JP5409788B2 - エレベータの直動式ドラムブレーキ装置 - Google Patents

Description

この発明は、エレベータ巻上機に設けられ、ブレーキドラムの回転を制動するエレベータの直動式ドラムブレーキ装置に関するものである。

従来のエレベータ巻上機のブレーキ装置では、２本の平行な連結部材によりブレーキシューと可動鉄心とが連結されている。連結部材は、ブレーキシューの両端近傍に配置されている。各連結部材の基端は、可動鉄心に固定されている。また、各連結部材の先端は、球面座機構を介してブレーキシューに取り付けられている（例えば、特許文献１参照）。

特開２００２−２８４４８６号公報

上記のような従来のブレーキ装置では、ライニングとブレーキドラムとの間の芯ズレに対しては球面座機構で補正できるが、ブレーキシューの押し付け方向に球面座機構を配置するためのスペースが必要となる問題点があった。

この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、全体を小型化しつつ、ライニングとブレーキドラムとの間の芯ズレを補正することができるエレベータの直動式ドラムブレーキ装置を得ることを目的とする。

この発明に係るエレベータの直動式ドラムブレーキ装置は、ハウジング、ハウジングに設けられている固定鉄心、ブレーキドラムに接離する方向へ移動可能な可動鉄心、固定鉄心に設けられ、可動鉄心を吸引する電磁力を発生するブレーキコイル、固定鉄心に設けられ、可動鉄心をブレーキドラム側へ付勢するブレーキばね、可動鉄心に搭載されているブレーキシュー、及びブレーキシューに設けられ、可動鉄心の移動によりブレーキドラムに接離されるライニングを備え、ブレーキシューは、可動鉄心に対して、ブレーキドラムに接離する方向に直角かつブレーキドラムの軸方向に直角な方向へ所定の範囲内で摺動可能であり、可動鉄心には、ブレーキシューを可動鉄心側に押し付けて保持する弾性体が設けられている。

この発明のエレベータの直動式ドラムブレーキ装置は、ブレーキシューは、可動鉄心に対して、ブレーキドラムに接離する方向に直角かつブレーキドラムの軸方向に直角な方向へ所定の範囲内で摺動可能であり、可動鉄心には、ブレーキシューを可動鉄心側に押し付けて保持する弾性体が設けられているので、ライニングとブレーキドラムとの間の芯ズレは、可動鉄心に対するブレーキシューの摺動により補正することができる。また、ブレーキシューの押し付け方向のスペースを小さくして全体を小型化することができる。

この発明の実施の形態１によるエレベータの直動式ドラムブレーキ装置を有するエレベータ巻上機を示す正面図である。 図１のブレーキ装置の要部の非制動時の状態を示す正面図である。 図１のブレーキ装置の要部の制動時の状態を示す正面図である。 実施の形態１のブレーキ装置が適用されるエレベータの一例を示す側面図である。

以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態１．
図１はこの発明の実施の形態１によるエレベータの直動式ドラムブレーキ装置を有するエレベータ巻上機を示す正面図である。

図において、エレベータ巻上機のハウジング１の中心部には、主軸（固定軸又は回転軸）２が設けられている。主軸２には、主軸２を中心として回転可能な円筒状のブレーキドラム３が設けられている。

ハウジング１の両側には、被制動部であるブレーキドラム３の回転を制動する一対の直動式ドラムブレーキ装置４（以下、単にブレーキ装置４と略称する）が取り付けられている。これらのブレーキ装置４は、ブレーキドラム３を両側から挟むように配置されている。即ち、ブレーキ装置４は、ブレーキドラム３の外側に配置されている。

ブレーキ装置４は、主として、固定鉄心５、可動鉄心６、ブレーキコイル７、ブレーキばね８、ブレーキシュー９、ライニング１０、弾性体としての複数の板ばね１１、及び複数の外れ止め１２を有している。

固定鉄心５は、ボルトによりハウジング１に固定されている。可動鉄心６は、ブレーキドラム３に接離する方向（図のＸ軸方向、即ち水平方向）へ移動可能になっている。ブレーキコイル７は、固定鉄心５に設けられ、可動鉄心６を吸引する電磁力を発生する。ブレーキばね８は、固定鉄心５に設けられ、可動鉄心６をブレーキドラム３側へ付勢する。

ブレーキシュー９は、可動鉄心６に搭載されており、可動鉄心６と一体にブレーキドラム３に接離する方向へ移動される。また、ブレーキシュー９のブレーキドラム３とは反対側の面は、可動鉄心６に接合されている。ライニング１０は、ブレーキシュー９に固着されており、可動鉄心６の移動によりブレーキドラム３の外周面（被制動面）に接離される。

