JP4357044B2 - クロロフィラーゼをコードするdna及びそれにより形質転換された植物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロロフィラーゼをコードするDNA及びそれにより形質転換された植物に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロロフィラーゼ(EC 3.1.1.14)は、加水分解によりクロロフィルをより水溶性のクロロフィリドとフィトールに分解する酵素であり、クロロフィル分解の第一段階を触媒する鍵酵素と考えられている。
【0003】
クロロフィラーゼは、通常、組織中の存在量が少なく、また、疎水的なタンパク質であり、界面活性剤なしでは不安定であるため、その取り扱いが困難である。これまでに、種々の組織からの単離・精製の報告があり、1993年にT. Trebitshらのグループがクロロフィラーゼ活性の比較的高いオレンジの果皮から(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 9441-9445 (1993))、1997年に本発明者らが、これもクロロフィラーゼ活性の高いシロザ葉から(Plant Cell Physiol. 38(9): 1026-1031 (1997))、それぞれクロロフィラーゼの精製を行い、そのN末端配列の決定について報告している。しかし、そのような状況にもかかわらず、クロロフィラーゼ遺伝子の単離は報告されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、クロロフィラーゼをコードするDNAを提供することを目的とする。また、本発明は、そのDNAで形質転換された植物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、シロザ葉から単離したクロロフィラーゼの主要な二つのイソ酵素のN末端配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを合成し、シロザcDNAライブラリーのスクリーニングを行ったが、クロロフィラーゼ遺伝子を単離することはできなかった。そこで、すでに報告した精製方法をさらにスケールアップして、大量精製を試みたところ、すでに報告したイソ酵素に加えて、もう一つのマイナーなイソ酵素を均一に精製することに成功した。そして、このイソ酵素の部分内部アミノ酸配列の解析結果から得られた配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを作成し、このプローブを用いて、シロザ成葉から作成したcDNAライブラリーをスクリーニングした結果、相当する遺伝子の単離に成功した。さらに、決定された塩基配列に基づいて、データベースを検索したところ、2つの塩基配列が得られた。得られた3つの塩基配列にコードされるアミノ酸配列には保存領域が認められた。これらの塩基配列を有するDNAを大腸菌で発現させたところ、生じたタンパク質にクロロフィラーゼ活性が認められた。以上の知見に基づき、本発明は完成された。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(8)のDNAを提供する。
(1)下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a) 配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
【0007】
(2)下記の(a)または(b)のDNA。
(a)配列番号1に示す塩基配列のうち塩基番号19〜1059からなる塩基配列を含むDNA。
(b)(a)のDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0008】
(3)下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA(但し、配列番号3に示す塩基配列のうち塩基番号49〜1020からなる塩基配列を含むDNAを除く)。
(a) 配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
【0009】
(4)下記の(a)のDNA。
(a)配列番号3に示す塩基配列のうち塩基番号49〜1020からなる塩基配列を含むDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0010】
(5)下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA(但し、配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列を含むDNAを除く)。
(a) 配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
【0011】
(6)下記の(a)のDNA。
(a)配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列を含むDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0012】
(7)下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a) 配列番号20に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
【0013】
(8)下記の(a)または(b)のDNA。
(a)配列番号19に示す塩基配列のうち塩基番号31〜1092からなる塩基配列を含むDNA。
(b)(a)のDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0014】
また、本発明は、配列番号2、4及び6に示す3つのアミノ酸配列において保存されているアミノ酸配列に基づいて作成されたプローブがストリンジェントな条件においてハイブリダイズし得るDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを提供する。
【0015】
