以下、本実施形態に係る膜電極接合体10を図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る膜電極接合体10を用いた固体アルカリ形燃料電池100の構成を示す断面図である。なお、固体アルカリ形燃料電池100は、水酸化物イオンをキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である。
(固体アルカリ形燃料電池100)
図1に示すように、固体アルカリ形燃料電池100は、膜電極接合体10、第1セパレータ11、及び第2セパレータ12を備えている。実際に使用する際は、複数の固体アルカリ形燃料電池100がスタックされる。詳細には、複数の膜電極接合体10が第1及び第2セパレータ11、12を介してスタックされる。
(膜電極接合体10)
膜電極接合体10は、カソード2、アノード3、及び電解質膜4を備える。膜電極接合体10は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃〜250℃)で発電する。ただし、下記の電気化学反応式では、燃料の一例としてメタノールが用いられている。
・カソード2: 3/2O2+3H2O+6e−→6OH−
・アノード3: CH3OH+6OH−→6e−+CO2+5H2O
・全体 : CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O
(カソード2)
カソード2は、電解質膜4の第1面41側(図1の上面側)に配置されている。カソード2は、一般的に空気極と呼ばれる陽極である。
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、カソード2には、第1セパレータ11の第1流路111を介して酸素(O2)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。カソード2は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード2の気孔率は特に制限されない。カソード2の厚みは特に制限されないが、例えば10〜200μmとすることができる。
図2に示すように、カソード2は、第1触媒層21と、第1ガス拡散層22とを有している。第1触媒層21は、電解質膜4上に配置されている。第1触媒層21は、平面視において、矩形状である。第1触媒層21の厚さは、例えば、5〜50μm程度である。
第1触媒層21は、AFCに使用される公知のカソード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード2における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10mg/cm2、より好ましくは、0.1〜5mg/cm2である。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード2ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
第1ガス拡散層22は、第1触媒層21上に配置されている。第1ガス拡散層22は、平面視において、矩形状である。第1ガス拡散層22は、第1触媒層21よりも厚い。第1ガス拡散層22の厚さは、例えば、50〜150μm程度である。
第1ガス拡散層22は、第1セパレータ11の第1流路111内を流れる酸化剤を拡散して第1触媒層21に供給する。第1ガス拡散層22は、電気伝導性を有する。第1ガス拡散層22は、集電部材としても機能する。
第1ガス拡散層22は、カーボンペーパー、カーボンクロス、又はカーボンフェルトなどの導電性多孔質材料によって構成することができる。第1ガス拡散層22には、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、又はグラファイトなどの導電性材料と、フッ素樹脂(PTFE、PVDF)などの撥水性材料と、を含むマイクロポーラス層が形成されていてもよい。
第1触媒層21と第1ガス拡散層22との界面S1の長さを第1界面長さL1とする。第1触媒層21と電解質膜4との界面S2の長さを第2界面長さL2とする。第1界面長さL1は、第2界面長さL2よりも長い。第2界面長さL2に対する、第1界面長さL1の割合(L1/L2)は、1.07以上である。なお、割合(L1/L2)は、例えば、1.25以下とすることができる。
第1及び第2界面長さL1、L2は、次のようにして測定することができる。まず、図2に示すような膜電極接合体10の切断面を3つ形成する。詳細には、図3に示すように、カソード2の中心Cを通り、第1流路111が延びる方向に沿って切断した第1切断面C1を形成する。また、この第1切断面C1と平行となるように切断した第2切断面C2及び第3切断面C3を形成する。なお、第1切断面C1と第2切断面C2との距離d1は、第1切断面C1と第3切断面C3との距離d2と同じであり、これらの距離d1及びd2は、カソード2の第1寸法d0の40%とする。ここで、カソード2の第1寸法d0とは、カソード2の中心Cを通り、第1切断面C1と直交する方向に延びる寸法を意味する。なお、図4に示すように、平面視が矩形状でない場合、例えば、円形状のような場合であっても同様の方法で各切断面C1〜C3を形成する。
