果から、E2−3のN末端に、GST(分子量約27000)のような大きな蛋白質が結合した融合蛋白質でも、催涙成分生成酵素活性を有することが確認できた。
また、RC−E2−3−Asp及びRC−E2−3−Asnにも催涙成分生成酵素活性が検出されたので、ブラッドフォード法で蛋白質を定量し、比活性を算出した。
その結果、RC−E2−3−AspとRC−E2−3−Asnの比活性には、差が無いことがわかった。また、天然のE2−3と組換えで得たE2−3の比活性も同レベルであることがわかった。

試料名 比活性(area/mg)
RC−E2−3−Asp 4.4×108
RC−E2−3−Asn 4.1×108
天然体 E2−3 2.5×108

産業上の利用可能性
本発明は、タマネギを破砕又は切断した時に発生する催涙成分を生成させる活性を有する催涙成分生成酵素のアイソザイム、その蛋白質又はポリペプチドのアミノ酸配列及びそれをコードするDNA等に係り、本発明によれば、1)従来方法では精製することが困難であったE2酵素の3種のアイソザイム(E2−1、E2−2、E2−3)を単離し、提供することができる、2)これらのアイソザイムのアミノ酸配列を提供することができる、3)これらのアイソザイムをコードする塩基配列を提供することができる、4)上記アミノ酸配列及びこれをコードするDNAは、例えば、破砕又は切断時に発生する催涙成分量を低減させたタマネギ品種の開発において、交配に供する材料を選抜する指標などとして有用である、5)上記DNAから得られる情報は、当該酵素の発現量を抑制するために必要なアンチセンスヌクレオチドの設計に有用である、6)催涙成分生成酵素を遺伝子組換え技術により効率的に作り出すことが可能となる、7)涙欠乏症(ドライアイ)などの治療に役立つ催涙成分を効率的に生産することを実現化できる、という格別の効果を奏する。

寄託された微生物への言及
寄託機関の名称及びあて名:独立行政法人産業技術総合研究所
特許生物寄託センタ−(あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)
寄託した日付:2001年7月25日
受託番号:FERM BP−7675
微生物の表示:E2−3−1
【配列表】
Figure 0004053878
Figure 0004053878
Figure 0004053878
Figure 0004053878
Figure 0004053878
Figure 0004053878

【図面の簡単な説明】
図1は、Mono Pでの溶出パターンを示す。
図2は、アイソザイムの至適pHを示す。
図3は、アイソザイムの至適温度を示す。
図4は、737塩基から成る全長の塩基配列及びE2のアミノ酸配列を示す。
図5は、EcoRIとNotIで切り出された673塩基から成るE2−3−1の塩基及び160個のアミノ酸配列を示す。
図6は、EcoRIとNotIで切り出された673塩基から成るE2−3−2の塩基及び160個のアミノ酸配列を示す。
図7は、E2−3−1及びE2−3−2のcDNAの作製及びサブクローニングの手順を示す。
図8は、発現プラスミドの構築と形質転換体の作製手順を示す。 図9は、グルタチオンセファロース4 Fast Flowカラムからの溶出液を5000倍に希釈した試料で行った活性測定結果を示す。

Claims (10)

  1. 配列番号1で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
  2. 配列番号2で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
  3. 配列番号3で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列中の1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチド。
  4. 請求項1、2又は3に記載の蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列を含有するDNA。
  5. 蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列が、配列番号で示されるDNAである請求項4に記載のDNA。
  6. 蛋白質又はポリペプチドをコードする塩基配列を含有するDNAが、配列番号で示されるDNAである請求項4に記載のDNA。
  7. 所望の遺伝子産物をコードする塩基配列とベクターとを有し、該塩基配列が請求項4、5又は6に記載の塩基配列であることを特徴とする組換えベクター。
  8. 請求項7に記載の組換えベクターで微生物を形質転換した形質転換体。
  9. PeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素より、その等電点の差を利用して、精製することにより配列番号1、2又3のアミノ酸配列を含むアイソザイムを分離することを特徴とする催涙成分生成酵素のアイソザイムの製造方法。
  10. 請求項4、5又は6に記載のDNAを含有する組換えベクターで形質転換した宿主細胞を培養し、培地中又は細胞中に産生されたPeCSO(S−1−プロペニル−システインスルフォキシド)の酵素アリイナーゼによる分解物から催涙成分(チオプロパナールS−オキサイド)を生成させる催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドを分離することを特徴とする、催涙成分生成酵素活性を有する蛋白質又はポリペプチドの製造方法。
JP2002525815A 2000-09-04 2001-08-30 催涙成分生成酵素のアイソザイム及びそれをコードする遺伝子 Expired - Lifetime JP4053878B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000267813 2000-09-04
JP2000267813 2000-09-04
PCT/JP2001/007465 WO2002020808A1 (fr) 2000-09-04 2001-08-30 Isozymes de synthase de composant lacrymogene et gene les codant
CA002374527A CA2374527A1 (en) 2000-09-04 2002-03-05 Gene of enzyme activity to generate lachrymatory factor

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2002020808A1 JPWO2002020808A1 (ja) 2004-01-15
JP4053878B2 true JP4053878B2 (ja) 2008-02-27

Family

ID=32231673

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002525815A Expired - Lifetime JP4053878B2 (ja) 2000-09-04 2001-08-30 催涙成分生成酵素のアイソザイム及びそれをコードする遺伝子

Country Status (10)

