JP4567950B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関の制御装置に関し、フリクショントルクを推定する内燃機関に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の図示トルクを求めるため、フリクショントルクを算出することが知られている。例えば、特開平11−294213号公報には、エンジン回転数と水温のマップからフリクショントルクを算出することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−294213号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フリクショントルクは経時変化、環境などの要因によりその値が変化する。同公報に記載された方法では、フリクショントルクの経時変化などを考慮していないため、算出したフリクショントルクに誤差が含まれることがある。
【0005】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、内燃機関のフリクショントルクを高い精度で求めることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上記の目的を達成するため、所定パラメータと機関のフリクショントルクとの関係を定めた標準フリクション特性を記憶する記憶手段と、燃焼によるトルク発生が停止している状態でクランク角加速度を求める角加速度算出手段と、前記クランク角加速度と機関の慣性モーメントとに基づいて動的な損失トルクを求める損失トルク算出手段と、前記動的な損失トルクに基づいて、機関で発生した実フリクショントルクを求める実フリクショントルク算出手段と、吸気通路におけるポンピング損失に基づいて前記実フリクショントルクを補正する補正手段と、前記補正手段により補正した実フリクショントルクと前記標準フリクショントルク特性とに基づいて補正フリクショントルクを取得する補正フリクショントルク取得手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項1記載の内燃機関の制御装置であって、機関を始動させるスタータと、前記スタータへの供給エネルギーを求める供給エネルギー算出手段とを備え、前記角加速度算出手段は、機関始動後、燃料が最初に爆発するまでの間に前記クランク角加速度を求め、前記実フリクショントルク算出手段は、前記損失トルクと前記供給エネルギーとに基づいて前記実フリクショントルクを求めることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項1記載の内燃機関の制御装置であって、機関の運転、停止の状態を切り換えるイグニッションスイッチを備え、前記角加速度算出手段は、前記イグニッションスイッチが運転から停止の状態に切り換わった後、機関が停止するまでの間に前記クランク角加速度を求めることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項1記載の内燃機関の制御装置であって、機関運転中に任意のタイミングで燃料噴射又は燃料への点火を停止して、燃焼によるトルク発生を停止させる燃焼トルク発生停止手段を備え、前記角加速度算出手段は、燃焼によるトルク発生が停止している前記タイミングで前記クランク角加速度を求めることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置であって、クランク角速度を検出する角速度検出手段を備え、前記角加速度算出手段は、クランク軸が所定の区間を回転する際の所要時間と、前記区間の両端でのクランク角速度とから前記クランク角加速度を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項5記載の内燃機関の制御装置であって、前記所定の区間は、上死点と下死点を両端とする区間であることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置であって、吸気圧力を取得する吸気圧力取得手段と、前記吸気圧力に基づいて吸気通路におけるポンピング損失を取得するポンピング損失取得手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、上記の目的を達成するため、請求項3記載の内燃機関の制御装置であって、吸入空気量を制御する吸入空気量制御手段を備え、前記吸入空気量制御手段は、前記イグニッションスイッチが運転から停止の状態に切り換わった後に前記吸入空気量が増加するように制御を行うことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる内燃機関の制御装置及びその周辺の構造を説明するための図である。内燃機関10には吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12は、上流側の端部にエアフィルタ16を備えている。エアフィルタ16には、吸気温THA(すなわち外気温)を検出する吸気温センサ18が組みつけられている。また、排気通路14には排気浄化触媒32と、排気圧力を検出する排気圧センサ31が設けられている。
【0016】
エアフィルタ16の下流には、エアフロメータ20が配置されている。エアフロメータ20の下流には、スロットルバルブ22が設けられている。スロットルバルブ22は例えば電子スロットルバルブから構成され、その開度はECU40からの指令に基づいて制御される。スロットルバルブ22の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットルセンサ24と、スロットルバルブ22が全閉となることでオンとなるアイドルスイッチ26とが配置されている。
【0017】
スロットルバルブ22の下流には、サージタンク28が設けられている。サージタンク28の近傍には、吸気通路12の圧力(吸気管圧)を検出する吸気管圧センサ29が設けられている。また、サージタンク28の更に下流には、内燃機関10の吸気ポートに燃料を噴射するための燃料噴射弁30が配置されている。
【0018】
内燃機関10の各気筒はピストン34を備えている。ピストン34には、その往復運動によって回転駆動されるクランク軸36が連結されている。車両駆動系と補機類(エアコンのコンプレッサ、オルタネータ、トルクコンバータ、パワーステアリングのポンプ等)は、このクランク軸36の回転トルクによって駆動される。クランク軸36の近傍には、クランク軸36の回転角を検出するためのクランク角センサ38が取り付けられている。また、内燃機関10のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ42が取り付けられている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の燃焼状態推定装置はECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した各種センサおよび燃料噴射弁30に加えて、車速SPDを検出する車速センサ44などが接続されている。
【0020】
また、ECU40には、機関の運転、停止の状態を切り換えるイグニッションスイッチ46と、機関始動時にクランキングを実施してクランク軸36を回転させるスタータ48が接続されている。イグニッションスイッチ46がオフ(OFF)からオン(ON)へ切り換わると、スタータ48によるクランキングが実施され、燃料噴射弁30から燃料が噴射され、点火により機関が始動する。イグニッションスイッチ46がオン(ON)からオフ(OFF)へ切り換わると、燃料噴射弁30による燃料噴射及び点火が停止され、機関が停止する。
【0021】
次に、図1のシステムによる内燃機関10の制御方法を具体的に説明する。最初に、フリクショントルクについて説明する。図2はフリクショントルクTと内燃機関10の機関回転数(Ne)、冷却水温(thw)との関係を表したマップである。フリクショントルクTは、ピストン34とシリンダ内壁の摩擦など各嵌合部の機械的な摩擦によるトルクであって、補機類の機械的な摩擦によるトルクを含むものである。ここで、冷却水温は、thw1→thw2→thw3の順に高温になる。図2に示すように、フリクショントルクTは機関回転数(Ne)が増えると増加し、また冷却水温(thw)が低温になると増加する傾向にある。
