JP4661757B2 - 内燃機関の停止位置制御装置 - Google Patents
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Description
前記燃焼カット回転数の目標値を少なくとも2つ取得する目標回転数取得手段と、
エンジン回転数の実測値を取得するエンジン回転数計測手段と、
前記実測値より上側に前記目標値の1つである上側目標値が存在する場合に、点火時期の進角によって、エンジン回転数を前記上側目標値に合わせることが可能か否かを判別する点火進角可否判別手段と、
前記実測値より上側に前記上側目標値が存在し、かつ、当該実測値より下側に前記目標値の他の1つである下側目標値が存在する場合において、前記点火進角可否判別手段の判別結果と、前記上側目標値および前記下側目標値に対する現在のエンジン回転数の距離とに基づいて、前記上側目標値および前記下側目標値の中から前記目標値を決定する目標回転数決定手段と、
内燃機関の自動停止要求が出された際に、前記目標回転数決定手段により決定された前記目標値が少なくとも前記上側目標値である場合は、点火時期の制御によって、当該目標値となるようにエンジン回転数を制御する回転数制御手段と、
を備えることを特徴とする。
前記目標回転数決定手段は、前記点火進角可否判別手段によって、点火時期の進角を用いてエンジン回転数を前記上側目標値に合わせることができると判断された場合であっても、前記制御時間判別手段によって、エンジン回転数を前記下側目標値に向けて制御した方が前記上側目標値に向けて制御する場合に比して制御時間が短くなると判断された場合には、前記下側目標値を前記目標値として選択することを特徴とする。
[実施の形態1の装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の内燃機関の停止位置制御装置が適用された内燃機関10の構成を説明するための図である。本実施形態のシステムは、内燃機関10を備えている。ここでは、内燃機関10は、直列4気筒型エンジンであるものとする。内燃機関10の筒内には、ピストン12が設けられている。ピストン12は、コンロッド14を介してクランク軸16と連結されている。また、内燃機関10の筒内には、ピストン12の頂部側に燃焼室18が形成されている。燃焼室18には、吸気通路20および排気通路22が連通している。
図2は、図1に示すECU50が備えるエンジンモデル60の構成を示すブロック図である。図2に示すように、エンジンモデル60は、クランク軸周りの運動方程式演算部62と、エンジンフリクションモデル64と、ミッションフリクションモデル65と、吸気圧力推定モデル66と、筒内圧推定モデル68と、燃焼波形算出部70と、大気圧補正項算出部72と、大気温補正項算出部74とを含んでいる。以下、これらの各部の詳細な構成について説明を行う。
クランク軸周りの運動方程式演算部62は、クランク角度θおよびエンジン回転数Ne(クランク角回転速度dθ/dt)のそれぞれの推定値を求めるためのものである。クランク軸周りの運動方程式演算部62は、筒内圧推定モデル68または燃焼波形算出部70から内燃機関10の筒内圧力Pの入力を受け、演算開始時には、更に、初期クランク角度θ0および初期エンジン回転数Ne0の入力を受ける。
図3は、クランク軸周りの各要素に付す記号を示す図である。図3に示すように、ここでは、筒内圧力Pを受けるピストン12の頂部の表面積をAとする。コンロッド14の長さをL、クランクの回転半径をrとする。そして、コンロッド14のピストン取り付け点とクランク軸16の軸中心とを結ぶ仮想線(シリンダの軸線)と、コンロッド14の軸線とがなす角度をφ(以下、「コンロッド角度φ」と称する)とし、シリンダの軸線とクランクピン17の軸線とがなす角度をθとする。
図4は、図2に示すエンジンフリクションモデル64がエンジンフリクショントルクTRQf_ENを取得するために備えているエンジンフリクションマップの一例を示している。より具体的には、図4(A)は、クランク軸16周りの回転摺動に関する第1エンジンフリクショントルクTRQf_map1とクランク角回転速度(dθ/dt)との関係を概念的に表した図であり、図4(B)は、ピストン12の並進運動に関する第2エンジンフリクショントルクTRQf_map2とピストン速度(dXi/dt)との関係を概念的に表した図である。
