JP6826621B2 - 電気化学セル - Google Patents

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Description

本発明は、電気化学セルに関する。
従来、金属支持部材と、金属支持部材上に配置される素子部とを備える電気化学セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。素子部は、金属支持部材によって支持される第1電極と、第2電極と、第1電極及び第2電極の間に配置される電解質とを有する。
国際公開第2018/181926号
電気化学セルでは、第1電極における電極反応を向上させることによって、出力を向上させることが期待されている。
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、出力を向上可能な電気化学セルを提供することを目的とする。
本発明に係る電気化学セルは、金属支持部材と、金属支持部材によって支持される第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置される電解質とを備える。金属支持部材は、金属材料によって構成される複数の線材を織り込むことによって形成されたメッシュ部材である。第1電極は、電解質側に設けられる主面と、主面に設けられる凹凸とを有する。
本発明によれば、出力を向上可能な電気化学セルを提供することができる。
第1実施形態に係る燃料電池セルの構成を示す断面図 第1実施形態に係る金属支持部材の構成を示す平面図 第1実施形態に係る第1電極及び電解質の断面図 第2実施形態に係る燃料電池セルの構成を示す断面図 第2実施形態に係る金属支持部材の構成を示す平面図 第2実施形態に係る第1電極及び電解質の断面図
1.第1実施形態
(固体酸化物形燃料電池セル1の構成)
固体酸化物形燃料電池セル1は、O2−(酸素イオン)をキャリアとする。固体酸化物形燃料電池セル1は、本発明に係る「電気化学セル」の一例である。以下の説明では、固体酸化物形燃料電池セルを「セル」と略称する。
図1は、第1実施形態に係るセル1の構成を示す断面図である。セル1は、金属支持部材4、第1電極5、電解質6、反応防止膜7、及び第2電極8を有する。第1電極5、電
解質6、反応防止膜7、及び第2電極8は、セル1の「素子部」を構成する。
[金属支持部材4]
金属支持部材4は、第1電極5、電解質6、反応防止膜7、及び第2電極8を支持する。金属支持部材4は、全体として平板状に形成される。金属支持部材4は、セル1の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.02mm〜2.0mmとすることができる。
図2は、金属支持部材4の構成を示す平面図である。金属支持部材4は、複数の線材41を織り込むことによって形成されたメッシュ部材である。従って、金属支持部材4の電子伝導性が高く、かつ、金属支持部材4が規則構造を有しているため、金属支持部材4における電子の流れを良好かつ均一にすることができる。その結果、第1電極5での電極反応における電子の授受が円滑になり、電極反応を向上させることができる。
金属支持部材4は、全体としてシート状に形成されているが、表面及び裏面は一様な平面ではなく、線材41の織り込み形状に応じた規則的な凹凸が存在している。
図2では、縦方向及び横方向の両方向に沿って複数の線材41が垂直に織り込まれているが、各線材41の配置は適宜変更可能である。従って、メッシュ部材の織り方は、平織り、綾織り、平畳織り、綾畳織り、或いは、他の織り方であってもよい。
各線材41は、金属材料によって構成される。各線材41を構成する金属材料は特に制限されないが、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。線材41におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。線材41は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。線材41におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。線材41におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。線材41は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl(アルミナ)として含有していてもよい。線材41の表面には、酸化クロム膜が形成されていてもよい。
各線材41の隙間(すなわち、目開き)は、第1電極5に供給される燃料ガス(例えば、水素ガス)の流路として機能する。各線材41の隙間のサイズ(すなわち、目開き寸法)は特に制限されず、適宜設定すればよい。
本実施形態において、金属支持部材4の一部は、第1電極5に埋設されている。ただし、厚み方向(第1電極5、電解質6、及び第2電極8の積層方向)において、金属支持部材4の全体が第1電極5に埋設されていてもよいし、金属支持部材4は第1電極5に埋設されていなくてもよい。
[第1電極5]
第1電極5は、金属支持部材4によって支持される。本実施形態において、第1電極5は、その内部に一部埋設された金属支持部材4によって支持されている。これにより、第1電極5が金属支持部材4上に配置される場合に比べて、金属支持部材4と第1電極5との間に発生する熱応力によって第1電極5が金属支持部材4から剥離することを抑制できる。ただし、第1電極5は、金属支持部材4上に配置されていてもよい。
