JP4600857B2 - 有機el素子の製造方法および有機el素子 - Google Patents

有機el素子の製造方法および有機el素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ELディスプレイパネルに用いられる有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の製造方法に関するものであり、さらに詳細には、水分や有機溶媒成分が吸着することを防止するとともに、水分や有機溶媒成分がガス化して、放出されることを効果的に防止することができ、平坦化のための有機層との密着性に優れたパッシベーション層を備え、耐久性が向上した有機EL素子を高い生産性をもって、製造することができる有機EL素子の製造方法に関するものであり、その方法によって製造された有機EL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、占有面積を減少させるという観点から、フラットディスプレイパネルへの要求が高まっている。
【0003】
現在のところ、フラットディスプレイパネルとしては、液晶ディスプレイパネルが広く用いられているが、最近では、軽量で、バックライトを必要としないエレクトロルミネッセント素子(以下、「EL素子」という。)を用いたデバイスが注目を集めている。
【0004】
EL素子は、無機EL素子と有機EL素子とに分類され、無機EL素子は、たとえば、ZnSに微量のMnなどを添加するなど、発光層に無機物を用いたもので、分散型と薄膜型に分類されるが、いずれも、蛍光体中の電子が高電界下で、加速されて、発光中心に衝突して、励起される現象を利用しており、現在、実用化されている無機EL素子は、交流で動作するものが多く、輝度は電圧と周波数に依存する。
【0005】
また、有機EL素子は、外部から、電子とホール(正孔)を注入し、それらの再結合エネルギーによって、発光中心を励起するもので、一般に、錫ドープ酸化インジウム(ITO)などよりなるホール(正孔)注入電極と、ホール注入電極上に成膜されたトリフェニルジアミンなどを含むホール(正孔)輸送層と、ホール輸送層上に積層されたアルミキノリノール錯体(Alq)などの蛍光物質を含む有機発光層と、マグネシウムなどの仕事関数の小さな金属電極(電子注入電極)とを基本構成として有している。
【0006】
無機EL素子が、駆動のために、比較的高電圧を必要とするのに対し、有機EL素子は、10ボルト前後の低電圧によって、数百ないし数万cd/mというきわめて高い輝度が得られるという特徴を有しており、EL素子のうちでは、有機EL素子が主流となっている。
【0007】
しかしながら、有機EL素子においては、水分や有機溶媒成分が吸着することによって、たとえば、発光素子中に、黒い斑点状のダークスポットが発生し、発生したダークスポットが成長して、有機EL素子の寿命を低下させるという問題があった。
【0008】
また、有機EL素子においては、基板上に、カラーフィルターなどを形成すると、段差が生じ、その上に、透明電極および補助配線を形成した場合には、透明電極および補助配線が切断されるおそれがあるため、平坦化のための有機層を設け、有機層上に、ITO電極などを形成するように構成されているが、ディスプレイ駆動時に発生する熱などにより、有機層中の水分や有機溶媒成分が揮発し、ガスとして放出されるため、発光素子機能が劣化し、信頼性が低下するという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
かかる問題を解決するため、たとえば、特開平10−312886号公報は、有機EL素子に、水分や有機溶媒成分が吸着することを防止するとともに、有機EL素子に形成されたフォトレジスト層中の水分や有機溶媒成分が、ガスとして放出されて、発光素子機能が劣化することを防止するため、CVD法により、フォトレジスト層上に、保護層を形成した有機EL素子を開示している。
【0010】
しかしながら、CVD法によって形成された保護層は、有機層との密着性がきわめて悪いため、その後の熱処理などの工程で、しばしば膜剥離が生じ、信頼性が低く、歩留まりが悪いだけでなく、耐久性が低いという問題があった。
【0011】
一方、特開平11−260562号公報は、カラーフィルター層上に、有機層が積層され、さらに、有機層上に、酸化シリコンを含有した保護層が形成された有機EL素子を用いた有機ELカラーディスプレイを開示している。
【0012】
しかしながら、酸化シリコンは吸湿性が高いため、吸収された水分がガスとして放出されやすく、経時的に、発光素子機能を劣化させ、耐久性が低いという問題があった。
【0013】
したがって、本発明は、水分や有機溶媒成分が吸着することを防止するとともに、水分や有機溶媒成分がガス化して、放出されることを効果的に防止することができ、平坦化のための有機層との密着性に優れたパッシベーション層を備え、かつ、耐久性が向上した有機EL素子を高い生産性をもって、製造することができる有機EL素子の製造方法およびその方法によって製造された有機EL素子を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、基板上に、有機材料または有機溶剤を含有する平坦化層を形成し、次いで、プラズマCVD法によって、窒化シリコンを含有する2層のパッシベーション層を形成して、有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法であって、前記2層のパッシベーション層のうち、1層目のパッシベーション層の形成後、2層目のパッシベーション層の形成前に、前記1層目のパッシベーション層に洗浄処理、加熱処理、脱水処理および乾燥処理を施すことを特徴とする有機EL素子の製造方法によって達成される。
本発明の前記目的はまた、基板上に、有機材料または有機溶剤を含有する平坦化層を形成し、次いで、プラズマCVD法によって、窒化シリコンを含有する2層のパッシベーション層を形成して、有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法であって、前記2層のパッシベーション層のうち、1層目のパッシベーション層の形成後、2層目のパッシベーション層の形成前に、前記1層目のパッシベーション層に洗浄処理、加熱処理、脱水処理および乾燥処理を施すことを特徴とする有機EL素子の製造方法によって製造された有機EL素子によって達成される。
【0015】
酸化シリコンとは異なって、窒化シリコンは吸湿性がなく、したがって、本発明によれば、水分や有機溶媒成分が吸着することを防止することができるから、水分や有機溶媒成分がガス化し、放出されて、有機EL素子の発光素子機能が低下することを効果的に防止することが可能になる。
【0016】
また、窒化シリコンはガス透過性がきわめて低いため、ディスプレイ駆動によって生じる熱により、水分や有機溶媒成分が、ガス化しても、封じ込めることができ、したがって、水分や有機溶媒成分がガス化し、放出されて、有機EL素子の発光素子機能が低下することを効果的に防止することが可能になる。
【0017】
さらに、プラスチック基板を用いた場合には、基板からガスが放出されることがあり得るが、本発明によれば、プラスチック基板から放出されたガスも封じ込めることができ、プラスチック基板から放出されたガスによって、発光素子機能が低下することを効果的に防止することが可能になる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様においては、有機EL素子は、さらに、平坦化層を備え、前記パッシベーション層が、前記平坦化層と前記電極との間に形成されている。
【0019】
窒化シリコンはガス透過性がきわめて低いため、本発明の好ましい実施態様によれば、平坦化層に含まれている水分や有機溶媒成分が、ディスプレイ駆動によって生じる熱により、ガス化しても、封じ込めることができ、したがって、水分や有機溶媒成分がガス化し、放出されて、有機EL素子の発光素子機能が低下することを効果的に防止することが可能になる。
【0020】
さらに、窒化シリコンは、平坦化層と良好に密着するから、本発明の好ましい実施態様によれば、有機EL素子、したがって、有機ELディスプレイパネルの生産性および耐久性を向上させることが可能になる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記平坦化層が、有機材料または有機溶剤を含有している。
【0022】
本発明の前記目的はまた、それぞれ、基板と、窒化シリコンを含有する少なくとも一層のパッシベーション層と、電極を備えた複数の有機EL素子を備え、前記複数の有機EL素子が独立して、制御が可能に、分割されたことを特徴とする有機ELディスプレイパネルによって達成される。
【0023】
本発明の好ましい実施態様においては、さらに、有機EL素子の各々が、平坦化層を備え、前記パッシベーション層が、前記平坦化層と前記電極との間に形成されている。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記平坦化層が、有機材料または有機溶剤を含有している。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、CVD法、スパッタリング法などによって成膜することができるが、異物であるパーティクルを被覆し、パーティクルが欠陥となることを防止する観点からは、CVD法、とくに、プラズマCVD法によって成膜することが好ましい。
【0026】
本発明において、プラズマCVD装置としては、平行平板方式、ECR方式、ICP方式、ヘリコン波プラズマ方式などのいずれをも使用することができ、装置コストの観点からは、平行平板方式が好ましいが、膜の緻密化など、膜質のコントロールが容易で、また、スパッタエッチングの効果の利用が可能である点からは、ECRプラズマ方式の方が好ましく、使用される。
【0027】
本発明において、平行平板型プラズマCVD装置を用いる場合には、基板温度が、50ないし200℃、成膜圧力が、100ないし800パスカル、成膜パワーが、6インチウエハーに対して、0.8W/cmないし3W/cmの範囲にあることが好ましい。成膜速度は、遅い方が、膜の緻密性が向上するため、パッシベーション層としての効果は向上するが、その一方で、生産性が悪くなるため、成膜速度は、100nm/分ないし1000nm/分が好ましい。これらの範囲外では、窒化シリコンの緻密性が悪くなり、パッシベーション膜としての効果が低下し、好ましくない。
【0028】
プラズマCVDの材料ガスとしては、通常、SiH 、N、NHが用いられるが、NHは膜質の制御のために用いられるものであり、NHを用いることは必ずしも必要ではない。
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層を、スパッタリング法によって成膜する場合には、とくに、RF電源を用いた高周波スパッタリング法によって、成膜することが好ましい。RF電源を用いた高周波スパッタリングの電力は10ないし100W/平方センチメートルの範囲が好ましく、周波数は13.56MHz、成膜速度は5ないし50nm/分、成膜中の圧力は0.1ないし1.0パスカルであることが好ましい。
【0029】
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、632nmの波長における屈折率が1.8ないし2.2の範囲にあることが好ましく、632nmの波長における屈折率が1.9ないし2.1の範囲にあると、さらに好ましい。窒化シリコンを含有するパッシベーション層の632nmの波長における屈折率が、1.8未満でも、2.2を越えていても、パッシベーション層に数多くの欠陥が生じ、好ましくない。
