JP6778793B2 - 電気化学セル用電解質及び電気化学セル - Google Patents

電気化学セル用電解質及び電気化学セル Download PDF

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Description

本発明は、電気化学セル用電解質及び電気化学セルに関する。
従来、アルカリ形燃料電池、アルカリ形二次電池及び電解セルなどの電気化学セルでは、イオン伝導性を有するイオン伝導体が電解質として用いられている(例えば、特許文献1参照)。
特開2016−071948号公報
しかしながら、上述した電気化学セルでは、水(又は、水蒸気)存在下で電解質が用いられるため、電解質内の含水状況によって電解質に体積変化が生じて、電解質の内部に損傷が生じるおそれがある。
本発明は、損傷を抑制可能な電気化学セル用電解質、及び電解質の損傷を抑制可能な電気化学セルを提供することを目的とする。
本発明に係る電気化学セル用電解質は、多孔質基材と、イオン伝導体とを備える。多孔質基材は、三次元網目構造を有し、連続孔を形成する。イオン伝導体は、イオン伝導性を有し、連続孔内に配置される。多孔質基材は、金属材料によって構成される。多孔質基材の厚み方向に平行な断面に露出する連続孔の複数の断面のうち少なくとも1つは、厚み方向に垂直な面方向に延びる。
本発明によれば、損傷を抑制可能な電気化学セル用電解質、及び電解質の損傷を抑制可能な電気化学セルを提供することができる。
固体アルカリ形燃料電池の構成を模式的に示す断面図 図1の部分拡大図 図1の部分拡大図
(固体アルカリ形燃料電池10)
以下、本発明に係る電気化学セル用電解質を適用した電気化学セルの一例として、水酸化物イオンをキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である固体アルカリ形燃料電池10の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池10の構成を示す断面図である。固体アルカリ形燃料電池10は、カソード12、アノード14、及び電解質16(「電気化学セル用電解質」の一例)を備える。固体アルカリ形燃料電池10は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃〜250℃)で発電する。ただし、下記の電気化学反応式では、燃料の一例としてメタノールを用いた場合が例示されている。
・カソード12: 3/2O+3HO+6e→6OH
・アノード14: CHOH+6OH→6e+CO+5H
・全体 : CHOH+3/2O→CO+2H
カソード12は、一般的に空気極と呼ばれる陽極である。固体アルカリ形燃料電池10の発電中、カソード12には、酸化剤供給手段13を介して、酸素(O)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。カソード12は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード12の気孔率は特に制限されない。
カソード12は、AFCに使用される公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード12における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜10mg/cm、より好ましくは、0.05〜5mg/cmである。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード12ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、白金コバルト担持カーボン(PtCo/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
カソード12の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質16のカソード側表面16Sに塗布することにより形成することができる。
アノード14は、一般的に燃料極と呼ばれる陰極である。固体アルカリ形燃料電池10の発電中、アノード14には、燃料供給手段15を介して、水素原子(H)を含む燃料が供給される。アノード14は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。アノード14の気孔率は特に制限されない。
燃料は、アノード14において水酸化物イオン(OH)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、及びカルボンヒドラジド((NHNHCO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NHCONH)、(iii)アンモニア(NH)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば30〜99.9重量%であり、好ましくは66〜99.9重量%である。
