JP3775946B2 - 微弱接合圧力で固相拡散接合した製品とその製造方法 - Google Patents

微弱接合圧力で固相拡散接合した製品とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接合面を超平滑化し、微弱接合圧力を加えて金属部材を同種または異種の金属部材またはセラミックス部材と固相拡散接合した接合材製品、特に固相拡散接合前後の部材の形状、寸法変化が著しく小さく、かつ動的な機械的特性の優れた接合材製品および該製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
接合すべき金属部材同士を接触させ、その接合部材を固相線以下の温度に加熱し、かつ加圧して保持することにより接合させて接合材製品を製造する方法は、固相拡散接合方法として知られている。固相拡散接合方法では、接合面の表面皮膜と微小な凹凸の状態が接合性に大きく影響する。接合面を清浄に、また平滑にするほど、低い温度、低い接合圧力で拡散接合が可能となる。
【0003】
例えば、特公昭46−40222号公報には、りん青銅部材の接着面平均粗さを0.5μHa以下に研磨して4〜5MPa程度の押圧力を加え、還元性または不活性雰囲気中で拡散接合する方法が開示されている。また、特開昭57−28687号公報には、接合面の表面粗さを接合直前に研削加工により1μm以下に調整して、真空中または非酸化性雰囲気中で30MPaの圧力で接合することにより接合材製品の衝撃特性が向上することを示している。
【0004】
特開平10−197193号公報には、内面粗さを0.1μm以下とした銅合金製パイプの内側に表面粗さを0.1μm以下としたオーステナイト系ステンレス単結晶鋼製パイプを挿入し二重パイプとした後、接合圧力30〜70MPa、接合温度600〜900℃で拡散接合することにより熱交換機の伝熱管用合金管を製造する方法を開示しており、接合温度はステンレス製パイプの再結晶温度以下の600〜800℃が好ましく、また、銅合金製パイプとステンレス製パイプとの間に無酸素銅のインサート材を挿入すると拡散接合性が向上することが開示されている。
【0005】
しかしながら、このような4MPa以上〜数十MPaの大きな接合圧力では、被接合物に大きな形状変化を伴い、高寸法精度の部材の組み立てには適さない。
【0006】
特開平6−15462号公報には、粒子加速器に用いられる加速管等の真空機器を構成する内面が鏡面加工された複数の無酸素銅製リング部材をミクロンオーダーの高精度で互いに接合する方法として、接合面同士を極薄の金箔を挟んだり金メッキ層を介して接触させ、これを非酸化性雰囲気中で約0.01kg/mm2 の僅かな圧力で加圧しつつ金・銅の共晶温度より高めの温度で拡散接合する方法が開示されている。
【0007】
さらに、最近、超平滑面を作製する技術が進歩し、金属表面の粗さをnmオーダーにダイヤモンド切削加工できるようになった。このように切削加工により超平滑面を作製し、この超平滑面同士を接触させ、低温/超低圧力で拡散接合する方法が知られている。例えば、特開平7−320898号公報には、加速管の組み立て方法において、導電性のよい銅材等を超精密旋盤等による加工により平面粗度を10〜40nm程度、平面度を1μm/100φ程度とし、または、さらに表面を活性化するために該表面にガスイオン(Ar,Ne等)を照射して、接合面に0.03g/mm2 以上の加圧力を加え、真空雰囲気中で600〜900℃で拡散することにより加速管を精密に組み立てできることを開示している。
【0008】
同様に、「溶接学会全国大会講演概要」第60集、´97−4、F−5頁〜F−10頁には、超精密旋盤とダイヤモンド工具を用いて、表面粗さRmax(=Ry,1994年以降JISでRyと変更)20nm、平坦度0.3μm/80mmφ(直径)に仕上げた後、接合温度973K以下、圧力0.15MPa以下、接合時間3.6ks、雰囲気4×10-4Paの条件で無酸素銅板を拡散接合して粒子加速管を製造する方法が報告されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
