JP4661755B2 - 内燃機関の停止位置制御装置 - Google Patents
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Description
クランク角度の実測値を取得するクランク情報取得手段と、
内燃機関と変速機との間に配置されるクラッチの係合状態を判別するクラッチ係合状態判別手段と、
前記フリクションを含む所定のパラメータに基づいて、前記クラッチ係合状態判別手段によるクラッチ係合状態の判別結果に応じたクランク停止位置の推定値を取得する第1クランク位置推定手段と、
前記第1クランク位置推定手段により取得された前記推定値と前記クランク情報取得手段により取得された前記実測値との第1停止位置誤差を算出する第1停止位置誤差算出手段と、
前記クラッチ係合状態判別手段によりクラッチが係合状態にあると判別された場合に、前記フリクションを含む所定のパラメータに基づいて、クラッチが係合されていない状態にあるとして、クランク停止位置の推定値を取得する第2クランク位置推定手段と、
前記第2クランク位置推定手段により取得された前記推定値と前記クランク情報取得手段により取得された前記実測値との第2停止位置誤差を算出する第2停止位置誤差算出手段と、
前記第1停止位置誤差と前記第2停止位置誤差とに基づいて、前記フリクションモデルの学習開始時期を定める学習時期決定手段と、
を備えることを特徴とする。
前記学習時期決定手段は、内燃機関の停止処理の実行中に、クラッチ係合状態の切り替わりが検知された場合には、前記フリクションモデルの学習を開始させないようにする学習禁止手段を含むことを特徴とする。
係合状態から非係合状態への、或いは非係合状態から係合状態へのクラッチ係合状態の切り替わりを検知するクラッチ切替検知手段と、
前記フリクションを含む所定のパラメータに基づいて、前記燃焼カット回転数の目標値を算出する目標燃焼カット回転数算出手段と、
内燃機関の停止処理の実行中に、クラッチ係合状態の切り替わりが検知された場合には、前記燃料カット回転数の前記目標値の補正を行わないようにする補正禁止手段と、
を更に備えることを特徴とする。
[実施の形態1の装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の内燃機関の停止位置制御装置が適用された内燃機関10の構成を説明するための図である。本実施形態のシステムは、内燃機関10を備えている。ここでは、内燃機関10は、直列4気筒型エンジンであるものとする。内燃機関10の筒内には、ピストン12が設けられている。ピストン12は、コンロッド14を介してクランク軸16と連結されている。また、内燃機関10の筒内には、ピストン12の頂部側に燃焼室18が形成されている。燃焼室18には、吸気通路20および排気通路22が連通している。
図2は、図1に示すECU50が備えるエンジンモデル60の構成を示すブロック図である。図2に示すように、エンジンモデル60は、クランク軸周りの運動方程式演算部62と、エンジンフリクションモデル64と、ミッションフリクションモデル65と、吸気圧力推定モデル66と、筒内圧推定モデル68と、燃焼波形算出部70と、大気圧補正項算出部72と、大気温補正項算出部74とを含んでいる。以下、これらの各部の詳細な構成について説明を行う。
クランク軸周りの運動方程式演算部62は、クランク角度θおよびエンジン回転数Ne(クランク角回転速度dθ/dt)のそれぞれの推定値を求めるためのものである。クランク軸周りの運動方程式演算部62は、筒内圧推定モデル68または燃焼波形算出部70から内燃機関10の筒内圧力Pの入力を受け、演算開始時には、更に、初期クランク角度θ0および初期エンジン回転数Ne0の入力を受ける。
図3は、クランク軸周りの各要素に付す記号を示す図である。図3に示すように、ここでは、筒内圧力Pを受けるピストン12の頂部の表面積をAとする。コンロッド14の長さをL、クランクの回転半径をrとする。そして、コンロッド14のピストン取り付け点とクランク軸16の軸中心とを結ぶ仮想線(シリンダの軸線)と、コンロッド14の軸線とがなす角度をφ(以下、「コンロッド角度φ」と称する)とし、シリンダの軸線とクランクピン17の軸線とがなす角度をθとする。