以上により、図5に示すような切断面C1〜C3が形成される。次に、各切断面C1〜C3におけるカソード2の中央部201及び両端部202において、界面S1,S2の部分をSEMによって500倍に拡大して撮影する。各切断面C1〜C3のそれぞれで3視野撮影するため、合計9視野撮影する。なお、各切断面C1〜C3におけるカソード2の中央部201と両端部202との距離d3は、各切断面C1〜C3におけるカソード2の第2寸法d4の40%とする。ここで、カソード2の第2寸法d4とは、各切断面C1〜C3におけるカソード2の長手方向の寸法を意味する。
図6は、第1及び第2界面長さL1,L2の測定方法を説明するための図である。上述のように作製した9視野分の各断面画像において、図6の二点鎖線で示すように、第1触媒層21と第1ガス拡散層22との界面S1、及び第1触媒層21と電解質膜4との界面S2を、分割線D1によって等間隔に分割する。この分割線D1の間隔は、例えば、10μmとする。
この各分割線D1と界面S1とが交差する点同士を結んでできた直線E1(図6の点線)の長さを足し合わせたものを各断面画像で算出し、各断面画像で算出した値の平均値を第1界面長さL1とする。また、各分割線D1と界面S2とが交差する点同士を結んでできた直線E2の長さを足し合わせたものを各断面画像で算出し、各断面画像で算出した値の平均値を第2界面長さL2とする。
上述したようなカソード2は、次のように作製する。まず、第1ガス拡散層22を準備する。そして、この第1ガス拡散層22に対して、凹凸形状を有する金型でプレスすることによって、第1ガス拡散層22の第1主面に凹凸形状を形成する。この第1ガス拡散層22の第1主面上に触媒ペーストを塗布することなどによって第1触媒層21を形成する。このようにカソード2を形成することによって、L1/L2の値を1.07以上とすることができる。なお、この凹凸形状を有する金型を別の金型に取り換えることによって、L1/L2の値を変更することができる。
(アノード3)
図1に示すように、アノード3は、電解質膜4の第2面42側(図1の下面側)に配置されている。アノード3は、一般的に燃料極と呼ばれる陰極である。
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、アノード3には、第2セパレータ12の第2流路121を介して、水素原子(H)を含む燃料が供給される。燃料としては、メタノールを用いるのが好ましい。アノード3は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。アノード3の気孔率は特に制限されない。アノード3の厚みは特に制限されないが、例えば10〜500μmとすることができる。
燃料は、アノード3において水酸化物イオン(OH−)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NH2NH2)、水加ヒドラジン(NH2NH2・H2O)、炭酸ヒドラジン((NH2NH2)2CO2)、硫酸ヒドラジン(NH2NH2・H2SO4)、モノメチルヒドラジン(CH3NHNH2)、ジメチルヒドラジン((CH3)2NNH2、CH3NHNHCH3)、及びカルボンヒドラジド((NHNH2)2CO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NH2CONH2)、(iii)アンモニア(NH3)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NH2OH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NH2OH・H2SO4)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば1〜99重量%であり、好ましくは30〜99重量%である。
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
図7に示すように、アノード3は、第2触媒層31と、第2ガス拡散層32とを有している。第2触媒層31は、電解質膜4上に配置されている。第2触媒層31は、平面視において、矩形状である。第2触媒層31の厚さは、例えば、5〜50μm程度である。
第2触媒層31は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード3及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
第2ガス拡散層32は、第2触媒層31上に配置されている。第2ガス拡散層32は、平面視において、矩形状である。第2ガス拡散層32は、第2触媒層31よりも厚い。第2ガス拡散層32の厚さは、例えば、50〜150μm程度である。
第2ガス拡散層32は、第2セパレータ12の第2流路121内を流れる燃料を拡散して第2触媒層31に供給する。第2ガス拡散層32は、電気伝導性を有する。第2ガス拡散層32は、集電部材としても機能する。
