JP4925104B2 - エレベータ用巻上機 - Google Patents

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Description

この発明は、基体と電動機が構成されて、電動機の回転体を駆動し、回転体の回転を制動する制動機が基体に取付けられたエレベータ用巻上機に関するものである。
従来のエレベータ用巻上機は、軸受を有する第1軸受台及び第2軸受台が架台に取付けられ、この第1軸受台及び第2軸受台に回転軸が枢着されている。そして、駆動綱車が第1軸受台と第2軸受台との間に配置されて回転軸に取付けられ、第1軸受台側の回転軸の一端に回転体が取付けられている。基体は、第1軸受台と、この第1軸受台に設けられ、椀状をなし底部が平面状のフレームとで構成されて架台に取付けられている。基体のフレームに固定子巻線が取付けられている。この固定子巻線に対向して配置される界磁磁石が回転体の外周面に取付けられて、回転体と固定子巻線と界磁磁石とで電動機を構成している。また、回転体に軸方向の延在して制動体を形成し、この制動体に対して径方向両側から電磁機構により接離可能な制動片を有する制動機を基体に取付けた構成をしている。(例えば特許文献1を参照)
特開平9−142761号公報(第2、4頁、第2図)
従来のエレベータ用巻上機は、制動機を電磁力により制動片を制動体に対して所定の空隙で離間させた状態で、電動機を通電することで駆動される。そのため、駆動を繰り返すことで電動機の固定子巻線が発熱し、固定子巻線を取付けた基体も熱伝導により発熱する。基体の発熱は、固定子巻線を取付けたフレームより発熱し、第1軸受台及び架台に熱伝導され、第1軸受台及び架台の表面からも放熱する。そのため、基体は固定子巻線に近い部分に高い温度分布を示し、第1軸受台及び架台の部分においては低い温度分布を示す。このように基体には温度勾配が生じる。そのため、各部には異なる熱膨張が生じ、基体は熱変形を生じる。発明者は鋭意研究を重ねた結果、上記基体のように底部が平面状に形成された簡易な形状ものにおいては、基体の熱変形が大きく、基体に取付けられた制動機の制動片も制動体に対して相対的に変形が大きくなることが分かった。
次に、発明者が上記の結論に至った理由について説明する。図9は、特許文献1に記載のものとは異なるが、上記基体のように底部が平面状に形成されたエレベータ用巻上機の一例を示したものである。図9において、基体31は、円筒部31aと、この円筒部31aの一側に塞ぐように設けられた平面状をなす底部31bと、下部には図示しない架台に取付けられる取付部31cを有する。
基体31の取付部31cには軸受台2が取付けられ、基体31と軸受台2の中心部に軸受3を介して回転軸4が時計回り及び反時計回りに回転するように支持されている。回転体5が回転軸4に固定されている。回転体5は円筒部31aと対向した回転体円筒部5aとこの回転体円筒部5aの一側に設けられた回転体ボス部5bとを有し、回転体ボス部5bが回転軸4に固定されている。そして、回転体円筒部5aの他側が底部31bに対向されている。回転体5には、円筒部31aの他側31dに隣合わせに配置され回転体円筒部5aから径方向に延在した円板状の制動体6を有する。駆動綱車7が、円筒部31a、制動体6の順で制動体6に隣合わせに配置され、回転体5にボルト7aで円筒部1aと反対側方向へ着脱可能に固定されている。駆動綱車7の外周には綱溝が形成され、エレベータの乗りかごや釣合いおもりの昇降体を懸架する主索8が巻き掛けられる。
電動機9は、回転体5と、円筒部31aの内周面に設けられた固定子巻線10と、固定子巻線10に対向して配置され、回転体円筒部5aの外周面に設けられた界磁磁石11と、で構成されている。固定子巻線10と界磁磁石11とは所定の空隙を有している。基体31の外周面には、制動体6の軸方向両側から接離可能に構成された2組の制動片12aを有した制動機12が取付けられている。制動機12は、内部に制動片12aを離間させる電磁機構及び制動片12aを押圧する押圧手段が設けられている。
