JP5389391B2 - リチウム電池用電極材料シート、固体リチウム電池、及び、固体リチウム電池を備えた装置 - Google Patents
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Description
ところで、現行のリチウムイオン二次電池には、電解質として有機系電解液が、主に用いられている。この有機系電解液は、高いイオン伝導度を示すものの、電解質が液体であり、かつ、可燃性であることから、電池として用いた場合、漏洩、発火等の危険性が懸念されている。
この要求に応えるために、たとえば、有機系電解液の代わりに、より安全性の高い無機固体電解質を用いた二次電池が研究されている。無機固体電解質は、その性質上一般に不燃で、通常使用される有機溶媒電解質と比較し安全性の高い材料であり、高い耐熱性を有している。そのため、該電解質を用いたリチウム二次電池の開発が望まれている。
この全固体リチウム二次電池では、Li2SとP2S5を主成分とし、モル%表示でLi2Sが82.5〜92.5%、P2S5が7.5〜17.5%の組成を有するリチウムイオン伝導性硫化物セラミックスが用いられている。
また、電極活物質と電解質との界面接合や、基板と電解質との界面接合も難しく、界面接触抵抗が大きくなるなどの課題を有している。
さらに、ポリマーのように柔軟性がないことから、リチウム電池の製造、たとえば、正極層又は負極層となる電極材料シートを製造する際に、電極活物質や無機固体電解質が欠落するなど、ハンドリング性や連続生産性に問題があった。このため、実用化には至っていない。
このようにすると、電極材料層の柔軟性や機械的強度を向上させることができるので、電極材料の欠落や割れ、及び、集電体からの剥離を抑制し、さらに、集電体と電極材料の接触性、及び、電極材料どうしの接触性を向上させることができる。したがって、製造プロセスにおけるハンドリング性や連続生産性を向上させることができ、さらに、充放電特性の良好なリチウム電池を提供することができる。
このようにすると、三次元網目構造を有する多孔質金属シートを、容易に実現することができる。
このようにすると、内部抵抗の増加や電極材料の欠落が発生しやすくなるといった不具合、電池容量が小さくなるといった不具合、及び、電極体としての抵抗が大きくなってしまうといった不具合を回避することができる。
このようにすると、電池性能を向上させることができる。
このようにすると、製造プロセスにおけるハンドリング性や連続生産性を向上させることができ、製造原価のコストダウンを図ることができる。さらに、充放電特性の良好な固体リチウム電池を提供することができる。
このように、充放電特性の良好な固体リチウム電池を用いることによって、装置の性能や信頼性などを向上させることができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる固体リチウム電池の概略断面図を示している。
図1において、本実施形態の固体リチウム電池は、リチウム二次電池1としてあり、このリチウム二次電池1は、正極用の集電体2、電極材料シート(正極層)3、無機固体電解質層4、電極材料シート(負極層)5及び負極用の集電体2を備えている。このリチウム二次電池1は、正極用の集電体2、電極材料シート(正極層)3、無機固体電解質層4、電極材料シート(負極層)5及び負極用の集電体2が、この順で重ね合わされた構造としてある。
また、リチウム二次電池1の電極材料シート(正極層)3及び電極材料シート(負極層)5は、後述するリチウム電池用電極材料シートである。
さらに、本本発明の固体リチウム電池は、通常、リチウム二次電池であるが、リチウム一次電池であってもよい。
無機固体電解質層4は、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質の薄膜である。
なお、本発明においては、上記のリチウム電池用電極材料シートは、図示してないが、三次元網目構造を有する多孔質金属シートとこの多孔質金属シートの空孔部に挿入された無機固体電解質を有している。すなわち、この無機固体電解質は、電極材料シート(正極層)3、無機固体電解質層4及び電極材料シート(負極層)5において使用される。また、本実施形態の無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質としてある。
したがって、まず、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質について説明する。
本実施形態に係わるリチウムイオン伝導性の無機固体電解質は、LiN、LISICON類、Thio−LISICON類、La0 .5
5 Li0 .35 TiO3 などのペロブスカイト構造を有する結晶や、NASICON型構造を有するLiTi2P3O12、さらにこれら結晶化させた電解質などを用いることができる。
また、Li2O−B2O3−P2O5系、Li2O−B2O3−ZnO系、Li2O−Al2O3−SiO2−P2O5−TiO2系の酸化物系非晶質固体電解質、Li2S−P2S5系、LiI−Li2S−P2S5系、Li3PO4−Li2S−Si2S系などの硫化物系非晶質固体電解質、さらに、これらを結晶化させた結晶性固体電解質、あるいは、LiPO4−Li2S−SiSなどのような金属酸化物と硫化物が混合された非晶質電解質やそれらを結晶化させた電解質などが好ましい。
本実施形態におけるリチウムイオン伝導性の無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性に優れ、粒子どうしの界面を得やすい硫化物系固体電解質である。
上記の硫化物系固体電解質は、硫黄、りん及びリチウムのみからなるものの他、Al、B、Si、Geなどを含む他の物質を含んでいてもよく、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を原材料として製造してもよい。
原材料としては、硫化リチウム(Li2S)と五硫化二燐(P2S5)、又は硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄、さらには硫化リチウム、五硫化二燐、単体燐及び/又は単体硫黄から生成するリチウムイオン伝導性無機固体物質である。
