JP6432703B1 - 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体、固体高分子形燃料電池及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の膜電極接合体の製造方法としては、触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質及び溶媒からなる触媒インクを、転写基材又はガス拡散層に塗布した後、高分子電解質膜に熱圧着して作製する方法が知られている。
しかしながら、従来の転写による膜電極接合体の製造方法では、電極触媒層と高分子電解質膜の密着性が低く、電極触媒層と高分子電解質膜との間に空隙部が生じやすかった。そのため、界面抵抗による発電性能の低下や、空隙部への水詰まりによるフラッディングによって発電性能の低下が発生しやすいという問題点があった。
しかしながら、特許文献1、2に開示の技術では、膜電極接合体の耐久性が低下するおそれがあるとともに、製造工程が複雑になることにより歩留まりの低下やコストの増加が生じるおそれがあった。
本発明の別の態様に係る固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、高分子電解質膜の両面に電極触媒層が積層された固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、電極触媒層は、触媒、炭素粒子、高分子電解質、及び繊維状物質を含有し、電極触媒層と高分子電解質膜の界面には、少なくとも1個の空隙部が形成されており、界面に直交する平面で固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を切断した場合の断面を、走査型電子顕微鏡により観察した場合に、空隙部の界面に直交する方向の長さである高さをhとし、空隙部の界面に平行な方向の長さである幅をwとすると、高分子電解質膜の両面側のそれぞれの界面において、空隙部の高さhが0.5μm以下であり、界面に平行な方向の長さ30μmの領域内に存在する空隙部の幅wの合計が10μm以下であることを要旨とする。
本発明のさらに別の態様に係る固体高分子形燃料電池は、上記一態様又は別の態様に係る固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を備えることを要旨とする。
また、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で示す場合がある。
図1に示すように、固体高分子形燃料電池1を構成する高分子電解質膜2には、その両面に、高分子電解質膜2を挟んで互いに向い合う一対の電極触媒層3A、3Fが配置されている。電極触媒層3Aの高分子電解質膜2に対向する面とは反対側の面には、ガス拡散層4Aが、また、電極触媒層3Fの高分子電解質膜2に対向する面とは反対側の面には、ガス拡散層4Fが、高分子電解質膜2及び一対の電極触媒層3A、3Fを挟んで互いに向い合うように配置されている。
次に、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池1の電極触媒層3、8(固体高分子形燃料電池用電極触媒層)を形成するための触媒インクの製造方法について説明する。まず、触媒10を担持した炭素粒子11、及び、繊維状物質13を分散媒中に混合・分散させ、触媒粒子スラリーを得る。
触媒10としては、例えば、白金族元素(白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム)、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属及びこれらの金属の合金、酸化物、複酸化物、炭化物等を用いることができる。
炭素粒子11としては、導電性を有し、触媒に侵されずに触媒を担持可能なものであれば、どのようなものでも構わないが、一般的にカーボン粒子が使用される。
本実施形態に係る電子伝導性繊維としては、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、導電性高分子ナノファイバー等が例示できる。特に、導電性や分散性の点でカーボンナノファイバーが好ましい。また、触媒能のある電子伝導性繊維を用いることで、貴金属からなる触媒の使用量を低減できるのでより好ましい。固体高分子形燃料電池の空気極として用いられる場合には、例えば、カーボンナノファイバーから作製したカーボンアロイ触媒が例示できる。また、酸素還元電極用の電極活物質を繊維状に加工したものであってもよく、例えば、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される、少なくとも一つの遷移金属元素を含む物質を使用してもよい。これらの遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、または、これらの遷移金属元素の導電性酸化物や導電性酸窒化物が例示できる。
