以下、本発明を具体化した一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、変形例は、当該実施形態の説明中に挿入されると首尾一貫した一実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
<システム全体構成>
図1を参照すると、エンジン10は、火花点火式の内燃機関であって、アイドルストップ機能を実現可能に構成されている。また、本実施形態においては、エンジン10は、直列4気筒エンジンである。すなわち、エンジン10の本体部を構成するエンジンブロック11の内部には、4つの気筒12が形成されている。
各気筒12内には、ピストン13が、往復移動可能に収容されている。なお、気筒12の内側の空間における上死点側(図中上側)の部分によって、燃焼室が形成されている。また、エンジンブロック11の内部には、クランクシャフト14が回転可能に支持されている。クランクシャフト14は、コンロッド15及びクランクピン16を介して、ピストン13に連結されている。
エンジンブロック11の内部には、ウォータージャケット17が形成されている。ウォータージャケット17は、冷却液(以下「クーラント」と略称する:具体的には冷却水)が通流可能な空間であって、気筒12の側方(シリンダブロック側)及び上方(シリンダヘッド側)にて気筒12を囲むように設けられている。
エンジンブロック11の上部であるシリンダヘッドには、吸気ポート18及び排気ポート19が、気筒12と連通可能に形成されている。また、このシリンダヘッドには、バルブ駆動機構20が設けられている。バルブ駆動機構20は、吸気バルブ21及び排気バルブ22を、所望のタイミング(可変)で開閉動作させるように構成されている。なお、周知の通り、吸気バルブ21は、吸気ポート18と気筒12との連通状態を制御するように設けられている。同様に、排気バルブ22は、排気ポート19と気筒12との連通状態を制御するように設けられている。
エンジンブロック11の吸気ポート18には、本発明の「吸気通路」を構成する吸気管31が接続されている。吸気管31の吸気通流方向における下流側の位置には、吸気マニホールド32及びサージタンク33が設けられている。吸気マニホールド32は、吸気管31の吸気通流方向における最下流部に設けられていて、吸気ポート18に接続されている。すなわち、吸気管31は、吸気ポート18を介して気筒12に接続されている。サージタンク33は、吸気マニホールド32よりも吸気通流方向における上流側に設けられている。
吸気管31には、スロットルバルブ34が介装されている。本実施形態において本発明の「吸気量調整機構」を構成するスロットルバルブ34は、気筒12内に吸入される気体(空気)の量を調整する手段であって、サージタンク33よりも吸気通流方向における上流側に設けられている。このスロットルバルブ34は、DCモータ等のスロットルアクチュエータ35によって開度調節されるようになっている。
また、エンジン10には、インジェクタ36と、点火装置37と、が設けられている。インジェクタ36は、気筒12内に供給するための燃料を噴射するように構成されていて、本実施形態においては、インジェクタ36は、吸気ポート18内に向けて燃料を噴射するように、吸気マニホールド32におけるエンジンブロック11との接続部近傍に装着されている。点火装置37は、エンジンブロック11における上述のシリンダヘッドに装着された点火プラグ等を有している。この点火装置37は、燃料混合気を着火するための火花放電を所定タイミングで気筒12(燃焼室)内にて発生させるようになっている。
さらに、エンジン10には、オルタネータ38が装着されている。オルタネータ38は、エンジンブロック11の外側に設けられた動力伝達機構(ベルトやプーリー等)を介してクランクシャフト14に連結されている。このオルタネータ38は、クランクシャフト14から回転駆動力を伝達されることで発電するように設けられている。
<エンジン制御装置の概略構成>
エンジン制御装置50は、エンジン10の運転を制御するように設けられている。具体的には、エンジン制御装置50は、各種のセンサ類(主要なものは後述する)やスイッチ類等からの入力に応じて、エンジン10の各部(バルブ駆動機構20、スロットルアクチュエータ35、インジェクタ36、点火装置37、等。)の動作を制御するように構成されている。以下、エンジン制御装置50の構成の詳細について説明する。
エンジン制御装置50は、ECU51を備えている。ECU51は、CPU、ROM、RAM、及び通電時に書き換え可能な不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリやEEPROM(登録商標))等よりなるマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータとECU51の外部との間に設けられたインターフェースと、を備えている。
ECU51におけるマイクロコンピュータは、上述したエンジン10の各部や後述するセンサ類等と、インターフェースを介して(信号授受可能に)接続されている。このマイクロコンピュータは、CPUにて、ROMに予め記憶された各種の制御プログラム(ルーチン)を、ROMや不揮発性メモリに記憶されたマップ(ルックアップテーブル)等の各種データを参照しつつ実行するようになっている。すなわち、ECU51は、後述するセンサ類等からの入力に応じて上述の制御プログラムをマイクロコンピュータにて実行することで、上述したエンジン10の各部の駆動を制御するための駆動制御信号を生成するとともに、かかる駆動制御信号を(インターフェースを介して)出力するようになっている。