このように構成された巻上機は、エレベータの停止時に電動機9の固定子巻線10に電力が遮断されると共に、制動機12の電磁機構が遮断されて制動片12aが押圧手段により制動体6に押圧されて回転体5即ち駆動綱車7が制動される。エレベータ運転時は固定子巻線9に電力が通電されると共に、制動機12の電磁機構が通電されることにより、制動片12aが押圧手段の押圧に抗して制動体6から軸方向両側に離間して、両側の空隙を均等な状態に確保する。これにより、制動片12aの制動体6への押圧が解消されて回転体5即ち駆動綱車7の制動が解除されると共に駆動綱車が駆動される。そして、駆動綱車7に巻き掛けられた主策8を介して、主索8に懸架された図示しない乗りかごや釣合いおもり昇降体が昇降運転される。
巻上機は、電動機9の固定子巻線10が通電されることにより、固定子巻線10は円周全体に亘って均一に発熱する。この発熱は基体31の円筒部31aへ熱伝導し、底部31b及び取付部31cへと熱伝導され、基体31が発熱し、基体31の表面から外部へ放熱する。
次にこのときの基体31の温度分布について説明する。円筒部31aは、発熱体である固定子巻線10に最も近いため、底部31bより高い温度を示す。また、基体31の下部においては、取付部31cを有しているため、円筒部31a及び底部31bの熱は取付部31cを介して熱伝導され、取付部31cからも放熱される。そのため、基体31の下部は、取付部31cの熱伝導及び放熱の分、上部より低い温度を示す。このように、基体31は上記のように温度勾配を生じ、この温度勾配により各部の熱膨張の違いから基体31が熱変形する。円筒部31aは高い温度を示し熱膨張が大きく、径方向へ拡がるように膨脹する。しかしながら、円筒部31aの一側に底部31bが設けられており、底部31bは円筒部31aよりも熱膨脹が小さいので、円筒部31aは円筒部31aの他側31dが径方向に拡がるように熱変形し、それに伴い底部31bは弓状に熱変形する。
これは、円筒部31aの他側31dに見かけ上、図9に図示した矢印Fの力が径方向に作用したのと同様になる。従って、底部31bには見かけ上の曲げモーメントが作用したことになる。図10は、基体31が熱変形した状態を示した図である。図10に示すように、底部31bには見かけ上の曲げモーメントが作用し、基体31は弓状にかつ傾斜状に変形する。そして、基体31の上部側ほど温度が高いので熱膨脹も大きく、上部側ほど熱変形が大きい。
このように、底部31bには見かけ上の曲げモーメントが作用するが、図9に示した巻上機の場合、底部31bが平面状に形成しているが故に曲げに対する断面2次モーメント即ち膜剛性が小さいため変形が大きい。また、基体31は上部側ほど温度が高くなるので、変形度合いも大きくなる。なお、図10に示した変形状態は、説明を分かり易くするため、変形度合いを実際とは異なるように大きく示している。
ところで、エレベータの昇降運転中において、制動機12は、制動片12aと制動体6とは離間して空隙(以下ブレーキギャップと称する)を確保しなければならない。しかしながら、基体31が発熱により弓状にかつ傾斜状に熱変形すると、基体31に取付けられた制動機12は、制動体6に対して軸方向に変位してかつ傾いた状態となる。図11は、基体31が熱変形した際のブレーキギャップの状態を示した図であり、(a)は熱変形前の状態で、(b)は熱変形後の状態を示す。熱変形前において、両側のブレーキギャップは均等な状態であるが、熱変形後では、制動機12が制動体6に対して軸方向に変位及び傾いた状態となり、制動機12に設けられた制動片12aも軸方向に変位して傾いた状態となる。これによりブレーキギャップが変化し片側のブレーキギャップが減少する。基体31の熱変形が大きいとその分ブレーキギャップの減少量も大きくなる。
また、制動機12を熱変形の小さい基体31の下部に取付けた場合、ブレーキギャップの減少量は小さくなる。しかしながら、制動機12が下部にあるため保守点検が困難であること、及び、基体31の下部には取付部31cが形成されているため制動機12の実装空間に制限があることにより、制動機12を基体31の下部に取付けることは実質上不可となる。