第2ガス拡散層32は、カーボンペーパー、カーボンクロス、又はカーボンフェルトなどの導電性多孔質材料によって構成することができる。第2ガス拡散層32には、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、又はグラファイトなどの導電性材料と、フッ素樹脂(PTFE、PVDF)などの撥水性材料と、を含むマイクロポーラス層が形成されていてもよい。
第2触媒層31と第2ガス拡散層32との界面S4の長さを第4界面長さL4とする。第2触媒層31と電解質膜4との界面S5の長さを第5界面長さL5とする。第4界面長さL4は、第5界面長さL5よりも長い。なお、第4界面長さL4は、第5界面長さL5よりも短くてもよいし、第5界面長さL5と略同じでもよい。
例えば、第5界面長さL5に対する、第4界面長さL4の割合(L4/L5)は、第2界面長さL2に対する、第1界面長さL1の割合(L1/L2)よりも小さくすることができる。すなわち、第2界面長さL5に対する、第4界面長さL4の割合(L4/L5)を、1.07未満とすることができる。
図8は、第4及び第5界面長さL4,L5の測定方法を説明するための図である。図8に示すように、第4及び第5界面長さL4、L5は、次のようにして測定することができる。まず、図7に示すような膜電極接合体10の切断面を3つ形成する。この3つの切断面は、例えば、上記第1及び第2界面長さL1,L2の測定のために作成した切断面C1〜C3と同じである。
そして、図5に示すように、各切断面C1〜C3におけるアノード3の中央部301及び両端部302において、界面S4,S5の部分をSEMによって500倍に拡大して撮影する。各切断面C1〜C3のそれぞれで3視野撮影するため、合計9視野撮影する。なお、各切断面C1〜C3におけるアノード3の中央部301と両端部302との距離d5は、各切断面C1〜C3におけるアノード3の寸法d6の40%とする。ここで、アノード3の寸法d6とは、各切断面C1〜C3におけるアノード3の長手方向の寸法を意味する。
このようにして作製した9視野分の各断面画像において、図8の二点鎖線で示すように、第2触媒層31と第2ガス拡散層32との界面S4、及び第2触媒層31と電解質膜4との界面S5を、分割線D2によって等間隔に分割する。この分割線D2の間隔は、例えば、10μmとする。
この各分割線D2と界面S4とが交差する点同士を結んでできた直線E4(図8の点線)の長さを足し合わせたものを各断面画像で算出し、各断面画像で算出した値の平均値を第4界面長さL4とする。また、各分割線D2と界面S5とが交差する点同士を結んでできた直線E5の長さを足し合わせたものを各断面画像で算出し、各断面画像で算出した値の平均値を第5界面長さL5とする。
上述したようなアノード3は、上述したカソード2と同様の方法によって作製する。
(電解質膜4)
図1に示すように、電解質膜4は、カソード2とアノード3との間に配置される。電解質膜4は、カソード2及びアノード3のそれぞれに接続される。電解質膜4は、イオン伝導性を有する。電解質膜4は、膜状であって、第1面41と第2面42とを有している。第1面41と第2面42とは、互いに逆側を向いている。電解質膜4の第1面41側にはカソード2が配置されており、第2面42側にはアノード3が配置されている。
図9は、電解質膜4の断面を拡大して示す模式図である。電解質膜4は、支持体5と、イオン伝導体6とを有する。
支持体5は、イオン伝導体6を支持するように構成されている。詳細には、支持体5は、三次元網目構造を有する多孔質基材によって構成されている。「三次元網目構造」とは、基材の構成物質が立体的かつ網目状に繋がった構造である。なお、支持体5を構成する多孔質基材は、三次元網目構造を有していなくてもよい。
支持体5は、連続孔5aを形成する。連続孔5aは、立体的かつ網目状に孔が繋がることによって構成されており、支持体5の外表面に露出している。連続孔5aには、イオン伝導体6が含浸されている。
支持体5は、金属材料、セラミックス材料、及び高分子材料から選択される少なくとも1種によって構成することができる。
支持体5を構成する金属材料としては、ステンレス(Fe−Cr系合金、Fe−Ni−Cr系合金など)、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、又は、チタンなどを用いることができる。このような金属材料は、セラミックス材料や高分子材料に比べて熱伝導性が高いため、支持体5の放熱効率を向上させることができるとともに、支持体5内の温度分布を低減させることができる。三次元網目構造を有する限り、支持体5の形態は特に制限されず、例えば、多孔質金属材料(例えば、発砲金属材料)によって構成されるセル状又はモノリス状の構造物であってもよいし、細線金属材料によって構成されるメッシュ状の塊であってもよい。
また、支持体5が金属材料によって構成される場合、支持体5の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜は、Cr2O3、Al2O3、ZrO2、MgO、MgAl2O4などによって構成することができる。支持体5をステンレスによって構成する場合、ステンレスを酸化処理することにより、絶縁膜としてのCr2O3膜を簡便に形成することができる。ただし、本実施形態では、後述する第1及び第2膜状部4b,4cが、絶縁膜として機能するため、支持体5の表面には、絶縁膜が形成されていなくてもよい。