【0030】
本発明において、パッシベーション層に含有される窒化シリコンSiNxのxが0.5ないし1.5の範囲にあることが好ましく、xが0.8ないし1.3の範囲にあると、さらに好ましい。xが0.5未満でも、1.5を越えていても、パッシベーション層の吸湿性が増大し、好ましくない。
【0031】
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、10ないし30原子%の水素を含有していることが好ましく、20ないし30原子%の水素を含有しているとさらに好ましい。窒化シリコンを含有するパッシベーション層の水素含有量が、10原子%未満では、平坦化のための有機層との密着性が低下し、一方、30原子%を越えると、パッシベーション層の緻密性が低下し、好ましくない。
【0032】
窒化シリコンを含有するパッシベーション層中の水素含有量は、窒化シリコンを含有するパッシベーション層を成膜する際に用いる材料ガスに水素ガスを添加することによって、増大させることができ、成膜温度を上昇させることによって、減少させ、低下させることによって、増大させることができる。また、窒化シリコンを含有するパッシベーション層を成膜する際に、材料ガスの流量を低下させて、成膜レートを低下させると、水素含有量は減少し、材料ガスの流量を増大させて、成膜レートを増大させることによって、水素含有量を増大させることができ、平行平板型プラズマCVD装置によって、窒化シリコンを含有するパッシベーション層を成膜するときは、上部電極のパワーと下部電極のパワーの比を大きくすることによって、水素含有量を増大させ、小さくすることによって、水素含有量を減少させることができる。
【0033】
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、不純物として、0.5重量%以下のC、Arなどを含んでいてもよい。
【0034】
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、2ないし50nmの平均表面粗さ(Ra)を有していることが好ましく、10ないし50nmの最大表面粗さ(Rmax)を有していることが好ましい。
【0035】
また、本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、有機発光層から発せられた光の80%以上を透過する透過率を有していることが好ましい。
【0036】
本発明において、窒化シリコンを含有するパッシベーション層の厚さはとくに限定されるものではないが、5ないし50nm、とくに10ないし30nmであることが好ましい。
【0037】
本発明において、パッシベーション層が1層であるときは、ごみなどの異物が含まれた場合に、異物が除去されて、膜の欠陥を生じさせることがあるので、パッシベーション層は、2層構造を有していることが好ましい。
【0038】
本発明において、基板が有機発光層から発せられた光を取り出す側に位置しているときは、基板は透明でなければならないが、基板が有機発光層から発せられた光を取り出す側に位置していないときは、半透明であっても、不透明であってもよい。
【0039】
本発明において、基板の材質はとくに限定されるものではなく、積層される電極の材質によって、適宜選択することができる。
【0040】
透明な基板を形成するために好ましく使用することのできる材料としては、ガラスが挙げられ、ガラスのうち、とくに、無アルカリガラスが好ましく使用される。
【0041】
また、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルスルホンなどの透明プラスチックや、これらの上に、無機材料からなるパッシベーション膜を形成したものも、本発明の基板として、使用することができる。
【0042】
基板が透明であることを要しない場合には、ガラスや前記透明樹脂に加えて、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアリールエーテルニトリルなどの比較的耐熱性の高い樹脂、石英、アルミナなどのセラミック、ステンレスなどの金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものなどが、基板として、好ましく使用することができる。
【0043】
本発明において、有機EL素子は、基板上に、カラーフィルター層を備えている。
【0044】
カラーフィルター層は、フォトリソグラフィプロセスによって形成しても、蒸着プロセスによって形成してもよい。
【0045】
カラーフィルター層を、フォトリソグラフィプロセスによって形成する場合には、公知の方法および材料を使用することができる。
【0046】
有機EL素子を薄層化し、製造コストを低減させる観点からは、顔料および/または有機染料を蒸着して、カラーフィルター層を形成することが好ましい。
【0047】
蒸着によって、カラーフィルター層を形成する場合、顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれをも使用可能であり、無機顔料としては、たとえば、金属の複合酸化物などを用いることができ、無機顔料と有機顔料の混合物を使用することもできる。
【0048】
顔料および有機染料のうちでは、カラーバリエーションの多さから、有機顔料および有機染料が好ましく使用され、有機顔料および有機染料のうちでも、有機顔料は、耐熱性があり、有機溶媒や水に溶解しないため、とくに好ましい。
【0049】
カラーフィルター層は、顔料および有機染料を共蒸着して、形成することができる。
【0050】
好ましくは、カラーフィルター層は、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を蒸着して形成される。2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を蒸着して、カラーフィルター層を形成する場合には、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を組み合わせることによって、所望の光透過特性を有するカラーフィルター層を形成することが可能になり、緑色のフィルター層など、単一の顔料または有機染料を蒸着したときには、所望の光透過特性を有するカラーフィルター層を形成することが困難なときにも、所望の光透過特性を有するカラーフィルター層を形成することが可能になる。
【0051】
2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を蒸着して、カラーフィルター層を形成する場合には、顔料および/または有機染料を含む各ボートを個別に温度制御して、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を共蒸着して、カラーフィルター層を形成することが好ましい。2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を共蒸着する場合には、同時に蒸着をすることができるから、2以上の蒸着膜を積層する場合に比し、作業時間を短縮することが可能になり、また、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を混合して、蒸着する場合に比し、それぞれの顔料および/または有機染料の蒸気圧が大きく異なっていても、所望のように、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を含むカラーフィルター層を形成することが可能になる。
【0052】
2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を蒸着して、カラーフィルター層を形成する場合には、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を、それぞれ、蒸着して形成した2以上の蒸着層を積層して、カラーフィルター層を形成することができる。2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を共蒸着して、カラーフィルター層を形成する場合には、それぞれの添加量を正確に制御することが必要不可欠で、操作が煩雑であるが、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を、それぞれ、蒸着して形成した2以上の蒸着層を積層して、カラーフィルター層を形成する場合には、簡易に、所望の光透過特性を有するカラーフィルター層を形成することが可能になるだけでなく、それぞれの顔料および/または有機染料の蒸気圧が大きく異なっていても、所望の光透過特性を有するカラーフィルター層を形成することが可能になる。
【0053】
2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を、それぞれ、蒸着して形成した2以上の蒸着層を積層して、カラーフィルター層を形成する場合、各蒸着層を、2種類以上の顔料および/または2種類以上の有機染料を共蒸着して形成することもできる。
【0054】
カラーフィルター層は、メタルマスク、シャドウマスクなどのマスクを用い、顔料および/または有機染料をマスク蒸着して形成されることが好ましい。顔料および/または有機染料をマスク蒸着することによって、カラーフィルター層を形成する場合には、所望のパターンで、カラーフィルター層を形成することが可能になる。
【0055】
さらに、メタルマスク、シャドウマスクなどのマスクを用い、顔料および/または有機染料が、メタルマスク、シャドウマスクなどのマスクと基板面などの被蒸着面との隙間から、基板面などの被蒸着面に回り込むように、蒸着することによって、カラーフィルター層と、カラーフィルター層が形成されていない領域との境界部分に形成される壁の角度を数度の範囲に抑制することができ、したがって、カラーフィルター層上に形成される透明電極および補助配線が切断されるおそれを確実に防止することが可能になる。
【0056】
顔料および/または有機染料を蒸着する条件はとくに限定されるものではないが、1×10−4パスカル以下で、蒸着速度を0.01ないし1nm/秒程度とすることが好ましい。
【0057】
蒸着によって、カラーフィルター層を形成する際に用いられる有機顔料および有機染料としては公知の材料を使用することができ、たとえば、赤色用の有機顔料および有機染料としては、ジケトピロロピロール系、アンスラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、アゾ系、ベンズイミダゾロン系などが挙げられ、緑色用の有機顔料および有機染料としては、ハロゲン化銅フタロシアニン系、アンスラキノン系などが挙げられ、青色用の有機顔料および有機染料としては、銅フタロシアニン系、インダントロン系などが挙げられる。また、混色用の黄色用の有機顔料および有機染料としては、イソインドリン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ジスアゾ系などが、紫色用の有機顔料および有機染料としては、ジオキサジン系、アンスラキノン系などが挙げられる。
【0058】
これらの有機顔料および有機染料の中で、赤色フィルター層を形成するためには、アゾ系の有機顔料または有機染料が好ましく用いられ、青フィルター層を形成するためには、銅フタロシアニン系の有機顔料または有機染料が好ましく用いられる。また、緑赤色フィルター層は、銅フタロシアニン系の有機顔料もしくは有機染料の蒸着層と、ジスアゾ系の有機顔料もしくは有機染料の蒸着層とを積層して形成し、または、銅フタロシアニン系の有機顔料または有機染料とジスアゾ系の有機顔料もしくは有機染料を混合して形成することが好ましい。