【0022】
クランク角の変動に伴うフリクショントルクTの挙動は複雑であり、バラツキも大きい。しかし、フリクショントルクTの挙動は主としてピストン34の速度に依存しており、機関が4気筒の場合、クランク角180°毎に各気筒で各行程が繰り返されるため、180°毎における全ピストン34の速度の平均値は等しくなる。このため、4気筒の場合は、TDC(上死点)からBDC(下死点)、またはBDC(下死点)からTDC(上死点)までの区間に着目すると、この区間毎のフリクショントルクTの平均値はほぼ一定している。従って、4気筒の機関の場合、フリクショントルクTをTDC−BDC間の区間毎の平均値として求めると、フリクショントルクTと、機関回転数(Ne)及び冷却水温(thw)との関係を正確に把握することができる。
【0023】
そこで、図2のマップは、機関回転数(Ne)、及び冷却水温(thw)をパラメータとして可変し、TDC−BDC間でクランク軸36を回転させた際に発生するフリクショントルクTを測定し、その平均値を算出することで作成されている。なお、図2においては、フリクショントルクTと同様に、機関回転数(Ne)、及び冷却水温(thw)もこの区間における平均値である。
【0024】
なお、より詳細には、フリクショントルクTを安定して求めることのできる区間は、機関におけるピストン34などの往復慣性質量による慣性トルクの平均値が0となる区間となる。この慣性トルクの平均値が0となる区間では、各気筒の往復慣性質量を有する部材による慣性トルクが相殺されており、区間毎にピストン34速度の平均値はほぼ等しくなる。実施の形態の説明では、機関が4気筒の場合を想定して、トルク算出区間はTDC−BDCを両端とするクランク角180°の区間とするが、他の気筒数の内燃機関に適用する場合は、トルク算出区間を往復慣性質量による慣性トルクの平均値が0となる区間とすることで適用できる。
【0025】
ECU40はメモリ内に図2のマップを格納している。ECU40は、このマップを使用してフリクショントルクTを推定し、図示トルクの算出等のためにその推定値を使用する。フリクショントルクTを推定する場合には、TDC−BDC間の冷却水温の平均値、機関回転数の平均値を図2のマップに当てはめて、この区間におけるフリクショントルクTの平均値を求める。この際、冷却水温は水温センサ42から、機関回転数はクランク角センサ38からそれぞれ検出する。これにより、TDC−BDC間の区間におけるフリクショントルクTを正確に推定することができ、後述するようにフリクショントルクTに基づいて図示トルクを正確に求めることができる。
【0026】
機関の総運転時間数、機関経過年数、車両の走行距離などの経時変化に関するパラメータが比較的小さい場合は、図2のマップから正確にフリクショントルクTを求めることができる。しかし、総運転時間数、運転機関が長くなると、摺動部分のクリアランスが大きくなる等の要因から、フリクショントルクに経時変化が発生する。このため、図2のマップから求めたフリクショントルクTと実際のフリクショントルクとの間に誤差が生じる。本実施形態の制御装置は、フリクショントルクTの経時変化を機関始動時に算出し、図2のマップを補正することで以降のフリクショントルク算出を正確に行うものである。
【0027】
機関始動時のクランキングの際には、クランク軸36がスタータ48によって駆動される。本実施形態の制御装置は、クランキング実施によりクランク軸36が回転し始めた後、燃料噴射弁30から噴射された燃料が爆発する以前に、実際に発生した実フリクショントルクTfwを求める。すなわち、スタータ48のみを駆動源としてクランク軸36が駆動している間に、実フリクショントルクTfwを求める。そして、実フリクショントルクTfwに基づいて図2のマップの補正を行う。実フリクショントルクTfwを求める際には、以下の(1)式を用いる。
【0028】
【数1】
Figure 0004567950
【0029】
(1)式の左辺は、スタータ48で発生されたトルクを示しており、スタータ48へ供給した電気エネルギーの平均値Wで示される。また、(1)式の右辺はスタータ48で発生されたトルクを消費するトルクを示しており、Jは機関の慣性モーメント、dω/dtはクランク軸36の角加速度、Tfwは始動時に実際に発生した実フリクショントルクをそれぞれ示している。ここで、J×(dω/dt)は、始動時のクランク軸36の角加速度に起因する動的な損失トルク(=Tac)である。始動時にはシフトギヤがニュートラルの位置にあり、アイドリング運転されるため、Tac、Tfw以外にスタータ48の発生トルクを消費するトルクはほとんど生じない。
【0030】
(1)式において、供給平均電気エネルギーWは、スタータ48へ供給した電力から求めることができ、角加速度に起因する動的な損失トルクTacもクランク軸36の角加速度から算出できる。この際、図2のマップのフリクショントルクTは、TDC−BDC間をクランク軸36が回転する間の平均値であるため、実フリクショントルクTfwはこの区間の平均値として求める必要がある。
従って、供給平均電気エネルギーW及び損失トルクTacもこの区間における平均値として求める。そして、供給平均電気エネルギーWから損失トルクTacを減算することによって、この区間での実フリクショントルクTfwの平均値を求めることができる。
【0031】
これにより、実フリクショントルクTfwと、図2のマップから推定したフリクショントルクTとを比較することで、フリクショントルクの経時変化を求めることができ、経時変化を考慮してマップを補正することが可能となる。
【0032】
最初に角加速度に起因する動的な損失トルクTac=J×(dω/dt)の算出方法を説明する。(1)式から、損失トルクTacは駆動部材の慣性モーメントJとクランク軸36の角加速度dω/dtを乗算して求めることができる。図3は、クランク軸36の角加速度を求める方法を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態では、クランク軸36の回転の10°毎にクランク角センサ38からクランク角信号が検出される。
【0033】
角加速度に起因する動的な損失トルクTacをTDC−BDC間の平均値として算出するため、本実施形態の制御装置は、TDCとBDCの2ヶ所のクランク角位置(θ(k),θ(k+1))で角速度ω(k),ω(k+1)をそれぞれ求め、同時にTDC−BDC間をクランク軸36が回転する時間Δt(k)を求める。
【0034】
角速度ω(k)を求める際には、例えば図3に示すように、クランク軸36がTDCの位置から前後10°の角度範囲を回転している間の時間Δt(k),Δt10(k)をクランク角センサ38から検出する。そして、時間Δt(k)+Δt10(k)の間にクランク軸36が20°回転しているため、ω(k)=(20/(Δt(k)+Δt10(k)))×(π/180)を演算することによってω(k)[rad/s]を算出できる。同様に、ω(k+1)を算出する際は、クランク軸36がBDCの位置から前後10°の角度範囲を回転している間の時間Δt(k+1),Δt10(k+1)を検出する。そして、ω(k+1)=(20/(Δt(k+1)+Δt10(k+1)))×(π/180)を演算することによってω(k+1)[rad/s]を算出できる。
【0035】
角速度ω(k),ω(k+1)を求めた後は、(ω(k+1)−ω(k))/Δt(k)を演算し、TDC−BDC間をクランク軸36が回転する間の角加速度の平均値を算出する。
【0036】
そして、角加速度の平均値を求めた後は、(1)式の右辺に従って、角加速度の平均値と慣性モーメントJを乗算する。これにより、クランク軸36がTDC−BDC間を回転する間の動的な損失トルクJ×(dω/dt)の平均値を算出できる。なお、駆動部の慣性モーメントJは、駆動部品の慣性質量から予め求めておく。
【0037】