エンジン10には、エアフローメータ52と、吸気温センサ53と、スロットル開度センサ55と、クランク角センサ56と、冷却水温センサ57と、油温センサ58と、が備えられている。
エアフローメータ52は、吸入空気量Ga(吸気管31を通流して気筒12内に導入される吸入空気の質量流量)に応じた出力を生じるセンサである。このエアフローメータ52は、スロットルバルブ34よりも吸気通流方向における上流側の位置にて吸気管31に装着されている。吸気温センサ53は、吸気温Ta(吸気管31内を通流する吸入空気の温度)に応じた出力を生じるセンサであって、エアフローメータ52に内蔵されている。すなわち、本実施形態においては、エアフローメータ52は、吸気温センサ53を内蔵した周知の熱線式エアフローメータとして構成されている。
本発明の「吸気パラメータセンサ」としての吸気圧センサ54は、吸気管圧力Pm(吸気管31内の空気の圧力)に応じた出力を生じるセンサであって、サージタンク33に装着されている。スロットル開度センサ55は、スロットル開度THA(スロットルバルブ34の開度)に応じた出力を生じるセンサであって、スロットルアクチュエータ35に内蔵されている。
クランク角センサ56は、クランクシャフト14に対向するように、エンジンブロック11に装着されている。このクランク角センサ56は、エンジン回転数Neの取得(検出)に用いられる信号、具体的には、クランクシャフト14が10度回転する毎の幅狭のパルスと360度回転する毎の幅広のパルスとを有する信号を出力するようになっている。すなわち、クランク角センサ56は、エンジン回転数Neに応じた出力を生じるように設けられている。
冷却水温センサ57は、冷却水温Tw(ウォータージャケット17内を通流するクーラントの温度)に応じた出力を生じるセンサであって、エンジンブロック11に装着されている。油温センサ58は、潤滑油温To(エンジンブロック11の底部に設けられたオイルパン内に貯留された潤滑油の温度)に応じた出力を生じるセンサであって、エンジンブロック11に装着されている。
また、エンジン10には、アクセルポジションセンサ591と、ブレーキペダルセンサ592と、シフトポジションセンサ593と、が備えられている。アクセルポジションセンサ591は、アクセル操作量ACCP(図示しないアクセルの操作量)に応じた出力を生じるように設けられている。ブレーキペダルセンサ592は、図示しないブレーキペダルの踏み込み量に応じた出力を生じるように設けられている。シフトポジションセンサ593は、図示しないシフトレバーの操作状態(シフトポジション)に対応する出力を生じるように設けられている。
<エンジン回転停止制御の概要>
本発明の「メイン制御部」を構成するECU51は、上述のセンサ類等からの入力に応じてエンジン10の各部を制御することで、エンジン10にてアイドルストップ機能を実現させるようになっている。特に、ECU51は、エンジン10の休止の際に、引き続き行われる再始動に適した回転角(回転位相)範囲にてクランクシャフト14を停止させる、いわゆる「停止位置制御」を実行するようになっている。
ここで、エンジン10の「休止」とは、アイドルストップ機能における一時的なエンジン10の停止をいうものとする。以下、アイドルストップにおけるエンジン10の停止過程(本発明の「エンジン停止過程」に相当する)を、単に「エンジン10の休止過程」と称する。また、エンジン10の「再始動」とは、エンジン休止に引き続いて行われるエンジン10の始動をいうものとする。以下、本実施形態における、エンジン回転停止制御(停止位置制御)の概要について説明する。
本実施形態においては、ECU51は、エンジン10の休止過程にて、回転数取得値に基づいて回転数目標値を算出する。ここで、「回転数取得値」とは、クランク角センサ56の出力に基づくエンジン回転数Neの取得値をいう。また、「回転数目標値」とは、クランクシャフト14を所定の目標回転角範囲で停止させるための将来のエンジン回転数Neの目標値をいう。
また、ECU51は、吸気圧取得値と、上述の回転数取得値とを、後述する「トルクモデル」に適用することにより、回転数予測値を算出する。ここで、「吸気圧取得値」とは、吸気圧センサ54の出力に基づく吸気管圧力Pmの取得値をいう(これは本発明の「吸気パラメータ取得値」に相当する)。また、「回転数予測値」とは、後述する「トルクモデル」に適用することにより算出された、将来のエンジン回転数Neの予測値をいう。
具体的には、本実施形態においては、エンジン10は、上述のように、直列4気筒エンジンである。このため、ECU51は、クランクシャフト14の回転角が気筒12毎の吸気上死点から90°CA後にシフトした所定の算出タイミングにて、3行程先までの回転数予測値(すなわち、当該算出タイミングの90°CA後、180°CA後、及び270°CA後の回転数予測値)を、算出する。この算出タイミングは、クランクシャフト14が2回転する間に、180°CAの周期で4回到来する。
