JP4601687B2 - エレベーター用巻上機 - Google Patents

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本発明は、制動力を発生させるブレーキ装置を備えたエレベーター用巻上機に関する。
エレベーター用巻上機は、一般に、昇降体を駆動するためのモータと、昇降体の移動を制動する制動手段、即ち、ブレーキ装置とを備えて構成される。ブレーキ装置には、昇降体の静止保持を行なう手段に加え、昇降体が異常に増速した場合に非常制動を行なう手段も備えられている。そして、ブレーキ装置の信頼性を高めるために、海外規格では制動およびその解除を行う2組のブレーキ機構を設けるとともに、各々のブレーキ装置が独立して機能することが義務付けられている。
このような2組のブレーキ機構を設けたものとして、従来、ロータの制動面に配置されるシューを備え一端部が回転支持される第1及び第2の制動腕と、シューが制動面を押圧しロータを制動するように第1及び第2の制動腕の他端部に設けた制動ばねと、第1及び第2の制動腕の他端部を結ぶ方向に動作するように配置し、継鉄及び電磁コイルからなる電磁石と、この電磁石の磁極面に対向して設けられた鉄片とからなり、電磁石への通電時の電磁吸引力により制動ばねのばね力に対抗して第1及び第2の制動腕を駆動し、シューの押圧力を解除してロータの制動を解除する電磁装置とで構成される電磁ブレーキ装置において、電磁装置は電磁石と鉄片から構成されるものを2組備え、この電磁石又は鉄片の一方を固定し他方を可動に設けるとともに、可動側の電磁石又は鉄片を介して第1及び第2の制動腕をそれぞれ駆動するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−266362(段落番号0057〜0060、図1)
前述した従来のものは、2組のブレーキ機構を設けることでブレーキ装置の信頼性を高めるものであるが、シューとロータとの摺動によって生じるシューの摩耗粉が摺動面に付着することを抑制したり、磨耗粉の排出を促進したりする点については特に考慮されていない。即ち、シューとロータとの摺動によって制動面に摩耗粉が付着すると、安定した制動力が得られなくなる恐れがあり、ブレーキ装置の信頼性向上の点で改善が望まれていた。
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、制動面における摩耗粉の付着量を低減することのできるエレベーター用巻上機を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、ロープが巻き掛けられるシーブと、このシーブを回転駆動するロータと、このロータに対向して配置される一対のシューを有し、前記シューを前記ロータに押し付けることで制動力を発生させるブレーキ装置とを備えたエレベーター用巻上機において、前記ロータの内周面もしくは外周面に、直径が異なる2つの環状部を設けて制動面とし、各々の前記シューが、前記制動面の幅方向に異なる位置を摺動することを特徴としている。
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、ロータの内周面もしくは外周面に、直径が異なる2つの環状部を設け、これらの環状部により2つの制動面を形成する。このようにそれぞれの制動面が異なる高さ位置にあることから、一方の制動面で発生した摩耗粉が、他方の制動面に対して影響を及ぼしにくくなる。
本発明の請求項2に係る発明は、シーブ側に位置する前記環状部の直径を、反シーブ側に位置する前記環状部の直径よりも小さく設定したことを特徴としている。
このように構成した本発明の請求項2に係る発明では、シーブ側に位置する環状部の直径を、反シーブ側に位置する環状部の直径よりも小さく設定することで、摩耗粉がシーブ側に排出されやすくなる。
本発明の請求項3に係る発明は、前記ロータを固定支持するハウジングに、前記ロータを覆うように配置される開口部を備え、この開口部のシーブ側の直径を反シーブ側の直径よりも大きく設定したことを特徴としている。
このように構成した本発明の請求項3に係る発明では、ロータはハウジングの開口部で覆われることから、摩耗粉の飛散を防ぐことができる。また、シーブが回転を開始すると、風が発生するので、重力との効果によって摩耗粉は傾斜を伝ってシーブ側の所定位置に排出される。
本発明の請求項4に係る発明は、前記ロータに、一方の前記制動面と他方の前記制動面とを隔てるように環状の溝部を設けたことを特徴としている。
