JP5640502B2 - 電極接続構造および電極接続構造の製造方法 - Google Patents
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Description
また、半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。一方、エネルギや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、リン酸型燃料電池でアンモニアを分解する、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献4)。
リン酸型燃料電池を、化合物半導体製造の排気中のアンモニアの除害に用いる装置(特許文献4)についても、除害能力の向上を阻害する、電気抵抗の増大、気体と電極との良好な接触、圧力損失などの問題を踏み込んで解決する工夫がなされていない。電気化学反応をアンモニア等の除害に用いる場合、高温環境下での電極/集電体間の電気抵抗の増大、気体と電極との接触効率の向上等を画期的な構造で抑止しない限り、実用レベルの大きな処理能力を得ることができず、アイデアに留まっている状況にある。
ガス除害装置に限らず、ガス分解を伴う電気化学反応装置、たとえば燃料電池等において、電極/集電体の電気抵抗の低減、燃料ガスまたは空気と電極との良好な接触は、その電気化学反応装置の容量または能率を高める上で不可欠である。このため、両方共に、一層向上させる方策が求められている。
還元接合では、所定の温度および酸素分圧下で、金属酸化物は金属に還元され、その還元過程で、金属同士、または金属と酸化物とは、相互に拡散し合って接合する。このため、接合される対象物同士の他に余計な材料は用いられず、その接合部には形状的に相手側の気孔を塞ぐような部分を生じない。このため、電極のそばを通る気体とその電極とは、還元接合された状態で良好な接触を保つことができる。とくに、多孔質金属体を通りながらの電極への良好な接触を得ることができる。
導電性については、間に酸化層等を介在させないので、良好な集電性を得ることができる。還元接合は、接合に際し高エネルギ密度の局在化(細い高エネルギ密度のビームなど)を必要とせず、電極全面にわたって多孔質金属体を接触させておけば、接合が電極全面にわたって緩やかに進行する。この結果、電極と多孔質金属体とは、当該電極の全面にわたって多孔質金属体と導電接続されて、低い電気抵抗の導電接続を実現することができる。
なお、上記の集電体は、単独の部材ではなく、複数の部材が組み合わされて形成されていてもよい。通常、複数の部材が組み合わされており、その場合、上記の多孔質金属体はその複数の部材の1つと考えることができる。
上記の(Ni、Ni−Co系、Ni−Fe系、Ni−Cr系、Ni−Cu系およびNi−W系)を一種以上含む合金は、触媒作用を有し、ガス分子の分解を促進する。このため、電極に接触する位置または近接する位置に、メッシュシートの形態で分布することで、電気化学反応の推進に寄与することができる。
また、このうち(Ni、Ni−Co系、Ni−Fe系、Ni−Cu系)を一種以上含む、メッシュシートまたはメッシュシートに施されためっき層は、酸素分圧が比較的高くても還元接合しやすい。このため信頼性の高い還元接合部を容易に得ることができる。
上記の構成によれば、気体の圧力損失を低く保ちながら、良好な導電性、および気体と電極との良好な接触を得ることができる。
上記の構成によって、圧力損失をより一層小さくした上で、良好な導電性、および良好な電極と気体の接触を得ることができる。
めっき多孔体は、多孔質金属の中で、気孔率が高いことで知られている。このため、気体流れの圧力損失を低くすることができる。そして、上記の金属のめっき多孔体、または上記金属のめっき層を用いることで、これら金属のガス分解に対する触媒作用を得ることができる。さらに、Ni、Ni−Co系、Ni−Fe系、Ni−Cu系、の金属については、還元接合の容易化を得ることができる。
これによって、電極と集電体との良好な導電性を得ながらその電極と気体との良好な接触を得ることができる。