以上のように、エレベータ用巻上機は、発熱前の初期状態においては、制動片12aが制動体6に対して所定のブレーキギャップで離間した状態で駆動されるが、その後、発熱による基体31の熱変形が大きくなり、制動片12aも制動体6に対して相対的に変形が大きくなると、ブレーキギャップの減少量も大きくなる。これにより、制動片12aが制動体6に接触し、昇降運転時、制動片12aの接触による引き摺り音や制動片12aの磨耗の問題が発生する。かといって、ブレーキギャップの減少量を見越して、発熱前の初期状態でのブレーキギャップを大きく設定すると、制動片12aのストロークも大きくなる。この場合、制動時、制動片12aが制動体6に衝突する衝撃が大きくなり騒音が大きくなる。そして、制動を解除する際、制動片12aを制動体6から引き離す電磁力が大きくなり制動機12の容量も大きくなるといった問題点がある。
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、電動機が発熱しても基体の熱変形が小さいエレベータ用巻上機を得ることを目的とする。
この発明に係るエレベータ用巻上機においては、筒状をなす円筒部とこの円筒部の一側に塞ぐように設けられた底部とを有した基体と、円筒部に設けられた電動機の固定子巻線と、基体の軸心に回転自在に支持された電動機の回転体と、回転体に設けられた制動体と、基体に設けられ制動体に対応して制動動作する制動機とを備え、底部を、少なくとも一部が曲面状に形成し、この曲面状を回転体側へ出っ張る方向に形成したものである。
この発明は、基体の底部を、少なくとも一部が曲面状に形成し、この曲面状を回転体側へ出っ張る方向に形成したことにより、底部の膜剛性が高くなる。このため、電動機が発熱しても基体の熱変形が小さくなる。
この発明の実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の断面図を示す図である。 図1の矢視IIから視た正面図を示す図である。 底部の半径と熱変形によるブレーキギャップの減少量との関係を示す図である。 この発明の実施の形態2におけるエレベータ用巻上機の制動機の周方向取付け位置を示す図である。 制動機の周方向取付け位置と熱変形によるブレーキギャップの減少量との関係を示す図である。 底部の球面の半径及び制動機の取付け位置による設定ブレーキギャップを示す図である。 この発明の実施の形態2におけるエレベータ用巻上機の適用例を示す図である。 この発明の実施の形態4におけるエレベータ用巻上機の断面図を示す図である。 基体の底部が平面形状であるエレベータ用巻上機の断面図を示す図である。 図9の基体の熱変形状態を示す図である。 図9の基体が熱変形した際のブレーキギャップの状態を示す図である。 底部1bが円錐状に形成されたものと球面状に形成されたものとの比較を示した表である。
符号の説明
1 基体、1a 円筒部、1b 底部、1d 球面、1f 境部、5 回転体、6 制動体、7 駆動綱車、7a ボルト、8 主索、9 電動機、10 固定子巻線、11 界磁磁石、12 制動機、12a 制動片、14 乗りかご、15 釣合いおもり、31 基体、31a 円筒部、31b 底部、50 基体、50a 円筒部、50b 底部、50d 球面、50e 50f 境部、50g 主軸、52 回転体、53 制動体、54 駆動綱車、55 ボルト
以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態1のエレベータ用巻上機を示す図で、図1は断面図、図2は図1の矢視IIから視た図である。図において、図9と同符号のものは相当部分を示す。巻上機は基体1を有し、基体1は筒状をなす円筒部1aと、この円筒部1aの一側に塞ぐように設けられた底部1bと、下部には図示しない架台に取付けられる取付部1cとを有する。底部1bは、一部が球面1dに形成され、この球面1dが回転体5側へ出っ張る方向に形成されている。円筒部1aと底部1bとの境部1fは円弧状に形成され、この円弧状の一端と底部1bの球面1dの一端とは繋がるように形成されている。底部1bの中心部には軸受3を固定する底部ボス部1eが設けられ、球面1dは、境部1fの円弧状の一端から底部ボス部1eまでの部分に形成されている。そして、底部1bのうち球面1dを有する部分の厚さが均一に形成されている。この球面1dはその中心Cが基体1の外側で軸心線上に位置し、基体1の軸心線に対して対象に形成されている。球面1dの半径は、球面1dの頂点が基体1の外端面から寸法Sに位置するようにして決定されている。従って、球面1dの半径は、寸法Sが大きくなるほど小さくなり、寸法Sが小さくなるほど大きくなる。制動機12は基体1の周方向に取付けられ、基体1の水平中心に対して略45°の角度で水平中心より上側に取付けられている。そして、図9のエレベータ用巻上機と同様に、電動機9の固定子巻線10に電力を通電することで昇降体を昇降させる。