図5は、図2に示すミッションフリクションモデル65がミッションフリクショントルクTRQf_MIを取得するために備えるミッションフリクションマップの一例を示している。ミッションフリクションモデル65によって算出されるミッションフリクショントルクTRQf_MIは、車両の停止中にギヤがニュートラル位置にあり、かつ、クラッチが係合された状態、すなわち、変速機のギヤが内燃機関10の動力をタイヤ側に伝達させることなく回転している状態におけるフリクショントルクである。そこで、ミッションフリクショントルクTRQf_MIは、変速機の内部のフリクション(主に軸受部の回転摺動によるフリクション)に対応する値となるように定められている。このため、図5に示すように、ミッションフリクショントルクTRQf_MIは、第1エンジンフリクショントルクTRQf_map1と同様にエンジン回転速度(dθ/dt)に依存する特性を有している。
吸気圧力推定モデル66は、吸気圧力を推定するための吸気圧マップ(図示省略)を備えている。この吸気圧マップは、吸気圧力を、スロットル開度TA、エンジン回転数Ne、および吸排気弁のバルブタイミングVVTとの関係で定めたものである。このような吸気圧力推定モデルの構成によれば、ECU50の計算負荷を低く抑えつつ、吸気圧力を取得することができる。尚、詳細に吸気圧力を計算する場合には、上記のような吸気圧マップを用いずに、スロットルバルブ24を通過する空気流量を推定するスロットルモデルと、吸気弁32の周囲を通過する空気流量(すなわち、筒内吸入空気流量)を推定するバルブモデルとを用いて、吸気圧力推定モデルを構成するようにしてもよい。
筒内圧推定モデル68は、燃焼が行われない状況下で、筒内圧力Pを算出するために用いられるモデルである。この筒内圧推定モデル68では、内燃機関10の各行程における筒内圧力Pを、次の(8a)式〜(8d)式を用いて算出するようにしている。すなわち、先ず、吸気行程の経過中の筒内圧力Pは、(8a)式で示すように、上述した吸気圧力推定モデル66が有する吸気圧マップから得られる筒内圧力のマップ値Pmapから得るようにしている。
ただし、上記(8b)式において、VBDCはピストン12が吸気下死点にあるときの行程容積Vであり、κは比熱比である。
ただし、上記(8c)式において、VTDCはピストン12が圧縮上死点にあるときの行程容積Vであり、Pcは圧縮行程の終了時における筒内圧力である。
燃焼波形算出部70は、圧縮行程の途中から膨張行程の途中までの燃焼が行われている期間における筒内圧力(燃焼圧力)Pを算出するために用いられるモデルである。この燃焼波形算出部70では、Weibe関数を用いた関係式である(9a)式と、後述する(10)式とを用いて、燃焼圧力Pの推定値が算出される。
ただし、上記(9a)式において、mは形状係数、kは燃焼効率、θbは着火遅れ期間、aは燃焼速度(ここでは固定値6.9)である。これらの各パラメータは、事前に適合された値が使用される。また、Qは発熱量である。
図6は、そのような変形例の手法を説明するための図である。この手法では、上記(9a)式および(10)式を用いて、所定のクランク角度θ毎に燃焼圧力Pを計算することを行うのではなく、事前に、上記(9a)式および(10)式を用いて、図6(A)に示すような燃焼パターン、すなわち、燃焼に付されることで変化する筒内圧力Pの波形の変化分(燃焼による圧力増加分)のみを算出しておく。
大気圧補正項算出部72は、筒内に吸入される筒内充填空気量Mcを推定するモデル(ここでは「エアモデル」と称する)を含んでいる。このエアモデルでは、筒内充填空気量Mcを次の(11)式に従って算出することとしている。
上記(12)式によれば、付着率Pおよび残留率Rをパラメータとして、個々のサイクル毎に上記燃料量fcを算出することができる。
大気温補正項算出部74では、排気行程中の行程容積V、残留ガス質量(排気上死点でのすきま容積Vcに基づいて算出)m、残留ガス(既燃ガス)のガス定数R、および大気温度Tairの実測値を理想気体の状態方程式に代入することで、筒内圧力Pthを算出する。当該筒内圧力Pthと、筒内圧推定モデル68で算出される筒内圧力Pとの偏差を算出する。そして、その偏差が大きい場合には、上記偏差に基づいて補正係数を算出する。この補正係数は、上述した吸気圧力推定モデル66において、吸気圧力Pmapの補正に用いられる。
内燃機関を備えた車両では、車両が一時的に停止した際に、内燃機関の停止(アイドルストップ)および再始動を自動的に行う制御(エコラン制御)が実行されることがある。また、内燃機関とモータとで車両を駆動するハイブリッド車両においても、車両システムの起動中(車両走行中も含む)に、内燃機関の停止および再始動を自動的に行う制御(本明細書中では、これも広い意味で「エコラン制御」と称している)が実行されることがある。