上記の方法によって、導電性、および電極と気体の接触に優れた電極接続構造を容易に得ることができる。この場合、上記の空間の酸素分圧を1E−14atmないし1E−16atm程度以下にする。この場合、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを主体に流して、アンモニアなどの還元性ガスを混入させて酸素分子と化学反応を生じさせ、二種のガスによって酸素分圧を低くするのがよい。
これによって、気体流れの圧力損失を低減しながら、電極と複合された集電体との導電性を良好にし、かつ気体の主流が通るめっき多孔体と電極との間の気体の通路の通りを良くすることができる。
これによって、アンモニア等のガス分解を促進した上で、金属のメッシュシートを経由するめっき多孔体と電極との間の気体の通路、および電極と複合化された集電体との間の導電性、の両方を確保した電極接続構造を容易に、かつ確実に得ることができる。
上記の電気化学反応装置では、最初の操業前は、電極と金属のメッシュシートとは還元接合されていない。力学的に接触しているだけである。最初の操業時にアンモニア等の還元性ガスを、電極と金属のメッシュシートが位置する空間に流すことで、還元接合を実現することができる。これによって、簡単に、かつ安価に電極接続構造を得ることができる。このあとの操業時にも、還元接合された部分は補強されこそすれ、還元接合が解消されることはない。また、操業休止時に空気中の酸素と触れることはあるが、還元接合が解消されるほど高温での経過時間は短いので還元接合は問題なく維持される。
図1は、本発明の実施の形態1における電極接続構造が用いられたガス除害装置10、とくにアンモニア分解装置10を示す図である。図1では、固体電解質1を挟んで、上側にアノード2とアノード集電体11が、また下側にカソード5とカソード集電体12が、配置されている。これを、一単位として、通常は、複数の単位が積層される。積層は、締結具による押圧、筐体による拘束などによって保持される。
本実施の形態におけるポイントは、MEA7における一方の電極であるアノード2と、アノード集電体11(11a,11s)との接続構造にある。すなわち、アノード2/金属のメッシュシート((第1の)多孔質金属体)11a/第2の多孔質金属体(めっき多孔体)11s、において、アノード2と金属のメッシュシート11aとは、還元接合部A1によって導電接続され、また、金属のメッシュシート11aとめっき多孔体11sとは、還元接合部A2によって導電接続されている。
還元接合では、接合のための材料は、金属粒子11pを含む金属ペーストを用いる程度で、いずれも多孔質の、アノード2、金属のメッシュシート11a、めっき多孔体11s、の気孔を塞ぐことはない。また、接合される対象物の間に酸化物等は介在しないので、導電性に優れている。金属粒子11pは、還元接合を確実なものとして、還元接合部A1,A2の電気抵抗を低くするのに非常に効果がある。金属粒子11pの平均径は、10nm〜5000nm程度とするのがよい。
上記の還元接合によって、多孔質体であるアノード2は、気体と十分に接触することができ、かつ、アノード2と、集電体11を構成する金属のメッシュシート11a/めっき多孔体11sと、の間の電気抵抗を十分低くすることができる。さらに、還元接合部A1,A2には、気孔を塞ぐおそれのある物は生じないので、圧力損失は、めっき多孔体11sの気孔率等によってほとんど決まり、還元接合部A1,A2が圧力損失を上昇させることはない。むしろ、トレードオフの関係にある、集電体の電気抵抗と圧力損失との関係において、アノード2と金属のメッシュシート11aとは非常に低い電気抵抗で還元接合されるので、素通り防止のための第2の多孔質金属体(めっき多孔体)11sの配置を疎らにすることができる。すなわち、第2の多孔質金属体(めっき多孔体)11sを、間隔をあけた断続配置にして圧力損失を小さくしながら、アノード集電体11の電気抵抗を多少増大させても許容できるようになる。
また、上記第2の多孔質金属体は、圧力損失を小さくするために、めっき多孔体11sとし、とくに、セルメット(登録商標:住友電気工業株式会社)を用いるのがよい。このあと説明するカソード集電体12におけるめっき多孔体12sについても、やはりセルメット(登録商標)を用いるのがよい。