第1電極5は、多孔質であることが好ましい。第1電極5の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第1電極5の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
本実施形態において、第1電極5には燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給され、第1電極5は、アノード(燃料極)として機能する。第1電極5は、NiO−GDC(ガドリニウムドープセリア)、Ni−GDC、NiO−YSZ(イットリア安定化ジルコニア))、Ni−YSZ、CuO−CeO、Cu−CeOなどの遷移金属を含有する複合材料によって構成することができる。
第1電極5の成膜方法は特に制限されず、焼成法、スクリーン印刷法(成形体の焼成条件は、例えば1時間〜10時間、1000℃〜1200℃)、スプレーコーティング法(溶射法、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法など)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより成膜することができる。
[電解質6]
電解質6は、第1電極5と第2電極8との間に配置される。本実施形態では、セル1が反応防止膜7を有しているため、電解質6は、第1電極5と反応防止膜7との間に介挿されている。
本実施形態において、電解質6は、第1電極5全体を覆うように成膜されており、電解質6の外縁は、金属支持部材4に接合されている。これにより、第1電極5に供給される燃料ガスと第2電極8に供給される酸化剤ガスとの混合を抑制できるため、金属支持部材4と電解質6との間を別途封止する必要がない。
電解質6は、酸化物イオン伝導性を有する。電解質6は、酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を抑制できる程度のガスバリア性を有する。電解質6は、複層構造であってもよいが、少なくとも1つの層が緻密層であることが好ましい。緻密層の気孔率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。
電解質6は、YSZ、GDC、SSZ、SDC、LSGMなどによって構成することができる。電解質6の成膜方法は特に制限されず、焼成法、スクリーン印刷法(成形体の焼成条件は、例えば1時間〜10時間、1000℃〜1200℃)、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより成膜することができる。
[反応防止膜7]
反応防止膜7は、電解質6上に配置される。反応防止膜7は、電解質6と第2電極8との間に介挿される。反応防止膜7の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。反応防止膜7は、第2電極8の構成材料と電解質6の構成材料とが反応して高抵抗層が成膜されることを抑制する。
反応防止膜7は、GDC、SDCなどのセリア系材料によって構成することができる。反応防止膜7の成膜方法は特に制限されず、焼成法、スクリーン印刷法(成形体の焼成条件は、例えば1時間〜10時間、1000℃〜1200℃)、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより成膜することができる。
[第2電極8]
第2電極8は、電解質6を基準として、第1電極5の反対側に配置される。本実施形態では、セル1が反応防止膜7を有しているため、第2電極8は、反応防止膜7上に配置される。
第2電極8は、多孔質であることが好ましい。第2電極8の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第2電極8の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
本実施形態において、第2電極8には酸化剤ガス(例えば、空気)が供給され、第2電極8は、カソード(空気極)として機能する。第2電極8は、LSCF、LSF、LSC、LNF、LSMなどによって構成することができる。特に、第2電極8は、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含んでいることが好ましい。
第2電極8の成膜方法は特に制限されず、焼成法、スクリーン印刷法(成形体の焼成条件は、例えば1時間〜10時間、800℃〜1000℃)、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより成膜することができる。
[セル1の動作]
まず、第1電極5に燃料ガスを供給し、かつ、第2電極8に酸化剤ガスを供給しながら、セル1を作動温度(例えば、600℃〜850℃)まで加熱する。すると、第2電極8においてO(酸素)がe(電子)と反応してO2−(酸素イオン)が生成される。生成されたO2−は、電解質6を通って第1電極5に移動する。第1電極5に移動したO2−は、燃料ガスに含まれるH(水素)と反応して、HO(水)とeとが生成される。このような反応によって、第1電極5と第2電極8との間に起電力が発生する。
(第1電極5及び電解質6の断面構造)
次に、第1電極5及び電解質6の断面構造について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1電極5及び電解質6の断面図である。図3では、セル1の厚み方向(すなわち、積層方向)に平行な断面が図示されている。