【0059】
カラーフィルター層を蒸着によって形成する場合、カラーフィルター層は厚いほど、色度が向上し、薄すぎると、カラーフィルター層としての機能が低下するが、厚くなりすぎると、顔料の結晶が析出したり、カラーフィルター層にひび割れが生じるため、一般に1.5μm以下であることが好ましい。具体的には、カラーフィルター層の好ましい厚さは、色によって異なり、赤色フィルター層は、400ないし15000オングストロームの厚さを有していることが好ましく、緑色フィルター層は、200ないし10000オングストロームの青色蒸着層と1000ないし2000オングストロームの青色蒸着層とを積層した厚さを有していることが好ましく、青色フィルター層は、400ないし15000オングストロームの厚さを有していることが好ましい。これら赤色フィルター層、緑色フィルター層および青色フィルター層の厚さは、要求される光学特性に応じて、変化させることができる。
【0060】
カラーフィルター層を、フォトリソグラフィプロセスによって、形成する場合には、R、G、Bの各色によって、厚さが大きく異なることがあるため、カラーフィルター層上に、直接、電極および補助配線を形成するときは、カラーフィルター層上に形成された透明電極および補助配線が切断されるおそれがあり、所望のように、配線をして、有機ELディスプレイパネルとして、機能させることが困難になる場合がある。したがって、本発明において、カラーフィルター層を、フォトリソグラフィプロセスによって、形成する場合には、有機EL素子は、カラーフィルター層上に、厚さの違いを補償する平坦化層を有している。
【0061】
本発明において、平坦化層を形成する材料は、とくに限定されるものではなく、たとえば、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、環状オレフィン系樹脂、シロキサン、アルコキシシラン加水重合体、無機材料などが、好ましく使用される。
【0062】
本発明において、平坦化層を設けた場合には、本発明にかかる窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、平坦化層の表面に形成される。
【0063】
一方、カラーフィルター層を、蒸着によって形成したときは、薄層化が可能であるため、カラーフィルター層の表面に、平坦化層は形成されず、本発明にかかる窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、カラーフィルター層の表面に形成される。
【0064】
本発明において、カラーフィルター層の電極側に、有機発光層からの発光光を所定の波長の光に変換する蛍光変換層を設けることができる。
【0065】
フォトリソグラフィプロセスによって形成されたカラーフィルター層の電極側に、蛍光変換層を設ける場合には、平坦化層は、蛍光変換層の表面に形成され、本発明にかかる窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、蛍光変換層上に形成された平坦化層の表面に形成される。
【0066】
これに対して、蒸着によって形成されたカラーフィルター層の電極側に、蛍光変換層を設ける場合には、本発明にかかる窒化シリコンを含有するパッシベーション層は、蛍光変換層および/またはカラーフィルター層の表面に形成される。
【0067】
蛍光変換層は、有機発光層から入射した光によって、励起され、入射光とは異なる波長の光を生成して、放出する蛍光物質を含んでいる。蛍光物質は、そのエネルギー順位で決定される波長の光を放出する物質であり、蛍光変換層に含まれる蛍光物質としては、赤色、緑色、青色などの光の三原色に対応する蛍光を発する化合物が好ましく使用される。蛍光物質は、短波長の光を長波長の光に変換することができるため、青色の発光光を赤色、緑色、黄色の光に変換させることによって、任意の色(波長)の光を生成することができる。
【0068】
本発明において、蛍光変換層に好ましく使用することのできる蛍光物質の例としては、たとえば、特開昭63−264692号公報に開示されているキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素などおよびクマリン、ルモゲンなどの化合物から選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。また、下式の構造を有するトリス(8−キノリナト)アルミニウム(Alq3)などの8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とする金属錯体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体などの蛍光物質も、蛍光変換層に好ましく使用することができる。さらには、特開平8−12600号公報に開示されたフェニルアントラセン誘導体や特開平8−12969号に開示されたテトラアリールエテン誘導体なども、蛍光変換層用の蛍光物質として使用することができる。
【0069】
【化1】
Figure 0004600857
【0070】
本発明において、蛍光変換層を設ける場合、蛍光変換層の膜厚は、2000nm以下が好ましく、300nmないし600nm程度がとくに好ましい。
【0071】
本発明において、蛍光変換層は、フォトリソグラフィプロセスによって形成しても、蒸着プロセスによって形成してもよい。
【0072】
蛍光変換層を、フォトリソグラフィプロセスによって形成する場合には、公知の方法および材料を使用することができる。
【0073】
有機EL素子を薄層化し、製造コストを低減させる観点からは、蛍光物質を蒸着して、蛍光変換層を形成することが好ましい。
【0074】
本発明において、蒸着によって、蛍光変換層を形成する場合には、蛍光変換層は、2種類以上の蛍光物質を蒸着して、形成されていてもよい。
【0075】
本発明において、2種類以上の蛍光物質を蒸着して、蛍光変換層を形成する場合には、蛍光物質を含む各ボートを個別に温度制御して、2種類以上の蛍光物質を共蒸着して、蛍光変換層を形成することが好ましい。2種類以上の蛍光物質を共蒸着する場合には、同時に蒸着をすることができるから、2以上の蒸着膜を積層する場合に比し、作業時間を短縮することが可能になり、また、2種類以上の蛍光物質を混合して、蒸着する場合に比し、それぞれの蛍光物質の蒸気圧が大きく異なっていても、所望のように、2種類以上の蛍光物質を含む蛍光変換層を形成することが可能になる。
【0076】
本発明において、2種類以上の蛍光物質を用いて、蒸着によって、蛍光変換層を形成する場合には、2種類以上の蛍光物質を、それぞれ、蒸着して形成した2以上の蒸着層を積層して、蛍光変換層を形成することができる。2種類以上の蛍光物質を共蒸着して、蛍光変換層を形成する場合には、それぞれの添加量を正確に制御することが必要不可欠で、操作が煩雑であるが、2種類以上の蛍光物質を、それぞれ、蒸着して形成した2以上の蒸着層を積層して、蛍光変換層を形成する場合には、簡易に、所望の波長変換特性を有する蛍光変換層を形成することが可能になるだけでなく、それぞれの蛍光物質の蒸気圧が大きく異なっていても、所望の波長変換特性を有する蛍光変換層を形成することが可能になる。
【0077】
また、本発明において、2種類以上の蛍光物質を、それぞれ、蒸着して形成した2以上の蒸着層を積層して、蛍光変換層を形成する場合、各蒸着層を、2種類以上の蛍光物質を共蒸着して形成することもできる。
【0078】
本発明において、蛍光物質を蒸着する条件は、とくに限定されるものではないが、1×10−4パスカル以下で、蒸着速度を0.01ないし1nm/秒程度とすることが好ましい。
【0079】
本発明にかかる有機EL素子は、少なくとも一方が透明な2つの電極の間に、少なくとも一層の有機発光層を備え、有機発光層は、少なくとも発光機能に関与する1種または2種の化合物を含んでいる。
【0080】
本発明にかかる有機EL素子において、少なくとも一層の有機発光層から発せられる光の波長はとくに限定されるものではないが、好ましくは、少なくとも一層の有機発光層が、少なくとも380ないし780nmの連続した発光スペクトルを有する白色発光を発するように構成されている。
【0081】
本発明において、少なくとも一層の有機発光層が、430nmないし650nm以下の連続した発光スペクトルを有する白色発光を発するように構成されていると、とくに好ましい。
【0082】
本発明において、有機発光層は、ホール輸送性化合物もしくは電子輸送性化合物またはこれらの混合物であるホスト物質を含み、ホール(正孔)および電子の注入機能、ホールおよび電子の輸送機能ならびにホールおよび電子の再結合により、励起子を生成させる機能を有しており、電子的に比較的ニュートラルな化合物を含んでいることが好ましい。
【0083】
有機発光層のホスト物質として用いられるホール輸送性化合物としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体が挙げられ、さらに、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく使用できる。
【0084】
トリフェニルジアミン誘導体の例としては、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)がとくに好ましい。
【0085】
テトラアリールベンジシン化合物(TDP)の好ましい具体例は、以下のとおりである。
【0086】
【化2】
Figure 0004600857
【0087】
【化3】
Figure 0004600857
【0088】
【化4】
Figure 0004600857
【0089】
有機発光層のホスト物質として用いられる電子輸送性化合物としては、キノリン誘導体が好ましく使用することができ、さらには、8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体、とくに、下式の構造を有するトリス(8−キノリナト)アルミニウム(Alq3)が好ましく使用される。また、フェニルアントラセン誘導体やテトラアリールエテン誘導体も、電子輸送性化合物として使用することができる。
【0090】
【化5】
Figure 0004600857
本発明において、有機発光層は、ホール輸送性化合物もしくは電子輸送性化合物またはこれらの混合物であるホスト物質に、蛍光物質であるドーパントがドープされた構造を有していることが好ましい。
【0091】
また、本発明にかかる有機EL素子は、好ましくは、互いに積層された2層の有機発光層を備えている。2層の有機発光層を形成する場合には、それぞれに、異なった発光波長を有する蛍光物質をドーピングすることによって、広い発光波長帯域を確保し、また、発光色の色彩の自由度を向上させることができる。
【0092】
本発明において、ドーパントとして含有させる蛍光物質としては、たとえば、特開昭63−264692号公報に開示された化合物、具体的には、ルブレン系化合物、クマリン系化合物、キナクリドン系化合物、ジシアノメチルピラン系化合物などの化合物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく使用できる。
【0093】
本発明に好ましく使用できる蛍光物質の例を挙げると、以下のとおりである。
【0094】
【化6】
Figure 0004600857
【0095】
【化7】
Figure 0004600857
【0096】
【化8】
Figure 0004600857
【0097】
【化9】
Figure 0004600857