これに対して、カソード5では、仮に還元接合してもその還元接合は酸化によって解消されてしまい、逆に酸化が進行することになる。このため、還元接合を形成しても、還元接合部は維持されない。このため、カソード5では集電体12との導電接続を、銀粒子12g等の酸素を分解する触媒に頼って酸化を防ぎながら、導電性接触を維持する押圧機構、筐体による拘束などを用いるのがよい。このあと説明するように、耐酸化性を向上させるために、金属のメッシュシート12aに銀めっき層を形成し、および/または、その金属のメッシュシート11aを、酸素分子分解の触媒作用の強い金属で形成することも重要である。
アンモニアを含む気体は、金属メッシュシート11aおよびめっき多孔体11sの空隙を通りながら、アノード2と接触して、下記のアンモニア分解反応をする。酸素イオンO2−は、カソードでの酸素ガス分解反応によって生じ、固体電解質1を通ってアノード2に到達したものである。すなわち陰イオンである酸素イオンが固体電解質を移動する場合の電気化学反応である。
(アノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−
より詳しくは、一部のアンモニアが、2NH3→N2+3H2の反応を生じ、この3H2が酸素イオン3O2−と反応して3H2Oを生成する。
カソード5には空気、とくに酸素ガスが導入され、カソード5において酸素分子から分解した酸素イオンをアノード2に向かって固体電解質1へと送り出す。カソード反応はつぎのとおりである。
(カソード反応):O2+4e−→2O2−
上記の電気化学反応の結果、電力が発生し、アノード2とカソード5との間に電位差を生じ、カソード集電体12からアノード集電体11へと電流Iが流れる。カソード集電体12とアノード集電体11との間に負荷、たとえばこのガス除害装置10を加熱するためのヒータ41を接続しておけば、そのための電力を供給することができる。ヒータ41への上記電力の供給は、部分的であってもよく、むしろ大部分の場合において、自家発電の供給量はヒータ全体に要する電力の半分以下であることが多い。
上記のNi系または合金系の織布は、ガス分解に対して触媒作用を有しており、ガス分解を促進することができる。このため、金属のメッシュシート11a、とくに織布は、(E1)電極接続構造の電気抵抗を低下させるだけでなく、(E2)電極におけるガス分解を促進することができる(触媒作用)。この結果、ガス分解の処理容量を向上させることができる。アノード2における金属のメッシュシート11aには、もう一つの重要な作用があるが、それについては、このあと説明する。
この金属のメッシュシート11aと同様のものを、カソード5の集電体12aに用いることができるが、カソード5では酸素と接触して酸素分子を分解するので、銀めっき処理を施すのがよい。これによって、銀粒子12gとともに、または銀粒子がなくても、酸素分子の分解を促進することができる。
さらにTiを2〜10000ppm程度の微量含むのがよい。Tiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに高めることができる。ただし、アンモニアの分解反応(アノード反応)は還元反応なので、使用前の製品には焼結処理等で生じた酸化層がNi粒連鎖体に形成されていたのが、使用によってアノード中の金属粒連鎖体も還元されて酸化層が消失することになる。しかし、Ni−Fe合金自体の触媒作用は確実にあり、さらに、酸化層がないことをカバーするために、TiをNi−Fe系に含有させて触媒作用の低下を補うことができる。
酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
なお、アノード2においては還元性ガスであるアンモニアが導入されるので、連鎖体21の酸化層21bも還元され、設置前に酸化層21bが形成されていても、稼働中に還元されてしまう。このため酸化層21bによるガス分解の触媒作用は期待できないが、その分、逆に、電子等の円滑な流れが補うことができる。また、連鎖体金属21aは、ガスに直接接触することで、十分大きいガス分解の触媒作用を発揮することができる。
要約すると、本発明の実施の形態における特徴は、アノードにおける次の(e1)、(e2)および(e3)にある。
(e1)連鎖体3による分解反応の促進(高い触媒機能)