また、ECU51は、上述の算出タイミングにて、回転数目標値の軌道(将来の複数の時点における回転数目標値)を算出する。そして、ECU51は、回転数予測値を回転数目標値の軌道に適合させるように、スロットルバルブ34の開度すなわちスロットルアクチュエータ35の動作をフィードバック制御する。なお、アイドルストップにおける停止位置制御や、その際の回転数目標値の軌道算出の、一般的な内容については、本願の出願時点ですでに公知あるいは周知となっている(必要であれば、特開2005−299445号公報(米国特許第7269499号明細書)、特開2010−43532号公報(米国特許第8000885号明細書)、等参照。)。
ここで、本実施形態における、上述の算出タイミングの設定理由は、以下の通りである。
ある気筒12における、吸気行程でのスロットル開度THAの変化は、かかる吸気行程並びにこれに引き続く圧縮及び膨張行程における図示トルクに影響を与える。すなわち、スロットル開度THAの変化の影響は、将来の3行程分(270°CA分)に及ぶ。
このため、スロットル開度THAによる停止位置制御は、吸気行程でのスロットルアクチュエータ35への制御信号の入力によるスロットル開度THAの変化が、その後の行程におけるエンジン回転数Neにどのような影響を与えるかを考慮したものとなるべきである。すなわち、スロットル開度THAによる停止位置制御では、エンジン10の休止過程における将来のエンジン回転数Neの予測を行う必要がある。
そこで、本発明の発明者は、1つの気筒12(これを第一気筒#1と仮定する)における、吸気行程でのスロットル開度THAの変化による図示トルクの影響についてシミュレーションした。そのシミュレーション結果に基づく知見について、図2を参照しつつ以下に説明する。なお、図中、実線はスロットル全開の場合、破線は通常のアイドル時におけるスロットル開度(THA=1.5°)の場合を示す。
図2に示されているように、第一気筒#1の吸気行程においては、ATDC60°CA近辺にて、トルクのピークが生じた。また、第一気筒#1の圧縮行程においては、BTDC30°CA近辺にて、トルクのピークが生じた。ところで、本実施形態においては、エンジン10は直列4気筒エンジンである。よって、このとき、第三気筒#3においては、吸気行程におけるATDC150°CA近辺となる。同様に、第一気筒#1の膨張行程においては、ATDC30°CA近辺にて、トルクのピークが生じた。このとき、第二気筒#2においては、吸気行程におけるATDC30°CA近辺となる。
このため、第一気筒#1の吸気行程においては、スロットル開度の変動に伴って、以下のようなトルク変動の影響が生じる。まず、吸気上死点から60°CA後近辺にて、当該気筒#1の吸気行程に対するスロットル制御に伴うトルク変動の影響が最も大きく生じる。一方、吸気上死点から30°CA後近辺にて、第二気筒#2(膨張行程中)における吸気行程でのスロットル制御に伴うトルク変動の影響が最も大きく生じる。同様に、吸気上死点から150°CA後近辺にて、第四気筒#4(圧縮行程中)における吸気行程でのスロットル制御に伴うトルク変動の影響が最も大きく生じる。
したがって、第一気筒#1の吸気行程における、吸気上死点から60°CA以前においては、第四気筒#4(圧縮行程中)における吸気行程でのスロットル制御に伴うトルク変動の影響が現れない。また、吸気上死点から120°CA以後においては、第二気筒#2(膨張行程中)における吸気行程でのスロットル制御に伴うトルク変動の影響が現れない。
一方、すべての気筒12におけるトルク変動の影響が第一気筒#1の吸気行程に漏れなく生じるのは、第一気筒#1の吸気行程における、吸気上死点から60〜120°CA後の範囲内である。このうち、すべての気筒12におけるトルク変動の影響が均等に現れる、「吸気上死点から90°CA後」が、本実施形態において、所定の算出タイミングとして選定されている。
また、回転数予測値を3行程先まで算出することについての理由は、以下の通りである。
上述のように、ある気筒12における、吸気行程でのスロットル開度THAの変化の影響は、将来の3行程分に及ぶ。また、本実施形態におけるエンジン10を搭載する車両がいわゆるAT車であるとすると、Dレンジにてアイドルストップのためにフューエルカットの実行が開始されてから実際にエンジン10が停止するまでの所要時間は、概ね3行程程度である。
さらに、以下に詳述するように、エンジン10の停止から3TDC前にスロットル制御を行うことで、停止クランク角が吸気上死点近辺(具体的にはATDC0〜30°CA程度)になることを確実に防止することができる。
エンジン10の休止過程(アイドル状態からのフューエルカット)にて、エンジン回転数Neがオルタネータ38の発電限界回転数以下に低下すると、オルタネータ38の負荷トルクが、ほとんど発生しなくなる。このようなエンジン回転数Neの領域では、オルタネータ38の負荷トルクの影響をほとんど受けずにエンジン回転数Neが低下してエンジン10が停止する。このため、所定の基準タイミングを通過する際のエンジン回転数Neに応じた停止クランク角にて、エンジン10が停止する。
図3は、エンジン10の休止過程における、停止1TDC前(上述の「基準タイミング」に相当する)のエンジン回転数Neと停止クランク角との間の関係の一例である。図3に示されているように、停止1TDC前(停止直前のTDC)における実際のエンジン回転数Neと、実際の停止クランク角と、の間には、良好な相関関係がある。