高分子電解質膜2の両面に電極触媒層3を接合することで、膜電極接合体の製造を行う。この時、高分子電解質膜2に電極触媒層3を接合する方法としては、例えば、転写基材に触媒インクを塗布した電極触媒層付き転写基材を用い、電極触媒層付き転写基材の電極触媒層の表面と高分子電解質膜とを接触させて加熱・加圧することで、高分子電解質膜2と電極触媒層3の接合を行う方法がある。
しかしながら、上記の方法によると、電極触媒層3と高分子電解質膜2の密着性が悪く、電極触媒層3と高分子電解質膜2の界面に空隙部が形成されやすい。そして、これにより、界面抵抗による発電性能の低下や、空隙部への水詰まりによるフラッディングによる発電性能の低下といった問題が発生しやすい傾向がある。
これに対して、本実施形態のように触媒インク中に繊維状物質13が添加してあれば、電極触媒層3の強度が高まるため、触媒インクを高分子電解質膜2に直接塗布した場合においても電極触媒層3にしわやひび割れが生じにくく、電極触媒層3と高分子電解質膜2の密着性が良好な膜電極接合体を得ることが可能となる。
特に、電極触媒層8と高分子電解質膜9の界面に、該界面に直交する方向の長さである高さhが0.5μm超過の空隙部14がある場合や、高さhが0.5μm以下の空隙部14が一定領域に多数ある場合に、発電性能の低下や耐久性が低下するといった問題が発生しやすい。
なお、本実施形態においては、界面に直交する平面で固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を切断した場合の断面を、走査型電子顕微鏡により観察した場合に、空隙部14の界面に直交する方向の長さを高さhとし、空隙部14の界面に平行な方向の長さを幅wとする。
また、界面に平行な方向の長さlが30μmである領域内に存在する空隙部14の幅wの合計が10μmを超えると、空隙部14の幅が広くなるため、高分子電解質膜9が膨潤しても空隙部14が埋まりにくい。
高分子電解質膜9の一方の面と電極触媒層8との界面に存在する空隙部14の高さh及び幅wが上記範囲内であれば上述の効果が奏されるが、高分子電解質膜9の両面において電極触媒層8との界面に存在する空隙部14の高さh及び幅wが上記範囲内であることがより好ましい。
電極触媒層8の厚さは、20μm以下であることが好ましい。電極触媒層8の厚さが20μmよりも大きい場合には、電極触媒層8にひび割れが生じやすくなり、さらに、電極触媒層8を燃料電池に用いた際に、ガスや生成水の拡散性及び導電性が低下して、出力が低下するおそれがある。
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、複雑な工程を用いることなく、電極触媒層8と高分子電解質膜9の密着性が良好で且つ発電性能及び耐久性に優れた膜電極接合体を製造することが可能である。
(実施例1)
白金担持カーボン触媒(TEC10E50E,田中貴金属工業社製)と水と1−プロパノールと高分子電解質(ナフィオン(登録商標)分散液,和光純薬工業社製)とカーボンナノファイバー(VGCF−H(登録商標),昭和電工社製)とを混合し、ビーズミル分散機を使用して、触媒インクを製造した。
製造した触媒インクを、高分子電解質膜(ナフィオン211(登録商標),Dupont社製)の両表面にスリットダイコーターを用いて直接塗布し、乾燥させて電極触媒層を形成して、膜電極接合体を得た。
実施例1の膜電極接合体は、電極触媒層と高分子電解質膜の間の界面に空隙部が存在しないため、電極触媒層と高分子電解質膜の密着性が良好であり、且つ、良好な発電性能及び耐久性を示した。
繊維状物質としてカーボンナノファイバーの代わりにカーボンナノチューブ(NC7000(商標),Nanocyl社製)を用いた点以外は、実施例1と同様の手順で実施例2の膜電極接合体を得た。
実施例2の膜電極接合体は、電極触媒層と高分子電解質膜の間の界面に空隙部が存在しないため、電極触媒層と高分子電解質膜の密着性が良好であり、且つ、良好な発電性能及び耐久性を示した。
(実施例3)
カソード側の電極触媒層(触媒インク)の塗布量を2倍とした点以外は、実施例1と同様にして実施例3の膜電極接合体を得た。
実施例3の膜電極接合体は、電極触媒層と高分子電解質膜の間の界面に空隙部が存在しないため、電極触媒層と高分子電解質膜の密着性が良好であり、且つ、良好な発電性能及び耐久性を示した。
触媒インクの分散にボールミル分散機を使用した点以外は、実施例1と同様の手順で実施例4の膜電極接合体を得た。
実施例4の触媒インクは、ビーズミル分散機により分散を行った実施例1の触媒インクと比較すると、分散度合いが低い。そのため、実施例4の膜電極接合体の電極触媒層と高分子電解質膜の界面には、高さhが0.3μmから0.4μmの空隙部が複数存在しており、界面に平行な方向の長さ30μmの領域内に存在する複数の空隙部の幅wの合計は6μmであった。実施例4の膜電極接合体の発電性能及び耐久性は良好であった。