(e2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(e3)連鎖体3のひも状良導体3aによる電子の導通性確保(高い電子伝導性)
上記の(e3)の高い電子導電性には、電気化学反応の全体からみれば、アノード2とアノード集電体11との、またカソード5とカソード集電体12との、良好な導電性の確保が寄与している。それぞれの集電体11,12の中での良好な導電接続の寄与もある。
上記の(e1)、(e2)および(e3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。
温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。しかし、上記のように、燃料電池等を構成する装置において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、分解反応速度は飛躍的に向上する。
なお、上記は固体電解質1が酸素イオン導電性の場合の説明であるが、固体電解質1はプロトン(H+)導電性でもよく、その場合、アノード2におけるイオン導電性セラミックス22はプロトン導電性のセラミックス、たとえばバリウムジルコネート等を用いる。
本実施の形態におけるカソード5では、Ag粒子は銀ペースト塗布部12gの形態で配置される。この中で、Ag粒子はカソード反応O2+4e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
銀は酸素分子の分解を促進する触媒作用を有するので、上記の銀ペースト塗布部12gの他に、金属のメッシュシート12aに銀めっき層を形成してもよい。銀めっき層を金属のメッシュシート12aに形成することで、さらに酸素分子の分解は促進される。
また、固体電解質1に、たとえばバリウムジルコネート(BaZrO3)を用いてプロトンをアノード2で発生させて固体電解質1中をカソード5へと移動させる反応も、本発明の望ましい一つの形態である。プロトン導電性の固体電解質1を用いると、たとえばアンモニアを分解する場合、アノード2でアンモニアを分解してプロトン、窒素分子および電子を生じさせて、プロトンを固体電解質1を経てカソード5へと移動させ、カソード5において酸素と反応して水(H2O)を生じさせる。プロトンは酸素イオンと比べて小さいので固体電解質中の移動速度は大きい。このため加熱温度を低くしながら実用レベルの分解容量を得ることができる。固体電解質1の厚みも、強度を確保できる厚みとしやすい。
図6に、金属の酸化還元平衡図(エリンガム・ダイアグラム)を示す。この図を用いて、還元接合において酸素分圧をどの程度低くすればよいか知ることができる。たとえば、還元接合を800℃で行い、上記の金属のメッシュシート11aおよび金属粒子11pが、Ni系であった場合、酸素分圧の目安は、次の手順で得ることができる。なお、横軸(温度軸)をX軸、縦軸(エネルギ軸)をY軸と呼ぶ。
(T1)温度800℃からY軸に平行に直線を立てる。
(T2)NiOの直線(エネルギ−温度曲線)との交点(●)を求める。
(T3)左の欄外の酸素Oマーク)と上記交点●とを直線で結び、延長する。
(T4)延長した直線と、欄外のPo2分圧目盛り、との交点が、還元接合で必要とされる酸素分圧の目安である。この酸素分圧以下の酸素分圧であれば、酸化されずに拡散によって還元接合が可能である。この結果、電気抵抗に低い還元接合部A1,A2を得ることができる。
Ni系の場合、目安の酸素分圧は1E−14(atm)である。他の系についても、同様の手順で求めることができる。たとえばFe系では、上記酸素分圧は1E−16atmである。合金については、データがないので、Ni系とFe系との間の酸素分圧1E−15atm程度とみることができる。
上に挙げた系において、Ni、Co、Feについては、比較的高い酸素分圧でも酸化しない(還元接合できる)が、Cr系では酸素分圧は非常に低くしなければならない。このため、Ni−Cr系およびNi−W系については、還元接合は容易であるとは言いにくい。しかし、酸素分圧を所定レベルまで下げれば、還元接合は可能である。