固相拡散接合のように、固相状態で接合する方法では、接合過程の初期においては、接合面の突起部同士が接触し、わずかな接合箇所が得られる。拡散現象の進行とともにその接合面積が増加し、空隙が減少することになる。空隙が接合面間に多数残留するとその分だけ真の接合面積が減少したことになり、引っ張り強さは減少し、母材並の強さが得られない。一般的には、空隙は接合体に対して切欠のように作用する。したがって、空隙があると静的な機械的特性(引張強さ等)より、動的な機械的強さ(衝撃強さ、疲れ強さ等)が大きく低下する。
【0010】
図2に結晶粒が粗大化していない超平滑面を有する金属部材の表面部の組織の断面模式図を示す。このような接合面を平滑化した金属部材を固相拡散接合すると、図3の接合圧力が大きい固相拡散接合面の断面模式図に示すように、固相拡散接合時の加熱により結晶粒が粗大化し、粗さがμmオーダーの荒い接合面でも接合圧力が5〜10MPaと大きい場合、接合した面の空隙は消失する。しかし、図3の断面模式図に示すように、接合部材が両側へ膨らみ変形し、形状変化率(断面積の増加割合)が数%となり高精度製品としては使用できなくなる。
【0011】
一方、粗さがナノメータオーダーの超平滑面とした金属部材に固相拡散接合法を適用すると、粗さがミクロンオーダーの荒い接合面の場合よりも、その接合開始温度を大幅に低下させ、かつ微弱接合圧力で接合させることができるので、接合時の寸法変化を非常に小さくできる長所がある。
【0012】
しかし、微弱接合圧力のために接合部材の形状変化はないものの、接合した面の断面検査の結果、図4の従来技術の固相拡散接合面の断面模式図に示すように、接合面の当初の加工粗さよりも大きい空隙が接合線上に残留していることが観察される。このような空隙が接合部に残留すると欠陥となり、強さの低下、使用中の疲労破壊をもたらし、接合材製品を粒子加速器等の高真空を要する装置の部材に使用した場合は真空漏れ等の原因となる。
【0013】
例えば、先に引用した特開平6−15462号公報には、銅製部材の接合において高さ20mmの筒体を5個重ねて接合圧力0Kg/mm2 で、接合温度890℃または950℃、接合時間120分として管を製作した場合、接合面に生じるボイド(空洞)のせいで管の全長が+36μmまたは+47μm増えたと記載されている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、微弱接合圧力による固相拡散接合の場合の空隙の発生は次のような原因によるものであることをつき止めた。すなわち、微弱な接合圧力で固相拡散接合を行こなうと、加熱中に接合面が、自由表面(相手部材がないような、1個の試料)のような挙動を示す。つまり、接合前の表面がたとえ平坦であっても、加熱によって表面が凹凸化する。よって、常温状態において金属部材を表面加工してnmオーダーの超平滑な面としても、金属部材を高温に加熱すると、結晶粒界の移動や成分元素の表面からの蒸発等により部材の表面がμmオーダーに凹凸化する。
【0015】
したがって、接合前に超平滑に加工した面同士を接触させて加熱すると、例え真空溶解法、真空脱ガス法等により高清浄化した材料でも蒸気圧の高い金属材料では、接合中に接合表面がnmオーダーからμmオーダーに表面の凹凸化が進む。その結果、nmオーダーに超平滑化した効果が失われ、拡散接合は不十分なものとなっていた。よって、接合圧力が1MPa以下の微弱接合圧力では粒子加速器に用いられる加速管のように内壁の接合部において段差、間隙等が生じない高精度と拡散接合前後の形状、寸法の変化がない欠陥の少ない接合部材製品を得ることは困難な現状にある。
【0016】
本発明は、上記のように接合面を超平滑な面として微弱接合圧力で固相拡散接合する際の残留空隙による接合欠陥の発生という問題を解決するものである。
【0017】