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池10に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
アノード14は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード14及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、白金ルテニウム担持カーボン(PtRu/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
アノード14の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質16のアノード側表面16Tに塗布することにより形成することができる。
電解質16は、カソード12とアノード14との間に配置される。電解質16は、カソード12及びアノード14のそれぞれに接続される。電解質16は、膜状、層状、或いは、シート状に形成される。
図2は、電解質16の断面を拡大して示す模式図である。電解質16は、多孔質基材20と、無機固体電解質体22とを有する。
多孔質基材20は、連続孔20aを形成する。連続孔20aは、多孔質基材20の外裏表面に連なるように形成される。連続孔20aには、後述する無機固体電解質体22が含浸されている。
多孔質基材20は、金属材料によって構成される。多孔質基材20を構成する金属材料としては、ステンレス(Fe−Cr系合金、Fe−Ni−Cr系合金など)、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、又は、チタンなどを用いることができる。このような金属材料は、セラミックス材料や高分子材料に比べて熱伝導性が高いため、多孔質基材20の放熱効率を向上させることができるとともに、多孔質基材20内の温度分布を低減させることができる。
多孔質基材20は、三次元網目構造を有していてもよい。「三次元網目構造」とは、基材の構成物質が立体的かつ網目状に繋がった構造である。三次元網目構造を有する多孔質基材20としては、例えば、多孔質金属材料(例えば、発泡金属材料)によって構成されるセル状又はモノリス状の構造物や、細線金属材料によって構成されるメッシュ状の塊や金属不織布などが挙げられる。
多孔質基材20は、三次元網目構造を有していなくてもよい。三次元網目構造を有さない多孔質基材20としては、金属材料によって構成される複数の線材を織り込むことによって形成されたメッシュ部材のほか、微細な複数のストレート孔が形成された金属薄板などが挙げられる。メッシュ部材は、全体としてシート状に形成されていてもよい。線材の織り方は、平織り、綾織り、平畳織り、綾畳織り、或いは他の織り方であってもよい。多孔質基材20としてメッシュ部材を用いる場合、各線材の隙間(すなわち、目開き)が連続孔20aとなる。金属薄板のストレート孔は、例えばレーザー加工によって形成することができる。多孔質基材20として金属薄板を用いる場合、ストレート孔が連続孔20aとなる。
多孔質基材20の表面(連続孔20aの内表面を含む)には、絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜は、基材金属の不動態化処理によって形成される不動態膜であってもよいし、Cr、Al、ZrO、MgO、MgAlなどの酸化物によって構成される酸化物膜であってもよい。多孔質基材20をステンレスによって構成する場合、ステンレスを酸化処理することにより、絶縁膜としてのCr膜を簡便に形成することができる。ただし、本実施形態では、後述する第1及び第2膜状部22b,22cが、カソード12及びアノード14それぞれとの間で絶縁膜として機能するため、多孔質基材20の表面には、絶縁膜が形成されていなくてもよい。
多孔質基材20の厚さは特に制限されないが、例えば、200μm以下とすることができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下であり、50μm以下が最も好ましい。多孔質基材20の厚さの下限値は、用途に応じて適宜設定すればよいが、ある程度の堅さを確保するには10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。
図2に示すように、多孔質基材20の厚み方向に平行な断面には、連続孔20aの複数の断面が露出する。この断面に露出する連続孔20aの各断面は、厚み方向に垂直な面方向に延びる。すなわち、連続孔20aの各断面は、面方向に沿って扁平に形成されている。これにより、厚み方向における電解質16の柔軟性を向上させることができるため、固体アルカリ形燃料電池10の作動/停止の繰り返しに応じて電解質16内の含水状況が変動して、電解質16に体積変化が生じたとしても、電解質16が損傷することを抑制できる。その結果、カソード12及びアノード14の間でガスリークが生じることを抑制できる。