また、Ni−Cr系、Ni−W系の織布に銀めっき層を形成したものを用いてもよい。銀めっき層を形成した場合、銀粒子12gは、用いなくてもよいし、用いてもよい。また、銀めっき層を用いる場合、織布の金属(被めっき材)は鉄(Fe)などであってもよい。銀は、酸素分子を分解しやすく、銀めっき層のみで耐酸化性を大きく向上できるからである。その結果、カソード集電体12自身の、およびそのカソード集電体12とカソード5との間の、電気抵抗を低くすることができる。
まず、アノード2/固体電解質1/カソード5、が積層されたMEA(Membrane Electrode Assembly)7を準備する。通常、MEA7は一体化されている。このアノード2に金属のメッシュシート11aを接触させて、金属粒子11pを含む金属ペーストを塗布する。次いで、めっき多孔体11sに金属ペースト塗布した上で、金属のメッシュシート11aに重ねて積層する。この積層体、MEA7(アノード2)/金属のメッシュシート11a/めっき多孔体11s、を還元接合の雰囲気中に入れる。少なくとも各層の境界には金属ペーストが配置されているのが望ましい。
還元接合の雰囲気は、図6に示す酸化還元平衡図における酸素分圧程度以下にしておく必要がある。このために、外部からの空気または酸素の侵入がないことを確認するためのリークチェックを行う。そして、上記の低い酸素分圧を実現するために、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、もしくは水素、アンモニア等の還元性ガス、またはその両方(不活性ガスと還元性ガス)、を十分な量流すのがよい。不活性ガスと還元性ガスの両方を用いる場合、窒素ガスをベースにして、アンモニア等のガスを少量含有させて流すのがよい。たとえば、(3%NH3+N2)を用いることができる。上記の低い酸素分圧の実現を目指しながら、拡散が十分起きる温度、たとえば950℃程度に加熱する。そして、十分低い酸素分圧が実現すれば、上記950℃で、自ずと還元接合が進行する。950℃での保持時間は、たとえば20分間とするのがよい。これによって、アノード2と分解対象のガスとの良好な接触が可能で、かつ低い電気抵抗の、電極接続構造を得ることができる。
図8は、本発明の実施の形態2における電極接続構造を有するガス除害装置10を示す図である。分解対象のガスはアンモニアである。図8(a)は縦断面図であり、(b)はVIIIB−VIIIB線に沿う横断面図である。これら図に示すように、本実施の形態におけるガス分解装置10は、円筒形MEA7(1,2,5)を用いて製造されている。
円筒形の固体電解質1の内面を覆うようにアノード2が設けられ、また外面を覆うようにカソード5が設けられている。上述のように、アノード2は燃料極、カソード5は空気極と呼ばれる。円筒形MEAの内径は、たとえば20mm程度であるが、適用する装置に応じて、変えるのがよい。円筒形のMEA7の内筒中に、アノード集電体11が配置されている。また、カソード5の外面に巻き付くようにカソード集電体12が配置されている。
<アノード集電体11>:金属のメッシュシート11a/めっき多孔体11s/中心導電棒11k
金属のメッシュシート11aは、円筒MEA7の内面のアノード2と還元接合されて還元接合部A1を形成している。さらに、その金属のメッシュシート11aは、めっき多孔体11sと還元接合されて還元接合部A2を形成している。めっき多孔体11sは中心導電棒11kに巻き回されて、両者の間に導電接続が実現されている。したがって、アノード2/金属のメッシュシート11a/めっき多孔体11s/中心導電棒11k、が導電接続されている。めっき多孔体11sは、後述するアンモニアを含む気体の圧力損失を低くするために、気孔率を高くすることができる上記セルメット(登録商標)を用いるのがよい。円筒MEAの内面側では、複数の部材で形成される集電体11の全体の電気抵抗を低くしながら、アノード側への気体導入の圧力損失を低くすることが重要なポイントである。本実施の形態では、上記のセルメット(登録商標)を用いながら、さらに、全長にわたってめっき多孔体を配置しないで、間をあけて断続的に配置して圧力損失の低下をはかっている。めっき多孔体11sを、間隔をあけて断続的に配置することで、圧力損失は低下するが、アノード集電体11の電気抵抗は増大する。しかし、金属のメッシュシート11aを用い、金属粒子を含む金属ペーストを用い、還元接合部A1,A2を形成することで、間隔をあけて断続的に配置しても、電気抵抗は、実用上、問題のないレベル以下に抑えることができる。