すなわち、本発明は、JIS規格B0601−1994による表面荒さが1000nm未満の超平滑面を接合面として100〜0.03g/mm 2 微弱接合圧力を加えて金属部材を同種もしくは異種の金属部材またはセラミックス部材と固相拡散接合させてなる製品において、該金属部材は、超平滑面を形成する前に固相拡散接合温度以上で加熱されることにより粗大化した結晶粒を少なくとも接合面に有し、拡散接合した面の空隙の割合が30%以下であることを特徴とする微弱接合圧力で固相拡散接合した製品である。
【0018】
固相拡散接合した面の空隙は光学顕微鏡により観察されるものであり、本発明において空隙の占める割合は、空隙の長さを測定し、その値を接合線の長さで割った値で示される。全く接合していないと空隙の割合は100%となる。真空装置における真空漏れを防止するためには、空隙の占める割合は30%以下でなければならず、より好ましくは20%以下である。本発明では、微弱接合圧力を高めにすることにより、空隙の占める割合を実質的に0%とすることができる。
【0019】
また、本発明は、JIS規格B0601−1994による表面荒さが1000nm未満の超平滑面を接合面として100〜0.03g/mm2 (1〜0.0003MPa)の微弱接合圧力を加えて金属部材を同種もしくは異種の金属部材またはセラミックス部材と固相拡散接合させる方法において、超平滑面を形成する前に、該金属部材を固相拡散接合温度以上で加熱して粗大化した結晶粒を少なくとも接合面に形成し、これにより該金属部材の接合面を凹凸化させ、次いで、該凹凸化した表面層を除去して接合面を超平滑面とし、該接合面を他方の部材の接合面と接触させて、還元性雰囲気または不活性雰囲気中で、金属部材の成分の蒸発を起こさない気圧下にて加熱して接合することを特徴とする微弱接合圧力で固相拡散接合した製品を製造する方法である。
【0020】
さらに、本発明は、製品の一部をなす金属部材の素材を0.7TM (TM =金属部材の融点[K])以上の温度Tで加熱処理して結晶粒を粗大化させた後、所要の金属部材の形状に仕上加工し、少なくとも接合面をJIS規格B0601−1994による表面荒さが1000nm未満の超平滑面とすることを特徴とする上記の固相拡散接合用の金属部材の製造方法である。
【0021】
なお、本発明において、超平滑面とは、高精密旋盤とダイヤモンド工具を用いた研削、バフ研磨、微細粉末研磨粒子を用いた超平滑化非接触研磨、電解砥粒超鏡面仕上げ等金属部材等の表面平滑化手段によって形成されるナノミクロン(nm)オーダーの表面であり、JIS規格B0601−1994による表面粗さが1000nm未満のものをいうが、より好ましくは、数十nm以下の表面粗さである。
【0022】
本発明の製造方法は、固相拡散接合時に前記加熱処理の温度より低い温度で加熱して接合する。その理由を説明する。金属材料は微細な結晶粒の集合体である。この結晶粒の集合体を加熱すると、再結晶である結晶粒が隣接する結晶粒を併合しながら粗大化する。表面に突き出た結晶粒界も移動することから、表面で観察される結晶粒も大きくなる。nmオーダーに超平滑化した表面近傍は、図5の金属表面の結晶粒界での溝の形成と力の関係(γS :表面エネルギー、γB :界面エネルギー)を示す断面模式図のように、常温で平滑面であっても、結晶粒界の界面エネルギーと表面エネルギーがバランスを保つために、結晶粒界近傍の原子の拡散によって、粒界に溝が形成される。図5には、結晶粒界が表面に対してほぼ直角の場合、表面エネルギーγS と結晶粒界の界面エネルギーγB とのバランスの様子を示している。
【0023】
粒界に溝が形成される現象は熱腐食と呼ばれ、金属の結晶粒界の観察法の一種として知られる。このように、熱腐食によって表面が凹凸化する。金属部材を高温に保持していると、熱腐食と同時に表面の凹凸を残しながら結晶粒界が移動し、結晶粒が粗大化する。その結果、図2に示す超平滑面を有する金属部材は図6に示すように表面が凹凸化することになる。結晶粒界と表面とのなす角度αが90度の場合が、凹凸が最も小さく、角度αが小さくなると、表面の凹凸が大きくなる。
【0024】
しかし、本発明の製造方法は、固相拡散接合前に、固相拡散温度よりも高い温度Tで該金属部材を加熱処理することにより表面の結晶粒が粗大化し、それに伴って凹凸化した表面層を超平滑化加工で取り除いているので、この加熱処理の温度Tより低い固相拡散接合温度で加熱した場合は、熱腐食と同時の結晶粒界の移動に伴う結晶粒の粗大化が起こらないので、上記のような表面の凹凸化は抑制される。