固定子巻線10が通電されることにより、固定子巻線10は発熱する。この発熱は、円筒部1aへ熱伝導し、底部1b及び取付部1cへと熱伝導され、基体1が発熱し、基体1の表面から外部へ放熱する。基体1の発熱は、固定子巻線10に近い部分である円筒部1aに高い温度を示し、底部1b、取付部1cはそれよりも低い温度を示す。このように基体1には各部において温度勾配が生じ、この温度勾配による各部の熱膨張の違いから、基体1が熱変形する。しかしながら、本実施の形態のエレベータ用巻上機によれば、底部1bの一部が球面1dに形成され、この球面1dが円筒部1aの他側1dへ出っ張る方向に形成されている場合、底部1bの膜剛性が高いため、基体1の熱変形が小さくなる。基体1の熱変形が小さくなると、基体1に取付けられた制動機12の制動体6に対する変位も小さくなり、ブレーキギャップの減少量も小さくなる。
次に、球面1dの半径と熱変形によるブレーキギャップの減少量との関係を図3を用いて説明する。図3に示すように、球面1dの半径が小さいほど、膜剛性が高く熱変形が小さくなりブレーキギャップの減少量も小さくなる。逆に、球面1dの半径が大きいほど即ち平面状に漸近するほど、膜剛性が低く熱変形が大きくなりブレーキギャップの減少量も大きくなる。底部が平面状になるとブレーキギャップの減少量は最も大きくなる。このように、底部1bの一部が球面1dに形成され、この球面1dが円筒部1aの他側1dへ出っ張る方向に形成されている場合、熱変形によるブレーキギャップの減少量は小さくなり、球面1dの半径が小さいほどその減少量はさらに小さくなる。
球面1dの半径は小さくなればなるほどブレーキギャップの減少量も小さくなるが、球面1dの半径が小さくなり過ぎると、底部1bがへこむ量即ち図1の寸法Sが大きくなり巻上機の軸方向の幅も大きくなる。巻上機の軸方向の幅を大きくせずに構成するには、図1に示したように、寸法Sがほぼ円筒部1aの軸方向の幅となるように底部1bを球面1dに形成するのが好ましい。
次に、底部1bが円錐状に形成されたものと、本実施の形態のように球面1dに形成されたものについての比較を説明する。本実施の形態では、底部1bを球面1dに形成したが、円錐状に形成しこの円錐状が円筒部1aの他側1dへ出っ張る方向に形成してもよい。しかしながら、円錐状よりも球面1dに形成した方がブレーキギャップの減少量は小さい。
図12の表は、底部1bが円錐状に形成されたものと球面状に形成されたものとの比較を示したもので、制動機12を基体1の頂部で水平中心に対して90°に取付け、基体1の取付部1cを除いた円筒部1a及び底部1bの部分が熱変形したときのブレーキギャップ減少量の解析結果の一例である。表中のDは円筒部の外径、Lは円筒部の幅、Sは球面状の頂点と基体1の外端面との距離または円錐状の頂点と基体1の外端面、Hは制動片12aの高さ、tは底部1bの板厚、ΔTは固定子巻線9の発熱による円筒部1aの温度上昇、δ比は円錐状の場合のブレーキギャップ減少量を1とした時の球面状の場合のブレーキギャップ減少量との比である。なお、基体1の材質は通常、巻上機で適用される鋳鉄で、解析は解析ソフトANSYSで行った。なお、上記のD、L,S、Hは図1に示している。
図12の表に示したように、底部1bが球面に形成している方が円錐状のものよりブレーキギャップ減少量を約40%小さくでき有用である。
以上のように本実施の形態のエレベータ用巻上機は、筒状をなす円筒部1aとこの円筒部1aの一側に塞ぐように設けられた底部1bとを有した基体1と、円筒部1aに設けられた電動機11の固定子巻線10と、基体1の軸心に回動自在に支持された電動機11の回転体5と、基体1に設けられ回転体5を制動する制動機12とを備え、底部1bを、少なくとも一部が球面1dに形成し、この球面1dを回転体5側へ出っ張る方向に形成したので、底部1bの膜剛性が高くなり、固定子巻線10の通電により基体1が発熱してもその熱変形量が小さく、制動機12のブレーキギャップの減少量を小さくできる。これにより回転時において制動片12aの制動体6との接触による引き摺り音や制動片12aの磨耗が発生しにくくなる。