図4は、図2に示すエンジンフリクションモデル64がエンジンフリクショントルクTRQf_ENを取得するために備えているエンジンフリクションマップの一例を示している。より具体的には、図4(A)は、クランク軸16周りの回転摺動に関する第1エンジンフリクショントルクTRQf_map1とクランク角回転速度(dθ/dt)との関係を概念的に表した図であり、図4(B)は、ピストン12の並進運動に関する第2エンジンフリクショントルクTRQf_map2とピストン速度(dXi/dt)との関係を概念的に表した図である。
図5は、図2に示すミッションフリクションモデル65がミッションフリクショントルクTRQf_MIを取得するために備えるミッションフリクションマップの一例を示している。ミッションフリクションモデル65によって算出されるミッションフリクショントルクTRQf_MIは、車両の停止中にギヤがニュートラル位置にあり、かつ、クラッチが係合された状態、すなわち、変速機のギヤが内燃機関10の動力をタイヤ側に伝達させることなく回転している状態におけるフリクショントルクである。そこで、ミッションフリクショントルクTRQf_MIは、変速機の内部のフリクション(主に軸受部の回転摺動によるフリクション)に対応する値となるように定められている。このため、図5に示すように、ミッションフリクショントルクTRQf_MIは、第1エンジンフリクショントルクTRQf_map1と同様にエンジン回転速度(dθ/dt)に依存する特性を有している。
吸気圧力推定モデル66は、吸気圧力を推定するための吸気圧マップ(図示省略)を備えている。この吸気圧マップは、吸気圧力を、スロットル開度TA、エンジン回転数Ne、および吸排気弁のバルブタイミングVVTとの関係で定めたものである。このような吸気圧力推定モデルの構成によれば、ECU50の計算負荷を低く抑えつつ、吸気圧力を取得することができる。尚、詳細に吸気圧力を計算する場合には、上記のような吸気圧マップを用いずに、スロットルバルブ24を通過する空気流量を推定するスロットルモデルと、吸気弁32の周囲を通過する空気流量(すなわち、筒内吸入空気流量)を推定するバルブモデルとを用いて、吸気圧力推定モデルを構成するようにしてもよい。
筒内圧推定モデル68は、燃焼が行われない状況下で、筒内圧力Pを算出するために用いられるモデルである。この筒内圧推定モデル68では、内燃機関10の各行程における筒内圧力Pを、次の(8a)式〜(8d)式を用いて算出するようにしている。すなわち、先ず、吸気行程の経過中の筒内圧力Pは、(8a)式で示すように、上述した吸気圧力推定モデル66が有する吸気圧マップから得られる筒内圧力のマップ値Pmapから得るようにしている。
ただし、上記(8b)式において、VBDCはピストン12が吸気下死点にあるときの行程容積Vであり、κは比熱比である。
ただし、上記(8c)式において、VTDCはピストン12が圧縮上死点にあるときの行程容積Vであり、Pcは圧縮行程の終了時における筒内圧力である。
燃焼波形算出部70は、圧縮行程の途中から膨張行程の途中までの燃焼が行われている期間における筒内圧力(燃焼圧力)Pを算出するために用いられるモデルである。この燃焼波形算出部70では、Weibe関数を用いた関係式である(9a)式と、後述する(10)式とを用いて、燃焼圧力Pの推定値が算出される。
ただし、上記(9a)式において、mは形状係数、kは燃焼効率、θbは着火遅れ期間、aは燃焼速度(ここでは固定値6.9)である。これらの各パラメータは、事前に適合された値が使用される。また、Qは発熱量である。
図6は、そのような変形例の手法を説明するための図である。この手法では、上記(9a)式および(10)式を用いて、所定のクランク角度θ毎に燃焼圧力Pを計算することを行うのではなく、事前に、上記(9a)式および(10)式を用いて、図6(A)に示すような燃焼パターン、すなわち、燃焼に付されることで変化する筒内圧力Pの波形の変化分(燃焼による圧力増加分)のみを算出しておく。