【0025】
さらに、本発明の製造方法は、還元性雰囲気または不活性雰囲気中で、金属部材の成分の蒸発を起こさない気圧下にて加熱して固相拡散接合することを特徴とする。
【0026】
固相拡散接合時に金属部材を真空中で加熱すると、例えば蒸気圧が高い銅の材料では、金属蒸気が蒸発し、これによっても、図6の断面模式図に示すように表面が凹凸化する。これはファセッテイングと呼ばれ、表面での結晶原子数を最も少なくする方向へ、つまり表面エネルギーの安定な表面層が現れ、表面がμmオーダーの凹凸状態となる。したがって、本発明の製造方法では、金属蒸気の蒸発を抑制する目的で、不活性ガスまたは水素ガス等の非酸化性雰囲気において金属部材の成分の蒸発を起こさない気圧下、例えば0.5〜1気圧程度にて加熱処理することとした。
【0027】
このように、本発明の製造方法によれば、図1の本発明の製品の接合面の断面模式図に示すように接合部の空隙形成が抑制される。図1に示すように、金属部材の結晶粒は粗大化しているものの、この粗大化は、固相拡散接合時に成長したものではなく、予め固相拡散接合温度以上に加熱処理した際に成長した結晶粒の大きさのままであり、接合した面には微弱接合圧力で固相拡散接合したものであるにもかかわらず、空隙が形成されていない。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の製品の好適な具体例は、金属部材の材料として無酸素銅を用いた製品であって、形状、寸法の高精度が要求される加速管である。加速管は、高周波の電場を作るための電子通路よりも大径のセルを形成した銅製の円板を軸線方向におよそ150〜200枚くらいを重ねて縦型の真空炉に縦に入れて真空中で約900℃に加熱して拡散接合する方法が知られており、組み立ての誤差は5μm以下の高い精度が要求される。本発明の製品は、このような要求を十分に満たすものである。
【0029】
その他、例えば、銅パイプと鋼パイプからなる熱交換器の伝熱管のような内側管の外面と外側管の内面を超平滑面として固相拡散接合した二重管が固相拡散した部材製品の例として挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法は、金属素材を熱間加工や冷間加工して粗仕上げし、これを固相拡散接合温度以上で加熱して粗大化した結晶粒を少なくとも接合面に形成した後、素材から切り出して最終製品形状に仕上加工する際に接合面を超平滑面に加工するか、金属部材を前記加熱処理の前に予め超精密加工によりナノミクロン(nm)オーダーの精度で予め製品部材のほぼ最終の形状に加工したものを、前記加熱処理後に接合面を超平滑面に加工するか、いずれの方法も採用できるが、前者の方法が、加工工程を少なくし、コスト低減上望ましい。
【0031】
固相拡散接合温度は、通常0.7TM (TM =金属部材の融点[K])以上の温度Tが好ましいとされているので、本発明の製造方法における超平滑面加工の前の加熱処理は、0.7TM 以上の温度Tとする。このように、高温で金属部材を加熱処理する結果、表面の結晶粒が粗大化して表面が凹凸化する。加熱処理は、真空中や不活性ガスまたは水素ガス等の非酸化性雰囲気において行こなう。
【0032】
この加熱処理によって発生した表面の凹凸層の厚みは、結晶粒径よりも小さい。熱処理によって再結晶が発生すると結晶粒径は数十μmとなる。この加熱処理によって発生する表面の凹凸層の厚みは10μm程度である。
【0033】
加熱は、電気炉中において金属部材を均一に加熱してもよいが、接合面側を局部的に加熱してもよい。高温加熱により結晶粒が大きくなると機械的強度は一般的に低下するが、本発明は、機械的強度に対する要求よりも、複数の部材を組み合わせて形状、寸法が極めて高精度であることが要求される高度精密製品の製造に特に適する。
【0034】