次に、供給平均電気エネルギーWの算出方法を説明する。供給平均電気エネルギーWは、TDC−BDCの算出区間において、スタータ48が機関へ与えた平均の仕事量として求めることができる。すなわち、この区間において、(スタータへ供給した平均電気エネルギー[J/s])×(算出区間時間Δt[s])を演算することでW[J]を求めることができる。この際、スタータ48へ供給した電気エネルギーはクランク角に応じて変動するため、算出区間を複数に分割し、以下の(2)式を用いて平均化する。
【0038】
【数2】
Figure 0004567950
【0039】
(2)式において、Nは算出区間の分割数、Wは分割した各区間でスタータ48へ供給した電気エネルギーを示している。図3に示す例では、TDC−BDC間の算出区間をクランク角10°毎に分割し、10°毎にスタータへ供給した電気エネルギーW10(k),W20(k)・・・W170(k),W(k+1)を求めて平均している。
【0040】
なお、供給平均電気エネルギーWを求める際には、スタータ48の熱損失等の影響量を補正量として考慮しても良い。例えば、熱損失による影響を予め計測しておき、算出した電気エネルギーを補正することで、供給平均電気エネルギーWをより高精度に求めることができる。
【0041】
次に、図4のフローチャートに基づいて、本実施形態の制御装置における処理の手順を説明する。先ず、ステップS10では機関始動時におけるフリクショントルク算出時であるか否かを判定する。具体的には、イグニッションスイッチ46がオフ(OFF)からオン(ON)に切り換わった後であって、且つ燃料爆発前であるか否かを判定する。機関始動時におけるフリクショントルク算出時のときはステップS11へ進み、フリクショントルク算出時でないときは終了する(END)。
【0042】
次のステップS11では、クランク角位置が損失トルクTacの算出タイミングであるか否かを判定する。具体的には、クランク角がTDC+10°以降、BDC+10°以降のいずれかの状態にあるか否かを判定する。トルク算出タイミングである場合はステップS12へ進み、トルク算出タイミングでない場合は終了する(END)。
【0043】
次のステップS12では、トルク算出に必要なパラメータを取得する。具体的には、機関回転数(Ne(k)),冷却水温(thw(k)),角速度(ω(k),ω(k+1))、時間(Δt)などの各パラメータを取得する。
【0044】
次のステップS13では、図2のマップからフリクショントルクT(k)を推定する。ここでは、ステップS12で求めた機関回転数(Ne(k))と冷却水温(thw(k))を用い、図2のマップからフリクショントルクT(k)を求める。
【0045】
次のステップS14では、角加速度に起因する動的な損失トルクTac(k)を算出する。ここでは、Tac(k)=J×((ω(k+1)−ω(k))/Δt)を演算して、TDC−BDCの区間における動的な損失トルクの平均値Tac(k)を算出する。
【0046】
次のステップS15では、(2)式を用いて供給平均電気エネルギーW(k)を算出する。次のステップS16では、供給平均電気エネルギーW(k)から損失トルクTac(k)を減算して実フリクショントルクTfw(k)を求める。このように、実フリクショントルクTfw(k)はTDC−BDCの区間毎に求めることができ、クランク軸36の回転に伴ってステップS11〜S16の処理を行うことで、1又は複数の実フリクショントルクTfw(k),Tfw(k+1)・・・を求めることが可能である。
【0047】
次のステップS17では、図2のマップのフリクショントルクTを補正する。具体的には、ステップS16で求めた実フリクショントルクTfw(k)とステップS3で求めたフリクショントルクT(k)とを比較し、双方のフリクショントルクの値に差が生じている場合は、ステップS16で求めた実フリクショントルクTfw(k)を用いて図2のマップを補正する。ステップS17でフリクショントルクTを補正した後は、処理を終了する(END)。
【0048】
図5及び図6は、図2のマップを補正する方法を示す模式図である。図5は、1つの実フリクショントルクTfwの値を用いてマップを補正する方法を示している。また、図6は、2つの実フリクショントルクTfwの値を用いてマップを補正する方法を示している。
【0049】
図5の方法では、マップから得られたT(=Map(Ne,thw))とステップS6で得られたTfwの差ΔTを求め、ΔTを補正係数としてマップのTの値を補正する。すなわち、T(補正後)=function(ΔT,Map(Ne,thw))とする。例えば、
(補正後)=Map(Ne,thw)+C・ΔT
のように、補正前のTと、ΔTを所定の係数C倍して得られた値とを加算して、補正後のTを求める。また、
(補正後)=C・ΔT・Map(Ne,thw)
のように、補正前のTと、ΔTを所定の係数C倍して得られた値とを乗算して、補正後のTを求めても良い。図5の方法によれば、実フリクショントルクTfwに基づいて、マップのTの絶対値を補正することができる。
【0050】
図6の方法は、Tfw1とTfw2の2つの値を用い、Tf1とTfw1の差ΔTf1とTf2とTfw2の差ΔTf2を求め、ΔTf1,ΔTf2を補正係数としてマップのTの値を補正する。すなわち、T(補正後)=function(ΔTf1,ΔTf2,Map(Ne,thw))とする。例えば下式に基づいて、マップから得られたTと、Tfw1及びTfw2の平均値を所定の係数C倍して得られた値とを加算して、補正後のTを求める。
(補正後)=Map(Ne,thw)+C・((ΔTf1+ΔTf2)/2)
【0051】
図6の方法によれば、2つの実フリクショントルクTfw1,Tfw2に基づいて、マップのTの絶対値とともに、Tの傾きをも補正することができる。
【0052】
このように、本実施形態では、始動時に求めた実フリクショントルクTfwに基づいて図2のマップの値を補正するため、フリクショントルクに経時変化が発生した場合であっても、補正後のフリクショントルクTを精度良く算出することが可能となる。
【0053】
次に、補正したフリクショントルクTを用いて内燃機関10の図示トルクを求める方法を説明する。本実施形態では、以下の(3)式を用いて図示トルクを算出する。
【0054】
【数3】
Figure 0004567950
【0055】
(3)式において、図示トルクTは、エンジンの燃焼によってクランク軸36に発生するトルクである。(1)式と同様に、Jは機関の慣性モーメント、dω/dtはクランク軸36の角加速度、Tは補正後のフリクショントルク、Tは走行時に路面から受ける負荷トルク、を示している。負荷トルクTは、走行時の路面状態などの外乱によるトルクである。
【0056】
(3)式に示されるように、図示トルクTは、角加速度に起因する動的な損失トルクJ×(dω/dt)、フリクショントルクT、及び負荷トルクTの和として求めることができる。
【0057】
(3)式において、角加速度に起因する動的な損失トルクTac=J×(dω/dt)は、図3で説明した方法で算出することができる。また、負荷トルクTは、車両が停止しているアイドリング状態など、シフトギヤをニュートラルにした状態では0である。車両走行時は、傾きセンサなどからの検出値から求める。そして、損失トルクTac、負荷トルクT及び補正後の求めたフリクショントルクTを合計することで、図示トルクTを算出することができる。これにより、クランク軸36に発生するトルクが求まり、エンジンの出力、燃焼状態などの様々な情報を正確に得ることができる。
【0058】
以上説明したように実施の形態1によれば、機関始動時に燃焼によるトルクが発生していない状態で、スタータ48の供給平均電気エネルギーWと角加速度に起因した動的な損失トルクTacを求めるようにしたため、供給平均電気エネルギーWと損失トルクTacに基づいて、始動時に実際に発生している実フリクショントルクTfwを求めることができる。これにより、経時変化などの要因によってマップのフリクショントルクTと実フリクショントルクTfwとの間に差が生じている場合は、Tfw基づいてマップのフリクション特性を補正することができ、以降のフリクショントルク算出を正確に行うことが可能となる。これにより、フリクショントルクTの変化による制御性の悪化を抑止することができ、フリクショントルクTに基づいて図示トルクTなどの特性値を正確に算出することが可能となる。