中心導電棒11kは、円筒形MEAを用いて内面側にアンモニア等の気密性を要するガスを流す場合、小型で簡単な構造によって、外部配線と導電接続をとることを可能にする。また、中心導電棒11kを少し延ばすことで、ヒータの加熱の影響が小さい領域で導電接続構造を形成することができ、特殊な耐熱性シールを必要としない。このため経済性にも優れている。
カソード5では、金属のメッシュシート12aが、円筒MEA7の外面に接触して、外部配線へと導電する。銀ペースト塗布部12gは、カソード5における酸素ガスを酸素イオンに分解するのを促進する触媒として作用する銀粒子を含み、かつカソード集電体12の電気抵抗を低くする。カソード5に銀粒子を含ませることも可能であるが、カソード集電体12に、所定の性状の銀ペースト塗布部12gは、酸素分子を通しながら銀粒子がカソード5に接触して、カソード5内に含まれる銀粒子と同等の触媒作用を発現する。しかも、カソード5に含ませるより安価である。金属のメッシュシート12aに銀めっき処理を施して銀めっき層を形成してもよい。
アンモニアを含む気体は、気密性を厳格にして円筒MEA7の内筒、すなわちアノード集電体12が配置されている空間に導入される。円筒MEA7を用いた場合、内面側に気体を通すことから、めっき多孔体11sの使用は不可欠である。圧力損失を低くする点から、上述のように気孔率の高いめっき多孔体を用いることが重要である。アンモニアを含む気体は、金属のメッシュシート11aおよびめっき多孔体11sの空隙を通りながら、アノード2と接触して、上述の電気化学反応に与る。
なお、固体電解質1が、図示するように酸素イオン導電性の場合、アノード2において水(H2O)を生じる。MEA7の中央では、100℃以上に加熱されているので水は気体(水蒸気)であるが、出口付近では温度が下がり、水蒸気は水滴となり、めっき多孔体11sに付着して気孔を塞ぎ、圧力損失を増大させるおそれがある。これに対して、固体電解質1がプロトン導電性の場合、アノード2でアンモニア分解が生じて、プロトンがカソード5に向かい、カソード5において酸素と反応して水を発生する。カソード5は円筒形MEAの外周側にあり、開放されている。このため、MEA出口の付近(外周)で水滴になっても、問題を生じることはない。固体電解質1をプロトン導電性とした場合、電気化学反応の進行を促進したり加熱温度を低くできたりする効果に加えて、上記の水滴の無害性の効果も得ることができる。
このあとの還元接合の条件は、実施の形態1と同じである。
異なる点は、製造方法に選択枝が増えることである。円筒形MEAの内面側にアノード集電体11を形成するので、いくつかのバリエーションが出てくる。上記の手順の他に、次の方法を採用することができる。
(V1)金属のメッシュシート11aをアノード2に、一度、還元接合する。その後、中心導電棒11kに巻き回しためっき多孔体11aを装入して、もう一度、還元接合を行う。
(V2)金属のメッシュシート11aと、中心導電棒11kに巻き回しためっき多孔体11sとを、予め、還元接合しておく。その還元接合されたアノード集電体11を、MEA7の内面側に装入して、アノード2と金属のメッシュシート11aとの還元接合を行う。
装入物の加工精度(とくに外径など)、装入物と円筒形MEAとの力学的な摩擦、等を考慮して、円筒形の内面に集電体11の全部または一部をどのような状態で装入するか、バリエーションを選択すればよい。
また、還元接合を確実に実現するために用いられる金属ペーストに含まれる金属粒子11pについても、金属のメッシュシート11aと同じ金属とするのがよい。金属のメッシュシート11aおよび金属粒子11pを、上記の金属によって形成することで、次の作用効果を得ることができる。
(E1)電極接続構造の電気抵抗の低下(良好な導電性)
(E2)電極におけるガス分解の促進(触媒作用)
さらに、Ni系、Ni−Co系、Ni−Fe系、およびNi−Cu系に限れば、次の(E3)を得ることができる。
(E3)還元接合の容易化または低い電気抵抗の還元接合部の形成