さらに、本発明は、上記DNAのいずれか、または、配列番号3に示す塩基配列のうち塩基番号49〜1020からなる塩基配列もしくは配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列を含むDNAにより形質転換された植物を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
<1>クロロフィラーゼをコードするDNA
クロロフィラーゼをコードするDNA(以下、本発明DNAともいう)としては、配列番号2、4、6または20に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするものが挙げられる。
【0017】
本発明DNAは、コードされるクロロフィラーゼの活性が損なわれない限り、配列番号2、4、6または20に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、または付加を含むクロロフィラーゼをコードするものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なる。それは、アミノ酸が変化しても、タンパク質の立体構造に大きな影響を与えない位置があること、および、イソロイシンとバリンあるいはセリンとスレオニンのように、アミノ酸によっては、類縁性の高いアミノ酸が存在し、そのようなアミノ酸の違いが、タンパク質の立体構造に大きな影響を与えないことに由来する。
【0018】
また、上記のような欠失、置換または付加には、個体差、種や属の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutantまたはvariant)も含まれる。
【0019】
1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列は、配列番号2、4、6または20に示すアミノ酸配列全体に対し、通常には、60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有し、クロロフィラーゼ活性を有するものであってもよい。なお、本明細書において、相同性の値は、マキシマム・マッチング(J. Mol. Biol. 48: 443(1970))により算出されるものである。
【0020】
本発明DNAとして、より具体的には、配列番号1に示す塩基配列のうち塩基番号19〜1059からなる塩基配列、配列番号3に示す塩基配列のうち塩基番号49〜1020からなる塩基配列、配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列、または、配列番号19に示す塩基配列のうち塩基番号31〜1092からなる塩基配列を含むDNAが挙げられる。なお、配列番号3に示す塩基配列のうち塩基番号49〜1020からなる塩基配列、および、配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列は、配列自体は知られていたが、その機能は未知であったものである。
【0021】
本発明DNAは、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードする限り、上記に挙げた塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであってもよい。
【0022】
ストリンジェントな条件としては、55℃において、100μg/mlの変性サケ精子DNAを含む6×標準クエン酸食塩水(SSC)/5×デンハルト/0.1%SDS溶液中でハイブリダイゼーションを行い、55℃において、2×SSC/0.1%SDSで洗浄するという条件、および、この条件でハイブリダイズするDNA同士が特異的にハイブリダイズするような類似の条件が挙げられる。
【0023】
本発明DNAは、本発明によりその塩基配列が明らかにされたので、その塩基配列に基づき作成したプライマーを用い、シロザ、シロイヌナズナなどの植物から調製されたcDNAをテンプレートとしてPCRを行うことなどにより得ることができる。
【0024】
適切なプライマーの設計は、市販の塩基配列解析ソフトウェアなどを利用すれば一層容易に行うことができる。植物体からのcDNAの調製は公知の方法が使用できる。PCRの条件は、慣用の条件でよい。配列番号2及び20に示すアミノ酸配列をコードするDNAを得る場合には、シロザ、配列番号4及び6に示すアミノ酸配列をコードするDNAを得る場合には、シロイヌナズナからcDNAを調製することが好ましい。
【0025】
また、本発明DNAは、その塩基配列に基づき合成により得ることもできる。
【0026】
配列番号2、4、6または20に示すアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加、または逆位を含むように、配列番号2、4、6または20に示すアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、クロロフィラーゼをコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びクロロフィラーゼをコードするDNAを保持する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。上記のような変異を有するDNAを、適当な細胞で発現させ、発現産物のクロロフィラーゼ活性を調べることにより、上記改変されたDNAが得られる。
【0027】
クロロフィラーゼ活性の測定方法は特に限定されないが、例えば、Plant Cell Physiol. 38: 1026-1031(1997)に記載された方法が挙げられる。具体的には、以下の方法が挙げられる。25 mM 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)-NaOH (pH 7.0)、50μM ラウリルジメチルアミンN-オキシド及び50μM クロロフィル(250μMのクロロフィルの無水アセトン溶液を反応混合液に20%(v/v)の最終アセトン濃度で用いる)並びに酵素溶液を含む1 mlの反応混合液を、30℃で10分間インキュベートし、3 mlのアセトン/n-ヘキサン(1:2(v/v))及び0.1 mlの2 M Tris-HCl(pH 9.0)を添加して反応を停止するとともに、クロロフィリドをイオン化する。次いで、反応混合液をよく振り、酵素反応で生成したクロロフィリドが下層の水層に分配されるようにする。水層における667 nmでの吸光度(クロロフィリドaの吸収)の増加を測定し、酵素活性を算出する。改変DNAのコードするタンパク質のクロロフィラーゼ活性は、配列番号2、4、6または20に示すアミノ酸配列を有するタンパク質のクロロフィラーゼ活性に対して、通常には10%以上、好ましくは40%以上であればよい。