【0059】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2は、イグニッションスイッチ46がオン(ON)からオフ(OFF)へ切り換わり、燃料噴射及び点火が停止された後、機関が停止するまでの間に実フリクショントルクTfwを求める。そして、実施の形態1と同様に、実フリクショントルクTfwに基づいて図2のマップを補正するものである。実フリクショントルクTfwを求める際には、以下の(4)式を用いる。
【0060】
【数4】
Figure 0004567950
【0061】
(4)式の右辺は(1)式と同様である。イグニッションスイッチ46がオフ(OFF)になった状態では、燃料噴射及び点火が停止しているため、実施の形態1と同様に燃焼によるトルクは発生しない。また、この状態では他の発生トルクもないため、(4)式の左辺は0となる。従って、角加速度に起因した動的な損失トルクTacのみに基づいて実フリクショントルクTfwを求めることができる。
【0062】
角加速度、損失トルクTacの算出方法は実施の形態1と同様である。以下、図7のフローチャートに基づいて、実施の形態2における処理の手順を説明する。先ず、ステップS20では機関停止時におけるフリクショントルク算出時であるか否かを判定する。具体的には、イグニッションスイッチ46がオン(ON)からオフ(OFF)に切り換わった後であって、且つ最後の燃料爆発後であるか否かを判定する。機関停止時におけるフリクショントルク算出時のときはステップS21へ進み、フリクショントルク算出時でないときは終了する(END)。
【0063】
次のステップS21では、クランク角位置が損失トルクTacの算出タイミングであるか否かを判定する。具体的には、クランク角がTDC+10°以降、BDC+10°以降のいずれかの状態にあるか否かを判定する。トルク算出タイミングである場合はステップS22へ進み、トルク算出タイミングでない場合は終了する(END)。
【0064】
次のステップS22では、トルク算出に必要なパラメータを取得する。具体的には、機関回転数(Ne(k)),冷却水温(thw(k)),角速度(ω(k),ω(k+1))、時間(Δt)などの各パラメータを取得する。
【0065】
次のステップS23では、図2のマップからフリクショントルクT(k)を推定する。ここでは、ステップS22で求めた機関回転数(Ne(k))と冷却水温(thw(k))を用い、図2のマップからフリクショントルクT(k)を求める。
【0066】
次のステップS24では、角加速度に起因する動的な損失トルクTac(k)を算出する。ここでは、Tac(k)=J×((ω(k+1)−ω(k))/Δt)を演算して、TDC−BDC間の区間における動的な損失トルクの平均値Tac(k)を算出する。
【0067】
次のステップS25では、(4)式を用いて実フリクショントルクTfw(k)を求める。ここで(4)式の左辺は0であるため、Tfw(k)=−Tac(k)となる。実施の形態1と同様、実フリクショントルクTfw(k)はTDC−BDCの区間毎に求めることができ、クランク回転に伴ってステップS21〜S25の処理を行うことで、1又は複数の実フリクショントルクTfw(k)を求めることができる。
【0068】
次のステップS26では、図2のマップのフリクショントルクTを補正する。具体的には、ステップS25で求めた実フリクショントルクTfw(k)とステップS23で求めたフリクショントルクT(k)とを比較し、双方のフリクショントルクの値に差が生じている場合は、ステップS25で求めた実フリクショントルクTfw(k)を用いて図2のマップを補正する。具体的な補正方法は、図5及び図6で説明した方法と同様である。ステップS26でフリクショントルクTを補正した後は、処理を終了する(END)。
【0069】
以上説明したように実施の形態2によれば、イグニッションスイッチ46をオン(ON)からオフ(OFF)へ切り換えた後、機関が停止するまでの間に動的な損失トルクTacを求めるようにしたため、損失トルクTacに基づいて機関停止時に実際に発生している実フリクショントルクTfwを求めることができる。これにより、実施の形態1と同様にマップのフリクション特性を補正することができ、図示トルクなどの特性値を正確に算出することが可能となる。
【0070】
なお、実施の形態1及び2において、機関始動、または停止の度に実フリクショントルクTを算出する必要がない場合は、実フリクショントルクTを算出する頻度を低くしても良い。例えば、車両の走行距離、機関経過年数などのフリクション変化の要因となるパラメータから補正ロジックの実行条件を定め、条件が満たされた場合のみ実フリクショントルクTfwを算出するようにしてもよい。これにより、演算負荷を低減することができる。
【0071】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、機関に負荷がかけられていない場合において、機関運転中の任意のタイミングで燃料噴射及び点火を停止し、その間に実フリクショントルクTfwを求めるものである。実フリクショントルクTfwを求める際には、実施の形態2と同様に(4)式を用いる。
【0072】
機関運転時に燃料噴射及び点火を停止させた場合、燃焼によるトルクは発生せず、また、この状態では他の発生トルクもないため、実施の形態2と同様に(4)式の左辺は0となる。また、アイドリング状態など機関に負荷がかけられていない状態では、動的な損失トルクTac及びフリクショントルクTfw以外の負荷は生じない。従って、実施の形態2と同様に、(4)式から実フリクショントルクTfwを求めることができる。
【0073】
実フリクショントルクTfwを算出する際は、例えば車両の走行距離、機関経過年数などのフリクション変化の要因となるパラメータから補正ロジックの実行条件を定め、条件が満たされた場合に燃料噴射、点火を停止して実フリクショントルクTfwを算出する。
【0074】
以下、図8のフローチャートに基づいて、実施の形態3における処理の手順を説明する。先ず、ステップS31では、燃料噴射弁30からの燃料噴射の停止、及び燃料への点火の停止を行う。この際、損失トルクTacの算出区間中の1爆発行程で燃料噴射及び点火を停止する。
【0075】
次のステップS32では、クランク角位置が損失トルクTacの算出タイミングであるか否かを判定する。具体的には、クランク角がTDC+10°以降、BDC+10°以降のいずれかの状態にあるか否かを判定する。トルク算出タイミングである場合はステップS32へ進み、トルク算出タイミングでない場合はステップS32で待機する。
【0076】
次のステップS33では、トルク算出に必要なパラメータを取得する。具体的には、機関回転数(Ne(k)),冷却水温(thw(k)),角速度(ω(k),ω(k+1))、時間(Δt)などの各パラメータを取得する。
【0077】
次のステップS34では、図2のマップからフリクショントルクT(k)を推定する。ここでは、ステップS33で求めた機関回転数(Ne(k))と冷却水温(thw(k))を用い、図2のマップからフリクショントルクT(k)を求める。
【0078】
次のステップS35では、角加速度に起因する動的な損失トルクTac(k)を算出する。ここでは、Tac(k)=J×((ω(k+1)−ω(k))/Δt)を演算して、TDC−BDC間の区間における動的な損失トルクの平均値Tac(k)を算出する。
【0079】
次のステップS36では、(4)式を用いて実フリクショントルクTfw(k)を求める。ここで(4)式の左辺は0であるため、Tfw(k)=−Tac(k)となる。実フリクショントルクTfw(k)はTDC−BDCの区間毎に求めることができ、クランク回転に伴ってステップS31〜S36の処理を行うことで、1又は複数の実フリクショントルクTfw(k)を求めることができる。
【0080】