【0098】
さらに、本発明においては、特開2000−26334号公報および特開2000−26337号公報に記載されているナフタセン系化合物も、ドーパントとして含有させる蛍光物質として、好ましく使用することができ、ルブレン系化合物、クマリン系化合物、キナクリドン系化合物、ジシアノメチルピラン系化合物などと併用することによって、有機EL素子の寿命を飛躍的に向上させることができる。
【0099】
本発明において、ドーパントとして含有させる蛍光物質として、好ましく使用することのできるナフタセン系化合物は、式(I)で示される基本骨格を有している。
【0100】
【化10】
Figure 0004600857
【0101】
式(I)において、RないしRは、それぞれ、非置換または置換基を有するアルキル基、アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基のいずれかを表わし、アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基のいずれかであることが好ましくい。
【0102】
ないしRで表わされるアリール基としては、単環でも、多環でもよく、縮合環や環集合のものも含んでいる。総炭素数は、6ないし30であることが好ましく、置換基を有していてもよい。
【0103】
ないしRで表わされるアリール基としては、フェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基、(1−、および2−)ナフチル基、アントリル基、(o−,m−,p−)ビフェニリル基、ターフェニル基、フェナントリル基などが好ましい。
【0104】
ないしRで表わされるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基などのいずれであってもよい。これらは、総炭素数1ないし6の脂肪族および/または1なし4環の芳香族炭素環を有していることが好ましい。具体的には,ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスジフェニルアミノ基、ビスナフチルアミノ基などが含まれる。
【0105】
ないしRで表わされる複素環基としては、ヘテロ原子として、O、N、Sを含有する5員環または6員環の芳香族複素環基、炭素数2ないし20の縮合多環芳香族複素環基などが挙げられる。
【0106】
ないしRで表わされるアルケニル基としては、少なくとも置換基の1つにフェニル基を有する(1−および2−)フェニルアルケニル基、(1,2−および2,2−)ジフェニルアルケニル基、(1,2,2−)トリフェニルアルケニル基などが好ましいが、非置換のものであってもよい。
【0107】
芳香族複素環基および縮合多環芳香族複素環基としては、たとえば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジン基、キノリル基、キノキサリルなどが挙げられる。
【0108】
ないしRが置換基を有する場合、これらの置換基のうちの少なくとも2つがアリール基、アミノ基、複素環基、アルケニル基およびアリーロキシ基のいずれかであることが好ましい。アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基については、RないしRと同様のものが使用できる。
【0109】
ないしRの置換基となるアリーロキシ基としては、総炭素数6ないし18のアリール基を有するものが好ましく、具体的には、(o−,m−,p−)フェノキシ基などが挙げられる。
【0110】
これらの置換基の2種以上が、縮合環を形成し、あるいは、さらに、置換されていてもよい。置換されている場合、好ましい置換基は、前記置換基を同様である。
【0111】
ないしRが置換基を有する場合には、少なくとも、その2種以上が前記置換基を有していることが好ましい。その置換位置は、とくに限定されるものではなく,メタ、パラ、オルト位のいずれであってもよい。また、RとR、RとRは、それぞれ同じものであることが好ましいが、互いに異なるものであってもよい。
【0112】
式(I)において、RないしRのうち、少なくとも5種以上、好ましくは6種以上が、非置換または置換基を有するアルキル基、アリール基、アミノ基、アルケニル基または複素環基である。
【0113】
、R、RおよびRで表わされるアルキル基としては、炭素数が1ないし6のものが好ましいが、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。R、R、RおよびRで表わされるアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、(n,i)プロピル基、(n,i,sec,tert)−ブチル基、(n,i,neo,tert)−ペンチル基などが挙げられる。
【0114】
、R、RおよびRで表わされるアリール基、アミノ基およびアルケニル基としては、RないしRと同様のものが使用できる。また、RとR、RとRは、それぞれ同じものであることが好ましいが、互いに異なるものであってもよい。
【0115】
本発明において、ドーパントとして含有させる蛍光物質として、好ましく使用することのできる化合物には、たとえば、次のものが挙げられる。
【0116】
【化11】
Figure 0004600857
【0117】
【化12】
Figure 0004600857
【0118】
二層の有機発光層を設ける場合、各有機発光層が、2種以上のこれらの蛍光物質を含み、2種以上の蛍光物質が、異なった発光波長を有していることが好ましい。
【0119】
本発明において、有機発光層におけるドーパントの含有量は、0.01ないし20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは,0.1ないし15重量%である。
【0120】
本発明において、有機発光層の厚さはとくに限定されるものではなく、その好ましい厚さは、形成方法によっても異なるが、通常、5ないし500nm、さらに好ましくは、10ないし300nmである。
【0121】
本発明において、二層以上の有機発光層を形成する場合、各有機発光層の厚さは、分子層一層分に相当する厚さから、有機発光層全体の厚さ未満の範囲にあり、具体的には、1ないし85nm、好ましくは5ないし60nm、さらに好ましくは5ないし50nmである。
【0122】
本発明において、好ましくは、有機発光層は蒸着によって形成される。
【0123】
本発明において、有機発光層を、蒸着によって形成する条件は、とくに限定されるものではないが、1×10−4パスカル以下で、蒸着速度を0.01ないし1nm/秒程度とすることが好ましい。
【0124】
本発明において、好ましくは、有機発光層は、ホール輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の混合物を含んでいる。
【0125】
有機発光層が、ホール輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の混合物を含んでいる場合には,キャリアのホッピング伝導パスが形成されるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入が起こり難くなり、したがって、有機発光層に含まれた化合物がダメージを受けることが防止されるので、素子の寿命を向上させることができるという利点がある。
【0126】
さらに、蛍光物質からなるドーパントを、ホール輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含んだ有機発光層に含有させることによって、有機発光層自体が有する発光波長特性を変化させることができ,発光波長を長波長側に移行させるとともに、発光強度を向上させ、さらには、有機EL素子の安定性を向上させることが可能になる。
【0127】
有機発光層が、ホール輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含んでいる場合、ホール輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度にしたがって決定されるが、一般的には、重量比で、1/99ないし99/1、好ましくは、10/90ないし90/10、さらに好ましくは、20/80ないし80/20、最も好ましくは、40/60ないし60/40が選ばれる。
【0128】
ホール輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含む有機発光層を形成する場合には、ホール輸送性化合物と電子注入輸送性化合物を、異なる蒸着源に入れて、蒸発させ、共蒸着することが好ましいが、ホール輸送性化合物と電子注入輸送性化合物の蒸気圧が同程度あるいは非常に近い場合には、あらかじめ同じ蒸着源内で混合させておき、蒸着することもできる。
【0129】
ホール輸送性化合物および電子注入輸送性化合物の混合物を含む有機発光層を形成する場合、有機発光層内で、ホール輸送性化合物と電子注入輸送性化合物とが均一に混合していることが好ましいが、均一に混合していることは必ずしも必要でない。
【0130】
本発明において、有機EL素子は、好ましくは、少なくとも一層の有機発光層に加えて、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定的に輸送する機能および電子の輸送を妨げる機能を有するホール注入輸送層、ならびに、電子注入電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定的に輸送する機能およびホールの輸送を妨げる機能を有する電子注入輸送層を備えている。これらの層を備えることによって、有機発光層に注入されるホールや電子を増大させるとともに、有機発光層内に閉じ込めさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を向上させることが可能になる。
【0131】
本発明において、さらに好ましくは、有機EL素子は、ホール注入電極、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能を有するホール注入層、ホールを安定的に輸送するとともに、電子の輸送を妨げる機能を有するホール輸送層、二層の有機発光層、電子を安定的に輸送するとともにホールの輸送を妨げる機能を有する電子輸送層、電子注入電極からの電子の注入を容易にする機能を有する電子注入層および電子注入電極を備えている。
【0132】
本発明において、ホール注入輸送層、ホール注入層およびホール輸送層に、好ましく使用することができる化合物としては、例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェンなどを挙げることができる。これらのうち、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、WO/98/30071号に記載されているトリアリールアミン多量体(ATP)が、とくに好ましく使用することができる。
【0133】
トリアリールアミン多量体(ATP)の好ましい具体例は、以下のとおりである。
【0134】
【化13】
Figure 0004600857
【0135】
【化14】
Figure 0004600857
【0136】
【化15】
Figure 0004600857
【0137】
本発明において、さらには、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EP0650955A1などに記載されている各種有機化合物も、ホール注入輸送層、ホール注入層およびホール輸送層に使用することができる。