【0028】
また、変異(上述の天然に存在する変異を含む)を有するクロロフィラーゼをコードするDNAまたはこれを保持する細胞から、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号19〜1059からなる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを単離することによっても、上記改変DNAが得られる。ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件であり、上述のストリンジェントな条件と同一でよい。
【0029】
このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれるが、それらについては、市販の活性発現ベクターにつなぎクロロフィラーゼ活性を前記の方法で測定することによって容易に取り除くことができる。
【0030】
本発明によって明らかにされたクロロフィラーゼをコードするDNAの塩基配列から推定されるアミノ酸配列には保存されている部分がある(図1)。従って、この部分に基づいてプローブを作成し、これを用いてハイブリダイゼーションを行うことにより、クロロフィラーゼをコードするDNAが容易に取得されると予測される。従って、本発明は、配列番号2、4及び6に示す3つのアミノ酸配列において保存されているアミノ酸配列に基づいて作成されたプローブがストリンジェントな条件においてハイブリダイズし得るDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを提供する。
【0031】
保存されたアミノ酸配列は、配列番号20に示すアミノ酸配列においても保存されているものであることが好ましい。
【0032】
保存されたアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号2においてアミノ酸番号160〜173、特にアミノ酸番号160〜166のアミノ酸配列が挙げられる。プローブの設計は、市販の塩基配列解析ソフトウェアなどを利用して行うことができる。ハイブリダイゼーションの手法は公知のものでよく、ストリンジェントな条件としては、37℃において、100μg/mlの変性サケ精子DNAを含む6×標準クエン酸食塩水(SSC)/5×デンハルト溶液中でハイブリダイゼーションを行い、40℃において、6×SSC/0.1%SDSで洗浄するという条件、または、これと同等な条件が挙げられる。
【0033】
<2>クロロフィラーゼをコードするDNAにより形質転換された植物
形質転換の方法は、植物に適用可能であれば特に制限されず、公知の方法を用いることができる(例えば、C. R. Acad. Sci. Paris, Life Sciences 316: 1194-1199(1993)参照)。
【0034】
植物としては、シロイヌナズナ、タバコ、トマト等が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0036】
【実施例1】
シロザのクロロフィラーゼをコードするDNAの取得
(1)シロザ由来の0型クロロフィラーゼの精製及び部分アミノ酸配列の決定
Plant Cell Pysiol. 38(9): 1026-1031(1997)に記載されたクロロフィラーゼの精製方法を、スケールアップする他は同様に行った。すなわち、5000 gのシロザ(Chenopodium album)凍結葉から精製を開始した。1000 gのアセトン抽出物(アセトン粉末)が得られた。クロマトグラフィーは、分離能を確保するため、アセトン抽出物を分けて、上記文献に記載された方法に近い以下の条件(カラムの大きさ及び流速)で繰り返し行った。Toyopearl HW-55(東ソー社製)カラム(5×20 cm、400 ml/h)、ConA Sepharose(ファルマシアバイオテク社製)カラム(1×10 cm、6 ml/h)、ヘパリンアフィニティーカラム(バイオラッドラボラトリーズ社製)(1×5 cm、8 ml/h)、Mono Q HR 5/5カラム(ファルマシアバイオテク社製)(0.5×5 cm、18 ml/h)、Superdex 200 HR 10/30カラム(ファルマシアバイオテク社製)(1×30 cm、18 ml/h)。
【0037】
得られた精製画分を、Plant Cell Pysiol. 38(9): 1026-1031(1997)に記載されたようにして、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に付し、次いでPVDF膜上にブロッティングした。精製画分に含まれる3つのクロロフィラーゼの中、Plant Cell Pysiol. 38(9): 1026-1031(1997)においてマイナー成分とされたクロロフィラーゼ(0型)をPVDF膜上で、直接、アクロモバクター(Acromobacter)プロテアーゼIにより、Electorophoresis 13: 142-147(1992)に記載の条件で消化した。生じたペプチドフラグメントを逆相HPLCで分離し、アミノ酸配列を気相シークエンサー(モデルPPSQ23、島津製作所製)を用いて決定した。
【0038】
決定されたアミノ酸配列は以下の通りであった。
【0039】
【表1】
ペプチド名 アミノ酸配列 配列番号
AP−1 (K)LAISGHSRGGK 7
AP−2 (K)EXSSHFV 8
AP−3 (K)ITDVFHK 9
AP−4 (K)GNFQVTNNPIR 10
【0040】
(2)シロザ成葉から作成したcDNAライブラリーのスクリーニング