ブレーキコイル７が励磁されることにより、可動鉄心６がブレーキばね８に抗して固定鉄心５側へ吸引され、ライニング１０がブレーキドラム３から引き離される。これにより、ブレーキ装置４の制動力が解除される。また、ブレーキコイル７への通電が遮断されることにより、ブレーキばね８のばね力により可動鉄心６がブレーキドラム３側へ移動され、ライニング１０がブレーキドラム３に押し付けられる。これにより、ブレーキドラム３に制動力が印加され、ブレーキドラム３の回転が制動され、ブレーキドラム３の静止状態が保持される。

各板ばね１１の基端部は、ボルトにより可動鉄心６に固定されている。各板ばね１１の先端部は、ブレーキシュー９のブレーキドラム３側の面に当接されている。ブレーキシュー９は、板ばね１１のばね力により可動鉄心６に押し付けられて保持されている。

ハウジング１には、断面Ｌ字形の外れ止め１２が設けられている。外れ止め１２は、固定鉄心５の上下両端面に当接している。また、各外れ止め１２は、ボルトによりハウジング１に固定されている。

図２は図１のブレーキ装置の要部の非制動時の状態を示す正面図である。固定鉄心５のブレーキドラム３側には、可動鉄心６を収容する凹部５ａが設けられている。可動鉄心６は、固定鉄心５に対して、ブレーキドラム３に接離する方向（図のＸ軸方向）に直角かつブレーキドラム３の軸方向（図のＺ軸方向）に直角な方向（図のＹ軸方向）、即ち上下方向へ所定の範囲内で変位可能である。

可動鉄心６の外周面と凹部５ａの内周面との間には、隙間ｇ１が設けられている。これにより、可動鉄心６は、隙間ｇ１分だけ上下方向（ライニング１０とブレーキドラム３との接合面の中心における接線方向）へ変位可能である。

可動鉄心６には、ブレーキシュー９が挿入されるシュー溝６ａが設けられている。ブレーキシュー９は、シュー溝６ａ内でシュー溝６ａの底面に沿って上下方向へ摺動可能になっている。即ち、ブレーキシュー９は、可動鉄心６に対して、ブレーキドラム３に接離する方向に直角かつブレーキドラム３の軸方向に直角な方向へ所定の範囲内で摺動可能である。

また、ブレーキシュー９の上下端面と、シュー溝６ａの内壁面との間には、隙間ｇ２が設けられている。これにより、ブレーキシュー９は、隙間ｇ２分だけ上下方向へ変位可能である。板ばね１１は、ブレーキシュー９を可動鉄心６に押さえ付けつつブレーキシュー９の上下方向へ変位を許容する。

固定鉄心５とハウジング１との間には、Ｘ軸方向の隙間ｇ３が設けられている。この隙間ｇ３は、ライニング１０とブレーキドラム３との間のギャップ調整のために設けられている。隙間ｇ３の大きさを調整することにより、可動鉄心６の移動量が設定され、ライニング１０とブレーキドラム３との間のギャップ量が調整される。

次に、動作について説明する。非制動時は、可動鉄心６がブレーキコイル７によって固定鉄心５に吸引され、ライニング１０がブレーキドラム３から離れている。このとき、隙間ｇ１及び隙間ｇ２が確保された状態となっている。

制動時は、ブレーキコイル７の通電が遮断されて、ブレーキばね８によって可動鉄心６がブレーキドラム３側へ押し付けられ、図３に示すように、ライニング１０がブレーキドラム３に押し付けられる。これによって、ブレーキドラム３の回転トルクが制動保持される。

このとき、ブレーキシュー９にはＹ軸方向へのせん断力（回転トルクによる周方向への力）が発生する。さらにある大きさ以上のトルクがかかって、板ばね１１の保持力がブレーキシュー９のせん断力に負けた場合、ブレーキシュー９がＹ軸方向へ移動する。そして、隙間ｇ２が無くなった場合、せん断力が可動鉄心６に伝わる。さらに可動鉄心６がせん断力によってＹ軸方向へ移動し、隙間ｇ３が無くなった場合、固定鉄心５に力が伝わりトルクが保持される。

このようなブレーキ装置４では、組立誤差や、ライニング１０の制動面とブレーキドラム３の被制動面との形状誤差などにより、ライニング１０とブレーキドラム３との間に芯ズレがある場合、非制動時に隙間ｇ１及び隙間ｇ２がある状態から、ライニング１０がブレーキドラム３を押し付けたとき、隙間ｇ１及び隙間ｇ２の範囲内でブレーキシュー９や可動鉄心６が移動することにより、芯ズレが補正される。これによって、ライニング１０がブレーキドラム３の被制動面に倣って押し付けられ、制動トルクの信頼性が向上する。