上記硫化リチウムと、五硫化二燐又は単体燐及び単体硫黄の混合モル比は、通常50:50〜80:20である。好ましくは、60:40〜75:25である。特に好ましくは、Li2S:P2S5=70:30(モル比)程度である。
本実施形態におけるリチウムイオン伝導性物質粒子は、上述したように、好適には、硫化リチウムと、五硫化二燐及び/又は、単体燐及び単体硫黄から製造することができる。具体的には、これらの原料を溶融反応した後、急冷するか、または、原料をメカニカルミリング法(適宜、「MM法」と略称する。)により処理して、ガラス状の固体電解質を得る。さらに熱処理することにより結晶性の固体電解質が得られる。ここで、イオン伝導性の観点からは、結晶性の無機固体電解質が好ましい。
上記の無機固体電解質の平均粒子径は、0.01〜50μmの範囲であることが好ましい。
この理由は、平均粒子径を、0.01μm未満とすると、粒子数の増大に伴う粒子界面の数が増えるため、粒子間での接触抵抗が増大する。その結果、電池を形成した場合に内部抵抗が増大し、充放電容量や充放電レート特性に悪影響を及ぼす。また、微粒子化に伴い、近距離場における粒子間の斥力(反発力)が大きくなるため、粉体としての嵩密度が低くなり、空隙が増すことになる。このため、プレス成形などによる圧密化(粒子の合一化)が困難となる。その結果、イオン導電性パスが阻害され、イオン伝導性の悪化を導くことになるからである。さらに、塗布法による塗膜形成では、溶剤を用いてスラリーを作製するが、0.01μm未満にまで微粒化したものを分散すると、表面活性の高さから、再凝集を起こしやすくなる。したがって、その他の電極材料と混合して均一分散を図りたい場合、却って分散性が悪化する結果となってしまい、分散性アップによる電池性能の向上を図ることが困難になるからである。
この理由は、過剰な微粒子化に起因する再凝集、嵩密度の低下、界面抵抗の増加を抑制できるからである。すなわち、適度に微粒子化されているので、電極活物質と混合して電極層を形成した場合、固体電解質が均一に分散性することが容易になり、電極活物質の周囲に均一に配置されやすくなる。さらに、電極活物質間の隙間にも入りやすくなるため、イオン伝導性と活物質間の電子伝導性を確保することが可能となる。その結果、電池としての内部抵抗の低下、さらに充放電容量や充放電レートを向上させることができるからである。また、塗布法などを用いて膜形成する場合、凸凹が少なくなるため均一性に優れた膜になる。さらに、固体電解質層を薄膜化しやすくなるため、電気抵抗を抑えることが可能となるからである。
この理由は、均一かつ薄膜の固体電解質層を得ることが容易となり抵抗成分が抑制できるからである。さらに、電極活物質と混合して電極層を形成した場合、固体電解質の分散性を向上することが容易になるとともに、圧密化も容易となり、結果として抵抗の少ない電極層を得ることが可能となるからである。
なお、上述した平均粒子径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器、たとえばマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、電子顕微鏡写真から任意に200個の粒子を抽出し、平均粒子径を算出してもよい。
この理由は、無機固体電解質層4の膜厚を、1μm未満とすると、両側に存在する電極層の影響、特に固体電解質に比べて高硬度である正極活物質の影響を受けやすく、製造プロセスにおける圧密化や、電池形成した後に何らかの力を受けると、固体電解質層が損傷を受けやすい。その結果、電子伝導パス(絶縁破壊)が形成され短絡するからである。また、充電時などに印加される電圧に対して、膜厚が極端に薄い場合、単位厚さ当りの電圧が非常に高くなるため、絶縁破壊を生じやすくなるからである。特に、薄膜形成においては、膜の均一性が重要視されるが、厚い膜に比べて膜厚ムラの変動が大きくなるため、少しでも局所的に薄い箇所が存在すると、電圧が集中し、絶縁破壊に繋がるため、その抑制が難しいからである。
また、無機固体電解質層4の膜厚が、500μmを超えると、抵抗成分でもある無機固体電解質層4の影響が無視できなくなり、電池としての内部抵抗が増大し、その結果、十分な充放電特性が得られないからである。さらに、上記の無機固体電解質は、粒子どうしの結合力が、それほど大きくなく、また、金属のように延性が無いため、製造工程時や実用時に、無機固体電解質層4に変形が加わる場合、割れや界面剥離などが発生しやすくなるからである。
ここで、リチウム二次電池1における無機固体電解質層4は、シート状の膜単独のもの、あるいは、基材等に形成された積層状のものなどをいう。
電極材料シート(正極層)3及び電極材料シート(負極層)5は、リチウム電池用電極材料シートである。
このリチウム電池用電極材料シートは、図示してないが、三次元網目構造を有する多孔質金属シートとリチウムイオン伝導性の無機固体電解質を含有している。
ここで、「三次元網目構造」とは、多数の空孔部が三次元的に配設されており、粗大で独立した空孔部を実質的に有しない網目状の構造をいう。したがって、三次元網目構造を有する多孔質金属シートは、多数の空孔部内に、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質の粒子や、正極活物質又は負極活物質の粒子などが、圧密化された状態で固定される。
また、リチウム電池用電極材料シートが含有するリチウムイオン伝導性の無機固体電解質は、上述したリチウムイオン伝導性の無機固体電解質とほぼ同様としてある。
三次元の網目構造を有する多孔質金属シートとしては、発泡金属や金属繊維焼結体などを適用できる。
この多孔質金属シートは、三次元の網目構造を有することにより、厚さ方向への変形がしやすくなり、ロールプレスや面プレス等による電極材料の圧密化と固定化がしやすく、電極材料シートとしての機械的強度および柔軟性を発現しやすい。