支持体5を構成するセラミックス材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、カルシア、コージェライト、ゼオライト、ムライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
支持体5を構成する高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等、ポリフッ化ビニリデン)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びこれらの任意の組合せが挙げられる。支持体5をフレキシブル性の高分子材料で構成する場合には、気孔率を高めながら厚さを薄くしやすいため、水酸化物イオン伝導性を向上させることができる。高分子材料によって構成される支持体5としては、リチウム電池用セパレータとして市販されているような微多孔膜を用いることができる。
支持体5の厚さは特に制限されないが、例えば、200μm以下とすることができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下であり、5μm以下が最も好ましい。支持体5の厚さの下限値は、用途に応じて適宜設定すればよいが、ある程度の堅さを確保するには1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
支持体5の断面における連続孔5aの平均内径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.5μmとすることができ、好ましくは0.001〜1.25μm、より好ましくは0.001〜1.0μm、さらに好ましくは0.001〜0.75μm、特に好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることによって、支持体5に支持体としての強度を付与しつつ、イオン伝導体6の緻密度を向上させることができる。連続孔5aの平均内径とは、支持体5の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、観察画像上で無作為に選出した20箇所における連続孔5aの円相当径を算術平均することによって得られる。連続孔5aの円相当径とは、観察画像において、連続孔5aの断面積と同じ面積を有する円の直径である。なお、電子顕微鏡の倍率は、連続孔5aの断面サイズに応じて適宜設定すればよい。
連続孔5aの体積率は特に制限されないが、例えば、10〜80%とすることができ、好ましくは15〜75%、より好ましくは20〜70%である。これらの範囲内とすることによって、支持体5に支持体としての強度を確保しつつ、イオン伝導体6の緻密度を向上させることができる。連続孔5aの体積率は、アルキメデス法により測定することができる。
また、図9では図示されていないが、支持体5は、それ自体の内部に複数の細孔を有することが好ましい。複数の細孔は、支持体5の内部において、互いに繋がっていてもよい。そして、各細孔は支持体5の表面に開口する開気孔であって、各細孔にはイオン伝導体6が含浸していることがより好ましい。これによって、連続孔5a→支持体5内の細孔→連続孔5aという短距離イオン伝導パスや、連続孔5a→支持体5内の細孔→第2膜状部4c、或いは、第1膜状部4b→支持体5内の細孔→第2膜状部4cという長距離イオン伝導パスを形成することができる。その結果、複合部4a内のイオン伝導可能領域が広がるため、電解質膜4全体としてのイオン伝導性を向上させることができる。
イオン伝導体6は、水酸化物イオン伝導性を有する。固体アルカリ形燃料電池100の発電中、イオン伝導体6は、カソード2側からアノード3側に水酸化物イオン(OH−)を伝導させる。イオン伝導体6の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。イオン伝導体6の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
イオン伝導体6は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。このようなセラミックス材料としては、層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)が好適である。
LDHは、M2+ 1−xM3+ x(OH)2An−x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、An−の例としてはCO3 2−及びOH−が挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びH2Oで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
LDHの中間層は、陰イオン及びH2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH−及び/又はCO3 2−を含む。
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+ 1−x−yAl3+ xTi4+ y(OH)2An− (x+2y)/n・mH2O(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