また、ブレーキシュー９が可動鉄心６に直接的に連結されているので、押し付け方向のスペースが不要であり、全体を小型化することができる。

さらに、固定鉄心５をハウジング１に取り付けているボルトが万一緩んだ場合には、固定鉄心５の上下方向への変位が外れ止め１２により規制され、制動時の回転トルクが外れ止め１２により受けられる。これにより、アンバランストルクに対して固定鉄心５をより確実に保持することができ、信頼性をさらに向上させることができる。

なお、上記の例では、シュー溝６ａ内にブレーキシュー９を配置したが、ブレーキシュー９の移動範囲を規制する構成はこれに限定されるものではなく、例えば、ブレーキシュー９の端面に当接してブレーキシュー９の移動を規制する突起を可動鉄心６に設けてもよい。
また、上記の例では、ブレーキ装置４をブレーキドラム３の左右両側に配置したが、ブレーキドラム３に対するブレーキ装置４の配置位置は特に限定されない。
さらに、１つのブレーキドラム３に対するブレーキ装置４の数を、１つ又は３つ以上としてもよい。
さらにまた、上記の例では、ブレーキ装置４をブレーキドラム３の外側に配置したが、内側に配置してもよい。

ここで、図４は実施の形態１のブレーキ装置４が適用されるエレベータの一例を示す側面図である。図において、昇降路２１の上部には、機械室２２が設けられている。機械室２２内には、機械台２３が設置されている。機械台２３上には、エレベータ巻上機２４が支持されている。エレベータ巻上機２４は、駆動シーブ２５及び巻上機本体２６を有している。

巻上機本体２６は、駆動シーブ２５を回転させる巻上機モータと、駆動シーブ２５の回転を制動するブレーキ装置４（図１）とを有している。実施の形態１のブレーキドラム３は、駆動シーブ２５と一体に回転される。

機械台２３には、そらせ車２７が取り付けられている。駆動シーブ２５及びそらせ車２７には、懸架手段としての複数本のエレベータ用ロープ２８が巻き掛けられている。

エレベータ用ロープ２８の一端部には、かご２９が吊り下げられている。即ち、かご２９は、駆動シーブ２５の一側でエレベータ用ロープ２８により昇降路２１内に吊り下げられている。エレベータ用ロープ２８の他端部には、釣合おもり３０が吊り下げられている。即ち、釣合おもり３０は、駆動シーブ２５の他側でエレベータ用ロープ２８により吊り下げられている。

昇降路２１内には、かご２９の昇降を案内する一対のかごガイドレール３１と、釣合おもり３０の昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール３２とが設置されている。かご２９には、かごガイドレール３１に係合してかご２９を非常停止させる非常止め装置３３が搭載されている。

なお、この発明の直動式ドラムブレーキ装置が適用されるエレベータのタイプは、図４のタイプに限定されるものではない。例えば、機械室レスエレベータ、２：１ローピング方式のエレベータ、マルチカー方式のエレベータ、又はダブルデッキエレベータ等にも、この発明は適用できる。

Claims (4)

1. ハウジング、
   前記ハウジングに設けられている固定鉄心、
   ブレーキドラムに接離する方向へ移動可能な可動鉄心、
   前記固定鉄心に設けられ、前記可動鉄心を吸引する電磁力を発生するブレーキコイル、
   前記固定鉄心に設けられ、前記可動鉄心を前記ブレーキドラム側へ付勢するブレーキばね、
   前記可動鉄心に搭載されているブレーキシュー、及び
   前記ブレーキシューに設けられ、前記可動鉄心の移動により前記ブレーキドラムに接離されるライニング
   を備え、
   前記ブレーキシューは、前記可動鉄心に対して、前記ブレーキドラムに接離する方向に直角かつ前記ブレーキドラムの軸方向に直角な方向へ所定の範囲内で摺動可能であり、
   前記可動鉄心には、前記ブレーキシューを前記可動鉄心側に押し付けて保持する弾性体が設けられているエレベータの直動式ドラムブレーキ装置。
2. 前記可動鉄心には、前記ブレーキシューが挿入されるシュー溝が設けられており、
   前記ブレーキシューは、前記シュー溝内で前記シュー溝の底面に沿って摺動可能になっている請求項１記載のエレベータの直動式ドラムブレーキ装置。
3. 前記可動鉄心は、前記固定鉄心に対して、前記ブレーキドラムに接離する方向に直角かつ前記ブレーキドラムの軸方向に直角な方向へ所定の範囲内で変位可能である請求項１記載のエレベータの直動式ドラムブレーキ装置。
4. 前記ハウジングには、前記固定鉄心の端面に当接して、前記ブレーキドラムに接離する方向に直角かつ前記ブレーキドラムの軸方向に直角な方向への前記固定鉄心の変位を規制する外れ止めが設けられている請求項１記載のエレベータの直動式ドラムブレーキ装置。

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