JP4552371B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セパレータと電極層との間に集電体を挟んだ構造の固体電解質型燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物イオン伝導体からなる固体電解質層を空気極層(酸化剤極層)と燃料極層との間に挟んだ積層構造を持つ固体電解質型燃料電池は、第三世代の発電用燃料電池として開発が進んでいる。固体電解質型燃料電池では、空気極側に酸素(空気)が、燃料極側には燃料ガス(H2 、CO等)が供給される。空気極と燃料極は、ガスが固体電解質との界面に到達することができるように、いずれも多孔質とされている。
【0003】
空気極側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って固体電解質層との界面近傍に到達し、この部分で、空気極から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極の方向に向かって固体電解質層内を拡散移動する。燃料極との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で、燃料ガスと反応して反応生成物(H2 O、CO2 等)を生じ、燃料極に電子を放出する。
【0004】
燃料に水素を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2 O2 + 2e- → O2-
燃料極: H2 + O2- → H2 O+2e-
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2 O
【0005】
固体電解質層は、酸化物イオンの移動媒体であると同時に、燃料ガスと空気を直接接触させないための隔壁としても機能するので、ガス不透過性の緻密な構造となっている。この固体電解質層は、酸化物イオン伝導性が高く、空気極側の酸化性雰囲気から燃料極側の還元性雰囲気までの条件下で化学的に安定で、熱衝撃に強い材料から構成する必要があり、かかる要件を満たす材料として、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)が一般的に使用されている。
【0006】
一方、電極である空気極(カソード)層と燃料極(アノード)層はいずれも電子伝導性の高い材料から構成する必要がある。空気極材料は、700℃前後の高温の酸化性雰囲気中で化学的に安定でなければならないため、金属は不適当であり、電子伝導性を持つペロブスカイト型酸化物材料、具体的にはLaMnO3 もしくはLaCoO3 、または、これらのLaの一部をSr、Ca等に置換した固溶体が一般に使用されている。また、燃料極材料は、Ni、Coなどの金属、或いはNi−YSZ、Co−YSZなどのサーメットが一般的である。
【0007】
固体酸化物型燃料電池には、1000℃前後の高温で作動させる高温作動型のものと、700℃前後の低温で作動させる低温作動型のものとがある。低温作動型の固体酸化物型燃料電池は、例えば電解質であるイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)の厚さを10μm程度まで薄膜化して、電解質の抵抗を低くすることにより、低温でも燃料電池として発電するように改良された発電セルを使用する。
【0008】
高温の固体酸化物型燃料電池では、セパレータには、例えばランタンクロマイト(LaCrO3 )等の電子伝導性を有するセラミックスが用いられるが、低温作動型の固体酸化物燃料電池では、ステンレス等の金属材料を使用することができる。
【0009】
また、固体酸化物型燃料電池の構造には、円筒型、モノリス型、及び平板積層型の3種類が提案されている。それらの構造のうち、低温作動型の固体酸化物型燃料電池には、金属のセパレータを使用できることから、金属のセパレータに形状付与し易い平板積層型の構造が適している。
【0010】
平板積層型の固体電解質型燃料電池のスタックは、発電セル、集電体、セパレータを交互に積層した構造を持つ。一対のセパレータが発電セルを両面から挟んで、一方は空気極集電体を介して空気極と、他方は燃料極集電体を介して燃料極と接している。燃料極集電体には、Ni基合金等のスポンジ状の多孔質体を使用することができ、空気極集電体には、Ag基合金等の同じくスポンジ状の多孔質体を使用することができる。スポンジ状多孔質体は、集電機能、ガス透過機能、均一ガス拡散機能、クッション機能、熱膨脹差吸収機能等を兼ね備えるので、多機能の集電体材料として適している。また、空気極集電体においては、補強のため、前記多孔質体にAg基合金やNi-Agメッキ等によるエキスパンドメタルを併用する場合もある。
セパレータは、発電セル間を電気接続すると共に、発電セルに対してガスを供給する機能を有するもので、燃料ガスをセパレータ外周面から導入してセパレータの燃料極層に対向する面から吐出させる燃料通路と、酸化剤ガスをセパレータ外周面から導入してセパレータの酸化剤極層に対向する面から吐出させる酸化剤通路とをそれぞれ有している。