シロザの成葉から、グアニジンイソチオシアネート法(Anal. Biochem. 162: 156-159 (1987))により全RNAを抽出した。全RNAからpoly(A)+を、oligo(dT)-Latex(宝酒造製)を用いて単離した。単離されたpoly(A)+から、ZAP-cDNA合成キット(ストラタジーン社製)を用いて製造者の指示書に従い、cDNAライブラリーを構築した。
【0041】
上記(1)で決定されたアミノ酸配列に基づいて種々の縮重オリゴDNAプローブを合成した。これらを用いて上記cDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、5'-ACRAARTGISWISWRTTYTCYT-3'(IUPACコード、配列番号11)を用いたときに陽性クローンが得られた。このプローブはアミノ酸配列KENSSHFV(配列番号12)に対応する。
【0042】
スクリーニングは以下の条件で行われた。ハイブリダイゼーションは、37℃において、100μg/mlの変性サケ精子DNAを含む6×標準クエン酸食塩水(SSC)/5×デンハルト溶液で行った。メンブランは、40℃において、6×SSC/0.1%SDSで洗浄した。検出はオートラジオグラフィーで行った。
【0043】
陽性λファージクローンから、pBluescript(ストラタジーン社製)を用いてin vivo切り出し法により、挿入物を有するpBluescriptファージミドを得た。
【0044】
塩基配列の決定は、サーモシークエナーゼサイクルシークエンシングキット(Thermo Sequenase cycle sequencing kit、アマーシャムファルマシアバイオテク社製)及びDNAシークエンサー(モデル4000L、LI-COR製)を用いて行った。
【0045】
得られた塩基配列及び推定されるアミノ酸配列を配列番号1及び2に示す。アミノ酸配列より、セリンを活性部位にもつリパーゼの活性部位モチーフ(Lipase motif)及びpループ(p-loop)が存在することが分かった(図1)。また、N−末端シグナル配列は、小胞体移行型であった。
【0046】
【実施例2】
他の植物のクロロフィラーゼをコードするDNAの取得
(1)データベース検索
実施例1で決定された塩基配列に基づき、データベース(DDBJ、EMBL等)を検索した。この結果、アラビドプシス由来の塩基配列2件が検索された(AF021244及びAF005802)。これらの塩基配列の機能は不明であった。
【0047】
(2)cDNAの単離
これらの塩基配列を有するDNAをシロイヌナズナcDNAライブラリーから単離した。シロイヌナズナcDNAライブラリーは、連続光下で4〜5週間生育したシロイヌナズナのロゼット葉から、実施例1(2)のシロザ成葉の場合と同様にして構築した。検索された塩基配列に基づいてPCRで作成したプローブを用いて、以下の条件でスクリーニングを行った。すなわち、ハイブリダイゼーションは、65℃において100μg/mlの変性サケ精子DNAを含む6×SSC/5×デンハルト/0.1%SDS中で行い、メンブレンは65℃において0.2×SSC/0.1%SDSで洗浄した。
【0048】
陽性クローンについて、実施例1(2)と同様にして、塩基配列を決定した。決定された塩基配列及び推定されるアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号3及び4並びに配列番号5及び6に示す。
【0049】
二つのイソ酵素は、そのN−末端のシグナル配列に顕著な差が見られた。一方は典型的な移行配列をもっておらず、もう一方は典型的な葉緑体型移行配列をもっている。また、シロイヌナズナの根を10μMのジャスモン酸メチルに暴露するジャスモン酸メチル処理に対する応答において顕著な差が見られた。前者は、ジャスモン酸メチルに素早く応答しロゼット葉中のmRNAレベルの上昇が見られたが、後者はジャスモン酸メチルに全く応答しなかった。葉の老化やクロロフィル分解を促進する成長制御物質としても知られるジャスモン酸メチルへの応答の違いは、クロロフィル分解時にイソ酵素制御が異なっていることを示している。
【0050】
(3)アミノ酸配列の比較
シロザ由来のクロロフィラーゼのアミノ酸配列(配列番号2)及びシロイヌナズナ由来の二つのクロロフィラーゼのアミノ酸配列(配列番号4及び6)を比較した結果を図1に示す。配列番号2においてアミノ酸番号160〜173に14アミノ酸中12アミノ酸が一致する保存された配列が認められた。特にアミノ酸番号160〜166は、連続する7つのアミノ酸が保存されている。
【0051】
【実施例3】
クロロフィラーゼをコードするDNAの大腸菌での発現
実施例1及び2で得られた、クロロフィラーゼをコードするDNAを、pET発現系(ノバゲン社製)を用いて大腸菌(Escherichia coli)で過剰発現させた。
【0052】
クロロフィラーゼ発現プラスミドはPCRにより構築した。フォワードプライマーは、5'端に新たなNdeI制限部位を含むように設計され、リバースプライマーは、終止コドン及び新たなXhoI制限部位を含むように設計された。具体的には以下の通りである。
【0053】
【表2】
シロザクロロフィラーゼ(C. album Chlase)
5'-CATATGTCTGAAAAAATTACTGATGTTTTCCATAAG-3'(配列番号13)
5'-CTCGAGTTAAAGTTGAGCATAAGTTGTTGCAAAC-3' (配列番号14)
シロイヌナズナクロロフィラーゼ1(A. thaliana Chlase1)
5'-CATATGGCGGCGATAGAGGACAG-3' (配列番号15)
5'-CTCGAGCTAGACGAAGATACCAGAAGCTTCTTC-3' (配列番号16)
シロイヌナズナクロロフィラーゼ2(A. theliana Chlase 2)
5'-CATATGTCCTCTTCTTCATCAAGAAAC-3' (配列番号17)
5'-CTCGAGTTACATGATAACCTCAAACTCTTG-3' (配列番号18)
【0054】
テンプレートとしてはpBluescript SK-プラスミドにクローニングした全長cDNAを用いた。その他のPCRの条件は製造者の指示書に従った。
【0055】