【0138】
本発明において、2種以上のこれらの化合物を併用してもよく、2種以上のこれらの化合物を併用する場合には、一層中に混合しても、また、2以上の層として、積層してもよい。
【0139】
ホール注入輸送層を分割して、ホール注入層およびホール輸送層を設ける場合には、前記化合物の中から、好ましい組み合わせを選択して、使用することができる。このとき、ITOなどのホール注入電極側から、イオン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に、積層することが好ましい。また、ホール注入電極表面には、薄膜性の良好な化合物の層を形成することが好ましい。とくに、前記ATPをホール注入層に用い、前記TPDをホール輸送層に用いると、好ましい。前記ATPをホール注入層に用い、前記TPDをホール輸送層に用いることによって、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生および成長を防止することができる。
【0140】
本発明において、ホール注入輸送層、ホール注入層およびホール輸送層は、前記化合物を蒸着することによって形成することができる。蒸着によって、素子化する場合には、均一で、ピンホールのない1ないし10nm程度の薄膜を形成することができるため、ホール注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可視波長の光を吸収する化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収による発光効率の低下を防止することができる。
【0141】
本発明において、電子注入輸送層を、電子注入層と電子輸送層とに分割することもでき、電子注入輸送層、電子注入層および電子輸送層に、好ましく使用することができる化合物としては、たとえば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)などの8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体などを挙げることができる。
【0142】
本発明において、電子注入輸送層、電子注入層および電子輸送層は、前記化合物を蒸着することによって形成することができる。
【0143】
本発明において、有機発光層、ホール注入輸送層あるいはホール注入層およびホール輸送層、ならびに、電子注入輸送層あるいは電子注入層および電子輸送層の各層を、蒸着によって形成する条件はとくに限定されるものではないが、1×10−4パスカル以下で、蒸着速度を0.01ないし1nm/秒程度とすることが好ましい。各層は、1×10−4パスカル以下の減圧下で、連続して、形成されることが好ましい。1×10−4パスカル以下の減圧下で、連続して、各層を形成することによって、各層の界面に不純物が吸着されることを防止することができるから、高特性の有機EL素子を得ることが可能になるとともに、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、ダークスポットが発生し、成長することを抑制することができる。
【0144】
本発明において、有機発光層、ホール注入輸送層、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入輸送層、電子注入層あるいは電子輸送層に、2種以上の化合物を含有させる場合には、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して、共蒸着によって、有機発光層、ホール注入輸送層、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入輸送層、電子注入層あるいは電子輸送層を形成することが好ましい。
【0145】
本発明において、前記ホール注入輸送層または前記ホール注入層および前記ホール輸送層に代えて、あるいは、これらに加えて、ホールの導通パスを備え、電子をブロックする機能を有する高抵抗の無機ホール注入輸送層を設けることもできる。
【0146】
このように、ホールの導通パスを備え、電子をブロックする機能を有する高抵抗の無機ホール注入輸送層を設けることによって、有機発光層にホールを効率よく注入することができ、発光効率を向上させることが可能となるとともに、駆動電圧を低下させることが可能になる。さらには、ホールの導通パスを備え、電子をブロックする機能を有する高抵抗の無機ホール注入輸送層を設けることによって、有機ELディスプレイパネルおよび有機EL素子の厚さを減少させることができ、蒸着によって、カラーフィルター層ないしカラーフィルターを形成することによって薄層化された有機ELディスプレイパネルおよび有機EL素子をより一層薄層化することが可能となる。
【0147】
本発明において、無機ホール注入輸送層の主成分として、シリコンやゲルマニウムなどの金属あるいは半金属の酸化物を用い、これに、仕事関数が4.5eV以上、好ましくは、4.5ないし6.0eVの金属、半金属およびこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物のいずれか1種以上を含有させて、ホールの導通パスを形成すると、ホール注入電極から有機発光層へ、ホールを効率よく注入することができるだけでなく、有機発光層からホール注入電極への電子の移動を抑制して、有機発光層において、ホールと電子とを効率よく再結合させることができ、好ましい。
【0148】
高抵抗の無機ホール注入輸送層を設ける場合には、従来の有機のホール注入輸送層や、有機のホール注入層、有機のホール輸送層を有する有機EL素子に比して、同等か、それ以上の輝度を得ることができ、しかも、耐熱性、耐候性が高いので、寿命が長く、無機材料であるホール注入電極との接続性も良好になり、そのため、リークやダークスポットの発生も少ないという利点がある。さらには、比較的高価な有機物質とは異なり、無機ホール注入輸送層を形成するための無機物質は、安価で、入手がしやすく、無機ホール注入輸送層の形成も容易であるので、有機EL素子ないし有機ELディスプレイパネルの製造コストを低減させることができる。
【0149】
高抵抗の無機ホール注入輸送層の抵抗率は、1Ω・cmないし1×1011Ω・cmであることが好ましく、1×10Ω・cmないし1×10Ω・cmであることが、とくに好ましい。無機ホール注入輸送層の抵抗率をかかる範囲に設定することによって、高い電子ブロック性を維持しつつ、ホール注入効率を飛躍的に向上させることが可能になる。高抵抗の無機ホール注入輸送層の抵抗率は、シート抵抗と膜厚からも求めることができる。
【0150】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、シリコンとゲルマニウムの酸化物(Si1−xGe)Oを主成分とすることが好ましく、ここに、xは0ないし1、yは1.7ないし2.2、好ましくは、1.7ないし1.99である。無機ホール注入輸送層の主成分は、酸化シリコン(すなわち、xが0.5以下)でも、酸化ゲルマニウム(すなわち、xが0.5を越えている)でもよく、それらの混合薄膜であってもよい。yが、この範囲より大きくても、小さくても、ホール注入機能が低下し、好ましくない。組成は、たとえば、ラザフォード後方散乱、化学分析などによって調べることができる。
【0151】
無機ホール注入輸送層は、さらに、仕事関数が4.5eV以上、好ましくは、4.5ないし6.0eVの金属、半金属およびこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物のいずれか1種以上を含有していることが好ましい。仕事関数が4.5eV以上、好ましくは、4.5ないし6.0eVの金属、半金属としては、Au、Cu、Fe、Ni、Ru、Sn、Cr、Ir、Nb、Pt、Mo、W、Ta、Pd、Coを挙げることができる。これらの金属、半金属およびこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物は混合して用いることができ、その場合の混合比は任意である。これらの含有量は、好ましくは、0.2ないし40モル%、より好ましくは、1ないし20モル%である。これらの含有量が、0.2モル%よりも少ないと、ホール注入機能が低下し、一方、40モル%よりも多いと、電子ブロック機能が低下し、好ましくない。これらを2種以上併用する場合には、合計の含有量がかかる範囲内にあることが好ましい。
【0152】
前記金属、半金属およびこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物は、通常、高抵抗の無機ホール注入輸送層中に、分散状態で、含有されている。
分散粒子の粒径は、通常、1ないし5nm程度である。これらの導体である分散粒子間に、主成分である高抵抗のシリコンとゲルマニウムの酸化物を介して、ホールを輸送するためのホッピングパスが形成されるものと考えられる。
【0153】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、さらに、不純物として、Hや、スパッタガスとして用いるNe、Ar、Kr、Xeなどを、合計5分子%以下含有していてもよい。
【0154】
高抵抗の無機ホール注入輸送層の組成は均一でなくてもよく、平均として、かかる組成を有していれば、膜厚方向に濃度勾配を有していてもよい。
【0155】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、通常、非晶質状態である。
【0156】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、0.3ないし100nmの膜厚を有していることが好ましく、より好ましくは、1ないし100nmであり、5ないし30nmの膜厚を有していると、とくに好ましい。高抵抗の無機ホール注入輸送層の膜厚が、0.3nm未満でも、100nmを越えていても、ホール注入の機能が十分に発揮されなくなる。
【0157】
高抵抗の無機ホール注入輸送層は、スパッタリング、蒸着など、各種の物理的あるいは化学的な薄膜形成方法によって、形成することができるが、スパッタリング法によって形成することが好ましい。とくに、主成分であるシリコンとゲルマニウムの酸化物と、仕事関数が4.5eV以上の金属、半金属およびこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物のいずれか1種以上を、ターゲットとして、別個にスパッタリングする多元スパッタリング法によって、無機ホール注入輸送層を形成することが好ましい。多元スパッタリング法によれば、それぞれのターゲットに適した条件で、スパッタリングすることができる。また、主成分のターゲット上に、金属、半金属およびこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硼化物のいずれか1種以上の小片を配置し、これらの面積比を適当に調整することによって、組成を調整すれば、一元スパッタリング法によって、無機ホール注入輸送層を形成することもできる。
【0158】
無機ホール注入輸送層をスパッタリング法によって形成する場合、スパッタガスの圧力は、0.1ないし1パスカルの範囲に設定することが好ましい。スパッタガスとしては、スパッタリングに、通常、用いられる不活性ガス、たとえば、Ar、Ne、Xe、Krなどを使用することができ、必要に応じて、窒素ガスを用いることもできる。スパッタリング時において、これらのスパッタガスに加えて、1ないし99%の酸素ガスを混合するようにしてもよい。
【0159】