大気圧補正項算出部72は、筒内に吸入される筒内充填空気量Mcを推定するモデル(ここでは「エアモデル」と称する)を含んでいる。このエアモデルでは、筒内充填空気量Mcを次の(11)式に従って算出することとしている。
上記(12)式によれば、付着率Pおよび残留率Rをパラメータとして、個々のサイクル毎に上記燃料量fcを算出することができる。
大気温補正項算出部74では、排気行程中の行程容積V、残留ガス質量(排気上死点でのすきま容積Vcに基づいて算出)m、残留ガス(既燃ガス)のガス定数R、および大気温度Tairの実測値を理想気体の状態方程式に代入することで、筒内圧力Pthを算出する。当該筒内圧力Pthと、筒内圧推定モデル68で算出される筒内圧力Pとの偏差を算出する。そして、その偏差が大きい場合には、上記偏差に基づいて補正係数を算出する。この補正係数は、上述した吸気圧力推定モデル66において、吸気圧力Pmapの補正に用いられる。
内燃機関を備えた車両では、車両が一時的に停止した際に、内燃機関の停止および再始動を自動的に行う制御(エコラン制御)が実行されることがある。また、内燃機関とモータとで車両を駆動するハイブリッド車両においても、車両システムの起動中(車両走行中も含む)に、内燃機関の停止および再始動を自動的に行う制御(本明細書中では、これも広い意味で「エコラン制御」と称している)が実行されることがある。
内燃機関10を自動的に停止させる際に、クランク停止位置が目標の停止位置からずれる要因としては、クランク軸16への入力となるフリクションの影響が考えられる。上記のエコラン制御は、車両停止時にクラッチが係合状態になっているか否かに関係なく実行される。この際、クラッチが係合状態にあるか否かによって、厳密には、フリクションとクランク軸16周りのイナーシャが変化する。また、内燃機関10の内部と変速機の内部とでは、オイルの劣化度合い等も異なるものとなる。従って、クラッチの係合状態に応じたフリクションとイナーシャの違いを考慮しないと、高精度なクランク停止位置の適応学習制御を実現することができなくなる。
内燃機関を自動的に停止させる際に、クランク停止位置が目標クランク停止位置となるように、点火や燃料供給をカットするエンジン回転数(燃焼カット回転数)を制御する手法が知られている。上述したエンジンモデル60によれば、クランク軸16の目標クランク停止位置(クランク角度)および停止時のエンジン回転数(=0回転)を初期値として入力し、当該エンジンモデル60を上述した順モデル演算と逆方向に解く(逆モデル演算)こととすれば、クランク停止位置を所望の目標クランク停止位置とするための目標燃焼カット回転数(順モデル演算の場合の上記初期クランク角回転速度dθ0/dtに相当)を算出することができる。また、このような手法によれば、適宜学習が行われるフリクションの影響を反映させた目標燃焼カット回転数を取得することができる。
本実施形態のシステムは、クラッチの係合状態を判別するための手段として、クラッチスイッチ56を備えている。しかしながら、このクラッチスイッチ56は、クラッチペダルが奥まで踏み込まれなければON信号を発しないものである。このため、クラッチペダルの踏み込み量が十分でない場合には、実際にはクラッチが非係合状態となっているにも関わらず、クラッチ信号がOFFとなっている場合が生じ、クラッチの係合状態が誤判定されてしまうことがある。そして、クラッチの係合状態が誤って判定されると、クランク停止位置の誤差が大であると誤って判定されてしまい、本来学習が必要でないにも関わらず、フリクションの学習が開始されてしまうおそれがある。
また、ECU50が、上記ステップ102の処理を実行することにより前記第3または第4の発明における「クラッチ切替検知手段」が、上記ステップ120の判定が不成立である場合に図7のルーチンを速やかに終了させることにより前記第3の発明における「学習禁止手段」が、それぞれ実現されている。