図3における左下の領域においては、停止1TDC前におけるエンジン回転数Neが低すぎるために、停止クランク角が吸気上死点近辺となってしまっている。このような状態でエンジン10を停止させると、再始動性が悪くなる。よって、これを回避するためには、停止1TDC前におけるエンジン回転数Neを所定程度まで上昇させる必要がある。
この点、上述の通り、ある気筒12における、吸気行程でのスロットル開度THAの変化の影響は、将来の3行程分に及ぶ。よって、停止1TDC前におけるエンジン回転数Neに対して、スロットル開度THAの変化の影響を与えるためには、エンジン10の停止から3TDC前にスロットル制御を行う必要がある。
本実施形態においては、いわゆる「2圧縮始動」を実現すべく、アイドルストップでのクランクシャフト14の目標停止回転角は、吸気上死点から90°CA後付近(許容範囲としてATDC75〜105°CA)に設定されている。そこで、このような目標停止回転角を実現すべく、図3の相関関係に基づいて、停止1TDC前における回転数目標値が設定される。また、現在の(すなわち所定の算出タイミングにおける)実際のエンジン回転数Neと、停止1TDC前における回転数目標値と、の線形補間により、現在から3行程先までの回転数目標値が設定される。そして、トルクモデルによる回転数予測値の軌跡と、回転数目標値の軌跡とが、適合する(可及的に一致する)ように、スロットル制御が行われる。
<トルクモデルの概要>
以下、上述の「トルクモデル」について詳述する。このトルクモデルは、クランクシャフト14の回転に関する運動方程式と、吸気管31における気体の挙動に関する物理法則と、に基づいて構築された計算モデルである。
吸気管31における気体の挙動に関する物理法則に基づいて構築された計算モデルは、いわゆる「エアモデル」と称される。なお、「エアモデル」の一般的な内容は、本願の出願時点においてすでに周知である(例えば特開2006−152899号公報(米国特許第7079937号明細書/欧州特許出願公開第1662127号明細書)等参照)。本実施形態におけるエアモデルも、基本的には、かかる周知のエアモデルと同様の原理に基づいて構築されている。具体的には、本実施形態におけるエアモデルは、以下のように設定されている。
気筒12に吸入される空気の通路における、スロットルバルブ34から吸気バルブ21に至る部分を、以下「気筒上流部」と称する。また、この気筒上流部における、総気体質量をMとし、体積をVmとする。また、この気筒上流部における温度及び圧力を、以下「吸気管内温度Tm」及び「吸気管内圧力Pm」と称する。
気筒上流部における総気体質量Mの時間的変化は、当該気筒上流部に流入する気体の流量(スロットルバルブ通過流量mt:スロットルバルブ34を通過する空気の流量)と、当該気筒上流部から流出する気体の流量(筒内吸入気体流量mc)と、の差に等しい(質量保存則)。したがって、下記の式(1)が成立する。
この式(1)と気体の状態方程式(Pm・Vm=M・R・Tm:Rは気体定数)より、下記の式(2)が成立する。
ここで、今回の計算モデルは、アイドルストップにおけるエンジン10の休止の際に用いられるものである。よって、かかる計算モデルにおいては、エンジン10の運転状態は安定している(過給状態でもなく過渡状態でもない)と仮定してよい。
また、かかる計算モデルを用いた上述の算出タイミングは、各気筒12における吸気上死点から90°CA後である。すなわち、この算出タイミング近辺においては、算出対象の気筒12における燃料混合気の燃焼は発生していない。さらに、上記の式(2)における時間dtは極めて短時間である。
以上の仮定から、上記の式(2)において、Tmは時間dt中で一定値(=吸気温Ta)と仮定してよい。このため、上記の式(2)は、下記の式(3)となる。
さらに、周知の通り、体積効率ηについて、気体の状態方程式を考慮すると、下記の式(4)が成立する(必要であれば特開2009−7940号公報(米国特許出願公開第2008/0314132号明細書)等参照)。なお、式(4)において、「Vc」は気筒12の体積である。
したがって、上記の式(3)及び(4)から、下記の式(5)に示されるエアモデル式が得られる。
一方、クランクシャフト14の回転に関する運動方程式は、下記の式(6)の通りとなる。式(6)において、Icrはコンロッド15の慣性モーメントであり、θは吸気上死点からの回転角(°CA)であり、mはクランクピン16の質量であり、rはクランク半径(クランクピン16の中心の、クランクシャフト14の中心からの距離)である。なお、θを時間で微分したもの(θの上にドットが1つ付されたもの)は、エンジン回転数Neに相当する。また、「Te」は図示トルクであり、「Tf」はフリクショントルクである。
式(6)における図示トルクTeは、下記の式(7)に示された通りとなる。なお、式(7)において、P1は吸気行程にある気筒12の筒内圧であり、P2は圧縮行程にある気筒12の筒内圧であり、P3は膨張行程にある気筒12の筒内圧であり、P4は排気行程にある気筒12の筒内圧である。また、Acは気筒12の断面積であり、Lはコンロッド15の長さである。
ここで、上記のエアモデル式(5)について、上述の通り、算出タイミング及び算出周期をクランク角と同期させることで、微分方程式を差分化及び線形化すると、下記の式(8)が得られる。なお、この式(8)において、Gn(k)=mt/Neである。また、上述の差分化にあたって、dtは1行程に要する時間とした。このため、dtはエンジン回転数Neに反比例した値となる(すなわちdt=α/Ne:αは定数)。