なお、図2では、断面に露出する連続孔20aの各断面のほぼ全てが扁平であるが、断面に露出する連続孔20aの複数の断面のうち少なくとも1つが扁平であればよい。この場合であっても、扁平な断面が1つも存在しない場合に比べて、厚み方向における電解質16の柔軟性を向上させることができる。
面方向における連続孔20aの各断面の平均幅は、厚み方向における連続孔20aの各断面の平均高さよりも大きい。すなわち、多孔質基材20の厚み方向に平行な断面において、連続孔20aの平均アスペクト比(平均幅/平均高さ)は、1よりも大きい。面方向における連続孔20aの各断面の平均幅は、厚み方向における連続孔20aの各断面の平均高さの1.2倍以上であることが好ましい。これにより、厚み方向における電解質16の柔軟性を特に向上させることができる。
面方向における連続孔20aの各断面の平均幅とは、多孔質基材20の断面を電子顕微鏡で観察した観察画像から無作為に選出した20個の連続孔20aの各断面の幅W1を算術平均した値である。連続孔20aの断面の幅W1とは、図2に示すように、連続孔20aの断面の面方向における最大幅である。なお、電子顕微鏡の倍率は、連続孔20aの断面サイズに応じて適宜設定すればよい。
厚み方向における連続孔20aの各断面の平均高さとは、上述したSEM画像から平均幅の算出のために選出した20個の連続孔20aの各断面の高さT1を算術平均した値である。連続孔20aの断面の高さT1とは、図2に示すように、連続孔20aの断面の厚み方向における最大高さである。
多孔質基材20の断面における連続孔20aの平均内径は特に制限されないが、例えば、1〜1000μmとすることができ、好ましくは2〜500μm、より好ましくは5〜400μm、さらに好ましくは7〜300μm、特に好ましくは10〜200μmである。これらの範囲内とすることによって、多孔質基材20に支持体としての強度を付与しつつ、無機固体電解質体22の緻密度を向上させることができる。連続孔20aの平均内径は、多孔質基材20の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、観察画像上で無作為に選出した20箇所における連続孔20aの円相当径を算術平均することによって得られる。連続孔20aの円相当径とは、観察画像において、連続孔20aの断面積と同じ面積を有する円の直径である。なお、電子顕微鏡の倍率は、連続孔20aの断面サイズに応じて適宜設定すればよい。
連続孔20aの体積率は特に制限されないが、例えば、10〜60%とすることができ、好ましくは15〜55%、より好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることによって、多孔質基材20に支持体としての強度を確保しつつ、無機固体電解質体22の緻密度を向上させることができる。連続孔20aの体積率は、アルキメデス法により測定することができる。
また、図2では図示されていないが、多孔質基材20は、それ自体の内部に複数の細孔を有することが好ましい。複数の細孔は、多孔質基材20の内部において、互いに繋がっていてもよい。そして、各細孔は多孔質基材20の表面に開口する開気孔であって、各細孔には無機固体電解質体22が含浸していることがより好ましい。これによって、連続孔20a→多孔質基材20内の細孔→連続孔20aという短距離イオン伝導パスや、連続孔20a→多孔質基材20内の細孔→第2膜状部22c、或いは、第1膜状部22b→多孔質基材20内の細孔→第2膜状部22cという長距離イオン伝導パスを形成することができる。その結果、複合部22a内のイオン伝導可能領域が広がるため、電解質16全体としてのイオン伝導性を向上させることができる。なお、多孔質金属材料によって多孔質基材20を構成する場合、多孔質基材20の内部に複数の細孔を簡便に設けることができる。
無機固体電解質体22は、水酸化物イオン伝導性を有する。固体アルカリ形燃料電池10の発電中、無機固体電解質体22は、カソード12側からアノード14側に水酸化物イオン(OH)を伝導させる。無機固体電解質体22の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。無機固体電解質体22の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
無機固体電解質体22は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。このようなセラミックス材料としては、水酸化物イオン伝導性を有する周知のセラミックスを用いることができるが、以下に説明する層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)が特に好適である。
LDHは、M2+ 1−x3+ (OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、Anの例としてはCO 2−及びOH−が挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO 2−を含む。