PCR産物を配列決定し、NdeI及びXhoI制限酵素により消化した。消化断片をT7ポリメラーゼ発現ベクターpET-24bにサブクローニングした。E. coli BL21(DE3)株をこれらのプラスミドで形質転換し、発現に用いた。対照のE. coliは、挿入物を持たないpET-24bで形質転換した。形質転換体を、50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地に接種し、37℃において、OD600が適切な値になるまで培養した。組換えクロロフィラーゼを、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加(最終濃度1mM)により誘導した。発現を20℃で16時間行わせ、4℃で10000×g、10分間の遠心分離により細胞を回収した。細胞を50 mM MOPS緩衝液(pH 7.8)に懸濁し、繰り返し超音波処理し、抽出物の一部をアッセイした。
【0056】
クロロフィラーゼ活性は、Plant Cell Pysiol. 38(9): 1026-1031(1997)に記載のように、相分離した水性アセトン層におけるクロロフィリドaの生成をA667の増加により測定して決定した。
【0057】
この結果、クロロフィラーゼ活性がIPTGで誘導した細胞で確認された(図2)。
【0058】
【実施例4】
全長cDNAを用いたcDNAライブラリーのスクリーニング上記実施例1(2)で取得されたcDNA全長をプローブとして、上記のシロザ成葉cDNAライブラリーを、以下の条件のハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。ハイブリダイゼーションは、65℃において、100μg/mlの変性サケ精子DNAを含む6×標準クエン酸食塩水(SSC)/5×デンハルト/0.1%SDS溶液で行った。メンブランは、65℃において、2×SSC/0.1%SDSで洗浄した。検出以降の操作は上記実施例1(2)と同様に行った。
【0059】
この結果、配列番号1の塩基配列と異なる塩基配列を有するクローンがさらに検出された。その塩基配列及び推定されるアミノ酸配列を配列番号19及び20に示す。
【0060】
得られたクロロフィラーゼをコードするDNAを用いて、実施例3と同様に大腸菌で発現させた。なお、用いたプライマーは以下の通りであった。
【0061】
【表3】
5'-CATATGTCTGACAATTCTTCTTTTGTAATCGG-3' (配列番号21)
5'-CTCGAGTTAAGCTTGAGCATAACTTGCTACAAA-3' (配列番号22)
【0062】
この結果、大腸菌で発現させたタンパク質のクロロフィラーゼ活性は、155 nmol/分/mgタンパク質で、実施例1で得られたものに比べ、約半分であった。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、クロロフィラーゼをコードするDNAが提供される。このDNAの導入により形質転換された植物を作出することによって、生体内でのクロロフィラーゼの機能を分子生物学レベルで解明することが可能になる。また、農産物の脱緑などを制御した商品価値の高い形質転換作物を作出できる可能性がある。
【0064】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 シロザ(C. album)由来のクロロフィラーゼ(Chlase)のアミノ酸配列及びシロイヌナズナ(A. thaliana)由来の二つのクロロフィラーゼのアミノ酸配列の比較を示す。
【図2】 シロザ由来のクロロフィラーゼ及びシロイヌナズナ由来の二つのクロロフィラーゼの大腸菌における発現の結果を示す。

Claims (7)

  1. 下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA。
    (a) 配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
    (b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
  2. 下記の(a)または(b)のDNA。
    (a) 配列番号1に示す塩基配列のうち塩基番号19〜1059からなる塩基配列を含むDNA。
    (b) (a)のDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  3. 下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA(但し、配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列を含むDNAを除く)。
    (a) 配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
    (b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
  4. 下記の(a)のDNA。
    (a) 配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列を含むDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  5. 下記(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA。
    (a) 配列番号20に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
    (b) 前記(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質。
  6. 下記の(a)または(b)のDNA。
    (a) 配列番号19に示す塩基配列のうち塩基番号31〜1092からなる塩基配列を含むDNA。
    (b) (a)のDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、クロロフィラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のDNA、または配列番号5に示す塩基配列のうち塩基番号43〜996からなる塩基配列を含むDNAにより形質転換された植物。
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