カソード5には銀粒子を配置して、銀粒子の触媒作用によって酸素分子の分解速度を向上させることができる。しかし、カソード5に銀粒子を含ませる構造では、カソード5の価格が高くなり、経済性を低下させる。カソード5に銀粒子を含有させる代わりに、カソード5の外周面において、銀ペースト塗布部12gの形態で銀粒子を配置することができる。その結果、図5に示すように、カソード5において、銀粒子は触媒として機能する。この銀ペーストにおいて重要なのは、乾燥後または焼結後に、気孔率の高い多孔質にすることである。
図12は銀ペースト塗布部12gの表面を示すSEM(Scanning Electron Microscopy)像を示し、(a)は画像データであり、(b)はその説明図である。塗布し乾燥(焼結)した後に多孔質になる銀ペーストは市販されており、たとえば京都エレックス株式会社製のDD−1240などを用いることができる。銀ペースト塗布部12gを多孔質にすることの重要性はつぎの理由に基づく。
カソード5には酸素分子O2をできるだけ多く供給するのがよく、しかも銀ペーストに含まれる銀粒子は、カソード5におけるカソード反応を促進する触媒作用を有する(図5参照)。銀ペースト塗布部12gをカソード5に配置することで、カソード中の酸素イオンを通すLSMなどの金属酸化物と、銀粒子と、酸素分子O2とが接触する箇所(接触箇所)が高密度で生じる。銀ペースト塗布部12gを多孔質にすることで、多くの酸素分子O2が、多孔質の気孔中に入って上記の接触箇所に触れ、カソード反応を生じやすくなる。
さらに、銀粒子を含む銀ペースト塗布部12gは、導電性が高いので、金属のメッシュシート12aを補助してカソード集電体12における電気抵抗を低くする。このために、銀ペースト塗布部12gは、上記のように、格子状(母線方向、環状方向)に連続するように設けるのがよい。金属のメッシュシート12aは、この銀ペースト塗布部12gに接触して導通するようにカソード5に巻き付けられる。
上記のように、銀は酸素分子の分解を強力に推進するので、金属のメッシュシート12aに対して銀めっき処理を施して、銀めっき層を形成してもよい。金属のメッシュシート12aに銀めっき層を形成することで、銀ペーストの塗布量を減らすことができる。
図14(a)は、本発明の実施の形態3におけるガス分解装置10の縦断面図であり、また図14(b)は、(a)におけるXIVB−XIVB線に沿う断面図である。本実施の形態では、金属粒子11pの材料である金属ペーストを分厚く塗布することで、めっき多孔体11sが、直接、アノード2に還元接合されている点に特徴を有する。すなわち金属のメッシュシートは省略されて、多孔質金属体であるめっき多孔体11sが、アノード2に還元接合されている。このため、アノード集電体11は、(金属粒子11p+めっき多孔体11s)/中心導電棒11k、によって形成される。
めっき多孔体11s、たとえばセルメット(登録商標)は、上述のように、仕様によって気孔の大きさが変化したシートの形態で市販されている。気孔の大きさが異なる複数の種類のシートを用い、中心導電棒11kに最初に巻き回す部分は気孔の大きいセルメットを用い、外周においてアノード2に接する部分は気孔の細かいセルメットを用いるのがよい。これによって、アノード2から中心導電棒11kに到る箇所の電気抵抗を低くしながら、アノード2とガスとの良好な接触を確保し、かつ円筒形MEA7の中を流れるガスを含む気体の圧力損失を小さくすることができる。金属のメッシュシートを省略できる利点も得ることができる。
金属粒子11pは、実施の形態1〜3において、アノード2に接触する箇所またはその付近に配置する場合には、上記のめっき多孔体11sに用いる金属で形成するのが好ましい。
めっき多孔体11sについては、実施の形態1および2におけるように、金属のメッシュシート11sがアノード2との間に介在する場合、めっき多孔体11sには、とくに触媒作用を高める機能は要求されない。しかし、本実施の形態のように、直接、アノード2に接触する場合、上記の金属で形成されることが望ましい。通常、セルメット11sは、Niで形成されるので、上記の条件は満たしている。より触媒作用を高める場合は、他の金属(Ni−Fe等)で形成するのがよい。