このように構成した本発明の請求項4に係る発明では、一方の制動面と他方の制動面との間に環状の溝部があることから、一方の制動面に付着した摩耗粉が、他方の制動面に移動しにくくなる。
本発明の請求項5に係る発明は、前記ロータの反シーブ側端部に前記制動面よりも大きな直径を有する環状の段部を形成したことを特徴としている。
このように構成した本発明の請求項5に係る発明では、ロータの反シーブ側端部に制動面よりも大きな直径を有する環状の段部が形成されていることから、制動面で生じた摩耗粉が隣接機器内に混入することを防止することができる。
本発明によれば、2組のブレーキ機構を備えたものであっても、1つのシューが1つの制動面に摺動することから、従来のように2つのシューが1つの制動面を摺動するものに比べ、1つの制動面に付着する摩耗粉をおよそ半減することができる。また、付着した摩耗粉は、制動面のテーパ形状、及び制動面の表面を流れる風の効果によって、シーブ側に排出されやすい。これによって、制動面における摩耗粉の付着量を低減し、安定した制動力を有する信頼性の高いブレーキ装置とすることができる。
以下、本発明に係るエレベーター用巻上機の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明に係るエレベーター用巻上機の第1の実施形態を示す正面図、図2は図1のA−A’線に沿いエレベーター用巻上機を上方から見た水平断面図断面図である。
本実施形態の巻上機は、例えば、機械室レスエレベーターに設けられるものであり、昇降路内に設置されており、ロープ4を巻き掛けるシーブ5と、シーブ5と一体に設けられたロータ51と、これを制動するブレーキ装置とからなる。なお、本実施形態のロータ構成は、ステータコア52をロータ51の内側に配置し、ロータ51がステータコア52の外側を回転するアウターロータとなっている。
ブレーキ装置は、ロータ51の外周面に、直径が異なる2つの環状部を設けて制動面3a、3bを形成するとともに、一対のシュー2a、2bと、これらのシュー2a、2bが一端に固定された一対のレバー1a、1bと、レバー1a、1bの回動支点となるレバー支点6a、6bと、レバー1a、1bをその他端において駆動する電磁コイル7a、7bと、シュー2a、2bを制動面3a、3bに押し付ける制動ばね8a、8bとを備えている。シュー2a、2bは、電磁コイル7a、7bが通電されていないときには、制動ばね8a、8bによって制動面3a、3bに押し付けられ、図示しない乗りかごは静止状態を保つ。一方、乗りかごを上下に動作させる際には、電磁コイル7a、7bを通電して、レバー1a、1bの下端を吸引することによって、シュー2a、2bを制動面3a、3bから離すことになる。このように、制動およびその解除を行う2組のブレーキ機構を設けるとともに、各々のブレーキ装置が独立して機能するようにすることでブレーキ装置の信頼性を高めたものである。
本実施形態では前述したようにロータ51の外周面に制動面3a、3bを設け、これを巻上機の軸方向において2分割し、左右に設けた一対のシュー2a、2bは、それぞれ異なる制動面3a、3bに押し付けられる。即ち、シュー2aは制動面3a、シュー2bは制動面3bを摺動する。また、制動面3a、3bをなす2つの環状部の直径を異なるものとし、制動面3aと摺動面3bとの間に段差を形成している。これによって、一方の制動面3a、3bに付着した摩耗粉や塵埃などが他方の制動面3a、3bに移ることを防止することができる。なお、2つの環状部の直径差は、数ミリあれば摩耗粉や塵埃などの移動を防止するに十分である。また、同じ仕様の制動ばね8a、8bを用い、環状部の直径が小さいほうに合わせて押付力を調整すれば、一対のばね8a、8bや電磁コイル7a、7bの仕様を変える必要はない。
一般に、ブレーキ装置に要求される制動トルクは、シーブ5の直径D2が小さいほど小さい。一方、ロータ51の直径D1が大きいほどシュー2a、2bに必要な押付力は小さくなる。すなわち、D2/D1が大きいほど、ブレーキ装置を小型化することができる。アウターロータの構成では、ロータ51がステータコア52の外側を回転するため、D2/D1を大きくしやすい。よって、シュー2a、2bの小型化が容易である。本実施形態では、制動面3a、3bを巻上機の軸方向に分割するため、シュー2a、2bの幅も同様に短くなる。シュー2a、2bを小型化できれば、周方向の長さを最小限に抑えながら、幅の狭いシュー2a、2bで異なる制動面3a、3bを押し付けることが容易になる。