スパッタリング法としては、RF電源を用いた高周波スパッタリング法や、DCスパッタリング法を使用することができ、RF電源を用いた高周波スパッタリングの電力は0.1ないし10W/平方センチメートルの範囲が好ましく、成膜速度は0.5ないし10nm/分、とくに、1ないし5nmの範囲が好ましい。
【0160】
成膜時の基板温度は、25ないし150℃程度である。
【0161】
本発明において、前記電子注入輸送層または前記電子注入層および前記電子輸送層に代えて、あるいは、これらに加えて、電子の導通パスを備え、ホールをブロックする機能を有する高抵抗の無機電子注入輸送層を設けることもできる。
【0162】
このように、電子の導通パスを備え、ホールをブロックする機能を有する高抵抗の無機電子注入輸送層を、有機発光層と電子注入電極との間に、設けることによって、有機発光層に電子を効率よく注入することができ、発光効率を向上させることが可能となるとともに、駆動電圧を低下させることが可能になる。さらには、電子の導通パスを備え、ホールをブロックする機能を有する高抵抗の無機電子注入輸送層を設けることによって、有機ELディスプレイパネルおよび有機EL素子の厚さを減少させることができ、蒸着によって、カラーフィルター層ないしカラーフィルターを形成することによって薄層化された有機ELディスプレイパネルおよび有機EL素子をより一層薄層化することが可能となる。
【0163】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、好ましくは、第一成分として、仕事関数が4eV以下、好ましくは、1eVないし4eVであって、Li、Na、K、Rb、CsおよびFrよりなる群から選ばれる1種以上のアルカリ金属元素、または、Mg、CaおよびSrよりなる群から選ばれる1種以上のアルカリ金属土類元素、または、LaおよびCeよりなる群から選ばれる1種以上のランタノイド系元素の酸化物を含有している。これらの中では、とくに、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウムが好ましい。これらの元素を混合して用いる場合、混合比は任意に決定することができる。これらの元素を混合して用いる場合、混合物中に、酸化リチウムが、LiO換算で、50モル%以上が含有されていることが好ましい。
【0164】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、さらに、第二成分として、Zn、Sn、V、Ru、SmおよびInよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有している。
第二成分の含有量は、好ましくは、0.2ないし40モル%、より好ましくは、1ないし20モル%である。第二成分の含有量が、0.2モル%より少ないと、電子注入機能が低下し、他方、40モル%を越えると、ホールブロック機能が低下し、好ましくない。第二成分として、2種以上の元素を併用する場合、合計の含有量がかかる範囲内にあることが好ましい。第二成分は、金属の状態で存在しても、酸化物の状態で存在してもよい。
【0165】
このように、高抵抗である第一成分中に、第二成分として、Zn、Sn、V、Ru、SmおよびInよりなる群から選ばれる1種以上の元素を、0.2ないし40モル%含有させて、導電パスを形成することにより、電子注入電極から有機発光層に、効率よく、電子を注入することができる。これは、第一成分中に、第二成分を含有させることによって、絶縁物質中に、導電物質が島状に存在することになり、電子注入のためのホッピングパスが形成されるためと考えられる。
【0166】
第一成分中に、第二成分を、0.2ないし40モル%含有させることにより、さらに、有機発光層から電子注入電極へのホールの移動を抑制することが可能になり、有機発光層において、ホールと電子とを効率よく再結合させることができる。
【0167】
高抵抗の無機電子注入輸送層を設ける場合には、従来の有機の電子注入輸送層や、有機の電子注入層、有機の電子輸送層を有する有機EL素子に比して、同等か、それ以上の輝度を得ることができ、しかも、耐熱性、耐候性が高いので、寿命が長く、無機材料である電子注入電極との接続性も良好になり、そのため、リークやダークスポットの発生も少ないという利点がある。さらには、比較的高価な有機物質とは異なり、無機電気注入輸送層を形成するための無機物質は、安価で、入手がしやすく、無機電子注入輸送層の形成も容易であるので、有機EL素子ないし有機ELディスプレイパネルの製造コストを低減させることができる。
【0168】
高抵抗の無機電子注入輸送層の抵抗率は、1Ω・cmないし1×1011Ω・cmであることが好ましく、1×10Ω・cmないし1×10Ω・cmであることが、とくに好ましい。無機電子注入輸送層の抵抗率をかかる範囲に設定することによって、高いホールブロック性を維持しつつ、電子注入効率を飛躍的に向上させることが可能になる。この場合、シート抵抗は4端子法などによって測定することができる。
【0169】
第一成分の酸化物は、通常、化学量論組成(stoichiometric composition)であるが、これから、多少偏倚して、非化学量論組成(non‐stoichiometry)となっていてもよい。第二成分の酸化物も同様である。
【0170】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、さらに、不純物として、Hや、スパッタガスとして用いるNe、Ar、Kr、Xeなどを、合計5分子%以下含有していてもよい。
【0171】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、通常、非晶質状態である。
【0172】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、0.2ないし30nmの膜厚を有していることが好ましく、0.2ないし20の膜厚を有していると、とくに好ましい。高抵抗の無機電子注入輸送層の膜厚が、0.2nm未満でも、30nmを越えていても、電子注入の機能が十分に発揮されなくなる。
【0173】
高抵抗の無機電子注入輸送層は、スパッタリング、蒸着など、各種の物理的あるいは化学的な薄膜形成方法によって、形成することができるが、スパッタリング法によって形成することが好ましい。とくに、第一成分と第二成分を、ターゲットとして、別個にスパッタリングする多元スパッタリング法によって、無機電子注入輸送層を形成することが好ましい。多元スパッタリング法によれば、それぞれのターゲットに適した条件で、スパッタリングすることができる。また、大地成分と第二成分の混合ターゲットを用いて、一元スパッタリング法によって、無機電子注入輸送層を形成することもできる。
【0174】
無機電子注入輸送層をスパッタリング法によって形成する場合、スパッタガスの圧力は、0.1ないし1パスカルの範囲に設定することが好ましい。スパッタガスとしては、スパッタリング法に、通常、用いられる不活性ガス、たとえば、Ar、Ne、Xe、Krなどを使用することができ、必要に応じて、窒素ガスを用いることもできる。スパッタリング時において、これらのスパッタガスに加えて、1ないし99%の酸素ガスを混合するようにしてもよい。
【0175】
スパッタリング法としては、RF電源を用いた高周波スパッタリング法や、DCスパッタリング法を使用することができ、RF電源を用いた高周波スパッタリングの電力は0.1ないし10W/平方センチメートルの範囲が好ましく、成膜速度は0.5ないし10nm/分、とくに、1ないし5nmの範囲が好ましい。
【0176】
成膜時の基板温度は、25ないし150℃程度である。
【0177】
本発明において、ホール注入電極は、ホール注入輸送層あるいはホール注入層に、ホールを効率よく、注入することのできる材料によって形成されることが好ましく、仕事関数が4.5ないし5.5eVの材料によって形成されることが好ましい。ホール注入電極を形成するために、好ましく使用できる材料としては、たとえば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)および酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主成分とした酸化物が挙げられる。これらの酸化物は、その化学量論組成から、多少偏倚した組成を有していてもよい。錫ドープ酸化インジウム(ITO)における酸化インジウムに対する酸化錫の混合比は1ないし20重量%が好ましく、さらに好ましくは、5ないし12重量%である。また、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)における酸化インジウムに対する酸化亜鉛の混合比は、通常、12ないし32重量%である。
【0178】
本発明において、ホール注入電極は、仕事関数を調整するため、酸化シリコン(SiO)を含んでいてもよい。酸化シリコン(SiO)の含有量は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)に対するモル比で、0.5なしし10%であることが好ましい。酸化シリコンを含有させることによって、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を増大させることができる。
【0179】
本発明において、有機発光層から発せられた光を取り出す側の電極は、通常、400ないし700nmの発光波長帯域の光、とくに、各発光光に対する光透過率が50%以上であることが好ましくは、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の光透過率を有している。光透過率がこれ以下の場合には、発光素子として必要な輝度を得ることができない。
【0180】
本発明において、有機発光層から発せられた光を取り出す側の電極の厚さは、50ないし500nmであることが好ましく、50ないし300nmであれば、さらに好ましい。厚すぎると、光透過率が低下し、また、剥離のおそれが生じ、好ましくない。一方、薄すぎると、強度が低下し、好ましくない。
【0181】
本発明において、電子注入電極は、電子注入輸送層あるいは電子注入層に、電子を効率よく、注入することのできる材料によって形成されることが好ましい。
【0182】
有機材料によって、電子注入輸送層あるいは電子注入層が形成されている場合には、電子注入電極を形成するために、好ましく使用できる材料としては、たとえば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Sn、Zn、Zrなどの金属元素単体、または、安定性を向上させるために、これらの金属元素を含む二成分もしくは三成分の合金を挙げることができる。これらの金属元素を含む二成分もしくは三成分の合金の具体例としては、Ag・Mg(Ag:0.1ないし50原子%)、Al・Li(Li:0.01ないし14原子%)、In・Mg(Mg:50ないし80原子%)、Al・Ca(Ca:0.01ないし20原子%)を挙げることができる。
【0183】
本発明において、電子注入電極の厚さは、0.1nm以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.5nm以上、最も好ましくは1nm以上である。電子注入電極の厚さの上限値はとくに限定されないが、通常は、1ないし500nm程度である。
【0184】
これに対して、無機材料によって、無機電子注入輸送層が形成されている場合には、低仕事関数で、電子注入性を有している必要がないので、電子注入電極を形成するための材料はとくに限定されるものではなく、通常の金属を用いることができる。金属の中では、Al、Ag、In、Ti、Cu、Au、Mo、W、Pt、PdおよびNiよりなる群、とくに、AlおよびAgよりなる群から選ばれる1種または2種以上の金属元素が、導電率や取り扱いやすさの観点から、好ましく使用することができる。