また、基体1が発熱しても制動片12aの制動体6との接触がないようにするために、基体1が発熱されていない初期状態においては、熱変形によるブレーキギャップの減少量を見越して初期状態のブレーキギャップ(以下、設定ブレーキギャップと称する)を設定する。本実施の形態のエレベータ用巻上機は、熱変形によるブレーキギャップの減少量が小さいので設定ブレーキギャップも小さくでき、制動時において、制動片12aが制動体6に衝突する衝撃が小さくなり騒音が小さくなる。そして、制動を解除する際、制動片12aを制動体6から引き離す電磁力が小さくなり制動機12の容量も小型化できる。
さらに、底部1bの膜剛性が高くなると共に巻上機全体の剛性も高くなり、熱変形の減少のみならず、巻上機が懸架する乗りかごや釣合いおもりの荷重に対しても変形を小さくできる。
なお、本実施の形態では、底部1bを球面1dに形成したが、必ずしも球面1dである必要はなく、底部1bを少なくとも一部が曲率半径の異なる曲面が繋がるような曲面状に形成するなど、円錐状ではなく曲面状に形成したものであればよく、このような構成でも熱変形を小さくでき、ブレーキギャップの減少量を小さくできる。球面1dの中心を基体1の外側で軸心線上に位置させたが、必ずしもその必要はなく、底部1bに球面部分が形成できれば基体1の軸心線上からずれてもよい。また、底部1bの球面1dを基体1の軸心線に対して対象に形成したが、必ずしも対象に形成する必要はなく、熱変形の大きい基体1の上側にのみに球面あるいは曲面状を形成してもブレーキギャップの減少量を小さくできる。しかしながら、球面あるいは曲面状を基体1の軸心線に対して対象に形成し、基体1の下側にも球面あるいは曲面状を形成することにより、より熱変形を小さくでき、ブレーキギャップの減少量を小さくできる。さらに、底部1bの球面1dを、その中心が基体1の軸心上にありこの軸心に対して対象に形成したので、基体1を鋳造で製作する際、鋳造型を製作し易いエレベータ用巻上機を得ることができる。
また、円筒部1aと底部1bとの境部1fは円弧状に形成し、この円弧状の一端と底部1bの曲面状の一端とが繋がるように形成したので、平面部分がなくさらに膜剛性が高くなり、より熱変形を小さくできる。
また、本実施の形態では、底部1bの球面1dの厚さを均一に構成しているが、この球面1dの厚さは必ずしも均一である必要はない。しかしながら、この厚さが大きく異なるような形状だと、厚さ方向に温度勾配が生じこれによる熱変形が生じる。そのため、本実施の形態では、底部1bの球面1dの厚さを均一に構成して、より熱変形を小さくでき、軽量及び高剛性なエレベータ用巻上機を得ることができる。
ところで、エレベータは、駆動綱車7に主索8が巻き掛けられ、駆動綱車7を駆動することで、主索8の両端に懸架された乗りかごや釣合いおもりの昇降体を昇降運転する。駆動綱車7は昇降体の荷重が主索8を介して作用した状態で駆動される。駆動綱車7に主索8を介して作用された荷重を受けながら、長年、昇降運転すると、駆動綱車7の磨耗や駆動綱車7と主索8との間の異物噛み込みによる駆動綱車7の損傷などにより、巻上機を新規の駆動綱車7に取り替える場合がある。本実施の形態では、駆動綱車7を回転体5に着脱可能に固定したので、上記のような不慮の事態でも巻上機を交換して新規の駆動綱車7に取り替えることなく、既存の巻上機から駆動綱車7を交換することができる。
また、制動体6を円筒部1aの他側1dに隣合わせに配置されて、回転体5の外周より径方向に延在した円板状に形成し、この円板状の制動体6に対応した制動機12を基体1の外周面に取付け、駆動綱車7を円筒部1a、制動体の順で制動体6に隣合わせに配置し回転体5に円筒部1aと反対側方向へ着脱可能に固定したので、軸方向の幅が短くでき軽量なエレベータ用巻上機を得ることができると共に、制動機12を取り外すことなく駆動綱車7を交換することができ、駆動綱車7の交換作業時間を短縮できる。
実施の形態2.
