JP4563295B2 - 圧延コイル搬送台車 - Google Patents

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Description

本発明は、圧延コイルを搬送する圧延コイル搬送台車に関するものである。
製鉄所における圧延コイル置場等の貯蔵ヤードの入口や出口には、圧延コイルを搬送するための圧延コイル搬送台車が設けられている(例えば特許文献1)。
特開平10−287233号公報
圧延コイル搬送台車は、数mから数十mといった比較的短い区間でレール上を往復動する。効率向上のためにコイル搬送時間を短縮するには加速度および減速度を上げることが必要となる。このため、駆動モータの出力を上げるとともに、加速時および減速時に走行車輪が滑らずに駆動力を伝達できるように全輪を駆動することとしている。
一方、何らかの事情によってコイル搬送台車を緊急に停止するために非常停止用のブレーキが設けられている。上述のように駆動モータの出力上昇に伴い、非常停止時に用いられるブレーキの制動力も増大する。一般に、非常停止時に用いられるブレーキは、一定の制動力が加えられる機械的なブレーキとなっており、ブレーキトルク(制動力)を制御できないものとなっている。このため、重量が軽い圧延コイルを搬送しているときに非常停止が行われると、走行車輪がロックして車輪とレールとの間で滑りが生じる。
圧延コイルの軸線が走行方向に向けられており、圧延コイルが載置されるスキッドとの間の摩擦力によって圧延コイルの走行方向の位置決めがなされている場合には、上述のように走行車輪がロックすると、圧延コイルがコイル搬送台車から滑り落ちてしまうという問題がある。なぜなら、走行車輪とレールとの摩擦係数と、圧延コイルとスキッドとの摩擦係数は、それぞれが金属なのでほぼ同等であることから、走行車輪がロックしてレールに対して滑り出す減速度が加わると、この減速度によって圧延コイルもスキッドに対して滑ってしまうからである。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、制動時に走行車輪がロックした場合であっても圧延コイルが滑り落ちることのない圧延コイル搬送台車を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の圧延コイル搬送台車は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる圧延コイル搬送台車は、圧延板が円筒状に巻回された圧延コイルが載置される金属製の載置部と、該載置部を支持する台車本体と、該台車本体に対して回転自在に取り付けられるとともに金属製の軌道上を走行する金属製の複数の走行車輪と、これら走行車輪の全てを駆動するように設けられた駆動モータと、前記走行車輪に対して一定の制動力を与える制動手段と、を備え、前記圧延コイルは、その軸線が走行方向に向けて、該軸線に直交する方向の回転が規制されるように載置され、前記載置部との摩擦力によって前記走行方向の位置決めがされた、前記圧延コイルを搬送する圧延コイル搬送台車において、前記走行車輪のいずれかは、前記制動手段による制動時に、制動力が負荷されないことを特徴とする。
コイル搬送台車の加速度および減速度を増加させるために、駆動モータによって全ての走行車輪に対して駆動力が与えられる。非常停止時等の制動時には、車輪に設けた制動手段によって制動力が与えられる。制動手段は走行車輪に対して一定の制動力を与えるようになっているので、圧延コイルの重量が小さい場合には、過剰な制動力が負荷されて走行車輪がロックして軌道に対して滑ってしまう。この場合、走行車輪と軌道との摩擦係数と、圧延コイルと載置部との摩擦係数とは、それぞれが金属なのでほぼ同等であることから、走行車輪がロックして軌道に対して滑り出す減速度が加わると、この減速度によって圧延コイルも載置部に対して滑ってしまう。
本発明では、走行車輪のいずれかは制動力が負荷されないこととして、制動力が負荷されない走行車輪はロックさせずに回転させることとした。これにより、他の走行車輪がロックして軌道に対して滑ったとしても、全ての走行車輪がロックした場合に比べて摩擦力が小さくなり、結果としてコイル搬送台車に加わる減速度が小さくなる。したがって、載置部に対して圧延コイルが滑り出す減速度を超えない減速度がコイル搬送台車にかかることとなり、圧延コイルが載置部に対して滑り出すことがない。
非常停止時等の制動時に走行車輪がロックしても、制動力が負荷されない走行車輪が転がることにより走行車輪と軌道との間の摩擦力が減じられるので、圧延コイル搬送台車に大きな減速度が加わることがない。したがって、圧延コイルが圧延コイル搬送台車から滑り落ちることがない。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、例えば製鉄所の熱延ラインに設置される圧延コイル搬送台車が示されている。
圧延コイル搬送台車(以下、単に「台車」という。)1は、圧延板が円筒状に巻回された圧延コイルCを上部に載置した状態でレール(軌道)10上を走行する。圧延コイルCの重量は最大で約40トン、台車1の重さは約30トンとされている。
台車1は、数mから数十mといった比較的短い区間でレール上を往復動する。台車1の最高速度は、例えば140m/minとされる。
台車1は台車本体3を備え、この台車本体3の上部には、スキッド(載置部)5が固定されている。