本発明に係わる発泡金属としては、例えば、ニッケルを主成分とする発泡金属、アルミニウムを主成分とする発泡金属、SUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス発泡金属、銅を主成分とする発泡金属、コバルトを主成分とする発泡金属、チタンを主成分とする発泡金属や銀、金、プラチナなどの貴金属の発泡金属などを用いることができ、連続した気孔を有する海綿状の多孔体であることが好ましい。たとえば、市販されている多孔質金属体「セルメット」(富山住友電工株式会社製)、三菱マテリアル社製の発泡金属、ERGエアロスペース社の発泡金属などを用いることもできる。
この理由は、気孔率を50%未満とすると、電極活物質や無機固体電解質などの電極材料を充填する量が減少するため、電池容量が小さくなるからである。また、気孔率を99%以上とすると、発泡金属としての強度が不足するため、リチウム電池用電極材料シートとしての強度が低下してしまうからである。さらに、電極活物質や無機固体電解質などからなる電極材料の固着力が低下し、充放電に伴う正極活物質の膨張収縮により、正極活物質の粒子間の接触が絶たれたり、粒子が脱落して充放電に関与しない正極活物質が生じたりすることによって、電池容量が減少するからである。
上記の観点から、発泡金属の気孔率は、より好ましくは、70%〜97%であり、特に好ましくは、80%〜95%である。
この理由は、1μm未満とすると、電極活物質や無機固体電解質などからなる電極材料の気孔への充填が難しくなり、目詰まりが発生しやすくなるからである。また、1500μm以上とすると、集電体、さらに電極材料の固定化として機能を有する発泡金属と電極活物質との間の平均距離が大きくなり、内部抵抗の増加や電極材料の欠落が発生しやすくなるからである。
さらに、充填性、内部抵抗、電極材料の固定化の観点から、呼び孔径は、5〜1000μmであるのが好ましく、さらに好ましくは、10〜1000μmであり、特に好ましくは、20〜700μmである。
この理由は、10μm未満では、電極材料の充填量が少ないため、電池容量が小さくなるからである。また、1000μm以上では、電極体としての抵抗が大きくなってしまうからである。
また、電池容量、抵抗の観点から、発泡金属の厚さは、20〜700μm程度であるのがより好ましい。
本発明に係わる金属繊維焼結体としては、アルミニウムを主成分とする繊維焼結体、チタンを主成分とする繊維焼結体、ステンレス繊維焼結体、ニッケルを主成分とする繊維焼結体などを用いることができる。繊維金属焼結体としては、短繊維又は長繊維の焼結体を使用するのが好ましい。たとえば、市販されている金属繊維焼結シート「トミーファイレックSS」(巴川製紙所社製)、アルミ繊維燃不織布「フルポーラス」(古河スカイ社製)などを用いることもできる。
ここで、未焼結の金属繊維では、強度が弱く、シート等の形状を保持しがたく、また金属繊維どうしの電気的接続が不足するため、電気抵抗が高くなってしまう。したがって、少なくとも金属繊維の一部が焼結されている必要がある。
また、気孔率や厚さについては、金属発泡と同程度の範囲であることが好ましい。
この理由は、0.1μm未満とすると、繊維としての強度が不足し、シートなどの形状が保持しにくいからである。また、200μmを超えると、機械的強度は高まるものの、柔軟性が不足してくるからである。
また、上記の観点から、1〜100μm程度の繊維径がより好ましい。
リチウムと合金を形成し、かつ、リチウムイオンを吸蔵・放出が可能な物質で被覆する方法として、電解メッキ法、無電解メッキ法などの工業的な方法を用いることができる。
実質的にリチウムを含まず、リチウムと合金化することが可能な被覆物質としては、錫、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、酸化錫(SnO,SnO2)、酸化ケイ素(SiO,SiO2)、酸化ゲルマニウム(GeO,GeO2)、酸化鉛(PbO,PbO2)等が好ましい。
より好ましくは、錫、アルミニウム、ケイ素である。
塗料組成物を調製する際の有機溶剤としては、固体電解質に悪影響を与えないものであれば、特に制限は無く、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、ゴム揮発油などの脂肪族炭化水素溶剤;ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテンなどの芳香族炭化水素溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル系溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボンート、ビニルエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル系溶剤;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどの鎖状エーテル系溶剤;メチルアセテート、エチルアセテート、メチルジフルオロアセテート、エチルトリフルオロアセテート、メチルプロピネート、エチルプロピネート、メチルホルメート、エチルホルメートなどのエステル系溶剤;γーブチロラクトン、γーバレロラクトンなどのラクトン系溶剤;トリメチルフホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェートなどのリン酸エステル系溶剤;N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、1、3−ジメチルー2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセテートなどのアミド系溶剤;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトン、1,4−ブタンサルトン、エチレンスルフィトなどの硫黄系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセルソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)などのグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)などのグリコールエーテルエステル系溶剤等が挙げられる。