[第1電極5の断面構造]
第1電極5は、電解質6側に設けられる第1主面5Sと、第1主面5Sの反対側に設けられる第2主面5Tとを有する。第1主面5Sは、本発明に係る「第1電極の主面」の一例である。
第1主面5Sには、凹凸が設けられている。具体的に、第1主面5Sには、複数の凸部51と複数の凹部52とが形成されている。各凸部51と各凹部52は、第1主面5Sの全体に形成されていることが好ましいが、第1主面5Sの一部に形成されていてもよい。各凸部51と各凹部52は、互いに滑らかに連なっていることが好ましい。本実施形態において、第1主面5Sの凹凸は、金属支持部材4として用いられるメッシュ部材の織り込み形状を利用して簡便に形成される。
このように、第1主面5Sに凹凸が設けられることによって、第1主面5Sの少なくとも一部は、波状に形成される。これにより、第1主面5Sを一様な平面状に形成する場合に比べて、第1主面5Sの平面視における幾何面積当たりの実面積を大きくすることができる。そのため、第1電極51における電極反応を向上させることができるとともに、第1電極51の内部に広く燃料ガスを拡散させることができるだけでなく、第1電極5と第1電極5上に成膜される膜(本実施形態では、電解質6)との接合性を向上させることができる。さらに、第1主面5Sの少なくとも一部が波状に形成されることによって、第1主面5S側又は第2主面5T側に第1電極51が反ってしまうことを抑制できる。
隣接する2つの凸部51の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。隣接する2つの凹部51の間隔(ピッチ)は特に制
限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。
第2主面5Tには、凹凸が設けられていてもよいし、凹凸が設けられていなくてもよい。図3に示すように、金属支持部材4(具体的には、線材41)は、第2主面5Tから露出していてもよいし、第2主面5Tの内部に埋まっていてもよい。
[電解質6の断面構造]
電解質6は、第2電極8(図1参照)側に設けられる第1主面6Sを有する。第1主面6Sは、本発明に係る「電解質の主面」の一例である。
第1主面6Sには、凹凸が設けられている。具体的に、第1主面6Sには、複数の凸部61と複数の凹部62とが形成されている。各凸部61と各凹部62は、第1主面6Sの全体に形成されていることが好ましいが、第1主面6Sの一部に形成されていてもよい。各凸部61と各凹部62は、互いに滑らかに連なっていることが好ましい。本実施形態において、第1主面6Sの凹凸は、第1電極5の凹凸を利用して簡便に形成される。
このように、第1主面6Sに凹凸が設けられることによって、第1主面6Sの少なくとも一部は、波状に形成される。これにより、第1主面6Sを一様な平面状に形成する場合に比べて、第1主面6Sの平面視における幾何面積当たりの実面積を大きくすることができる。そのため、電解質6と電解質6上に成膜される膜(本実施形態では、反応防止膜7)との接合性を向上させることができる。
隣接する2つの凸部61の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。隣接する2つの凹部61の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。
電解質6の平均厚みμは特に制限されないが、例えば1μm〜20μmとすることができる。電解質6の平均厚みμは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電解質6の断面を観察して、10個の凸部61付近の厚みと10個の凹部62付近の厚みとを測定し、それらを算術平均することによって算出される。
電解質6の平均厚みμに対する標準偏差σの比(すなわち、変動係数σ/μ)は、0.25以下であることが好ましい。これにより、面方向における電解質6の厚みばらつきを十分小さくすることができるため、第2電極8で生成されたO2−(酸素イオン)が電解質6の薄い領域に集中することによって生じる第1電極5における局所的な燃料欠乏を抑制できる。従って、電解質6内のO2−伝導性を面方向において均一にできるため、第1電極5における電極反応をより向上させることができる。その結果、セル1の出力が低下することを抑制できる。また、燃料欠乏により生じる第1電極5に含まれる遷移金属の再酸化を抑制することが可能となるため、再酸化による電極剥離およびクラック発生を抑制することができる。
電解質6の平均厚みμに対する標準偏差σの比(変動係数σ/μ)は、0.20以下がより好ましく、0.15以下が更に好ましい。
電解質6の平均厚みμに対する標準偏差σの比は、電解質の成膜方法、乾燥速度およびメッシュ部材の目開きの調整等により簡便に制御することができる。例えば、電解質の成膜時に粘度の時間依存(チクソトロピー性)のあるスラリーやペーストを用いて保形性を制御することや成膜後の乾燥速度を速めることで電解質の流動を防止する等の手段により制御が可能である。具体的には、スラリーやペーストの粘度が時間経過とともに高くなるほど、或いは、乾燥速度を速めるほど、変動係数σ/μを小さくすることができる。
2.第2実施形態
(固体アルカリ形燃料電池セル10の構成)