電解質膜4は、複合部4a、第1膜状部4b、及び第2膜状部4cを有する。複合部4aは、支持体5とイオン伝導体6とを有する。第1膜状部4b及び第2膜状部4cは、イオン伝導体6を有しているが、支持体5を有していない。
複合部4aは、第1膜状部4bと第2膜状部4cとの間に配置される。イオン伝導体6は、支持体5内において、支持体5に支持されている。詳細には、イオン伝導体6は、支持体5の連続孔5a内に配置される。イオン伝導体6は、支持体5の連続孔5a内に含浸されており、支持体5と一体化している。このように、イオン伝導体6を支持体5で支持することによって、イオン伝導体6の強度を向上できるため、イオン伝導体6を薄くすることができる。その結果、電解質膜4の低抵抗化を図ることができる。
本実施形態において、イオン伝導体6は、支持体5の連続孔5aの略全域に広がる。ただし、電解質膜4が第1膜状部4b及び第2膜状部4cの少なくとも一方を有さない場合、イオン伝導体6は、支持体5の一部にのみ含浸されていてもよい。
ここで、複合部4aにおいて、電解質膜4は、その内部に形成された複数の閉気孔61を有する。このような閉気孔61が形成されるため、固体アルカリ形燃料電池100の作動中にイオン伝導体6の含水状況の変動に起因する電解質膜4の体積変化を緩和させることができる。これにより、電解質膜4とカソード2との界面、又は/及び電解質膜4とアノード3との界面に応力が発生することを抑制できる。その結果、カソード2又は/及びアノード3から電解質膜4が剥離したり、電解質膜4自体が変形したりすることを抑制できる。
さらに、閉気孔61が複合部4aの内部に形成されることで、複合部4aに柔軟性を付与することができるため、固体アルカリ形燃料電池100内の温度分布に起因して、カソード2と電解質膜4との界面、又は/及び、アノード3と電解質膜4との界面に熱応力が発生することを抑制できる。そのため、カソード2又は/及びアノード3から電解質膜4が剥離したり、或いは、電解質膜4自体が変形したりすることを抑制できる。
閉気孔61は、支持体5から離れている。すなわち、閉気孔61は、複合部4aの内部に閉じこめられており、連続孔5aの内表面と直接的に接触しない。これによって、閉気孔61が支持体5に直接接触する場合に比べて、電解質膜4に体積変化や変形が生じた場合に、支持体5、複合部4a及び閉気孔61の三者で作られる角部を起点として、複合部4aが支持体5から剥離することを抑制できる。
各閉気孔61の平均円相当径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.0μmとすることができる。各閉気孔61の平均円相当径は、0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましい。これによって、複合部4aの柔軟性をより向上させることができる。また、各閉気孔61の平均円相当径は、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。
各閉気孔61の平均円相当径は、電解質膜4の断面を20,000〜1,500,000倍の電子顕微鏡で観察し、無作為に選出した20個の閉気孔61の円相当径を算術平均することによって得られる。閉気孔61の円相当径とは、電解質膜4の断面において、閉気孔61と同じ面積を有する円の直径である。ただし、0.001μm以下の円相当径を有する閉気孔61は、複合部4aの柔軟性向上への寄与が極めて小さいため、各閉気孔61の平均円相当径を求める際には除外するものとする。
第1膜状部4bは、複合部4aのカソード2側に連なる。第1膜状部4bは、膜状に形成される。第1膜状部4bのイオン伝導体6は、複合部4aのイオン伝導体6と一体的に形成される。
第2膜状部4cは、複合部4aのアノード3側に連なる。第2膜状部4cは、膜状に形成される。第2膜状部4cのイオン伝導体6は、複合部4aのイオン伝導体6と一体的に形成される。第1膜状部4b及び第2膜状部4cそれぞれは、一様な平面状に形成されていてもよいし、縞状など所望の平面形状にパターン化されていてもよい。第1膜状部4b及び第2膜状部4cそれぞれの厚さは特に制限されないが、例えば、10μm以下とすることができ、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。
(電解質膜4の製造方法)
電解質膜4の作製方法は特に限定されないが、イオン伝導体6をLDHで構成する場合であって、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含むとき、以下の工程(1)〜(4)で作製することができる。
(1)支持体5を用意する。
(2)支持体5の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することでアルミナ・チタニア層を形成させる。後述するように、支持体5の表面全体からLDHを成長させるには、支持体5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させることが重要となるため、アルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することを複数回実施する。これにより、支持体5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成することができる。