より好ましくは、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテンなどの芳香族炭化水素溶剤である。ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル系溶剤を用いてもよい。
これらの有機溶剤中の水分含有量は、低いことが好ましく、具体的には、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがさらに好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。
結着性を向上させるための樹脂としては、電極材料やイオン伝導性物質に悪影響を与えないものであれば、特に制限はない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系ポリマー;スチレンーブタジエンコポリマー(SBR)、スチレンーイソプレンースチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリブタジエンを水素添加したスチレン−エチレン/ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)、ポリイソプレンを水素添加したスチレンーエチレン/プロピレンースチレンブロックコポリマー(SEPS)などのスチレン系熱可塑性エラストマーで代表される熱可塑性エラストマー;イオン伝導性ポリマーとして知られているエチレンオキサイド骨格やプロピレンオキシド骨格などのオキシド骨格を有するポリエーテル系ポリマー、またはそれらの混合物や共重合体、さらに分子骨格に架橋構造を形成しうる反応基を持たせ分岐型ポリエーテル系ポリマー、アルキルボラン含有ポリエーテル系ポリマー;メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなどの1官能型モノマー、エトキシ化ポリプロピレングルコールジメタクリレート、エトキシ化ポリプロピレングルコールジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの2官能型モノマー、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートなどの3官能型モノマーなどを単一または混合して使用する、ポリエーテル骨格を有した熱硬化樹脂、その他、アクリル系樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルシリコン系樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、シリコーン樹脂、付加反応型のシリコーンを用いた熱硬化樹脂、液状ゴムなどを用いることができる。上記の樹脂を用いることにより、結着性を向上させることができる。
樹脂としては、結着性、柔軟性、シート化の容易性、リチウムイオン伝導性や界面抵抗の観点から、イオン伝導性ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、付加反応型シリコーンなどが好ましく、オキシド骨格を有するイオン伝導性ポリマーがより好ましい。
リチウムの伝導度を向上させるために、電極材料シート(正極層)3、電極材料シート(負極層)5、又は、無機固体電解質層4には、それぞれ独立に、リチウム塩を添加することができる。
具体的には、例えば、キシダ化学(株)の電解質塩が挙げられる。特にリチウムイオン伝導性を高めるために、リチウム塩を使用することが好ましく、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiTFSI(LiN(SO3CF3)2)、LiBETI(LiN(SO2C2F5)2)、LiTFS(LiCF3SO3)などが好適に挙げられる。
電極材料シート(正極層)3は、さらに、正極活物質を含有している。
この正極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な金属酸化物、電池分野において正極活物質として公知のものが使用できる。例えば、硫化物系では、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)等が使用でき、特にTiS2が好適である。これらの物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、酸化物系では、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)や、ニッケルーマンガン系酸化物(LiNi0.5Mn0.5O2)、ニッケルーアルミニウムーコバルト系酸化物(LiNi0.08Co0.15Al0.15O2)、ニッケルーマンガンーコバルト系酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2)等が使用でき、特にLiCoO2やLiNi0.08Co0.15Al0.15O2が好適である。これらの物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、上記、硫化物系と酸化物系を混合して用いることも可能である。また、上記の他に、セレン化ニオブ(NbSe3)も使用することができる。
この平均粒子径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器、たとえばマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、電子顕微鏡写真から任意に200個の粒子を抽出し、平均粒子径を算出してもよい。
正極材料として用いる場合には、正極活物質は、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質と正極活物質の総量に対して、20〜90質量%の範囲で混合されることが好ましい。