固体アルカリ形燃料電池セル10は、OH(水酸化物イオン)をキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である。固体アルカリ形燃料電池セル10は、本発明に係る「電気化学セル」の一例である。以下の説明では、固体アルカリ形燃料電池セルを「セル」と略称する。
図4は、第2実施形態に係るセル10の構成を示す断面図である。セル10は、金属支持部材14、第1電極15、電解質16、及び第2電極18を有する。第1電極15、電解質16、及び第2電極18は、セル10の「素子部」を構成する。
[金属支持部材14]
金属支持部材14は、第1電極15、電解質16、及び第2電極18を支持する。金属支持部材14は、全体として平板状に形成される。金属支持部材14は、セル10の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.02mm〜2.0mmとすることができる。
図5は、金属支持部材14の構成を示す平面図である。金属支持部材14は、複数の線材141を織り込むことによって形成されたメッシュ部材である。従って、金属支持部材14の電子伝導性が高く、かつ、金属支持部材14が規則構造を有しているため、金属支持部材14における電子の流れを良好かつ均一にすることができる。その結果、第1電極15での電極反応における電子の授受が円滑になり、電極反応を向上させることができる。
金属支持部材14は、全体としてシート状に形成されているが、表面及び裏面は一様な平面ではなく、線材141の織り込み形状に応じた規則的な凹凸が存在している。
図5では、縦方向及び横方向の両方向に沿って複数の線材141が垂直に織り込まれているが、各線材141の配置は適宜変更可能である。従って、メッシュ部材の織り方は、平織り、綾織り、平畳織り、綾畳織り、或いは、他の織り方であってもよい。
各線材141は、金属材料によって構成される。各線材141を構成する金属材料は特に制限されないが、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。線材141におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。線材141は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。線材141におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。線材141におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。線材141は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl(アルミナ)として含有していてもよい。線材141の表面には、酸化クロム膜が形成されていてもよい。
各線材141の隙間(すなわち、目開き)は、第1電極15に供給される燃料(例えば、メタノール)の流路として機能する。各線材141の隙間のサイズ(すなわち、目開き寸法)は特に制限されず、適宜設定すればよい。
本実施形態において、金属支持部材14の一部は、第1電極15に埋設されている。ただし、厚み方向(第1電極15、電解質16、及び第2電極18の積層方向)において、金属支持部材14の全体が第1電極15に埋設されていてもよいし、金属支持部材14は第1電極15に埋設されていなくてもよい。
[第1電極15]
第1電極15は、一般的に燃料極と呼ばれるアノードである。セル10の発電中、第1電極15には、水素原子(H)を含む燃料が供給される。第1電極15は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。第1電極15の気孔率は特に制限されない。第1電極15の厚みは特に制限されないが、例えば10〜500μmとすることができる。
水素原子を含む燃料は、第1電極15において水酸化物イオン(OH)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、及びカルボンヒドラジド((NHNHCO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NHCONH)、(iii)アンモニア(NH)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば30〜99.9重量%であり、好ましくは66〜99.9重量%である。
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係るセル10に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
第1電極15は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。第1電極15及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、白金ルテニウム担持カーボン(PtRu/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担
持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
第1電極15の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質16のアノード側表面16Tに塗布することにより形成することができる。
[電解質16]
電解質16は、第1電極15と第2電極18との間に配置される。電解質16は、第1電極15及び第2電極18のそれぞれに接続される。電解質16は、膜状、層状、或いは、シート状に形成される。