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+ 1−x−yAl3+ Ti4+ (OH)n− (x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
本実施形態において、無機固体電解質体22は、複合部22a(「イオン伝導体」の一例)、第1膜状部22b、及び第2膜状部22cを有する。
複合部22aは、第1膜状部22bと第2膜状部22cとの間に配置される。複合部22aは、多孔質基材20の連続孔20a内に配置される。複合部22aは、連続孔20a内に含浸されており、多孔質基材20と一体化している。このように、無機固体電解質体22を多孔質基材20で支持することによって、無機固体電解質体22の強度を向上できるため、無機固体電解質体22を薄くすることができる。その結果、電解質16の低抵抗化を図ることができる。
本実施形態において、複合部22aは、多孔質基材20の連続孔20a内の略全域に広がっているが、無機固体電解質体22が第1膜状部22b及び第2膜状部22cの少なくとも一方を有さない場合、複合部22aは、多孔質基材20の一部にのみ含浸されていてもよい。
ここで、複合部22aは、その内部に形成された複数の閉気孔24を有する。このような閉気孔24が複合部22aの内部に形成されているため、固体アルカリ形燃料電池10の作動中に複合部22aの含水状況の変動に起因する電解質16の体積変化を緩和させることができる。これにより、カソード12と電解質16との界面、又は/及び、アノード14と電解質16との界面に応力が発生することを抑制できるため、カソード12又は/及びアノード14から電解質16が剥離したり、或いは、電解質16自体が変形したりすることを抑制できる。
また、閉気孔24が複合部22aの内部に形成されることで、複合部22aに柔軟性を付与することができるため、固体アルカリ形燃料電池10内の温度分布に起因して、カソード12と電解質16との界面、又は/及び、アノード14と電解質16との界面に熱応力が発生することを抑制できる。そのため、カソード12又は/及びアノード14から電解質16が剥離したり、或いは、電解質16自体が変形したりすることを抑制できる。
図2に示すように、多孔質基材20の厚み方向に平行な断面において、閉気孔24は、厚み方向に垂直な面方向に延びる。すなわち、閉気孔24は、面方向に沿って扁平に形成されている。これにより、厚み方向における電解質16の柔軟性を更に向上させることができるため、電解質16が損傷することを更に抑制できる。
面方向における閉気孔24の平均幅は、厚み方向における閉気孔24の平均高さよりも大きい。すなわち、多孔質基材20の厚み方向に平行な断面において、閉気孔24の平均アスペクト比(平均幅/平均高さ)は、1よりも大きい。面方向における閉気孔24の平均幅は、厚み方向における閉気孔24の平均高さT2の1.2倍以上であることが好ましい。これにより、厚み方向における電解質16の柔軟性をより向上させることができる。
面方向における閉気孔24の平均幅とは、多孔質基材20の断面を倍率20,000〜1,500,000倍の電子顕微鏡で観察したSEM画像から無作為に選出した20個の閉気孔24それぞれの幅W2を算術平均した値である。閉気孔24の幅W2とは、図2に示すように、面方向における閉気孔24の最大幅である。
厚み方向における閉気孔24の平均高さとは、上述したSEM画像から平均幅の算出のために選出した20個の閉気孔24の高さT2を算術平均した値である。閉気孔24の高さT2とは、図2に示すように、厚み方向における閉気孔24の最大高さである。
各閉気孔24の平均円相当径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.0μmとすることができる。各閉気孔24の平均円相当径は、0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましい。これによって、複合部22aの柔軟性をより向上させることができる。また、各閉気孔24の平均円相当径は、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。これによって、カソード12に供給される酸化剤がアノード14側に透過したり、或いは、アノード14に供給される燃料がカソード12側に透過したりすることを抑制できる。
各閉気孔24の平均円相当径とは、上述したSEM画像から無作為に選出した20個の閉気孔24の円相当径を算術平均した値である。閉気孔24の円相当径とは、上述したSEM画像において、閉気孔24と同じ面積を有する円の直径である。ただし、0.001μm以下の円相当径を有する閉気孔24は、複合部22aの体積変化の緩和及び柔軟性向上への寄与が極めて小さいため、各閉気孔24の平均円相当径を求める際には除外するものとする。
図2に示すように、閉気孔24は、多孔質基材20から離れていてもよい。すなわち、閉気孔24は、複合部22aの内部に閉じこめられており、連続孔20aの内表面と直接的に接触しなくてもよい。これによって、閉気孔24が多孔質基材20に直接接触する場合に比べて、電解質16に体積変化や変形が生じた場合に、多孔質基材20、複合部22a及び閉気孔24の三者で作られる角部を起点として、複合部22aが多孔質基材20から剥離することを抑制できる。