次のステップS37では、図2のマップのフリクショントルクTを補正する。具体的には、ステップS36で求めた実フリクショントルクTfw(k)とステップS34で求めたフリクショントルクT(k)とを比較し、双方のフリクショントルクの値に差が生じている場合は、ステップS36で求めた実フリクショントルクTfw(k)を用いて図2のマップを補正する。具体的な補正方法は、図5及び図6で説明した方法と同様である。ステップS37でフリクショントルクTを補正した後は、処理を終了する(END)。実施の形態3では、機関回転数に制約を受けることなく実フリクショントルクTfwを算出することができるため、特に、図6で説明した多点による補正が適している。
【0081】
なお、燃料噴射及び点火を停止した場合であっても、ピストン34によるポンピング損失が発生して実フリクショントルクTfwの算出値に影響を与える場合がある。このため、角加速度を算出するタイミングは、スロットルバルブ22が全開時のときに行うことがより望ましい。これにより、ポンピング損失を最小限に抑えることができ、実フリクショントルクTfwを正確に求めることが可能となる。スロットルバルブ22を全開するのに代えて、可変動弁系を備え、吸気弁および排気弁を閉じることで、ポンピング損失を少なくしても良い。
【0082】
以上説明したように実施の形態3によれば、機関運転時に任意のタイミングで、燃料噴射及び点火を停止させることにより、動的な損失トルクTacから実フリクショントルクTfwを求めてマップのフリクション特性を補正することができる。また、機関回転数に制約を受けることなく実フリクショントルクTfwを求めることができるため、高回転時にフリクショントルクTを補正することもでき、図2のマップをより高い精度で補正することができる。従って、図示トルクの推定精度をより向上させることが可能となる。
【0083】
なお、上述した各実施の形態では、機関回転数(Ne)と冷却水温(thw)から図2のマップを作成してフリクショントルクTを求めたが、機関の温度を油温などの他の情報から求め、これらの温度情報に基づいてフリクショントルクTを求めても良い。
【0084】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態2では、イグニッションスイッチ46がオフとなった状態では燃焼によるトルクが発生していないため、(4)式の左辺を0としている。一方、イグニッションスイッチ46をオフにした後であっても、機関が停止するまでの間ではピストン34が往復運動を続ける。ピストン34の往復運動によって筒内への吸気が行われると、吸気通路12が負圧となり、クランク軸36の回転トルクにポンピング損失が発生する。
従って、ポンピング損失分のトルクを考慮することにより、より高い精度で実フリクショントルクTfwを算出することが可能となる。
【0085】
同様に、機関始動時、機関運転中においても、吸気通路12に負圧が発生するためポンピング損失が発生する。従って、実施の形態1,3においてもポンピング損失を考慮することにより、実フリクショントルクTfwを精度良く算出することができる。
【0086】
特に、スロットルバルブ22が閉じている場合は、スロットルバルブ22が開いている場合と比べて吸気通路12でより大きな負圧が発生するため、ポンピング損失を考慮することにより実フリクショントルクTfwの算出精度を高めることができる。
【0087】
実施の形態4は、上述した各実施形態において、ポンピング損失を加味した上で実フリクショントルクTfwを算出し、図2のマップをより高い精度で補正するものである。
【0088】
図9は、ポンピング損失を説明するための模式図である。以下、図9に基づいてポンピング損失について詳細に説明する。図9(a)及び図9(b)は、ともにスタータ48でクランキングを行った場合の筒内圧力Pと筒内容積Vの関係を示す特性図(P−V線図)であって、筒内での燃焼を発生させていない状態でのP−V特性を示している。ここで、図9(a)はスロットルバルブ22を全開にした場合を、図9(b)はスロットルバルブ22を全閉にした場合をそれぞれ示している。
【0089】
図9(a)及び図9(b)において、A点は吸気行程の開始時(クランク角TDC)における筒内圧力P及び筒内容積Vを、B点は圧縮行程の開始時(クランク角BDC)における筒内圧力P及び筒内容積Vを、C点は爆発(膨張行程)行程の開始時(クランク角TDC)における筒内圧力P及び筒内容積Vを、D点は排気行程の開始時(クランク角BDC)における筒内圧力P及び筒内容積Vをそれぞれ示している。
【0090】
図9(a)に示すように、スロットルバルブ22が全開の場合は、吸気行程がA点から開始すると、筒内圧力がP吸気(=大気圧力)の状態でピストン34の下降に伴って筒内容積Vが増加する。吸気行程が終了した時点での筒内圧力P及び筒内容積VはB点で示され、圧縮行程がB点から開始すると、圧縮行程では吸気バルブ、排気バルブが閉じられているため、C点までのP−V特性は曲線状に矢印a方向に推移する。そして、膨張行程がC点から開始すると、P−V特性は圧縮行程と逆の経路(矢印b方向)へ推移してD点に達する。そして、排気行程がD点から開始すると、筒内圧力がP排気(=P吸気)の状態でピストン34の上昇に伴って筒内容積が減少し、P−V特性は吸気行程と逆の経路を推移してA点に戻る。
【0091】
筒内容積が増加する際には筒内ガスによる正の仕事量が発生し、筒内容積が減少する場合は負の仕事量が発生する。スロットルバルブ22が全開の場合は、P−V特性が吸気行程と排気行程で反対の経路を推移するため、吸気行程と排気行程で発生する仕事量の総和は0となる。また、圧縮行程と膨張行程においてもP−V特性が反対の経路を推移するため、圧縮行程と膨張行程で発生する仕事量の総和も0となる。従って、全行程においてポンピング損失は発生しない。
【0092】
一方、図9(b)に示すように、スロットルバルブ22が全閉の場合は、吸気行程がA点から開始すると、吸気通路12が負圧となるため、先ず筒内圧力がP吸気まで低下する。そして、圧力がP吸気の状態でピストン34の下降に伴って筒内容積が増加する。吸気行程が終了して圧縮行程がB点から開始すると、吸気バルブ、排気バルブが閉じられているため、C点までのP−V特性は曲線状に矢印a方向に推移する。膨張行程がC点から開始すると、P−V特性は圧縮行程と逆の経路(矢印b方向)を推移してD点に達する。そして、排気行程がD点から開始すると、排気バルブが開くため、筒内圧力がP排気(=大気圧)へ上昇する。そして、筒内圧力がP排気の状態でピストン34の上昇に伴って筒内容積が減少し、P−V特性はA点へ戻る。
【0093】
このように、スロットルバルブ22が全閉の場合は、圧縮行程と膨張行程ではP−V特性が反対の経路を推移するが、吸気行程と排気行程ではP−V特性が異なる経路を推移することとなる。従って、吸気行程と排気行程で発生する仕事は相殺されて仕事量の総和は0となるが、吸気行程と排気行程で発生する仕事は相殺されず、負の仕事量が発生する。この負の仕事量がポンピング損失となる。
【0094】
具体的には、吸気行程では、図9(b)にハッチングで示す面積Sに相当する正の仕事量が発生する。一方、排気行程では、図9(b)にハッチングで示す面積Sと面積Sの和に相当する負の仕事量が発生する。従って、吸気行程と排気行程で発生する仕事量の総和は、面積Sに相当する負の仕事量となる。
【0095】
図10は、4気筒の機関における各気筒#1〜#4の筒内発生トルクを示す特性図である。図10の特性は、図9と同様にスタータ48でクランキングを行った場合の筒内発生トルクを示しており、筒内での燃焼が発生していない場合の特性を示している。図10の特性は筒内圧センサを各気筒に設け、筒内圧から算出したトルクを示している。ここで、図10(a)はスロットルバルブ22を全開にした場合を、図10(b)はスロットルバルブ22を全閉にした場合をそれぞれ示している。
【0096】
図10(a)に示すように、スロットルバルブ22が全開の場合、上述したように吸気行程と排気行程で発生した仕事量が相殺され、また圧縮行程と膨張行程で発生した仕事量が相殺されることとなる。図10(a)において、クランク角0〜180°の区間に着目すると、この区間では気筒#4は吸気行程、気筒#2は排気行程、気筒#1は膨張行程、気筒#3は圧縮行程となっている。従って、図9(a)で説明したように、#4と#2で発生した仕事量が相殺され、#1と#3で発生した仕事量が相殺されることとなる。すなわち、図10(a)における#4と#2のハッチング部分の面積は等しく、また#1と#3のハッチング部分の面積は等しくなる。