電解質16は、水酸化物イオン伝導性を有する。セル10の発電中、電解質16は、第2電極18側から第1電極15側に水酸化物イオン(OH)を伝導させる。電解質16の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。電解質16の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
電解質16は、緻密であることが好ましい。アルキメデス法で算出される電解質16の相対密度は特に制限されないが、90%以上が好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。電解質16は、例えば水熱処理によって緻密化することができる。
電解質16は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。このようなセラミックス材料としては、水酸化物イオン伝導性を有する周知のセラミックスを用いることができるが、以下に説明する層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)が特に好適である。
LDHは、M2+ 1−x3+ (OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、Anの例としてはCO 2−及びOHが挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素とし
て含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO 2−を含む。
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+ 1−x−yAl3+ Ti4+ (OH)n− (x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
[第2電極18]
第2電極18は、一般的に空気極と呼ばれるカソードである。セル10の発電中、第2電極18には、酸素(O)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。第2電極18は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。第2電極18の気孔率は特に制限されない。第2電極18の厚みは特に制限されないが、例えば10〜200μmとすることができる。
第2電極18は、AFCに使用される公知のカソード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。第2電極18における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜10mg/cm、より好ましくは、0.05〜5mg/cmである。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。第2電極18ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、白金コバルト担持カーボン(PtCo/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
第2電極18の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質16のカソード側表面16Sに塗布することにより形成することができる。
[セル10の動作]
まず、第1電極15に燃料を供給し、かつ、第2電極18に酸化剤を供給しながら、セル10を作動温度(例えば、50℃〜250℃)まで加熱する。すると、第2電極18に
おいてO(酸素)が水及びe(電子)と反応してOH(水酸化物イオン)が生成される。生成されたOHは、電解質16を通って第1電極15に移動する。第1電極15に移動したOHは、燃料と反応して、HO(水)とCO(二酸化炭素)とeとが生成される。このような反応によって、第1電極15と第2電極18との間に起電力が発生する。
(第1電極15及び電解質16の断面構造)
次に、第1電極15及び電解質16の断面構造について、図面を参照しながら説明する。図6は、第1電極15及び電解質16の断面図である。図6では、セル10の厚み方向(すなわち、積層方向)に平行な断面が図示されている。
[第1電極15の断面構造]
第1電極15は、電解質16側に設けられる第1主面15Sと、第1主面15Sの反対側に設けられる第2主面15Tとを有する。第1主面15Sは、本発明に係る「第1電極の主面」の一例である。
第1主面15Sには、凹凸が設けられている。具体的に、第1主面15Sには、複数の凸部151と複数の凹部152とが形成されている。各凸部151と各凹部152は、第1主面15Sの全体に形成されていることが好ましいが、第1主面15Sの一部に形成されていてもよい。各凸部151と各凹部152は、互いに滑らかに連なっていることが好ましい。本実施形態において、第1主面15Sの凹凸は、金属支持部材14として用いられるメッシュ部材の織り込み形状を利用して簡便に形成される。