スキッド5は、上面に、金属製の4つの受け面5aを備えている。これら受け面5aは、台車1の走行方向に谷部が形成されるように、台車1の中心軸線側が下方に位置するように傾斜して配置されている。このように走行方向に谷部を形成することにより、圧延コイルCは、その軸線を台車1の走行方向に向けた状態で載置されるとともに、当該軸線に直交する方向の回転が規制されるようになっている。圧延コイルCは、スキッド5上に載置された状態とされ、走行方向の位置決めは圧延コイルCとスキッド5との間の摩擦力によってなされている。すなわち、圧延コイルCはスキッド5に対してボルト・ナット等の固着手段によって固着されているわけではない。
台車本体3の側方下部には、4つの走行車輪7が回転自在に取り付けられている。
走行車輪7は、金属製とされ、図2に示されているように、車軸13a,bによって左右の走行車輪7が連結されている。左右一対の走行車輪7は、前後の2つの車軸13a,bに設けた駆動モータ15によって駆動され、これにより全輪である4輪が駆動される。台車1は、通常走行時には、駆動モータ15によって加速および減速が行われる。
非常停止用のブレーキ(制動手段)17が、一方の車軸13aに設けられている。ただし、他方の車軸13bにはブレーキは設けられていない。したがって、4つの内の2つの走行車輪7のみに制動力が加えられるようになっている。ブレーキ17は、非常停止信号をトリガとして動作し、ブレーキパッドがブレーキシューに対してバネ力によって一定の力で押圧されることにより一定の制動力が加えられる機械式のブレーキである。つまり、制動力が速度や圧延コイル荷重に応じて調整されない形式のブレーキとされている。
ブレーキ17の制動力は、搬送コイルCの重量にかかわりなく、一定速度以上であれば、制動力が負荷された走行車輪7は必ずロックするように選定されている。
上記構成の台車1は、圧延コイルCを載置した状態でレール10上を走行する。台車1の全ての走行車輪7には駆動モータ15の駆動力が伝達されるようになっているので、大きな加速度および減速度が加えられるようになっている。これにより、台車1の動作が機敏になり搬送効率の向上に寄与している。
台車1に対して非常停止信号が入力された場合には、車軸13aに設けたブレーキ17が動作して車軸13aに連結された走行車輪7に対して制動力を与える。すると、これら2つの走行車輪7はロックし、レール10に対して滑り出し、所定距離走行した後に停止する。他方の車軸13bに連結された走行車輪7すなわち制動力が負荷されない走行車輪7は非常停止時による制動中であってもレール10に対して転がり続け、ロックすることはない。
このように、2つの走行車輪7のみがロックし、他の2つの走行車輪7はロックしないようになっているので、走行車輪7とレール10との摩擦力が小さくなり台車1に大きな減速度が加わることがなく、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出して台車1から落下することがない。
このような、圧延コイルCがスキッド5に対して滑らない理由について、図3を用いて説明する。
同図において、横軸はスキッド5上に載置される圧延コイルCの質量M、縦軸は非常停止時にブレーキ17が作動してから台車1が停止するまでの制動距離Lを示す。
直線Aは、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出す減速度に相当する制動距離L1を示す。
直線Bは、本実施形態に対する比較例であって、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出さないような制動力が負荷されるように定めた制動距離を示す。
直線Cは、従来のように全輪に対して制動力が負荷される場合であって、圧延コイル質量Mが最大重量であっても設計上必要な制動距離が得られるような制動力が定められた場合の制動距離を示す。
直線Dは、本実施形態による制動距離を示す。
図3において、圧延コイルCがスキッド5上に載置されていない時の制動距離すなわち質量mの台車1のみの場合の制動距離がy切片となる。
直線Aや直線Dのように、走行車輪7がロックした場合の制動距離Lは、以下の理由によりコイル質量Mによらず制動距離が一定となる。
台車1の質量をm、圧延コイルCの質量をM、走行速度をv、摩擦係数をμ、重力加速度をg、制動距離をLとしてエネルギー保存の式をたてると、次式となる。
1/2×(m+M)v=μ(m+M)gL ・・・(1)
上式より、制動距離Lは、次式となる。
L=v/(2μg) ・・・(2)
このように、制動距離は圧延コイルCの重量に依存しない。
圧延コイルCとスキッド5との摩擦係数μを式(2)に代入すると、圧延コイルCの制動距離L1が導かれる。
L1=v/(2μg) ・・・(3)
この制動距離L1以下の制動距離となるように台車1が減速された場合、すなわち制動距離L1に相当する減速度以上の減速度が台車1に加えられた場合(減速度の大きさは制動距離に反比例する)、圧延コイルCとスキッド5との摩擦力を圧延コイルCの慣性力が上回り圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出す。これを図3に示すと、制動距離L1一定とした直線A以下の領域となる制動距離となるような減速度を台車1に加えると、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出す。