なお、金属材料は一般に高温で熱間加工された後、または冷間加工の後に仕上焼鈍されることが多く、例えば、無酸素銅の鋳塊を800〜1000℃程度で熱間加工し、焼鈍するが、焼鈍温度が高いと結晶粒が粗大化して機械的性質が低下したり、残留不純物が固溶して導電率が低下するので、焼鈍の好適な温度は300〜700℃程度とされる。冷間加工した材料では、焼鈍処理によって結晶粒は成長する。本発明の製造方法では、このような焼鈍処理よりさらに長時間または高温で熱処理して拡散現象を進ませ、結晶粒をさらに大きくさせるものであり、焼鈍処理や再結晶加熱処理とは目的および加熱条件等が相違している。
【0035】
例えば、本発明の製造方法では、金属部材として無酸素銅(銅の融点1083℃)を用いる場合は、固相拡散接合温度は800℃(0.8TM [K])以上がより好ましく、したがって、前記加熱処理温度はこの固相拡散接合温度よりも高いほど望ましい。
【0036】
この加熱処理の後に、金属部材表面の接合面は高精密旋盤とダイヤモンド工具を用いた研削、バフ研磨、微細粉末研磨粒子を用いた超平滑化非接触研磨、電解砥粒超鏡面仕上げ等公知の手段を適宜採用し、nmオーダーの超平滑面にする。
【0037】
接合圧力を100〜0.03g/mm2 (1〜0.0003MPa)とするのは、100/mm2 を超えると接合材の変形による寸法精度が低下し、また0.03g/mm2 より小さいと加圧力が殆ど加わらず、接合材製品の強度が十分に得られないからである。金属部材を重ねて固相拡散接合する場合は、自重による加圧力が上記の範囲内にあれば、特に圧力を加えなくてもよい。
【0038】
本発明の製造方法は、無酸素銅等の銅および銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、ニッケルおよびニッケル合金、白金族金属およびその合金等の非鉄金属または非鉄合金、鉄または鉄鋼等の鉄合金等の、高温加熱によって接合面が凹凸化する金属部材の固相拡散接合に有用であるが、特に、高温加熱による蒸発が活発で表面の凹凸化が進みやすい銅および銅合金の固相拡散接合に効果を発揮する。
【0039】
無酸素銅としては、高真空装置用の部材として適することが知られている酸素濃度10ppm以下の無酸素銅や、これにAg,Zr,Crなどの1種以上を0.01〜0.3重量%含有する無酸素銅、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス粒子を0.05〜0.5重量%含有する分散強化型銅合金、水素1.5ppm以下、酸素0.5ppm以下、純度99。99wt%以上のガス放出の少ない高純度銅、酸素10ppm以下、イオウ10ppm以下、鉄5〜20ppmで内部のガス成分が少ない高純度銅等が好適である。
【0040】
本発明の製造方法において、相手部材が酸化物分散合金やタングステン、モリブデン等の高融点金属のように高温加熱による蒸発や表面の凹凸化が進み難い金属や合金の場合は一方の金属部材に超平滑化前の加熱処理をするだけでもよい。また、少なくとも部材の一方を金属部材とし、他方の部材を表面を平滑加工したセラミックスとしてもよい。さらに本発明の製造方法は、異種金属部材同士の間にインサート材を介して固相拡散接合する方法にも適用できる。
【0041】
本発明の製造方法によれば、上記の通り、固相拡散接合時の結晶粒は安定になっており、また金属部材の成分の蒸発現象がないので結晶粒の移動に伴う接合面の凹凸化現象も発生せず、接合面における空隙の形成が著しく抑制された。
【0042】
例えば、比較例としてバフ研磨して接合面の表面粗さをRy:100nm(JIS規格B0601−1994による。以下同じ)とした無酸素銅を試料とし、これを真空中で900℃で15分間加熱した試料の表面粗さはRy:9μmとなるのに対して、本発明の方法により同じくバフ研磨して接合面の表面粗さをRy:100nmとした無酸素銅を試料とし、これを950℃で1時間加熱処理した後、再度バフ研磨して表面粗さRy:100nmとし、これを1気圧のアルゴン雰囲気中で900℃で15分間加熱した際の試料の表面粗さはRy:1μmであり、接合時の加熱による表面の凹凸化が抑制されていることが明らかである。