図4、5、6はこの発明の他の実施の形態を説明する図である。実施の形態1のエレベータ用巻上機は、底部1bを球面1dに形成し熱変形によるブレーキギャップの減少量を小さくしている。そして、制動機12を基体1の水平中心に対して上部側略45°の角度で、基体1の周方向に取付けている。前述のように、基体1が発熱されていない初期状態でのブレーキギャップ(即ち設定ブレーキギャップ)は、熱変形によるブレーキギャップの減少量を見越して設定され、この設定ブレーキギャップはできるだけ小さく設定するのが望ましい。また、制動機12の任意の配置に対しても所望の設定ブレーキギャップを設定することが肝要である。本実施の形態は、実施の形態1のエレベータ用巻上機に対して制動機12を周方向に任意に配置し、熱変形によるブレーキギャップの減少量と、制動機12の周方向取付け位置と、球面1dの半径との関係に基づいて設定ブレーキギャップの設定方法を示したものである。
図4は制動機12の周方向取付け位置を示した図で、制動機12を基体1の水平中心に対して上部側へ種々の角度で取付けた状態を示した図である。図5は、制動機12の周方向取付け位置と熱変形によるブレーキギャップの減少量との関係を示した図である。前述のように、基体1の熱変形量は上部側ほど大きい。そのため、図4のように制動機12の周方向取付け位置の角度が大きくなると、図5に示したように熱変形によるブレーキギャップの減少量は大きくなる。また、ブレーキギャップの減少量は、球面1dの半径が大きいほど即ち平面状に漸近するほど大きくなる。
以上のように、熱変形によるブレーキギャップの減少量は、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置により変化する。そのため、設定ブレーキギャップの設定量を、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置により、どのように設定するかを決定する必要がある。そして、基体1が熱変形した際のブレーキギャップを必要最低限の量に確保しつつ、制動機12の容量や制動片12aの押圧時の騒音を考慮した制動片12aのストロークとなるように設定ブレーキギャップを決定する必要がある。即ち、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置により、基体1の熱変形によるブレーキギャップの減少量を見越して、制動機12の容量や制動片12aの押圧時の騒音をできるだけ小さくなるように設定ブレーキギャップを所望の値に設定する。
図6は、球面1dの種々の半径における制動機12の周方向取付け位置と設定ブレーキギャップの関係を示した図である。図6に示すように、制動機12の取付け位置の角度が小さくなる即ち基体1の下部に取付けられるほど、及び、球面1dの半径が小さくなるほど、設定ブレーキギャップは小さく設定される。これは、設定ブレーキギャップがブレーキギャップの減少量を見越して設定されるので、ブレーキギャップの減少量が小さいほど、設定ブレーキギャップを小さく設定できることによる。
ここで、熱変形によるブレーキギャップの減少量と、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置との関係に基づく、設定ブレーキギャップの設定方法について説明する。例えば、制動機12の周方向取付け位置が30°にあり、設定ブレーキギャップをAに設定したい場合、球面1dの半径をaとなるように基体1を形成すればよい。球面1dの半径は小さくなればなるほどブレーキギャップの減少量も小さくなるが、球面1dの半径が小さくなり過ぎると、底部1bがへこむ量即ち図1の寸法Sが大きくなり巻上機の軸方向の幅も大きくなる。そのため、巻上機の軸方向の幅を大きくせずに構成するために、球面1dの頂点位置(図1の寸法S)に寸法制限を受け、例えば球面1dの半径がbとなるように基体1を形成する。このとき設定ブレーキギャップをBに設定したい場合、制動機12の周方向取付け位置を45°にすればよい。以上のように、熱変形によるブレーキギャップの減少量と、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置との関係に基づいて、設定ブレーキギャップを所望の値に設定する。
上記のように、設定ブレーキギャップを、熱変形によるブレーキギャップの減少量と、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置との関係に基づいて設定した。しかしながら、本実施の形態のように制動片12aが制動体6に対して両側にある場合、ブレーキギャップの片側は減少し、他側はその減少量分増加する場合がある。このとき、熱変形によるブレーキギャップの増加量を考慮して、設定ブレーキギャップを設定してもよい。このように、本実施の形態は、熱変形によるブレーキギャップの減少量に限らず増加量でもよく、即ち変化量を考慮して、設定ブレーキギャップを設定してもよい。
以上のように、本実施の形態は、制動機12を基体1の周方向に取付け、制動体6に対してブレーキギャップを有して接離する制動片12aを有し、固定子巻線10の通電による発熱により基体1が熱変形し、この熱変形によるブレーキギャップの変化量と、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置との関係に基づいて、設定ブレーキギャップを設定したので、制動機12の配置に自由度が増し、任意の配置に対しても、ブレーキギャップの変化量を見越した設定ブレーキギャップとなっており、制動片12aの引き摺り音や磨耗が発生しにくく、制動時において制動片12aの衝突音が小さくなるエレベータ用巻上機が得られる。また、巻上機の軸方向の幅に寸法制限がある場合でも、同様に、制動片12aの引き摺り音や磨耗が発生しにくく、制動時において制動片12aの衝突音が小さくなるエレベータ用巻上機が得られる。
実施の形態3.