電極材料シート(負極層)5は、さらに、負極活物質を含有している。
この負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知のものが使用できる。例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられ、特に人造黒鉛が好適である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属自体や他の元素、化合物と組合せた合金を、負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
この平均粒子径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器、たとえばマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、電子顕微鏡写真から任意に200個の粒子を抽出し、平均粒子径を算出してもよい。
負極材料として用いる場合には、負極活物質は、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質と負極活物質の総量に対して、20〜90質量%の範囲で混合されることが好ましい。
導電助剤(図示せず)として、電子が上記の正極活物質内で円滑に移動するようにするための、電気的に導電性を有する物質を、極材料シート(正極層)3に適宜添加してもよい。電気的に導電性を有する物質としては、特に限定はないが、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような導電性炭素材料又はポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子を1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
集電体2としては、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又は、これらの合金等からなる板状体や箔状体等、導電性塗料を塗布したシートやメッキ処理を施した板状体や箔状体等が使用でき、電極層と兼用することもできる。
電極材料シート(正極層)3及び電極材料シート(負極層)5に用いられる電極材料スラリーを調製する方法は、特に限定されるものではない。たとえば、上述した電極活物質、リチウムイオン伝導性の無機固体電解質粒子と各種溶剤、必要に応じて導電助剤や樹脂をプラネタリーミキサー、ボールミル、超音波、ペイントシェーカー、レッドデビル、サンドミル、ミキサー、アトライターなどを用いて混合・分散させる方法が用いられる。
スラリー中の固形分濃度は、特に限定されないが、スラリーの安定性や塗工性の点から、正極材スラリーの場合では、通常30〜90質量%、好ましくは35〜85質量%、特に好ましくは40〜80質量%である。一方、負極スラリーの場合では、通常20〜70質量%、好ましくは25〜65質量%、特に好ましくは30〜60質量%である。
本発明に係るリチウム電池用電極シートの製造方法としては、多孔質金属に電極材料を充填できる方法であればよく、特に制限されるものではない。例えば、浸漬塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、ロール塗工法、アプリケーター塗工法、スプレーコーター塗工法、バーコーター塗工法、ロールコーター塗工法、ディップコーター塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコーター塗工法、アトライター塗工法、スピナー塗工法、ビード塗工法、ブレード塗工法、カーテン塗工法、スクリーン印刷法などの塗工法を用いることができる。
この方法は、装置が簡便であり、生産性に優れている。また、薄塗りから厚塗りまで、容易に膜厚を制御することができるといった利点を有している。さらに、適用可能な塗料の粘度範囲が広いため、さまざまな材料に対して膜厚ムラが少ないといった利点を有している。さらに、溶剤を利用することによって、本発明に用いる多孔質金属シートへの粒子充填が、容易にかつ確実に行なわれるといった特徴がある。すなわち、この方法を用いることにより、リチウム電池用電極材料シートを容易に作製でき、また、生産性を向上させることができる。
また、プレス成形において加熱することも併用できる。この加熱温度としては、材料が分解及び変質しない範囲であれば、特に制限はなく、通常、300℃以下で行われる。
各実施例のリチウム二次電池1は、リチウムイオン伝導性固体物質の製造工程、各スラリーの調製工程、及び、電極材料シートの形成工程などを経て、作製した。
次に、これらの各工程について説明する。
(1)ガラス状のリチウムイオン伝導性固体電解質の製造
まず、Li2SとP2S5(アルドリッチ製)を出発原料に用いた。このLi2SとP2S5(アルドリッチ製)は、特開2008−103194号公報や特開2008−4334号公報などに記載された方法にしたがって、製造された。Li2S68モル部及びP2S532モル部を添加してなる混合物を1gと、粒子径10mmφのアルミナ製ボール10個とを45mLのアルミナ製容器に入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)にて、窒素雰囲気下、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、20時間メカニカルミリング処理することで、白黄色で、平均粒子径10μmのガラス状リチウムイオン伝導性物質粒子を得た。
次に、上記のガラス状リチウムイオン伝導性物質粒子を、窒素気流下300℃にて、2時間加熱処理することで、結晶性粒子(結晶性固体電解質)を得た。
(1)無機固体電解質スラリーの調製 <A−1>
遊星ボールミル容器に、製造例に記載の結晶性固体電解質を40質量部、及び、トルエンを60質量部投入し、ジルコニアボールを入れて、370rpmで2時間攪拌し、電解質スラリー(A−1)を得た。