同様に、上記の運動方程式(6)及び(7)について、算出タイミング及び算出周期をクランク角と同期させる(具体的にはθ=90°とする)ことで、微分方程式を差分化及び線形化すると、かかる運動方程式は下記の式(9)のように表現することができる。なお、式(9)において、k1〜k3は定数であり、Pairは大気圧である。また、式(9)の導出にあたって、フリクショントルクTfは、エンジン回転数Neに対して2次の特性を有するものであると仮定した。
式(8)及び(9)は、下記の式(10)のように書き改めることができる(a,b,c,d,e,fは定数である)。
したがって、システムの状態方程式は、周知の通り、以下の式(11)のように表される。なお、式(11)において、「C」は単位行列である。
式(11)に示されているように、今回の算出対象ベクトルx(k)には、今回の算出タイミングにて算出すべき回転数予測値が含まれている。さらに、この算出対象ベクトルx(k)には、現在の(すなわち今回の算出タイミングにおける)吸気圧取得値Pm(k)のみならず、過去の吸気圧取得値Pm(k−1)及びPm(k−2)が含まれている。
ここで、過去の吸気圧取得値Pm(k−1)は、前回の算出タイミングにて「現在の吸気圧取得値」として適用されたものである。また、過去の吸気圧取得値Pm(k−2)は、前々回の算出タイミングにて「現在の吸気圧取得値」として適用されるとともに、前回の算出タイミングにて「過去の吸気圧取得値」として適用されたものである。
このように、本実施形態のトルクモデルにおいては、今回の算出タイミングに先立つ過去の算出タイミングにて適用された過去の吸気圧取得値を少なくとも含むように、吸気圧取得値が適用される。これにより、制御遅れの補償が良好に行われる。
さらに、3行程先までの回転数予測値を算出するための状態方程式について、以下に説明する。
今回のスロットルアクチュエータ35への制御信号の入力によるスロットル開度THA(k)は、前回のスロットル開度THA(k−1)+変化量ΔTHA(k)として示すことができる。よって、上記の式(11)におけるu(k)=Gn(k)=mt/Ne(mtはスロットルバルブ通過流量)について、u(k)=u(k−1)+Δu(k)となる。
したがって、3行程先までの回転数予測値を算出するための状態方程式は、上記の式(11)で示された状態方程式に基づけば、下記の式(12)の通りとなる。なお、「^(ハット)」は、「推定値」を示すものとする。
すなわち、本実施形態におけるトルクモデルによる回転数予測値算出式(トルクモデル式)は、以下の式(13)のように示すことができる。なお、下記の式(13)は、上記の式(12)を単に書き改めたものである(この式(13)における各係数は下記の式(14)参照)。
本実施形態における制御のブロック線図を図4に示す。本実施形態における、トルクモデルを用いたコントローラは、ECU51にて実現されるものである。かかるコントローラにおいては、回転数予測値と回転数目標値との偏差を最小とするように、スロットル開度THAの目標値が算出される。かかるコントローラにおけるフィードバックゲインは、下記の式(15)のように示すことができる。なお、図4及び式(15)におけるHt(k)は、「目標回転数」であり、具体的には、現在から3行程先までの回転数目標値h(k)、h(k+1)、h(k+2)をベクトル表記したものである。また、式(15)におけるQ及びRは、適合パラメータである(下記の式(16)参照)。
以下、上記のフィードバックゲインΔU(k)の算出について説明する。エンジン10の停止過程において、スロットルバルブ34が開かれると、ドライバビリティが悪化する懸念がある。このため、スロットルバルブ34をできるだけ開かずに停止位置制御を行うことが望ましい。よって、本実施形態においては、回転数予測値と回転数目標値との偏差の2乗と、スロットル開度THAの変化量の2乗と、の和によって表される「評価関数」を、最小にするように、スロットル開度THAの変化量が決定される。すなわち、下記の式(16)に示される評価関数V(k)を最小にするように、フィードバックゲインΔU(k)が算出される(最適レギュレータ)。
具体的には、上記の関数Ξ(k)の定義式から、式(16)は、下記の式(17)のように変形することができる。
評価関数V(k)は、下に凸の「椀形」となる。このため、評価関数V(k)を最小化する条件は、下記の式(18)に示す通りとなる。この式(18)から、上記の式(15)が導出される。
<動作例>
以下、本実施形態の構成による動作の一例について、図5以降に示されているフローチャートを用いて説明する。なお、図示されたフローチャートにおいては、「ステップ」は「S」と略記されている。図5に示されている停止位置制御ルーチンは、上述の算出タイミングが到来した時点で起動される。
このルーチンが起動されると、まず、ステップ510にて、アイドルストップ信号がONであるか否か(すなわち所定のアイドルストップ条件の成立によるエンジン10の休止要求が発せられているか)が判定される。なお、「ISS」は、アイドルストップシステム(Idol Stop System)の略である。