このように、第1主面15Sに凹凸が設けられることによって、第1主面15Sの少なくとも一部は、波状に形成される。これにより、第1主面15Sを一様な平面状に形成する場合に比べて、第1主面15Sの平面視における幾何面積当たりの実面積を大きくすることができる。そのため、第1電極15における電極反応を向上させることができるとともに、第1電極15の内部に広く燃料ガスを拡散させることができるだけでなく、第1電極15と第1電極15上に成膜される膜(本実施形態では、電解質16)との接合性を向上させることができる。さらに、第1主面15Sの少なくとも一部が波状に形成されることによって、第1主面15S側又は第2主面15T側に第1電極15が反ってしまうことを抑制できる。
隣接する2つの凸部151の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。隣接する2つの凹部151の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。
第2主面15Tには、凹凸が設けられていてもよいし、凹凸が設けられていなくてもよい。図6に示すように、金属支持部材14(具体的には、線材141)は、第2主面15Tから露出していてもよいし、第2主面15Tの内部に埋まっていてもよい。
[電解質16の断面構造]
電解質16は、第2電極18(図4参照)側に設けられる第1主面6Sを有する。第1主面6Sは、本発明に係る「電解質の主面」の一例である。
第1主面16Sには、凹凸が設けられている。具体的に、第1主面16Sには、複数の凸部161と複数の凹部162とが形成されている。各凸部161と各凹部162は、第1主面16Sの全体に形成されていることが好ましいが、第1主面16Sの一部に形成されていてもよい。各凸部161と各凹部162は、互いに滑らかに連なっていることが好ましい。本実施形態において、第1主面16Sの凹凸は、第1電極15の凹凸を利用して
簡便に形成される。
このように、第1主面16Sに凹凸が設けられることによって、第1主面16Sの少なくとも一部は、波状に形成される。これにより、第1主面16Sを一様な平面状に形成する場合に比べて、第1主面16Sの平面視における幾何面積当たりの実面積を大きくすることができる。そのため、電解質16と電解質16上に成膜される膜(本実施形態では、第2電極18)との接合性を向上させることができる。
隣接する2つの凸部161の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。隣接する2つの凹部161の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、例えば0.01mm以上2mm以下とすることができる。
電解質16の平均厚みμは特に制限されないが、例えば1μm〜20μmとすることができる。電解質16の平均厚みμは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電解質16の断面を観察して、10個の凸部161付近の厚みと10個の凹部162付近の厚みとを測定し、それらを算術平均することによって算出される。
電解質16の平均厚みμに対する標準偏差σの比(すなわち、変動係数σ/μ)は、0.25以下であることが好ましい。これにより、面方向における電解質16の厚みばらつきを十分小さくすることができるため、第2電極18で生成されたOH(水酸化物イオン)が電解質16の薄い領域に集中することによって生じる第1電極15における局所的な燃料欠乏を抑制できる。従って、電解質16内のOH伝導性を面方向において均一にできるため、第1電極15における電極反応をより向上させることができる。その結果、セル10の出力が低下することを抑制できる。また、燃料欠乏により生じる局所的な高電位化による金属触媒の溶出やカーボン担体の腐食を抑制することが可能となるため、それらによる出力低下を抑制することができる。
電解質16の平均厚みμに対する標準偏差σの比(変動係数σ/μ)は、0.20以下がより好ましく、0.15以下が更に好ましい。
電解質16の平均厚みμに対する標準偏差σの比は、電解質16の成膜方法、乾燥速度およびメッシュ部材の目開きの調整等により簡便に制御することができる。例えば、電解質16の成膜時に粘度の時間依存(チクソトロピー性)のあるスラリーやペーストを用いて保形性を制御することや成膜後の乾燥速度を速めることで電解質16の流動を防止する等の手段により制御が可能である。具体的には、スラリーやペーストの粘度が時間経過とともに高くなるほど、或いは、乾燥速度を速めるほど、変動係数σ/μを小さくすることができる。
(他の実施形態)
本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
[変形例1]
上記第1実施形態では、電気化学セルの一例として、O2−(酸素イオン)をキャリアとする固体酸化物形燃料電池セル1について説明した。また、上記第2実施形態では、電気化学セルの一例として、OH(水酸化物イオン)をキャリアとする固体アルカリ形燃料電池セル10について説明した。しかしながら、電気化学セルとは、電気エネルギーを化学エネルギーに変えるため、全体的な酸化還元反応から起電力が生じるように一対の電極が配置された素子と、化学エネルギーを電気エネルギーに変えるための素子との総称である。従って、電気化学セルには、例えば、プロトンをキャリアとする燃料電池や、水蒸
気から水素と酸素を生成する電解セルなどが含まれる。
[変形例2]
上記第1及び第2実施形態において、金属支持部材4,14の線材41,141は、基材及び酸化クロム膜によって構成されることとしたが、金属支持部材4,14の最表面には被覆膜が形成されていてもよい。被覆膜を構成する材料としては、セラミックス材料及び金属材料などを用いることができる。
[変形例3]