【0043】
【実施例】
実施例1
800℃以上で熱間加工した後、700℃以下で仕上げ焼鈍した直径12mmの2本の酸素濃度10ppm以下の無酸素銅丸棒の端面を0.01μmのアルミナの研磨剤を用いてバフ研磨し、予め表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面にした。
【0044】
この丸棒を950℃で1時間、真空中で加熱処理した。研磨面には厚さ12μmの凹凸層が発生した。この凹凸層が形成された端面を、恒温室で、室温においてダイヤモンド工具を用いて精密旋盤加工によって研削し、再度表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面とした。丸棒の長さは30mmであった。
【0045】
丸棒の端面の研磨した超平滑面同士を接触させ、接合面の温度が900℃となるように加熱し、圧力0.1MPaで接合面同士を押圧し、接合時間10minで加熱、加圧して拡散接合した。雰囲気は、1気圧のアルゴン雰囲気とした。接合後、接合部の断面を研磨し、軽く腐食し光学顕微鏡で材料の結晶粒界の他、接合部の空隙を観察した。その結果、接合部に空隙をほとんど観察できず、空隙は実質的になかった。接合前後の寸法の変化は市販のマイクロメータでは測定できなかった。
【0046】
実施例2
800℃以上で熱間加工した後、700℃以下で仕上げ焼鈍した直径12mmの2本のSUS304ステンレス鋼丸棒の端面を0.01μmのアルミナの研磨剤を用いてバフ研磨し、予め表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面にした。この丸棒を1100℃で1時間、真空中で加熱処理した。研磨面には厚さ8μmの凹凸層が発生した。この凹凸層が形成された端面を、恒温室で、室温においてダイヤモンド工具を用いて精密旋盤加工によって研削し、再度表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面とした。丸棒の長さは30mmであった。
【0047】
丸棒の端面の研磨した超平滑面同士を接触させ、接合面が1000℃となるように加熱し、接合圧力0.5MPaで接合面同士を押圧し、接合時間10minで加熱、加圧して拡散接合した。接合雰囲気は、1気圧のアルゴン雰囲気とした。接合後、接合部の断面を光学顕微鏡で観察した。その結果、接合部には空隙をほとんど観察できず、空隙は実質的になかった。接合前後の寸法の変化は市販のマイクロメータでは測定できなかった。
【0048】
実施例3
800℃以上で熱間加工した後、700℃以下で焼鈍した直径12mmの無酸素銅丸棒を、950℃で1時間真空中で加熱処理した。この丸棒から長さ30mmの試験片を2本切り出した。丸棒の端面を恒温室で、室温においてダイヤモンド工具を用いて精密旋盤加工によって研削し、表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面とした。
【0049】
研磨した超平滑面同士を接触させ、接合面の温度が900℃となるように加熱し、圧力0.1MPaで接合面同士を押圧し、接合時間10minで、加熱、加圧して拡散接合した。雰囲気は、1気圧のアルゴン雰囲気とした。接合後、接合部の断面を研磨し、軽く腐食し光学顕微鏡で材料の結晶粒界のほか、接合部の空隙を観察した。その結果、接合部に空隙をほとんど観察できず、空隙は実質的になかった。
【0050】
比較例1
拡散接合時の雰囲気を真空中とした以外は、実施例1と同一の条件で拡散接合した。接合した面の断面を光学顕微鏡で観察した。その結果、多数の空隙が観察された。接合線上で空隙の占める割合は、70%であった。
【0051】
比較例2
実施例1と同じく、800℃以上で熱間加工した後、700℃以下で仕上げ焼鈍した直径12mmの2本の無酸素銅丸棒の端面を0.01μmのアルミナの研磨剤を用いてバフ研磨し、表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面にした。長さは30mmであった。これを加熱処理と精密旋盤加工により超平滑面とする工程を行なわずに、そのまま、実施例1と同一の条件で拡散接合した。接合した面の断面を光学顕微鏡で観察した。その結果、接合部に、空隙が観察され、接合線上で空隙の占める割合は、50%であった。