(3)ニッケルイオン(Ni2+)及び尿素を含む原料水溶液に支持体5を浸漬させる。
(4)原料水溶液中で支持体5を水熱処理して、LDHを支持体5上及び支持体5中に形成させることによって、イオン伝導体6を形成する。この際、水熱処理時間および溶液濃度を適宜調整することによって、気孔が閉塞する前に反応を停止することでイオン伝導体6内に閉気孔61を形成させることができる。LDHは支持体5の表面に形成されたアルミナ・チタニア層を核として成長するため、支持体5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させた場合においては、支持体5の表面全体からLDHが成長することになる。その結果として、閉気孔61を支持体5から離すことができる。
(第1及び第2セパレータ11、12)
図1に示すように、第1及び第2セパレータ11、12は、膜電極接合体10を厚さ方向(z軸方向)の両側から挟むように配置されている。第1セパレータ11は、カソード2に酸素(O2)を含む酸化剤を供給するように構成されている。第1セパレータ11は、第1流路111を有している。第1流路111は、カソード2と対向している。この第1流路111には、酸素(O2)を含む酸化剤が供給される。
第2セパレータ12は、アノード3に水素原子(H)を含む燃料を供給するように構成されている。第2セパレータ12は、第2流路121を有している。第2流路121は、アノード3と対向している。この第2流路121には、水素原子(H)を含む燃料が供給される。例えば、第2流路121には、メタノールが供給される。
複数の膜電極接合体10が第1及び第2セパレータ11,12を介してスタックされている場合は、第1セパレータ11は、第1流路111が形成される面とは反対側の面に第2流路が形成されている。また、第2セパレータ12は、第2流路121が形成される面とは反対側の面に第1流路が形成されている。
第1セパレータ11と膜電極接合体10との間には、第1シール部材13aが配置されている。第1シール部材13aは、第1セパレータ11と膜電極接合体10との間の密着性を向上させて、酸化剤が外部へ漏出することを防止する。第2セパレータ12と膜電極接合体10との間には、第2シール部材13bが配置されている。第2シール部材13bは、第2セパレータ12と膜電極接合体10との間の密着性を向上させて、燃料が外部へ漏出することを防止する。
第1及び第2シール部材13a、13bは、環状であり、膜電極接合体10の電解質膜4の外周部に当接している。第1及び第2シール部材13a、13bとして、例えば、Oリング、ゴムシートなどを例示することができる。第1シール部材13aは、第1セパレータ11と一体的に構成されていてもよい。第2シール部材13bは、第2セパレータ12と一体的に構成されていてもよい。
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
変形例1
上記実施形態では、電解質膜4の支持体5は、多孔質基材によって構成されているが、支持体5はこれに限定されない。例えば、電解質膜4の支持体5は、バインダであってもよい。例えば、図10に示すように、バインダとして構成されている支持体5は、イオン伝導体6の構成粒子間に配置されている。この支持体5は、イオン伝導体6の各構成粒子同士を結着する。例えば、支持体5は、LDH粒子同士を結着することによって、電解質膜4の形状を維持する。このようなバインダとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、又はエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
変形例2
上記実施形態では、閉気孔61は、支持体5から離れていたが、図11に示すように、閉気孔61は、支持体5に接していてもよい。すなわち、閉気孔61は、連続孔5aの内表面と直接的に接触していてもよい。これによって、閉気孔61が支持体5から離れている場合に比べて、閉気孔61の存在による支持体5の拘束面積を低減できるため、支持体5自体の柔軟性を向上させることができる。そのため、電解質膜4に体積変化や変形が生じた場合に、カソード2と電解質膜4との界面、又は/及び、アノード3と電解質膜4との界面に応力が発生することをより抑制できる。
変形例3
上記実施形態では、電解質膜4は、複合部4a、第1膜状部4b、及び第2膜状部4cを有することとしたが、複合部4aのみを有していてもよい。すなわち、電解質膜4は、第1膜状部4b及び第2膜状部4cの少なくとも一方を備えていなくてよい。
変形例4
上記実施形態では、電解質膜4は、水酸化物イオン伝導性を有するアニオン交換膜として構成されているが、カチオン交換膜として構成されていてもよい。電解質膜4は、Nafion(登録商標)のような固体高分子膜であってもよい。
変形例5