そして、従来では、この積層体に圧力をかけて密着した構造のものを、電池スタックとして使用している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来よりセパレータの全面に酸化防止のための銀メッキが施されていた。燃料側は還元雰囲気であるため銀メッキは不要であるが、酸化剤側(空気側)は高温酸化雰囲気にあることから、耐酸化性を向上するために銀メッキは必須であり、これが、コストアップの一要因となっていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたもので、セパレータの銀メッキ処理を無くすことによりコストダウンを図った固体電解質型燃料電池を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、固体電解質層の一方の面に燃料極層を配置するとともに他方の面に酸化剤極層を配置し、酸化剤極層側に多孔質クッション材よりなる酸化剤極集電体を配置し、酸化剤極集電体の外側にセパレータを配置した固体電解質型燃料電池において、前記酸化剤極集電体がAgまたはAg合金またはAgメッキされた金属でなり、且つ、前記酸化剤極集電体と前記セパレータとが燃料電池の運転雰囲気において非酸化性を有する金属にて複数箇所で接合され、高温酸化雰囲気における電気的導通を確保することを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1において、前記酸化剤極集電体がスポンジ状の多孔質層とメッシュ状の多孔質層の2層からなり、前記メッシュ状の多孔質層が前記セパレータに複数箇所接合され、酸化剤極集電体の機械的強度を向上したことを特徴としている。
【0015】
また、請求項3に記載の本発明は、固体電解質層の一方の面に燃料極層を配置するとともに他方の面に酸化剤極層を配置し、燃料極層側に多孔質クッション材よりなる燃料極集電体を配置し、燃料極集電体の外側にセパレータを配置した固体電解質型燃料電池において、前記燃料極集電体と前記セパレータとが複数箇所接合され、還元雰囲気ではあるが、高温、高多湿における電気的導通を確保することを特徴としている。
【0016】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項3において、前記燃料極集電体がスポンジ状の多孔質層とメッシュ状の多孔質層の2層からなり、メッシュ状の多孔質層が金属より形成されるセパレータに複数箇所接合され、燃料極集電体の機械的強度を向上したことを特徴としている。
【0017】
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1から請求項4に記載の固体電解質型燃料電池において、前記接合がスポット溶接にて成されていることを特徴としている。
【0018】
酸化剤極集電体には銀メッキ(Ni下地メッキ)や銀発泡体等が使用されている。この集電体とセパレータを非酸化性の金属を用いて接合すると、従来のようにセパレータ表面に銀メッキ等の酸化防止処理を施さなくともセパレータの酸化が防止できる。これにより、セパレータのコストダウンが図れる。尚、スポット溶接はセパレータ全面に亘って均一に満遍なく行うことが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、図1、図2に基づいて本実施形態に係る固体電解質型燃料電池の構成を説明する。ここで、図1は固体電解質型燃料電池の分解断面を示し、図2は同要部の分解斜視を示している。
図1中、符号1は燃料電池スタックを示し、固体電解質層2の両面に燃料極層3と空気極層(酸化剤極層)4を配した発電セル5と、燃料極層3の外側の燃料極集電体6と、空気極層4の外側の空気極集電体(酸化剤極集電体)7と、各集電体6、7の外側のセパレータ8を順番に積層した構造を有する。
【0020】
前記固体電解質層2はイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、前記燃料極層3はNi、Co等の金属あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、前記空気極層4はLaMnO3 、LaCoO3 等で構成され、前記燃料極集電体6はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、前記空気極集電体7はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、前記セパレータ8はステンレス等で構成されている。
【0021】
ここで、集電体6、7を構成する多孔質金属板は、次の工程を経ることで作製したものである。工程の順番は、スラリー調製工程→成形工程→発泡工程→乾燥工程→脱脂工程→焼結工程である。
まず、スラリー調製工程において、金属粉末、有機溶剤(n−ヘキサン等)、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、水溶性樹脂結合剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、可塑剤(グリセリン等)、水、を混ぜて発泡スラリーを調製する。これを成形工程において、ドクターブレード法によりキャリヤシート上に薄板状に成形してグリーンシートを得る。次に発泡工程において、このグリーンシートを高温高湿環境下で、揮発性有機溶剤の蒸気圧及び界面活性剤の起泡性を利用してスポンジ状に発泡させた後、乾燥工程、脱脂工程、焼成工程を経て多孔質金属板を得る。
この場合、発泡工程において、グリーンシートの内部に発生した気泡は、全方向からほぼ等価な圧力を受けて略球状の形状で成長する。気泡が内部から拡散して大気との界面に近づくと、気泡は、気泡と大気の間のスラリーの薄い部分へと成長していき、やがて気泡は破れて、気泡内部の気体は、できた小孔から大気中へ拡散していく。よって、表面に開口した連続気孔を有する多孔質金属板が得られる。集電体6、7はこのようにして作製した3次元骨格構造を有する多孔質金属板を円形にカットしたものである。
【0022】
一方、セパレータ8は、図1、図2に示すように、発電セル5間を電気接続すると共に、発電セル5に対してガスを供給する機能を有するもので、燃料ガスをセパレータ8の外周面から導入してセパレータ8の燃料極集電体6に対向する面のほぼ中央部から吐出させる燃料通路11と、酸化剤ガスをセパレータ8の外周面から導入してセパレータ8の空気極集電体7に対向する面から吐出させる酸化剤通路12とをそれぞれ有している。ただし、両端のセパレータ8(8A、8B)は、いずれかの通路11、12のみを有する。