【0185】
さらに、有機発光層や電極の劣化を防止するために、有機EL素子を、封止板などによって封止することが好ましい。封止板は、湿気の侵入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、有機EL素子に接着され、有機EL素子が封止される。封止ガスとしては、Ar、He、Nなどの不活性なガスが好ましい。封止ガスの水分含有量は、100ppm以下が好ましく、さらに好ましく、は10ppm以下、最も好ましくは、1ppm以下である。封止ガスの水分含有量の下限値はとくに限定されるものではないが、通常、0.1ppm程度である。
【0186】
封止板は、平板状であることが好ましく、好ましい材料としては、ガラスや、石英、樹脂などの透明または半透明材料が挙げられるが、これらのうち、ガラスと樹脂がとくに好ましく使用される。ガラスとしては、コスト面から、アルカリガラスが好ましく使用され、とくに、表面処理が施されていないソーダガラスが安価であり、好ましい。樹脂としては、基板と同様な材料を好ましく使用することができる。
【0187】
封止板は、スペーサーを用いて、所望の高さに保持することができる。スペーサーとしては、樹脂ビーズ、シリカビーズ、ガラスビーズ、ガラスファイバーなどが使用可能であるが、これらのうち、ガラスビーズがとくに好ましい。
【0188】
また、スペーサーを使用しないで、封止板に凹部を形成することもでき、封止板に凹部を形成したときに、スペーサーを使用することもできる。封止板に凹部を形成した上で、スペーサーを使用するときは、2ないし8μmのスペーサーを用いることが好ましい。
【0189】
封止板を接着する接着剤としては、安定した強度を保つことができ、気密性が良好なものであればとくに限定されるものではないが、カチオン硬化型の紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤が好ましく使用される。
【0190】
本発明にかかる有機EL素子および有機ELディスプレイパネルは、通常、直流駆動型あるいはパルス駆動型の有機EL素子および有機ELディスプレイパネルとして用いられるが、交流によって駆動することもできる。
【0191】
【実施例】
以下において、本発明の効果を、一層明らかにするため、比較例および実施例を掲げる。
【0192】
比較例1
無アルカリガラス基板上に、感光性を有するアクリル樹脂として、東京応化工業株式会社製の商品名「CFPR」を塗布し、露光、現像後、オーブンにより、220℃で、4時間にわたって、焼成した。
【0193】
こうして形成されたアクリル樹脂層上に、プラズマCVD法によって、以下の条件で、シリコン酸化膜を形成した。
【0194】
RF電源電力:0.9ないし1.7W/平方センチメートル
ガス流量:SiH:1〜50cc/秒、NO:600〜3000cc/秒
ガス圧力:133〜400Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして形成されたシリコン酸化膜を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0195】
その後、シリコン酸化膜上に、プラズマCVD法により、同様にして、シリコン酸化膜を形成し、超音波で洗浄したところ、膜剥離が発生した。
【0196】
比較例2
比較例1と同様にして形成したアクリル樹脂層上に、プラズマCVD法によって、以下の条件で、シリコン酸化膜を形成した。
【0197】
RF電源電力:0.9ないし1.7W/平方センチメートル
ガス流量:テトラエトキシオルソシリケート(TEOS):30〜100cc/秒、O:300〜1200cc/秒
ガス圧力:333〜466Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして、シリコン酸化膜が形成された基板を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0198】
その後、シリコン酸化膜上に、プラズマCVD法により、同様にして、シリコン酸化膜を形成し、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0199】
比較例3
比較例1と同様にして形成したアクリル樹脂層上に、プラズマCVD法によって、以下の条件で、シリコン酸窒化膜を形成した。
【0200】
RF電源電力:0.9ないし1.7W/平方センチメートル
ガス流量:テトラエトキシオルソシリケート:30〜100cc/秒、N:300〜1200cc/秒
ガス圧力:333〜466Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして、シリコン酸窒化膜が形成された基板を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0201】
その後、シリコン酸窒化膜上に、プラズマCVD法により、同様にして、シリコン酸窒化膜を形成し、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0202】
比較例4
比較例1と同様にして形成したアクリル樹脂層上に、プラズマCVD法によって、以下の条件で、シリコン酸窒化膜を形成した。
【0203】
RF電源電力:0.9ないし1.5W/平方センチメートル
ガス流量:SiH:1〜50cc/秒、N:2000cc/秒
O:50〜500cc/秒
ガス圧力:133〜400Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして、シリコン酸窒化膜が形成された基板を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0204】
その後、シリコン酸窒化膜上に、プラズマCVD法により、同様にして、シリコン酸窒化膜を形成し、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0205】
実施例1
比較例1と同様にして形成したアクリル樹脂層上に、プラズマCVD法によって、以下の条件で、シリコン窒化膜を形成した。
【0206】
RF電源電力:0.9ないし2.5W/平方センチメートル
ガス流量:SiH:30〜100cc/秒、N:300〜1200cc/秒
ガス圧力:333〜466Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして、シリコン窒化膜が形成された基板を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0207】
その後、シリコン窒化膜上に、プラズマCVD法により、同様にして、シリコン窒化膜を形成し、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0208】
窒化シリコン(SiNx)の組成は、x=1.3であった。
【0209】
実施例2
比較例1と同様にして形成したアクリル樹脂層上に、プラズマCVD法によって、以下の条件で、シリコン窒化膜を形成した。
【0210】
RF電源電力:0.9ないし2.5W/平方センチメートル
ガス流量:SiH:30〜100cc/秒、N:2000cc/秒
NH:30〜100cc/秒
ガス圧力:333〜466Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして、シリコン窒化膜が形成された基板を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0211】
その後、シリコン窒化膜上に、プラズマCVD法により、同様にして、シリコン窒化膜を形成し、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0212】
窒化シリコン(SiNx)の組成は、x=1.3であった。
【0213】
比較例5
比較例1と同様にして形成したアクリル樹脂層上に、RFマグネトロンスパッタと、SiOターゲットを用いて、RF電源電力2.5W/平方センチメートルで、シリコン酸化膜を形成した。成膜条件は以下のとおりであった。
ガス流量:Ar:40cc/秒
ガス圧力:0.35Pa
成膜温度:室温
膜厚:60nm
こうして、シリコン酸化膜が形成された基板を超音波で洗浄し、150℃で、1時間にわたり、焼成した後、シリコン酸化膜上に、RFマグネトロンスパッタと、SiOターゲットを用いて、RF電源電力2.5W/平方センチメートルで、シリコン酸窒化膜を形成した。成膜条件は以下のとおりであった。
【0214】
ガス流量:Ar:40cc/秒、N:4.75cc/秒
ガス圧力:0.35Pa
成膜温度:室温
膜厚:20nm
こうして、シリコン酸化膜およびシリコン酸窒化膜が形成された基板を超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0215】
実施例3
無アルカリガラス基板上に、フォトレジストとして、日本ゼオン株式会社製の商品名「ZPP1850」を塗布し、露光、現像後、オーブンにおいて、180℃で、4時間にわたって、焼成した。
【0216】
こうして形成されたレジスト層上に、プラズマCVD法により、比較例3および4と同様にして、シリコン酸窒化膜を形成し、比較例3および4と同様に、超音波で洗浄し、150℃で、1時間にわたり、焼成した後、再度、シリコン酸窒化膜を成膜して、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0217】
また、上述のようにして形成されたレジスト層上に、プラズマCVD法によって、実施例1と同様にして、シリコン窒化膜を形成した後、実施例1と同様にして、超音波で洗浄し、150℃で、1時間にわたり、焼成した後、再度、シリコン窒化膜を成膜して、超音波で洗浄したが、膜剥離は観察されなかった。
【0218】
一方、上述のようにして形成されたレジスト層上に、プラズマCVD法によって、比較例1と同様にして、シリコン酸化膜を形成した後、比較例1と同様にして、超音波で洗浄し、150℃で、1時間にわたり、焼成した後、再度、シリコン酸化膜を成膜して、超音波で洗浄したところ、膜剥離が発生した。
【0219】
比較例1ないし5ならびに実施例1ないし3から、シリコン窒化膜およびシリコン酸窒化膜の場合には、アクリル樹脂層上に形成しても、レジスト層上に形成しても、膜剥離の発生は認められず、シリコン窒化膜の場合は、CVD法に代えて、スパッタ法によって、成膜をしても、膜剥離の発生が認められず、平坦化のための下地有機層との密着性に優れていることが判明した。
【0220】
一方、シリコン酸化膜の場合には、材料ガスとして、テトラエトキシオルソシリケートを用いたときには、膜剥離の発生が認められなかったものの、材料ガスとして、SiHを用いた場合には、シリコン酸化膜を、アルカリ樹脂層およびレジスト層のいずれに形成しても、膜剥離が発生し、平坦化のための下地有機層との密着性が低いことが判明した。
【0221】
実施例4
比較例2、4および5ならびに実施例1およびと同様にして、アクリル樹脂層上に、保護膜を形成し、632nmの波長での屈折率を測定した。
【0222】
さらに、保護膜が形成された基板を、90℃以上に加熱した有機膜剥離液(富士フイルムオーリン株式会社製:「MS−2001」)に、30分にわたって、浸漬し、アクリル樹脂層あるいはレジスト層に生じた孔(欠陥)の数によって、膜の欠陥を評価した。
【0223】
屈折率の測定結果および膜の欠陥の評価結果は、表1に示されている。
【0224】