第1膜状部22bは、複合部22aのカソード12側に連なる。第1膜状部22bは、膜状に形成される。第1膜状部22bは、複合部22aと一体的に形成される。第2膜状部22cは、複合部22aのアノード14側に連なる。第2膜状部22cは、膜状に形成される。第2膜状部22cは、複合部22aと一体的に形成される。第1膜状部22b及び第2膜状部22cそれぞれは、一様な平面状に形成されていてもよいし、縞状など所望の平面形状にパターン化されていてもよい。第1膜状部22b及び第2膜状部22cそれぞれの厚さは特に制限されないが、例えば、10μm以下とすることができ、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。
無機固体電解質体22の作製方法は特に限定されないが、無機固体電解質体22をLDHで構成する場合であって、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含むとき、以下の工程(1)〜(5)で作製することができる。
(1)金属材料によって構成され、連続孔20aを有する多孔質基材20を用意する。
本工程において用意する多孔質基材20は、厚み方向に平行な断面において、面方向に延びる連続孔20aを有していることが好ましい。面方向に延びる連続孔20aを有する多孔質基材が市販されている場合、市販品をそのまま多孔質基材20として用いることができる。或いは、面方向に延びる連続孔20aを有さない多孔質基材が市販されている場合、市販品を厚み方向に一軸圧縮することによって、連続孔20aを面方向に延ばすことができる。この場合、圧縮力を制御することによって、連続孔20aの幅W1及び高さT1を調整できる。
ただし、本工程において用意する多孔質基材20は、厚み方向に平行な断面において、面方向に延びていない連続孔20aを有していてもよい。この場合、後述する工程(5)において、連続孔20aは面方向に延ばされる。
(2)多孔質基材20の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することでアルミナ・チタニア層を形成させる。後述するように、多孔質基材20の表面全体からLDHを成長させるには、多孔質基材20の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させることが重要となるため、アルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することを複数回実施する。これにより、多孔質基材20の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成することができる。
(3)ニッケルイオン(Ni2+)及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材20を浸漬させる。
(4)原料水溶液中で多孔質基材20を水熱処理して、LDHを多孔質基材20上及び多孔質基材20中に形成させることによって、複合部22a、第1膜状部22b、及び第2膜状部22cを有する無機固体電解質体22を形成する。これによって、多孔質基材20と無機固体電解質体22とを有する電解質16が形成される。この工程(4)では、水熱処理時間および溶液濃度を適宜調整して、気孔が閉塞する前に反応を停止させることによって、複合部22a内に閉気孔24を形成することができる。LDHは多孔質基材20の表面に形成されたアルミナ・チタニア層を核として成長するため、多孔質基材20の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させた場合においては、多孔質基材20の表面全体からLDHが成長することになる。その結果として、閉気孔24を多孔質基材20から離すことができる。なお、閉気孔24は、連続孔20aの形状にならった形状になるため、上記工程(1)において、面方向に延びる連続孔20aを有する多孔質基材20を用意した場合には、面方向に延びる閉気孔24が形成される。一方、上記工程(1)において、面方向に延びていない連続孔20aを有する多孔質基材20を用意した場合には、面方向に延びていない閉気孔24が形成される。
(5)上記工程(1)において、面方向に延びていない連続孔20aを有する多孔質基材20を用意した場合、無機固体電解質体22が形成された多孔質基材20を厚み方向に一軸圧縮することによって、連続孔20a及び閉気孔24それぞれを面方向に延ばして扁平にする。この際、圧縮力を制御することによって、連続孔20aの幅W1及び高さT1と、閉気孔24の幅W2及び高さT2とを調整することができる。
また、上記工程(1)において、面方向に延びる連続孔20aを有する多孔質基材20を用意した場合であっても、多孔質基材20を厚み方向に一軸圧縮することによって、連続孔20a及び閉気孔24それぞれの平均アスペクト比(平均幅/平均高さ)を調整することができる。