【0097】
一方、図10(b)に示すように、スロットルバルブ22が全閉の場合、上述したように圧縮行程と膨張行程で発生した仕事量が相殺されるが、吸気行程と排気行程で発生した仕事量は相殺されない。従って、#1と#3で発生した仕事量は相殺されるが、#4と#2で発生した仕事量は相殺されないことになる。すなわち、図10(b)において#4のハッチング部分の面積と#2のハッチング部分の面積の差が、図9(b)に示す面積Sに相当する負の仕事となる。
【0098】
実施の形態4では、図9(b)及び図10(b)に示されるポンピング損失を考慮して実フリクショントルクTfwを算出する。以下、ポンピング損失分に相当するトルクTipl(k)の算出方法を説明する。
【0099】
上述したように、ポンピング損失分に相当するトルクTipl(k)は、図9(b)における面積Sに相当する仕事であり、排気行程中の筒内圧P排気と吸気行程中の筒内圧P吸気との差から算出される。吸気行程中の筒内圧P吸気は、通常、吸気管圧Pmで表すことができ、P排気は大気圧(=P大気圧)に近似できるため、(5)式に示すように、ポンピング損失分のトルクTipl(k)はトルク算出区間(クランク角180°毎)の平均吸気管圧Pm(k)の関数として算出できる。
【0100】
【数5】
Figure 0004567950
【0101】
(5)式において、トルク算出区間毎の平均吸気管圧力Pm(k)は、吸気通路12に設けた吸気圧センサ29から検出する。平均吸気管圧Pm(k)は、エアフロメータ20で検出した吸入空気量(Ga)から推定する方法、スロットル開度と機関回転数から推定する方法等から取得しても良い。C,Dは予め定められた補正係数であるが、運転状態(トルク算出区間における平均機関回転数、平均吸気管圧力など)に応じて変動する変数としても良い。(5)式に示されるように、Pm(k)−P大気圧を演算することにより図9(b)におけるP吸気とP排気の差に相当する値が算出され、(Pm(k)−P大気圧)に係数Cを乗じ、係数Dを加算することでTipl(k)を算出することができる。
【0102】
図9(b)では、1行程で発生するポンピング損失を理想化し、ポンピング損失が矩形状の面積Sに相当するものとしたが、ポンピング損失が面積Sで示される矩形状の面積に理想化されない場合も生じる。例えば、図9(b)において破線で示すように、吸気行程がA点から開始された後、筒内圧力が直ちにP吸気とならずに一定時間の経過後にP吸気に達する場合がある。同様に、図9(b)において破線で示すように、排気行程がD点から開始された後、一定時間の経過後に筒内圧力がP排気に達する場合がある。(5)式では、補正係数C,Dを用いて(Pm(k)−P大気圧)を演算しているため、図9(b)で破線で示すようにポンピング損失が面積Sに理想化されていない場合であっても、補正係数C,Dによる適正化を行うことでポンピング損失を正確に算出することが可能となる。
【0103】
ポンピング損失分のトルクTipl(k)は、以下に示す(6)式から算出しても良い。(6)式は、(5)式のP大気圧の代わりにトルク算出区間の平均背圧P背圧(k)(トルク算出区間における、排気行程中の気筒の平均筒内圧)を用いるものである。
【0104】
【数6】
Figure 0004567950
【0105】
(6)式において、平均背圧P背圧(k)は、排気通路14に設けた排気圧センサ31の検出値から求める。また、(6)式において、C’は、(5)式における補正係数C,Dと同様に、定数または運転状態に応じた変数である。(6)式によれば、平均吸気管圧力Pm(k)と平均背圧P背圧(k)とからポンピング損失分のトルクTipl(k)を算出することができる。
【0106】
(6)式における平均背圧P背圧は、(5)式におけるP大気圧と比較すると、図9(b)におけるP排気とより近似する。従って、(6)式では、平均背圧P背圧を用いて演算することにより、Tipl(k)を精度良く算出することができる。また、(5)式の係数Dを用いることなくTipl(k)を算出することができ、演算を簡略化することができる。
【0107】
また、以下の(8)〜(10)式は、吸気行程の筒内圧の瞬時値(P吸気(θ))または吸気管圧の瞬時値(Pm’(θ))と、排気行程の筒内圧の瞬時値(P排気(θ))または背圧の瞬時値(P背圧’、P大気圧(θ))を用いて、簡易物理式からポンピング損失分のトルクTipl(k)を算出するものである。
【0108】
【数7】
Figure 0004567950
【0109】
(7)式の右辺において、Tgas_吸気(k)はトルク算出区間の吸気行程で発生する正の仕事量に相当するトルクであり、図9(b)における面積Sに対応する正の仕事量である。また、Tgas_排気(k)はトルク算出区間の排気行程で発生する負の仕事量に相当するトルクであり、図9(b)における面積S+Sに対応する負の仕事量である。
【0110】
(8)式は、吸気行程の筒内圧の瞬時値P吸気(θ)及び排気行程の筒内圧の瞬時値(P排気(θ))からTgas_吸気(k)、Tgas_排気(k)を直接算出するものであり、各気筒に設けた筒内圧センサ等からP吸気(θ)及びP排気(θ)が正確に取得できる場合は(8)式からTipl(k)を算出することが望ましい。(8)式に示されるように、Tgas吸気(k)は、(180/π)、吸気行程の筒内圧の瞬時値P吸気(θ)及び筒内容積の変化量(dV(θ)/dθ)の積の平均値(Average((180/π)・P吸気(θ)・(dV吸気(θ)/dθ)))から算出される。また、Tgas排気(k)は、(180/π)、排気行程の筒内圧の瞬時値P排気(θ)及び筒内容積の変化量(dV(θ)/dθ)の積の平均値(Average((180/π)・P排気(θ)・(dV排気(θ)/dθ)))から算出される。
【0111】
(8)式中のP吸気(θ)・(dV吸気(θ)/dθ)は、吸気行程中のクランク角θの時点で発生した筒内トルクに相当する値であり、図10(b)に当てはめると、吸気行程が行われている#4においてクランク角θの時点で発生した筒内トルクに相当する。従って、Average((180/π)・P吸気(θ)・(dV吸気(θ)/dθ))は、吸気行程中の筒内トルクの変動値を平均化した値に相当し、図10(b)では#4の吸気行程で発生した筒内トルクの変動値を平均化した値に相当する。ここで(180/π)は単位を揃えるために乗じた係数である。同様に、P排気(θ)・(dV排気(θ)/dθ)は、排気行程中のクランク角θの時点で発生した筒内トルクに相当する値であり、図10(b)に当てはめると、排気行程が行われている#2においてクランク角θの時点で発生した筒内トルクに相当する。従って、Average((180/π)・P排気(θ)・(dV排気(θ)/dθ))は、排気行程中の筒内トルクの変動値を平均化した値に相当し、図10(b)では#2の排気行程で発生した筒内トルクの変動値を平均化した値に相当する。
【0112】
このように、吸気行程の筒内圧の瞬時値P吸気(θ)及び排気行程の筒内圧の瞬時値(P排気(θ))からTgas_吸気(k)、Tgas_排気(k)を算出することで、筒内で発生したトルクに基づいてポンピング損失分のトルクTipl(k)を正確に算出することができる。
【0113】
(9)式では、(8)式におけるP吸気(θ)の代わりに吸気管圧の瞬時値pm’(θ)を用い、また(8)式におけるP排気(θ)の代わりに背圧の瞬時値P背圧’(θ)を用いてTipl(k)を算出している。この際、吸気管圧の瞬時値pm’(θ)は吸気圧センサ29から取得し、また背圧の瞬時値P背圧’(θ)は排気圧センサ31から取得する。(9)式によれば、筒内圧センサを設ける必要がなく、pm’(θ)及び値P背圧’(θ)に基づいてTipl(k)を算出することができる。
【0114】
(10)式では、(9)式における背圧の瞬時値P背圧’(θ)の代わりに大気圧(P大気圧(θ))を用いてTipl(k)を算出している。従って、(10)式によれば背圧の瞬時値P背圧’(θ)を求めることなく、P大気圧(θ)に基づいてTipl(k)を算出することができる。
【0115】