遊星ボールミル容器に、製造例に記載の結晶性固体電解質を40質量部、及び、トルエンを60質量部投入し、ジルコニアボールを入れて、370rpmで2時間攪拌し、電解質スラリーを得た。さらに、正極の電極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO2、平均粒子径:10μm)を160質量部投入し、トルエンを20質量部追加し、150rpmで0.5時間攪拌し、正極合材スラリー(B−1)を得た。
遊星ボールミル容器に、製造例に記載の結晶性固体電解質を40質量部、及び、トルエンを60質量部投入し、ジルコニアボールを入れて、370rpmで2時間攪拌し、電解質スラリーを得た。さらに、正極の電極材料としてニッケルーアルミニウムーコバルト系酸化物(LiNi0.08Co0.15Al0.15O2、平均粒子径:5μm)を160質量部投入し、トルエンを20質量部追加し、150rpmで、10分攪拌し、正極合材スラリー(B−2)を得た。
遊星ボールミル容器に、製造例に記載の結晶性固体電解質を40質量部、及び、トルエンを60質量部投入し、ジルコニアボールを入れて、370rpmで2時間攪拌し、電解質スラリーを得た。さらに、負極の電極材料として、グラファイト(平均粒子径15μm)を60質量部投入し、トルエンを130質量部追加し、ジルコニアボールを入れて、150rpmで0.5時間攪拌し、負極合材スラリー(C−1)を得た。
(正極材料シートの形成) <D−1>
ゴムへらからなるスキージを用いて、正極材料スラリー(B−1)を、発泡ステンレス(厚さ:200μm、気孔率:90%、呼び孔径:150μm)に塗布し、150℃にて1時間乾燥して、厚さ210μmのシートを得た。さらに、直径300mmのロールプレスを用いて、線圧2MPaで圧密化し、厚さ170μmの正極材料シート(D−1)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(正極材料シートの形成) <D−2>
ロールプレスの線圧を10MPaに変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、厚さ130μmの正極材料シート(D−2)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(正極材料シートの形成) <D−3>
厚さ400μm、気孔率95%、呼び孔径600μmの発泡ステンレスに変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、厚さ370μmの正極材料シート(D−3)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(正極材料シートの形成) <D−4>
発泡金属として発泡アルミ(厚さ:300μm、気孔率:85%、呼び孔径:200μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、厚さ250μmの正極材料シート(D−4)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(正極材料シートの形成) <D−5>
正極材料スラリー(B−1)を、正極材料スラリー(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、厚さ180μmの正極材料シート(D−1)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(正極材料シートの形成) <D−6>
発泡金属をアルミ繊維焼結体(繊維径:200μm、厚さ:500μm、気孔率:70%)に変更した以外は、実施例2と同様の方法を用いて、厚さ350μmの正極材料シート(D−6)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(負極材料シートの形成) <E−1>
ゴムへらからなるスキージを用いて、負極材料スラリー(C−1)を、発泡ステンレス(厚さ:200μm、気孔率:90%、呼び孔径:150μm)に塗布し、200℃にて2時間乾燥して、厚さ210μmのシートを得た。さらに、直径300mmのロールプレスを用いて線圧5MPaで圧密化し、厚さ170μmの負極材料シート(E−1)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(負極材料シートの形成) <E−2>
ロールプレスの線圧を50MPaに変更した以外は、実施例6と同様の方法を用いて、厚さ125μmの負極材料シート(E−2)を得た。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(負極材料シートの形成) <E−3>
ゴムへらからなるスキージを用いて、固体電解質スラリー(A−1)を、電解めっきにより錫を表面被覆した発泡ステンレス(厚さ:200μm、気孔率:90%、呼び孔径:150μm)に塗布し、200℃にて2時間乾燥して、厚さ350μmのシートを得た。さらに、直径300mmのロールプレスを用いて線圧5MPaで圧密化し、厚さ250μmの負極材料シート(E−3)を得た。得られたシートは、固体電解質で片面全面が覆われており、発泡ステンレスの上に約80μmの電解質単独層が形成された。また、屈曲性評価の結果、顕著な割れや剥離は見られなかった。
(リチウム二次電池の製造) <F−1>
実施例1で得られた正極材料シート(D−1)に、ドクターブレードを用いて無機固体電解質スラリー(A−1)を塗布、乾燥し、厚さ290μmの積層シートを得た。その後、厚さ100μmのインジウムシートを電解質層側に貼り合せ、両側にステンレスシート(集電体2)を配置して挟み込んだ後、プレス機により350MPaで一体成形して、電池セル(リチウム二次電池(F−1))を得た。
この電池セルについて、25℃、電流密度100μA/cm2で充放電を行い、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は89%であった。ここで初期充放電効率は、正極活物質1g当たりの充電された容量(mAh/g)を100%とし、その後に放電された容量の割合より算出した。