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
[変形例1]
上記実施形態では、本発明に係る電気化学セル用電解質を適用した電気化学セルの一例として、水酸化物イオンをキャリアとするアルカリ形燃料電池について説明したが、本発明に係る電気化学セル用電解質は、種々の電気化学セルに適用可能である。電気化学セルとしては、例えば、プロトンをキャリアとする燃料電池、二次電池(ニッケル亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池など)、水蒸気から水素と酸素を生成する電解セルなどに適用することができる。電気化学セルがプロトンをキャリアとする場合、複合部22a、第1膜状部22b、及び第2膜状部22cは、水酸化物イオン伝導性セラミックス成分に代えて、プロトン伝導性セラミックス成分を含有していればよい。なお、電気化学セルとは、化学エネルギーを電気エネルギーに変えるための装置と、電気エネルギーを化学エネルギーに変えるための装置であって、全体的な酸化還元反応から起電力が生じるように一対の電極が配置されたものの総称である。
[変形例2]
上記実施形態では、電解質16は、複数の閉気孔24を有することとしたが、閉気孔24を少なくとも1つ有していれば、閉気孔24を全く有していない場合に比べて、複合部22aに柔軟性を付与することができるため、電解質16の剥離を抑制できる。
[変形例3]
上記実施形態では、無機固体電解質体22は、複合部22a、第1膜状部22b、及び第2膜状部22cを有することとしたが、少なくとも複合部22a(「イオン伝導体」の一例)を有していればよい。すなわち、無機固体電解質体22は、第1膜状部22b及び第2膜状部22cの少なくとも一方を備えていなくてよい。
無機固体電解質体22が第1膜状部22bを備えていない場合、複合部22aは、多孔質基材20の連続孔20aの全体に含浸されていてもよいし、多孔質基材20の連続孔20aのうちカソード12側の領域にのみ含浸されていてもよい。多孔質基材20の連続孔20aのうちカソード12側の領域にのみ複合部22aが含浸される場合、連続孔20aの空隙領域にはアノード14の少なくとも一部を配置すればよい。連続孔20aの空隙領域に配置されるアノード14は、連続孔20aに充填されていてもよいし、連続孔20aの内表面を覆うように膜状に形成されていてもよい。
無機固体電解質体22が第2膜状部22cを備えていない場合、複合部22aは、多孔質基材20の連続孔20aの全体に含浸されていてもよいし、多孔質基材20の連続孔20aのうちアノード14側の領域にのみ含浸されていてもよい。多孔質基材20の連続孔20aのうちアノード14側の領域にのみ複合部22aが含浸される場合、連続孔20aの空隙領域にはカソード12の少なくとも一部を配置すればよい。連続孔20aの空隙領域に配置されるカソード12は、連続孔20aに充填されていてもよいし、連続孔20aの内表面を覆うように膜状に形成されていてもよい。
[変形例4]
上記実施形態において、閉気孔24は、多孔質基材20から離れていることとしたが、図3に示すように、多孔質基材20に接していてもよい。すなわち、閉気孔24は、連続孔20aの内表面と直接的に接触していてもよい。これによって、閉気孔24が多孔質基材20から離れている場合に比べて、閉気孔24の存在による多孔質基材20の拘束面積を低減できるため、多孔質基材20自体の柔軟性を向上させることができる。そのため、電解質16に体積変化や変形が生じた場合に、カソード12と電解質16との界面、又は/及び、アノード14と電解質16との界面に応力が発生することをより抑制できる。閉気孔24を多孔質基材20に接しさせる手法は特に制限されないが、例えば、上述した工程(2)において、連続孔20aの内表面の少なくとも一部においてアルミナ・チタニア層を形成しない箇所を設ければよい。具体的には、混合ゾルを含浸させて熱処理した後の多孔質基材20に超音波をかけることでアルミナ・チタニア層の一部を剥離させる、あるいは、アルミナ、チタニアの混合ゾルを低濃度として多孔質基材20の表面への付着量を低減させる等の処置を行う。これにより、上述した工程(4)において、連続孔20aの内表面のうちアルミナ・チタニア層が形成されていない箇所ではLDHが形成されないため、閉気孔24を多孔質基材20に直接的に接触させることができる。
[変形例5]
上記実施形態では、複数の閉気孔のすべてが多孔質基材20から離れていることとしたが、複数の閉気孔の一部は多孔質基材20に接していてもよい。
本発明の実施例について説明する。以下の実施例では、多孔質基材20の連続孔20aを面方向に延びる扁平形状にすることの効果と、閉気孔24を面方向に延びる扁平形状にすることの効果とを確認する。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
(実施例1〜7及び比較例1〜3の固体アルカリ形燃料電池10の作製)