図7は、この発明の他の実施の形態を示す図である。本実施の形態は、実施の形態2のエレベータ用巻上機をエレベータに適用したもので、制動機12の配置により多彩な適用を示したものである。
図7の(a)において、巻上機は昇降路の頂部あるいは機械室に取付けられた架台13aに固定される。駆動綱車7に巻き掛けられた主索8は一端に昇降体である乗りかご14を懸吊し、他端に同じく昇降体である釣合いおもり15を懸吊する。昇降路内において乗りかご14と釣合いおもり15の干渉を避けるために、架台13aには駆動綱車7から所定の間隔に離れた位置にそらせ車16が取付けられる。主索8は駆動綱車7から斜めに繰り出され、そらせ車16に巻き掛けられて釣合いおもり15を懸吊し、乗りかご14と釣合いおもり15とを所定の間隔に配置される。巻上機の駆動により駆動綱車7が回転され、乗りかご14と釣合いおもり15をつるべ式に昇降運転される。上記のようなエレベータにおいては、巻上機の制動機12は、駆動綱車7から斜めに繰り出される主索8との干渉を避けるために、水平中心から略45°の角度をなして取付けられる。
そして、実施の形態2のように、熱変形によるブレーキギャップの減少量と、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置(即ち水平中心から略45°の角度をなした取付け位置)との関係に基づいて、設定ブレーキギャップを所望の値に設定する。
図7の(b)のエレベータにおいては、巻上機が昇降路の下部に配置された架台13bに固定される。駆動綱車7に巻き掛けられた主索8は垂直上方向に繰り出され、一端が昇降路の頂部に設置された第1転向車17aに巻き掛けられて乗りかご14を懸吊し、他端が昇降路の頂部に設置された第2転向車17bに巻き掛けられて釣合いおもり15を懸吊する。巻上機の駆動により駆動綱車7が回転され、乗りかご14と釣合いおもり15をつるべ式に昇降運転される。上記のようなエレベータにおいては、巻上機の制動機12は、駆動綱車7から垂直上方向に繰り出される主索8との干渉を避けるために、水平中心から略0°の角度をなして取付けられる。
そして、実施の形態2のように、熱変形によるブレーキギャップの減少量と、球面1dの半径及び制動機12の周方向取付け位置(即ち水平中心から略0°の角度をなした取付け位置)との関係に基づいて、設定ブレーキギャップを所望の値に設定する。
以上のように、実施の形態2のエレベータ用巻上機をエレベータに適用したので、主索8の巻き掛け方向の自由度が増え、巻上機の昇降路における配置が多彩にできる。多彩な構成のエレベータにおいて、固定子巻線10を通電して昇降運転し、基体1が発熱してもその熱変形は小さく制動機12のブレーキギャップの減少量を小さくでき、回転時において制動片12aの制動体6との接触による引き摺り音や制動片12aの磨耗が発生しにくく、制動時において制動片12aの衝突音が小さくなるエレベータが得られる。
実施の形態4.
図8は、この発明の他の実施の形態を示す図である。本実施の形態は、実施の形態1に対して回転軸の構成を変更したものである。図8において、基体50は筒状をなす円筒部50aと、この円筒部50aの一側に塞ぐように設けられた底部50bと、下部には図示しない架台に取付けられる取付部50cとを有する。底部50bは、一部が球面50dに形成され、この球面50dが円筒部50aの他側50eへ出っ張る方向に形成されている。そして、球面50dの部分の厚さが均一に形成されている。この球面50dはその中心が基体50の外側で軸心線上に位置し、基体50の軸心線に対して対象に形成されている。円筒部50aと底部50bとの境部50fは円弧状に形成され、この円弧状の一端と球面50dの一端とは繋がるように形成されている。底部50bの軸心部に主軸50gが立設している。
主軸50gには軸受51を介して回転体52が回動自在に支持されている。回転体52は円筒部50aと対向した回転体円筒部52aとこの回転体円筒部52aの一側に設けられた回転体ボス部5bとを有し、回転体ボス部5bが軸受51に固定されている。そして、回転体円筒部52aの他側が底部50bに対向されている。回転体52には、円筒部50aの他側50に隣接して配置され回転体円筒部52aから径方向に延在した円板状の制動体53を有する。駆動綱車54が、円筒部50a、制動体53の順で制動体53に隣接して配置され、回転体52にボルト55で円筒部50aと反対側方向へ着脱可能に固定されている。その他、実施の形態1と同符号のものは相当部分を示す。また、軸受台56を基体50の取付部50cに取付け、主軸50gの軸端に軸受台56を固定して、主軸50gを基体50と軸受台56で支持してもよい。
本実施の形態のエレベータ用巻上機は、以上のように構成したので実施の形態1と同様な効果を奏するとともに、主軸50gを底部50bに立設したので、部品点数が少なくより経済的なエレベータ用巻上機を得ることができる。また、軸受台56を有する場合、主軸50dを基体50と軸受台56で支持するので、駆動綱車にかかる荷重が大きくても強固なエレベータ用巻上機を得ることができる。軸受台56を有しない場合、さらに軸方向に薄型及び軽量であり、軸受台56がないため駆動綱車54の交換も容易なエレベータ用巻上機を得ることができる。