カソード5およびカソード集電体12については、実施の形態2と同じであり、耐酸化性がポイントになる。全般に、アノード2における金属のメッシュシートを省略して、アノード2とめっき多孔体11sとを、直接、還元接合した点を除けば、実施の形態2と同じである。
図15は、本発明の実施の形態4における、燃料電池として機能するシステムを示す図である。この燃料電池50では、水素源から、アンモニア、トルエン、キシレン等の、水素を含む分子である水素源を供給され、実施の形態1〜3に示したいずれかのガス分解装置10または発電セル10のアノード2において分解する。カソード5には空気すなわち酸素が導入され、分解される。この結果、電気化学反応が進行して電力を生じる。この電力の一部は、ガス分解能力または発電能力を向上させるための加熱装置(ヒータ)41に用いられる。余剰の電力は、インバータ71によって交直変換や、昇圧などされて、外部装置に適合する電力形態に変換される。これによって、本実施の形態の燃料電池システムは、糖類などの有機物を含む多様な水素源を用いて、PCや携帯端末等の電子機器の電源、より電力消費の多い電気機器の電源に利用されることができる。
分解されて、発電セル10またはガス分解装置10から排気される気体は、後処理装置(センサー内蔵)75によって残留成分濃度を検出して、安全なように処理する。この場合、残留成分濃度によっては元に戻して循環させることができる。
燃料電池システム50では、ガス除害を目的とする、実施の形態2等の場合のように、MEA7の出口でガス成分の濃度を極端に低くする必要がなく、高いガス成分濃度において分解の電気化学反応を行うことで、高い発電能力を得ることができる。
表1は、本発明の電極接続構造等を適用できる他のガス分解反応を例示する表である。ガス分解反応R1は、実施の形態1、2等で詳しく説明したアンモニア/酸素の分解反応である。その他、ガス分解反応R2〜R20のどの反応に対しても本発明の電極接続構造等は用いることができる。すなわち、アンモニア/水、アンモニア/NOx、水素/酸素/、アンモニア/炭酸ガス、VOC(揮発性有機化合物:volatile organic compounds)/酸素、VOC/NOx、水/NOx、などに用いることができる。
上記の電気化学反応はガス除害、燃料電池等を目的としたガス分解反応である。しかし、その他の目的に用いられる場合であってもよい。
Claims (5)
- アンモニアと酸素とを組み合わせてアンモニアを分解する電気化学反応を行う電気化学反応装置に用いられる集電体と、電極と、を含む電極接続構造であって、
前記電極は、イオン導電性セラミックスを含んで、多孔質であり、
前記集電体は多孔質金属体であり、
前記電極と前記多孔質金属体とが還元接合され、
前記多孔質金属体が金属のメッシュシートであって、
前記金属のメッシュシートがNi、Ni−Co系、Ni−Fe系、Ni−Cr系、Ni−Cu系およびNi−W系の一種以上を含む単相の金属、並びに、前記金属をめっき層とする複合の金属、のいずれかで形成されることを特徴とする、電極接続構造。 - 前記金属のメッシュシートが、金属の織布、または金属の織布にめっき処理が施されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の電極接続構造。
- 前記電気化学反応装置は燃料電池またはガス除害装置である、請求項1または請求項2に記載の電極接続構造。
- 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の電極接続構造の製造方法であって、
前記電極の全面にわたって金属のメッシュシートを接触させて配置する工程と、
少なくとも前記電極および金属のメッシュシートが位置する空間を、拡散による接合が行われる温度にし、かつその温度で前記メッシュシートの金属に対して酸化性とならない雰囲気にする工程と、を備え、
前記雰囲気および温度において、前記電極と金属のメッシュシートとが還元接合する時間、保持することを特徴とする、電極接続構造の製造方法。 - 前記酸化性とならない雰囲気を実現するために、前記空間に漏れがあるかリークディテクタで測定することを特徴とする、請求項4に記載の電極接続構造の製造方法。
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