(リチウム二次電池の製造) <F−2>
正極材料シート(D−1)を、実施例2で得られた正極材料シート(D−2)に変更した以外は、実施例10と同様の方法を用いて、電池セル(リチウム二次電池(F−2))を得た。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は84%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−3>
正極材料シート(D−1)を、実施例3で得られた正極材料シート(D−3)に変更した以外は、実施例10と同様の方法を用いて、電池セル(リチウム二次電池(F−3))を得た。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は86%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−4>
正極材料シート(D−1)を、実施例4で得られた正極材料シート(D−4)に変更した以外は、実施例10と同様の方法を用いて、電池セル(リチウム二次電池(F−4))を得た。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は87%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−5>
正極材料シート(D−1)を、実施例5で得られた正極材料シート(D−5)に変更した以外は、実施例10と同様の方法を用いて、電池セル(リチウム二次電池(F−5))を得た。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は88%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−6>
正極材料シート(D−1)を、実施例6で得られた正極材料シート(D−6)に変更した以外は、実施例10と同様の方法を用いて、電池セル(リチウム二次電池(F−6))を得た。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は86%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−7>
厚さ100μmのインジウムシートの代わりに、実施例7に記載した負極材料シート(E−1)を用いた以外は、実施例10と同様にして、電池セル(リチウム二次電池(F−7))を製造した。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は、88%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−8>
厚さ100μmのインジウムシートの代わりに、実施例8に記載した負極材料シート(E−2)を用いた以外は、実施例10と同様にして、電池セル(リチウム二次電池(F−8))を製造した。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は、92%であった。
(リチウム二次電池の製造) <F−9>
実施例1で得られた正極材料シート(D−1)に、実施例9に記載の負極材料シート(E−3)を直接貼り合せ、両側にステンレスシート(集電体2)を配置して挟み込んだ後、プレス機により500MPaで一体成形して、電池セル(リチウム二次電池(F−9))を得た。
この電池セルについて、実施例10と同様の方法を用いて、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は、95%であった。
(バイセル電池の製造) <G−1>
実施例1で得られた正極材料シート(D−1)の両面に、ドクターブレードを用いて無機固体電解質スラリー(A−1)を塗布、乾燥し、厚さ410μmの三層シートを得た。その後、厚さ100μmのインジウムシート(電極材料シート(負極層)5)を電解質層の両側に貼り合せ、さらに両側にステンレスシート(集電体2)を配置して挟み込んだ後、プレス機により450MPaで一体成形して、電池セル(バイセル電池(G−1))を得た。
この電池セルについて、25℃、電流密度200μA/cm2で充放電を行い、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は92%であった。
(バイセル電池の製造) <G−2>
実施例1で得られた正極材料シート(D−1)に、実施例9に記載の負極材料シート(E−3)を両面から直接貼り合せ、さらに両側にステンレスシート(集電体2)を配置して挟み込んだ後、プレス機により550MPaで一体成形して、電池セル(バイセル電池(G−2))を得た。
この電池セルについて、25℃、電流密度500μA/cm2で充放電を行い、電池特性(初期充放電効率)を調べた結果、初期充放電効率は94%であった。
(正極材料シートの形成) <H−1>
ドクターブレードを用いて、厚さ100μmのアルミシート上に正極材料スラリー(B−1)を塗布した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、厚さ200μmの正極材料シート(H−1)を得た。しかしながら、屈曲性評価の結果、膜の強度が非常に弱く脆いため、曲げただけで、割れと剥離が発生した。
(正極材料シートの形成) <H−2>
ドクターブレードを用いて、厚さ100μmのアルミシート上に負極材料スラリー(C−1)を塗布した以外は、実施例7と同様の方法を用いて、厚さ150μmの負極材料シート(H−2)を得た。しかしながら、屈曲性評価の結果、膜の強度が非常に弱く脆いため、曲げただけで、割れと剥離が発生した。
次に、上述した本実施形態のリチウム二次電池1の各製造例、実施例及び比較例における、評価方法について説明する。
マイクロメーターでランダムに10点観測し、その平均値を膜厚とした。
電子顕微鏡写真(SEM観察像)から、200個の粒子を無作為に抽出し、平均粒子径を算出した。
スラリーを塗布、乾燥した多孔質金属シートの重量を測定し、多孔質金属シートのみの重量を引いて電極材料の重量を算出し、材料組成から、電極活物質の目付け量を算出した。