なお、実施の形態1では、円筒部1aの内周面に固定子巻線10を設けたが、これに制限されず、円筒部1aの外周面に固定子巻線10を設け、この固定子巻線10に対向するように回転体円筒部5aを径方向外側に形成し、その回転体円筒部5aの内周面に界磁磁石11を設けて電動機11を構成し、回転体円筒部5aの外周面に制動面を設けこの制動面に対応した制動機12を基体1に設けた構成でもよく、発熱源である固定子巻線10を基体1に設けられる構成であればよい。
また、実施の形態1では、制動機12を基体1の外周面に取付けたが、これ制限されず、例えば回転体円筒部5aの内周面に制動面を設け、これに対応した制動機12を底部1bと回転体5とで形成される空間内で底部1b(基体1)に取付けるなど、制動機12を基体1に取付けられるものであればよい。
また、実施の形態1において、制動体6を回転体5に一体に形成したが、分離してボルトで回転体5に固定してもよい。また、底部1bに、固定子巻線10と界磁磁石11の空隙に対向した点検穴を設けてもよく、この場合、外側より固定子巻線10と界磁磁石11の空隙に塵埃の付着などの点検ができる。
また、実施の形態2は、実施の形態1のエレベータ用巻上機の設定ブレーキギャップの設定方法を示したが、実施の形態4のエレベータ用巻上機に対しても同様に設定できる。
また、実施の形態3は、実施の形態2のエレベータ用巻上機をエレベータに適用したものであるが、実施の形態4のエレベータ用巻上機を適用してもよい。
また、実施の形態4において、主軸50gは底部50bと一体に形成したが、分離して固定した構成でもよい。
以上のように、この発明にかかるエレベータ用巻上機は、昇降体を懸架する主索8が巻き掛けられ、主索8を駆動し昇降体を昇降させる駆動装置において用いられるのに適している。

Claims (10)

  1. 筒状をなす円筒部とこの円筒部の一側に塞ぐように設けられた環状の底部とを有した基体と、
    前記円筒部に設けられた電動機の固定子巻線と、
    前記基体の軸心に回転自在に支持された前記電動機の回転体と、
    前記基体に設けられ前記回転体を制動する制動機とを備え、
    前記底部は、一部が球面に形成され、この球面は、前記回転体側へ出っ張るように形成されている、ことを特徴とするエレベータ用巻上機。
  2. 前記基体を、前記円筒部と前記底部との境部を円弧状に形成し、この円弧状の一端と前記球面の一端とが繋がるように形成した、ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用巻上機。
  3. 前記底部における前記球面の厚さが均一である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ用巻上機。
  4. 前記球面の前記回転体側への出っ張り量は、ほぼ前記円筒部の軸方向の幅となるようにした、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエレベータ用巻上機。
  5. 前記球面は1点の中心を有し、この中心が前記基体の軸心線上にあり、この軸心線に対して該球面が対称に形成されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエレベータ用巻上機。
  6. 前記制動機は前記基体の周方向に取付けられ、前記回転体に対して空隙を有して接離する制動片を有し、前記固定子巻線の通電による発熱により前記基体が熱変形し、この熱変形による前記空隙の変化量と、前記球面の半径及び前記制動機の周方向の取付け位置との関係に基づいて、前記固定子巻線が発熱する前の前記空隙を設定した、ことを特徴とする請求項5記載のエレベータ用巻上機。
  7. 前記回転体に着脱可能に固定された駆動綱車を備えた、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のエレベータ用巻上機。
  8. 前記基体における前記円筒部の内周面に前記固定子巻線を設け、
    前記制動機は前記基体の外周面に取付けられ、
    前記回転体には前記制動機に対応した制動体を有し、
    この制動体は前記底部と反対側で前記円筒部に隣合わせに配置されて、前記回転体の外周より径方向に延在した円板状に形成され、
    前記駆動綱車は前記円筒部、前記制動体の順で前記制動体に隣合わせに配置され、前記円筒部と反対側方向へ着脱可能に前記回転体に固定した、
    ことを特徴とする請求項7記載のエレベータ用巻上機。
  9. 前記底部の軸心部に主軸を立設し、この主軸に前記回転体を回転自在に支持した、ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のエレベータ用巻上機。
  10. 前記駆動綱車に巻き掛けられる主索と、この主索に懸架される昇降体と、請求項1から9のいずれかに記載のエレベータ用巻上機と、を備えたことを特徴とするエレベータ。
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