Country Link
US (2) US7371554B2 (ja)
EP (1) EP1316612B1 (ja)
JP (1) JP4053878B2 (ja)
CN (1) CN100516224C (ja)
AT (1) ATE428789T1 (ja)
CA (1) CA2374527A1 (ja)
DE (1) DE60138395D1 (ja)
ES (1) ES2325310T3 (ja)
NZ (1) NZ524116A (ja)
WO (1) WO2002020808A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999014225A1 (fr) * 1997-09-12 1999-03-25 Ajinomoto Co., Inc. Produit d'addition d'acetone pour agent antifongique v-28-3m

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2321922T3 (es) * 2002-03-01 2009-06-15 House Foods Corporation Dna y vector para regular la expresion del gen de la sintasa del factor lacrimatorio, metodo para regular la expresion del gen de la sintasa del factor lacrimatorio mediante su uso, y planta con expresion regulada del gen de la sintasa del factor lacrimatorio.
EP1709959A4 (en) * 2004-01-16 2008-07-16 House Foods Corp REAGENT FOR LAMINATION EXAMINATION AND LAMINATION EXAMINATION METHOD
WO2007029854A1 (ja) * 2005-09-05 2007-03-15 House Foods Corporation 催涙成分生成酵素阻害剤
JP5383075B2 (ja) * 2007-04-19 2014-01-08 ハウス食品グループ本社株式会社 乾燥lfsを含有する組成物の製造方法、および催涙成分発生キット
JPWO2022202994A1 (ja) 2021-03-25 2022-09-29
JPWO2022202995A1 (ja) 2021-03-25 2022-09-29

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0538496B1 (en) * 1991-08-26 2003-10-29 Baxter Healthcare S.A. Recombinant fowlpox virus with intact FPV-tk-gene
JP3330305B2 (ja) * 1997-04-23 2002-09-30 ハウス食品株式会社 玉葱の催涙性物質生成酵素

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999014225A1 (fr) * 1997-09-12 1999-03-25 Ajinomoto Co., Inc. Produit d'addition d'acetone pour agent antifongique v-28-3m

Also Published As

Publication number Publication date
EP1316612A1 (en) 2003-06-04
EP1316612B1 (en) 2009-04-15
JPWO2002020808A1 (ja) 2004-01-15
ES2325310T3 (es) 2009-09-01
CN1447859A (zh) 2003-10-08
ATE428789T1 (de) 2009-05-15
WO2002020808A1 (fr) 2002-03-14
DE60138395D1 (de) 2009-05-28
EP1316612A4 (en) 2004-12-29
US7371554B2 (en) 2008-05-13
CA2374527A1 (en) 2003-09-05
NZ524116A (en) 2005-08-26
US20090081754A1 (en) 2009-03-26
CN100516224C (zh) 2009-07-22
US20050176126A1 (en) 2005-08-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gietl Glyoxysomal malate dehydrogenase from watermelon is synthesized with an amino-terminal transit peptide.
KR100316347B1 (ko) 대장균엔테로톡신ⅱ신호펩티드의변형체와인체성장호르몬의융합단백질을발현하는재조합미생물및그를이용한인체성장호르몬의제조방법
US20090081754A1 (en) Gene of enzyme having activity to generate lachrymatory factor
Hum et al. Expression of active domains of a human folate-dependent trifunctional enzyme in Escherichia coli
KR101721396B1 (ko) 향상된 전환 활성을 가지는 l-아라비노스 이성화효소 변이체 및 이를 이용한 d-타가토스의 생산 방법
AU2003211614B2 (en) Protein or polypeptide having lachrymator synthase activity, DNA encoding the protein or the polypeptide, process for producing protein or polypeptide having lachrymator synthase activity using the DNA, and nucleic acid molecule inhibiting the translation of mRNA concerning the protein or the peptide
US5210189A (en) DNA sequence encoding glycerol 3-phosphate acyltransferase
EP0690128A1 (en) Polypeptide having cold-resistant pyruvate phosphate dikinase activity, dna coding for the same, and recombinant vector and transformed plant both containing said dna
JP3887600B2 (ja) D−ミオ−イノシトール1−エピメラーゼをコードするdna
JPH08196281A (ja) 水生成型nadhオキシダーゼをコードするdna
AU783670B2 (en) Gene of enzyme having activity to generate lachrymatory factor
US6331428B1 (en) Hexulose phosphate isomerase gene
JP4122580B2 (ja) ヘキシュロースリン酸イソメラーゼ遺伝子
EP0682117A1 (en) Dna coding for carbonic anhydrase
JP4357044B2 (ja) クロロフィラーゼをコードするdna及びそれにより形質転換された植物
US7098018B2 (en) Aminopeptidase derived from bacillus licheniformis, gene encoding the aminopeptidase, expression vector containing the gene, transformant and method for preparation thereof
JP4193986B2 (ja) ガンマグルタミルシステインの生産方法
Müller et al. Isolation of a gene encoding cysteine synthase from Flavobacterium K3–15
CN116515793A (zh) 一种烟酰胺单核苷酸腺苷转移酶突变体及其制备方法和用途
CN115261363A (zh) Apobec3a的rna脱氨酶活性测定方法及rna高活性的apobec3a变体
JP2004236642A (ja) 昆虫細胞のゲノムに外来dnaを導入するための方法
JP2002262887A (ja) グルタミナーゼおよびグルタミナーゼ遺伝子
JP2000125876A (ja) アラニン脱水素酵素遺伝子、組換え体dna及びアラニン脱水素酵素の製造法
JPH09313184A (ja) 好塩性古細菌由来のサイクロフィリンタイプppiアーゼ遺伝子
JPH06153946A (ja) 新規なタンパク質およびそれをコードする遺伝子

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061204

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070202

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070314

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070731

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071001

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20071112

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20071206

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101214

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4053878

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101214

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111214

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121214

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121214

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131214

Year of fee payment: 6

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term