上記第1実施形態において、セル10は、反応防止膜7を含むこととしたが、反応防止膜7を含んでいなくてよい。
[変形例4]
上記第1及び第2実施形態において、第1電極5,15はアノードとして機能し、第2電極8,18はカソードとして機能することとしたが、第1電極5,15がカソードとして機能し、第2電極8,18がアノードとして機能してもよい。この場合、第1電極5,15と第2電極8,18の構成材料を入れ替えるとともに、第1電極5,15に燃料を供給するとともに、第2電極8,18に酸化剤を供給すればよい。
本発明の実施例について説明する。以下の実施例では、金属支持部材としてメッシュ部材を用いることにより、第1電極の主面に規則的な凹凸を設けた場合に、電解質の平均厚みに対する厚みの標準偏差の比(変動係数)が出力及び電極剥離に与える影響を確認する。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
(実施例1〜6及び比較例1〜3の燃料電池セル)
まず、金属支持部材として用いる金属メッシュ(メッシュ数500、線径0.025mm、目開き0.026mm)を準備した。
次に、スクリーン印刷法を用いて、金属支持部材上にNiO−YSZを塗布することにより、燃料極(第1電極)の成形体を形成した。
次に、スクリーン印刷法を用いて、燃料極の成形体上にYSZを塗布することにより、電解質の成形体を形成した。この際、塗布厚を調整することによって、表1に示すように、電解質の平均厚みをサンプルごとに調整した。具体的には、実施例1,2及び比較例1における電解質の平均厚みを1μmとし、実施例3,4及び比較例2における電解質の平均厚みを5μmとし、実施例5,6及び比較例3における電解質の平均厚みを20μmとした。また、ペーストのチクソトロピー性や乾燥速度を調整することによって、表1に示すように、電解質の平均厚みに対する標準偏差の比(すなわち、変動係数)をサンプルごとに調整した。
次に、スクリーン印刷法を用いて、電解質の成形体上にGDCを塗布することにより、反応防止膜の成形体を形成した。
次に、スクリーン印刷法を用いて、反応防止膜の成形体上にLSCFを塗布することにより、空気極(第2電極)反応防止膜の成形体を形成した。
次に、各成形体を焼成することによって、燃料電池セルを作製した。
(評価方法)
以上のようにして作製した実施例1〜6及び比較例1〜3について、700℃、1000時間の発電評価を行った。燃料極には水素ガスを供給し、空気極には空気を供給した。
そして、実施例1〜6及び比較例1〜3について、発電試験開始時の初期出力と1000時間発電した時点での最終出力とを測定し、最終出力を初期出力で除すことによって、出力低下率を算出した。
また、発電試験終了後に燃料電池セルを厚み方向に切断して、金属支持部材と燃料極との界面に剥離が生じているか否かを確認した。
表1では、出力低下率が2%以上であり、20μm以上の剥離が観察されたサンプルは「×」と評価され、出力低下率が2%未満であり、20μm未満の微小な剥離が観察されたサンプルは○と評価され、出力低下率が2%未満であり、剥離が観察されなかったサンプルは◎と評価されている。
Figure 0006826621
表1に示すように、変動係数が0.25超の比較例1〜3では、出力低下率が2%以上で、かつ、第1電極の剥離も観察された。
一方、変動係数を0.25以下とした実施例1〜6では、電解質の厚みの大小に関わりなく、出力の低下を抑制するとともに、第1電極の剥離を抑制することができた。このような結果が得られたのは、電解質の厚みばらつきを小さくすることで、第1電極における局所的な燃料欠乏が抑制された結果、電解質内のO2−伝導性が均一になるとともに、燃料極に含まれる遷移金属の再酸化を抑制できたからである。
また、表1に示すように、変動係数を0.20以下とした実施例2,4,6では、出力の低下を更に抑制するとともに、第1電極の剥離を更に抑制することができた。
1,10 セル
4,14 金属支持部材(メッシュ部材)
41,141 線材
5,15 第1電極
5S,15S 第1主面
51,151 凸部
52,152 凹部
6,16 電解質
6S,16S 第1主面
61,161 凸部
62,162 凹部
7 反応防止膜
8,18 第2電極

Claims (5)

  1. 金属支持部材と、
    前記金属支持部材によって支持される第1電極と、
    第2電極と、
    前記第1電極と第2電極との間に配置される固体電解質と、
    を備え、
    前記金属支持部材は、金属材料によって構成される複数の線材を織り込むことによって形成されたメッシュ部材であり、
    前記第1電極は、前記固体電解質側に設けられる主面と、前記主面に設けられ、前記メッシュ部材の表面の凹凸に対応する凹凸とを有
    前記固体電解質の平均厚みに対する厚みの標準偏差の比は、0.25以下である、
    電気化学セル。
  2. 前記固体電解質は、前記第2電極側に設けられる主面と、前記主面に設けられる凹凸とを有する、
    請求項に記載の電気化学セル。
  3. 前記金属支持部材の少なくとも一部は、第1電極に埋設される、
    請求項1又は2に記載の電気化学セル。
  4. 前記固体電解質は、酸素イオン伝導性を有する、
    請求項1乃至のいずれかに記載の電気化学セル。
  5. 前記固体電解質は、水酸化物イオン伝導性を有する、
    請求項1乃至のいずれかに記載の電気化学セル。
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