上記実施形態では、本発明に係る燃料電池を固体アルカリ形燃料電池に適用した実施形態を説明したが、本発明に係る燃料電池が適用される対象は固体アルカリ形燃料電池に限定されず、例えば、プロトン伝導膜を用いた固体高分子形燃料電池などの他の燃料電池にも適用することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
(試験A)
まず、支持体5として、ポリフッ化ビニリデンによって構成され、連続孔を有する多孔質基材を用意した。
次に、多孔質基材の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて、120℃で所定時間の熱処理工程を複数回繰り返すことによって、多孔質基材の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成した。
次に、Ni2+及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材を浸漬させ、原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理することによって、LDHからなるイオン伝導体6を形成した。これにより、イオン伝導体6と支持体5とを備える電解質膜4が形成された。なお、この電解質膜4を120℃で熱プレスすることで、厚さを約50μmに調整した。
次に、第1触媒層21及び第1ガス拡散層22を有するカソード2を形成した。詳細には、第1ガス拡散層22としてカーボンペーパーを準備した。そして、このカーボンペーパーに対して凹凸形状を有する金型を用いてプレスし、カーボンペーパーの第1主面に凹凸形状を形成した。なお、このときのプレス条件は、10MPa、150℃、3分とした。また、実施例1〜3、比較例1〜3において、カーボンペーパーの凹凸形状を変更するために、それぞれ異なる金型でプレスした。
続いて、炭素に担持されたカソード触媒(Pt/C)とバインダ(ポリフッ化ビニリデン)とを混合したペースト状混合物を作製した。そして、そのペースト状混合物をカーボンペーパーの第1主面に塗布することによって、カソード2を形成した。なお、乾燥重量から算出したカソード触媒の貴金属量は、0.5mg−Pt/cm2で、膜厚25μmを得た。
以上のようにして形成された各実施例及び比較例のカソード2において、第2界面長さL2に対する、第1界面長さL1の割合(L1/L2)は、表1の通りである。なお、この割合(L1/L2)は、後述する耐久性の評価が終わった後に算出した。
次に、第2触媒層31及び第2ガス拡散層32を有するアノード3を形成した。詳細には、炭素に担持されたアノード触媒(Pt−Ru/C)とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)とを混合したペースト状混合物を作製した。そして、このペースト状混合物を、第2拡散層32として準備したカーボンペーパー上に塗布することによってアノード3を形成した。なお、乾燥重量から算出したアノード触媒の貴金属量は、0.5mg−PtRu/cm2で膜厚10μmを得た。また、このアノード3のカーボンペーパーには、金型によって凹凸形状を形成していない。
以上のようにして形成した、カソード2、電解質膜4、及びアノード3を積層し、6MPa、120℃、1.5分の条件で熱プレスすることによって、膜電極接合体10を作製した。そして、実施例1〜3及び比較例1〜3の各膜電極接合体10を、第1セパレータ11と第2セパレータ12とで挟むことによって、固体アルカリ形燃料電池100を作製した。なお、各実施例及び比較例において、割合(L1/L2)以外は、基本的に同じ構成としている。
(評価方法)
以上のように作製した各膜電極接合体10に対して、以下の方法によって、カソード2の耐久性を評価した。まず、第1セパレータ11の第1流路111内にフル加湿した空気(利用率50%)を供給し、第2セパレータ12の第2流路121内にフル加湿した水素(利用率80%)を供給した。そして、膜電極接合体10の温度を90℃とし、電圧0.5V(定電圧モード)で1時間後の電流値を初期出力とする。そして、第1流路111内を流れる空気に3ppmSO2を混入させて、電圧0.5V負荷時の電流値が初期出力の70%を下回る時間を計測し、その計測した時間を耐久時間として表1に示した。なお、表1における評価の項目において「◎」は、耐久時間が比較例1に対して20%以上改善していること(耐久時間が29時間以上)を意味し、「〇」は耐久時間が比較例1に対して10%以上改善していること(耐久時間が27時間以上)を意味する。
表1に示すように、実施例1〜3は、比較例1〜3に比べて、耐久性が向上していることが分かる。これは、実施例1〜3のカソード2において、割合(L1/L2)を1.07以上にしたためであると考えられる。
(試験B)
試験Bでは、電解質膜4として、高分子電解質であるNafion(登録商標、デュポン社製)を使用した。詳細には、5ミル厚のNafion115を使用した
この電解質膜4上に、上記試験Aと同様の方法でカソード2及びアノード3を形成し、比較例4〜6、及び実施例4〜6を作成した。なお、第2界面長さL2に対する、第1界面長さL1の割合(L1/L2)は、表2の通りである。
表2に示すように、実施例4〜6は、比較例4〜6に比べて、耐久性が向上していることが分かる。これは、実施例4〜6のカソード2において、割合(L1/L2)を1.07以上にしたためであると考えられる。