アイドルストップ信号がOFFである場合(ステップ510=NO)、ステップ520以降の処理がすべてスキップされ、本ルーチンの処理が一旦終了する。よって、以下、アイドルストップ信号がONであるものとして(ステップ510=YES)、動作説明を続行する。
ステップ520においては、現在(すなわち本ルーチンの起動時点)における回転数取得値Ne(k)が所定値Ne0(例えば600rpm)未満であるか否かが判定される。回転数取得値Ne(k)が所定値Ne0未満ではない場合(ステップ520=NO)、現在の実際のエンジン回転数Neが、スロットル制御による停止位置制御を良好に行える程度までには低下していないこととなる。よって、この場合、ステップ530以降の処理がすべてスキップされ、本ルーチンの処理が一旦終了する。
回転数取得値Ne(k)が所定値Ne0未満である場合(ステップ520=YES)、処理がステップ530に進行する。ステップ530においては、前回の回転数取得値Ne(k−1)から今回の回転数取得値Ne(k)を減じた値が所定値ΔNe0(例えば50rpm)よりも大きいか否かが判定される。ステップ530における判定が「YES」である場合、現在の実際のエンジン回転数Neが、スロットル制御による停止位置制御を良好に行える程度にまで低下していることとなる。よって、この場合、処理がステップ540以降に進行する。一方、ステップ530における判定が「NO」である場合、ステップ540以降の処理がすべてスキップされ、本ルーチンの処理が一旦終了する。
ステップ540においては、3行程先までの回転数予測値が、上述のトルクモデルを用いて算出される。具体的には、図6のフローチャートを参照すると、まず、ステップ610にて、トルクモデルに、吸気圧取得値及び回転数取得値が代入(適用)される。これにより、現在から90°CA後(k)、180°CA後(k+1)、及び270°CA後(k+2)の回転数予測値が算出される(ステップ620)。
ステップ550においては、3行程先までの回転数目標値(すなわち目標軌道)が算出される。具体的には、図7のフローチャートを参照すると、まず、ステップ710にて、上述の目標回転角範囲でクランクシャフト14を停止させるための停止1TDC前の回転数目標値が設定(算出)される。この停止1TDC前の回転数目標値の設定は、今回の回転数取得値Ne(k)と、これをパラメータとする所定のマップと、に基づいて行われる。なお、このマップは、適合試験あるいは計算機シミュレーションによって予め得られたものであって、ECU51における上述のROMあるいは不揮発性メモリに予め格納されている。
上述のようにして、停止1TDC前の回転数目標値が設定されると、次に、線形補間により、現在から90°CA後(k)、180°CA後(k+1)、及び270°CA後(k+2)の回転数目標値が算出される(ステップ720)。
ステップ560においては、ステップ540にて得られたトルクモデルによる回転数予測値の軌跡と、ステップ550にて得られた回転数目標値の軌跡とが、適合する(可及的に一致する)ように、スロットルアクチュエータ35の制御が行われる。具体的には、図8のフローチャートを参照すると、まず、ステップ810にて、評価関数(上記の式(16)参照)に、回転数予測値及び回転数目標値が代入される。次に、ステップ820にて、評価関数を最小化するようなフィードバックゲイン(上記の式(15)参照)が算出される。そして、算出されたフィードバックゲインに基づいて、今回のスロットル開度THAの指令値が算出される(ステップ830)。
図9は、上述の動作例についての代表的なタイムチャートである。図中、現在の算出タイミングをt0とする。この算出タイミングt0にて、90°CA後(t1:k)、180°CA後(t2:k+1)、及び270°CA後(t3:k+2)の回転数目標値が算出される。この回転数目標値の軌道は、図中、一点鎖線で示されている。
なお、上述したように、Dレンジにてアイドルストップのためにフューエルカットの実行が開始されてから実際にエンジン10が停止するまでの所要時間は、概ね3行程程度である。すなわち、ステップ520及び530における判定閾値の設定により、多くの場合、時刻t2又はt3は、停止1TDC前近辺(具体的には停止1TDC前+90°CA)となる。よって、ステップ550における目標軌道の算出は、実質的に、停止1〜3TDC前近辺の回転数目標値を算出したこととなる。
また、算出タイミングt0にて、90°CA後(t1:k)、180°CA後(t2:k+1)、及び270°CA後(t3:k+2)の回転数予測値が算出される。この回転数予測値の軌道は、図中、破線で示されている。本実施形態の構成においては、上述のトルクモデルを用いることで、将来(図9に示されている典型例では停止1TDC前〜停止3TDC前近辺)の回転数予測値が、良好な精度で算出される。
そして、図9に示されているように、本実施形態の構成においては、停止1TDC前〜停止3TDC前近辺の回転数目標値の軌道と、停止1TDC前〜停止3TDC前近辺の回転数予測値の軌道とが、可及的に一致するように、スロットル制御が行われる。これにより、実際のクランクシャフト14の停止回転角が、良好に所定の目標回転角範囲に収まるようになる。
特に、Dレンジ下でのアイドルストップにおいては、Nレンジ下よりも、フューエルカットによるエンジン回転数Neの低下速度が高くなる。すなわち、Dレンジ下でのアイドルストップにおいては、Nレンジ下よりも、停止位置制御のためのトルク制御に充当可能な時間が短くなる。このため、オルタネータ38の応答性がそれほど高くない場合、Dレンジ下でのアイドルストップにおいては、オルタネータ38の負荷トルク制御によっては、停止位置制御が精度よく行なわれないことが想定される。