内燃機関10を自動的に停止させる際に、クランク停止位置が目標の停止位置からずれる主な要因としては、クランク軸16への入力となるフリクションの影響が考えられる。そこで、本実施形態のエンジンモデル60は、フリクションを適宜学習する構成を備えている。より具体的には、フリクションの学習は、以下のような手法によって行われる。
内燃機関を自動的に停止させる際に、実クランク停止位置が目標クランク停止位置となるように、点火や燃料供給をカットするエンジン回転数(燃焼カット回転数)を制御する手法が知られている。尚、以下の明細書中においては、燃焼カット回転数を適宜「点火カット回転数」とも称している。
図9は、自動停止時のエンジン回転数の変化を表したタイムチャートである。自動停止時に、クランク停止位置を良好な再始動性を確保できる位置とすることのできる点火カット回転数は、複数存在する。より具体的には、点火カット回転数は、自動停止時に目標停止位置が得られる気筒を選ばなければ、所定の回転数おきにほぼ等間隔で複数の点火カット回転数が存在することになる。そのような複数の点火カット回転数は、上記のように、目標停止位置を初期値として、エンジンモデル60の逆モデル演算を実施することにより算出可能である。
また、ECU50が上述した基準値1に基づき上記ステップ108の処理を実行することにより前記第3の発明における「制御時間判別手段」が実現されている。
12 ピストン
14 コンロッド
16 クランク軸
24 スロットルバルブ
26 スロットルポジションセンサ
40 クランク角センサ
42 カム角センサ
50 ECU(Electronic Control Unit)
52 空燃比センサ
54 水温センサ
56 クラッチスイッチ
57 アクセルポジションセンサ
60 エンジンモデル
62 クランク軸周りの運動方程式演算部
64 エンジンフリクションモデル
65 ミッションフリクションモデル
66 吸気圧力推定モデル
68 筒内圧推定モデル
70 燃焼波形算出部
72 大気圧補正項算出部
74 大気温補正項算出部
76 PIDコントローラ
dQ/dθ 熱発生率
dθ/dt クランク角回転速度
Claims (3)
- 内燃機関の燃焼を停止する燃焼カット回転数を制御することによりクランク停止位置を制御する内燃機関の停止位置制御装置であって、
前記燃焼カット回転数の目標値を少なくとも2つ取得する目標回転数取得手段と、
エンジン回転数の実測値を取得するエンジン回転数計測手段と、
前記実測値より上側に前記目標値の1つである上側目標値が存在する場合に、点火時期の進角によって、エンジン回転数を前記上側目標値に合わせることが可能か否かを判別する点火進角可否判別手段と、
前記実測値より上側に前記上側目標値が存在し、かつ、当該実測値より下側に前記目標値の他の1つである下側目標値が存在する場合において、前記点火進角可否判別手段の判別結果と、前記上側目標値および前記下側目標値に対する現在のエンジン回転数の距離とに基づいて、前記上側目標値および前記下側目標値の中から前記目標値を決定する目標回転数決定手段と、
内燃機関の自動停止要求が出された際に、前記目標回転数決定手段により決定された前記目標値が少なくとも前記上側目標値である場合は、点火時期の制御によって、当該目標値となるようにエンジン回転数を制御する回転数制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の停止位置制御装置。 - 前記目標回転数決定手段は、前記点火進角可否判別手段によって、点火時期の進角を用いてエンジン回転数を前記上側目標値に合わせることができないと判断された場合には、前記下側目標値を前記目標値として選択することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の停止位置制御装置。
- 前記上側目標値および前記下側目標値に対する現在のエンジン回転数の距離に基づいて、現在のエンジン回転数を前記上側目標値に合わせるために要する制御時間と、現在のエンジン回転数を前記下側目標値に合わせるために要する制御時間とのどちらが短いかを判別する制御時間判別手段を更に備え、
前記目標回転数決定手段は、前記点火進角可否判別手段によって、点火時期の進角を用いてエンジン回転数を前記上側目標値に合わせることができると判断された場合であっても、前記制御時間判別手段によって、エンジン回転数を前記下側目標値に向けて制御した方が前記上側目標値に向けて制御する場合に比して制御時間が短くなると判断された場合には、前記下側目標値を前記目標値として選択することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の停止位置制御装置。
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