また、ポンピング損失分のトルクTipl(k)は、ECU40が記憶しているマップから取得するようにしても良い。例えば、トルク算出区間における平均吸気管圧及び区間平均機関回転数と、ポンピング損失分のトルクTipl(k)との関係を定めたマップをECU40に記憶させておき、このマップからTipl(k)を取得するようにしても良い。
【0116】
上述した方法でポンピング損失分のトルクTipl(k)を算出した後、Tipl(k)を用いて実フリクショントルクTfwを算出する。具体的には、実施の形態1においてポンピング損失分を考慮して実フリクショントルクTfwを算出する場合は、(1)式の左辺のWeにポンピング損失分のトルクTipl(k)を加算する。これにより、スタータ48へ供給された電気エネルギーの平均値Weに対するポンピング損失分のトルクTipl(k)による減少分を加味することができ、(1)式の右辺の実フリクショントルクTfwの算出精度を高めることができる。同様に、実施の形態2,3においてポンピング損失分を考慮して実フリクショントルクTfwを算出する場合は、(4)式の左辺にポンピング損失分のトルクTipl(k)を加算する。これにより、ポンピング損失分のトルクTipl(k)を加味した上で、(4)式の右辺の実フリクショントルクTfwを算出することができる。なお、ここで(1)式または(4)式に加算されるTipl(k)はいずれも図9(b)の面積Sに対応する負の値である。
【0117】
以下、図11のフローチャートに基づいて、実施の形態4における処理の手順を説明する。図11のフローチャートは、実施の形態2のフリクショントルク補正においてポンピング損失分を考慮した場合の処理を示している。
【0118】
先ず、ステップS40では機関停止時におけるフリクショントルク算出時であるか否かを判定する。具体的には、イグニッションスイッチ46がオン(ON)からオフ(OFF)に切り換わった後であって、且つ最後の燃料爆発後であるか否かを判定する。機関停止時におけるフリクショントルク算出時のときはステップS21へ進み、フリクショントルク算出時でないときは終了する(END)。
【0119】
次のステップS41では、クランク角位置が損失トルクTacの算出タイミングであるか否かを判定する。具体的には、クランク角がTDC+10°以降、BDC+10°以降のいずれかの状態にあるか否かを判定する。トルク算出タイミングである場合はステップS42へ進み、トルク算出タイミングでない場合は終了する(END)。
【0120】
次のステップS42では、トルク算出に必要なパラメータを取得する。具体的には、機関回転数(Ne(k)),冷却水温(thw(k)),角速度(ω(k),ω(k+1))、時間(Δt)などの各パラメータを取得する。
【0121】
次のステップS43では、図2のマップからフリクショントルクT(k)を推定する。ここでは、ステップS42で求めた機関回転数(Ne(k))と冷却水温(thw(k))を用い、図2のマップからフリクショントルクT(k)を求める。
【0122】
次のステップS44では、角加速度に起因する動的な損失トルクTac(k)を算出する。ここでは、Tac(k)=J×((ω(k+1)−ω(k))/Δt)を演算して、TDC−BDCの区間における動的な損失トルクの平均値Tac(k)を算出する。
【0123】
次のステップS45では、ポンピング損失を算出する。ここでは、(5)式に基づいてポンピング損失分のトルクTipl(k)を算出する。次のステップS46では、ポンピング損失分のトルクTipl(k)から損失トルクTac(k)を減算して実フリクショントルクTfw(k)を求める。上述したように、実施の形態2においてポンピング損失分のトルクTipl(k)を考慮して実フリクショントルクTfw(k)を算出する場合、(4)式の左辺にTipl(k)を加算するため、実フリクショントルクTfw(k)はポンピング損失分のトルクTipl(k)と損失トルクTac(k)との差として算出される。
【0124】
次のステップS47では、図2のマップのフリクショントルクTを補正する。具体的には、ステップS46で求めた実フリクショントルクTfw(k)とステップS43で求めたフリクショントルクT(k)とを比較し、双方のフリクショントルクの値に差が生じている場合は、ステップS46で求めた実フリクショントルクTfw(k)を用いて図2のマップを補正する。ステップS47でフリクショントルクTを補正した後は、処理を終了する(END)。
【0125】
図11のフローチャートでは、ポンピング損失を考慮したフリクショントルク補正を実施の形態2の方法に適用したが、上述したように実施の形態1,3におけるフリクショントルク補正に適用することも可能である。
【0126】
以上説明したように実施の形態4によれば、ポンピング損失分のトルクTipl(k)を考慮して実フリクショントルクTfwを算出するようにしたため、図2のマップのフリクション特性を高い精度で補正することができ、図示トルクなどの特性値を高精度に算出することが可能となる。
【0127】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5は、ポンピング損失を最小限に抑えるように吸入空気量を制御するものである。
【0128】
実施の形態4で説明したように、吸気通路12でポンピング損失が生じると、実フリクショントルクTfwの算出精度に影響を与える場合がある。実施の形態4では、実施の形態2と同様に機関停止時に実フリクショントルクTfwを求める場合において、スロットルバルブ22を全開にしてポンピング損失の発生を最小限に抑えるものである。
【0129】
以下、図12のフローチャートに基づいて、実施の形態5における処理の手順を説明する。先ず、ステップS51では機関停止時におけるフリクショントルク算出時であるか否かを判定する。具体的には、イグニッションスイッチ46がオン(ON)からオフ(OFF)に切り換わった後であって、且つ最後の燃料爆発後であるか否かを判定する。機関停止時におけるフリクショントルク算出時のときはステップS52へ進み、フリクショントルク算出時でないときは終了する(END)。
【0130】
次のステップS52では、ECU40からの指令によりスロットルバルブ22を全開にする。次のステップS53では、トルク算出タイミングであるか否かを判定する。ステップS53の処理は、図7のステップS21の処理と同様である。ステップS53でトルク算出タイミングであることが判定された場合はステップS54へ進み、フリクション補正ロジックを実施する。すなわち、ステップS54では図7のステップS22〜ステップS26の処理を行う。ステップS54でフリクション補正ロジックを実施した後は、処理を修了する(END)。
【0131】
図12の処理によれば、機関停止時におけるフリクショントルク算出時と判定された場合にスロットルバルブ22を全開にするようにしたため、筒内への吸入空気量を制御することができ、吸気通路12におけるポンピング損失の発生を最小限に抑えることが可能となる。そして、スロットルバルブ22を全開にした状態で、実施の形態2と同様にフリクション補正ロジックを実施することにより、ポンピング損失が実フリクショントルクTfwの算出精度に与える影響を最小限に抑えることができる。従って、マップのフリクション特性を高い精度で補正することができ、図示トルクなどの特性値を高精度に算出することが可能となる。
【0132】
なお、実施の形態5では、機関停止時にスロットルバルブ22を全開にして吸入空気量を制御したが、吸気バルブのリフト量を制御するなどの方法で吸入空気量を制御するようにしても良い。
【0133】
また、実施の形態5による吸入空気量制御は、実施の形態1,3におけるフリクショントルク補正に適用しても良い。更に、実施の形態4によるポンピング損失を考慮したフリクショントルク補正と併用しても良い。
【0134】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0135】
請求項1記載の発明によれば、実フリクショントルクに基づいて補正フリクショントルクを取得するようにしたため、経時変化などの要因から標準フリクショントルクに誤差が生じた場合であっても、フリクショントルクを正確に求めることが可能となる。しかも、吸気通路におけるポンピング損失に基づいて前記実フリクショントルクを補正するようにしたため、フリクショントルクをより高精度に求めることができる。