この点、本実施形態においては、スロットル開度による吸気管圧力の制御によって、停止位置制御が行われる。さらに、本実施形態においては、このスロットル制御に際して用いられるトルクモデルにおいては、過去の吸気圧取得値を反映させることで、遅れが良好に補償されている。したがって、本実施形態によれば、停止位置制御をよりいっそう精度よく行なうことが可能となる。
<変形例>
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、上述の実施形態の一部、及び、複数の変形例の全部又は一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
本発明は、上述した具体的な装置構成や動作(制御)態様に限定されない。例えば、本発明の適用対象は、エンジン10以外の動力源を有しない車両に限定されない。すなわち、例えば、上述の実施形態は、いわゆるハイブリッド車両におけるエンジン10の休止に対しても、良好に適用可能である。
本発明がアイドルストップにおける停止位置制御に適用される場合、この停止位置制御にあたっては、スロットルバルブ34の開度制御に加えて、オルタネータ38の負荷トルク制御も行われてもよい。以下、スロットルバルブ34の開度制御とオルタネータ38の負荷トルク制御との協調制御の例について説明する。
図10は、本変形例による停止位置制御の一例に対応するフローチャートである。このルーチンが起動されると、まず、ステップ1010にて、アイドルストップ信号がONであるか否かが判定される。このステップ1010の処理は、上述のステップ510(図5参照)と同様である。アイドルストップ信号がONである場合(ステップ1010=YES)、処理がステップ1020以降に進行する。
ステップ1020においては、オルタネータISS制御が行われる。具体的には、図11を参照すると、まず、ステップ1110にて、回転数予測値の算出が行われる。このステップ1110の処理は、上述のステップ540(図5参照)すなわち図6のルーチンの処理と同様である。次に、ステップ1120にて、目標軌道が算出される。このステップ1120の処理は、上述のステップ550(図5参照)すなわち図7のルーチンの処理と同様である。続いて、ステップ1130にて、回転数予測値の軌道が目標軌道と適合するように、オルタネータ38の負荷トルクが算出される。
ステップ1030においては、現在における回転数取得値Ne(k)が所定値Ne0未満であるか否かが判定される。このステップ1030の処理は、上述のステップ520(図5参照)と同様である。回転数取得値Ne(k)が所定値Ne0未満ではない場合(ステップ1030=NO)、処理がステップ1010に戻る。一方、回転数取得値Ne(k)が所定値Ne0未満である場合(ステップ1030=YES)、処理がステップ1040に進行する。
ステップ1040においては、スロットルISS制御が行われる。具体的には、図12を参照すると、まず、ステップ1210にて、回転数予測値の算出が行われる。このステップ1210の処理は、上述のステップ540(図5参照)すなわち図6のルーチンの処理を若干変容したものである。
このステップ1210の処理にあたっては、吸気圧取得値及び回転数取得値に加えて、オルタネータ負荷トルクTaltが、トルクモデルに代入(適用)される。この場合の、トルクモデル式及び状態方程式は、下記の式(19)及び(20)に示した通りとなる。なお、下記の式(20)において、q=Taltである。
次に、ステップ1220にて、目標軌道が算出される。このステップ1220の処理は、上述のステップ550(図5参照)すなわち図7のルーチンの処理と同様である。続いて、ステップ1230にて、回転数予測値の軌道が目標軌道と適合するように、スロットルアクチュエータ35の制御が行われる。このステップ1230におけるスロットルアクチュエータ35の制御は、上述のステップ560(図5参照)すなわち図8のルーチンの処理と同様である。
図13は、かかる変形例の動作例についての代表的なタイムチャートである。この図13のタイムチャートは、図9のタイムチャートを、本変形例の内容に対応するように一部変容したものである。
図13に示されているように、算出タイミングt0’において、回転数取得値が高い。この場合、まず、オルタネータ38の負荷トルク制御により、エンジン回転数Neが所定程度まで落とされる。この算出タイミングt0’にて算出される、将来の時刻t1’、t2’及びt3’における回転数予測値は、上述のように、オルタネータ負荷トルクTaltが考慮されたものである。かかるオルタネータ負荷トルクTaltによる制御は、オルタネータ38に代えてスロットルバルブ34を用いた場合には、図中二点鎖線で示されたようなスロットル制御に相当するものである。
その後、時刻t1’にて、将来の時刻t2’、t3’及びt4’における回転数予測値及び回転数目標値に基づく制御が行われる。このとき、回転数取得値は、オルタネータ38による有効な負荷トルク制御が可能な回転数(すなわち発電限界回転数)よりも低い。このため、時刻t1’においては、オルタネータ38を用いずにスロットルバルブ34を用いた停止位置制御が行われる。