ステンレス製の曲率半径120mmの治具に沿って、電極材料シートを折り曲げ、目視にて電極材料の欠落、割れや剥離の有無を評価した
本発明は、固体リチウム電池を備えた装置の発明としても有効である。すなわち、本実施形態の固体リチウム電池を備えた装置(図示せず)は、上述した一実施形態のリチウム二次電池1を備えた装置としてある。
本実施形態の固体リチウム電池を備えた装置は、各種携帯電子機器などに用いられる電源装置としてある。
ここで、上記の各種携帯電子機器は、特に限定されるものではなく、たとえば、ノート型パソコン,ノート型ワープロ,パームトップ(ポケット)パソコン,携帯電話,PHS,携帯ファックス,携帯プリンター,ヘッドフォンステレオ,ビデオカメラ,携帯テレビ,ポータブルCD,ポータブルMD,電動髭剃り機,電子手張,トランシーバー,電動工具,ラジオ,テープレコーダ,デジタルカメラ,携帯コピー機,携帯ゲーム機等である。
また、本実施形態の固体リチウム電池を備えた装置は、電気自動車,ハイブリッド自動車,自動販売機,電動カート,ロードレベリング用蓄電システム,家庭用蓄電器,分散型電力貯蔵機システム(据置型電化製品に内蔵),非常時電力供給システム等にも用いることができる。
上記の様々な装置、機器、又は、システムとしては、各種携帯電子機器、たとえば、ノート型パソコン,ノート型ワープロ,パームトップ(ポケット)パソコン,携帯電話,PHS,携帯ファックス,携帯プリンター,ヘッドフォンステレオ,ビデオカメラ,携帯テレビ,ポータブルCD,ポータブルMD,電動髭剃り機,電子手張,トランシーバー,電動工具,ラジオ,テープレコーダ,デジタルカメラ,携帯コピー機,携帯ゲーム機等を挙げることができる。また、電気自動車,ハイブリッド自動車,自動販売機,電動カート,ロードレベリング用蓄電システム,家庭用蓄電器,分散型電力貯蔵機システム(据置型電化製品に内蔵),非常時電力供給システム等を挙げることができる。
また、固体リチウム電池(リチウム二次電池1)は、電極材料層の柔軟性や機械的強度を向上させることができるので、電極材料の欠落や割れ、及び、集電体からの剥離を抑制し、さらに、集電体と電極材料の接触性、及び、電極材料どうしの接触性を向上させることができる。したがって、製造プロセスにおけるハンドリング性や連続生産性を向上させることができる。
1a バイセル電池
2 集電体
3 電極材料シート(正極層)
4 無機固体電解質層
5 電極材料シート(負極層)
Claims (14)
- 三次元網目構造を有する多孔質金属シートと、
この多孔質金属シートの空孔部に挿入された無機固体電解質及び電極活物質と
を有し、
前記多孔質金属シートが発泡金属であり、前記発泡金属の呼び孔径が1500μm以下、気孔率が50%以上、シート厚さが1000μm以下であることを特徴とするリチウム電池用電極材料シート。 - 前記無機固体電解質が、硫化物系固体電解質であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記硫化物系固体電解質が、硫黄、りん、及びリチウムを含むことを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記硫化物系固体電解質が、硫黄、りん、及びリチウムのみからなることを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記硫化物系固体電解質が、硫化リチウムと五硫化二燐から生成されることを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記硫化リチウムと前記五硫化二燐のモル比が50:50〜80:20であることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記発泡金属の呼び孔径が20μm以上700μm以下、気孔率が80%以上95%以下、シート厚さが20μm以上700μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記発泡金属の呼び孔径が150μm以上600μm以下、気孔率が85%以上95%以下、シート厚さが200μm以上400μm以下であることを特徴とする請求項7に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- リチウムイオン伝導性の前記無機固体電解質の平均粒子径が、0.01μm〜50μmであることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 前記リチウムイオン伝導性の無機固体電解質の平均粒子径が、0.05μm〜20μmであり、正極の前記電極活物質の平均粒子径が0.1μm〜15μmであり、負極の前記電極活物質の平均粒子径が0.5μm〜50μmであることを特徴とする請求項9に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 正極材料として用いる場合、前記正極の電極活物質は、前記リチウムイオン伝導性の無機固体電解質と該正極の電極活物質の総量に対して、20〜90質量%の範囲で混合されており、負極材料として用いる場合、前記負極の電極活物質は、前記リチウムイオン伝導性の無機固体電解質と該負極の電極活物質の総量に対して、20〜90質量%の範囲で混合されていることを特徴とする請求項10に記載のリチウム電池用電極材料シート。
- 上記請求項1〜11のいずれか一項に記載のリチウム電池用電極材料シートを、正極及び/又は負極とすることを特徴とする固体リチウム電池。
- 上記請求項11に記載されたリチウム電池用電極材料シートを正極材料及び負極材料として用い、前記正極材料として用いられるリチウム電池用電極材料シートに、前記負極材料として用いられるリチウム電池用電極材料シートを直接貼り合せたことを特徴とする固体リチウム電池。
- 上記請求項12又は13に記載の固体リチウム電池を備えたことを特徴とする固体リチウム電池を備えた装置。
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