まず、ポリフッ化ビニリデンによって構成され、連続孔20aを有する多孔質基材20を用意した。表1に示すように、実施例1〜7では、平均アスペクト比(平均幅/平均高さ)が1より大きい連続孔20aを有する多孔質基材20を用い、比較例1〜3では、平均アスペクト比が1以下の連続孔20aを有する多孔質基材20を用いた。平均アスペクト比は、多孔質基材20の厚み方向に平行な断面を電子顕微鏡で観察して、無作為に選出した20個の連続孔20aの幅W1の平均値を高さT1の平均値で割ることによって算出した。
次に、多孔質基材20の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理(120℃、5時間)する工程を3回繰り返すことによって、多孔質基材20の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成した。
次に、Ni2+及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材20を浸漬させ、原料水溶液中で多孔質基材20を水熱処理することによって、LDHからなる無機固体電解質体22を形成した。これにより、複合部22a(イオン伝導体)を含む無機固体電解質体22と多孔質基材20とを備える電解質16が形成された。実施例3及び比較例2では、多孔質基材20の連続孔20aにLDHが充填されるまで水熱処理を継続したため、複合部22a内には閉気孔24が無かった。ただし、「閉気孔24が無い」とは、0.001μm超の円相当径を有する閉気孔24が存在しないことを意味する。実施例1,2,4〜7及び比較例1,3では、多孔質基材20の連続孔20aにLDHが充填される前に水熱処理を停止させることによって、複合部22a内に閉気孔24を形成した。なお、前行程において、多孔質基材20の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成したため、実施例1,2,4〜7及び比較例1,3の閉気孔24は、多孔質基材20から離れていた。
次に、炭素に担持されたカソード触媒(Pt/C)とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)とを混合したペースト状混合物を電解質16のカソード側表面16Sに塗布することによって、カソード12を形成した。
次に、炭素に担持されたアノード触媒(Pt−Ru/C)とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)とを混合したペースト状混合物を電解質16のアノード側表面16Tに塗布することによって、アノード14を形成した。
以上により、実施例1〜7及び比較例1〜3の固体アルカリ形燃料電池10が完成した。
(評価方法)
実施例1〜7及び比較例1〜3それぞれの固体アルカリ形燃料電池10を、カソード側セパレータとアノード側セパレータとで挟むことによって、発電用スタックを作製した。カソード側セパレータ及びアノード側セパレータのそれぞれには、ガス供給管とガス排出管とが設けられている。
次に、発電用スタックを80℃まで加熱した後、カソード12にドライAirを2時間供給しながら、アノード14にドライNガスを2時間供給する工程と、カソード12にウェットAir(90%RH)を2時間供給しながら、アノード14にウェットNガス(90%RH)を2時間供給する工程とを10回繰り返した。そして、両工程を10回の繰り返した後、発電用スタックを室温まで降温した。
そして、カソード側セパレータのガス排出管とアノード側セパレータのガス供給管とを封止した状態で、カソード側セパレータのガス供給管からカソード12にアルゴンガスを供給しながら、アノード側とカソード側の差圧を10kPaとした条件にてアノード側セパレータのガス排出管に設けた流量計によって、カソード12からアノード14へリークしたアルゴンガスの流量を測定した。
また、発電用スタックから取り出した固体アルカリ形燃料電池10の外観観察及び断面観察を行った。詳細には、固体アルカリ形燃料電池10の外表面に電解質16内部の損傷に起因する損傷(クラックなど)が生じているか否かを目視で確認した後、電解質16の断面に損傷(クラックなど)が生じているか否かを電子顕微鏡で確認した。
表1において、「◎」は、アルゴンガスのリーク流量が0.5ml/min以下であり、かつ、外観及び断面の両方で損傷が確認されなかったことを意味し、「○」は、アルゴンガスのリーク流量が0.5ml/min以下であり、かつ、断面のみに微小な損傷(長さ5μm以下のクラック)が確認されたことを意味し、「△」は、アルゴンガスのリーク流量が0.5ml/min以下であり、かつ、断面のみに損傷(長さ5μm超20μm以下のクラック)が確認されたことを意味し、「×」は、アルゴンガスのリーク流量が0.5ml/min超であり、かつ、外観に損傷が確認されたことを意味する。
Figure 0006778793
表1に示すように、多孔質基材20が有する連続孔20aの平均幅を平均高さの1.2以上とした実施例1〜7では、ガスリーク及び電解質16の損傷を抑制することができた。このような結果が得られたのは、連続孔20aを面方向に延ばすことによって厚み方向における電解質16の柔軟性が向上し、その結果、電解質16内の含水状況の変動に伴う体積変化に追従するように電解質16を柔軟にすることができたためである。