【表1】
Figure 0004600857
表1から、保護膜の屈折率が高くなるほど、欠陥の数は減少し、保護膜がシリコン窒化膜の場合に、膜質が良好で、実施例2の屈折率が1.9のシリコン窒化膜は、欠陥がなく、最も良好な結果が得られたことがわかる。
【0225】
この結果、SiOの屈折率は1.45で、SiNの屈折率は2.00であるので、保護膜の組成がSiに近づくほど、膜質が向上し、保護機能が向上することが判明した。
【0226】
実施例5
比較例1ならびに実施例1および2と同様にして、アクリル樹脂層上に、保護膜を形成し、RBS(Ratherford Backscattering Spectrometry)法により、保護膜の組成を分析した。
【0227】
分析結果は表2に示されている。
【0228】
【表2】
Figure 0004600857
表2に示されるように、比較例1のシリコン酸化膜は4.2原子%の水素を含有しているに過ぎないのに対し、実施例1および2のシリコン窒化膜は、それぞれ、22原子%の水素、29原子%の水素を含有しており、比較例1のシリコン酸化膜に比して、水素を多量に含んでいることがわかった。
【0229】
この結果から、実施例1および2のシリコン窒化膜が、下地有機層であるアクリル樹脂層との密着性が優れているのは、水素を多量に含んでいるため、下地有機層と水素結合を形成するためと推測することができる。
【0230】
実施例3にしたがって形成したレジスト層上に、比較例1ならびに実施例1および2と同様にして、保護膜を形成し、RBS(Ratherford Backscattering Spectrometry)法により、保護膜の組成を分析したところ、同様な結果が得られた。
【0231】
実施例6
図1ないし図5に示されるようにして、有機EL素子を作成し、素子寿命を評価した。
【0232】
まず、図1に示されるように、無アルカリガラス基板1上に、R、G、B用のカラーフィルター2(富士フイルムオーリン株式会社製:商品名「CR−7001」「CB−7001」、「CG−7001」)を形成した。
【0233】
次いで、カラーフィルターの凹凸を緩和するため、感光性を有するアクリル樹脂(東京応化工業株式会社製:商品名「CFPR」)を塗布して、アクリル樹脂層を形成し、露光、現像後、オーブンにて、220℃で、4時間にわたって、焼成した。
【0234】
このときのアクリル樹脂層3の膜厚は約1.7μmであった。
【0235】
図2に示されるように、こうして、基板上に形成したアクリル樹脂層3上に、以下の条件で、シリコン窒化膜を、50ないし100nmの膜厚に形成した。
【0236】
RF電源電力:0.9ないし2.5W/平方センチメートル
ガス流量:SiH:30〜100cc/秒、N:2000cc/秒
NH:30〜100cc/秒
ガス圧力:333〜466Pa
成膜温度:150〜200℃
膜厚:50〜200nm
こうして、シリコン窒化膜が形成された基板を超音波で洗浄して、パーティクルを除去し、150℃で、1時間にわたって、焼成して、脱水、乾燥した。
【0237】
その後、シリコン窒化膜上に、プラズマCVD法によって、全く同様にして、50ないし100nmの膜厚のシリコン窒化膜を形成し、パッシベーション層4とした。
【0238】
図3に示されるように、以上のようにして形成されたパッシベーション層4上に、O/Arの雰囲気で、0.4パスカルの減圧下で、スパッタリングによって、100nmの膜厚の透明電極(ITO)5を形成し、フォトリソグラフィーによって、配線を形成した。
【0239】
次いで、図4に示されるように、透明電極5のエッジを保護するために、レジストと用いて、エッジカバー6を形成した。
【0240】
こうして得られた基板を、UV/Oによって、1時間にわたって、処理し、表面の有機成分を除去した後、図5に示されるように、真空蒸着装置によって、有機発光層7および電極8を形成し、有機EL素子#1を得た。
【0241】
さらに、上述のようにして、基板1上に形成したアクリル樹脂層3上に、2層のシリコン窒化膜よりなるパッシベーション層4に代えて、比較例5と同様にして、シリコン酸化膜とシリコン酸窒化膜を形成して、パッシベーション層4を形成し、上述したのと同様にして、透明電極5、配線、エッジカバー6、有機発光層7および電極8を形成し、有機EL素子#2を得た。
【0242】
また、カラーフィルター2上に、アクリル樹脂層3を形成することなく、比較例2と同様にして、2層のシリコン酸化膜を形成して、パッシベーション層4を形成し、上述したのと同様にして、透明電極5、配線、エッジカバー6、有機発光層7および電極8を形成し、有機EL素子#3を得た。
【0243】
こうして得られた有機EL素子#1、#2および#3を、アルゴンガス雰囲気下で、定電流駆動して、ダークスポットの生成、成長を観察するとともに、電流のリークが発生して、有機EL素子が破壊に至るまでの時間を測定した。
【0244】
また、有機EL素子#1を、大気中で、定電流駆動して、電流のリークが発生して、有機EL素子が破壊に至るまでの時間を測定した。
【0245】
測定結果は、図6に示されている。
【0246】
図6に示されるように、シリコン酸化膜とシリコン酸窒化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#2が、230時間で、電流のリークが発生して、破壊に至り、ガスを発生させる原因となる水分や有機溶媒成分を含むアクリル樹脂層3を備えていないにもかかわらず、2層のシリコン酸化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#3が、300時間で、電流のリークが発生して、破壊に至るのに対し、本発明にかかる2層のシリコン窒化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#1は、340時間を経過するまで、破壊せず、窒化シリコンを含むパッシベーション層4を設けることによって、有機EL素子の耐久性が大幅に向上することが判明した。
【0247】
図6に示されるように、2層のシリコン窒化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#1であっても、水分や有機物が存在する大気中においては、有機EL素子の劣化が著しく、20時間で、有機EL素子が破壊に至ることがわかった。これは、有機EL素子が湿気や有機物などに弱いことを示すものである。
【0248】
実施例7
実施例6と同様にして、基板1上に形成されたアクリル樹脂層3上に、比較例2と同様にして、2層のシリコン酸化膜を形成して、パッシベーション層4を形成し、上述したのと同様にして、透明電極5、配線、エッジカバー6、有機発光層7および電極8を形成し、有機EL素子#4を得た。
【0249】
実施例6において作成した有機EL素子#1、#2および#3と、有機EL素子#4を、アルゴンガス雰囲気下で、定電流駆動して、ダークスポットの生成、成長を観察した。
【0250】
観察結果は、図7に示されている。
【0251】
図7に示されるように、2層のシリコン酸化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#4においては、48時間経過後のダークスポット面積が、通電開始時の約2.8倍に増大し、シリコン酸化膜とシリコン酸窒化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#2においては、約2.4倍に増大したのに対し、本発明にかかる2層のシリコン窒化膜よりなるパッシベーション層4を備えた有機EL素子#1においては、約1.6倍で、ガスを発生させる原因となる水分や有機溶媒成分を含むアクリル樹脂層3を備えていない有機EL素子#3におけるのと大きな差がないことが判明した。
【0252】
ここに、通電開始時に、すでに、ダークスポットが発生しているのは、ダークスポット評価用の実験器具にセットするまでの間に、有機EL素子#1、#2、#3および#4が大気に曝されたためである。
【0253】
本発明は、以上の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0254】
たとえば、前記実施例においては、いずれも2層のシリコン窒化膜により、パッシベーション層を形成しているが、パッシベーション層が2層構造であることは必ずしも必要ではなく、単層でも、あるいは、3層以上でもよい。
【0255】
【発明の効果】
本発明によれば、水分や有機溶媒成分が吸着することを防止するとともに、水分や有機溶媒成分がガス化して、放出されることを効果的に防止することができ、平坦化のための有機層との密着性に優れたパッシベーション層を備え、生産性が高く、かつ、耐久性が向上した有機EL素子およびそれを用いた有機ELディスプレイパネルを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例6における有機EL素子作成のステップを示す工程図である。
【図2】図2は、実施例6における有機EL素子作成のステップを示す工程図である。
【図3】図3は、実施例6における有機EL素子作成のステップを示す工程図である。
【図4】図4は、実施例6における有機EL素子作成のステップを示す工程図である。
【図5】図5は、実施例6における有機EL素子作成のステップを示す工程図である。
【図6】図6は、実施例6における有機EL素子#1、#2、#3の破壊に至る時間を測定した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例7における有機EL素子#1、#2、#3、#4のダークスポットの生成、成長を観察した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 カラーフィルター
3 アクリル樹脂層
4 パッシベーション層
5 透明電極
6 エッジカバー
7 有機発光層
8 電極

Claims (6)

  1. 基板上に、有機材料または有機溶剤を含有する平坦化層を形成し、次いで、プラズマCVD法によって、窒化シリコンを含有する2層のパッシベーション層を形成して、有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法であって、前記2層のパッシベーション層のうち、1層目のパッシベーション層の形成後、2層目のパッシベーション層の形成前に、前記1層目のパッシベーション層に洗浄処理、加熱処理、脱水処理および乾燥処理を施すことを特徴とする有機EL素子の製造方法
  2. 前記窒化シリコンがSiNxで表わしたときに、xが0.5ないし1.5の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子の製造方法
  3. 前記窒化シリコンがSiNxで表わしたときに、xが0.8ないし1.3の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の有機EL素子の製造方法
  4. 前記パッシベーションが、10原子%ないし30原子%の水素を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法
  5. 前記パッシベーションが、20原子%ないし30原子%の水素を含有することを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子の製造方法
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法によって製造されたことを特徴とする有機EL素子
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