【0136】
請求項2記載の発明によれば、機関始動後、燃料が最初に爆発するまでの間にクランク角加速度を求めるようにしたため、動的な損失トルクとスタータへの供給エネルギーに基づいて実フリクショントルクを算出することができる。
【0137】
請求項3記載の発明によれば、イグニッションスイッチが運転状態から停止状態に切り換わった後、機関が停止するまでの間にクランク角加速度を求めるようにしたため、動的な損失トルクに基づいて実フリクショントルクを算出することができる。
【0138】
請求項4記載の発明によれば、燃焼トルク発生停止手段によって燃焼によるトルク発生を停止させた状態でクランク角加速度を求めるようにしたため、機関運転中に任意のタイミングで動的な損失トルクを求めることができ、動的な損失トルクに基づいて実フリクショントルクを算出することができる。
【0139】
請求項5記載の発明によれば、クランク軸が所定の区間を回転する際の所要時間と、この区間の両端でのクランク角速度とからクランク角加速度を正確に求めることができる。
【0140】
請求項6記載の発明によれば、上死点と下死点を両端とする区間でクランク角速度を求めるため、フリクショントルクの瞬時挙動による影響を排除して正確に実フリクショントルクを求めることができる。
【0141】
請求項7記載の発明によれば、吸気圧力に基づいてポンピング損失を取得するようにしたため、ポンピング損失を考慮して実フリクショントルクの補正を行うことができる。
【0142】
請求項8記載の発明によれば、イグニッションスイッチが運転から停止の状態に切り換わった後に吸入空気量が増加するように制御を行うため、吸気通路におけるポンピング損失の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1にかかる内燃機関の燃焼状態推定装置及びその周辺の構造を説明するための図である。
【図2】 フリクショントルクと機関回転数及び冷却水温との関係を表すマップを示す模式図である。
【図3】 クランク軸の角加速度を求める方法を示す模式図である。
【図4】 実施の形態1における処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】 フリクショントルクTの補正方法を示す模式図である。
【図6】 フリクショントルクTの補正方法を示す模式図である。
【図7】 実施の形態2における処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】 実施の形態3における処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】 ポンピング損失を説明するための模式図である。
【図10】 4気筒の機関における各気筒の筒内発生トルクを示す特性図である。
【図11】 実施の形態4における処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】 実施の形態5における処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
34 ピストン
36 クランク軸
38 クランク角センサ
40 ECU
42 水温センサ
46 イグニッションスイッチ
48 スタータ

Claims (6)

  1. 内燃機関の機関回転数及び冷却水温と内燃機関のフリクショントルクとの関係を定めた標準フリクション特性が記憶された記憶手段と、
    内燃機関のクランキングが開始されてから燃料が最初に爆発するまでの期間において、往復慣性質量による慣性トルクの平均値が零となる所定の区間を利用して、クランク軸が前記所定の区間を回転する間にスタータに供給された供給エネルギーを求める供給エネルギー算出手段と、
    内燃機関のクランキングが開始されてから燃料が最初に爆発するまでの期間において、クランク軸が前記所定の区間を回転する際の所要時間と、前記区間の両端でのクランク角速度とからクランク角加速度を求める角加速度算出手段と、
    前記クランク角加速度と内燃機関の慣性モーメントとに基づいて、クランク軸の角加速度に起因する動的な損失トルクを求める損失トルク算出手段と、
    前記スタータへの供給エネルギーから前記動的な損失トルクを減算することにより、内燃機関で発生した実フリクショントルクを求める実フリクショントルク算出手段と、
    前記標準フリクション特性として記憶されたフリクション値のうち、前記実フリクショントルクを求めるときの機関回転数及び冷却水温に対応する特定のフリクション値と、前記実フリクショントルクとの差分に基づいて前記特定のフリクション値を補正する補正手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の機関回転数及び冷却水温と内燃機関のフリクショントルクとの関係を定めた標準フリクション特性が記憶された記憶手段と、
    内燃機関のイグニッションスイッチが運転から停止の状態に切り換わった後、内燃機関が停止するまでの期間のうち、燃焼によるトルク発生が停止している状態の期間において、往復慣性質量による慣性トルクの平均値が零となる所定の区間を利用して、クランク軸が前記所定の区間を回転する際の所要時間と、前記区間の両端でのクランク角速度とからクランク角加速度を求める角加速度算出手段と、
    前記クランク角加速度と内燃機関の慣性モーメントとに基づいて、クランク軸の角加速度に起因する動的な損失トルクを求める損失トルク算出手段と、
    内燃機関で発生した実フリクショントルクと前記動的な損失トルクとの加算値が零になることを利用して、前記動的な損失トルクに基づいて前記実フリクショントルクを求める実フリクショントルク算出手段と、
    前記標準フリクション特性として記憶されたフリクション値のうち、前記実フリクショントルクを求めるときの機関回転数及び冷却水温に対応する特定のフリクション値と、前記実フリクショントルクとの差分に基づいて前記特定のフリクション値を補正する補正手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 内燃機関は4つの気筒を有する4気筒型内燃機関であり、
    前記所定の区間は、上死点と下死点を両端とする区間であることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記動的な損失トルクを算出するタイミングでの吸気圧力または当該タイミングでの吸気圧力及び排気圧力に基づいて、ポンピング損失に対応するトルクを算出するポンピング損失トルク算出手段を備え
    前記実フリクショントルク算出手段は、前記スタータへの供給エネルギーと前記ポンピング損失に対応するトルクとの加算値から前記動的な損失トルクを減算することにより、前記実フリクショントルクを求めることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記動的な損失トルクを算出するタイミングでの吸気圧力または当該タイミングでの吸気圧力及び排気圧力に基づいて、ポンピング損失に対応するトルクを算出するポンピング損失トルク算出手段を備え、
    前記実フリクショントルク算出手段は、前記実フリクショントルクと前記動的な損失トルクとの加算値が前記ポンピング損失に対応するトルクと一致することを利用して、前記実フリクショントルクを求めることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 吸入空気量を制御する吸入空気量制御手段を備え、
    前記吸入空気量制御手段は、前記イグニッションスイッチが運転から停止の状態に切り換わった後に、前記吸入空気量を前記ポンピング損失が最小限となる空気量に増加させることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
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