また、表1に示すように、複合部22a(イオン伝導体)内に閉気孔24を形成した実施例1,4では、複合部22a内に閉気孔24を形成しなかった実施例3に比べて、電解質16断面の損傷をより抑制することができた。このような結果が得られたのは、閉気孔24を形成することによって、電解質16に生じる体積変化を緩和させることができたためである。
また、表1に示すように、閉気孔24の平均幅を平均高さの1.2以上とした実施例4〜7では、電解質16の損傷を更に抑制することができた。このような結果が得られたのは、閉気孔24を面方向に延ばすことによって厚み方向における電解質16の柔軟性を更に向上させることができたためである。
10 固体アルカリ形燃料電池
12 カソード
14 アノード
16 電解質
16S カソード側表面
16T アノード側表面
20 多孔質基材
20a 連続孔
22 無機固体電解質体
22a 複合部
22b 第1膜状部
22c 第2膜状部
24 閉気孔

Claims (11)

  1. 三次元網目構造を有し、連続孔を形成する多孔質基材と、
    イオン伝導性を有し、前記連続孔内に配置されるイオン伝導体と、
    を備え、
    前記多孔質基材は、金属材料によって構成され、
    前記多孔質基材の少なくとも一方の主面、又は、前記連続孔の内表面を含む前記多孔質基材の表面には、絶縁膜が形成され、
    前記多孔質基材の厚み方向に平行な断面に露出する前記連続孔の複数の断面のうち少なくとも1つは、前記厚み方向に垂直な面方向に延びており、
    前記面方向における前記複数の断面の平均幅は、前記厚み方向における前記複数の断面の平均高さの1.2倍以上である、
    電気化学セル用電解質。
  2. 前記多孔質基材は、内部に細孔を有し、
    前記細孔には、前記イオン伝導体が含浸されている、
    請求項1に記載の電気化学セル用電解質。
  3. 三次元網目構造を有し、連続孔を形成する多孔質基材と、
    イオン伝導性を有し、前記連続孔内に配置されるイオン伝導体と、
    前記イオン伝導体内に形成される閉気孔と、
    を備え、
    前記多孔質基材は、金属材料によって構成され、
    前記多孔質基材の少なくとも一方の主面、又は、前記連続孔の内表面を含む前記多孔質基材の表面には、絶縁膜が形成され、
    前記多孔質基材の厚み方向に平行な断面に露出する前記連続孔の複数の断面のうち少なくとも1つは、前記厚み方向に垂直な面方向に延びる、
    電気化学セル用電解質。
  4. 前記多孔質基材の厚み方向に平行な断面において、前記閉気孔は、前記面方向に延びる、
    請求項3に記載の電気化学セル用電解質。
  5. 前記閉気孔は、前記多孔質基材から離れている、
    請求項3又は4に記載の電気化学セル用電解質。
  6. 前記閉気孔は、前記多孔質基材に接している、
    請求項3又は4に記載の電気化学セル用電解質。
  7. 前記イオン伝導体内に形成され、前記閉気孔を含む複数の閉気孔を備える、
    請求項3乃至6のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
  8. 前記多孔質基材は、内部に細孔を有し、
    前記細孔には、前記イオン伝導体が含浸されている、
    請求項3乃至7のいずれかに記載の電気化学セル用電解質。
  9. 連続孔を形成する多孔質基材と、
    イオン伝導性を有し、前記連続孔内に配置されるイオン伝導体と、
    を備え、
    前記多孔質基材は、金属材料によって構成され、
    前記多孔質基材の少なくとも一方の主面、又は、前記連続孔の内表面を含む前記多孔質基材の表面には、絶縁膜が形成され、
    前記多孔質基材の厚み方向に平行な断面に露出する前記連続孔の複数の断面のうち少なくとも1つは、前記厚み方向に垂直な面方向に延びており、
    前記面方向における前記複数の断面の平均幅は、前記厚み方向における前記複数の断面の平均高さの1.2倍以上である、
    電気化学セル用電解質。
  10. 連続孔を形成する多孔質基材と、
    イオン伝導性を有し、前記連続孔内に配置されるイオン伝導体と、
    前記イオン伝導体内に形成される閉気孔と、
    を備え、
    前記多孔質基材は、金属材料によって構成され、
    前記多孔質基材の少なくとも一方の主面、又は、前記連続孔の内表面を含む前記多孔質基材の表面には、絶縁膜が形成され、
    前記多孔質基材の厚み方向に平行な断面に露出する前記連続孔の複数の断面のうち少なくとも1つは、前記厚み方向に垂直な面方向に延びる、
    電気化学セル用電解質。
  11. 酸化剤が供給されるカソードと、
    燃料が供給されるアノードと、
    前記カソードと前記アノードとの間に配置される請求項1乃至10のいずれかに記載の電気化学セル用電解質と、
    を備える電気化学セル。
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