また、巻上機は、図2に示すように、シーブ5が昇降路壁41に対向するように設置されている。シーブ5とロータ51は一体部品で構成され、その回転運動がエンコーダ軸16を介して反シーブ側に伝達される。このエンコーダ軸16の軸端は、端部に設置したエンコーダ20に直結され、エンコーダ20にて回転量を検出し、巻上機の回転駆動を制御する。ハウジング10にはステータコア52が配置され、ロータ51の内周に取付けられた永久磁石13との磁気吸引力を制御することによって、回転運動を行なう構成である。また、シーブ5及びロータ51は、ベアリング18を介して固定軸17に回動自在に取付けられている。さらに、ロータ51の反シーブ側端部に制動面3a、3bよりも大きな直径を有する環状の段部31が形成されている。即ち、環状の段部31は制動面3aより寸法e高くなっている。
第1の実施形態によれば、2組のブレーキ機構を備えたものであっても、1つのシューが1つの制動面に摺動することから、即ち、シュー2aは制動面3a、シュー2bは制動面3bを摺動することから、従来のように2つのシューが1つの制動面を摺動するものに比べ、1つの制動面に付着する摩耗粉をおよそ半減することができる。また、制動面3a、3bが互いに異なる高さ位置にあることから、一方の制動面3a、3bで発生した摩耗粉が、他方の制動面3a、3bに対して影響を及ぼしにくくなる。さらに、制動面3bをなすシーブ側に位置する環状部の直径を、制動面3aをなす反シーブ側に位置する環状部の直径よりも小さく設定することで、摩耗粉がシーブ側に排出されやすくなる。これによって、制動面3a、3bにおける摩耗粉の付着量を低減し、安定した制動力を有する信頼性の高いブレーキ装置とすることができる。また、ロータ51の反シーブ側の端部に環状の段部31を形成し、その外周をハウジング10と近づけることによって、制動面3aに発生した摩耗粉がモータの機内に混入することを防止できる。
図3は本発明に係るエレベーター用巻上機の第2の実施形態を示し、図1のA−A’線に沿う要部水平断面である。なお、前述したものと同等のものには同一符号が付してある。
第2の実施形態の巻上機は、図3に示すように、ロータ51の外周面を制動面3a、3bとするとともに、この制動面3a、3bは傾斜して設けられ、かつ、傾斜は、シーブ側の制動面3b外周の直径を反シーブ側の制動面3a外周の直径よりも小さくすることで形成している。即ち、制動面3a、3bは、シーブ5側に向かって直径が小さくなるようにテーパ角θ2の緩やかな傾斜を有している。これは、制動面3a、3bを切削加工する際に同時に加工することができる。
ロータ51には、一方の制動面3aと他方の制動面3bとを隔てるように環状の溝部32が設けられている。
シュー2aは、制動面3aの傾斜と平行する傾斜を有してなっている。即ち、シュー2aは制動面3aの傾斜と同一のテーパ角θ3を有しており、テーパ角θ2=テーパ角θ3の関係が成立する。なお、シュー2aの背面にテーパ角θ2への追従を可能とする球面構造(図示せず)を設置した場合には、テーパ角θ2≠テーパ角θ3であってもよい。
第2の実施形態にあっては、シーブ5が回転すると、モータの内部に負圧部が形成されて、モータの内側から外側に空気を送り出すような風が発生する。即ち、アウターロータの方式では、ロータ51の外側表面に風が流れることになる。図示しないがハウジング10に穴をあけて、外側より空気を吸い込む部位を設ければ、さらにその風量は大きくなる。したがって、この風と制動面3a、3bの傾斜の両効果によって、制動面3a、3bに付着した摩耗粉をシーブ側に排出しやすくする。
なお、図2に示したように、シーブ5が昇降路壁41に対向して設置する配置では、昇降路壁41と巻上機の間の寸法は、保守員が入り込むことができないほど狭いので、シュー2aの交換作業はハウジング10側より行なう。さらに、シュー2aの摩耗状態の確認や、制動面3aの状態確認も同様にハウジング10側より行なうことになる。このため、ハウジング10には、シュー2aの交換と状態確認用の点検穴53が設けられている。この点検穴53にあっては、シュー2aの厚さ寸法aよりも十分大きな寸法bが確保されている。これによって、目視によるシュー2aの点検と交換作業も容易に行なうことができる。また、図示しないが、インナーロータ式のモータにおいては、制動面はロータの内側になるため、同様にこの制動面に2つの面を形成することができる。そして、ハウジング側からの目視および加工を容易にするため、反シーブ側の制動直径をシーブ側の制動直径よりも大きくすればよい。