また、ECU50が、エンジンモデル60の逆モデル演算により目標燃焼カット回転数を適宜算出していることにより前記第4の発明における「目標燃焼カット回転数算出手段」が、上記ステップ112の処理が不成立である場合に図7のルーチンを速やかに終了させることにより前記第4の発明における「補正禁止手段」が、それぞれ実現されている。
12 ピストン
14 コンロッド
16 クランク軸
24 スロットルバルブ
26 スロットルポジションセンサ
40 クランク角センサ
42 カム角センサ
50 ECU(Electronic Control Unit)
52 空燃比センサ
54 水温センサ
56 クラッチスイッチ
60 エンジンモデル
62 クランク軸周りの運動方程式演算部
64 エンジンフリクションモデル
65 ミッションフリクションモデル
66 吸気圧力推定モデル
68 筒内圧推定モデル
70 燃焼波形算出部
72 大気圧補正項算出部
74 大気温補正項算出部
76 PIDコントローラ
dQ/dθ 熱発生率
dθ/dt クランク角回転速度
Claims (4)
- 内燃機関のクランク軸への入力となるフリクションを算出するフリクションモデルと、
クランク角度の実測値を取得するクランク情報取得手段と、
内燃機関と変速機との間に配置されるクラッチの係合状態を判別するクラッチ係合状態判別手段と、
前記フリクションを含む所定のパラメータに基づいて、前記クラッチ係合状態判別手段によるクラッチ係合状態の判別結果に応じたクランク停止位置の推定値を取得する第1クランク位置推定手段と、
前記第1クランク位置推定手段により取得された前記推定値と前記クランク情報取得手段により取得された前記実測値との第1停止位置誤差を算出する第1停止位置誤差算出手段と、
前記クラッチ係合状態判別手段によりクラッチが係合状態にあると判別された場合に、前記フリクションを含む所定のパラメータに基づいて、クラッチが係合されていない状態にあるとして、クランク停止位置の推定値を取得する第2クランク位置推定手段と、
前記第2クランク位置推定手段により取得された前記推定値と前記クランク情報取得手段により取得された前記実測値との第2停止位置誤差を算出する第2停止位置誤差算出手段と、
前記第1停止位置誤差と前記第2停止位置誤差とに基づいて、前記フリクションモデルの学習開始時期を定める学習時期決定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の停止位置制御装置。 - 前記学習時期決定手段は、前記第1停止位置誤差が所定の判定値よりも大きく、かつ、前記第2停止位置誤差が所定の判定値よりも大きい場合に、前記フリクションモデルの学習が開始される方向に処理を進めることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の停止位置制御装置。
- 係合状態から非係合状態への、或いは非係合状態から係合状態へのクラッチ係合状態の切り替わりを検知するクラッチ切替検知手段を更に備え、
前記学習時期決定手段は、内燃機関の停止処理の実行中に、クラッチ係合状態の切り替わりが検知された場合には、前記フリクションモデルの学習を開始させないようにする学習禁止手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の停止位置制御装置。 - 内燃機関の燃焼を停止する燃焼カット回転数を制御することによりクランク停止位置を制御する内燃機関の停止位置制御装置であって、
係合状態から非係合状態への、或いは非係合状態から係合状態へのクラッチ係合状態の切り替わりを検知するクラッチ切替検知手段と、
前記フリクションを含む所定のパラメータに基づいて、前記燃焼カット回転数の目標値を算出する目標燃焼カット回転数算出手段と、
内燃機関の停止処理の実行中に、クラッチ係合状態の切り替わりが検知された場合には、前記燃料カット回転数の前記目標値の補正を行わないようにする補正禁止手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の停止位置制御装置。
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