白金担持カーボン触媒の代わりに白金とコバルトの合金系カーボン触媒を使用した点以外は、実施例1と同様の手順で実施例5の膜電極接合体を得た。
実施例5の触媒インクは、実施例1のインクと比較して、高分子電解質膜への塗布の際に電極触媒層の一部にひび割れが生じた。これに起因して、実施例5の膜電極接合体の電極触媒層と高分子電解質膜の界面には、高さhが0.1μmから0.2μmの空隙部が複数存在しており、界面に平行な方向の長さ30μmの領域内に存在する複数の空隙部の幅wの合計は10μmであった。実施例5の膜電極接合体の発電性能及び耐久性は良好であった。
触媒インク中にカーボンナノファイバーを配合しなかった点以外は、実施例1と同様にして比較例1の膜電極接合体を得た。
比較例1の膜電極接合体では、電極触媒層にしわやひび割れが生じ、発電性能及び耐久性の低下が生じる結果となった。このとき、電極触媒層と高分子電解質膜の界面には、高さhが0.1μmから0.3μmの空隙部が複数存在しており、界面に平行な方向の長さ30μmの領域内に存在する複数の空隙部の幅wの合計は16μmであった。
触媒インクを転写基材に塗布した後に高分子電解質膜に転写する方法により、膜電極接合体を製造した点以外は、実施例1と同様にして比較例2の膜電極接合体を得た。
比較例2の膜電極接合体では、電極触媒層と高分子電解質膜の界面に高さhが0.5μm超過の空隙部が生じ、発電性能及び耐久性の低下が生じる結果となった。
カソード側の電極触媒層(触媒インク)の塗布量を4倍とした点以外は、実施例1と同様にして比較例3の膜電極接合体を得た。
比較例3の膜電極接合体では、電極触媒層にしわやひび割れが生じ、発電性能及び耐久性の低下が生じる結果となった。このとき、電極触媒層と高分子電解質膜の界面には、高さhが0.1μmから0.3μmの空隙部が複数存在しており、界面に平行な方向の長さ30μmの領域内に存在する複数の空隙部の幅wの合計は13μmであった。
2・・・高分子電解質膜
3A、3F・・・電極触媒層
4A、4F・・・ガス拡散層
5A、5F・・・セパレーター
6A、6F・・・ガス流路
7A、7F・・・冷却水通路
8・・・電極触媒層
9・・・高分子電解質膜
10・・・触媒
11・・・炭素粒子
12・・・高分子電解質
13・・・繊維状物質
14・・・空隙部
Claims (7)
- 高分子電解質膜の両面に電極触媒層が積層された固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であって、
前記電極触媒層は、触媒、炭素粒子、高分子電解質、及び繊維状物質を含有し、且つノニオン系界面活性剤を含有せず、
前記電極触媒層と前記高分子電解質膜の界面には、少なくとも1個の空隙部が形成されており、
前記界面に直交する平面で前記固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を切断した場合の断面を、走査型電子顕微鏡により観察した場合に、前記空隙部の前記界面に直交する方向の長さである高さをhとし、前記空隙部の前記界面に平行な方向の長さである幅をwとすると、
前記高分子電解質膜の両面側のそれぞれの前記界面において、前記空隙部の前記高さhが0.5μm以下であり、前記界面に平行な方向の長さ30μmの領域内に存在する前記空隙部の幅wの合計が10μm以下である固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。 - 前記高さhが0.3μm以下である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
- 前記繊維状物質がカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、電解質繊維及び酸窒化物繊維から選択した一種又は二種以上を含有する請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
- 前記電極触媒層の厚さが20μm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
- 前記高分子電解質膜の一方の面側の前記界面に存在する前記空隙部と、前記高分子電解質膜の他方の面側の前記界面に存在する前記空隙部とは、前記界面に直交する方向からみて、少なくとも一部が重なっている請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を備える固体高分子形燃料電池。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、
前記触媒、前記炭素粒子、前記高分子電解質、及び前記繊維状物質を含有し、且つ前記ノニオン系界面活性剤を含有しない触媒インクを、前記高分子電解質膜に直接塗布し、その後乾燥させることで前記電極触媒層を形成する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
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