【0052】
比較例3
拡散接合時の雰囲気を真空中とした以外は、実施例2と同一の条件で拡散接合した。接合した面の断面を光学顕微鏡で観察した。その結果、多数の空隙が観察され、接合線上での空隙が占める割合は65%であった。
【0053】
比較例4
実施例2と同じく、800℃以上で熱間加工した後、700℃以下で仕上げ焼鈍した直径12mmの2本のSUS304ステンレス鋼丸棒の端面を0.01μmのアルミナの研磨剤を用いてバフ研磨し、表面粗さ10〜100nm程度の超平滑面にした。長さは12mmであった。これを加熱処理と精密旋盤加工により超平滑面とする工程を行こなわずに、そのまま、実施例2と同一の条件で拡散接合した。接合した面の断面を光学顕微鏡で観察した。その結果、接合部に空隙が観察され、接合線上で空隙が占める割合は、50%であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、接合面を超平滑面とした金属部材を1〜0.0003MPaの微弱接合圧力で固相拡散接合する際に、接合した面が凹凸化しないようにすることを可能にしたことにより、拡散接合面に生じる空隙を減少させて欠陥の発生を防止したので、粒子加速器管や二重管等のように精密機械加工された構成部材の形状、寸法精度を保持したまま接合できるとともに接合材製品の機械的特性の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】空隙形成が抑制された本発明の製品の接合面の断面模式図。
【図2】超平滑化した金属表面の組織の断面模式図。
【図3】接合圧力が大きい場合の変形した固相拡散接合面の断面模式図。
【図4】接合圧力が微弱な場合の空隙が形成された固相拡散接合面の断面模式図。
【図5】金属表面の結晶粒界での溝の形成と力の関係(γS :表面エネルギー、γB :界面エネルギー)を示す断面模式図。
【図6】本発明の製造方法において、超平滑化加工前に加熱処理した状態の金属表面の組織の断面模式図。

Claims (3)

  1. JIS規格B0601−1994による表面荒さが1000nm未満の超平滑面を接合面として100〜0.03g/mm 2 微弱接合圧力を加えて金属部材を同種もしくは異種の金属部材またはセラミックス部材と固相拡散接合させてなる製品において、該金属部材は、超平滑面を形成する前に固相拡散接合温度以上で加熱されることにより粗大化した結晶粒を少なくとも接合面に有し、拡散接合した面の空隙の割合が30%以下であることを特徴とする微弱接合圧力で固相拡散接合した製品。
  2. JIS規格B0601−1994による表面荒さが1000nm未満の超平滑面を接合面として100〜0.03g/mm2 (1〜0.0003MPa)の微弱接合圧力を加えて金属部材を同種もしくは異種の金属部材またはセラミックス部材と固相拡散接合させる方法において、超平滑面を形成する前に、該金属部材を固相拡散接合温度以上で加熱して粗大化した結晶粒を少なくとも接合面に形成し、これにより該金属部材の接合面を凹凸化させ、次いで、該凹凸化した表面層を除去して接合面を超平滑面とし、該接合面を他方の部材の接合面と接触させて、還元性雰囲気または不活性雰囲気中で、金属部材の成分の蒸発を起こさない気圧下にて加熱して接合することを特徴とする請求項1記載の微弱接合圧力で固相拡散接合した製品を製造する方法。
  3. 製品の一部をなす金属部材の素材を0.7TM (TM =金属部材の融点[K])以上の温度Tで加熱処理して結晶粒を粗大化させた後、所要の金属部材の形状に仕上加工し、少なくとも接合面をJIS規格B0601−1994による表面荒さが1000nm未満の超平滑面とすることを特徴とする請求項2記載の方法に用いる固相拡散接合用の金属部材の製造方法。
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