第2の実施形態によれば、制動面3a、3b付着した摩耗粉は、制動面3a、3bのテーパ形状、及び制動面3a、3bの表面を流れる風の効果によって、シーブ側に排出されやすい。また、制動面3aと制動面3bとの間に環状の溝部32があることから、一方の制動面に付着した摩耗粉が、他方の制動面に移動しにくくなる。これによって、制動面3a、3bにおける摩耗粉の付着量をさらに低減し、安定した制動力を有する信頼性の高いブレーキ装置とすることができる。
図4は本発明に係るエレベーター用巻上機の第3の実施形態を示し、図1のB−B’線に沿う縦断面図である。なお、前述したものと同等のものには同一符号が付してある。
第3の実施形態の巻上機は、図4に示すように、シーブ5、ロータ51、及び固定軸17を介して乗りかごの懸垂荷重を支持するハウジング10は、ロータ51を覆うように配置される開口部21を備えている。また、開口部21のシーブ側の直径を反シーブ側の直径よりも大きく設定してある。即ち、ハウジング10は、シーブ5側に向かって直径が大きくなるようなテーパ角θ1の傾斜を有している。
第3の実施形態にあっては、摩耗粉はシーブ5の回転によってロータ51外周の接線方向に飛散し、シーブ5が停止すると、摩耗粉は制動面3に付着する。シーブ5が再度回転を開始すると、前述のように風が発生するので、重力との効果によって摩耗粉は制動面3の傾斜を伝ってシーブ側に排出される。一方、ロータ51の下半面、特に最下部においては、摩耗粉はシーブ5が停止した際、重力によってハウジング10側に落下する。本実施形態では前述したようにハウジング10側にロータ51と逆の傾斜を設けてあるので、ハウジング10に堆積した摩耗粉は、重力と、シーブ5の回転によって発生した風の両効果によって、シーブ5の下方に排出されることになる。
第3の実施形態によれば、ロータ51はハウジング10の開口部21で覆われることから、摩耗粉の飛散を防ぐことができる。また、シーブ51が回転を開始すると、風が発生するので、重力との効果によって摩耗粉は傾斜を伝ってシーブ側の所定位置に排出される。
本発明に係るエレベーター用巻上機の第1の実施形態を示す正面図である。 図1のA−A’に沿いエレベーター用巻上機を上方から見た水平断面図断面図である。 本発明に係るエレベーター用巻上機の第2の実施形態を示し、図1のA−A’線に沿う要部水平断面である。 本発明に係るエレベーター用巻上機の第3の実施形態を示し、図1のB−B’線に沿う縦断面図である。
符号の説明
1a、1b レバー
2a、2b シュー
3 制動面
3a、3b 制動面
4 ロープ
5 シーブ
6a、6b レバー支点
7a、7b 電磁コイル
8a、8b 制動ばね
10 ハウジング
13 永久磁石
16 エンコーダ軸
17 固定軸
18 ベアリング
20 エンコーダ
21 開口部
31 環状段部
32 溝部
41 昇降路壁
51 ロータ
52 ステータコア
53 点検穴
a シューの最大厚さ寸法
b 点検穴の幅寸法
e 環状段部の高さ寸法
D1 ロータの直径
D2 シーブの直径
θ1 ハウジング開口部のテーパ角
θ2 ロータのテーパ角
θ3 シューのテーパ角

Claims (5)

  1. ロープが巻き掛けられるシーブと、このシーブを回転駆動するロータと、このロータに対向して配置される一対のシューを有し、前記シューを前記ロータに押し付けることで制動力を発生させるブレーキ装置とを備えたエレベーター用巻上機において、
    前記ロータの内周面もしくは外周面に、直径が異なる2つの環状部を設けて制動面とし、各々の前記シューが、前記制動面の幅方向に異なる位置を摺動することを特徴とするエレベーター用巻上機。
  2. シーブ側に位置する前記環状部の直径を、反シーブ側に位置する前記環状部の直径よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター用巻上機。
  3. 前記ロータを固定支持するハウジングに、前記ロータを覆うように配置される開口部を備え、この開口部のシーブ側の直径を反シーブ側の直径よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター用巻上機。
  4. 前記ロータに、一方の前記制動面と他方の前記制動面とを隔てるように環状の溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター用巻上機。
  5. 前記ロータの反シーブ側端部に前記制動面よりも大きな直径を有する環状の段部を形成したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター用巻上機。
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