【0023】
また 燃料電池スタック1の側方には、図1に示すように、各セパレータ8の燃料通路11に接続管13を通して燃料ガスを供給する燃料用マニホールド15と、各セパレータ8の酸化剤通路12に接続管14を通して酸化剤ガスを供給する酸化剤用マニホールド16とが、発電セル5の積層方向に延在して設けられている。
【0024】
ここで、従来、集電体6、7とセパレータ8は圧力によって密着させた積層構造とされていたが、本実施形態の燃料電池スタック11では、各々を燃料電池の運転雰囲気において非酸化性を有する金属(例えば、銀)によるスポット溶接にて接合される構造となっている。このスポット溶接は、集電体6、7の上面から下側のセパレータ8に直接行われる。
【0025】
図3は集電体面上より見たスポット溶接20の状態を示し、円形状の集電体全面に亘って均一に満遍なく溶接されており、例えば、直径150mm程度(面積約177cm2 )のセパレータでは100カ所程度の溶接20が行われている。
また、既述したように、集電体6、7はスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成されていて強度的に劣るため、特に空気極集電体7にあっては、補強用としてAg基合金やNi-Agメッキ等によるエキスパンドメタルを併用した集電体が用いられる場合が多い。
【0026】
図4は、セパレータ8とこのエキスパンドメタルを用いた空気極集電体7の積層構造を示しており、図中、符号7aは多孔質焼結金属板、7bはエキスパンドメタルである。係る構造の空気極集電体7では、先ず、エキスパンドメタル7bとセパレータ8をスポット溶接し、次いで、その表面に多孔質結晶金属板7aを圧力により密着させて積層体を構成する。この場合も前記同様に、セパレータ全面に亘って均一に満遍なくスポット溶接されることが望ましい。
【0027】
また、集電体としては、前記発泡金属の他、銀メッシュ、銀メッキしたメッシュ、フェルト等が用いられる。
【0028】
このように、集電体6、7とセパレータ8を銀等の非酸化性金属を用いて接合すると接合間においても酸化現象が防止されるため、セパレータの全面に銀メッキ等の酸化防止処理を施さなくとも性能を低下させることなく発電できるようになる。これにより、従来のような高価な銀メッキ処理を省くことができ、よって、セパレータ8のコストダウンが図れる。
【0029】
以上、本実施形態では、発電セルの電解質にイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)を用いる固体酸化物型燃料電池を示したが、本発明は、その他の固体酸化物型燃料電池、例えばセリア系電解質、ガレート型電解質を用いる固体酸化物型燃料電池にも適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、集電体とセパレータを非酸化性の金属にてスポット溶接等により接合したので、従来のようにセパレータの表面に銀メッキ等の酸化防止処理を施さなくともセパレータの酸化現象が防止されるようになり、性能を低下させることなく発電できるようになる。これにより、高価な銀メッキ処理が不要となり、セパレータのコストダウンが図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る固体電解質型燃料電池の分解断面図。
【図2】同、要部の分解斜視図。
【図3】集電体とセパレータのスポット溶接の状態を示す平面図。
【図4】セパレータと空気極集電体の密着積層構造を示す断面図。
【符号の説明】
2 固体電解質層
3 燃料極層
4 酸化剤極層(空気極層)
6 燃料極集電体
7 酸化剤極集電体(空気極集電体)
8 セパレータ
20 スポット溶接
Claims (5)
- 固体電解質層の一方の面に燃料極層を配置するとともに他方の面に酸化剤極層を配置し、当該酸化剤極層と金属より形成されるセパレータとの間に多孔質クッション材よりなる酸化剤極集電体を配置し、これらを密着した固体電解質型燃料電池において、
前記酸化剤極集電体が、AgまたはAg合金またはAgメッキされた金属でなり、
前記酸化剤極集電体とセパレータが燃料電池の運転雰囲気において非酸化性を有する金属にて複数箇所で接合されており、且つ前記セパレータの表面に酸化防止処理が施されていないことを特徴とする固体電解質型燃料電池。 - 前記多孔質クッション材よりなる酸化剤極集電体は、スポンジ状の多孔質層とメッシュ状の多孔質層の2層からなり、前記メッシュ状の多孔質層が前記セパレータに複数箇所接合されたことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 固体電解質層の一方の面に燃料極層を配置するとともに他方の面に酸化剤極層を配置し、燃料極層と金属より形成されるセパレータとの間に多孔質クッション材よりなる燃料極集電体を配置し、これらを密着した固体電解質型燃料電池において、
前記燃料極集電体とセパレータが燃料電池の運転雰囲気において非酸化性を有する金属にて複数箇所で接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の固体電解質型燃料電池。 - 前記多孔質クッション材よりなる燃料極集電体はスポンジ状の多孔質層とメッシュ状の多孔質層の2層からなり、メッシュ状の多孔質層が、金属より形成されるセパレータに複数箇所接合されたことを特徴とする請求項3に記載の固体電解質型燃料電池。
- 前記接合がスポット溶接にて成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の固体電解質型燃料電池
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