このように圧延コイルCがスキッド5に対して滑ることを回避するためには、圧延コイルCがスキッド5上に載置されていない場合(すなわち台車1上の荷重が最も軽い場合)であっても、制動距離がL1よりも長くなるように、ブレーキ17による制動力を決定せざるをえない。これを示す直線が図3における直線Bである。この直線Bのように制動力を定めると、圧延コイルCはスキッド5に対して滑ることはないが、コイル質量Mが最大質量M1になったときの制動距離がL3となり、大きくなりすぎてしまう。
実際には、レール10の長さ等の関係から必要な制動距離が要請され、これを満たすように設計される。すなわち、圧延コイル重量が最大重量M1のときに必要な制動距離を達成できるように制動力が定められる。例えば、図3における直線Cのような制動距離が定められる。この場合、従来のように全走行車輪に制動力が加えられるようになっていると、コイル質量がM2よりも小さい場合には全走行車輪7がロックして滑り出してしまう。なぜなら、走行車輪7及びレール10は金属製であるためこれらの間の摩擦係数も圧延コイルCとスキッド5との摩擦係数と同等のμと考えられ、コイル質量がM2よりも小さい場合には直線Cが直線Aを下回っており、摩擦係数をμとした場合の制動距離L1よりも短い制動距離、すなわち制動距離L1に相当する減速度以上の減速度となるように制動力が加えられることになるからである。
全走行車輪7がレール10に対して滑り出す減速度が加わるということは、摩擦係数が同等と考えられることから、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出す減速度が加わることをも意味している。したがって、圧延コイルCの重量が0からM2の場合には圧延コイルCが台車1から滑り落ちるおそれがある。
本実施形態による台車1では、片方の車軸13aのみにブレーキ17を設け、他方の車軸13bにはブレーキ17を設けない構成としたので、台車1の制動距離は直線Dのようになる。つまり、片方の車軸13aのブレーキ17によって4輪の内の2輪の走行車輪7がロックし、これら2輪の走行車輪7のみがレール10に対して滑り出す。摩擦力による制動力は滑り出した2輪のみにしか働かないので、これら2輪に加わる重量は全重量の半分であることから、式(1)は次のように書き換えられる。
1/2×(m+M)v=μ(m+M)/2×gL ・・・(4)
したがって、制動距離L2は次式となる。
L2=v/(μg) ・・・(5)
式(2)と比較すれば分かるように、制動距離は4輪全ての走行車輪7をロックさせる場合の2倍の制動距離となる(L2=2×L1)。これは、制動時の減速度が1/2になることを意味する。したがって、図3の直線Dを見れば分かるように、直線Dは、コイル質量がどのような場合であっても直線Aよりも制動距離が長くなっており、これは、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出す減速度が加わらないことを意味している。
なお、制動距離は、圧延コイル質量が小さいときでも直線AやCに比べて長くなってしまうが、最大質量M1のときであってもL2の制動距離を確保できるという利点がある。
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
2つの走行車輪7には制動力を負荷しないこととして、ロックさせずに回転させることとしたので、他の2つの走行車輪7がロックしてレール10に対して滑ったとしても、全ての走行車輪7がロックした場合に比べて摩擦力が小さくなり、結果として減速度が小さくなる。したがって、スキッド5に対して圧延コイルCが滑り出す減速度を超えない減速度が台車1にかかることとなり、圧延コイルCがスキッド5に対して滑り出すことがない。よって、ブレーキ17による非常停止が行われても、圧延コイルCが台車1から滑り落ちることがない。
なお、本実施形態では2つの走行車輪7のみに制動力を与えることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、いずれかの走行車輪に制動力を負荷させないこととして台車1の減速度を低下させることとすれば良く、例えば1つの走行車輪または3つの走行車輪のみに制動力を負荷する構成としても良い。要するに、全輪に制動力を負荷しない構成とすればよい。
また、走行車輪は4つに限定されるものではなく、例えば6つ或いは8つとしても良い。
本発明の圧延コイル搬送台車を示した斜視図である。 図1の圧延コイル搬送台車の駆動モータ及びブレーキの配置を示した模式図である。 本発明の圧延搬送台車によって圧延コイルが滑らない理由を示したグラフである。
符号の説明
1 圧延コイル搬送台車
3 台車本体
5 スキッド(載置部)
7 走行車輪
10 レール(軌道)
15 駆動モータ
17 ブレーキ
C 圧延コイル

Claims (1)

  1. 圧延板が円筒状に巻回された圧延コイルが載置される金属製の載置部と、該載置部を支持する台車本体と、該台車本体に対して回転自在に取り付けられるとともに金属製の軌道上を走行する金属製の複数の走行車輪と、これら走行車輪の全てを駆動するように設けられた駆動モータと、前記走行車輪に対して一定の制動力を与える制動手段と、を備え、前記圧延コイルは、その軸線が走行方向に向けて、該軸線に直交する方向の回転が規制されるように載置され、前記載置部との摩擦力によって前記走行方向の位置決めがされた、前記圧延コイルを搬送する圧延コイル搬送台車において、
    前記走行車輪のいずれかは、前記制動手段による制動時に、制動力が負荷されないことを特徴とする圧延コイル搬送台車。
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