本発明は、アイドルストップにおける停止位置制御に限定されない。すなわち、例えば、本発明は、アイドル回転数制御(ISC)に対しても、好適に適用され得る。以下、アイドル回転数制御への適用例について、図14のフローチャートを用いて説明する。
アイドル回転数制御が開始されると、まず、ステップ1410にて、現在のエンジン回転数Neが所定回転数Ne1よりも高いか否かが判定される。この所定回転数Ne1は、目標アイドル回転数に所定値ΔNe1を加えたものである。現在のエンジン回転数Neが所定回転数Ne1よりも高い場合には(ステップ1410=YES)、処理がステップ1420以降に進行する。
ステップ1420においては、回転数予測値の算出が行われる。このステップ1420の処理は、上述のステップ540(図5参照)すなわち図6のルーチンの処理と同様である。次に、ステップ1430において、評価関数に、回転数予測値及び回転数目標値が代入される。このステップ1430の処理は、上述のステップ810(図8参照)の処理と同様である。但し、本変形例においては、目標軌道の算出にあたって、「停止1TDC前の回転数目標値」に代えて、「目標アイドル回転数」が設定される。
ステップ1440においては、評価関数を最小化するようなフィードバックゲインが算出される。このステップ1440の処理は、上述のステップ820(図8参照)のルーチンの処理と同様である。そして、算出されたフィードバックゲインに基づいて、今回のスロットル開度THAの指令値が算出される(ステップ1450)。
図15は、本変形例の動作の一例を示すタイムチャートである。図15に示されているように、現在のエンジン回転数Neが所定回転数Ne1よりも高くなった時刻t0”にて、ISCフィードバックが開始する。このとき、将来の時刻t1”、t2”及びt3”における回転数予測値及び回転数目標値が算出され、これらに基づいてフィードバック制御が行われる。
ところで、回転数予測値の算出にあたっては、上述の通り、フリクショントルクの影響がある。このフリクショントルクは、一般的に、潤滑油温Toあるいは冷却水温Tw(本発明の「クランクシャフトのフリクショントルクに関連する温度」に相当する)と相関がある。
そこで、上述のトルクモデルにおける係数(例えば係数行列Aにおける係数「a」等)は、潤滑油温Toあるいは冷却水温Twに応じて補正されてもよい。具体的には、かかる係数は、潤滑油温Toあるいは冷却水温Twと、これをパラメータとするマップと、に基づいて設定されてもよい。このように、回転数予測値の算出にあたって、潤滑油温Toあるいは冷却水温Twを反映させることで、制御のロバスト性が向上する。
また、回転数予測値の算出にあたっては、エンジン10の個体差を吸収するために、いわゆる「カルマンフィルタ」が用いられてもよい(カルマンフィルタについては本願の出願時点ですでに周知であるため、その詳細な説明については省略する。)。これにより、制御のロバスト性が向上する。
図16のフローチャートは、図6のフローチャートを変容したものである。この変形例においては、上述の温度補正とカルマンフィルタとが併用されている。もっとも、温度補正とカルマンフィルタとのうちの一方のみが用いられもよい。
本変形例においては、まず、ステップ1610にて、潤滑油温Toが取得される。次に、ステップ1620にて、トルクモデルの係数が、潤滑油温Toを用いて補正される。その後、温度補正後のトルクモデルに、吸気圧取得値及び回転数取得値が代入(適用)される。これにより、現在から90°CA後(k)、180°CA後(k+1)、及び270°CA後(k+2)の回転数予測値が、カルマンフィルタを用いて算出される(ステップ1640)。
上述の各具体例においては、現在から3行程先までの3つの回転数予測値のすべてを用いたフィードバック制御が行われていた。このため、いわゆる「3入力−3出力」の制御となることから、上述の各具体例においては、評価関数を用いた、いわゆる「最適レギュレータ」による制御が行われていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、現在から3行程先の回転数予測値のみを用いたフィードバック制御が行われてもよい。この場合、いわゆる「1入力−1出力」の制御となることから、フィードバックゲインは、いわゆるPID制御等を用いて簡易に算出することが可能となる。
例えば、吸気圧センサ54の出力に代えて、あるいはこれとともに、エアフローメータ52の出力を用いることも可能である。また、停止位置制御にあたって、スロットルバルブ34の開度制御に代えて、あるいはこれとともに、バルブ駆動機構20等による吸気量制御が行われてもよい。これらの場合、計算モデルの式は、上記のものから適宜変更される。
気筒12の数が変化しても、算出タイミング及び係数値が若干変更されるだけで、基本的な制御は同様である。例えば、3気筒の場合、周期は240°CAとなる。また、算出タイミングは、吸気上死点から30°CA後となる。また、6気筒の場合、周期は240°CAとなる。また、算出タイミングは、吸気上死点から150°CA後となる。
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構成及びその均等物の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構成をも含む。